説明

流動層乾燥装置

【課題】褐炭を十分に乾燥させることが可能な流動層乾燥装置を提供する。
【解決手段】褐炭を流動化ガスにより流動させて、内部に流動層3を形成可能な第2乾燥室22と、第2乾燥室22に設けられ、褐炭の流動方向に所定の間隔を空けて配設された複数の仕切り部材43と、を備え、複数の仕切り部材43は、第2乾燥室22の底部であるガス分散板6との間に隙間を形成しており、各仕切り部材43は、伝熱管をパネル状に形成したパネルチューブ51を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褐炭等の湿潤燃料を流動させながら乾燥させる流動層乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような流動層乾燥装置として、底部が多数の開孔を有する通気可能な分散板である乾燥室と、乾燥室下部に位置する風室とを備えた流動乾燥機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この流動乾燥機は、流動化ガス(乾燥用気体)を風室から分散板を介して乾燥室に供給することによって被乾燥物を流動させながら乾燥させている。
【0003】
また、特許文献1に示すような流動層乾燥装置において、その乾燥室内に、複数の仕切り板を設けた構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−89243号公報
【特許文献2】米国特許第3861058号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のような流動層乾燥装置では、被乾燥物として、例えば、水分含有率の多い褐炭を乾燥させる場合、乾燥が不十分となる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、湿潤燃料を十分に乾燥させることが可能な流動層乾燥装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流動層乾燥装置は、湿潤燃料を流動化ガスにより流動させて、内部に流動層を形成可能な乾燥室と、乾燥室に設けられ、湿潤燃料の流動方向に所定の間隔を空けて配設された複数の仕切り部材と、を備え、複数の仕切り部材は、乾燥室の底部との間に隙間を形成しており、各仕切り部材は、伝熱管をパネル状に形成したパネルチューブを有していることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、パネルチューブにより、乾燥室内の湿潤燃料を加熱することができるため、湿潤燃料を十分に乾燥させることができる。
【0009】
この場合、仕切り部材同士の間における流動層の内部に配置された複数の伝熱管をさらに備えたことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、複数の伝熱管により、湿潤燃料をさらに加熱することができるため、湿潤燃料の乾燥をさらに促進させることができる。なお、配置パターンとしては、千鳥状や格子状であってもよい。
【0011】
この場合、隙間は、流動方向の下流側に向けて狭くなるように設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、複数の仕切り部材同士の間にある湿潤燃料は、流動方向の下流側に向かうに連れて流動し難くなる。このため、湿潤燃料が滞留する滞留時間を長くすることができるため、湿潤燃料の加熱時間を長くすることができ、湿潤燃料の乾燥をさらに促進させることができる。
【0013】
この場合、複数の仕切り部材は、パネルチューブに連結された仕切り板をさらに有し、パネルチューブは、流動層の内部に配置され、仕切り板は、流動層の外部に配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、仕切り板を設けることで、未乾燥状態の湿潤燃料が、パネルチューブを越えて移動することを抑制することができる。これにより、湿潤燃料を、仕切り部材と乾燥室の底部との間の隙間を通過させて流動させることができるため、湿潤燃料を十分に乾燥させることができる。
【0015】
この場合、流動方向の最下流に位置する仕切り部材と、乾燥室の底部との間に形成された隙間に設けられ、隙間から流出する湿潤燃料の流出量を調整可能な流出量調整手段をさらに備えたことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、流動方向の最下流の隙間から流出する湿潤燃料の流出量を調整することができる。これにより、湿潤燃料の流出量を調整することで、湿潤燃料の滞留時間を調整することができるため、乾燥室内の湿潤燃料の乾燥状態に応じた適切な調整を行うことが可能となる。
【0017】
