流動層処理システム及び流動層燃焼排ガスのN2O除去方法
【課題】燃焼設備から排出される排ガス中の亜酸化窒素(N2O)の含有量の大幅な低減を図る流動層処理システム及び流動層燃焼排ガスのN2O除去方法を提供する。
【解決手段】燃料(バイオマス燃料F1、石炭燃料F2、石油コークス燃料F3)Fを流動層燃焼処理する循環流動層ボイラ11と、該循環流動層ボイラ11から排出される燃焼排ガス12の熱を回収する伝熱部13と、前記伝熱部13の後流側に設けられ、循環流動層ボイラ11に供給する空気14を予熱する空気予熱器15と、前記空気予熱器15の後流側に設けられ、燃焼排ガス12中の煤塵を除塵する除塵装置であるバグフィルタ16と、前記伝熱部13が少なくとも一以上の過熱器(過熱器13a1、13a2)と、少なくとも一以上の節炭器(節炭器13b1、13b2)とを具備してなり、前記伝熱部13内に、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部17を有し、燃焼排ガス12中のN2Oを除去する。
【解決手段】燃料(バイオマス燃料F1、石炭燃料F2、石油コークス燃料F3)Fを流動層燃焼処理する循環流動層ボイラ11と、該循環流動層ボイラ11から排出される燃焼排ガス12の熱を回収する伝熱部13と、前記伝熱部13の後流側に設けられ、循環流動層ボイラ11に供給する空気14を予熱する空気予熱器15と、前記空気予熱器15の後流側に設けられ、燃焼排ガス12中の煤塵を除塵する除塵装置であるバグフィルタ16と、前記伝熱部13が少なくとも一以上の過熱器(過熱器13a1、13a2)と、少なくとも一以上の節炭器(節炭器13b1、13b2)とを具備してなり、前記伝熱部13内に、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部17を有し、燃焼排ガス12中のN2Oを除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼設備から排出される排ガス中の亜酸化窒素(N2O)の含有量の大幅な低減を図る流動層処理システム及び流動層燃焼排ガスのN2O除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の第二次評価報告書(1995)において、温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)として、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄が指定され、近年の法規制強化から温室効果ガスの削減が急務となっている。
【0003】
この温室効果ガス(GHG)において、特に亜酸化窒素(N2O)の温暖化係数は、二酸化炭素(CO2)の310倍とされており、その発生量の低減が切望されている。
【0004】
そこで、従来において、循環流動層ボイラでのフリーボード部での温度を850〜950℃と高温に維持して温室効果ガスであるN2Oの低減を図ることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−130641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、流動層設備において、高温(850℃以上)で運転する場合には、亜酸化窒素(N2O)の発生量は低減されるものの、高温燃焼により排ガス中の飛灰の溶融や、灰付着の問題が後流側の対流伝熱部で発生する。よって、循環流動層ボイラにおいては、900℃を超えての高温燃焼を行うことは装置面および運転面で制約が多い、という問題がある。
【0007】
そこで、流動層処理設備における安定運転温度の800〜900℃での運転を行いつつ、排ガス中の亜酸化窒素(N2O)の低減を図る流動層処理システムの出現が切望されている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、燃焼設備から排出される排ガス中の亜酸化窒素(N2O)の含有量の大幅な低減を図る流動層処理システム及び流動層燃焼排ガスのN2O除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラと、前記流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱部と、前記伝熱部の後流側に設けられ、前記流動層ボイラに供給する空気を予熱する空気予熱器と、前記空気予熱器の後流側に設けられ、燃焼排ガス中の煤塵を除塵する除塵装置とを具備すると共に、前記伝熱部が少なくとも一以上の過熱器と、少なくとも一以上の節炭器とを有し、且つ、前記伝熱部内に、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部を設け、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記流動層ボイラと伝熱部との間の燃焼排ガス排出ラインに、還元剤を供給する還元剤供給部を具備することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0012】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記流動層ボイラ内に炉内供給触媒を供給する炉内触媒供給部を具備することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0013】
第5の発明は、第3又は4の発明において、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤の供給量を増加することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0014】
第6の発明は、第3乃至5のいずれか一つの発明において、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、前記流動層ボイラの燃焼温度を高温側に制御することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0015】
第7の発明は、第4乃至6のいずれか一つの発明において、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、炉内供給触媒の供給量を増加することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0016】
第8の発明は、第1乃至7のいずれか一つの発明において、前記除塵装置で除去した煤塵から有価金属を回収する金属回収手段と、回収された金属を触媒として燃焼排ガスに供給する触媒供給部を具備することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0017】
第9の発明は、第1乃至8のいずれか一つの発明において、前記伝熱部の後流側の燃焼排ガスラインに設けられ、処理ガス中のN2Oを除去する第2の静置型触媒部を有することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0018】
第10の発明は、第1乃至9のいずれか一つの発明において、前記除塵装置の後流側で燃焼排ガスを分岐した後戻る分岐・循環ラインを設け、この分岐・循環ラインに熱交換器及び第3の静置型触媒部を介装し、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0019】
第11の発明は、第1乃至10のいずれか一つの発明において、前記伝熱部の前流側に設けられ、処理ガス中の煤塵を除去する触媒を担持したセラミックフィルタを有することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0020】
第12の発明は、供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラと、前記流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱部と、前記伝熱部の後流側に設けられ、前記流動層ボイラに供給する空気を予熱する空気予熱器と、前記空気予熱器の後流側に設けられ、燃焼排ガス中の煤塵を除塵する除塵装置とを具備すると共に、前記除塵装置の後流側で燃焼排ガスを分岐した後、前記流動層ボイラ側へ戻る分岐・循環ラインを設け、この分岐・循環ラインに熱交換器及び第3の静置型触媒部を介装し、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0021】
第13の発明は、第1乃至12のいずれか一つの発明において、前記燃料が、バイオマス燃料、石炭燃料、石油コークス燃料の少なくとも一つであることを特徴とする流動層処理システムにある。
【0022】
第14の発明は、供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する、少なくとも一以上の過熱器及び少なくとも一以上の節炭器を具備する伝熱部において、前記伝熱部内で、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部を設置し、燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0023】
