説明

流体軸受装置の製造方法

【課題】円筒面に対して簡易に紫外線を照射できる流体軸受装置の製造方法を提供する
【解決手段】ハウジング7の外周面7a2に、反射面11aで反射させた紫外線を照射する。これにより、複数の光源や、ハウジング7を回転させることを要さず、簡易な方法で円筒状のハウジング7の外周面7a2に均一に紫外線を照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受隙間に形成される潤滑膜で内側部材を回転自在に支持する流体軸受装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体軸受装置は、その高回転精度および静粛性から、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク駆動装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク駆動装置、MD、MO等の光磁気ディスク駆動装置等のスピンドルモータ用、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイール、あるいは電気機器の冷却ファン等に使用されるファンモータなどの小型モータ用として好適に使用可能である。
【0003】
例えば、特許文献1に示されている流体軸受装置は、軸部材と、内周に軸部材を挿入した軸受スリーブと、内周に軸受スリーブを保持したハウジングと、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間に形成されたラジアル軸受隙間とを備え、ラジアル軸受隙間に生じる油膜で、軸部材を回転自在に支持している。
【0004】
この流体軸受装置では、ハウジングの内周面及び外周面に紫外線を照射した後、内周面には軸受スリーブが、外周面にはブラケットが接着固定される。紫外線を照射することにより、内周面及び外周面の濡れ性を向上させ、接着剤の密着性を高めることができるため、ハウジングと軸受スリーブあるいはブラケットとの接着強度の向上が図られる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−344793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ハウジングの外周面や内周面といった円筒面に均一に紫外線を照射するためには、例えば複数の光源から照射したり、あるいはハウジングを回転させながら照射したりする必要があるため、装置や工程が複雑化し、コスト高や生産効率の低下を招いていた。
【0007】
本発明の課題は、円筒面に対しても簡易に紫外線を照射できる流体軸受装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、軸部を有する内側部材と、内周に軸部を挿入した外側部材と、軸部の外周面が面するラジアル軸受隙間とを備え、ラジアル軸受隙間に生じる油膜で内側部材を回転自在に支持する流体軸受装置を製造するための方法であって、外側部材のうち、他部材を接着固定するための固定面の少なくとも一部に、反射面で反射させた紫外線を照射することを特徴とする。
【0009】
このように本発明では、外側部材のうち、他部材を接着固定するための固定面の少なくとも一部に、反射面で反射させた紫外線を照射する。これにより、固定面が円筒面であっても、複数の光源や、外側部材を回転させることを要せず、簡易な方法で均一に紫外線を照射することができる。
【0010】
このような流体軸受装置には、内部に保持された潤滑油の漏れ出しを防ぐ目的で、ラジアル軸受隙間から大気開放側につながるシール空間を設け、さらにこのシール空間の大気開放側に撥油剤を塗布することがある。この撥油剤の塗布面に紫外線を照射すると撥油効果が低減するため、紫外線を照射する際は、撥油剤が塗布された面を紫外線から遮へいする必要がある。この遮へいを、反射面を備えた治具で行うと、装置を簡略化することができる。
【0011】
一般に、紫外線が照射される面(以下、照射面)が受ける紫外線の強度は、照射面に対する紫外線の照射角や、光源から照射面までの紫外線の行路(以下、照射行路)に影響される。例えば、図8に示すように、反射面100aを光源P側に設けた場合、有底円筒状のハウジング107の外周面107aに、反射面100aを介して照射される紫外線L1の照射角θ1は比較的小さくなるため、外周面107aへ照射される紫外線L1の強度は比較的弱い。一方、ハウジング107の底面107bに、反射面100aを介さずに直接照射された紫外線L2の照射角θ2は比較的大きいため、底面107bへ照射される紫外線L2の強度は比較的強い。このように、場所によって照射される紫外線の強度が異なるため、照射強度が弱い外周面107aに十分な紫外線を照射すべく、長時間の照射、あるいは強い紫外線を照射すると、照射強度が強い底面107bに過度の紫外線が照射され、底面107bが温度上昇により変形したり、最悪の場合、溶融する恐れがある。
【0012】
一方、紫外線L1の外周面107aへの照射角θ1を大きくするために、内径寸法の大きな反射面100aを使用すると、紫外線L1と紫外線L2との照射行路の差が大きくなるため、各照射面へ照射される紫外線の強度の差が大きくなり、上記と同様の不具合を招く。
