説明

流体用容器

【課題】複式格納容器において種々の注出口形状を有する内袋を使用可能とする流体用容器を提供する。
【解決手段】この流体用容器1は、液体を注入可能に開口するネック部11を有する可撓性のバッグ12と、ネック部11を口部716aで支持してバッグ12を収容する外側容器716と、外装容器716の口部716aに挿入される液出しチューブ722と、液出しチューブ722を貫通可能な筒体をなし、筒内で液出しチューブ722を支持するとともに、ネック部11の開口側に嵌合する保持部材14と、これらを封止する封止手段とを備える。保持部材14は、略円筒状の本体部14aと、その周囲から延出されるフランジ部14bとを備え、本体部14aの貫通穴14cの一端側がネック部11の開口と連通するように密接し、フランジ部14bがネック部11の開口側と嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品などの流体を貯蔵し、運搬し、かつ分配する容器に関する。特に、流体を排出するための継手を備える流体用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レジスト液などの薬品は、運搬用の薬品容器に貯蔵されて製造工場に納入される。このような薬品容器は、同じ容器を繰返し使用するリンク方式と、毎回新しい容器を使用するワンウェイ方式がある。特に、高純度薬品の純度に影響を与えぬためには、ワンウェイ方式の容器を使用することが好ましいが、経済的ではないという欠点がある。近年では、前記両方式を複合した複式格納型の容器が普及している。
【0003】
一般に、複式格納型の容器は、内側容器として、ポリオレフィン等の可撓性フィルムからなり、これに注出口が接合されたバッグ(袋体)を有している。このバッグは外側容器の中に設けられて二重容器となり、バッグから薬品を排出した後に、このバッグは廃棄され、新たなバッグに薬品が充填される。そして、流体を出し入れするための継手などの部材や、金属製などの外側容器は繰返し使用される(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−100087号公報
【特許文献2】特開2008−7154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5は、特許文献1による容器の頂端部の断面図であり、キャップが装着された状態図である。本願の図5は、特許文献1の図3に相当している。又、図6は、特許文献1による容器の上端の断面図であり、容器及び液体を排出するためのディスペンサが組み立てられた状態を示している。本願の図6は特許文献1の図6に相当している。
【0006】
図5及び図6において、特許文献1による容器は、容器7及びディスペンサ8を備えている。容器7は、ポート718を有する外側容器716、流体通路780を有し上部にカップリング724が接合される汲出しチューブ(本願における液出しチューブ)722を備えている。カップリング724は、ポート(以下、取付体という)718に挿入されるようにチューブ794の上端に設けられると共に、その上端に設けられる空所776を有している。
【0007】
容器7は更に、外側容器716の内側と空所776との間に気体を流通させる通気通路782と、取付体718の頂端部上に設けられる破断可能なシール727と、を備えている。ディスペンサ8は、シール727を介して空所790の中に挿入可能であると共に、流体通路844を有するプローブ846を備えている。又、プローブ846に接続され、チューブ794、カップリング724、及びプローブ846の流体通路844を介して外側容器716から排出される液体薬品を収容する圧縮流体通路を備えている。
【0008】
図5及び図6において、外側容器716は、雄ねじが形成された口部716aを有しており、口部716aの中には、リテーナ719及び取付体718が取り付けられている。容器7は、可撓性フィルムからなるバッグ720を外側容器716の内部に設けている。バッグ720が装着された取付体718を外側容器716の口部716aに取り付けた後に、バッグ720に液体薬品が充填される前に、好ましくは窒素又は圧縮空気によって膨張される。その後、バッグ720は取付体718を介して液体薬品で充填される。次に、汲出しチューブ722及び汲出しチューブ722のカップリング724を取付体718に挿入する。蓋726は、破断可能なシール727を取付体718の頂端部上に置き、空所776を封止する。又、容器7の蓋726の口部にキャップ728を設けて破断可能なシール727を覆うことができる。
【0009】
容器7を運搬及びハンドリングの間に、可撓性のバッグ720の中に発生した気体は総て、汲出しチューブ722のカップリング724によって形成された気体通路を通って流れ、汲出しチューブ722のカップリング724の上端に設けられた空所726に溜まることができる。
【0010】
特許文献1による容器7は、破断可能なシール727を備えており、ディスペンサ8に設けられるプローブ846がシール727を突き破ることにより、プローブ846は空所790の中に挿入することができる(図6参照)。
【0011】
このような複式格納容器においては、内側容器であるバッグ720及び取付体718が通常一体化された状態で注出口付包装袋として供給される。この注出口付包装袋はワンウエイで使い捨てるために、機能や価格によって種々の構成、サイズがあり、袋部のみならず注出口の形状や大きさも微妙に異なる。このため、複式格納容器の機能を損なわない範囲で、異なる種類の注出口付包装袋を装着可能とすることが求められていた。
【0012】
