流路接続具
【課題】筒状口部への装着を迅速容易に行なうことができる流路接続具を提供する。
【解決手段】筒状口部t1の開口縁部に固定される接続用キャップ30と、接続用キャップ30に支持されるシール弁20と、接続用キャップ30及びシール弁20の間に保持されるシール解除部材40とを備え、シール弁20は、弁孔22が形成された弾性変形部21から突出した突起23と、環状の支持部24とを備え、接続用キャップ30は、シール弁20の支持部24を挟持する押さえ部32と、シール弁20を保持する保持部33と、導管部s2の挿入を受けるスリーブ34とを備え、シール弁20は、シール解除部材40によって突起23が押圧されることにより、弾性変形部21が変形して弁孔22が開放することを特徴とする流路接続具。
【解決手段】筒状口部t1の開口縁部に固定される接続用キャップ30と、接続用キャップ30に支持されるシール弁20と、接続用キャップ30及びシール弁20の間に保持されるシール解除部材40とを備え、シール弁20は、弁孔22が形成された弾性変形部21から突出した突起23と、環状の支持部24とを備え、接続用キャップ30は、シール弁20の支持部24を挟持する押さえ部32と、シール弁20を保持する保持部33と、導管部s2の挿入を受けるスリーブ34とを備え、シール弁20は、シール解除部材40によって突起23が押圧されることにより、弾性変形部21が変形して弁孔22が開放することを特徴とする流路接続具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液給排用の導管部を配管、混注管、容器等の筒状口部に連通させるための流路接続具に関し、特に、口部内周面から張出した内フランジ部を備えた筒状口部に取付けられる接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、薬液の点滴や人工透析に用いられる輸液配管には、輸液の抽出や薬液の混入などを行うために混注管が配管の途中に取り付けられる。混注管は、配管の上流側と下流側とをつなぐ主流路及びこれに連通する分岐路を備えた混注管本体と、分岐路を密封し必要に応じて外部への連通を可能としたシール部とを備えたものであり、シール部の連通により分岐路を通じて主流路に対して薬液や血液の注入や抽出が行なわれる。
【0003】
分岐路での注入・抽出は、混注管本体の開口部のゴム栓に注射針を突き刺して行なわれることがあるが、注射針のコストや用済み後の管理などの問題があるため、注射針を取り付けないで注射器先端の導管部をそのまま薬液瓶や混注管本体の開口部に刺し込む接続構造が種々提案されている。
【0004】
例えば、ツイストロック式の注射器のように先端の導管部(細径部)の周りを雌ねじ付きカラーで囲んだものを使用する場合については、特許文献1及び特許文献2に記載の接続構造を本出願人が提案している。
【0005】
特許文献1に記載された注射器接続具(流路接続具)は、図15に示すように、混注管本体Tの側壁に設けられた分岐用の筒状口部t1に設けられる。筒状口部t1の内周面には内フランジ部t3が張出しており、その中央部に開口部t2が形成されている。注射器接続具が備えるゴム製のシール弁104は、常時閉止している弁孔103を中央部に有し、筒状口部t1の内側に納められて開口部t2を覆う。筒状口部t1を覆うようにしてキャップ部材105が装着される。キャップ部材105は、中央部に立設され注射器先端の導管部s2が挿入可能なスリーブ107を備え、スリーブ内にシール解除部材108が摺動可能に収容されている。シール解除部材108は、シール弁104の弁孔103に挿入される挿入部109と、注射器Sの導管部s2が連結される連結部110と、連結部110から挿入部109に至る開口111とを有する。
【0006】
この注射器接続具100は、図16に示すように、ツイストロック式注射器Sのカラーs1の雌ねじ部s3を、スリーブ107の螺合片112に螺合させながらねじ込んだときに、注射器Sの導管部s2とシール解除部材108の連結部110が連結され、シール解除部材108の挿入部109でシール弁104の弁孔103を押し開き、混注管本体Tと注射器Sの流路を連通させる。また、この注射器接続具100は、キャップ部材105のスリーブ107から注射器Sを抜くと、シール弁104の弾性復元力により、図15に示すように、混注管本体Tの開口部t2がシール弁104で閉鎖された状態に復元する。
【0007】
特許文献2に記載された注射器接続具は、これとほぼ同様の構造を有しているが、シール弁20が注射器接続側に凸の半球状とされ、その頂部に弁孔が形成されており、注射器の導管部の挿入に伴ってシール弁20の頂部が押し下げられることにより、弁孔が開放するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3922914号公報
【特許文献2】特許第4000125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の注射器接続具はいずれも、シール弁104が混注管本体Tの筒状口部t1の内側に納められ、筒状口部t1を覆うようにしてキャップ部材105が装着され、キャップ部材105のスリーブ107内にシール解除部材108が収容されている。したがって、注射器接続具を混注管本体に装着する際には、シール弁104、キャップ部材105及びシール解除部材108を一つひとつ混注管本体に取り付けていく必要があり、極めて不便である。特に、これらの部材は、例えばシール弁104、キャップ部材105、シール解除部材108の外径が各々約10mm、約20mm、約5mmと小さいものとなっている。したがって、その組立を人手で行なう場合は細かい作業を正確に行なう必要があり、組立を自動装置で行なう場合も微小部材を保持して正確に位置決めする必要がある。いずれにしても、その取扱いには簡易性と迅速性が要求されるが、これに十分応え得るものではなかった。
【0010】
同様の問題は、混注管本体に接続具を装着して注射器の導管部を連通させる場合のみならず、薬液瓶や輸液バックなどの容器の筒状口部に接続具を装着する場合や、接続具に注射器以外の液給排用の導管部を連通させて流路を形成する場合にも、同様に生じる。
【0011】
したがって、本発明は、筒状口部への装着を迅速容易に行なうことができる流路接続具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するため、口部内周面から張出した内フランジ部を備えた筒状口部に取付けることにより、液給排用の導管部を筒状口部に連通させるための流路接続具であって、前記筒状口部の開口縁部に被せて固定される接続用キャップと、該接続用キャップ30における筒状口部装着側に支持されるシール弁と、前記接続用キャップの導管部装着側において該接続用キャップ及び前記シール弁の間に保持されるシール解除部材とを備え、前記シール弁は、弾性変形可能な弾性変形部と、前記弾性変形部の中央部に形成され常時は弾性的に閉止している弁孔と、前記弾性変形部において前記弁孔を囲むようにして導管部装着側へ突出した突起と、該弾性変形部の外周部から径方向外方へ延び前記筒状口部の内フランジ部に重ねられる環状の支持部とを備え、前記接続用キャップは、前記筒状口部に係止する係止部と、前記筒状口部の内フランジ部との間に前記シール弁の支持部を挟持する環状の押さえ部と、前記シール弁を保持する保持部と、前記押さえ部の径方向中央部から導管部装着側へ起立し前記導管部の挿入を受けるスリーブとを備え、前記シール解除部材は、前記接続用キャップのスリーブ内周面に接する環状壁と、前記シール弁の突起に接する当接部とを備え、前記スリーブ内周面に沿って摺動可能であり、前記スリーブ内周面に張出した段部により導管部装着側への抜け止めがされており、前記導管部の挿入時に該導管部に接触して押し動かされるようにされており、前記シール弁は、前記導管部に押し動かされる前記シール解除部材によって前記突起が押圧されることにより、前記弾性変形部が変形して前記弁孔が開放することを特徴とする流路接続具を提供するものである。