第15の発明は、第14の発明において、前記流動層ボイラと伝熱部との間の燃焼排ガス排出ラインに、還元剤を供給することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0024】
第16の発明は、第14又は15の発明において、前記流動層ボイラに炉内供給触媒を供給し、炉内にてN2Oの発生を抑制することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0025】
第17の発明は、第15の発明において、前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤の供給量を増加する制御を実行することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0026】
第18の発明は、第15又は16の発明において、前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、前記流動層ボイラの燃焼温度を高温側に制御する制御装置を具備することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0027】
第19の発明は、第16の発明において、前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、炉内供給触媒の供給量を増加する制御を実行する制御装置を具備することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0028】
第20の発明は、第1乃至13のいずれか一つの流動層処理システムを用い、前記燃料として、先ずバイオマス燃料を用いて燃焼し、次いで、石炭燃料及び/又は石油コークス燃料を用いて燃焼することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【発明の効果】
【0029】
本発明の流動層処理システムによれば、流動層ボイラから排出される燃焼排ガス中の亜酸化窒素(N2O)の含有量の大幅な低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、実施例1に係る流動層処理システムの概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係る流動層処理システムの概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係る流動層処理システムの概略図である。
【図4】図4は、アンモニアとプロピレンを用いたN2O及びNOx除去率の関係図である。
【図5】図5は、炉内供給触媒の供給量とN2O及びNOxの濃度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る流動層処理システムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0032】
図1は、実施例1に係る流動層処理システムの概略図である。図4は、アンモニアとプロピレンを用いたN2O及びNOx除去率の関係図である。図5は、炉内供給触媒の供給量とN2O及びNOxの濃度との関係図である。
図1に示すように、本実施例に係る流動層処理システム10Aは、供給される燃料(バイオマス燃料F1、石炭燃料F2、石油コークス燃料F3)Fを流動層燃焼処理する循環流動層ボイラ11と、循環流動層ボイラ11から排出される燃焼排ガス12の熱を回収する伝熱部13と、前記伝熱部13の後流側に設けられ、前記循環流動層ボイラ11に供給する空気14を予熱する空気予熱器15と、前記空気予熱器15の後流側に設けられ、燃焼排ガス12中の煤塵を除塵する除塵装置であるバグフィルタ16とを具備すると共に、前記伝熱部13が少なくとも一以上の過熱器(本実施例では2つの過熱器13a1、13a2)と、少なくとも一以上の節炭器(本実施例では2つの節炭器13b1、13b2)とを有し、前記伝熱部13内に、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部17を設け、燃焼排ガス12中のN2Oを除去するものである。
図1中、符号18は煙突、L1〜L4は、燃焼排ガス排出ライン、L11〜L13は燃料供給ライン、L14は循環流動層ボイラ11に空気14を供給する空気供給ライン、L15は循環流動層ボイラ11に起動用燃料22を供給する起動用燃料供給ラインを図示する。
【0033】
本実施例では、伝熱部13の2次過熱器13a2と1次節炭器13b1との間、1次節炭器13b1と2次節炭器13b2との間の2箇所に、各々第1の静置型触媒部17を設けているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
循環流動層ボイラ11からの灰23は、ベットアッシュクーラ35で冷却されて、別途回収・処理される。
また、バグフィルタ16で回収された灰26は、灰回収ラインL5を介して灰26中の金属を回収する金属回収手段24に送られ、ここで回収金属25を分離した後、別途回収・処理される。
金属回収手段24で回収された回収金属25は、煙道内触媒供給部27により、燃焼排ガスラインL3内に供給しており、煙道内での金属触媒作用を発揮させている。
【0035】
また、バグフィルタ16の前流側の燃焼排ガスラインL3に、図示しない触媒供給手段から触媒(Fe粉、活性炭等)を噴霧・添加し、排ガス中のN2Oを更に分解するようにしてもよい。
【0036】
また、本実施例では、伝熱部13の後流側の燃焼排ガスラインL2に第2の静置型触媒部28を更に介装しており、通常は、バイパス排ガスラインL6に燃焼排ガス12を流すようにしている。
そして、必要に応じて、切替弁29を切替て、第2の静置型触媒部28を通過させて、燃焼排ガス12中のN2Oを除去するようにしている。
【0037】
さらに、本実施例では、循環流動層ボイラ11内に、触媒ラインL7を介して炉内供給触媒31を供給する炉内触媒供給部32を設けており、循環流動層ボイラ11から排出される燃焼排ガス12中のN2Oの除去を行うようにしている。
【0038】
本実施例における伝熱部13内に設ける第1の静置型触媒部17及び第2の静置型触媒部28で各々用いられるN2Oを還元・除去する触媒としては、例えば鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)を担持したゼオライト触媒、メタロシリケート触媒(鉄(Fe)、ロジウム(Rh)交換)、貴金属触媒(例えばロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)等)、酸化チタン(TiO2)を挙げることができる。
ゼオライト触媒としては、例えばベータ型触媒、ZSM−5型触媒、モルデナイト型触媒を例示することができる。
この静置型触媒の形状としては、ハニカム型触媒とすることが好ましい。
【0039】
伝熱部13でも2次過熱器13a2の後流側では、燃焼排ガス12の温度は、500℃以下、1次節炭器13b1の後流側では、350℃程度であるので、鉄系、銅系触媒等が触媒機能を発揮する。
また、ハニカム型触媒の触媒機能を発揮させるために、必要に応じて図示しない加熱手段(間接加熱又は直接加熱)により、触媒活性を高めるようにしている。
【0040】
また、第1の静置型触媒部17及び第2の静置型触媒部28の触媒形状としては、ハニカム型触媒が好適である。
【0041】
本実施例では、循環流動層ボイラ11から排出される燃焼排ガス12中の煤塵を除去するための、セラミックフィルタ19を伝熱部13の前流側に設けており、第1の静置型触媒部17及び第2の静置型触媒部28で用いられる触媒被毒の防止を図っている。
このセラミックフィルタ19には、その設置場所が900℃程度の高温環境であるので、高温耐久性を有するアルミナを主成分とする触媒を担持することができる。
これにより、N2Oを効率よく除去することができる。
【0042】
また、本実施例においては、セラミックフィルタ19の前流側において、燃焼排ガス12中に還元剤20を供給する還元剤供給部21が設けられている。
ここで、還元剤20を供給して伝熱部13に設けた第1の静置型触媒部17での還元処理を促進している。
【0043】
この還元剤20としては、例えばアンモニア、尿素などの窒素系還元剤、メタン、エタン、プロパン、プロピレン、メタノール、ジメチルエーテル等の炭化水素系還元剤、水素、CO等を挙げることができる。
【0044】
特に、還元剤20として、プロピレンは、図4に示すように、N2Oの除去率が、アンモニアよりも高いので、N2O除去を図る点で好ましい。
この試験は、触媒が鉄系触媒を用い、燃焼温度は500℃とし、模擬燃焼排ガス中にN2Oを含ませ、還元剤(アンモニア:114ppm、プロピレン:140ppm)の相違によるN2O除去率を求めた。
【0045】
図4の結果に示すように、アンモニアは脱硝の還元剤としては、有効であるが、N2Oの除去率はやや低い(70%)ものであった。
これに対し、プロピレンは、脱硝機能としては無効であるが、N2Oの除去率は97%と高いものであった。
