説明

流動層乾燥装置、流動層乾燥設備および湿潤原料乾燥方法

【課題】投入領域近傍に投入された湿潤原料が閉塞することを抑制しつつ、湿潤原料を均一に乾燥させることができる流動層乾燥装置、流動層乾燥設備および流動層乾燥方法を提供する。
【解決手段】乾燥室およびチャンバ室を備える乾燥容器と、投入部と、排出部と、前記チャンバ室から前記乾燥室内にガスを供給可能な貫通孔が形成されたガス分散板と、乾燥室で湿潤原料と共に流動層を形成する流動化ガスを、チャンバ室に供給する流動化ガス供給部と、流動化ガスが供給されて形成された流動層の湿潤原料が乾燥されることにより発生する発生蒸気を乾燥容器の上方から排出する蒸気排出部と、乾燥室の流動層が形成される領域のうち投入部側の領域に配置され、乾燥容器の幅方向に延在する軸と、軸と連結し前記軸から離れる方向に延びた枝部および軸を回転させる駆動部を備え、前記軸が回転軸として回転する回転部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤原料を流動させながら乾燥させる流動層乾燥装置、流動層乾燥設備および湿潤原料乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭ガス化複合発電設備は、石炭をガス化し、コンバインドサイクル発電と組み合わせることにより、従来型の石炭火力に比べてさらなる高効率化・高環境性を目指した発電設備である。この石炭ガス化複合発電設備は、資源量が豊富な石炭を利用可能であることも大きなメリットであり、適用炭種も拡大できることが知られている。
【0003】
このような石炭ガス化複合発電設備は、褐炭(湿潤原料)を燃料として用いた場合、ガス化炉内に持ち込まれる水分量が多く、この水分の蒸発潜熱のためガス化炉内温度が低下し発電効率が低下してしまう。高水分炭の利用のためには流動層乾燥装置を設け、この流動層乾燥装置により石炭を乾燥して水分を除去してから粉砕して石炭ガス化炉に供給する必要がある。
【0004】
従来、このような褐炭等の被乾燥物を乾燥する流動層乾燥装置は、底部が多数の開孔を有する通気可能な分散板である乾燥室と、乾燥室下部に位置するチャンバ室とを備えている。すなわち、この流動層乾燥装置は、流動化ガス(乾燥用気体)を風箱から多孔板を介して乾燥室に供給することによって被乾燥物を流動させつつ乾燥させている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−89243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、流動層乾燥装置に投入される材料は水分を多く含んだ湿潤原料である。そのため、投入直後で乾燥されていない湿潤原料は滞留したり沈降したりしやすい。流動層乾燥装置内で湿潤原料の滞留や沈降が生じると、一部領域で被乾燥物の流動不良が発生する恐れがある。一部領域で流動不良が生じると、湿潤原料が乾燥されずに次の領域に移動するため、十分な乾燥が行えない恐れがある。また、湿潤原料の乾燥状態が不均一になる恐れもあり、一度流動不良が生じれば乾燥装置内部の熱伝達挙動が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、投入領域近傍に投入された湿潤原料が閉塞することを抑制しつつ、湿潤原料を均一に乾燥させることができる流動層乾燥装置、流動層乾燥設備および湿潤原料乾燥方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の流動層乾燥装置は、湿潤原料が乾燥される乾燥室および前記乾燥室よりも下方に設けられたチャンバ室を備える乾燥容器と、前記乾燥容器の一方の端部に前記湿潤原料を投入する投入部と、前記乾燥容器の他方の端部から湿潤原料が加熱乾燥した乾燥物を排出する排出部と、前記チャンバ室から前記乾燥室内にガスを供給可能な貫通孔が形成されたガス分散板と、前記乾燥室で湿潤原料と共に流動層を形成する流動化ガスを、前記チャンバ室に供給する流動化ガス供給部と、前記流動化ガスが供給されて形成された前記流動層の前記湿潤原料が乾燥されることにより発生する発生蒸気を前記乾燥容器の上方から排出する蒸気排出部と、前記乾燥室の前記流動層を攪拌するための回転部を備え、前記乾燥室の前記流動層が形成される領域のうち前記投入部側の領域に配置され、前記乾燥容器の幅方向に延在する軸、前記軸と連結し前記軸から離れる方向に延びた枝部および前記軸を回転させる駆動部を備え、前記軸が回転軸として回転する回転部と、を有することを特徴とする。
【0009】
流動層乾燥装置は、上記構成とすることで、回転部で流動層の湿潤原料を攪拌することができ、投入領域近傍に投入された湿潤原料によって閉塞することを抑制しつつ、湿潤原料を均一に乾燥させることができる。
【0010】
ここで、前記回転部は、前記枝部の前記軸から遠い側の端部が回転方向に向けて折れ曲がった形状であることが好ましい。これにより、より好適に湿潤原料を攪拌することができる。
【0011】
また、前記回転部は、前記回転部を構成する前記軸を2つ有し、2つの前記軸は、前記投入部から前記排出部に向かう方向に隣接して配置され、2つの前記軸の回転方向は互いに逆方向であり、2つの前記軸は前記軸同士の間で前記枝部の折れ曲がった前記端部が上向きになるように回転することが好ましい。これにより、より好適に湿潤原料を攪拌することができる。
【0012】
また、前記回転部の前記軸および前記枝部の内部には、中空部が形成されて、且つ、互いに繋がっており、前記枝部は、前記中空部から外部に到達する噴出し穴が複数形成されており、前記中空部に蒸気を供給する蒸気供給装置をさらに有し、前記蒸気供給装置から供給された蒸気を前記噴出し穴から外部に排出することが好ましい。これにより、より好適に湿潤原料を攪拌することができ、湿潤原料を乾燥させることができる。
【0013】
前記駆動部は、前記蒸気供給装置であり、前記軸は、前記枝部から排出される蒸気の力で回転することが好ましい。これにより、原動機等を設けることなく、回転させることができる。また、蒸気の力のみで回転する事が困難な場合は電動機等の回転機構によって回転する事も望ましい。
【0014】
前記乾燥室の内部に配置され、前記投入部から前記排出部に向かう方向において前記乾燥室を複数の分室に分割する分割板を有し、前記回転部は、少なくとも前記投入部側の端部の分室に配置されていることが好ましい。これにより、より好適に湿潤原料を攪拌することができ、好適に湿潤原料を乾燥させることができる。