【0013】
本発明に係る流路接続具は、配管や容器等の筒状口部に装着された状態において、接続用キャップは筒状口部の開口縁部に被せて係止部により固定され、シール弁は接続用キャップの筒状口部装着側に支持され、シール解除部材は接続用キャップ及びシール弁の間に保持される。この装着状態を得るために、接続用キャップは環状の押さえ部を備え、シール弁は環状の支持部を備えて、筒状口部の内フランジ部と接続用キャップとの間にシール弁が挟持されるようになっている。また、接続用キャップは、押さえ部の径方向中央部から導管部装着側へ起立したスリーブを備え、シール解除部材は、スリーブ内周面に張出した段部により導管部装着側への抜け止めがされている。
【0014】
したがって、流路接続具を筒状口部に装着する際には、先ず、接続用キャップのスリーブ内にシール解除部材を挿入し、接続用キャップの押さえ部にシール弁の支持部を接触させた状態で保持部により該シール弁を接続用キャップに保持する。これにより、接続用キャップ、シール解除部材及びシール弁が組み合わせられた状態の流路接続具が出来上がる。この組み合わせ状態の流路接続具は、上下左右いずれの向きにしても一部が脱落することがない。しかも、接続用キャップの係止部を筒状口部に係止すれば、流路接続具全体が筒状口部に対して装着される。したがって、筒状口部に対する装着を極めて迅速容易に行なうことができる。
【0015】
また、接続用キャップは、導管部の挿入を受けるスリーブを備え、シール弁は、弾性変形部において弁孔を囲むようにして内フランジ部とは反対側へ突出した突起を備え、シール解除部材は、シール弁の突起に接する当接部を備えると共にスリーブに挿入される導管部に接触して押し動かされるようになっている。そして、シール弁は、押し動かされるシール解除部材によって突起が押圧されることにより弾性変形部が変形して弁孔が開放する。このように、シール弁の弁孔は、突起がシール解除部材に押圧されることによって開放するので、弁孔を開くように挿入される部材(例えば、図15,図16の挿入部109)を必要とせず、またそのような挿入部材を設けた場合でも挿入部材が弁孔22を押し開く力は小さくて済む。したがって、挿入部材が弁孔部を損傷したり弁孔からの挿入部材脱抜時に大きな力を要したりするという問題が生じない。
【0016】
このように、シール弁が突起を押圧されることにより弾性変形部の変形に基づいて弁孔を開放するという機能は、突起が弾性変形部に設けられ、環状の支持部が弾性変形部の外周部から径方向外方へ延びるように設けられている構成に基づいている。またこの構成により、内フランジ部と押さえ部との間に支持部が挟持されることによる液密性と、弾性変形部の高い変形自由度とが確実に得られる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、筒状口部への装着を迅速容易に行なうことができる流路接続具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図2】図1の流路接続具の縦断側面図である。
【図3】図1の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図5】図4の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図8】図7の実施形態におけるシール解除部材を示す縦断面図及び底面図である。
【図9】図7の流路接続具の変形例を示す縦断正面図である。
【図10】図7の流路接続具の他の変形例を示す縦断正面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図12】図11の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態の変形例を示す縦断正面図である。
【図14】図13の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【図15】従来の流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図16】図15の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図面中の同一又は同種の部分については、同じ番号を付して説明を一部省略する。
【0020】
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示しており、図1は縦断正面図、図2は縦断側面図である。
【0021】
この流路接続具1が装着される混注管本体Tは、全体が円筒状をなし、使用時にはその両端にカテーテル等の配管P1,P2(一点鎖線で示す)が接続される。側壁には混注管本体Tより大径の短円筒状をなす筒状口部t1が設けられている。筒状口部t1の底部内周面からは内フランジ部t3が径方向内方へ延び、混注管本体Tの側壁に連続している。内フランジ部t3の中央部には、開口部t2が形成されており、混注管本体Tの流路の分岐口となる。
【0022】
このように、流路接続具1が混注管本体Tに装着されて混注管が形成されている。この装着状態に基づいて説明すると、流路接続具1は、筒状口部t1の開口縁部に被せて固定される接続用キャップ30と、接続用キャップ30の筒状口部装着側に支持されるシール弁20と、該接続用キャップ30及びシール弁20の間に保持されるシール解除部材40とを備えている。
【0023】
シール弁20は、弾性変形可能な弾性変形部21と、弾性変形部の中央部に形成され常時は弾性的に閉止している弁孔22と、弾性変形部21において弁孔22を囲むようにして導管部装着側へ突出した突起23と、弾性変形部21の外周部から外方へ延び筒状口部t1の内フランジ部t3に重ねられる環状の支持部24とを備えている。この実施形態においては、シール弁20は、全体がゴムにより一体成形され、弾性変形部21は半球状をなし、弁孔は弾性変形部21の頂部にスリット状に形成されている。突起23は、弁孔22を囲む円環状に形成されている。
【0024】