【0046】
燃焼排ガス12中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤20の供給量を徐々に増加するようにして、N2Oの除去を効率よく行うようにしている。
【0047】
なお、還元剤20を供給しない場合においても、静置型触媒部の触媒活性で、N2Oを除去することができる場合には、必要に応じて還元剤20を適宜供給するようにすればよく、必ずしも供給するものではない。
【0048】
ここで、燃焼排ガス12中に含まれるN2Oの含有量は、N2O計測計(N2Oセンサ)30により求めるようにしており、例えば循環流動層ボイラ11の後流側の燃焼排ガスラインL1、伝熱部13の後流側の燃焼排ガスラインL2、第2の静置型触媒部28の後流側の燃焼排ガスラインL2等の必要箇所に各々設け、N2O濃度を計測するようにしている。
【0049】
N2Oセンサ30としては、例えば非分散形赤外線吸収法(NDIR法)による検出器、ガスクロマトグラフ・電子捕獲型検出器(Electron Capture Detector:ECD)を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
そして、燃焼排ガス12中のN2O濃度が高い場合には、循環流動層ボイラ11の燃焼の制御、燃料種の変更、還元剤20の種類の変更等を適宜行い、N2Oの排出量が所定の排出基準を保持するようにしている。
【0051】
ここで、燃料の制御によるN2Oの排出量の低減を図る手段について説明する。
燃料Fとして、石炭燃料F2等に較べてN2Oの発生量が少ない例えばバイオマス燃料F1のほかに、例えば廃棄タイヤ、産業廃棄物固化物(例えばごみ固形燃料(Refuse Derived Fuel:RDF、Refuse Paper & Plastic Fuel:RPF)等)、汚泥灰燃料等を用いることができる。
【0052】
先ず、燃料Fとして、例えばバイオマス燃料F1を用いて、循環流動層ボイラ11で燃焼を開始する。燃焼開始温度は、通常循環流動層ボイラ11での好適燃焼温度である800℃から850℃の上限温度である850℃からとする。
【0053】
一般にバイオマス燃料F1の燃焼ではN2Oの発生は少ないとされているが、バイオマス燃料F1の組成や種類の相違等から、この850℃で燃焼を所定時間を継続すると、N2O濃度が所定基準値(例えば10ppm)に達する場合がある。
この所定基準に達した際には、燃焼温度を少し高く(例えば860℃)設定し、高温燃焼によりN2Oの発生量の低減を図る。
【0054】
これにより、バイオマス燃料F1を用いて、低N2Oの燃焼を維持することができる。
この伝熱部13のN2Oの除去が適正である場合には、後流側の第2の静置型触媒部28及び煙道内触媒供給部27での触媒が不要となる。
【0055】
よって、この場合には、第2の静置型触媒部28をバイパスするバイパス排ガスラインL6に燃焼排ガス12を通過させていると共に、回収金属25の供給は停止している。
これに対し、伝熱部13の後流側の燃焼排ガスラインL2及び第2の静置型触媒部28の後流側の燃焼排ガスラインL2に設置したN2Oセンサ30で、N2O濃度が所定値(10ppm)を超える場合には、第2の静置型触媒部28を通過するように切替弁29を切替、又は回収金属25の供給を開始して、N2Oの除去をするようにしている。
【0056】
なお、通常の所定値(N2O:10ppm)以下であっても、これらの触媒を通過及び供給することで、N2Oが除去されるので、煙突18から外部に排出するN2Oの排出濃度を下げることに寄与できる。
【0057】
そして、燃焼温度上昇によるN2Oの低減措置を図って、例えば900℃に達した場合には、燃料Fを例えばバイオマス燃料F1から石炭燃料F2、石油コークス燃料F3に切替て、流動層燃焼を継続する。
【0058】
固定炭素が多い石炭燃料F2や石油コークス燃料F3を用いて燃焼する場合には、静置型の触媒によるN2Oの除去に加えて、さらに炉内触媒供給部32から炉内供給触媒31を循環流動層ボイラ11内に徐々に投入して、循環流動状態でN2Oを分解・除去し、循環流動層ボイラ11から排出する燃焼排ガス12のN2O濃度をバイオマス燃料F1の排出量と同等程度までN2Oセンサ30で監視しつつ低下させるようにしている。
【0059】
これにより、静置型の触媒では、バイオマス燃料F1を用いた場合の燃焼排ガス12中のN2O濃度と同様の第1の静置型触媒部17及び/又は第2の静置型触媒部28での処理でN2Oの低減を図ることができる。
【0060】
ここで、炉内供給触媒31としては、例えば酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)等を用いることができる。
【0061】
ここで、循環流動層ボイラ11に供給する炉内供給触媒31の供給量は、流動材と完全に置換する100%としてもよい。なお、この場合は炉内供給触媒31の供給量が多くなるので、ランニングコストが高くなる。
【0062】
また、図4を用いて前述したように、アンモニアは脱硝の還元剤としては、有効であるが、N2Oの除去率はやや低い(70%)ものである。
これに対し、プロピレンは、脱硝機能としては無効であるが、N2Oの除去率は97%と高いので、炉内供給触媒31を供給すると共に、還元剤20を用いる場合においては、最初プロピレンを用い、その後、炉内供給触媒31であるアルミナの供給が30wt%を超える場合に、アンモニアに切替ることで、効率的なN2Oの除去を行うことができる。
【0063】
これは、炉内供給触媒31としてアルミナを供給する場合、その供給当初は、NOxの発生はないので、プロピレンを用いて、N2O除去を行うにしている。そして、アルミナの供給量が増加して酸化触媒としての作用によりNOxの発生が多くなるアルミナ供給が30wt%を超える際に、プロピレンからアンモニアに還元剤20を切替え、脱硝を効率よく行うようにしている。
この還元剤20をアンモニアに切り替えても、図5に示すように、N2Oの濃度は低下しているので、プロピレンに較べてN2O除去効率がやや低いものであっても、N2O除去は確実に行われることとなる。
【0064】
このようにして、バイオマス燃料F1から石炭燃料F2、石油コークス燃料F3に順次切り替えて、循環流動層ボイラ11で燃焼させた結果、N2Oセンサ30で、所定基準値を超えるような場合には、もはやこれ以上運転を継続すると、基準値以上のN2Oが燃焼排ガス12と共に外部に放出されるので、現状の燃料状態(例えば石油コークス燃料F3)から、N2Oの排出が少ないバイオマス燃料F1に切替、850℃での燃焼から再スタートする。
これにより、N2Oの排出の少ないバイオマス燃料F1を用いて、運転を継続することができる。
【0065】
以上、実施例と共に説明したように、本発明によれば、種類の異なる燃料を用いて流動層ボイラで燃焼する場合において、燃焼排ガス中のN2Oの除去を効率的に行うことができる。これにより温暖化係数が二酸化炭素(CO2)の310倍と高いN2Oの排出の少ない流動層ボイラ燃焼を行うことができる。
【0066】
なお、炉内供給触媒を用いて、循環流動層ボイラ11内での炉内混合型触媒方法による、N2Oの分解処理には、投入触媒の消費量がそのままランニングコストになるため、定常的に運用するのは困難な場合もある。
しかしながら、燃料種が多種多様でしかも工場操業等の負荷変動に追従しなければならない場合に、ランニングコストが低い静置型触媒部17、28によるN2Oの分解処理との併用型とすることにより、N2Oの排出の少ない流動層ボイラ燃焼を行うことができる。
【0067】
また、本実施例では、流動層ボイラとして循環型の循環流動層ボイラを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば気泡型の流動層ボイラにも適用することができる。
【実施例2】
【0068】
図2は、実施例2に係る流動層処理システムの概略図である。実施例1の流動層処理システムの構成と同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係る流動層処理システム10Bは、バグフィルタ16の後流側の燃焼排ガスラインL4から排ガスを分岐した後、循環流動層ボイラ11側へ戻る分岐・循環ラインL8を設け、この分岐・循環ラインL8に熱交換器36及び第3の静置型触媒部37を介装している。
【0069】
循環流動層ボイラ11での燃料Fによっては、燃料排ガス12中の煤塵量が多いものが存在する。このような燃焼排ガス12を処理する場合には、バグフィルタ16で煤塵を除塵した後、熱交換器36で排ガスを再加熱し、その後第3の静置型触媒37を通して、N2Oを分解・除去するようにすることができる。
【0070】
第3の静置型触媒部37で用いられるN2Oを還元・除去する触媒としては、例えば鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)を担持したゼオライト触媒、メタロシリケート触媒(鉄(Fe)、ロジウム(Rh)交換)、貴金属触媒(例えばロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)等)、酸化チタン(TiO2)を挙げることができる。ゼオライト触媒としては、例えばベータ型触媒、ZSM−5型触媒、モルデナイト型触媒を例示することができる。この静置型触媒の形状としては、ハニカム型触媒とすることが好ましい。