例えば、上記の特許文献2においては、図7に示すような注出口付包装袋が開示されている。図7に示すように、この注出口付包装袋であるバック12は、少なくとも2枚以上のフィルムの外周辺にヒートシール部を形成して袋体とすると共に、このヒートシール部の所定位置であって、ヒートシール部のシール面間に、注出口であるネック部11の一部が接合されている。しかしながら、特許文献1の構成において、内側容器として特許文献2のような注出口付包装袋は、ネック部12の形状や大きさが異なるため、これをそのまま特許文献1の容器のバッグとして適用することができなかった。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、可撓性フィルムからなるバッグを外側容器の内部に設けている複式格納型の流体用容器であって、異なる種類の注出口付包装袋を装着可能な流体用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、注出口に形状互換性のあるアタッチメント(保持部材)を介装することにより、上記の複式格納容器の機能を損なわない範囲で、異なる種類の注出口付包装袋を装着可能とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、液体を注入可能に開口するネック部を有する可撓性のバッグと、前記ネック部を口部で支持して前記バッグを収容する外側容器と、前記外側容器の口部に挿入される液出しチューブと、前記液出しチューブを貫通可能な筒体をなし、筒内で前記液出しチューブを支持するとともに前記ネック部の開口側に嵌合する保持部材と、前記外側容器の口部を封止する封止手段と、を備え、前記保持部材は、略円筒状の本体部と、その周囲から延出されるフランジ部とを備え、前記本体部の貫通穴の一端側が前記ネック部の開口と連通するように密接し、前記フランジ部が前記ネック部の開口側と嵌合する流体用容器、である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記の保持部材を介装することで、異なる種類の注出口付包装袋が装着可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の流体用容器の一実施形態を示す頂端部の断面分解組立図である。
【図2】(a)保持部材の平面図であり、(b)保持部材のA−A断面図である。
【図3】流体用容器の頂端部の断面図であり、キャップが装着された状態図である。
【図4】流体用容器の頂端部の断面図であり、組み立てられた流体用容器及びディスペンサが装着された状態図である。
【図5】従来技術による容器の頂端部の断面図であり、キャップが装着された状態図である。
【図6】従来技術による容器の上端の断面図であり、容器及びディスペンサが組み立てられた状態図である。
【図7】従来技術による注出口付き包装袋(バッグ)の一実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上記の図5から図7と同様の構成については同様の付番を付してその説明を省略する場合がある。
【0019】
最初に、本発明の流体用容器(以下、単に容器ともいう)の構成を説明する。図1において、容器1は、可撓性のバッグ12と外側容器716を備えている。バッグ12は、液体を注入可能に開口するネック部11を有している。外側容器716はバッグ12を収容することができる。
【0020】
図1において、外側容器716は、底板と、輪帯を有する側壁と、中央が隆起した天板と(いずれも図示せず)で構成されたスチール製のドラム缶が好ましく用いられる。外側容器716には、口部716aに雄ねじ716bが形成される。成形された一対のハンドル(図示せず)を設けることにより運搬を容易としてもよい。
【0021】
バッグ12は、特許文献2に記載されているものである。図7に示すように、外層フィルム12aと内層フィルム12bとを少なくとも重ね合わせた多重フィルム12cを、内層フィルム12b同士が対向するように再度重ねあわせて合計4枚とし、その四辺をヒートシールしてヒートシール部12dを形成した包装袋本体と、この包装袋本体の一辺のヒートシール部12d(図7中の上辺)の内層フィルム12b間に予め熱融着されたネック部11とを備えている。このネック部11が注出口となる。ネック部11の熱融着される取付部11dは、断面形状が凸レンズ状で中央部に貫通穴を有する柱体であり両先端部に板状リブを備えている。
【0022】
包装袋本体は例えばポリオレフィン等の材料で形成される可撓性フィルムの袋体であり、ネック部11は比較的硬質の合成樹脂からなり、可撓性フィルムの袋体の端部にネック部11が溶着されている。バッグ12から液体を排出した後に、ネック部11付きバッグ12を廃棄し、新たなネック部11付きバッグ12が外側容器716に収容される。本発明による流体用容器は、外側容器が繰返し使用され、毎回新しいバッグが使用される複式格納型の容器となっている。
【0023】
図1に示されるように、ネック部11の開口側にはフランジ11aが形成され、一方、口部716aの内壁には段差716cが設けられており、このフランジ11aが段差716cに係止することにより、ネック部11が口部716aに支持されている。バッグ12を外側容器716に収容し、バッグ12に装着されたネック部11を外側容器716の口部716aに支持した後に、バッグ12は好ましくは窒素又は圧縮空気によって膨張される。その後、バッグ12はネック部11の開口(図示せず)から液体が注入される。
【0024】
本発明による容器は、保持部材14と液出しチューブ722を備えている。図1に示すように、保持部材14は液出しチューブ722を貫通してその内部で液出しチューブ722を支持し、保持部材14のフランジ部14aがネック部11と嵌合している(図3参照)。
【0025】
