説明

流路切替え装置

【課題】 塗装システムのような流体供給システムにおいて好適に用いられる流路切替え装置を提供する。
【解決手段】 切替えバルブ装置140は、流体が導入される第1の流入口155及び流体が導出される第2の流出口163に連通する第1のシリンダ部143と、第1の流出口156及び第2の流入口166に連通する第2のシリンダ部144と、第1のシリンダ部143と第2のシリンダ部144とを接続する接続部157と、第1及び第2のシリンダ部143、144において流体の圧力により移動自在で、それぞれ第1の流入口155と第2の流出口163との間及び第1の流出口156と第2の流入口166との間を開閉するように挿入された第1及び第2のバルブ146、147と、第1及び第2のシリンダ部143、144において第1及び第2のバルブ146、147を開閉移動させるアクチュエータ151、152とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば静電塗装システムにおいて、塗料や洗浄液等の流体を塗装ガン等に供給する流路を切り替える手段として用いられる流路切替え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の静電塗装システムとして、水供給装置から供給される水を純水にし、この純水で塗装ガンに装着された塗料カートリッジ内の塗料を押し出して塗料ノズルから噴出させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この塗装システムでは、塗装ガンは、塗装ガン本体と、この塗装ガン本体に着脱自在に取付けられた塗料カートリッジとしての塗料タンクユニットとからなり、塗料タンクユニットは、塗料を収容する塗料室と、この塗料室に連通する塗料ノズルと、上記の純水が供給される押し出し液室とを備え、これらの塗料室と押し出し液室とがピストンによって区画されている。また、純水供給装置から押し出し室に純水が供給されると、純水がピストンを介して塗料室内の塗料を押し出し、塗料ノズルから噴射させる。
【特許文献1】特開2006−346596公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の塗装システムでは、塗装頻度の多い色の導電性塗料を取り扱う場合、1回の塗装毎に塗料タンクユニットを交換する必要があり、塗装工数が増える。
【0005】
そこで、カートリッジ式の塗料供給のほかに水又は洗浄液で塗料を押し出す機構を備えることが提案され、その場合には塗料や他の流体の供給を切り替えることが必要となる。そのための手段としてバルブ機構が用いられるが、従来の流体切替えバルブ機構は、構造が複雑であり、重量においても、例えば塗装ロボットに持たせて作動させるには適していなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記塗装システムのような流体供給システムにおいて好適に用いられる流路切替え装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流路切替え装置は、流体が導入される第1及び第2の流入口と、流体が導出される第1及び第2の流出口と、第1の流入口及び第2の流出口に連通する第1のシリンダ部と、第1の流出口及び第2の流入口に連通する第2のシリンダ部と、第1のシリンダ部と第2のシリンダ部とを接続する接続部と、第1及び第2のシリンダ部において前記流体の圧力により移動自在で、それぞれ第1の流入口と第2の流出口との間、及び第1の流出口と第2の流入口との間を開閉するように挿入された第1及び第2のバルブと、第1及び第2のシリンダ部において第1及び第2のバルブの少なくとも一方を開閉移動させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の流路切替え装置においては、後述の塗料又は水、洗浄液等の流体を通過させる場合には、アクチュエータにより、第1バルブを第1の流入口と第2の流出口の間を閉じるように移動させると、第1流入口に入った流体は、第1シリンダ部から、第1シリンダ部と第2シリンダ部とを接続する接続部を通って第2シリンダ部に至り、第2バルブを移動させて、第2シリンダ部から第1流出口を通って流出する。
【0009】