【0013】
この点に鑑み、反射面を外側部材に近接した位置、例えば、外側部材の外周あるいは内周に設けることにより、反射面を介して照射される紫外線と、反射面を介さずに照射される紫外線との照射角の差や照射行路の差を小さくすることができるため、各照射面へ照射される紫外線の強度の差を小さくできる。よって、照射される紫外線の強度の差に起因する外側部材の変形や溶融を防止できる。
【0014】
この製造方法において、反射面を外側部材の外周に設けると、外側部材の外周面に均一に紫外線を照射することができる。また、反射面を外側部材の内周に設けると、外側部材の内周面に均一に紫外線を照射することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の流体軸受装置の製造方法によれば、円筒面に対しても簡易に紫外線を照射することができる。
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の製造方法が適用される流体軸受装置(動圧軸受装置)1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、ディスクハブ3を取付けた軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、モータブラケット6とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の外周側内周面に取付けられている。動圧軸受装置1は、モータブラケット6の内周に固定される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスク状情報記録媒体(以下、単にディスクという。)Dが1又は複数枚(本実施形態では2枚)保持される。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する電磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
【0018】
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、内側部材としての軸部材2と、内周に軸部材2を挿入した軸受スリーブ8と、内周面に軸受スリーブ8が固定された外側部材としてのハウジング7とを主に備える。なお、説明の便宜上、コップ状のハウジング7の底部7bで閉塞されている側を下側、開口している側を上側として以下説明する。
【0019】
軸部材2は、SUS鋼等の金属材料で円筒状に形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に設けられたフランジ部2bとを備える。軸部2aおよびフランジ部2bは、同一の材料で形成する他、例えばフランジ部2bを樹脂材料で形成し、軸部2aと一体に設けたハイブリット構造とすることもできる。
【0020】
軸受スリーブ8は、例えば銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。この他、軸受スリーブ8を他の金属や樹脂、あるいはセラミック等で形成することも可能である。
【0021】
軸受スリーブ8の内周面8aの全面又は一部円筒領域には、ラジアル動圧発生部として、例えば図3(a)に示すように、複数の動圧溝8a1、8a2をヘリングボーン形状に配列した領域が軸方向に離隔して2箇所形成される。軸部材2の回転時には、この動圧溝8a1、8a2の形成領域と軸部2aの外周面2a1との間に、後述するラジアル軸受部R1、R2のラジアル軸受隙間を形成する(図2を参照)。
【0022】
軸受スリーブ8の外周面8bには、軸方向に延びる溝8eが軸方向全長に亘って1又は複数本形成される。この実施形態では、3本の軸方向溝8eを円周方向等間隔に形成している。これら軸方向溝8eは、軸受スリーブ8をハウジング7の内周に固定した状態では、対向するハウジング7の内周面7a1との間に潤滑油の流体流路10bを構成する(図2を参照)。これら軸方向溝8eは、例えば軸受スリーブ8本体をなす圧粉体の成形型に予め軸方向溝8eに対応する箇所を設けておくことで、軸受スリーブ8本体の圧粉体成形と同時に成形することができる。
【0023】
軸受スリーブ8の下側端面8cの全面または一部環状領域には、図3(b)に示すように、複数の動圧溝8c1をスパイラル形状に配列した領域が形成される。軸部材2の回転時には、この動圧溝8c1の形成領域とフランジ部2bの上側端面2b1との間に、後述する第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。
【0024】
軸受スリーブ8の上側端面8dの、径方向の略中央部には、図3(a)に示すように、V字断面の周方向溝8d1が全周に亘って形成される。周方向溝8d1によって区画された上側端面8dの内径側領域には、1又は複数本の半径方向溝8d2が形成される。軸受スリーブ8にシール部9を当接させた状態で、シール部9の下側端面9bの外径側領域と軸受スリーブ8の上側端面8dとの間の隙間、周方向溝8d1、および半径方向溝8d2で、流体流路10cを構成する(図2参照)。
【0025】