この場合、湿潤燃料の流動方向の上流側に位置する第1乾燥室と、第1乾燥室に連通し、第1乾燥室の下流側に位置する第2乾燥室と、をさらに備え、乾燥室は第2乾燥室であり、第1乾燥室および第2乾燥室は、その床面積比が、「第1乾燥室:第2乾燥室=30〜50%:70〜50%」となっていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、床面積比に応じて、第1乾燥室および第2乾燥室において流動する湿潤燃料を乾燥させることができる。これにより、第1乾燥室および第2乾燥室における湿潤燃料の乾燥を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の流動層乾燥装置によれば、仕切り部材にパネルチューブを設けたため、乾燥室内の湿潤燃料を加熱することができ、湿潤燃料を十分に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施例に係る流動層乾燥装置を適用した石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例に係る流動層乾燥装置を模式的に表した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る流動層乾燥装置について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0022】
図1は、本実施例に係る流動層乾燥装置を適用した石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。本実施例の流動層乾燥装置1が適用された石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)100は、空気を酸化剤としてガス化炉で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、ガス精製装置で精製した後の石炭ガスを燃料ガスとしてガスタービン設備に供給して発電を行っている。すなわち、本実施例の石炭ガス化複合発電設備100は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備である。この場合、ガス化炉に供給する湿潤原料として褐炭を使用している。
【0023】
なお、本実施例では、湿潤原料として褐炭を適用したが、水分含量の高いものであれば、亜瀝青炭等を含む低品位炭や、スラッジ等の泥炭を適用してもよく、また、高品位炭であっても適用可能である。また、湿潤原料として、褐炭等の石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
【0024】
本実施例において、図1に示すように、石炭ガス化複合発電設備100は、給炭装置111、流動層乾燥装置1、微粉炭機(ミル)113、石炭ガス化炉114、チャー回収装置115、ガス精製装置116、ガスタービン設備117、蒸気タービン設備118、発電機119、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)120を有している。
【0025】
給炭装置111は、原炭バンカ121と、石炭供給機122と、クラッシャ123とを有している。原炭バンカ121は、褐炭を貯留可能であって、所定量の褐炭を石炭供給機122に投下する。石炭供給機122は、原炭バンカ121から投下された褐炭をコンベアなどにより搬送し、クラッシャ123に投下する。このクラッシャ123は、投下された褐炭を細かく破砕して細粒化する。
【0026】
流動層乾燥装置1は、給炭装置111により投入された褐炭に対して過熱蒸気等の乾燥用蒸気を供給することで、褐炭を流動させながら加熱乾燥し、褐炭が含有する水分を除去するものである。この流動層乾燥装置1は、下部から取り出された乾燥済の褐炭(乾燥炭)を冷却する冷却器131が設けられ、乾燥冷却済の乾燥炭が乾燥炭バンカ132に貯留される。また、流動層乾燥装置1は、上部から取り出された蒸気から乾燥炭の粒子を分離する乾燥炭サイクロン133と乾燥炭電気集塵機134が設けられ、蒸気から分離された乾燥炭の粒子が乾燥炭バンカ132に貯留される。なお、乾燥炭電気集塵機134で乾燥炭が分離された蒸気は、蒸気圧縮機135で圧縮されてから流動層乾燥装置1に乾燥用蒸気として供給される。
【0027】
微粉炭機113は、石炭粉砕機であって、流動層乾燥装置1により乾燥された褐炭(乾燥炭)を細かい粒子状に粉砕して微粉炭を製造するものである。すなわち、微粉炭機113は、乾燥炭バンカ132に貯留された乾燥炭が石炭供給機136により投下されると、この乾燥炭を所定粒径以下の微粉炭とする。そして、微粉炭機113で粉砕後の微粉炭は、微粉炭バグフィルタ137a,137bにより搬送用ガスから分離され、微粉炭供給ホッパ138a,138bに貯留される。