【0015】
前記乾燥室内に前記流動層の湿潤原料を加熱する加熱部をさらに備え、前記加熱部は、前記幅方向に延在した形状であり、前記分室のそれぞれに配置されていることが好ましい。これにより、より好適に湿潤原料を乾燥させることができる。
【0016】
本発明の流動層乾燥設備は、湿潤原料を乾燥可能な請求項1から8のいずれか1項に記載の流動層乾燥装置と、前記蒸気排出部から排出される前記発生蒸気を外部に排出する発生蒸気ラインと、前記発生蒸気ラインに介装され、前記発生蒸気中の粉塵を除去する集塵装置と、前記発生蒸気ラインにおける前記集塵装置の下流側に介装され、前記発生蒸気の熱を回収する熱回収システムと、前記集塵装置から粉塵が除去された前記発生蒸気の一部を供給し、前記流動化ガスとして前記流動化ガス供給部に供給するラインと、前記排出部から排出された前記湿潤原料を乾燥させた乾燥物を冷却する冷却器を備えたことを特徴とする。
【0017】
流動層乾燥設備は、上記構成とすることで、湿潤原料を乾燥した際に発生する蒸気を有効活用することができる。
【0018】
本発明は、 湿潤原料が乾燥される乾燥室および前記乾燥室よりも下方に設けられたチャンバ室を備える乾燥容器を備えた湿潤原料乾燥方法であって、前記乾燥容器の一方の端部に前記湿潤原料を投入する工程と、前記乾燥容器の他方の端部から前記湿潤原料が乾燥した乾燥物を排出する工程と、前記チャンバ室内に流動化ガスを供給する工程と、前記チャンバ室から前記乾燥室内に前記流動化ガスを供給可能な貫通孔が形成されたガス分散板を介して乾燥室内に供給し、前記乾燥室で前記湿潤原料と共に流動層を形成する工程と、前記流動化ガスが供給されて形成された前記流動層の前記湿潤原料が乾燥されることにより発生する発生蒸気を前記乾燥容器の上方から排出する工程と、前記乾燥室の前記流動層が形成される領域のうち前記湿潤原料が投入される側の領域に配置され、前記乾燥容器の幅方向に延在する軸と、前記軸と連結し前記軸から離れる方向に延びた枝部および前記軸を回転させる駆動部を備えた回転部の前記軸を回転軸として回転させることによって前記乾燥室内の前記流動層を攪拌する工程とを具備したことを特徴とする。
【0019】
流動層乾燥装置は、上記方法とすることで、回転部で流動層の湿潤原料を攪拌することができ、投入領域近傍に投入された湿潤原料によって閉塞することを抑制しつつ、湿潤原料を均一に乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の流動層乾燥装置、流動層乾燥設備および湿潤原料乾燥方法によれば、投入領域近傍に投入された湿潤原料が閉塞することを抑制しつつ、湿潤原料を均一に乾燥させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本実施形態の流動層乾燥設備を適用した石炭ガス化複合発電システムの一実施形態を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示す流動層乾燥装置を備える流動層乾燥設備の一実施形態を示す概略図である。
【図3】図3は、図2に示す流動層乾燥装置の一実施形態を示す概略図である。
【図4】図4は、図3に示す流動層乾燥装置の上面図である。
【図5】図5は、第1回転機構の枝部の概略構成を示す概略図である。
【図6】図6は、第2回転機構の枝部の概略構成を示す概略図である。
【図7】図7は、流動層乾燥設備の他の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下、実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。本実施形態では、本発明に係る流動層乾燥設備を石炭ガス化複合発電システムに適用した例を説明するが、本発明の適用対象は石炭ガス化複合発電システムに限定されるものではない。例えば、流動層乾燥設備で乾燥した製品炭を用いた発電システムとして流動層乾燥設備で乾燥した製品炭をボイラ火炉に供給し、当該ボイラ火炉で発生した蒸気で蒸気タービンを駆動して発電機により出力を得る石炭焚きボイラによる発電システムに用いることもできる。また、本発明を石炭ガス化複合発電システムに適用する場合でも、その方式は問わない。また、本実施形態では、湿潤原料(被乾燥物)として褐炭を用いる場合で説明するが、水分含量の高いものであればよく、亜瀝青炭等を含む低品位炭や、スラッジ等を用いることもできる。
【0023】
図1は、本実施形態の流動層乾燥設備を適用した石炭ガス化複合発電システムの一例を示す概略図である。図2は、図1に示す流動層乾燥装置を備える流動層乾燥設備の一例を示す概略図である。
【0024】
図1に示すように、石炭ガス化複合発電(Integrated Coal Gasification Combined Cycle:IGCC)システム10は、燃料である褐炭132を乾燥させて製品炭140とする流動層乾燥設備100と、製品炭140を粉砕して微粉炭40とするミル20と、微粉炭40を処理してガス化ガス42に変換する石炭ガス化炉13と、前記ガス化ガス42を燃料として運転されるガスタービン(GT)14と、ガスタービン14からのタービン排ガス46を導入する排熱回収ボイラ(Heat Recovery Steam Generator:HRSG)16と、排熱回収ボイラ16で生成した蒸気48により運転される蒸気タービン(ST)18と、ガスタービン14および/または蒸気タービン18と連結された発電機(G)19と、を備える。また、石炭ガス化複合発電システム10は、蒸気タービン18から排出された蒸気を凝縮し排熱回収ボイラ16に戻す復水器34と、ガスタービン14と連結されガスタービン14と共に回転し、空気54を圧縮する圧縮機36と、空気を窒素(N)と酸素(O)とに分離し、分離した酸素を圧縮機36で圧縮された空気が流れる配管に供給し、窒素をミル20から石炭ガス化炉13に搬送される微粉炭40の搬送経路に供給する空気分離装置(ASU)38と、を備える。なお、圧縮機36が圧縮した空気54は、石炭ガス化炉13と燃焼器26とに供給される。
【0025】
