説明

流動性ゲルの製造方法

【課題】飲料、ドレッシング、たれ等のゾル状食品にジェランガムを用いた流動性のあるゲルの提供。
【解決手段】ジェランガムを含有させ加熱撹拌溶解した水溶液を撹拌しながらゲル化点以下まで冷却することにより,また,ジェランガムを含有した分散液またはジェランガムを含有させ加熱撹拌溶解した水溶液を超高温加熱処理法を利用し、冷却温度をゲル化点以下まで下げることにより流動性のあるゲルを製造する。
【効果】ゲルは、均一な流動性があり、しかも80〜100℃の殺菌を行っても、ゲルの融解はなく、滑らかな流動性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、ドレッシング、たれ等のゾル状食品にジェランガムを用い、流動性のあるゲルを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジェランガムはゼリーや水羊羹、ジャム様食品等のゲル状食品に用いられているゲル化性のガム質であるが、本発明でいう流動性のあるゲルとは、ジェランガムを一度ゲル化させた後に、潰すことにより、細かい粒状ゲルとし、ゾル様の流動性を持たせたものである。
【0003】
流動性のあるゲルとしては、ジェランガム溶液を缶に充填し、冷却してゲル化したものを消費者が缶を振ることで、ゲルを潰し、流動性を持たせる方法が知られている(特許文献1)。また、ドレッシング等では、カラギナンを溶解し、一度ゲル化させたものを潰してから充填する方法で流動性のあるゲルを利用している。
【特許文献1】特開平5−268918
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前者では、輸送中にゲルが潰れたり、消費者が最終製品を振ることによってゲルを潰すため、一部分だけゲルが潰れたり、振り方により大きさが様々であり、一定の状態の流動性のあるゲルを作ることは困難であった。また、後者では殺菌すると流動性のあるゲルが融解し、冷却すると元のゲル状態となり流動性を持たないため、高温殺菌は不可能であった。しかもこのような方法では、一定した流動性のあるゲルを連続的に大量生産することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、一定した流動性のあるゲルを大量生産するため、水100部(重量、以下同じ)に対し、ジェランガムを0.02〜1.0部、更に必要であれば、カルシウム、ナトリウム等の塩類を0.01〜0.5部添加し、加熱攪拌溶解した後、連続的に攪拌しながら、5〜40℃まで冷却を行う。
【0006】
また、水100部に対し、ジェランガムを0.02〜1.0部、更に必要であれば、カルシウム、ナトリウム等の塩類を0.01〜0.5部添加した水溶液または分散液を超高温加熱処理法を利用し、取り出し温度を5〜40℃に調整する。ジェランガムのゲル化点は、通常約35℃であが、水溶液中の糖度や果汁含量、塩類含量により変動する。ジェランガムを含有する水溶液をこのゲル化点より5〜15℃下げることで、冷却中にゲル化が起こり、攪拌または超高温加熱殺菌法により、流動性のあるゲルを作ることが出来る。
【0007】
超高温加熱処理法は、牛乳等の液状品の加熱殺菌に用いられ、加熱部で110〜140℃に保持された後、冷却部で55〜75℃に冷却され、充填機等の次工程に行く。この方法では、通常、ゼリー等、糊料を使用して製造する場合、ジェランガムを含有する分散液を、加熱部で殺菌と溶解を同時にする方法や、またジェランガムの水溶液を殺菌のみで使用する方法が取られているが、これらどちらの方法でも、冷却部の温度を5〜40℃に調整し取り出すことにより、流動性のあるゲルを得ることが出来る。
【0008】
ジェランガムの添加量は水100部に対し、0.02部以下であるとゲル化せず、流動性のあるゲルが得られない。また、1.0部以上ではゲルが固くなりすぎ、ゲルが潰れなくなるため、流動性のあるゲルは得られなくなる。ジェランガムはカルシウム、ナトリウム等のカチオンによりゲルを生じるため、カルシウム、ナトリウム等の塩類は、溶液中に食塩を添加する場合やカチオン含量の高い果汁を多く使用する場合は必要ないが、それ以外の場合、塩類を0.01〜0.5部添加することが必要となる。
【0009】
また、カラギナン、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、寒天、タマリンド種子多糖類、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン等の糊料を一種または二種以上併用することで、流動性のあるゲルの食感改良、離水防止および流動性に変化を与えることができ、さまざまな食感、流動性を付与できるため、各種ゾル状食品に利用できる。
【0010】
この方法で得られた流動性のあるゲルは、均一な流動性があり、しかも80〜100℃の殺菌を行っても、ゲルの融解はなく、滑らかな流動性を示す。
【実施例】
【0011】
実施例1
ジェランガム0.05部、クエン酸三ナトリウム0.015部、乳酸カルシウム0.01部を水80部に添加し、80℃で溶解後、5分の1濃縮アップル果汁20部、香料、0.1部添加し、蒸発水を補正し、全量を100部とする。超高温加熱処理法で130℃4秒の殺菌後、取り出し温度を20℃まで冷却し、流動性のあるゲル状態のアップル飲料を得た。このアップル飲料は、無添加のものと比較し、アップルのパルプ感が強調され、しかものどごしのさわやかな飲料となった。
【0012】
実施例2
ジェランガム0.15部、ペクチン0.05部、クエン酸三ナトリウム0.05部を水76部に添加し、80℃で溶解後、醸造酢15.2部、上白糖4部、食塩3部、L−グルタミン酸ナトリウム0.25部、スパイスミックス1部を添加し、25℃まで攪拌しながら冷却し、流動性のあるゲル状態とし、85℃まで加熱後、ホットパック充填し、ノンオイルドレッシングを得た。このノンオイルドレッシングは、野菜に付着性のよい適度の粘度を持っており、しかも、べたつきの少ないあっさりしたノンオイルドレッシングとなった。
【0013】
実施例3
ジェランガム0.5部、カラギナン0.1部、クエン酸三ナトリウム0.1部を水50部に添加し、80℃で溶解後、濃口醤油15部、赤ワイン5部、ガーリックペースト2部、ジンジャーペースト1部、トマトペースト3部、オニオンエキス3部、調味料2部、すりごま1部を添加し、攪拌しながら、25℃まで冷却し、流動性を持つゲル状態とし、80℃まで加熱し、ホットパック充填し、焼肉のたれを得た。この焼肉のたれは、肉への付着性のよい、たれの素材を生かした風味のよい、しかもあっさりした焼肉のたれとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェランガムを含有させ加熱溶解した水溶液を攪拌しながらゲル化点以下まで冷却することを特徴とする流動性のあるゲルの製造方法。
【請求項2】
ジェランガムを含有した分散液、またはジェランガムを含有させ加熱溶解した水溶液を超高温加熱処理法を利用し、冷却温度をゲル化点以下まで下げることを特徴とする流動性のあるゲルの製造方法。

【公開番号】特開2008−263995(P2008−263995A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144068(P2008−144068)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【分割の表示】特願平6−80633の分割
【原出願日】平成6年4月19日(1994.4.19)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】