【0028】
石炭ガス化炉114は、微粉炭機113で処理された微粉炭が供給されると共に、チャー回収装置115で回収されたチャー(石炭の未燃分)が供給される。
【0029】
石炭ガス化炉114は、ガスタービン設備117(圧縮機161)から圧縮空気供給ライン141が接続されており、このガスタービン設備117で圧縮された圧縮空気が供給可能となっている。空気分離装置142は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン143が石炭ガス化炉114に接続され、この第1窒素供給ライン143に微粉炭供給ホッパ138a,138bからの給炭ライン144a,144bが接続されている。また、第2窒素供給ライン145も石炭ガス化炉114に接続され、この第2窒素供給ライン145にチャー回収装置115からのチャー戻しライン146が接続されている。更に、酸素供給ライン147は、圧縮空気供給ライン141に接続されている。この場合、窒素は、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用され、酸素は、酸化剤として利用される。
【0030】
石炭ガス化炉114は、例えば、噴流床形式のガス化炉であって、内部に供給された石炭、チャー、空気(酸素)、またはガス化剤としての水蒸気を燃焼・ガス化すると共に、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)が発生し、この可燃性ガスをガス化剤としてガス化反応が起こる。なお、石炭ガス化炉114は、微粉炭の混入した異物を除去する異物除去装置148が設けられている。この場合、石炭ガス化炉114は噴流床ガス化炉に限らず、流動床ガス化炉や固定床ガス化炉としてもよい。そして、この石炭ガス化炉114は、チャー回収装置115に向けて可燃性ガスのガス生成ライン149が設けられており、チャーを含む可燃性ガスが排出可能となっている。この場合、ガス生成ライン149にガス冷却器を設けることで、可燃性ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収装置115に供給するとよい。
【0031】
チャー回収装置115は、集塵装置151と供給ホッパ152とを有している。この場合、集塵装置151は、1つまたは複数のバグフィルタやサイクロンにより構成され、石炭ガス化炉114で生成された可燃性ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン153を通してガス精製装置116に送られる。供給ホッパ152は、集塵装置151で可燃性ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵装置151と供給ホッパ152との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ152を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ152からのチャー戻しライン146が第2窒素供給ライン145に接続されている。
【0032】
ガス精製装置116は、チャー回収装置115によりチャーが分離された可燃性ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製装置116は、可燃性ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン設備117に供給する。なお、このガス精製装置116では、チャーが分離された可燃性ガス中にはまだ硫黄分(HS)が含まれているため、アミン吸収液によって除去することで、硫黄分を最終的には石膏として回収し、有効利用する。
【0033】
ガスタービン設備117は、圧縮機161、燃焼器162、タービン163を有しており、圧縮機161とタービン163は、回転軸164により連結されている。燃焼器162は、圧縮機161から圧縮空気供給ライン165が接続されると共に、ガス精製装置116から燃料ガス供給ライン166が接続され、タービン163に燃焼ガス供給ライン167が接続されている。また、ガスタービン設備117は、圧縮機161から石炭ガス化炉114に延びる圧縮空気供給ライン141が設けられており、圧縮空気供給ライン141に昇圧機168が介設されている。従って、燃焼器162では、圧縮機161から供給された圧縮空気とガス精製装置116から供給された燃料ガスとを混合して燃焼し、タービン163にて、発生した燃焼ガスにより回転軸164を回転することで発電機119を駆動することができる。
【0034】