一方、他の流路に供給する場合には、アクチュエータにより、第1バルブを第1の流入口と第2の流出口との間を開くように移動させると、第1流入口に入った流体は、第1シリンダ部から第2の流出口に達して流出する。また、第2流入口に流入した流体は、第2シリンダ部から第1流出口に達して流出する。
【0010】
本発明によれば、上記のように、アクチュエータの作用により、第1のバルブで開かれた流路を通る流体が一定の圧力を十分に超えていると、この流体は、第2のバルブを押し開いて流路を容易に切り替えることができるので、導電性塗料又は液体などの流体の流路を容易に切り替えることができる。その構成も、2つの流入口又は2つの流出口に連通した2つのシリンダ部にそれぞれアクチュエータにより駆動されるバルブを設け、各バルブで開閉する簡易な構造であり、装置として軽量化されると共に、コストを抑えることができる。
【0011】
本発明の実施形態では、第1及び第2のバルブを夫々開閉移動させる一対のアクチュエータを備える。この場合には、対応する各アクチュエータで各バルブを開閉移動させるので、より確実に流路を切替えることができる。
【0012】
本発明の流路切替え装置は、例えば次のような塗装装置に用いられる。それは、塗料供給部から塗装ガンに導電性塗料又は液体を供給する塗料供給路に、導電性塗料又は液体を一旦貯留するとともに貯留された導電性塗料又は液体を塗装ガン側へ押し出す貯留部と、塗料供給部と貯留部との間を電気的に遮断する絶縁部とを備え、高電圧が加えられた導電性塗料を塗装ガンに供給することにより静電塗装を行うか、或いは、液体を塗装ガンに供給することにより塗料供給路の洗浄を行うものであって、貯留部と塗装ガンとの間に流体回路を備え、この流体回路に着脱自在に塗料カートリッジが接続され、この塗料カートリッジでは、内部にフリーピストンを移動自在に設けることで、液体が供給される流体室と、導電性塗料が充填された塗料室とに区画し、塗料供給部から供給されて貯留部に貯留された液体を、流体回路を介して塗料カートリッジの流体室に供給することにより、フリーピストンで塗料室内の導電性塗料を押し出して塗装ガンに供給するものである。
【0013】
この塗装装置において、塗料カートリッジ内の塗料室に充填された導電性塗料を塗装ガンに供給する場合は、まず、液体を塗料供給部から貯留部に供給して貯留させ、次に、貯留部内の液体を流体回路を介して塗料カートリッジ内の流体室に供給する。この結果、流体室内の液体がピストンを介して塗料室内の導電性塗料を押し出し、導電性塗料が塗装ガンに供給される。このとき、塗料カートリッジ内の導電性塗料は、塗料供給路の洗浄に使われる液体によって押し出されるため、塗料カートリッジ内の導電性塗料を押し出すために特別な動力源やこの動力源を含む貯留部を必要としない。すなわち、塗料供給部から供給される液体を利用して、塗料カートリッジ内の導電性塗料を塗装ガンに供給することができ、塗料カートリッジに専用の液体を供給する流体供給部や流体供給部の動力源、動力源を備える貯留部を設ける必要がなく、コストを低減することができる。
【0014】
また、塗料供給部から供給される液体で塗料供給路を洗浄する要領で塗料供給部から塗料カートリッジへ液体を供給することができ、塗料カートリッジ内の塗料を押し出すための特別な方法が必要ないため、静電塗装を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る流路切替え装置を構成するバルブ装置の断面図である。
【0016】
このバルブ装置140は、複数の通路が設けられたハウジング141と、このハウジング141内に形成された第1シリンダ143及び第2シリンダ144にそれぞれ移動自在に挿入された第1バルブ146及び第2バルブ147と、これらの第1バルブ146及び第2バルブ147を開閉するためにハウジング141外に配置されたシリンダ型の第1アクチュエータ151及び第2アクチュエータ152とからなる。
【0017】
ハウジング141は、第1シリンダ143に通じる第1流入口155と、第2シリンダ144に通じる第1流出口156と、第1シリンダ143及び第2シリンダ144のそれぞれを接続する接続部157と、第1シリンダ143に対して接続部157と対向する位置に第1シリンダ143に通じるように形成された第1横穴161と、この第1横穴161に接続する第2流出口163と、第2シリンダ144に対して接続部157と対向する位置に第2シリンダ144に通じるように形成された第2横穴164と、この第2横穴164に接続する第2流入口166とが形成されている。