接続用キャップ30は、筒状口部t1に係止する係止部31と、筒状口部t1の内フランジ部t3との間にシール弁20の支持部を挟持する環状の押さえ部32と、シール弁20を保持する保持部33と、押さえ部32の径方向中央部から内フランジ部t3とは反対側へ起立し導管部s2の挿入を受けるスリーブ34とを備えている。接続用キャップ30の係止部31は、筒状口部t1の内周面に接する内周部311と、外周面に接する外周部312と、これら内周部及び外周部を結合する結合頂部313とを備えている。装着時に内周部311と外周部312は、間に筒状口部t1を挟持し、これにより、接続用キャップ30は筒状口部t1に固定される。スリーブ34の外周面には、注射器Sのカラーs1に設けられた雌ねじs3に螺合する雄ねじ341が形成されている。保持部33は、シール弁20の支持部24の外周部を緊く受け入れる径の円筒面とされており、その緊締力により、保持部33に挿入された支持部24を保持する。
【0025】
シール解除部材40は、接続用キャップ30のスリーブ内周面に接する環状壁41と、シール弁20の突起23に接する当接部42とを備え、当接部42の中央には開口43が形成されている。導管部s2の挿入前は、スリーブ内周面には径方向内方に張出した段部342が設けられ、環状壁41の端部の当接によりシール解除部材が抜け止めされている。そして、スリーブ34に導管部s2が挿入される際には、シール解除部材40は、環状壁41が導管部s2に接触して押し動かされる。この実施形態においては、シール解除部材40は、スリーブ34の段部に当接する環状壁41の端部から内フランジ部t3側へ縮径するテーパ状内面411を有し、該テーパ状内面が導管部s2の外周面s21に液密に接する。
【0026】
シール弁20は、導管部s2に押し動かされるシール解除部材40によって突起23が押圧されることにより、弾性変形部21が変形して弁孔22が開放するようになっている。
【0027】
この流路接続具1は、次のようにして使用される。先ず、接続用キャップ30のスリーブ34内にシール解除部材40を挿入し、接続用キャップ30の押さえ部32にシール弁20の支持部24を接触させた状態で保持部33によりシール弁20を接続用キャップ30に保持する。保持部33は、シール弁20の支持部24の外周部を緊く受け入れることにより、シール弁20を保持する。これにより、接続用キャップ、シール解除部材及びシール弁が組み合わせられた状態の流路接続具となる。
【0028】
そして、接続用キャップ30の係止部31を筒状口部t1に係止する。これは、係止部31の内周部311と外周部312との間に筒状口部t1を挿入して挟持することにより、行なうことができる。これで図1及び図2に示した装着状態となるのであり、装着が極めて迅速容易である。
【0029】
装着された流路接続具1に対して、注射器Sの導管部s2を接続するには、図3に示すように、導管部s2がスリーブ34内に挿入されるようにして、カラーs1の雌ねじs3をスリーブ34の雄ねじ341に螺合すればよい。これにより、導管部s2の先端部はシール解除部材40環状壁41の内面に緊く挿入される。この状態で、さらに注射器Sを螺入すれば、環状壁41は内フランジ部側へ押し動かされ、突起23を押圧して弾性変形部21を変形させる。これに伴って、弁孔22は開放され、混注管本体Tの流路と連通状態となる。この状態で、必要に応じて、注射器Sから混注管本体Tを経て配管P1,P2に対して、液の注入または抽出が行なわれる。
【0030】
この注入抽出の際に、液が導管部s2とシール解除部材40との間から漏出しないように、両者は液密に嵌合するように寸法が決められる。特に、この実施形態においては、導管部s2は、シール解除部材40の環状壁41内周面のテーパ部に嵌って保持される。そして、弁孔22を開くために導管部s2によりシール解除部材40がシール弁20の突起23に押し付けられると、弾性変形部21の変形に伴って突起23は径方向内側へ変形し、これに伴ってシール解除部材40の底面に径方向内側へ向く摩擦力を与える。シール解除部材40は、この摩擦力を受けて径方向へすぼむ方向に変形しようとし、導管部s2を締め付ける。これにより、シール解除部材40と導管部s2との液密性がより高くなる。
【0031】
常時(導管部s2の非挿入時)において、シール弁20の突起23は、接続用キャップ30のスリーブ34内周面との間に間隙を形成するのが望ましい。これにより、導管部s2を流路接続具1に挿入結合した状態から脱抜する際に、突起23がスリーブ34内周面に接触するのが防止され、作動の確実性が保証される。スリーブ34内周面と突起23との間に間隙を形成しても、シール弁20は保持部33により接続用キャップ30に保持されるので、接続用キャップ30、シール解除部材40及びシール弁20の一体的な組立て状態が損なわれることはない。
【0032】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る流路接続具1aを示している。この流路接続具1は、先の実施形態と基本形態を共通にしており、シール弁20aの形状が異なっている。すなわち、シール弁20aは、弾性変形部21aが平板状に延び、その平らな面に突起23が設けられている。シール弁20の内フランジ部t3側は、変形時に混注管本体Tの流路を狭めないように、凹状部26が形成されている。
【0033】
この流路接続具1も、先の実施形態と同様に使用することができる。図5は、注射器Sを結合し導管部s2をシール解除部材40に挿入した状態を示している。この状態において、弁孔22が開放され、混注管本体Tの流路が注射器Sと連通している。この実施形態では、シール弁20が平板状であるので、その厚さ方向への変形量が小さくても弁孔22の開放が行なわれる。
【0034】
図6は本発明の第3の実施形態に係る流路接続具1bを示している。この流路接続具1bは、シール解除部材40bが、スリーブ34の段部342に当接する環状壁41の端部に軟質リング45を備えている。図6に示すように、軟質リング45は、注射器Sを結合する際に挿入される導管部s2の端面に液密に接する。軟質リング45は、環状壁41に接着、熱融着等により接合することができる。
【0035】
この実施形態においては、導管部s2の先端部が軟質リング45に当接してシール解除部材40を押し動かすので、環状壁41内周面への挿入状態となる場合に比べて、導管部s2を脱抜するのが容易になっている。
【0036】
図7〜図10は、図6に示したのと同様の構造のシール解除部材40bについて、環状壁41と軟質リング45との種々の結合形態を示す。図7は、その一例の縦断正面図であり、図8はシール解除部材40bを取り出して示しており、(a) は軟質リング45の縦断面図及び底面図、(b) は環状壁41の縦断面図及び底面図である。この例では、環状壁41に2つの貫通孔411を形成し、軟質リング45にはこれに対応する位置に突片451を設け、両者を嵌合して結合するようになっている。突片451は、先端部が基端部より僅かに大径となっており、貫通孔411はこれに対応して下部が上部より僅かに大径となっている。これにより、嵌合の保持が確実となる。
【0037】
図9は、環状壁41の上部に環状の凹部412を設け、その縁部を僅かに小径としたものである。軟質リング45には、凹部412に対応して縁部に環状の凸部452を設けている。これらの凹部412及び凸部452が嵌合することにより、環状壁41と軟質リング45との結合が確実となる。
【0038】
図10は、環状壁41の上面に環状の溝413を設けたものである。軟質リング45には、溝413に対応して下面に環状の突起453を設けている。これらの溝413及び突起453が嵌合することにより、環状壁41と軟質リング45との結合が確実となる。また、この嵌合に加えて接着または熱融着を採用することもできる。
