説明

流速および流れ方向を計測するためのタービン流量計

【課題】低速あるいは不規則な流れの状態でも流量および流れ方向を正確に計測する。
【解決手段】流れFFの速度〔流量〕および方向を計測するデバイス1は、流れによって回転する枢動可能な手段2と連動して回転するモジュレータ3と、入射ビームIBを前記モジュレータ3に提供し前記モジュレータ3から戻りビームRBを受けるための光ファイバ装置と、を備え、前記モジュレータ3は第1角度セクタ、第2角度セクタ、第3角度セクタとを少なくとも有するエンコーダを含んでおり、入射信号を変調して前記枢動可能な手段2の回転速度および回転方向に応じた変調信号を形成する。さらに演算処理手段6は、前記エンコーダが完全に一回転する度に前記変調信号に基づいて流れFFの速度および方向を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術の分野】
【0001】
本発明の一つの特徴は、流体流れの速度および方向を計測するためのデバイスに関する。
【0002】
本発明の別の特徴は、流体流れの速度および方向を計測するための方法に関する。
【0003】
本発明の特定の用途は、過酷な環境、例えば油田サービス産業で見られる高圧で高温の環境での流体流れの計測に関する。
【発明の背景】
【0004】
流体流れの速度、かくして井坑(well-bore、井戸状の穴) 内を流れる流体の流量を現場で計測するためのデバイス(装置)は、当該技術分野で既知である。流れの計測は、インペラー(impeller)またはスピナー(spinner)の回転速度の計測値に基づいて行うことができる。スピナーの回転速度は、計測デバイスを通過する流量と関連している。スピナーには、螺旋状スピナー、ベーン状スピナー(vane-like spinner)、フルボアスピナー(full-bore spinner)、または、様々な種類の流れ集中−拡散スピナーといった幾つかの種類がある。スピナーが最も一般的な流量計であるが、トルク流量計および相互相関流量計も使用され得る。
【0005】
例えば、日本国特許公開公報特開平8−165879号には、坑穴流速計測デバイスが記載されている。この計測デバイスは、坑穴(bore-hole)に流入する高圧高温の流体の速度を計測する。計測装置は、流動している流体内に位置決めされるプロペラを含む。流体の速度は、プロペラの回転に変換され、これがスリットディスクに伝達される。スリットディスクは、光路を通過して送られてきた光を遮断する。光路は、第1光ファイバ、第1レンズ、圧力容器に設けられたガラスウィンドウ、反射器、第2レンズ、および、第2光ファイバから構成される。スリットディスクは、光を、断続した変調光信号に変換し、これが光検出器に提供される。断続した変調光信号は電気パルス信号に変換される。流体の速度は、単位時間当たりのパルス信号の数を計数することによって計測される。
【0006】
この計測デバイスは、流れている流体の方向に関する表示を提供することができず、例えば低速流れ状態、不規則な流れ状態、等の特定の情況では正確でない。
【0007】
さらに、米国特許第3,771,362号には、プロペラ型の流速インジケータが記載されている。このインジケータは、プロペラ、プロペラシャフト、光源および光検出器、並びに、光源と光検出器との間でプロペラシャフトに取り付けられたコーディング手段を含んでいる。コーディング手段は、不均一に間隔が隔てられた不透明な突出部を含む。流体の流れの速度および方向は、検出器が受け取った光から決定される。
【0008】
この流速インジケータは、流れている流体の方向に関する表示を提供することができるが、例えば低速流れ状態、不規則な流れ状態、等の特定の情況では正確でない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、流体流れの速度および方向を計測するためのデバイスであって、従来技術の計測デバイスの欠点の少なくとも一つを解決するデバイスを提案することである。
【0010】
第1の特徴によれば、本発明は、流体流れFFの速度および方向を計測するためのデバイスに関するものであり、このデバイスは、
流体流れの速度および方向を計測するためのデバイスであって、
前記流体流れにさらされた場合に、前記流体流れの速度および方向に依存した枢動可能手段回転速度および方向で、回転するようになされた枢動可能な手段と、