蒸気タービン設備118は、ガスタービン設備117における回転軸164に連結されるタービン169を有しており、発電機119は、この回転軸164の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ120は、ガスタービン設備117(タービン163)からの排ガスライン170に設けられており、空気と高温の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そのため、排熱回収ボイラ120は、蒸気タービン設備118のタービン169との間に蒸気供給ライン171が設けられると共に、蒸気回収ライン172が設けられ、蒸気回収ライン172に復水器173が設けられている。従って、蒸気タービン設備118では、排熱回収ボイラ120から供給された蒸気によりタービン169が駆動し、回転軸164を回転することで発電機119を駆動することができる。
【0035】
そして、排熱回収ボイラ120で熱が回収された排ガスは、ガス浄化装置174により有害物質を除去され、浄化された排ガスは、煙突175から大気へ放出される。
【0036】
ここで、本実施例の石炭ガス化複合発電設備100の作動について説明する。
【0037】
本実施例の石炭ガス化複合発電設備100において、給炭装置111にて、原炭(褐炭)が原炭バンカ121に貯留されており、この原炭バンカ121の褐炭が石炭供給機122によりクラッシャ123に投下され、ここで所定の大きさに破砕される。そして、破砕された褐炭は、流動層乾燥装置1により加熱乾燥された後、冷却器131により冷却され、乾燥炭バンカ132に貯留される。また、流動層乾燥装置1の上部から取り出された蒸気は、乾燥炭サイクロン133及び乾燥炭電気集塵機134により乾燥炭の粒子が分離され、蒸気圧縮機135で圧縮されてから流動層乾燥装置1に乾燥用蒸気として戻される。一方、蒸気から分離された乾燥炭の粒子は、乾燥炭バンカ132に貯留される。
【0038】
乾燥炭バンカ132に貯留される乾燥炭は、石炭供給機136により微粉炭機113に投入され、ここで、細かい粒子状に粉砕されて微粉炭が製造され、微粉炭バグフィルタ137a,137bを介して微粉炭供給ホッパ138a,138bに貯留される。この微粉炭供給ホッパ138a,138bに貯留される微粉炭は、空気分離装置142から供給される窒素により第1窒素供給ライン143を通して石炭ガス化炉114に供給される。また、後述するチャー回収装置115で回収されたチャーが、空気分離装置142から供給される窒素により第2窒素供給ライン145を通して石炭ガス化炉114に供給される。更に、後述するガスタービン設備117から抽気された圧縮空気が昇圧機168で昇圧された後、空気分離装置142から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン141を通して石炭ガス化炉114に供給される。
【0039】
石炭ガス化炉114では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(石炭ガス)を生成することができる。そして、この可燃性ガスは、石炭ガス化炉114からガス生成ライン149を通して排出され、チャー回収装置115に送られる。
【0040】
このチャー回収装置115にて、可燃性ガスは、まず、集塵装置151に供給され、集塵装置151は、可燃性ガスに含まれるチャーを分離する。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン153を通してガス精製装置116に送られる。一方、可燃性ガスから分離した微粒チャーは、供給ホッパ152に堆積され、チャー戻しライン146を通して石炭ガス化炉114に戻されてリサイクルされる。
【0041】
チャー回収装置115によりチャーが分離された可燃性ガスは、ガス精製装置116にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。そして、ガスタービン設備117では、圧縮機161が圧縮空気を生成して燃焼器162に供給すると、この燃焼器162は、圧縮機161から供給される圧縮空気と、ガス精製装置116から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスによりタービン163を駆動することで、回転軸164を介して発電機119を駆動し、発電を行うことができる。
【0042】
そして、ガスタービン設備117におけるタービン163から排出された排気ガスは、排熱回収ボイラ120にて、空気と熱交換を行うことで蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン設備118に供給する。蒸気タービン設備118では、排熱回収ボイラ120から供給された蒸気によりタービン169を駆動することで、回転軸164を介して発電機119を駆動し、発電を行うことができる。