【0039】
図11及び図12は本発明の第3の実施形態に係る流路接続具1cを示しており、図11は注射器S結合前、図12は注射器S結合後の状態を示す。この流路接続具1cの基本形態は第1の実施形態と同様であり、ここではシール解除部材40が環状壁41の底壁47の中央部から内フランジ部t3側へ突出した押圧管46を備えている。この押圧管46は、常時はシール弁20の上面付近に位置しており、注射器Sが結合され導管部s2が挿入されることにより、押し動かされて押圧管46先端部が弁孔22周縁を押すように作用する。この実施形態においては、このとき押圧管46は、弁孔22内に挿入する。ここでも、弁孔22は、第1の実施形態のように突起23がシール解除部材40に押圧されることにより、弾性変形部21が変形して開放されるのであるが、押圧管46の押圧がこれに加わることにより、その開放がより円滑に行なわれる。
【0040】
また、導管部s2の挿入状態では、シール弁20から押圧管46に対して、図12に矢印fで示す締め付け力が作用している。この締め付け力が大きいと、導管部s2を脱抜する際に、シール解除部材40cがシール弁20の弁孔22内に残留してしまう場合がある。しかしながら、この実施形態では、シール解除部材40cがシール弁20の突起23を押圧するので、締め付け力fはその分弱められる。したがって、導管部s2の脱抜時に、シール解除部材40cがシール弁20の弁孔22内に残留するのが防止される。
【0041】
図13及び図14は上記第3の実施形態の変形例を示しており、図13は注射器S結合前、図14は注射器S結合後の状態を示す。押圧管46は、常時はシール弁20の上面付近に位置している。注射器Sが結合され導管部s2が挿入された場合には、押圧管46先端部が弁孔22周縁を押すように作用するが、この実施形態においては、弁孔22内に挿入されないか、僅かに挿入されるだけである。この実施形態においても、突起23がシール解除部材40に押圧されることにより弾性変形部21が変形して弁孔22が開放されるのを、押圧管46の押圧が補助し、開放がより円滑に行なわれる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、注射器等の導管部との結合は、テーパ部同士の摩擦結合等によってもよく、その場合は、スリーブ34の外周面は、テーパ状の平滑面とされ、注射器Sのカラーs1の雌ねじに螺合する雄ねじ341を設ける必要はない。或いは、注射器等の導管部の外周面とスリーブの内周面とをテーパ面同士の摩擦結合とすることもできる。また、注射器のみならず、配管、混注管、容器等の筒状口部に適用することもできる。
【0043】
接続用キャップの係止部は、筒状口部を挟持する形態の他、例えばバヨネットジョイント等、種々の形態とすることができる。バヨネットジョイントを設ける場合は、接続用キャップ及び筒状口部の一方に、一部切り欠かれた環状突起を設け、他方には、切り欠き部に通される係合突起を設けた構造とし、係合突起を切り欠き部に通して周方向に回転することにより、両突起が係合して抜け止めとなるようにして固定する。
【0044】
接続用キャップの保持部は、シール弁20の支持部24の外周部を緊く受け入れる径の円筒面による保持部33とする他、種々の形態とすることができ、例えば、図1に一点鎖線で示すように、シール弁20の支持部24から導管部装着側へ突出した凸部27と、接続用キャップ30の押さえ部32の筒状口部装着側に設けられた凹部37とを備え、両者が緊く嵌合するものとすることができる。この場合、凸部27及び凹部37は、弾性変形部21を囲むように配置され、連続または断続した環状または複数の点状に形成されたものとすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1,1a,1b,1c: 流路接続具
20,20a: シール弁
21,21a: 弾性変形部
22: 弁孔
23: 突起
24: 支持部
30: 接続用キャップ
31: 係止部
32: 押さえ部
33: 保持部
34: スリーブ
40,40b,40c: シール解除部材
41: 環状壁
42: 当接部
45: 軟質リング
46: 押圧管
342:段部
S: 注射器
s2: 導管部
T: 混注管本体
t1: 筒状口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液給排用の導管部を配管、混注管、容器等の筒状口部に連通させるための流路接続具に関し、特に、口部内周面から張出した内フランジ部を備えた筒状口部に取付けられる接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、薬液の点滴や人工透析に用いられる輸液配管には、輸液の抽出や薬液の混入などを行うために混注管が配管の途中に取り付けられる。混注管は、配管の上流側と下流側とをつなぐ主流路及びこれに連通する分岐路を備えた混注管本体と、分岐路を密封し必要に応じて外部への連通を可能としたシール部とを備えたものであり、シール部の連通により分岐路を通じて主流路に対して薬液や血液の注入や抽出が行なわれる。
【0003】
分岐路での注入・抽出は、混注管本体の開口部のゴム栓に注射針を突き刺して行なわれることがあるが、注射針のコストや用済み後の管理などの問題があるため、注射針を取り付けないで注射器先端の導管部をそのまま薬液瓶や混注管本体の開口部に刺し込む接続構造が種々提案されている。
【0004】
例えば、ツイストロック式の注射器のように先端の導管部(細径部)の周りを雌ねじ付きカラーで囲んだものを使用する場合については、特許文献1及び特許文献2に記載の接続構造を本出願人が提案している。
【0005】
特許文献1に記載された注射器接続具(流路接続具)は、図15に示すように、混注管本体Tの側壁に設けられた分岐用の筒状口部t1に設けられる。筒状口部t1の内周面には内フランジ部t3が張出しており、その中央部に開口部t2が形成されている。注射器接続具が備えるゴム製のシール弁104は、常時閉止している弁孔103を中央部に有し、筒状口部t1の内側に納められて開口部t2を覆う。筒状口部t1を覆うようにしてキャップ部材105が装着される。キャップ部材105は、中央部に立設され注射器先端の導管部s2が挿入可能なスリーブ107を備え、スリーブ内にシール解除部材108が摺動可能に収容されている。シール解除部材108は、シール弁104の弁孔103に挿入される挿入部109と、注射器Sの導管部s2が連結される連結部110と、連結部110から挿入部109に至る開口111とを有する。
【0006】
この注射器接続具100は、図16に示すように、ツイストロック式注射器Sのカラーs1の雌ねじ部s3を、スリーブ107の螺合片112に螺合させながらねじ込んだときに、注射器Sの導管部s2とシール解除部材108の連結部110が連結され、シール解除部材108の挿入部109でシール弁104の弁孔103を押し開き、混注管本体Tと注射器Sの流路を連通させる。また、この注射器接続具100は、キャップ部材105のスリーブ107から注射器Sを抜くと、シール弁104の弾性復元力により、図15に示すように、混注管本体Tの開口部t2がシール弁104で閉鎖された状態に復元する。