この石炭ガス化複合発電システム10は、流動層乾燥設備100で褐炭132を乾燥させて製品炭140を生成し、この製品炭140をミル20で粉砕した微粉炭40を石炭ガス化炉13でガス化し、生成ガスであるガス化ガス42を得る。石炭ガス化複合発電システム10は、ガス化ガス42をサイクロン22およびガス精製装置24で除塵およびガス精製した後、発電手段であるガスタービン14の燃焼器26に供給し、ここで燃焼して高温・高圧の燃焼ガス50を生成する。そして、石炭ガス化複合発電システム10は、この燃焼ガス50によってガスタービン14を駆動する。石炭ガス化複合発電システム10は、ガスタービン14が発電機19と連結されており、ガスタービン14を駆動することによって発電機19で電力を発生させる。ここで、ガスタービン14を駆動した後のタービン排ガス46は、まだ約500〜600℃の温度を持っている。石炭ガス化複合発電システム10は、タービン排ガス46を排熱回収ボイラ(HRSG)16に送り、排熱回収ボイラ(HRSG)16でタービン排ガス46の熱エネルギーを回収する。石炭ガス化複合発電システム10は、排熱回収ボイラ(HRSG)16で、タービン排ガス46から回収した熱エネルギーによって蒸気48を生成し、この蒸気48によって蒸気タービン18を駆動する。石炭ガス化複合発電システム10は、排熱回収ボイラ(HRSG)16でタービン排ガス46から熱エネルギーを回収したガスである排ガス52から、ガス浄化装置30でNOxおよびSOx分を除去した後、煙突32を介して大気中へ放出する。
【0026】
以下、図2を用いて、流動層乾燥設備100について説明する。図2に示すように、流動層乾燥設備100は、被乾燥物として湿潤原料の1つである水分含量が高い褐炭132を供給する供給ホッパ101と、供給された褐炭132を乾燥させる流動層乾燥装置102と、流動層乾燥装置102から排出される発生蒸気134中の粉塵を除去する集塵装置105と、流動層乾燥装置102から抜き出された乾燥褐炭138を冷却して製品炭140とする冷却器110と、集塵装置105の下流側に介装され、発生蒸気134の熱を回収する熱回収システム111と、熱回収システム111で熱を回収された発生蒸気134を処理して排水142として排出する水処理部112と、集塵装置105から排出された発生蒸気134の一部を流動化蒸気136として流動層乾燥装置102に供給する循環装置114を備える。
【0027】
また、流動層乾燥設備100は、各部を接続する配管として、褐炭132を乾燥させる際に発生する発生蒸気134を流動層乾燥装置102の外部に排出し集塵装置105に案内する発生蒸気ラインLと、集塵装置105から粉塵が除去された発生蒸気134の一部を流動化蒸気(流動化ガス)136として流動層乾燥装置102内に供給するラインLと、集塵装置105で集塵された褐炭144を乾燥褐炭138が排出される配管に供給する分離ラインLと、乾燥褐炭138および固形成分144を冷却器110で冷却して生成した製品炭140を排出する製品ラインLを備える。
【0028】
供給ホッパ101は、褐炭132を貯留する設備である。供給ホッパ101は、貯留している褐炭132を流動層乾燥装置102内に供給する。
【0029】
流動層乾燥装置102は、供給ホッパ101から供給される褐炭132と流動化蒸気136とで流動層を形成し褐炭132で移動させつつ、加熱手段で加熱することで褐炭132を乾燥させ乾燥褐炭138とする。また、流動層乾燥装置102は、流動化蒸気136と褐炭132の乾燥時に生じる蒸気とが混合され発生蒸気134となる。流動層乾燥装置102は、内部に設けられた加熱手段としての伝熱部材(加熱部)128と、伝熱部材128に過熱蒸気(高温ガス)Aを供給可能な過熱蒸気供給装置(高温ガス供給手段)129と、内部に蒸気Cを供給する蒸気供給管166と、蒸気供給管166を流れた蒸気Dを回収する蒸気回収管167と、蒸気供給管166および蒸気回収管167に連結して蒸気供給管166に蒸気を供給し、蒸気回収管167を流れる蒸気を回収する蒸気供給装置168と、を備える。流動層乾燥装置102の構成については後述する。
【0030】
集塵装置105は、サイクロン、ポーラスフィルタ、電気集塵機等であり、発生蒸気134中に含まれる褐炭(固形成分)を分離する。ここで、発生蒸気134は、褐炭132の微粉成分を含んでいる。集塵装置105は、発生蒸気134に含まれている褐炭132が乾燥し微粉化した固形成分144を集塵して分離する。集塵装置105は分離した固形成分144を、分離ラインLに供給する。分離ラインLに供給された固形成分144は、通過して流動層乾燥装置102から抜き出された乾燥褐炭138に合流して混合される。
【0031】
冷却器110は、通過して流動層乾燥装置102から抜き出された乾燥褐炭138に固形成分144が混合された乾燥粉体を冷却する。冷却器110は、冷却した粉体を製品炭140として製品ラインLから排出する。この製品炭140は、上述したように、ガス化炉13に供給される。
【0032】
熱回収システム111は、発生蒸気134の熱を熱交換等で回収するシステムである。熱回収システム111は、この発生蒸気134に対して熱回収を行う。水処理部112は、熱回収システム111で熱回収された発生蒸気134を処理する処理装置である。水処理部112は、熱回収システム111で熱回収された発生蒸気134を処理し、排水142として流動層乾燥設備100の外部に排出する。
【0033】
また、循環装置114は、ラインLに介装されており、ラインLを流れる空気を所定方向に送る。具体的には、集塵装置105は、ラインLを流れる集塵された後の発生蒸気134の一部を流動層乾燥装置102内に送る。なお、流動層乾燥装置102内に送られる発生蒸気134は、褐炭132の流動層を流動させる流動化蒸気136として利用される。なお、本実施形態の流動層乾燥設備100は、流動層を流動化させる流動化媒体として、発生蒸気134の一部を再利用しているが、これに限定されず、例えば窒素、二酸化炭素またはこれらのガスを含む低酸素濃度の空気を用いてもよい。
【0034】
また、本実施形態の流動層乾燥設備100は、集塵装置105により集塵した後の発生蒸気134の一部を熱回収システム111で利用し、残りの部分を流動化蒸気として利用したが、これに限定されない。本実施形態の流動層乾燥設備100は、集塵装置105により集塵した後の発生蒸気134の熱を有効利用するようにしてもよい。
【0035】
この石炭ガス化複合発電システム10によれば、高い水分を有する褐炭132を用いてガス化する場合においても、効率的な流動層乾燥装置102により褐炭132を乾燥しているので、ガス化炉内温度を低下させる影響が少なく、ガス化効率が向上し、長期間に亙って安定して発電を行うことができる。
【0036】
次に図3から図6を用いて、流動層乾燥装置102について説明する。ここで、図3は、図2に示す流動層乾燥装置の一実施形態を示す概略図であり、図4は、図3に示す流動層乾燥装置の上面図であり、図5は、第1回転機構の枝部の概略構成を示す概略図であり、図6は、第2回転機構の枝部の概略構成を示す概略図である。