【0018】
このバルブ装置140が、例えば図4に示す塗装システムに用いられる場合、上記の第1流入口155及び第2流出口156は、それぞれ後述の第1送出路15a、第2送出路15bに接続され、第2流出口163は供給路71に接続され、第2流入口166は送出路74に接続される。
【0019】
第1シリンダ143及び第2シリンダ144は、それぞれ大径穴143a,144aと、大径穴143a,144aの両側に隣接する雌テーパ部143b,144b、雌テーパ部143c,144cとを備える。
【0020】
第1バルブ146は、バルブ本体146Aと、このバルブ本体146Aに一体に形成されたロッド部146Bとからなり、ロッド部146Bが、第1アクチュエータ151内に移動自在に挿入されたピストン(図示せず)に連結されている。
【0021】
バルブ本体146Aは、大径穴143aに移動自在に嵌合する大径部146aと、雌テーパ部143b,143cにそれぞれ嵌合可能に大径部146aの両側に形成された雄テーパ部146b,146cとからなる。
【0022】
第2バルブ147は、バルブ本体147Aと、このバルブ本体147Aに一体に形成されたロッド部147Bとからなり、ロッド部147Bが、第2アクチュエータ152内に移動自在に挿入されたピストン(図示せず)に連結されている。
【0023】
バルブ本体147Aは、大径穴144aに移動自在に嵌合する大径部147aと、雌テーパ部144b,144cに嵌合可能に大径部147aの両側に形成された雄テーパ部147b,147cとからなる。
【0024】
次に、上記バルブ装置140が、後述の導電性塗料のような流体を通過させるときの作用を説明する。
【0025】
第1バルブ146を、雄テーパ部146bが雌テーパ部143bに嵌合するように第1アクチュエータ151によって移動させる一方、第2バルブ147を、雄テーパ部147bが雌テーパ部144bに嵌合するように第2アクチュエータ152によって移動させる。これにより、第1流入口155が第1シリンダ143を介して接続部157に連通し、接続部157が第2シリンダ144を介して第1流出口156に連通する。
【0026】
この状態で、白抜き矢印Dで示すように、流体を第1送出路15aから第1流入口155に流入させる。この結果、流体は、第1流出口155から第1シリンダ143及び接続部157を通って第2シリンダ144に至り、第2シリンダ144から第1流出口156を通って第2送出路15bに流出する。
【0027】
次に、上記バルブ装置140が導電性塗料のような流体を他の流路(例えば、図4の中継路71)に供給するときの作用について説明する。
【0028】
図2に示すように、第1バルブ146を、雄テーパ部146cが雌テーパ部143cに嵌合するように第1アクチュエータ151によって移動させる一方、第2バルブ147を、雄テーパ部147cが雌テーパ部144cに嵌合するように第2アクチュエータ152によって移動させる。これにより、第1流入口155が第1シリンダ143を介して第1横穴161、第2流出口163に連通し、第2流入口166が第2横穴164、第2シリンダ144を介して第1流出口156に連通する。
【0029】
この状態で、白抜き矢印Eで示すように、流体を第1送出路15aから第1流入口155に流入させる。この結果、流体は、第1流出口155から第1シリンダ143及び第1横穴161を介して第2流出口163に流れ、第2流出口163から供給路71へ流出する。
【0030】
また、白抜き矢印Fで示すように、送出路74から第2流入口166に流入した流体は、第2流入口166から第2横穴164、第2シリンダ144を介して第1流出口156に流れ、第1流出口156から第2送出路15bへ流出する。
【0031】
以上のように、本実施形態のバルブ装置140は、第1アクチュエータ151及び第2アクチュエータ152の作用下に、導電性塗料又は液体などの流体の流路を容易に切り替えることができる。しかも、構造は簡潔であるから、コストを抑えることができる。
【0032】
また、図示していないが、第1アクチュエータ151の作用下に第1バルブ146で開かれた流路を通る流体が一定の圧力を十分に超えていると、この流体は、第2バルブ147を押し開いて流路を容易に切り替えることができるので、第2アクチュエータ152を省略することができる。これにより、更なる簡易化と軽量化を図ると共にコストを抑えることができる。