【0007】
特許文献2に記載された注射器接続具は、これとほぼ同様の構造を有しているが、シール弁20が注射器接続側に凸の半球状とされ、その頂部に弁孔が形成されており、注射器の導管部の挿入に伴ってシール弁20の頂部が押し下げられることにより、弁孔が開放するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3922914号公報
【特許文献2】特許第4000125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の注射器接続具はいずれも、シール弁104が混注管本体Tの筒状口部t1の内側に納められ、筒状口部t1を覆うようにしてキャップ部材105が装着され、キャップ部材105のスリーブ107内にシール解除部材108が収容されている。したがって、注射器接続具を混注管本体に装着する際には、シール弁104、キャップ部材105及びシール解除部材108を一つひとつ混注管本体に取り付けていく必要があり、極めて不便である。特に、これらの部材は、例えばシール弁104、キャップ部材105、シール解除部材108の外径が各々約10mm、約20mm、約5mmと小さいものとなっている。したがって、その組立を人手で行なう場合は細かい作業を正確に行なう必要があり、組立を自動装置で行なう場合も微小部材を保持して正確に位置決めする必要がある。いずれにしても、その取扱いには簡易性と迅速性が要求されるが、これに十分応え得るものではなかった。
【0010】
同様の問題は、混注管本体に接続具を装着して注射器の導管部を連通させる場合のみならず、薬液瓶や輸液バックなどの容器の筒状口部に接続具を装着する場合や、接続具に注射器以外の液給排用の導管部を連通させて流路を形成する場合にも、同様に生じる。
【0011】
したがって、本発明は、筒状口部への装着を迅速容易に行なうことができる流路接続具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するため、口部内周面から張出した内フランジ部を備えた筒状口部に取付けることにより、液給排用の導管部を筒状口部に連通させるための流路接続具であって、前記筒状口部の開口縁部に被せて固定される接続用キャップと、該接続用キャップ30における筒状口部装着側に支持されるシール弁と、前記接続用キャップの導管部装着側において該接続用キャップ及び前記シール弁の間に保持されるシール解除部材とを備え、前記シール弁は、弾性変形可能な弾性変形部と、前記弾性変形部の中央部に形成され常時は弾性的に閉止している弁孔と、前記弾性変形部において前記弁孔を囲むようにして導管部装着側へ突出した突起と、該弾性変形部の外周部から径方向外方へ延び前記筒状口部の内フランジ部に重ねられる環状の支持部とを備え、前記接続用キャップは、前記筒状口部に係止する係止部と、前記筒状口部の内フランジ部との間に前記シール弁の支持部を挟持する環状の押さえ部と、前記シール弁を保持する保持部と、前記押さえ部の径方向中央部から導管部装着側へ起立し前記導管部の挿入を受けるスリーブとを備え、前記シール解除部材は、前記接続用キャップのスリーブ内周面に接する環状壁と、前記シール弁の突起に接する当接部とを備え、前記スリーブ内周面に沿って摺動可能であり、前記スリーブ内周面に張出した段部により導管部装着側への抜け止めがされており、前記導管部の挿入時に該導管部に接触して押し動かされるようにされており、前記シール弁は、前記導管部に押し動かされる前記シール解除部材によって前記突起が押圧されることにより、前記弾性変形部が変形して前記弁孔が開放することを特徴とする流路接続具を提供するものである。
【0013】
本発明に係る流路接続具は、配管や容器等の筒状口部に装着された状態において、接続用キャップは筒状口部の開口縁部に被せて係止部により固定され、シール弁は接続用キャップの筒状口部装着側に支持され、シール解除部材は接続用キャップ及びシール弁の間に保持される。この装着状態を得るために、接続用キャップは環状の押さえ部を備え、シール弁は環状の支持部を備えて、筒状口部の内フランジ部と接続用キャップとの間にシール弁が挟持されるようになっている。また、接続用キャップは、押さえ部の径方向中央部から導管部装着側へ起立したスリーブを備え、シール解除部材は、スリーブ内周面に張出した段部により導管部装着側への抜け止めがされている。
【0014】
したがって、流路接続具を筒状口部に装着する際には、先ず、接続用キャップのスリーブ内にシール解除部材を挿入し、接続用キャップの押さえ部にシール弁の支持部を接触させた状態で保持部により該シール弁を接続用キャップに保持する。これにより、接続用キャップ、シール解除部材及びシール弁が組み合わせられた状態の流路接続具が出来上がる。この組み合わせ状態の流路接続具は、上下左右いずれの向きにしても一部が脱落することがない。しかも、接続用キャップの係止部を筒状口部に係止すれば、流路接続具全体が筒状口部に対して装着される。したがって、筒状口部に対する装着を極めて迅速容易に行なうことができる。
【0015】
また、接続用キャップは、導管部の挿入を受けるスリーブを備え、シール弁は、弾性変形部において弁孔を囲むようにして内フランジ部とは反対側へ突出した突起を備え、シール解除部材は、シール弁の突起に接する当接部を備えると共にスリーブに挿入される導管部に接触して押し動かされるようになっている。そして、シール弁は、押し動かされるシール解除部材によって突起が押圧されることにより弾性変形部が変形して弁孔が開放する。このように、シール弁の弁孔は、突起がシール解除部材に押圧されることによって開放するので、弁孔を開くように挿入される部材(例えば、図15,図16の挿入部109)を必要とせず、またそのような挿入部材を設けた場合でも挿入部材が弁孔22を押し開く力は小さくて済む。したがって、挿入部材が弁孔部を損傷したり弁孔からの挿入部材脱抜時に大きな力を要したりするという問題が生じない。
【0016】
このように、シール弁が突起を押圧されることにより弾性変形部の変形に基づいて弁孔を開放するという機能は、突起が弾性変形部に設けられ、環状の支持部が弾性変形部の外周部から径方向外方へ延びるように設けられている構成に基づいている。またこの構成により、内フランジ部と押さえ部との間に支持部が挟持されることによる液密性と、弾性変形部の高い変形自由度とが確実に得られる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、筒状口部への装着を迅速容易に行なうことができる流路接続具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図2】図1の流路接続具の縦断側面図である。
【図3】図1の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図5】図4の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図8】図7の実施形態におけるシール解除部材を示す縦断面図及び底面図である。
【図9】図7の流路接続具の変形例を示す縦断正面図である。