【0037】
流動層乾燥装置102は、内部に褐炭132が投入される乾燥容器120と、褐炭132を乾燥容器120内に投入する投入部(投入口)122と、褐炭132を乾燥させた乾燥褐炭132を排出する排出部(排出口)123と、乾燥容器120の内部に設けられたガス分散板124と、流動化ガス136を乾燥容器120に供給する流動化ガス供給部(流動化ガス供給口)126と、発生蒸気134を排出する蒸気排出部(蒸気排出口)127と、回転部160と、を備える。また、流動層乾燥装置102は、上述したように、内部に設けられた加熱手段としての伝熱部材128と、伝熱部材128に過熱蒸気(高温ガス)Aを供給可能な過熱蒸気供給装置(高温ガス供給手段)129と、内部に蒸気を供給する蒸気供給管166と、蒸気供給管166を流れた蒸気を回収する蒸気回収管167と、蒸気供給管166および蒸気回収管167に連結して蒸気供給管166に蒸気を供給し、蒸気回収管167を流れる蒸気を回収する蒸気供給装置168とを備える(図2参照)。
【0038】
乾燥容器120は、ガス分散板124によって内部の空間が、鉛直方向上方側(図示上側)に位置する乾燥室150と鉛直方向下方側(図示下側)に位置するチャンバ室152とに区分けされている。なお、乾燥室150は、褐炭132が供給され乾燥される領域であり、チャンバ室152は、流動化ガス136が供給される領域である。乾燥容器120は、チャンバ室152に供給された流動化ガス136がガス分散板124を通過して乾燥室150に供給される。乾燥室150は、流動化ガス136により褐炭132が流動されることで、流動層155が形成される。
【0039】
投入部122は、乾燥容器120の乾燥室150の一方の端部に連結されている。投入部122は、供給ホッパ101と連結しており、供給ホッパ101から供給された褐炭132を一方の端部の乾燥室150に投入する。排出部123は、乾燥容器120の乾燥室150の他方の端部の鉛直方向下側、つまり、ガス分散板124の近傍に連結されている。排出部123は、冷却器110と連結した配管と連結しており、当該配管に乾燥室150内の乾燥褐炭138を排出する。
【0040】
また、ガス分散板124は、多数の貫通孔124aが形成されている。ガス分散板124は、乾燥室150内の褐炭132がチャンバ室152内に落下することを抑制しつつ、乾燥室150とチャンバ室152との間でガスが流通可能な状態とする。流動化ガス供給部126は、チャンバ室152に連結しており、ラインLから供給される流動化ガス136をチャンバ室152内に供給する。蒸気排出部127は、乾燥容器120の上面に連結されている。蒸気排出部127は、乾燥容器120内の発生蒸気134を発生蒸気ラインLに案内する。
【0041】
ここで、流動層乾燥装置102は、乾燥室150の内部に配置された複数、本実施形態では4枚の分割板154を備える。分割板154は、乾燥室150の幅方向及び鉛直方向に延在する板であり、投入部122と排出部123とを結んだ線に直交する面が正面(面積が最も大きい面)となる板である。また、本実施形態では分割板の枚数を4枚としたがこれに限るものではなく最も相応しい枚数にて構成される。分割板154は、図3に示すように、鉛直方向下側の端部がガス分散板124と接しており、鉛直方向上側の端部が流動層155の上端よりも下側の位置となる。また、分割板154は、図4に示すように(図4中上下方向)幅方向においては、乾燥室150全域に配置されている。また、複数の分割板154は、投入部122から排出部123に向かう方向に所定の間隔で配置されている。これにより、流動層乾燥装置102は、複数の分割板154によって乾燥容器120の乾燥室150内が投入部122から排出部123に向かう方向において複数の乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eに分割される。なお、乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eは、投入部122から排出部123に向かって、乾燥分室150a、乾燥分室150b、乾燥分室150c、乾燥分室150d、乾燥分室150eの順で配置されている。また、チャンバ室152も、乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eに対応して5つのチャンバ分室152a、152b、152c、152d、152eに分割されている。
【0042】
また、流動化ガス供給部126は、チャンバ分室152a、152b、152c、152d、152eに対応して設けられており、それぞれのチャンバ分室152a、152b、152c、152d、152eに流動化ガス136を供給する。伝熱部材128は、乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eのそれぞれの流動層155に幅方向に延在する向きで配置されている。
【0043】
流動層乾燥装置102は、供給ホッパ101により褐炭132が乾燥容器120の乾燥分室150a内に投入され、チャンバ分室152aに流動化蒸気136が導入される。チャンバ室152a内に導入された流動化蒸気136は、ガス分散板124の貫通孔124aを通過して乾燥分室150a内に流入する。乾燥分室150a内に流入した流動化蒸気136は、乾燥分室150a内に投入された褐炭132を吹き上げ、流動させる。これにより、流動層乾燥装置102は、乾燥分室150a内に、褐炭132が流動する流動層155が形成される。乾燥分室150aで流動化された褐炭132の一部は、分割板154よりも鉛直方向上側に移動し、矢印156aに示す方向に移動し、乾燥分室150bに移動する。
【0044】