【0033】
図3は、上記実施形態に係る流路切替え装置の使用例として静電塗装装置を示す図である。
【0034】
この静電塗装装置10は、色の異なる複数の導電性塗料を供給する図示せぬ塗料供給部に接続されてそれらの導電性塗料の供給を切り替える色替弁機構11と、この色替弁機構11を後で詳述する塗装ガン側に対して電気的に絶縁するブロック弁機構12と、このブロック弁機構12に接続されて導電性塗料を一旦貯める貯留槽13と、被塗装物に導電性塗料を噴射させる塗装ガン14と、これらの貯留槽13及び塗装ガン14のそれぞれの間を接続する送出路15と、この送出路15に設けられた切替えバルブ装置140(図1)と、この切替えバルブ装置140に接続された中継路17と、この中継路17に設けられたカートリッジ台18に着脱自在に取付けられた塗料カートリッジ19とからなる。
【0035】
送出路15は、貯留槽13から切替えバルブ装置140に至る第1送出路15aと、切替えバルブ装置140から塗装ガン14(詳しくは、後述するトリガ弁62)に至る第2送出路15bと、塗装ガン14のトリガ弁62より先端側(噴出口14aを含む)の第3送出路15cとからなる。
【0036】
色替弁機構11は、乾燥用エアA、水W及び洗浄液Sの供給を制御する第1洗浄弁21と、色の異なる複数の導電性塗料を供給する図示しない塗料供給部に接続されてそれらの導電性塗料の供給を制御する塗料弁22,23,24とを備えて構成されている。
【0037】
ブロック弁機構12は、色替弁機構11に供給路31を介して接続された切換弁32と、この切換弁32に樹脂製電気絶縁性管路としての供給路33を介して接続された切換弁34とからなる。なお、36は供給路31に第1ダンプ弁37を介して接続された第1排水路、38は切換弁32に供給路41を介して接続されてエアA、水W及び洗浄液Sの供給を制御する第2洗浄弁、42は切換弁34に一方向弁43を介して接続された第2排出路である。
【0038】
切換弁32は、色替弁機構11側と第2洗浄弁38側とを切り換えるものである。切換弁34は、供給路45を介して接続された貯留槽13側と、第2排水路42側とを切り換えるものである。
【0039】
貯留槽13は、シリンダ51と、このシリンダ51内に移動自在に挿入されたピストン52と、このピストン52に取付けられたロッド53と、シリンダ51及びピストン52で形成されたシリンダ室54と、シリンダ51の端部に設けられてシリンダ室54に連通する注入口56及び吐出口57とからなる。
【0040】
ロッド53は、サーボモータ58にボールねじ手段59を介して連結され、サーボモータ58を駆動することで、ボールねじ手段59を介してロッド53及びピストン52がシリンダ軸方向(Aで示す方向)に進退動する。
【0041】
塗装ガン14は、切替えバルブ装置140に第2送出路15bを介して接続された第2ダンプ弁61及びトリガ弁62を備え、図示せぬ高電圧印加手段に接続されている。なお、14aは塗装ガン14の噴出口であり、送出路15の端部を構成する部分である。
【0042】
第2ダンプ弁61は、洗浄時に発生する導電性塗料及び洗浄液を含む廃液を送出路15の外部に排出するための第3排出路64に接続されている。第3排出路64は、エアA、水W及び洗浄液Sの供給を制御する第3洗浄弁66に一方向弁67を介して接続されている。
【0043】
トリガ弁62は、導電性塗料の塗装ガン14からの噴出を制御するものである。
【0044】
上記した供給路31,33,45、貯留槽13、第1送出路15a、第2送出路15b及び切替えバルブ装置140は、塗料供給部から塗装ガン14に至る主塗料供給路68を構成する部分である。
【0045】
この静電塗装装置において、切替えバルブ装置140は、貯留槽13に導電性塗料を貯めたときにこの導電性塗料を塗装ガン14に供給する塗料供給路と、貯留槽13に水W又は洗浄液Sを貯めたときにこの水W又は洗浄液Sを塗料カートリッジ19に供給するとともに塗料カートリッジ19内の導電性塗料を塗装ガン14に供給する流体・塗料供給路とを切り替える手段として用いられる。
【0046】
中継路17は、カートリッジ台18と、切替えバルブ装置140の一端及びカートリッジ台18のそれぞれに接続された供給路71と、カートリッジ台18の出力側に設けられた3方弁72と、この3方弁72に接続されてエアA及び水Wの供給を制御する洗浄弁73と、3方弁72及び切替えバルブ装置140の他端のそれぞれに接続された送出路74とからなる。上記の切替えバルブ装置140と中継路17とで、流体回路10Aを構成している。