図2に示すように、保持部材14は、液出しチューブ722の一部を貫通するが、その拡径部は貫通しない大きさの貫通穴14cを有する筒状の本体部14aと、その周囲に周状に延出するフランジ部14bとからなる。貫通穴14cはその内周に段部14fを挟んで拡径部と縮径部とが形成されており、この段部14fによって液出しチューブ722が係止されて内部に落ち込むのを防止する(図3参照)。また、本体部14aの一端面には、Oリングを収容するための周状の凹部14eが形成されている。
【0026】
本体部14aから周状に延出するフランジ部14bは、図2(a)に示すように平面視略円形であり、このフランジ部14bは、ネック部11の開口側の内周と略同一形状であり、これにより、ネック部11の開口側に嵌合できる。また、フランジ部14bには、2個の貫通穴14dが形成されている。
【0027】
図1において、液出しチューブ722は上記従来技術と同様のものであり、一端側のカップリング724と、その周囲を覆い他端側に延出するチューブ794とからなり、通常は両者が一体接合されている。チューブ794のカップリング724を覆う部分は他端側に比べて拡径している。液出しチューブ722の他端側は、保持部材14の貫通穴14cに挿入される。液出しチューブ722は、一端から他端まで延びる流体通路780を有し、バッグ12内の液体が流体通路780を通って排出される。カップリング724の空所776付近の外周にはOリングが配置される。
【0028】
図3に示すように、保持部材14は、蓋726が、外側容器716の口部716aに締結されることにより、ネック部11と共に口部716a内に保持される(図3参照)。ネック部11の開口側と保持部材14のフランジ部14bとの嵌合によって、フランジ部14b下面と、本体部14aのフランジ下部外壁と、ネック部11の内壁及び底部との間に所定の空間が形成される。しかしながら、ネック部11の底部に設けられる複数の第1開口11bと、保持部材14に設けられる複数の第2開口14dとの間に気体を通気できる(図3参照)。
【0029】
本発明による容器は、外側容器716の内部から口部716aに気体を通気可能な通気手段と、口部716aを封止する封止手段と、を備えている。図3において通気手段は、複数の第1開口11bと、複数の第2開口14dと、を有している。複数の第1開口11bは、ネック部11の底部に設けられ、外側容器716の内部とネック部11の内部とを連通している。
【0030】
図1及び図3において、封止手段は、上記の従来技術と同じく口部716aに備わり破断可能なシール727が配置される蓋726、及びこれに螺合するキャップ728である。蓋726は流体通路780からの通気を封止するOリングを備えている。このため図3の状態で密封され輸送運搬が可能である。
【0031】
図4に示すように、液出し時には、キャップ728を外してディスペンサ8を装着する。この場合も図6に示す特許文献1による容器7と同様に破断可能なシール727を備えており、ディスペンサ8に設けられるプローブ846がシール727を突き破ることにより、プローブ846は空所790の中に挿入することができる。この状態で液出しが可能となる。
【0032】
以上説明したように、本発明による容器は、保持部材14がアタッチメントの役割をなし、形状や大きさが微妙に異なるネック部に併せて作成することで、種々の袋体とネック部とが一体になった注出口付包装袋を利用できる。より具体的には、例えば、特許文献2に記載されている図7に示すようなバッグ12が、特許文献1の容器に適用可能となり、バックの汎用性が高まるものである。
【0033】
なお、本発明においては、上記の実施形態のようにネック部11と保持部材14とが別体であってもよいが、必ずしもこれに限らず、両者が一体成形されていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 容器(流体用容器)
11 ネック部(注出口)
11b 第1開口(通気手段)
12 バッグ
14 保持部材
14a 本体部
14b フランジ部
14c 貫通穴
14d 第2開口(通気手段)
14e 凹部
14f 段部
716 外側容器
716a 口部
722 液出しチューブ
780 流体通路
726 蓋
728 キャップ
8 ディスペンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を注入可能に開口するネック部を有する可撓性のバッグと、
前記ネック部を口部で支持して前記バッグを収容する外側容器と、
前記外側容器の口部に挿入される液出しチューブと、
前記液出しチューブを貫通可能な筒体をなし、筒内で前記液出しチューブを支持するとともに前記ネック部の開口側に嵌合する保持部材と、
前記外側容器の口部を封止する封止手段と、を備え、
前記保持部材は、略円筒状の本体部と、その周囲から延出されるフランジ部とを備え、前記本体部の貫通穴の一端側が前記ネック部の開口と連通するように密接し、前記フランジ部が前記ネック部の開口側と嵌合する流体用容器。
【請求項2】
前記保持部材の本体部の一端側と、前記ネック部の開口周囲とが、Oリングで密接される請求項1記載の流体用容器。
【請求項3】
前記ネック部と前記保持部材とが一体成形されている請求項1記載の流体用容器。
【請求項4】
前記外側容器の内部から前記口部に気体を通気可能な通気手段であって、前記ネック部の底部に設けられ、前記外側容器の内部と前記ネック部の内部とを連通する第1開口、及び、前記フランジ部に設けられ、前記ネック部の内外を連通する第2開口を有する請求項1から3のいずれかに記載の流体用容器。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−260585(P2010−260585A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111367(P2009−111367)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】