【図10】図7の流路接続具の他の変形例を示す縦断正面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図12】図11の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態の変形例を示す縦断正面図である。
【図14】図13の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【図15】従来の流路接続具を混注管本体に装着した状態を示す縦断正面図である。
【図16】図15の流路接続具に導管部が接続された状態を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図面中の同一又は同種の部分については、同じ番号を付して説明を一部省略する。
【0020】
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る流路接続具を混注管本体に装着した状態を示しており、図1は縦断正面図、図2は縦断側面図である。
【0021】
この流路接続具1が装着される混注管本体Tは、全体が円筒状をなし、使用時にはその両端にカテーテル等の配管P1,P2(一点鎖線で示す)が接続される。側壁には混注管本体Tより大径の短円筒状をなす筒状口部t1が設けられている。筒状口部t1の底部内周面からは内フランジ部t3が径方向内方へ延び、混注管本体Tの側壁に連続している。内フランジ部t3の中央部には、開口部t2が形成されており、混注管本体Tの流路の分岐口となる。
【0022】
このように、流路接続具1が混注管本体Tに装着されて混注管が形成されている。この装着状態に基づいて説明すると、流路接続具1は、筒状口部t1の開口縁部に被せて固定される接続用キャップ30と、接続用キャップ30の筒状口部装着側に支持されるシール弁20と、該接続用キャップ30及びシール弁20の間に保持されるシール解除部材40とを備えている。
【0023】
シール弁20は、弾性変形可能な弾性変形部21と、弾性変形部の中央部に形成され常時は弾性的に閉止している弁孔22と、弾性変形部21において弁孔22を囲むようにして導管部装着側へ突出した突起23と、弾性変形部21の外周部から外方へ延び筒状口部t1の内フランジ部t3に重ねられる環状の支持部24とを備えている。この実施形態においては、シール弁20は、全体がゴムにより一体成形され、弾性変形部21は半球状をなし、弁孔は弾性変形部21の頂部にスリット状に形成されている。突起23は、弁孔22を囲む円環状に形成されている。
【0024】
接続用キャップ30は、筒状口部t1に係止する係止部31と、筒状口部t1の内フランジ部t3との間にシール弁20の支持部を挟持する環状の押さえ部32と、シール弁20を保持する保持部33と、押さえ部32の径方向中央部から内フランジ部t3とは反対側へ起立し導管部s2の挿入を受けるスリーブ34とを備えている。接続用キャップ30の係止部31は、筒状口部t1の内周面に接する内周部311と、外周面に接する外周部312と、これら内周部及び外周部を結合する結合頂部313とを備えている。装着時に内周部311と外周部312は、間に筒状口部t1を挟持し、これにより、接続用キャップ30は筒状口部t1に固定される。スリーブ34の外周面には、注射器Sのカラーs1に設けられた雌ねじs3に螺合する雄ねじ341が形成されている。保持部33は、シール弁20の支持部24の外周部を緊く受け入れる径の円筒面とされており、その緊締力により、保持部33に挿入された支持部24を保持する。
【0025】
シール解除部材40は、接続用キャップ30のスリーブ内周面に接する環状壁41と、シール弁20の突起23に接する当接部42とを備え、当接部42の中央には開口43が形成されている。導管部s2の挿入前は、スリーブ内周面には径方向内方に張出した段部342が設けられ、環状壁41の端部の当接によりシール解除部材が抜け止めされている。そして、スリーブ34に導管部s2が挿入される際には、シール解除部材40は、環状壁41が導管部s2に接触して押し動かされる。この実施形態においては、シール解除部材40は、スリーブ34の段部に当接する環状壁41の端部から内フランジ部t3側へ縮径するテーパ状内面411を有し、該テーパ状内面が導管部s2の外周面s21に液密に接する。
【0026】
シール弁20は、導管部s2に押し動かされるシール解除部材40によって突起23が押圧されることにより、弾性変形部21が変形して弁孔22が開放するようになっている。
【0027】
この流路接続具1は、次のようにして使用される。先ず、接続用キャップ30のスリーブ34内にシール解除部材40を挿入し、接続用キャップ30の押さえ部32にシール弁20の支持部24を接触させた状態で保持部33によりシール弁20を接続用キャップ30に保持する。保持部33は、シール弁20の支持部24の外周部を緊く受け入れることにより、シール弁20を保持する。これにより、接続用キャップ、シール解除部材及びシール弁が組み合わせられた状態の流路接続具となる。
【0028】
そして、接続用キャップ30の係止部31を筒状口部t1に係止する。これは、係止部31の内周部311と外周部312との間に筒状口部t1を挿入して挟持することにより、行なうことができる。これで図1及び図2に示した装着状態となるのであり、装着が極めて迅速容易である。
【0029】
装着された流路接続具1に対して、注射器Sの導管部s2を接続するには、図3に示すように、導管部s2がスリーブ34内に挿入されるようにして、カラーs1の雌ねじs3をスリーブ34の雄ねじ341に螺合すればよい。これにより、導管部s2の先端部はシール解除部材40環状壁41の内面に緊く挿入される。この状態で、さらに注射器Sを螺入すれば、環状壁41は内フランジ部側へ押し動かされ、突起23を押圧して弾性変形部21を変形させる。これに伴って、弁孔22は開放され、混注管本体Tの流路と連通状態となる。この状態で、必要に応じて、注射器Sから混注管本体Tを経て配管P1,P2に対して、液の注入または抽出が行なわれる。
【0030】
この注入抽出の際に、液が導管部s2とシール解除部材40との間から漏出しないように、両者は液密に嵌合するように寸法が決められる。特に、この実施形態においては、導管部s2は、シール解除部材40の環状壁41内周面のテーパ部に嵌って保持される。そして、弁孔22を開くために導管部s2によりシール解除部材40がシール弁20の突起23に押し付けられると、弾性変形部21の変形に伴って突起23は径方向内側へ変形し、これに伴ってシール解除部材40の底面に径方向内側へ向く摩擦力を与える。シール解除部材40は、この摩擦力を受けて径方向へすぼむ方向に変形しようとし、導管部s2を締め付ける。これにより、シール解除部材40と導管部s2との液密性がより高くなる。
【0031】
常時(導管部s2の非挿入時)において、シール弁20の突起23は、接続用キャップ30のスリーブ34内周面との間に間隙を形成するのが望ましい。これにより、導管部s2を流路接続具1に挿入結合した状態から脱抜する際に、突起23がスリーブ34内周面に接触するのが防止され、作動の確実性が保証される。スリーブ34内周面と突起23との間に間隙を形成しても、シール弁20は保持部33により接続用キャップ30に保持されるので、接続用キャップ30、シール解除部材40及びシール弁20の一体的な組立て状態が損なわれることはない。