【0047】
塗料カートリッジ19は、シリンダ81と、このシリンダ81内に移動自在に挿入されたフリーピストン82と、このフリーピストン82によってシリンダ81内に区画された流体室83及び塗料室84のうちの流体室83とカートリッジ台18とを接続する流体通路86と、シリンダ81内の塗料室84とカートリッジ台18とを接続する塗料通路87とを備える。
【0048】
上記した塗料カートリッジ19の塗料通路87、カートリッジ台18、3方弁72、送出路74、切替えバルブ装置140、第2送出路15b、第3送出路15cは、塗料カートリッジ19から塗装ガン14に至る副塗料供給路88を構成している。
【0049】
次に、上記静電塗装装置10の作動について説明する。
【0050】
まず、図4に示すように、ブロック弁機構12の切換弁32,34を開け、色替弁機構11の例えば、塗料弁22を開けた状態で、貯留槽13のサーボモータ58を駆動してピストン52をA1方向に移動させる。
【0051】
これにより、所定の色の導電性塗料が、塗料弁22から供給路31,33,45を通って貯留槽13のシリンダ室54に充填される。
【0052】
次に、図5に示すように、サーボモータ58が引き続き駆動され、ピストン52がA1方向に移動中の状態で、塗料弁22を閉じ、第1ダンプ弁37を開く。これによって、供給路45内の導電性塗料は、シリンダ室54内に引き込まれ、供給路33内には導電性塗料と置換された空気が導入される。
【0053】
図6に示すように、貯留槽13のシリンダ室54への導電性塗料の充填が終了した後に、ブロック弁機構12の切換弁32,34の流路を切換え、第2洗浄弁38を開け、第2洗浄弁38から洗浄液を供給路33に供給して供給路33を洗浄する。このときの廃液は第2排出路42から排出される。更に、第2洗浄弁38から供給路33に空気を供給して供給路33を乾燥させる。この結果、切換弁32,34間が電気的に絶縁される。
【0054】
図7に示すように、トリガ弁62を開け、サーボモータ58を駆動させてピストン52をA2方向に移動させることにより、シリンダ室54から送出路15に導電性塗料を圧送する。これにより、導電性塗料が切替えバルブ装置140、トリガ弁62を通って塗装ガン14に供給され、噴出口14aから噴出するとともに導電性塗料に高電圧が印加されて図示しない被塗装物に静電塗装が行われる。
【0055】
図8に示すように、静電塗装終了後、貯留槽13内に残存する導電性塗料をブロック弁機構12側に一旦戻す。
【0056】
即ち、トリガ弁62を閉じ、切換弁32,34を切り換えて供給路31,33,45を接続し、第1ダンプ弁37を開けて供給路31に第1排出路36を接続して、サーボモータ58を駆動させ、ピストン52を矢印A2方向に移動させることで、シリンダ室54内の導電性塗料を供給路45,33に一旦戻す。このとき、供給路45,33内の空気は、導電性塗料によって供給路31に押し出され、第1排出路36から排出される。
【0057】
従って、次に、同色の導電性塗料による静電塗装を行うために塗料弁22が開けられて供給路31に導電性塗料が供給される際、この導電性塗料中に空気が混在することがなく、貯留槽13に空気が導入されることを阻止することができ、簡単な工程で、塗装品質を良好に保つことができる。
【0058】
また、上記の導電性塗料とは異なる色の新たな導電性塗料を使用する場合には、前述の塗装作業終了後に、塗装ガン14への高電圧の印加を解除するとともに、ブロック弁機構12の切換弁32,34を切り換えて第1洗浄弁21を開けることにより洗浄液を貯留槽13のシリンダ室54に注入し、この洗浄液を、シリンダ室54から送出路15、切替えバルブ装置140を介して塗装ガン14へ送り、塗装ガン14内を洗浄した後に噴出口14aから外部に噴出させて排出し、塗料供給部から塗装ガン14までの主塗料供給路68を洗浄する。
【0059】
そして、色替弁機構11の、例えば塗料弁23を介して、異なる色の導電性塗料を貯留槽13のシリンダ室54に供給し、前述と同様の方法により塗装作業を行うようにすればよい。
【0060】
次に、上記静電塗装装置10において、塗料カートリッジ19内の導電性塗料を塗装ガン14に供給する要領を説明する。
【0061】