流動層乾燥装置102は、チャンバ分室152bにも流動化蒸気136が導入される。チャンバ室152b内に導入された流動化蒸気136は、ガス分散板124の貫通孔124aを通過して乾燥分室150b内に流入する。乾燥分室150b内に流入した流動化蒸気136は、乾燥分室150b内に投入された褐炭132を吹き上げ、流動させる。これにより、流動層乾燥装置102は、乾燥分室150b内に、褐炭132が流動する流動層155が形成される。乾燥分室150bで流動化された褐炭132の一部は、分割板154よりも鉛直方向上側に移動し、矢印156bに示す方向に移動し、乾燥分室150cに移動する。流動層乾燥装置102は、乾燥分室150c、150d、150eでも同様に移動した褐炭132が供給される流動化ガス136とともに流動層155を構成する。また、乾燥分室150cの流動層155の褐炭132の一部は、分割板154よりも鉛直方向上側に移動し、矢印156cに示す方向に移動し、乾燥分室150dに移動する。乾燥分室150dの流動層155の褐炭132の一部は、分割板154よりも鉛直方向上側に移動し、矢印156dに示す方向に移動し、乾燥分室150eに移動する。流動層乾燥装置102は、乾燥分室150eで流動層155となっている褐炭132のうち、排出部123に到達した褐炭138を乾燥褐炭138として排出部123から排出する。
【0045】
このように、流動層乾燥装置102は、乾燥室150の鉛直方向下方側の部分である乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eを含む部分に流動層155が形成される。褐炭132は、投入部122で投入された後、流動層155を構成して移動され、乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eをこの順で順番に通過し、排出部123から排出される。なお、褐炭132は、乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eの通過時に徐々に乾燥され、排出部123からの排出時には乾燥褐炭138となっている。
【0046】
流動層乾燥装置102は、乾燥室150の流動層155よりも鉛直方向上方側の部分にフリーボード部Fが形成される。このフリーボード部Fは、流動層155の褐炭132が乾燥されることにより発生蒸気134が発生する領域となる。なお、流動化蒸気136は、一定温度以上の蒸気であり、褐炭132を流動させつつ加熱することで、褐炭132を乾燥させる。
【0047】
次に、伝熱部材128は、上述したように、乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eの流動層155が形成される領域に配置されている。伝熱部材128は、流動層155の褐炭132を加熱し、褐炭132中の水分を除去する加熱手段であり、過熱蒸気Aが流通可能な配管である。伝熱部材128は、内部に供給されて流通される高温の過熱蒸気Aの潜熱を利用して流動層155を構成する褐炭132を乾燥させる。伝熱部材128は、乾燥に利用された過熱蒸気Aを凝縮水Bとして流動層乾燥装置102の外部に排出する。
【0048】
すなわち、伝熱部材128は、流動層155と接している領域で過熱蒸気Aを凝縮させて液体(水分)にすることで、この際に放熱される凝縮潜熱で褐炭132の乾燥の加熱に有効利用する。なお、伝熱部材128に流通させる高温の過熱蒸気Aとしては、相変化を伴う熱媒であればいずれでもよく、例えばフロンやペンタンやアンモニア等を例示することができる。また、伝熱部材128は、熱媒体を流通させる配管を用いる構成に限定されない。伝熱部材128は、褐炭132に熱を供給し乾燥させることができればよく、例えば電気ヒータを設置してもよい。なお、伝熱部材128によって褐炭132が乾燥される際に発生する発生蒸気134は、鉛直方向上方側(発生蒸気134の流れ方向の下流側)のフリーボード部Fへ流れる。過熱蒸気供給装置129は、加熱ラインLを介して、伝熱部材128に過熱蒸気Aを供給している。
【0049】
流動層乾燥装置102において、流動層155の内部に設けられた伝熱部材128は、流動層155の褐炭132を加熱することにより、褐炭132を乾燥させる。褐炭132を乾燥させることにより発生した発生蒸気134は、流動層155からフリーボード部Fに流れ込む。そして、フリーボード部Fに流れ込んだ発生蒸気134は、蒸気排出部127から流動層乾燥装置102の外部に排出される。蒸気排出部127から排出された発生蒸気134は、発生蒸気ラインLに供給される。
【0050】
流動層乾燥装置102は、さらに、回転部160を備える。回転部160は、乾燥分室150aの流動層155を攪拌する機構であり、第1回転機構162と、第2回転機構164と、を備える。また、回転部160は、上述した、内部に蒸気Cを供給する蒸気供給管166と、蒸気供給管166を流れた蒸気Dを回収する蒸気回収管167と、蒸気供給管166および蒸気回収管167に連結して蒸気供給管166に蒸気を供給し、蒸気回収管167を流れる蒸気を回収する蒸気供給装置168を備える。
【0051】
第1回転機構162は、軸170aと、枝部172aと、駆動部174aを有する。軸170aは、内部が中空の中空部が形成された直管であり、乾燥分室150aを幅方向に貫通して配置されている。つまり、直管の軸が幅方向と平行な向きで配置されている。また、軸170aは、乾燥分室150aの流動層155を通過する位置に配置されている。
【0052】
枝部172aは、軸170aに連結した部材であり、軸170aに対して複数配置されている。枝部172aは、幅方向に一定間隔で配置されている。1つの枝部172aは、図5に示すように、軸170a周りの周方向において、一定角度間隔で配置された4本の直線部180と、直線部180の軸170aから離れる方向の端部にそれぞれ配置された折れ曲がり部182と、を有する。直線部180は、一方の端部が軸170aと連結しており、軸170aから離れる方向に延びている。折れ曲がり部182は、周方向、つまり軸方向に直交する面において、直線部180に直交する方向に折れ曲がっている。本実施形態の折れ曲がり部182は、直線部180に対して、軸170aおよび枝部172aの回転方向186に向かって折れ曲がっている。枝部172aを構成する直線部180、折れ曲がり部182も内部に中空部が形成された管であり、内部の空間は、軸170aの空間と繋がっている。また、枝部172aは、内部の空間から表面まで繋がった噴出し穴184が多数形成されている。
【0053】
駆動部174aは、モータ等の駆動機構であり、軸170aと連結している。駆動部174aは、軸170aを回転軸として軸170aおよび枝部172aを、回転方向186に回転させる。
【0054】
第2回転機構164は、軸170bと、枝部172bと、駆動部174bと、を有する。軸170bは、内部に中空部が形成された直管であり、乾燥分室150aを幅方向に貫通して配置されている。つまり、直管の軸が幅方向と平行な向きで配置されている。また、軸170bは、乾燥分室150aの流動層155を通過する位置に配置されている。また、軸170bは、軸170aよりも排出部123側で軸170aに隣接した位置に配置されている。