【0032】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る流路接続具1aを示している。この流路接続具1は、先の実施形態と基本形態を共通にしており、シール弁20aの形状が異なっている。すなわち、シール弁20aは、弾性変形部21aが平板状に延び、その平らな面に突起23が設けられている。シール弁20の内フランジ部t3側は、変形時に混注管本体Tの流路を狭めないように、凹状部26が形成されている。
【0033】
この流路接続具1も、先の実施形態と同様に使用することができる。図5は、注射器Sを結合し導管部s2をシール解除部材40に挿入した状態を示している。この状態において、弁孔22が開放され、混注管本体Tの流路が注射器Sと連通している。この実施形態では、シール弁20が平板状であるので、その厚さ方向への変形量が小さくても弁孔22の開放が行なわれる。
【0034】
図6は本発明の第3の実施形態に係る流路接続具1bを示している。この流路接続具1bは、シール解除部材40bが、スリーブ34の段部342に当接する環状壁41の端部に軟質リング45を備えている。図6に示すように、軟質リング45は、注射器Sを結合する際に挿入される導管部s2の端面に液密に接する。軟質リング45は、環状壁41に接着、熱融着等により接合することができる。
【0035】
この実施形態においては、導管部s2の先端部が軟質リング45に当接してシール解除部材40を押し動かすので、環状壁41内周面への挿入状態となる場合に比べて、導管部s2を脱抜するのが容易になっている。
【0036】
図7〜図10は、図6に示したのと同様の構造のシール解除部材40bについて、環状壁41と軟質リング45との種々の結合形態を示す。図7は、その一例の縦断正面図であり、図8はシール解除部材40bを取り出して示しており、(a) は軟質リング45の縦断面図及び底面図、(b) は環状壁41の縦断面図及び底面図である。この例では、環状壁41に2つの貫通孔411を形成し、軟質リング45にはこれに対応する位置に突片451を設け、両者を嵌合して結合するようになっている。突片451は、先端部が基端部より僅かに大径となっており、貫通孔411はこれに対応して下部が上部より僅かに大径となっている。これにより、嵌合の保持が確実となる。
【0037】
図9は、環状壁41の上部に環状の凹部412を設け、その縁部を僅かに小径としたものである。軟質リング45には、凹部412に対応して縁部に環状の凸部452を設けている。これらの凹部412及び凸部452が嵌合することにより、環状壁41と軟質リング45との結合が確実となる。
【0038】
図10は、環状壁41の上面に環状の溝413を設けたものである。軟質リング45には、溝413に対応して下面に環状の突起453を設けている。これらの溝413及び突起453が嵌合することにより、環状壁41と軟質リング45との結合が確実となる。また、この嵌合に加えて接着または熱融着を採用することもできる。
【0039】
図11及び図12は本発明の第3の実施形態に係る流路接続具1cを示しており、図11は注射器S結合前、図12は注射器S結合後の状態を示す。この流路接続具1cの基本形態は第1の実施形態と同様であり、ここではシール解除部材40が環状壁41の底壁47の中央部から内フランジ部t3側へ突出した押圧管46を備えている。この押圧管46は、常時はシール弁20の上面付近に位置しており、注射器Sが結合され導管部s2が挿入されることにより、押し動かされて押圧管46先端部が弁孔22周縁を押すように作用する。この実施形態においては、このとき押圧管46は、弁孔22内に挿入する。ここでも、弁孔22は、第1の実施形態のように突起23がシール解除部材40に押圧されることにより、弾性変形部21が変形して開放されるのであるが、押圧管46の押圧がこれに加わることにより、その開放がより円滑に行なわれる。
【0040】
また、導管部s2の挿入状態では、シール弁20から押圧管46に対して、図12に矢印fで示す締め付け力が作用している。この締め付け力が大きいと、導管部s2を脱抜する際に、シール解除部材40cがシール弁20の弁孔22内に残留してしまう場合がある。しかしながら、この実施形態では、シール解除部材40cがシール弁20の突起23を押圧するので、締め付け力fはその分弱められる。したがって、導管部s2の脱抜時に、シール解除部材40cがシール弁20の弁孔22内に残留するのが防止される。
【0041】
図13及び図14は上記第3の実施形態の変形例を示しており、図13は注射器S結合前、図14は注射器S結合後の状態を示す。押圧管46は、常時はシール弁20の上面付近に位置している。注射器Sが結合され導管部s2が挿入された場合には、押圧管46先端部が弁孔22周縁を押すように作用するが、この実施形態においては、弁孔22内に挿入されないか、僅かに挿入されるだけである。この実施形態においても、突起23がシール解除部材40に押圧されることにより弾性変形部21が変形して弁孔22が開放されるのを、押圧管46の押圧が補助し、開放がより円滑に行なわれる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、注射器等の導管部との結合は、テーパ部同士の摩擦結合等によってもよく、その場合は、スリーブ34の外周面は、テーパ状の平滑面とされ、注射器Sのカラーs1の雌ねじに螺合する雄ねじ341を設ける必要はない。或いは、注射器等の導管部の外周面とスリーブの内周面とをテーパ面同士の摩擦結合とすることもできる。また、注射器のみならず、配管、混注管、容器等の筒状口部に適用することもできる。
【0043】
接続用キャップの係止部は、筒状口部を挟持する形態の他、例えばバヨネットジョイント等、種々の形態とすることができる。バヨネットジョイントを設ける場合は、接続用キャップ及び筒状口部の一方に、一部切り欠かれた環状突起を設け、他方には、切り欠き部に通される係合突起を設けた構造とし、係合突起を切り欠き部に通して周方向に回転することにより、両突起が係合して抜け止めとなるようにして固定する。
【0044】
接続用キャップの保持部は、シール弁20の支持部24の外周部を緊く受け入れる径の円筒面による保持部33とする他、種々の形態とすることができ、例えば、図1に一点鎖線で示すように、シール弁20の支持部24から導管部装着側へ突出した凸部27と、接続用キャップ30の押さえ部32の筒状口部装着側に設けられた凹部37とを備え、両者が緊く嵌合するものとすることができる。この場合、凸部27及び凹部37は、弾性変形部21を囲むように配置され、連続または断続した環状または複数の点状に形成されたものとすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1,1a,1b,1c: 流路接続具
20,20a: シール弁
21,21a: 弾性変形部
22: 弁孔
23: 突起
24: 支持部
30: 接続用キャップ
31: 係止部
32: 押さえ部
33: 保持部
34: スリーブ
40,40b,40c: シール解除部材
41: 環状壁
42: 当接部
45: 軟質リング
46: 押圧管