ハウジング7は、側部7aおよび底部7bを有するコップ状に形成される。ハウジング7の内底面7b1の全面又は一部環状領域には、複数の動圧溝をスパイラル形状に配列した領域が形成される(図示省略)。軸部材2の回転時には、この動圧溝形成領域とフランジ部2bの下側端面2b2との間に、後述する第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。
【0026】
ハウジング7は、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の結晶性樹脂や、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等の非晶性樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物で射出成形される。ハウジング7を形成する上記樹脂組成物としては、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材を、目的に応じて上記ベース樹脂に適量配合したものが使用可能である。
【0027】
シール部9は、例えば金属材料や樹脂材料で形成され、ハウジング7の側部7aの上端部内周に圧入、接着、接着剤介在下での圧入(圧入接着と称す)、溶着、溶接等の手段で固定される。この実施形態では、シール部9の固定は、シール部9の下側端面9bを軸受スリーブ8の上側端面8dに当接させた状態で行われる(図2を参照)。
【0028】
シール部9の内周面9aにはテーパ面が形成されており、このテーパ面と、テーパ面に対向する軸部2aの外周面2a1との間には、上方に向けて半径方向寸法が漸次拡大し、ラジアル軸受隙間の大気開放側とつながるシール空間Sが形成される。シール部9で密封されたハウジング7の内部空間には、潤滑油が注油され、ハウジング7内が潤滑油で満たされる(図2中の散点領域)。この状態では、潤滑油の油面はシール空間Sの範囲内に維持される。また、シール空間Sの大気開放側、具体的にはシール部9の上側端面9cには、油の漏れ出しを確実に防止するために、撥油剤が塗布されている。
【0029】
上記構成の動圧軸受装置1の内部に、潤滑油が充満される。この潤滑油としては、種々のものが使用可能であるが、HDD等のディスク駆動装置用の流体軸受装置に提供される潤滑油には、その使用時あるいは輸送時における温度変化を考慮して、基油に、低蒸発率及び低粘度性に優れたエステル系潤滑油、例えばジオクチルセバケート(DOS)、ジオクチルアゼレート(DOZ)等を用いたものが好適に使用可能である。
【0030】
上記のように、動圧軸受装置1の組立及び注油が完了した後、ブラケット6を接着固定するための固定面となるハウジング7の外周面7a2に、紫外線を照射することにより、動圧軸受装置1が完成する。以下、ハウジング7の外周面7a2への紫外線の照射工程を説明する。
【0031】
この紫外線照射工程で用いられる治具11は、例えば金属で形成され、図4に示すように、球面状の反射面11aと、動圧軸受装置1が載置される載値面11bとを備える。反射面11aには、紫外線の反射効率を高めるために、鏡面加工が施される。この治具11の載値面11bに、動圧軸受装置1を、シール部9の上側端面9cおよびハウジング7の上側端面7a3が面するように載値することにより、シール部9の上側端面9cに塗布された撥油剤が紫外線から遮へいされる。このとき、反射面11aはハウジング7の外周に配置される。
【0032】
この状態で、動圧軸受装置1と同軸上にある光源Pから照射した紫外線が、反射面11aに反射してハウジング7の外周面7a2に照射される。これにより、複数の光源を用いたり、ハウジング7を回転させたりすることなく、ハウジング7の外周面7a2に紫外線を均一に照射することができる。
【0033】
また、図4に示すように、反射面11aをハウジング7の外周面7a2と近接して設けることにより、反射面11aを介して照射される紫外線L1のハウジング7の外周面7a2への照射角θ1と、反射面11aを介さずに照射される紫外線L2のハウジング7の底面7b2への照射角θ2との差を比較的小さくすることができるとともに、紫外線L1と紫外線L2との照射行路の差も比較的小さくすることができる。これにより、ハウジング7の外周面7a2および底面7b2に照射される紫外線の強度の差が小さくなるため、ハウジング7の底面7b2が変形したり溶融したりする不具合を回避できる。
【0034】
このように、ハウジング7の外周面7a2に紫外線を照射することにより、ハウジング7の外周面7a2の濡れ性が向上し、接着剤の密着性が向上するため、この面に固定されるブラケット6との接着力を向上させることができる。特に、本実施形態のようにハウジング7が樹脂で形成される場合、一般に樹脂は接着剤による接着効果が金属等と比べて劣るため、紫外線照射による接着性の向上が有効となる。
【0035】
また、一般に、撥油剤が塗布された面に紫外線を照射すると撥油効果が低減するが、本実施形態では、撥油剤が塗布されたシール部9の上側端面9cが、治具11の載値面11bと面することで紫外線から遮へいされるため、撥油剤による撥油効果を維持できる。
【0036】