【0071】
なお、燃焼排ガス12の再加熱は間接加熱又は直接加熱のどちらでもよく、例えば間接加熱の場合は、図2に示すように、循環流動層ボイラ11の流動層内管の熱交換器36にて熱交換して、例えば300〜400℃程度まで上昇させ、その後第3の静置型触媒部37に加熱した排ガスを通気して、排ガス中のN2Oを分解・除去する。
【0072】
なお、セラミックフィルタ19、伝熱部13内の第1の静置型触媒部17、17をバイパスするバイパスラインL20、L21、L22を設け、燃焼排ガス12中の煤塵濃度が高い場合には、切替弁29を切替て、第1の静置型触媒部17、及び第2の静置型触媒部28を通過させて、バグフィルタ16で除塵した後、切替弁33を切替て、燃焼排ガス12を分岐・循環ラインL8へ導入し、熱交換器36で加熱した後、第3の静置型触媒部37に通気して排ガスを加温し、排ガス中のN2Oを分解・除去するようにしている。
【0073】
この結果、煤塵量が多い燃焼排ガス12の場合には、セラミックフィルタ19、第1の静置型触媒部17、17及び第2の静置型触媒部28をバイパスさせて、これらの触媒の被毒を回避すると共に、バグフィルタ16で除塵した後、切替弁33を切替て、燃焼排ガス12を分岐・循環ラインL8へ導入し、熱交換器36で加熱した後、第3の静置型触媒37に通気して、燃焼排ガス12中のN2Oを分解・除去することができる。
【実施例3】
【0074】
図3は、実施例3に係る流動層処理システムの概略図である。実施例1及び2の流動層処理システムの構成と同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、本実施例に係る流動層処理システム10Cは、バグフィルタ16の後流側の燃焼排ガスラインL4にから分岐する分岐・循環ラインL8を設け、この分岐・循環ラインL8に熱交換器36及び第3の静置型触媒部37を介装している。
本実施例では、循環流動層ボイラ11から排出される灰23を冷却するベットアッシュクーラ35に熱交換器36を設置して、排ガスを熱交換して例えば300〜400℃程度まで上昇させ、その後第3の静置型触媒部37に通気して、排ガス中のN2Oを分解・除去する。
【0075】
ここで、実施例2及び3では、セラミックフィルタ19、第1の静置型触媒部17、17及び第2の静置型触媒部28を設置した流動層処理システムに第3の静置型触媒部37を追加したものを例示し、併用型としているが、本発明は、これに限定されず、セラミックフィルタ19、第1の静置型触媒部17、17及び第2の静置型触媒部28を設置していない処理システムにおいて、分岐・循環ラインL8を、熱交換器36及び第3の静置型触媒部37を設け、バグフィルタ16で煤塵を除塵した後、熱交換器36で排ガスを再加熱し、その後第3の静置型触媒部37を通して、煤塵濃度が高い燃焼排ガス12中のN2Oを分解・除去するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10A〜10C 流動層処理システム
11 循環流動層ボイラ
12 燃焼排ガス
13 伝熱部
14 空気
15 空気予熱器
16 バグフィルタ
17 第1の静置型触媒部
20 還元剤
21 還元剤供給部
28 第2の静置型触媒部
31 炉内供給触媒
36 熱交換器
37 第3の静置型触媒部
F1 バイオマス燃料
F2 石炭燃料
F3 石油コークス燃料
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼設備から排出される排ガス中の亜酸化窒素(N2O)の含有量の大幅な低減を図る流動層処理システム及び流動層燃焼排ガスのN2O除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の第二次評価報告書(1995)において、温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)として、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄が指定され、近年の法規制強化から温室効果ガスの削減が急務となっている。
【0003】
この温室効果ガス(GHG)において、特に亜酸化窒素(N2O)の温暖化係数は、二酸化炭素(CO2)の310倍とされており、その発生量の低減が切望されている。
【0004】
そこで、従来において、循環流動層ボイラでのフリーボード部での温度を850〜950℃と高温に維持して温室効果ガスであるN2Oの低減を図ることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−130641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、流動層設備において、高温(850℃以上)で運転する場合には、亜酸化窒素(N2O)の発生量は低減されるものの、高温燃焼により排ガス中の飛灰の溶融や、灰付着の問題が後流側の対流伝熱部で発生する。よって、循環流動層ボイラにおいては、900℃を超えての高温燃焼を行うことは装置面および運転面で制約が多い、という問題がある。
【0007】
そこで、流動層処理設備における安定運転温度の800〜900℃での運転を行いつつ、排ガス中の亜酸化窒素(N2O)の低減を図る流動層処理システムの出現が切望されている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、燃焼設備から排出される排ガス中の亜酸化窒素(N2O)の含有量の大幅な低減を図る流動層処理システム及び流動層燃焼排ガスのN2O除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラと、前記流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱部と、前記伝熱部の後流側に設けられ、前記流動層ボイラに供給する空気を予熱する空気予熱器と、前記空気予熱器の後流側に設けられ、燃焼排ガス中の煤塵を除塵する除塵装置とを具備すると共に、前記伝熱部が少なくとも一以上の過熱器と、少なくとも一以上の節炭器とを有し、且つ、前記伝熱部内に、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部を設け、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記流動層ボイラと伝熱部との間の燃焼排ガス排出ラインに、還元剤を供給する還元剤供給部を具備することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0012】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記流動層ボイラ内に炉内供給触媒を供給する炉内触媒供給部を具備することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0013】
第5の発明は、第3又は4の発明において、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤の供給量を増加することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0014】
第6の発明は、第3乃至5のいずれか一つの発明において、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、前記流動層ボイラの燃焼温度を高温側に制御することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0015】
第7の発明は、第4乃至6のいずれか一つの発明において、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、炉内供給触媒の供給量を増加することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0016】
第8の発明は、第1乃至7のいずれか一つの発明において、前記除塵装置で除去した煤塵から有価金属を回収する金属回収手段と、回収された金属を触媒として燃焼排ガスに供給する触媒供給部を具備することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0017】
第9の発明は、第1乃至8のいずれか一つの発明において、前記伝熱部の後流側の燃焼排ガスラインに設けられ、処理ガス中のN2Oを除去する第2の静置型触媒部を有することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0018】
第10の発明は、第1乃至9のいずれか一つの発明において、前記除塵装置の後流側で燃焼排ガスを分岐した後戻る分岐・循環ラインを設け、この分岐・循環ラインに熱交換器及び第3の静置型触媒部を介装し、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0019】