図9に示すように、まず、ブロック弁機構12の切換弁32,34を開け、第2洗浄弁38を開けた状態で、貯留槽13のサーボモータ58を駆動してピストン52をA1方向に移動させる。これにより、水又は洗浄液が、第2洗浄弁38から供給路41,33,45を通って貯留槽13のシリンダ室54に充填される。
【0062】
図10に示すように、ブロック弁機構12の切換弁34の流路を切換え、第2洗浄弁38を開け、第2洗浄弁38から供給路33に空気を供給して供給路33を乾燥させる。この結果、切換弁32,34間が電気的に絶縁される。
【0063】
図11に示すように、サーボモータ58を駆動させてピストン52をA2方向に移動させることにより、シリンダ室54内の水又は洗浄液を第1送出路15a、切替えバルブ装置140及び供給路71を介して塗料カートリッジ19内に送り、流体通路86から流体室83に供給する。
【0064】
この結果、流体室83内の圧力が高まり、フリーピストン82が移動して塗料室84内の導電性塗料を、塗料通路87を介して中継路17に押し出す。導電性塗料は、中継路17の3方弁72、送出路74を通り、再び切替えバルブ装置140を通って、送出路15を塗装ガン14まで送られ、噴出口14aから噴出することで被塗装物の静電塗装が行われる。
【0065】
次に、塗料カートリッジ19を使用したときの副塗料供給路88の洗浄の要領を説明する。
【0066】
図12に示すように、まず、洗浄弁73を開け、3方弁72、送出路74、切替えバルブ装置140及び第2送出路15bを介して、塗装ガン14までの副塗料供給路88に洗浄液を供給し、トリガ弁62を開いた状態で洗浄液を噴出口14aから噴出させ、排出させて、塗料カートリッジ19から塗装ガン14に至る副塗料供給路88の洗浄を行う。
【0067】
上記の静電塗装装置は、塗料供給部から塗装ガン14に導電性塗料又は液体を供給する塗料供給路に、導電性塗料又は液体を一旦貯留するとともに貯留された導電性塗料又は液体を塗装ガン14側へ押し出す貯留部13と、塗料供給部と貯留部13との間を電気的に遮断する絶縁部としてのブロック弁機構12とを備え、貯留部13と塗装ガン14との間には流体回路10Aを備え、この流体回路10Aに着脱自在に塗料カートリッジ19が接続され、導電性塗料を貯留部13から流体回路10Aを介して供給する際、或いは導電性塗料を塗料カートリッジ19から流体回路10Aを介して供給する際に高電圧を加えることで、この高電圧が加えられた導電性塗料を塗装ガン14に供給することにより静電塗装を行うものである。
【0068】
この装置で実施される静電塗装方法は、塗料カートリッジ19内の塗料室84に充填された導電性塗料を塗装ガン14に供給する際は、液体を塗料供給部から貯留部13に供給して貯留する工程と、貯留部13内の液体を流体回路10Aを介して、塗料カートリッジ19内でフリーピストン82によって塗料室84と隔てられた流体室83に供給することで、フリーピストン82を塗料室84側へ押し出し、フリーピストン82の移動により塗料室84内の導電性塗料を塗装ガン14に供給する工程とを備えるので、塗料供給部から供給される水W又は洗浄液S等の液体を利用して、塗料カートリッジ19内の導電性塗料を塗装ガン14に供給することができ、塗料カートリッジ19に専用の水又は洗浄液を供給する流体供給部や流体供給部の動力源、動力源を備える貯留部を設ける必要がなく、コストを低減することができる。
【0069】
また、塗料供給部から供給される水W又は洗浄液Sで塗料供給路を洗浄する要領で塗料供給部から塗料カートリッジ19へ水W又は洗浄液Sを供給することができ、塗料カートリッジ19内の導電性塗料を押し出すための特別な方法が必要ないため、静電塗装を効率良く行うことができる。
【0070】
更に、静電塗装装置は、塗料供給部から塗装ガン14に導電性塗料又は液体を供給する塗料供給路に、導電性塗料又は液体を一旦貯留するとともに貯留された導電性塗料又は液体を塗装ガン14側へ押し出す貯留部13と、塗料供給部と貯留部13との間を電気的に遮断するブロック弁機構12とを備え、高電圧が加えられた導電性塗料を塗装ガン14に供給することにより静電塗装を行うか、或いは、液体を塗装ガン14に供給することにより塗料供給路の洗浄を行う静電塗装装置10において、貯留部13と塗装ガン14との間に流体回路10Aを備え、この流体回路10Aに着脱自在に塗料カートリッジ19が接続され、この塗料カートリッジ19では、内部にフリーピストン82を移