また、一般に、紫外線を照射した面が潤滑油と接すると、紫外線照射による濡れ性の向上効果が低減する。よって、動圧軸受装置1の内部への注油を、ハウジング7の外周面7a2に潤滑油が接触するような方法、例えば、減圧環境下で動圧軸受装置1を潤滑油に浸漬するような方法で行う場合は、上記のように、注油後に紫外線を照射することが望ましい。一方、動圧軸受装置1の注油を、ハウジング7の外周面7a2に潤滑油が接触しないような方法、例えば減圧環境下で動圧軸受装置1の開口部に油を滴下する方法(いわゆる滴下含油)で行う場合は、ハウジング7の外周面7a2に紫外線を照射した後に注油してもよい。
【0037】
上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aの動圧溝8a1、8a2形成領域は、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が動圧溝8a1、8a2の軸方向中心m側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このような動圧溝8a1、8a2の動圧作用によって、軸部材2をラジアル方向に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成される。
【0038】
これと同時に、軸受スリーブ8の下側端面8cの動圧溝8c1形成領域と、これに対向するフランジ部2bの上側端面2b1との間のスラスト軸受隙間、およびハウジング7の上側端面7b1の動圧溝形成領域と、これに対向するフランジ部2bの下側端面2b2との間のスラスト軸受隙間に、各動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、軸部材2をスラスト方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と、第2スラスト軸受部T2とが構成される。
【0039】
また、ハウジング7の下端内部に位置するスラスト軸受部T1、T2のスラスト軸受隙間と、ハウジング7の開口側に形成されるシール空間Sとの間が、ハウジング7の段部7dに形成された径方向溝と軸受スリーブ8の下側端面8cとで構成された流体流路10a、軸受スリーブ8の外周面8bに形成された軸方向溝8eで構成された流体流路10b、およびシール部9の下側端面9bと軸受スリーブ8の上側端面8dとで構成された流体流路10cを介して連通状態となる。これによれば、例えば何らかの理由でスラスト軸受部T1、T2の側の流体(潤滑油)圧力が過度に高まり、あるいは低下するといった事態を避けて、軸部材2をスラスト方向に安定して非接触支持することが可能となる。
【0040】
また、この実施形態では、第1ラジアル軸受部R1の動圧溝8a1は、軸方向中心mに対して軸方向非対称(X1>X2)に形成されているため(図3参照)、軸部材2の回転時、動圧溝8a1による潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。そして、この引き込み力の差圧によって、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間の隙間に満たされた潤滑油が下方に流動し、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間→流体流路10a→流体流路10b→流体流路10cという経路を循環して、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込まれる。このように、潤滑油がハウジング7の内部空間を流動循環するように構成することで、軸受内部の圧力バランスが適正に保たれる。これにより、潤滑油の負圧発生に伴う気泡の生成を防止し、これに伴う潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。
【0041】
本発明の実施形態は上記に限られない。なお、以下の説明において、上記実施形態と同一の機能を有する箇所には、同一の符合を付し、説明を省略する。
【0042】
紫外線照射工程において、上記では球面状の反射面11aが使用されているが、これに限らず、例えば図5に示すように、円錐状の反射面11cを使用することもできる。また、上記では、治具11に反射面11a(11c)および固定面11bが設けられているが、例えば、固定面を有する治具とは別体に形成した反射鏡に、反射面を設けても良い(図示省略)。
【0043】
また、以上では、ハウジング7の外周面7a2に紫外線を照射する場合を示したが、ハウジング7の内周面7a1と軸受スリーブ8とが接着固定される場合は、内周面7a1に紫外線を照射してもよい。この場合、図6に示すように、球面状の反射面12aを有する反射鏡12をハウジング7の内周に配置すると、ハウジング7の上方から照射された紫外線が、反射面12aで反射してハウジング7の内周面7a1に照射される。反射面の形状は球面状に限らず、図7に示すような円錐状の反射面12bで反射させてもよい。
【0044】
また、本発明の製造方法が適用される流体軸受装置の構成は上記に限られない。上記では、ハウジング7を樹脂で形成した場合を示しているが、これに限らず、例えば金属で形成してもよい。金属製のハウジングに紫外線照射をしたときも、上記と同様に濡れ性が向上するため、接着力の向上が図られる。
【0045】