第11の発明は、第1乃至10のいずれか一つの発明において、前記伝熱部の前流側に設けられ、処理ガス中の煤塵を除去する触媒を担持したセラミックフィルタを有することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0020】
第12の発明は、供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラと、前記流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱部と、前記伝熱部の後流側に設けられ、前記流動層ボイラに供給する空気を予熱する空気予熱器と、前記空気予熱器の後流側に設けられ、燃焼排ガス中の煤塵を除塵する除塵装置とを具備すると共に、前記除塵装置の後流側で燃焼排ガスを分岐した後、前記流動層ボイラ側へ戻る分岐・循環ラインを設け、この分岐・循環ラインに熱交換器及び第3の静置型触媒部を介装し、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システムにある。
【0021】
第13の発明は、第1乃至12のいずれか一つの発明において、前記燃料が、バイオマス燃料、石炭燃料、石油コークス燃料の少なくとも一つであることを特徴とする流動層処理システムにある。
【0022】
第14の発明は、供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する、少なくとも一以上の過熱器及び少なくとも一以上の節炭器を具備する伝熱部において、前記伝熱部内で、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部を設置し、燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0023】
第15の発明は、第14の発明において、前記流動層ボイラと伝熱部との間の燃焼排ガス排出ラインに、還元剤を供給することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0024】
第16の発明は、第14又は15の発明において、前記流動層ボイラに炉内供給触媒を供給し、炉内にてN2Oの発生を抑制することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0025】
第17の発明は、第15の発明において、前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤の供給量を増加する制御を実行することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0026】
第18の発明は、第15又は16の発明において、前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、前記流動層ボイラの燃焼温度を高温側に制御する制御装置を具備することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0027】
第19の発明は、第16の発明において、前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、炉内供給触媒の供給量を増加する制御を実行する制御装置を具備することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【0028】
第20の発明は、第1乃至13のいずれか一つの流動層処理システムを用い、前記燃料として、先ずバイオマス燃料を用いて燃焼し、次いで、石炭燃料及び/又は石油コークス燃料を用いて燃焼することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法にある。
【発明の効果】
【0029】
本発明の流動層処理システムによれば、流動層ボイラから排出される燃焼排ガス中の亜酸化窒素(N2O)の含有量の大幅な低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、実施例1に係る流動層処理システムの概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係る流動層処理システムの概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係る流動層処理システムの概略図である。
【図4】図4は、アンモニアとプロピレンを用いたN2O及びNOx除去率の関係図である。
【図5】図5は、炉内供給触媒の供給量とN2O及びNOxの濃度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る流動層処理システムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0032】
図1は、実施例1に係る流動層処理システムの概略図である。図4は、アンモニアとプロピレンを用いたN2O及びNOx除去率の関係図である。図5は、炉内供給触媒の供給量とN2O及びNOxの濃度との関係図である。
図1に示すように、本実施例に係る流動層処理システム10Aは、供給される燃料(バイオマス燃料F1、石炭燃料F2、石油コークス燃料F3)Fを流動層燃焼処理する循環流動層ボイラ11と、循環流動層ボイラ11から排出される燃焼排ガス12の熱を回収する伝熱部13と、前記伝熱部13の後流側に設けられ、前記循環流動層ボイラ11に供給する空気14を予熱する空気予熱器15と、前記空気予熱器15の後流側に設けられ、燃焼排ガス12中の煤塵を除塵する除塵装置であるバグフィルタ16とを具備すると共に、前記伝熱部13が少なくとも一以上の過熱器(本実施例では2つの過熱器13a1、13a2)と、少なくとも一以上の節炭器(本実施例では2つの節炭器13b1、13b2)とを有し、前記伝熱部13内に、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部17を設け、燃焼排ガス12中のN2Oを除去するものである。
図1中、符号18は煙突、L1〜L4は、燃焼排ガス排出ライン、L11〜L13は燃料供給ライン、L14は循環流動層ボイラ11に空気14を供給する空気供給ライン、L15は循環流動層ボイラ11に起動用燃料22を供給する起動用燃料供給ラインを図示する。
【0033】
本実施例では、伝熱部13の2次過熱器13a2と1次節炭器13b1との間、1次節炭器13b1と2次節炭器13b2との間の2箇所に、各々第1の静置型触媒部17を設けているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
循環流動層ボイラ11からの灰23は、ベットアッシュクーラ35で冷却されて、別途回収・処理される。
また、バグフィルタ16で回収された灰26は、灰回収ラインL5を介して灰26中の金属を回収する金属回収手段24に送られ、ここで回収金属25を分離した後、別途回収・処理される。
金属回収手段24で回収された回収金属25は、煙道内触媒供給部27により、燃焼排ガスラインL3内に供給しており、煙道内での金属触媒作用を発揮させている。
【0035】
また、バグフィルタ16の前流側の燃焼排ガスラインL3に、図示しない触媒供給手段から触媒(Fe粉、活性炭等)を噴霧・添加し、排ガス中のN2Oを更に分解するようにしてもよい。
【0036】
また、本実施例では、伝熱部13の後流側の燃焼排ガスラインL2に第2の静置型触媒部28を更に介装しており、通常は、バイパス排ガスラインL6に燃焼排ガス12を流すようにしている。
そして、必要に応じて、切替弁29を切替て、第2の静置型触媒部28を通過させて、燃焼排ガス12中のN2Oを除去するようにしている。
【0037】
さらに、本実施例では、循環流動層ボイラ11内に、触媒ラインL7を介して炉内供給触媒31を供給する炉内触媒供給部32を設けており、循環流動層ボイラ11から排出される燃焼排ガス12中のN2Oの除去を行うようにしている。
【0038】
本実施例における伝熱部13内に設ける第1の静置型触媒部17及び第2の静置型触媒部28で各々用いられるN2Oを還元・除去する触媒としては、例えば鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)を担持したゼオライト触媒、メタロシリケート触媒(鉄(Fe)、ロジウム(Rh)交換)、貴金属触媒(例えばロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)等)、酸化チタン(TiO2)を挙げることができる。
ゼオライト触媒としては、例えばベータ型触媒、ZSM−5型触媒、モルデナイト型触媒を例示することができる。
この静置型触媒の形状としては、ハニカム型触媒とすることが好ましい。
【0039】
伝熱部13でも2次過熱器13a2の後流側では、燃焼排ガス12の温度は、500℃以下、1次節炭器13b1の後流側では、350℃程度であるので、鉄系、銅系触媒等が触媒機能を発揮する。
また、ハニカム型触媒の触媒機能を発揮させるために、必要に応じて図示しない加熱手段(間接加熱又は直接加熱)により、触媒活性を高めるようにしている。
【0040】
また、第1の静置型触媒部17及び第2の静置型触媒部28の触媒形状としては、ハニカム型触媒が好適である。