前記枢動可能な手段と連結されたモジュレータであって、前記枢動可能な手段と連動して回転するようになされたモジュレータと、
入射ビームを前記モジュレータに提供し前記モジュレータから戻りビームを受けるための光ファイバ装置と、を備え、
前記入射ビームは入射信号を含み、前記戻りビームは変調信号を含み、前記モジュレータは、前記入射信号を変調して、前記枢動可能な手段の回転速度および方向に応じた前記変調信号を形成する。
【0011】
前記モジュレータは、第1角度セクタと、第2角度セクタと、第3角度セクタと、を少なくとも有するエンコーダを含んでおり、各角度セクタは所定の減衰率を有し、これにより、前記エンコーダが完全に一回転する度に、前記変調信号は第1部分、第2部分および第3部分を少なくとも含むようになる。前記デバイスは、前記変調信号の少なくとも前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分に基づいて前記流体流れの速度および方向を決定するための演算処理手段を、さらに備える。
【0012】
前記エンコーダは振幅エンコーダである。前記第1角度セクタ、前記第2角度セクタおよび前記第3角度セクタは実質的に同じ角度を有し、各セクタは、他のセクタとは異なる所定のパーセンテージで前記入射ビームを透過させる。
【0013】
前記モジュレータは、前記枢動可能な手段と磁気的または機械的に連結されているようにしてもよい。
【0014】
有利には、前記振幅エンコーダはディスク形状を有し、前記第1角度セクタは第1半径を有し、前記第2角度セクタは第2半径を有し、前記第3角度セクタは第3半径を有し、各セクタは、前記入射ビームを実質的に遮断する材料によって形成されている。
【0015】
任意であるが、前記入射ビームは、第1ビームおよび第2ビームに分割されるようにしてもよい。前記第2半径および前記第3半径は、前記第1ビーム用の第1トラックを画定するように選択される。前記第1角度セクタおよび第2角度セクタが前記第1ビームを実質的に透過させ、その一方で、前記第3角度セクタが前記第1ビームを実質的に遮断する。前記第1半径および前記第2半径は、前記第2ビーム用の第2トラックを画定するように選択される。前記第1角度セクタが前記第2ビームを実質的に透過させ、その一方で。前記第2角度セクタおよび第3角度セクタが前記第2ビームを実質的に遮断する。
【0016】
代わりに、前記振幅エンコーダがディスク形状を有し、前記第1角度セクタは第1フィルタエレメントによって形成され、前記第2角度セクタは第2フィルタエレメントによって形成され、前記第3角度セクタは第3フィルタエレメントによって形成されるようにしてもよい。
【0017】
前記光ファイバ装置は、
前記入射ビームを発生させるためのレーザー源と、
前記戻りビームを電気信号に変換するための検出器と、
前記レーザー源および前記検出器を光ファイバの一端に連結するためのカプラーと、
前記光ファイバの他端に設けられたビームシェーパであって、前記入射ビームを前記モジュレータに提供し前記戻りビームを前記モジュレータから受けるためのビームシェーパと、
前記ビームシェーパへ前記戻りビームを反射させるための鏡と、を含むようにしてもよい。
【0018】
前記鏡は、截頭光ファイバによって形成された前記ビームシェーパと関連した凹面鏡であってもよい。
【0019】
前記鏡は、コリメータによって形成された前記ビームシェーパと関連したコーナーキューブ鏡であってもよい。
【0020】
前記鏡は、焦合器によって形成された前記ビームシェーパと関連した平面鏡であってもよい。
【0021】
代わりに、前記光ファイバ装置は、
前記入射ビームを発生させるためのレーザー源と、
前記戻りビームを電気信号に変換するための検出器と、
前記レーザー源を前記モジュレータに連結する第1光ファイバであって、前記入射ビームを前記モジュレータに提供するための第1光ファイバと、
前記モジュレータを前記検出器に連結する第2光ファイバであって、前記戻りビームを前記検出器に提供するための第2光ファイバと、を含むようにしてもよい。
【0022】