342:段部
S: 注射器
s2: 導管部
T: 混注管本体
t1: 筒状口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部内周面から張出した内フランジ部を備えた筒状口部に取付けることにより、液給排用の導管部を筒状口部に連通させるための流路接続具であって、
前記筒状口部の開口縁部に被せて固定される接続用キャップと、
該接続用キャップ30における筒状口部装着側に支持されるシール弁と、
前記接続用キャップの導管部装着側において該接続用キャップ及び前記シール弁の間に保持されるシール解除部材とを備え、
前記シール弁は、弾性変形可能な弾性変形部と、前記弾性変形部の中央部に形成され常時は弾性的に閉止している弁孔と、前記弾性変形部において前記弁孔を囲むようにして導管部装着側へ突出した突起と、該弾性変形部の外周部から径方向外方へ延び前記筒状口部の内フランジ部に重ねられる環状の支持部とを備え、
前記接続用キャップは、前記筒状口部に係止する係止部と、前記筒状口部の内フランジ部との間に前記シール弁の支持部を挟持する環状の押さえ部と、前記シール弁を保持する保持部と、前記押さえ部の径方向中央部から導管部装着側へ起立し前記導管部の挿入を受けるスリーブとを備え、
前記シール解除部材は、前記接続用キャップのスリーブ内周面に接する環状壁と、前記シール弁の突起に接する当接部とを備え、前記スリーブ内周面に沿って摺動可能であり、前記スリーブ内周面に張出した段部により導管部装着側への抜け止めがされており、前記導管部の挿入時に該導管部に接触して押し動かされるようにされており、
前記シール弁は、前記導管部に押し動かされる前記シール解除部材によって前記突起が押圧されることにより、前記弾性変形部が変形して前記弁孔が開放することを特徴とする流路接続具。
【請求項2】
前記接続用キャップの係止部が、前記筒状口部の内周面に接する内周部と、外周面に接する外周部と、これら内周部及び外周部を結合する結合頂部とを備えて、内周部と外周部との間に前記筒状口部を挟持するようになっており、前記内周部は前記押さえ部よりも前記内フランジ部側へ延びた突環部を備え、前記保持部は前記シール弁の支持部の外周縁と嵌合する前記突環部により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流路接続具。
【請求項3】
前記シール解除部材が、前記スリーブの段部に当接する前記環状壁の端部から前記内フランジ部側へ縮径するテーパ状内面を有し、該テーパ状内面が前記導管部の外周面に液密に接することを特徴とする請求項1または2に記載の流路接続具。
【請求項4】
前記シール解除部材が、前記スリーブの段部に当接する前記環状壁の端部に軟質リングを備え、該軟質リングが前記導管部の端面に液密に接することを特徴とする請求項1または2に記載の流路接続具。
【請求項5】
前記シール解除部材が、前記環状壁における前記内フランジ部側の端部を覆う底壁と、該底壁の中央部から前記内フランジ部側へ突出した押圧管とを備え、該押圧管は、導管部挿入時に前記シール解除部材が押し動かされることにより、前記シール弁の弁孔周囲部を押圧することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の流路接続具。
【請求項1】
口部内周面から張出した内フランジ部を備えた筒状口部に取付けることにより、液給排用の導管部を筒状口部に連通させるための流路接続具であって、
前記筒状口部の開口縁部に被せて固定される接続用キャップと、
該接続用キャップ30における筒状口部装着側に支持されるシール弁と、
前記接続用キャップの導管部装着側において該接続用キャップ及び前記シール弁の間に保持されるシール解除部材とを備え、
前記シール弁は、弾性変形可能な弾性変形部と、前記弾性変形部の中央部に形成され常時は弾性的に閉止している弁孔と、前記弾性変形部において前記弁孔を囲むようにして導管部装着側へ突出した突起と、該弾性変形部の外周部から径方向外方へ延び前記筒状口部の内フランジ部に重ねられる環状の支持部とを備え、
前記接続用キャップは、前記筒状口部に係止する係止部と、前記筒状口部の内フランジ部との間に前記シール弁の支持部を挟持する環状の押さえ部と、前記シール弁を保持する保持部と、前記押さえ部の径方向中央部から導管部装着側へ起立し前記導管部の挿入を受けるスリーブとを備え、
前記シール解除部材は、前記接続用キャップのスリーブ内周面に接する環状壁と、前記シール弁の突起に接する当接部とを備え、前記スリーブ内周面に沿って摺動可能であり、前記スリーブ内周面に張出した段部により導管部装着側への抜け止めがされており、前記導管部の挿入時に該導管部に接触して押し動かされるようにされており、
前記シール弁は、前記導管部に押し動かされる前記シール解除部材によって前記突起が押圧されることにより、前記弾性変形部が変形して前記弁孔が開放することを特徴とする流路接続具。
【請求項2】
前記接続用キャップの係止部が、前記筒状口部の内周面に接する内周部と、外周面に接する外周部と、これら内周部及び外周部を結合する結合頂部とを備えて、内周部と外周部との間に前記筒状口部を挟持するようになっており、前記内周部は前記押さえ部よりも前記内フランジ部側へ延びた突環部を備え、前記保持部は前記シール弁の支持部の外周縁と嵌合する前記突環部により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流路接続具。
【請求項3】
前記シール解除部材が、前記スリーブの段部に当接する前記環状壁の端部から前記内フランジ部側へ縮径するテーパ状内面を有し、該テーパ状内面が前記導管部の外周面に液密に接することを特徴とする請求項1または2に記載の流路接続具。
【請求項4】
前記シール解除部材が、前記スリーブの段部に当接する前記環状壁の端部に軟質リングを備え、該軟質リングが前記導管部の端面に液密に接することを特徴とする請求項1または2に記載の流路接続具。
【請求項5】
前記シール解除部材が、前記環状壁における前記内フランジ部側の端部を覆う底壁と、該底壁の中央部から前記内フランジ部側へ突出した押圧管とを備え、該押圧管は、導管部挿入時に前記シール解除部材が押し動かされることにより、前記シール弁の弁孔周囲部を押圧することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の流路接続具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−183113(P2011−183113A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54640(P2010−54640)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000112576)フカイ工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000112576)フカイ工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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