【0041】
本実施例では、循環流動層ボイラ11から排出される燃焼排ガス12中の煤塵を除去するための、セラミックフィルタ19を伝熱部13の前流側に設けており、第1の静置型触媒部17及び第2の静置型触媒部28で用いられる触媒被毒の防止を図っている。
このセラミックフィルタ19には、その設置場所が900℃程度の高温環境であるので、高温耐久性を有するアルミナを主成分とする触媒を担持することができる。
これにより、N2Oを効率よく除去することができる。
【0042】
また、本実施例においては、セラミックフィルタ19の前流側において、燃焼排ガス12中に還元剤20を供給する還元剤供給部21が設けられている。
ここで、還元剤20を供給して伝熱部13に設けた第1の静置型触媒部17での還元処理を促進している。
【0043】
この還元剤20としては、例えばアンモニア、尿素などの窒素系還元剤、メタン、エタン、プロパン、プロピレン、メタノール、ジメチルエーテル等の炭化水素系還元剤、水素、CO等を挙げることができる。
【0044】
特に、還元剤20として、プロピレンは、図4に示すように、N2Oの除去率が、アンモニアよりも高いので、N2O除去を図る点で好ましい。
この試験は、触媒が鉄系触媒を用い、燃焼温度は500℃とし、模擬燃焼排ガス中にN2Oを含ませ、還元剤(アンモニア:114ppm、プロピレン:140ppm)の相違によるN2O除去率を求めた。
【0045】
図4の結果に示すように、アンモニアは脱硝の還元剤としては、有効であるが、N2Oの除去率はやや低い(70%)ものであった。
これに対し、プロピレンは、脱硝機能としては無効であるが、N2Oの除去率は97%と高いものであった。
【0046】
燃焼排ガス12中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤20の供給量を徐々に増加するようにして、N2Oの除去を効率よく行うようにしている。
【0047】
なお、還元剤20を供給しない場合においても、静置型触媒部の触媒活性で、N2Oを除去することができる場合には、必要に応じて還元剤20を適宜供給するようにすればよく、必ずしも供給するものではない。
【0048】
ここで、燃焼排ガス12中に含まれるN2Oの含有量は、N2O計測計(N2Oセンサ)30により求めるようにしており、例えば循環流動層ボイラ11の後流側の燃焼排ガスラインL1、伝熱部13の後流側の燃焼排ガスラインL2、第2の静置型触媒部28の後流側の燃焼排ガスラインL2等の必要箇所に各々設け、N2O濃度を計測するようにしている。
【0049】
N2Oセンサ30としては、例えば非分散形赤外線吸収法(NDIR法)による検出器、ガスクロマトグラフ・電子捕獲型検出器(Electron Capture Detector:ECD)を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
そして、燃焼排ガス12中のN2O濃度が高い場合には、循環流動層ボイラ11の燃焼の制御、燃料種の変更、還元剤20の種類の変更等を適宜行い、N2Oの排出量が所定の排出基準を保持するようにしている。
【0051】
ここで、燃料の制御によるN2Oの排出量の低減を図る手段について説明する。
燃料Fとして、石炭燃料F2等に較べてN2Oの発生量が少ない例えばバイオマス燃料F1のほかに、例えば廃棄タイヤ、産業廃棄物固化物(例えばごみ固形燃料(Refuse Derived Fuel:RDF、Refuse Paper & Plastic Fuel:RPF)等)、汚泥灰燃料等を用いることができる。
【0052】
先ず、燃料Fとして、例えばバイオマス燃料F1を用いて、循環流動層ボイラ11で燃焼を開始する。燃焼開始温度は、通常循環流動層ボイラ11での好適燃焼温度である800℃から850℃の上限温度である850℃からとする。
【0053】
一般にバイオマス燃料F1の燃焼ではN2Oの発生は少ないとされているが、バイオマス燃料F1の組成や種類の相違等から、この850℃で燃焼を所定時間を継続すると、N2O濃度が所定基準値(例えば10ppm)に達する場合がある。
この所定基準に達した際には、燃焼温度を少し高く(例えば860℃)設定し、高温燃焼によりN2Oの発生量の低減を図る。
【0054】
これにより、バイオマス燃料F1を用いて、低N2Oの燃焼を維持することができる。
この伝熱部13のN2Oの除去が適正である場合には、後流側の第2の静置型触媒部28及び煙道内触媒供給部27での触媒が不要となる。
【0055】
よって、この場合には、第2の静置型触媒部28をバイパスするバイパス排ガスラインL6に燃焼排ガス12を通過させていると共に、回収金属25の供給は停止している。
これに対し、伝熱部13の後流側の燃焼排ガスラインL2及び第2の静置型触媒部28の後流側の燃焼排ガスラインL2に設置したN2Oセンサ30で、N2O濃度が所定値(10ppm)を超える場合には、第2の静置型触媒部28を通過するように切替弁29を切替、又は回収金属25の供給を開始して、N2Oの除去をするようにしている。
【0056】
なお、通常の所定値(N2O:10ppm)以下であっても、これらの触媒を通過及び供給することで、N2Oが除去されるので、煙突18から外部に排出するN2Oの排出濃度を下げることに寄与できる。
【0057】
そして、燃焼温度上昇によるN2Oの低減措置を図って、例えば900℃に達した場合には、燃料Fを例えばバイオマス燃料F1から石炭燃料F2、石油コークス燃料F3に切替て、流動層燃焼を継続する。
【0058】
固定炭素が多い石炭燃料F2や石油コークス燃料F3を用いて燃焼する場合には、静置型の触媒によるN2Oの除去に加えて、さらに炉内触媒供給部32から炉内供給触媒31を循環流動層ボイラ11内に徐々に投入して、循環流動状態でN2Oを分解・除去し、循環流動層ボイラ11から排出する燃焼排ガス12のN2O濃度をバイオマス燃料F1の排出量と同等程度までN2Oセンサ30で監視しつつ低下させるようにしている。
【0059】
これにより、静置型の触媒では、バイオマス燃料F1を用いた場合の燃焼排ガス12中のN2O濃度と同様の第1の静置型触媒部17及び/又は第2の静置型触媒部28での処理でN2Oの低減を図ることができる。
【0060】
ここで、炉内供給触媒31としては、例えば酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)等を用いることができる。
【0061】
ここで、循環流動層ボイラ11に供給する炉内供給触媒31の供給量は、流動材と完全に置換する100%としてもよい。なお、この場合は炉内供給触媒31の供給量が多くなるので、ランニングコストが高くなる。
【0062】
また、図4を用いて前述したように、アンモニアは脱硝の還元剤としては、有効であるが、N2Oの除去率はやや低い(70%)ものである。
これに対し、プロピレンは、脱硝機能としては無効であるが、N2Oの除去率は97%と高いので、炉内供給触媒31を供給すると共に、還元剤20を用いる場合においては、最初プロピレンを用い、その後、炉内供給触媒31であるアルミナの供給が30wt%を超える場合に、アンモニアに切替ることで、効率的なN2Oの除去を行うことができる。
【0063】
これは、炉内供給触媒31としてアルミナを供給する場合、その供給当初は、NOxの発生はないので、プロピレンを用いて、N2O除去を行うにしている。そして、アルミナの供給量が増加して酸化触媒としての作用によりNOxの発生が多くなるアルミナ供給が30wt%を超える際に、プロピレンからアンモニアに還元剤20を切替え、脱硝を効率よく行うようにしている。
この還元剤20をアンモニアに切り替えても、図5に示すように、N2Oの濃度は低下しているので、プロピレンに較べてN2O除去効率がやや低いものであっても、N2O除去は確実に行われることとなる。
【0064】
このようにして、バイオマス燃料F1から石炭燃料F2、石油コークス燃料F3に順次切り替えて、循環流動層ボイラ11で燃焼させた結果、N2Oセンサ30で、所定基準値を超えるような場合には、もはやこれ以上運転を継続すると、基準値以上のN2Oが燃焼排ガス12と共に外部に放出されるので、現状の燃料状態(例えば石油コークス燃料F3)から、N2Oの排出が少ないバイオマス燃料F1に切替、850℃での燃焼から再スタートする。
これにより、N2Oの排出の少ないバイオマス燃料F1を用いて、運転を継続することができる。
【0065】
以上、実施例と共に説明したように、本発明によれば、種類の異なる燃料を用いて流動層ボイラで燃焼する場合において、燃焼排ガス中のN2Oの除去を効率的に行うことができる。これにより温暖化係数が二酸化炭素(CO2)の310倍と高いN2Oの排出の少ない流動層ボイラ燃焼を行うことができる。
【0066】
なお、炉内供給触媒を用いて、循環流動層ボイラ11内での炉内混合型触媒方法による、N2Oの分解処理には、投入触媒の消費量がそのままランニングコストになるため、定常的に運用するのは困難な場合もある。
しかしながら、燃料種が多種多様でしかも工場操業等の負荷変動に追従しなければならない場合に、ランニングコストが低い静置型触媒部17、28によるN2Oの分解処理との併用型とすることにより、N2Oの排出の少ない流動層ボイラ燃焼を行うことができる。
【0067】