また、上記ではハウジング7を外側部材とし、その外周面や内周面に紫外線が照射される場合を示したが、例えば、軸受スリーブ8を外側部材とし、その外周面8bに紫外線を照射してもよい。特に軸受スリーブ8を樹脂で形成する場合、ハウジング7との固定面となる外周面8bに紫外線を照射し、濡れ性を向上させることが有効となる。
【0046】
また、上記ではコップ状のハウジング7が使用されているが、両端に開口したハウジングを使用することもできる。このとき、ハウジングの一端開口部を別体に形成した底部で閉塞してもよい。あるいは、ハウジングの両端開口部にシール空間を形成してもよい。
【0047】
また、上記ではハウジング7と軸受スリーブ8とが別体に形成されているが、これらを一体成形してもよい。
【0048】
また、ラジアル軸受部R1、R2、およびスラスト軸受部T1、T2の動圧発生部の形状は上記に限らず、例えばラジアル軸受部R1、R2の動圧発生部として、スパイラル形状の動圧溝や、ステップ軸受、あるいは多円弧軸受等を形成することもできる。また、スラスト軸受部T1、T2の動圧発生部として、ヘリングボーン形状の動圧溝や、ステップ軸受、波型軸受等を形成することもできる。
【0049】
また、上記ではラジアル軸受部R1、R2の動圧発生部が軸受スリーブ8の内周面8aに形成されているが、この内周面8aを円筒面とし、これとラジアル軸受隙間を介して対向する軸部2aの外周面2a1に動圧発生部を形成してもよい。また、上記ではスラスト軸受部T1、T2の動圧発生部が軸受スリーブ8の下側端面8c、およびハウジング7の内底面7b1に形成されているが、これらの面とスラスト軸受隙間を介して対向するフランジ部2bの上側端面2b1、および下側端面2b2に形成してもよい。
【0050】
また、軸部材2がフランジ部2bを有さない形状とすることもできる。このとき、軸部材2の下端面とハウジング7の内底面7b1との間にスラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間が形成される。あるいは、軸部材2の下端部に球面状凸部を設け、この凸部の下端とハウジング7の内底面7b1とで、いわゆるピボット軸受を構成することにより、軸部材2をスラスト方向に支持することもできる。
【0051】
また、ラジアル軸受隙間を介して対向する軸部2aの外周面2a1および軸受スリーブ8の内周面8aの双方を円筒面とすることで、ラジアル軸受部をいわゆる真円軸受で構成することもできる。
【0052】
また、以上のような動圧軸受装置1は、HDD等のディスク駆動装置に限らず、光ディスクの光磁気ディスク駆動用のスピンドルモータ、高速回転下で使用される情報機器用の小型モータ、レーザビームプリンタのポリゴンスキャナモータ、あるいは電気機器等に使用されるファンモータ等における回転軸支持用としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】動圧軸受装置1を組込んだスピンドルモータの断面図である。
【図2】動圧軸受装置1の断面図である。
【図3】軸受スリーブ8の(a)断面図、及び(b)下面図である。
【図4】ハウジング7の外周面へ紫外線を照射する工程を示す断面図である。
【図5】ハウジング7の外周面へ紫外線を照射する工程の他の例を示す断面図である。
【図6】ハウジング7の内周面へ紫外線を照射する工程を示す断面図である。
【図7】ハウジング7の内周面へ紫外線を照射する工程の他の例を示す断面図である。
【図8】ハウジング7へ紫外線を照射する従来の工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
9 シール部
11 治具
11a、11c 反射面
12 反射鏡
12a、12b 反射面
L1、L2 紫外線
P 光源
θ1、θ2 照射角
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S シール空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を有する内側部材と、内周に軸部を挿入した外側部材と、軸部の外周面が面するラジアル軸受隙間とを備え、ラジアル軸受隙間に生じる油膜で内側部材を回転自在に支持する流体軸受装置を製造するための方法であって、
外側部材のうち、他部材を接着固定するための固定面の少なくとも一部に、反射面で反射させた紫外線を照射することを特徴とする流体軸受装置の製造方法。
【請求項2】
ラジアル軸受隙間から大気開放側につながるシール空間を備え、シール空間の大気開放側に撥油剤を塗布し、該撥油剤の塗布面を、反射面を備えた治具で紫外線から遮へいする請求項1記載の流体軸受装置の製造方法。
【請求項3】
反射面を外側部材の外周に配置する請求項1記載の流体軸受装置の製造方法。
【請求項4】
反射面を外側部材の内周に配置する請求項1記載の流体軸受装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−75819(P2008−75819A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257804(P2006−257804)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】