【0043】
その後、ガス浄化装置174では、排熱回収ボイラ120から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排ガスが煙突175から大気へ放出される。
【0044】
以下、上述した石炭ガス化複合発電設備100における流動層乾燥装置1について詳細に説明する。図2は、本実施例に係る流動層乾燥装置を模式的に表した概略構成図である。本実施例の流動層乾燥装置1は、水分含量が高い石炭である褐炭を、流動化ガスにより流動させながら、加熱乾燥させるものである。
【0045】
流動層乾燥装置1は、内部に褐炭が供給される乾燥炉5と、乾燥炉5の内部に設けられたガス分散板6と、を備えている。乾燥炉5は、長方体の箱状に形成されている。乾燥炉5に供給された褐炭は、流動化ガスにより流動することで、乾燥炉5内に流動層3を形成する。乾燥炉5に形成される流動層3は、その流動方向が、乾燥炉5の長手方向(図2の左右方向)となっている。ガス分散板6は、乾燥炉5内部の空間を、鉛直方向下方側(図示下側)に位置するチャンバ室11と、鉛直方向上方側(図示上側)に位置する乾燥室12とに区分けしている。ガス分散板6には、多数の貫通孔が形成され、チャンバ室11には、蒸気等の流動化ガスが導入される。
【0046】
乾燥炉5に形成された乾燥室12は、流動方向の上流側に設けられた第1乾燥室21と、流動方向の下流側に設けられた第2乾燥室(乾燥室)22とで構成され、第1乾燥室21および第2乾燥室22は連通している。第1乾燥室21は、初期乾燥を行う完全混合領域となっており、第2乾燥室22は、後期乾燥を行う押し出し領域(プラグフロー領域)となっている。
【0047】
第1乾燥室21は、その室内において、供給された褐炭が完全混合流れとなるように構成されている。完全混合流れとは、第1乾燥室21内に形成される流動層3において、褐炭の水分含有率が均質となるように混合させる流れである。このため、第1乾燥室21では、流動方向において逆流しながら混合する逆混合(バックミキシング)を許容している。この第1乾燥室21には、褐炭を供給する供給ポート31と、褐炭を加熱する伝熱管33とが設けられている。
【0048】
供給ポート31は、褐炭の流動方向の上流側における第1乾燥室21の側壁に接続されており、褐炭を第1乾燥室21に供給するための供給口となっている。この供給ポート31には、上記したクラッシャ123が接続されており、細粒化された褐炭が、第1乾燥室21に供給される。
【0049】
伝熱管33は、流動層3の内部に設けられている。伝熱管33は、その内部に乾燥用蒸気が供給され、流動層3の褐炭中の水分を除去している。従って、伝熱管33に乾燥用蒸気が供給されると、伝熱管33は、乾燥用蒸気の潜熱を利用して、第1乾燥室21内の褐炭を乾燥させる。この後、乾燥に利用された乾燥用蒸気は、第1乾燥室21の外部に排出される。
【0050】
従って、供給ポート31から褐炭が供給されると、供給された褐炭は、ガス分散板6を介して供給される流動化ガスにより流動することで、流動層3を形成する。流動層3となった褐炭は、流動化ガスおよび伝熱管33に加熱されることで乾燥される。
【0051】
これにより、第1乾燥室21の流動層3を形成する褐炭は、完全混合流れとすることができる。よって、第1乾燥室21における流動層3では、完全混合流れとなった褐炭を、均質化させながら乾燥できる。このとき、褐炭を乾燥させることにより発生した発生蒸気は、後述する第2乾燥室22に設けられた蒸気排出ポート42から上記した乾燥炭サイクロン133へ向けて排出される。そして、第1乾燥室21において初期乾燥された褐炭は、第2乾燥室22に供給される。なお、第1乾燥室21では、例えば、水分含有率が60%程度の褐炭を、水分含有率が40%程度となるまで初期乾燥させる。
【0052】
第2乾燥室22は、その室内において、供給された褐炭が流動方向に沿って、押し出し流れとなるように構成されている。押し出し流れとは、第2乾燥室22内に形成される流動層3において、褐炭が流動方向に拡散しないように、褐炭を流動方向に押し出す流れである。この第2乾燥室22には、褐炭が排出される排出ポート41と、発生蒸気が排出される蒸気排出ポート42と、複数の仕切り部材43と、複数の伝熱管44と、流出量調整部47と、が設けられている。
【0053】
排出ポート41は、褐炭の流動方向の下流側における第2乾燥室22の底部に接続されており、褐炭を第2乾燥室22から排出するための排出口となっている。この排出ポート41は、第2乾燥室22において後期乾燥された褐炭が、乾燥炭として排出され、排出された乾燥炭は上記した冷却器131へ向けて供給される。
【0054】