また、本実施例では、流動層ボイラとして循環型の循環流動層ボイラを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば気泡型の流動層ボイラにも適用することができる。
【実施例2】
【0068】
図2は、実施例2に係る流動層処理システムの概略図である。実施例1の流動層処理システムの構成と同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係る流動層処理システム10Bは、バグフィルタ16の後流側の燃焼排ガスラインL4から排ガスを分岐した後、循環流動層ボイラ11側へ戻る分岐・循環ラインL8を設け、この分岐・循環ラインL8に熱交換器36及び第3の静置型触媒部37を介装している。
【0069】
循環流動層ボイラ11での燃料Fによっては、燃料排ガス12中の煤塵量が多いものが存在する。このような燃焼排ガス12を処理する場合には、バグフィルタ16で煤塵を除塵した後、熱交換器36で排ガスを再加熱し、その後第3の静置型触媒37を通して、N2Oを分解・除去するようにすることができる。
【0070】
第3の静置型触媒部37で用いられるN2Oを還元・除去する触媒としては、例えば鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)を担持したゼオライト触媒、メタロシリケート触媒(鉄(Fe)、ロジウム(Rh)交換)、貴金属触媒(例えばロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)等)、酸化チタン(TiO2)を挙げることができる。ゼオライト触媒としては、例えばベータ型触媒、ZSM−5型触媒、モルデナイト型触媒を例示することができる。この静置型触媒の形状としては、ハニカム型触媒とすることが好ましい。
【0071】
なお、燃焼排ガス12の再加熱は間接加熱又は直接加熱のどちらでもよく、例えば間接加熱の場合は、図2に示すように、循環流動層ボイラ11の流動層内管の熱交換器36にて熱交換して、例えば300〜400℃程度まで上昇させ、その後第3の静置型触媒部37に加熱した排ガスを通気して、排ガス中のN2Oを分解・除去する。
【0072】
なお、セラミックフィルタ19、伝熱部13内の第1の静置型触媒部17、17をバイパスするバイパスラインL20、L21、L22を設け、燃焼排ガス12中の煤塵濃度が高い場合には、切替弁29を切替て、第1の静置型触媒部17、及び第2の静置型触媒部28を通過させて、バグフィルタ16で除塵した後、切替弁33を切替て、燃焼排ガス12を分岐・循環ラインL8へ導入し、熱交換器36で加熱した後、第3の静置型触媒部37に通気して排ガスを加温し、排ガス中のN2Oを分解・除去するようにしている。
【0073】
この結果、煤塵量が多い燃焼排ガス12の場合には、セラミックフィルタ19、第1の静置型触媒部17、17及び第2の静置型触媒部28をバイパスさせて、これらの触媒の被毒を回避すると共に、バグフィルタ16で除塵した後、切替弁33を切替て、燃焼排ガス12を分岐・循環ラインL8へ導入し、熱交換器36で加熱した後、第3の静置型触媒37に通気して、燃焼排ガス12中のN2Oを分解・除去することができる。
【実施例3】
【0074】
図3は、実施例3に係る流動層処理システムの概略図である。実施例1及び2の流動層処理システムの構成と同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、本実施例に係る流動層処理システム10Cは、バグフィルタ16の後流側の燃焼排ガスラインL4にから分岐する分岐・循環ラインL8を設け、この分岐・循環ラインL8に熱交換器36及び第3の静置型触媒部37を介装している。
本実施例では、循環流動層ボイラ11から排出される灰23を冷却するベットアッシュクーラ35に熱交換器36を設置して、排ガスを熱交換して例えば300〜400℃程度まで上昇させ、その後第3の静置型触媒部37に通気して、排ガス中のN2Oを分解・除去する。
【0075】
ここで、実施例2及び3では、セラミックフィルタ19、第1の静置型触媒部17、17及び第2の静置型触媒部28を設置した流動層処理システムに第3の静置型触媒部37を追加したものを例示し、併用型としているが、本発明は、これに限定されず、セラミックフィルタ19、第1の静置型触媒部17、17及び第2の静置型触媒部28を設置していない処理システムにおいて、分岐・循環ラインL8を、熱交換器36及び第3の静置型触媒部37を設け、バグフィルタ16で煤塵を除塵した後、熱交換器36で排ガスを再加熱し、その後第3の静置型触媒部37を通して、煤塵濃度が高い燃焼排ガス12中のN2Oを分解・除去するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10A〜10C 流動層処理システム
11 循環流動層ボイラ
12 燃焼排ガス
13 伝熱部
14 空気
15 空気予熱器
16 バグフィルタ
17 第1の静置型触媒部
20 還元剤
21 還元剤供給部
28 第2の静置型触媒部
31 炉内供給触媒
36 熱交換器
37 第3の静置型触媒部
F1 バイオマス燃料
F2 石炭燃料
F3 石油コークス燃料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラと、
前記流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱部と、
前記伝熱部の後流側に設けられ、前記流動層ボイラに供給する空気を予熱する空気予熱器と、
前記空気予熱器の後流側に設けられ、燃焼排ガス中の煤塵を除塵する除塵装置とを具備すると共に、
前記伝熱部が少なくとも一以上の過熱器と、少なくとも一以上の節炭器とを有し、且つ、前記伝熱部内に、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部を設け、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前循環記流動層ボイラと伝熱部との間の燃焼排ガス排出ラインに、還元剤を供給する還元剤供給部を具備することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記流動層ボイラ内に炉内供給触媒を供給する炉内触媒供給部を具備することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤の供給量を増加することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一つにおいて、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、前記流動層ボイラの燃焼温度を高温側に制御することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一つにおいて、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、炉内供給触媒の供給量を増加することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、
前記除塵装置で除去した煤塵から有価金属を回収する金属回収手段と、
回収された金属を触媒として燃焼排ガスに供給する触媒供給部を具備することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、
前記伝熱部の後流側の燃焼排ガスラインに設けられ、処理ガス中のN2Oを除去する第2の静置型触媒部を有することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一つにおいて、
前記除塵装置の後流側で燃焼排ガスを分岐した後戻る分岐・循環ラインを設け、この分岐・循環ラインに熱交換器及び第3の静置型触媒部を介装し、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つにおいて、
前記伝熱部の前流側に設けられ、処理ガス中の煤塵を除去する触媒を担持したセラミックフィルタを有することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項12】
供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラと、
前記流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱部と、
前記伝熱部の後流側に設けられ、前記流動層ボイラに供給する空気を予熱する空気予熱器と、
前記空気予熱器の後流側に設けられ、燃焼排ガス中の煤塵を除塵する除塵装置とを具備すると共に、
前記除塵装置の後流側で燃焼排ガスを分岐した後、前記流動層ボイラ側へ戻る分岐・循環ラインを設け、この分岐・循環ラインに熱交換器及び第3の静置型触媒部を介装し、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一つにおいて、
前記燃料が、バイオマス燃料、石炭燃料、石油コークス燃料の少なくとも一つであることを特徴とする流動層処理システム。
【請求項14】