【0055】
枝部172bは、軸170bに連結した部材であり、軸170bに対して複数配置されている。枝部172bは、幅方向に一定間隔で配置されている。なお、枝部172bは、幅方向の位置が枝部172aと重ならない位置に配置されている。1つの枝部172bは、図6に示すように、軸170b周りの周方向において、一定角度間隔で配置された4本の直線部190と、直線部190の軸170bから離れる方向の端部にそれぞれ配置された折れ曲がり部192と、を有する。なお、枝部172bは、折れ曲がり部192の折れ曲がり方向が異なる点を除いて基本的な形状は、枝部172aと同様である。本実施形態の折れ曲がり部192は、直線部190に対して、軸170bおよび枝部172bの回転方向196に向かって折れ曲がっている。枝部172bも、内部の空間から表面まで繋がった噴出し穴194が多数形成されている。
【0056】
駆動部174bは、モータ等の駆動機構であり、軸170bと連結している。駆動部174bは、軸170bを回転軸として軸170bおよび枝部172bを、回転方向196に回転させる。
【0057】
次に、蒸気供給管166は、軸170a、170bのそれぞれの一方の端部と連結している。蒸気回収管167、軸170a、170bのそれぞれの他方の端部と連結している。蒸気供給装置168は、蒸気供給管166に蒸気を供給し、蒸気回収管167を流れる蒸気を回収する。なお、蒸気供給装置168は、蒸気として褐炭132よりも高温の蒸気、例えば過熱蒸気を供給することが好ましい。
【0058】
回転部160は、乾燥分室150a内で、第1回転機構162と第2回転機構164とをそれぞれ回転方向186、196に回転させることで、流動層155の褐炭132が乾燥分室150a内で循環する流れを形成する。
【0059】
回転部160は、蒸気供給装置168から供給された蒸気Cを、蒸気供給管166から軸170a、170bの内部の空間に供給し、軸170a、170bおよび枝部172a、172bに流す。また、回転部160は、蒸気Cの一部を枝部172a、172bの噴出し穴184、194から外部、つまり流動層155に向けて排出する。噴出し穴184、194から排出されなかった蒸気は、軸170a、170bから蒸気回収管167に到達し、蒸気回収管167から蒸気供給装置168に戻される。
【0060】
流動層乾燥装置102は、本実施形態のように投入部122から投入された褐炭132を乾燥させる乾燥分室150aに回転部160を設け、回転部160を回転させて流動層155を攪拌することで、乾燥分室150a内で褐炭132が滞留、沈降することを抑制することができる。これにより、乾燥分室150a内で褐炭132が閉塞することを抑制することができる。さらに、回転部160の枝部172a、172bの噴出し穴184、194から蒸気を排出することで、褐炭132をより流動化させることができ、かつ乾燥させることができる。
【0061】
また回転部160は、枝部172a、172bに折れ曲がり部182、192を設けた形状とすることで、褐炭132をより効率よく攪拌することができる。また、回転部160は、対抗する第1回転機構162と第2回転機構164の軸170a、170b同士の間で枝部172a、172bの折れ曲がり部182、192が上向きになるように回転させることで、乾燥分室150a内の流れの向きを、第1回転機講162と第2回転機講164同士の間で上方に流れ、第1回転機講162と第2回転機講164同士の外側で下方に流れる向きとすることができる。これにより、乾燥分室150a内で褐炭132が滞留、沈降することをより確実に抑制することができる。
【0062】
また、回転部160は、枝部172a、172bの折れ曲がり部182、192の折れ曲がる方向を回転方向側に折れ曲がる形状とすることで、褐炭132をより確実に攪拌することができる。
【0063】
また、流動層乾燥装置102は、乾燥室150を複数の乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eに分割し、投入部122から排出部123まで移動する間に複数の乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eを順番に通過する構成とすることで、褐炭をより均一に乾燥させることができる。つまり、流動層155の流れによって短時間で排出部123まで到達する褐炭132や、長時間経過しても排出部123に到達しない褐炭132が生じることを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態のように、流動層155の上側の一部の褐炭132が次の乾燥分室に移動する構成とすることで、1つの乾燥分室の中で含有水分が比較的少なく上側に移動している褐炭132を次の乾燥分室に移動させることができる。つまり、当該乾燥分室の中で含有水分が比較的多く、乾燥されていない褐炭132は、重いため、乾燥分室の下側に移動され、当該乾燥分室の中で乾燥させることができる。これにより、褐炭132は、それぞれの乾燥分室150a、150b、150c、150d、150eで一定程度まで乾燥された後に次の乾燥分室に移動するため、排出部123に到達した状態では、高い確率で一定程度まで乾燥された状態とすることができる。
【0065】
ここで、本実施形態の流動層乾燥装置102は、回転部160を乾燥分室150aのみに設けたが本発明はこれに限定されない。例えば、流動層乾燥装置102は、乾燥分室150bにも回転部160を設けてもよいし、全ての乾燥分室に設けてもよい。なお、褐炭132は、投入部122側が最も水分が多く、滞留、沈降しやすいので、回転部160は、投入部122側の乾燥分室に設けることが好ましい。
【0066】
また、本実施形態の流動層乾燥装置102は、枝部172a、172bに折れ曲がり部182、192を設けることで、褐炭132をより攪拌することができる。なお、本実施形態の流動層乾燥装置102は、上記効果を得ることができるため、折れ曲がり部182、192を設けることが好ましいが、必ずしも設けなくてもよい。
【0067】
また、本実施形態の流動層乾燥装置102は、枝部172a、172bに噴出し穴184、194を設け、蒸気を排出させることで、褐炭132をより攪拌することができ、かつ褐炭132を乾燥させることができる。なお、本実施形態の流動層乾燥装置102は、上記効果を得ることができるため、噴出し穴184、194を設け、蒸気を排出させることが好ましいが、必ずしも設けなくてもよい。つまり、蒸気を噴出させない構成としてもよい。