蒸気排出ポート42は、褐炭の流動方向の下流側における第2乾燥室22の上面に接続され、褐炭の乾燥時において、第1乾燥室21および第2乾燥室22から発生する発生蒸気を排出するための排出口となっている。なお、蒸気排出ポート42から排出された発生蒸気は、乾燥炭サイクロン133へ向けて供給される。
【0055】
複数の仕切り部材43は、褐炭の流動方向に所定の間隔を空けて配設されている。このため、複数の仕切り部材43は、第2乾燥室22を複数の乾燥分室45に分割していることから、複数の乾燥分室45は、褐炭の流動方向に並んで形成されている。各仕切り部材43は、流動層3の内部に設けられたパネルチューブ51と、流動層3の外部に設けられた仕切り板52とを有し、パネルチューブ51の上方側に仕切り板52が接続されている。
【0056】
パネルチューブ51は、伝熱管を鉛直方向に並設してパネル状に構成したものである。パネルチューブ51は、その内部に過熱蒸気を流通させており、流動層3を形成する褐炭を加熱している。仕切り板52は、パネルチューブ51を越えて下流側の乾燥分室45に流入する褐炭の移動を抑制している。この仕切り板52は、その板面が流動方向に直交するように設けられている。
【0057】
このように構成された各仕切り部材43は、第2乾燥室22のガス分散板6との間に隙間を形成して設けられ、この隙間が褐炭の流通口46となっている。このとき、複数の仕切り部材43は、複数の流通口46(隙間)が、流動方向の下流側に向けて狭くなるように設けられている。具体的に、複数の仕切り部材43は、そのパネルチューブ51の鉛直方向における長さが、下流側に向かうに連れて短くなるように、それぞれ形成されている。
【0058】
複数の伝熱管44は、複数の乾燥分室45にそれぞれ設けられ、その軸方向が乾燥炉5の幅方向と同方向となっている。複数の伝熱管44は、鉛直方向および流動方向にそれぞれ並べられることで、格子状に配置されている。なお、本実施例では、複数の伝熱管44を格子状に配置したが、この構成に限らず、千鳥状に配置してもよい。
【0059】
流出量調整部47は、流動方向の最下流の流通口46の下流側に設けられた流量仕切り板55を有し、流量仕切り板55は、図示しない駆動機構によって、鉛直方向に移動させられる。これにより、流出量調整部47は、最下流の流通口46の鉛直方向における長さを調整することで、流通口46から排出される褐炭の流出量を調整可能となっている。具体的に、流出量調整部47は、褐炭の乾燥が不十分であるとすると、流通口46を狭めることで褐炭の排出量を減らし、乾燥分室45における褐炭の滞留時間を長くすることで、褐炭の加熱時間を長くすることができる。一方で、流出量調整部47は、褐炭の乾燥が過剰であるとすると、流通口46を広げることで、褐炭の排出量を増やし、乾燥分室45における褐炭の滞留時間を短くすることで、褐炭の加熱時間を短くすることができる。
【0060】
従って、第1乾燥室21から初期乾燥された褐炭が供給されると、供給された褐炭は、流動方向の最上流側の仕切り部材43とガス分散板6との間の流通口46を介して、第2乾燥室22の最上流の乾燥分室45に供給される。乾燥分室45に供給された褐炭は、ガス分散板6を介して供給される流動化ガスにより流動することで、流動層3を形成する。流動層3となった褐炭は、流動化ガス、パネルチューブ51および複数の伝熱管44によって加熱乾燥される。乾燥分室45で乾燥された褐炭は、流動方向の下流側の仕切り部材43とガス分散板6との間の流通口46を介して、下流側の乾燥分室45に押し出される。
【0061】
このとき、流通口46は、流動方向の下流側に向かうに連れて狭くなっており、褐炭が、下流側の乾燥分室45へ移動するたびに、流通口46からの流出量が減少する。このため、褐炭は、各乾燥分室45に滞留し易くなるため、加熱時間を長くすることができる。
【0062】
そして、褐炭は、流出量調整部47によって流出量が調整された最下流の流通口46から流出する。なお、流出量調整部47は、褐炭の乾燥状況に応じて流通口46の開口面積を調整し、流通口46から排出される褐炭の流出量を調整することで、乾燥分室45中の褐炭の滞留量を調整している。このように、褐炭は、上流側の乾燥分室45から下流側の乾燥分室45に押し出されながら移動し、全ての乾燥分室45を通過することで、後期乾燥が行われる。
【0063】
これにより、第2乾燥室22の流動層3を形成する褐炭は、複数の乾燥分室45を上流側から順に移動することで、押し出し流れとすることができる。よって、第2乾燥室22における流動層3では、押し出し流れとなった褐炭を、流動方向に拡散させることなく乾燥できる。このとき、褐炭を乾燥させることにより発生した発生蒸気は、第2乾燥室22に設けられた蒸気排出ポート42から排出される。そして、第2乾燥室22において後期乾燥が行われた褐炭は、乾燥炭となって、排出ポート41から排出される。なお、第2乾燥室22では、例えば、水分含有率が40%程度の褐炭を、水分含有率が10%程度となるまで後期乾燥させる。