供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する、少なくとも一以上の過熱器及び少なくとも一以上の節炭器を具備する伝熱部において、
前記伝熱部内で、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部を設置し、燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記流動層ボイラと伝熱部との間の燃焼排ガス排出ラインに、還元剤を供給することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項16】
請求項14又は15において、
前記流動層ボイラに炉内供給触媒を供給し、炉内にてN2Oの発生を抑制することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項17】
請求項15において、
前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤の供給量を増加する制御を実行することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項18】
請求項15又は16において、
前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、前記流動層ボイラの燃焼温度を高温側に制御する制御装置を具備することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項19】
請求項16において、
前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、炉内供給触媒の供給量を増加する制御を実行する制御装置を具備することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項20】
請求項1乃至13のいずれか一つの流動層処理システムを用い、
前記燃料として、先ずバイオマス燃料を用いて燃焼し、次いで、石炭燃料及び/又は石油コークス燃料を用いて燃焼することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項1】
供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラと、
前記流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱部と、
前記伝熱部の後流側に設けられ、前記流動層ボイラに供給する空気を予熱する空気予熱器と、
前記空気予熱器の後流側に設けられ、燃焼排ガス中の煤塵を除塵する除塵装置とを具備すると共に、
前記伝熱部が少なくとも一以上の過熱器と、少なくとも一以上の節炭器とを有し、且つ、前記伝熱部内に、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部を設け、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前循環記流動層ボイラと伝熱部との間の燃焼排ガス排出ラインに、還元剤を供給する還元剤供給部を具備することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記流動層ボイラ内に炉内供給触媒を供給する炉内触媒供給部を具備することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤の供給量を増加することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一つにおいて、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、前記流動層ボイラの燃焼温度を高温側に制御することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一つにおいて、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、炉内供給触媒の供給量を増加することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、
前記除塵装置で除去した煤塵から有価金属を回収する金属回収手段と、
回収された金属を触媒として燃焼排ガスに供給する触媒供給部を具備することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、
前記伝熱部の後流側の燃焼排ガスラインに設けられ、処理ガス中のN2Oを除去する第2の静置型触媒部を有することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一つにおいて、
前記除塵装置の後流側で燃焼排ガスを分岐した後戻る分岐・循環ラインを設け、この分岐・循環ラインに熱交換器及び第3の静置型触媒部を介装し、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つにおいて、
前記伝熱部の前流側に設けられ、処理ガス中の煤塵を除去する触媒を担持したセラミックフィルタを有することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項12】
供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラと、
前記流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する伝熱部と、
前記伝熱部の後流側に設けられ、前記流動層ボイラに供給する空気を予熱する空気予熱器と、
前記空気予熱器の後流側に設けられ、燃焼排ガス中の煤塵を除塵する除塵装置とを具備すると共に、
前記除塵装置の後流側で燃焼排ガスを分岐した後、前記流動層ボイラ側へ戻る分岐・循環ラインを設け、この分岐・循環ラインに熱交換器及び第3の静置型触媒部を介装し、前記燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層処理システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一つにおいて、
前記燃料が、バイオマス燃料、石炭燃料、石油コークス燃料の少なくとも一つであることを特徴とする流動層処理システム。
【請求項14】
供給される燃料を流動層燃焼処理する流動層ボイラから排出される燃焼排ガスの熱を回収する、少なくとも一以上の過熱器及び少なくとも一以上の節炭器を具備する伝熱部において、
前記伝熱部内で、少なくとも一以上の第1の静置型触媒部を設置し、燃焼排ガス中のN2Oを除去することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記流動層ボイラと伝熱部との間の燃焼排ガス排出ラインに、還元剤を供給することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項16】
請求項14又は15において、
前記流動層ボイラに炉内供給触媒を供給し、炉内にてN2Oの発生を抑制することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項17】
請求項15において、
前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、還元剤の供給量を増加する制御を実行することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項18】
請求項15又は16において、
前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、前記流動層ボイラの燃焼温度を高温側に制御する制御装置を具備することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項19】
請求項16において、
前記流動層ボイラ及び伝熱部の後流側の燃焼排ガス排出ラインの各々に、N2O濃度を計測するN2O計測計を具備し、
前記燃焼排ガス中のN2O濃度が所定閾値を超えた際、炉内供給触媒の供給量を増加する制御を実行する制御装置を具備することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【請求項20】
請求項1乃至13のいずれか一つの流動層処理システムを用い、
前記燃料として、先ずバイオマス燃料を用いて燃焼し、次いで、石炭燃料及び/又は石油コークス燃料を用いて燃焼することを特徴とする流動層燃焼排ガスのN2O除去方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−50292(P2013−50292A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−75180(P2012−75180)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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