【0068】
また、回転部160の軸170a、170bおよび枝部172a、172bは、加熱手段により過熱することが好ましい。これにより、回転部160で生じる熱により褐炭132を乾燥させることができる。なお、回転部160は、上記効果を得ることができなくなるが、加熱しない構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、回転部160と伝熱部材128とを別々に設けたが、一体としてもよい。つまり、回転部160として、伝熱部材128に枝部を配置し、伝熱部材128を回転させる機構としてもよい。このように、伝熱部材128と回転部160とを一体とすることで、乾燥分室150a内に設置する部材を少なくすることができ、褐炭132をより移動しやすくすることができる。
【0070】
また、回転部160は、本実施形態のように、上記効果をより好適に得ることができるため、2つの回転機構を設け異なる方向に回転させることが好ましいがこれに限定されない。回転機構を1つしてもよいし、2つの回転機構を同じ方向に回転させるようにしてもよい。流動層乾燥装置102は、乾燥室150の流動層155が形成される領域に回転部160を設けることで褐炭132の滞留、沈降を抑制することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、回転部160の駆動部174a、174bとして、モータを用いたが、本発明はこれに限定されない。駆動部として蒸気機関を用いてもよい。つまり、回転部160は、噴出し穴184、194から蒸気を噴出する力で軸170a、170b、枝部172a、172bを回転させるようにしてもよい。このように噴出する蒸気の力を用いることで、モータ等の原動機を設けることなく、回転させることができる。なお、この場合は、回転可能な支持機構、例えば軸受で軸170a、170bを支持する構成とする。
【0072】
また、本実施形態の流動層乾燥装置102は、褐炭132を好適に乾燥できるため、乾燥室150を分割板154で複数の乾燥分室に分割した形状としたがこれに限定されない。流動層乾燥装置102は、乾燥室150の形状によらず、投入部122から褐炭132が供給される領域に回転部160を配置することで、褐炭132の滞留、沈降を抑制することができ、乾燥室150内での褐炭132の閉塞が生じることを抑制することができ、褐炭132を均一に乾燥させることができる
【0073】
図7を用いて流動層乾燥設備の他の実施形態を説明する。ここで、図7は、流動層乾燥設備の他の実施形態を示す概略図である。図7に示す流動層乾燥設備200は、供給ホッパ101と、流動層乾燥装置102と、冷却器110と、循環装置114と、発生蒸気134に水を噴射し粉塵を除去するスクラバ210と、スクラバ210を通過した発生蒸気230を再加熱する再熱器212と、再熱器で加熱された発生蒸気232の一部を圧縮することで加熱し蒸気Cとする加圧器214と、蒸気Dをフラッシングするフラッシング部216を有する。
【0074】
また、流動層乾燥設備200は、各部を接続する配管として、発生蒸気ラインLと、再熱器212を通過した発生蒸気232の一部を流動化蒸気(流動化ガス)136として流動層乾燥装置102内に供給する流動化ガスラインLと、乾燥褐炭138および固形成分144を冷却器110で冷却して生成した製品炭140を排出する製品ラインLと、再熱器212を通過した発生蒸気232の一部を加圧器214に供給する発生蒸気ラインLと、フラッシング部216で生成した液体を再熱器212に案内し、再熱器212を通過した液体をスクラバ210に案内する液体供給ラインLと、を備える。
【0075】
スクラバ210は、発生蒸気ラインLで供給された発生蒸気134に再熱器212を通過した液体242を噴射することで、発生蒸気134に含まれる異物を捕集する。発生蒸気134は、スクラバ210を通過することで、異物が除去された発生蒸気230となる。また、スクラバ210は、発生蒸気134に対して噴射した液体242を回収し、排水142として排出する。
【0076】
再熱器212は、熱交換を行う装置であり、フラッシング部216から供給される液体240と発生蒸気230との間で熱交換を行う。ここで、液体240は、例えば150℃の液体であり、発生蒸気230は、液体240よりも温度が低い蒸気である。再熱器212は、液体240の熱で発生蒸気230を加熱し、発生蒸気230をより温度の高い発生蒸気232とする。また、再熱器212は、液体240の熱を吸収することで、液体242とする。再熱器212を通過した液体242は、上述したスクラバ210に供給される。また、再熱器212を通過した発生蒸気232は、分岐して流動化ガスラインLと発生蒸気ラインLとに供給される。
【0077】
加圧器214は、コンプレッサ等であり、発生蒸気ラインLから供給される発生蒸気232を加圧して、より高温高圧な状態にする。加圧器214で加圧された発生蒸気232は、蒸気Cとして供給配管166に供給され、上述した回転部160の各部に供給される。
【0078】
フラッシング部216は、回転部160の各部を通過した後、蒸気回収管167を通過する蒸気Dをフラッシングする機構である。フラッシング部216は、蒸気Dを気液分離し蒸気238を発生蒸気ラインLに供給し、フラッシングして異物を除去した液体240を液体供給ラインLに供給する。
【0079】
流動層乾燥設備200は、このように蒸気供給装置168に変えて、流動層乾燥装置102で発生した発生蒸気134を処理する構成を用いることで、流動層乾燥設備200内で発生した熱を効率よく利用することができる。また、蒸気を生成する装置を別途設ける必要が無くなる。また、流動層乾燥設備200内を循環する蒸気に含まれる排水142をスクラバ210からまとめて排出することができる。これにより、排水処理を効率よく実行することができる。
【0080】
また、発生蒸気134に含まれる異物を除去するためにスクラバ210で噴射する液体と、発生蒸気230との間で熱交換を行うことで、流動層乾燥設備200内の熱を効率よく利用することができる。
【0081】
なお、流動層乾燥設備200は、さらに発生蒸気134を加圧器214で加圧して生成した蒸気を過熱蒸気Aとし、凝縮水Bをフラッシング器216でフラッシングする構成としてもよい。また、蒸気供給装置168を設け、発生蒸気134を処理して生成した蒸気を加熱蒸気Aに用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 石炭ガス化複合発電システム