動自在に設けることで、液体が供給される流体室83と、導電性塗料が充填された塗料室84とに区画し、塗料供給部から供給されて貯留部13に貯留された液体を流体回路10Aを介して塗料カートリッジ19の流体室83に供給することにより、フリーピストン82で塗料室84内の導電性塗料を押し出して塗装ガン14に供給するので、塗料供給部から供給される水W又は洗浄液S等の液体を利用して、塗料カートリッジ19内の導電性塗料を塗装ガン14に供給することができ、塗料カートリッジ19に専用の水又は洗浄液を供給する流体供給部や流体供給部の動力源、動力源を備える貯留部を設ける必要がなく、コストを低減することができる。
【0071】
また、切替えバルブ装置140は、第1シリンダ及び第2シリンダへのエアの供給又は停止を制御するだけなので、比較的軽くできる。これにより、塗装ガン14とその他塗装ガン14に導電性塗料を供給する供給系(切替えバルブ装置140を含む)を保持する6軸関節ロボット等の保持手段の負荷も、比較的軽減される。
【0072】
以上のとおり、実施形態について説明したが、本発明の流路切替え装置は、上記のような塗装装置に限らず、種々の流体供給システムにおいて流体の通路や供給路を切り替える手段として用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係る切替えバルブ装置の断面図である。
【図2】実施形態の切替えバルブ装置の作用を示す断面図である。
【図3】本発明に係る流路切替えバルブ装置を用いた静電塗装装置の構成図である。
【図4】静電塗装装置の作用を示す第1作用図である。
【図5】静電塗装装置の作用を示す第2作用図である。
【図6】静電塗装装置の作用を示す第3作用図である。
【図7】静電塗装装置の作用を示す第4作用図である。
【図8】静電塗装装置の作用を示す第5作用図である。
【図9】静電塗装装置の作用を示す第6作用図である。
【図10】静電塗装装置の作用を示す第7作用図である。
【図11】静電塗装装置の作用を示す第8作用図である。
【図12】静電塗装装置の作用を示す第9作用図である。
【符号の説明】
【0074】
10…静電塗装装置、10A…流体回路、12…絶縁部(ブロック弁機構)、13…貯
留槽、14…塗装ガン、18…カートリッジ台、82…フリーピストン、83…流体室、84…塗料室、140…切替えバルブ装置、S,W…液体(洗浄液、水)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が導入される第1及び第2の流入口(155,166)と、
流体が導出される第1及び第2の流出口(156,163)と、
前記第1の流入口(155)及び前記第2の流出口(163)に連通する第1のシリンダ部(143)と、
前記第1の流出口(156)及び前記第2の流入口(166)に連通する第2のシリンダ部(144)と、
前記第1のシリンダ部(143)と前記第2のシリンダ部(144)とを接続する接続部(157)と、
前記第1及び第2のシリンダ部(143、144)において前記流体の圧力により移動自在で、それぞれ前記第1の流入口(155)と前記第2の流出口(163)との間及び前記第1の流出口(156)と前記第2の流入口(166)との間を開閉するように挿入された第1及び第2のバルブ(146、147)と、
前記第1及び第2のシリンダ部(143、144)において前記第1及び第2のバルブ(146、147)の少なくとも一方を開閉移動させるアクチュエータ(151又は152)と
を備えたことを特徴とする流路切替え装置。
【請求項2】
前記アクチュエータとして、前記第1及び第2のバルブを夫々開閉移動させる一対のアクチュエータ(151,152)を備えたことを特徴とする請求項1記載の流路切替え装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−95820(P2009−95820A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66578(P2008−66578)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【分割の表示】特願2007−269471(P2007−269471)の分割
【原出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】