【0064】
このとき、第1乾燥室21および第2乾燥室22は、その床面積比が、すなわち、各室21,22におけるガス分散板6の面積比が、「第1乾燥室:第2乾燥室=30〜50%:70〜50%」となっている。
【0065】
以上のように、本実施例の構成によれば、第2乾燥室22にパネルチューブ51を設けることで、パネルチューブ51により褐炭を加熱乾燥させることができる。これにより、第2乾燥室22における褐炭の乾燥を促進させることができ、褐炭を十分に乾燥させることができる。
【0066】
また、本実施例の構成によれば、第2乾燥室22に複数の伝熱管44を設けることで、伝熱管44により褐炭を加熱乾燥させることができる。これにより、第2乾燥室22における褐炭の乾燥をさらに促進させることができ、褐炭をより乾燥させることができる。
【0067】
また、本実施例の構成によれば、流動方向の下流側に向かうに連れて、流通口46が狭くなるため、乾燥分室45中の褐炭の滞留時間を長くすることができる。これにより、褐炭の加熱時間を長くすることができるため、褐炭の乾燥をさらに促進させることができる。
【0068】
また、本実施例の構成によれば、パネルチューブ51の上方側に仕切り板52を設けることで、褐炭がパネルチューブ51を越えて移動することを抑制することができる。これにより、流通口46を介して上流側の乾燥分室45から下流側の乾燥分室45へ褐炭を移動させることができるため、押し出し流れとなった褐炭を乾燥させることができる。
【0069】
また、本実施例の構成によれば、流出量調整部47により、最下流の流通口46からの褐炭の流出量を調整することで、褐炭の乾燥状態を調整することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 流動層乾燥装置
3 流動層
5 乾燥炉
6 ガス分散板
11 チャンバ室
12 乾燥室
21 第1乾燥室
22 第2乾燥室
31 供給ポート
33 伝熱管
41 排出ポート
42 蒸気排出ポート
43 仕切り部材
45 乾燥分室
46 流通口
47 流出量調整部
51 パネルチューブ
52 仕切り板
55 流量仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤燃料を流動化ガスにより流動させて、内部に流動層を形成可能な乾燥室と、
前記乾燥室に設けられ、前記湿潤燃料の流動方向に所定の間隔を空けて配設された複数の仕切り部材と、を備え、
前記複数の仕切り部材は、前記乾燥室の底部との間に隙間を形成しており、
前記各仕切り部材は、伝熱管をパネル状に形成したパネルチューブを有していることを特徴とする流動層乾燥装置。
【請求項2】
前記仕切り部材同士の間における前記流動層の内部に配置された複数の伝熱管をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の流動層乾燥装置。
【請求項3】
前記隙間は、前記流動方向の下流側に向けて狭くなるように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の流動層乾燥装置。
【請求項4】
前記複数の仕切り部材は、前記パネルチューブに連結された仕切り板をさらに有し、
前記パネルチューブは、前記流動層の内部に配置され、
前記仕切り板は、前記流動層の外部に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の流動層乾燥装置。
【請求項5】
前記流動方向の最下流に位置する仕切り部材と、前記乾燥室の底部との間に形成された隙間に設けられ、前記隙間から流出する前記湿潤燃料の流出量を調整可能な流出量調整手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の流動層乾燥装置。
【請求項6】
前記湿潤燃料の流動方向の上流側に位置する第1乾燥室と、
前記第1乾燥室に連通し、前記第1乾燥室の下流側に位置する第2乾燥室と、をさらに備え、
前記乾燥室は前記第2乾燥室であり、
前記第1乾燥室および前記第2乾燥室は、その床面積比が、「前記第1乾燥室:前記第2乾燥室=30〜50%:70〜50%」となっていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の流動層乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−241993(P2012−241993A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113332(P2011−113332)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】