100 流動層乾燥設備
101 供給ホッパ
102 流動層乾燥装置
105 集塵装置
110 冷却器
111 熱回収システム
120 乾燥容器
122 投入部
123 排出部
124 ガス分散板
126 流動化ガス供給部
127 蒸気排出部
128 伝熱部材
129 過熱蒸気供給装置
132 褐炭
134 発生蒸気
136 流動化蒸気
138 乾燥褐炭
140 製品炭
142 排水
144 固形成分
150 乾燥室
150a、150b、150c、150d、150e 乾燥分室
152 チャンバ室
152a、152b、152c、152d、152e チャンバ分室
154 分割板
155 流動層
156a、156b、156c、156d 矢印
160 回転部
162 第1回転機構
164 第2回転機構
166 蒸気供給管
167 蒸気回収管
168 蒸気供給装置
170a、170b 軸
172a、172b 枝部
174a、174b 駆動部
180、190 直線部
182、192 折れ曲がり部
184、194 噴出し穴
A 過熱蒸気
B 凝縮水
C 蒸気
D 蒸気
F フリーボード部
発生蒸気ライン
ライン
分離ライン
製品ライン
加熱ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤原料が乾燥される乾燥室および前記乾燥室よりも下方に設けられたチャンバ室を備える乾燥容器と、
前記乾燥容器の一方の端部に前記湿潤原料を投入する投入部と、
前記乾燥容器の他方の端部から前記湿潤原料が乾燥した乾燥物を排出する排出部と、
前記チャンバ室から前記乾燥室内にガスを供給可能な貫通孔が形成されたガス分散板と、
前記乾燥室で前記湿潤原料と共に流動層を形成する流動化ガスを、前記チャンバ室に供給する流動化ガス供給部と、
前記流動化ガスが供給されて形成された前記流動層の前記湿潤原料が乾燥されることにより発生する発生蒸気を前記乾燥容器の上方から排出する蒸気排出部と、
前記乾燥室内の前記流動層を攪拌する回転部と、を有し、
前記回転部は、前記乾燥室の前記流動層が形成される領域のうち前記投入部側の領域に配置され、前記乾燥容器の幅方向に延在する軸と、前記軸と連結し前記軸から離れる方向に延びた枝部と、前記軸を回転させる駆動部と、を備え、前記軸が回転軸として回転することを特徴とする流動層乾燥装置。
【請求項2】
前記回転部は、前記枝部の前記軸から遠い側の端部が回転方向に向けて折れ曲がった形状であることを特徴とする流動層乾燥装置。
【請求項3】
前記回転部は、前記回転軸を構成する前記軸を2つ有し、2つの前記軸は、前記投入部から前記排出部に向かう方向に隣接して配置され、2つの前記軸の回転方向を互いに逆方向とし、2つの前記軸は前記軸同士の間で前記枝部の折れ曲がった前記端部が上向きになるように前記駆動部で前記軸を回転することを特徴とする請求項2に記載の流動層乾燥装置。
【請求項4】
前記回転部の前記軸および前記枝部の内部には中空部が形成され、且つ、互いに繋がっており、
前記中空部に蒸気を供給する蒸気供給装置を有し、前期蒸気供給装置から供給された蒸気を前記噴出し穴から外部に排出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流動層乾燥装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記蒸気供給装置であり、
前記軸は、前記枝部から排出される蒸気の力で回転することを特徴とする請求項4に記載の流動層乾燥装置。
【請求項6】
前記乾燥室の内部に配置され、前記投入部から前記排出部に向かう方向において前記乾燥室を複数の分室に分割する複数の分割板を有し、
前記回転部は、少なくとも前記投入部側の端部の分室に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の流動層乾燥装置。
【請求項7】
前記乾燥室内に前記流動層の湿潤原料を加熱する加熱部をさらに備え、
前記加熱部は、前記幅方向に延在した形状であり、前記分室のそれぞれに配置されていることを特徴とする請求項6に記載の流動層乾燥装置。
【請求項8】
湿潤原料を乾燥可能な請求項1から7のいずれか1項に記載の流動層乾燥装置と、
前記蒸気排出部から排出される前記発生蒸気を外部に排出する発生蒸気ラインと、
前記発生蒸気ラインに介装され、前記発生蒸気中の粉塵を除去する集塵装置と、
前記発生蒸気ラインにおける前記集塵装置の下流側に介装され、前記発生蒸気の熱を回収する熱回収システムと、
前記集塵装置から粉塵が除去された前記発生蒸気の一部を前記流動化ガスとして前記流動化ガス供給部に供給するラインと、
前記排出部から排出された前記湿潤原料を乾燥させた乾燥物を冷却する冷却器と、を備えたことを特徴とする流動層乾燥設備。
【請求項9】
湿潤原料が乾燥される乾燥室および前記乾燥室よりも下方に設けられたチャンバ室を備える乾燥容器を備えた湿潤原料乾燥方法であって、
前記乾燥容器の一方の端部に前記湿潤原料を投入する工程と、
前記乾燥容器の他方の端部から前記湿潤原料が乾燥した乾燥物を排出する工程と、
前記チャンバ室内に流動化ガスを供給する工程と、
前記チャンバ室から前記乾燥室内に前記流動化ガスを供給可能な貫通孔が形成されたガス分散板を介して乾燥室内に供給し、前記乾燥室で前記湿潤原料と共に流動層を形成する工程と、
前記流動化ガスが供給されて形成された前記流動層の前記湿潤原料が乾燥されることにより発生する発生蒸気を前記乾燥容器の上方から排出する工程と、
前記乾燥室の前記流動層が形成される領域のうち前記湿潤原料が投入される側の領域に配置され、前記乾燥容器の幅方向に延在する軸と、前記軸と連結し前記軸から離れる方向に延びた枝部および前記軸を回転させる駆動部を備えた回転部の前記軸を回転軸として回転させることによって前記乾燥室内の前記流動層を攪拌する工程とを具備したことを特徴とする湿潤原料乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−215316(P2012−215316A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79354(P2011−79354)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】