別の特徴によれば、本発明は、流体流れFFの速度および方向を計測するための計測装置に関するものであり、この計測装置であって、複数の波長を搬送する入射ビームを提供するレーザー源と、前記複数の波長を分離し再結合するためのマルチプレクサーと、複数の本発明によるデバイスと、を備える。各計測デバイスは特定の波長に応答し前記特定の波長に応じた戻しビームを提供する。計測装置は、前記特定の波長にしたがって複数の専用の検出器へ前記戻しビームを分配するデマルチプレクサーを、さらに備える。
【0023】
さらに別な特徴によれば、本発明は、流体流れの速度および方向を計測するための方法に関する。この方法は、
前記流体流れにさらされた場合に前記流体流れの速度および方向に依存した枢動可能手段回転速度および方向で回転する枢動可能な手段と、連動して回転するモジュレータであって、複数の角度セクタを含むモジュレータに、入射信号を含む入射ビームを提供する工程と、
前記枢動可能な手段の回転速度および方向に応じて前記入射信号を変調することにより、変調信号を含む戻しビームを発生させる工程と、
前記モジュレータから前記戻しビームを受け、前記変調信号を演算処理する工程と、を備え、
前記入射信号を変調する工程は、エンコーダが完全に一回転する度に、前記変調信号が少なくとも一連の第1部分、第2部分および第3部分を含むように、前記変調信号をエンコードする工程を含み、
前記変調信号を演算処理する工程は、前記変調信号の少なくとも前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分に基づいて前記流体流れの方向を決定するため、前記一連の部分をデコーディングする工程を含み、
少なくとも前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分は、異なる振幅を有し、各角度セクタにそれぞれ対応する。
【0024】
前記変調信号を演算処理する工程は、前記流体流れの速度を決定するため、単位時間当たりの前記一連の部分の数を計数する工程を、さらに含むようにしてもよい。
【0025】
前記変調信号を演算処理する工程は、前記流体流れの方向を決定するため、一連の部分内での前記部分の順番を確認する工程を、さらに含むようにしてもよい。
【0026】
本発明は、計測デバイスの全光学的呼掛け(全光学的問い合わせ、all-optical interrogation) を可能にする。本発明により、電子回路の機能を過酷な環境によって損なってしまうことのある計測位置の近くに電子回路が配置されることがないようにする。
【0027】
したがって、本発明によれば、従来技術の計測デバイスと比較して、コンパクトさおよび信頼性の程度を高くすることができる。
【0028】
さらに、本発明によれば、複数の部分を含み且つこれらの部分間の移行部がはっきりとしている変調信号を得ることができ、これにより、計測デバイスの精度が向上する。
【0029】
さらに、本発明の計測デバイスは、多重通信技術を使用して、非常に効率的な方法で、同じファイバ上で様々な光学式計測デバイスと組み合わせることができる。
【0030】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、以下に記載された実施形態を参照して明らかに説明される。
【0031】
同様の参照番号を同様のエレメントに付した添付図面に、限定でなく例として本発明を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、代表的な陸上炭化水素井戸を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態による流体流れの速度および方向を計測するためのデバイスを示す概略図である。
【図3A】図3A、図3Bおよび図3Cは、本発明の第1実施形態に適合された三種類のビームシェーパを示す図である。
【図3B】図3A、図3Bおよび図3Cは、本発明の第1実施形態に適合された三種類のビームシェーパを示す図である。
【図3C】図3A、図3Bおよび図3Cは、本発明の第1実施形態に適合された三種類のビームシェーパを示す図である。
【図4A】図4Aおよび図4Bは、それぞれ、本発明による振幅エンコーダの第1変形例および対応するエンコード信号を示す図である。
【図4B】図4Aおよび図4Bは、それぞれ、本発明による振幅エンコーダの第1変形例および対応するエンコード信号を示す図である。
【図5A】図5Aおよび図5Bは、それぞれ、本発明による振幅エンコーダの第2変形例および対応するエンコード信号を示す図である。
【図5B】図5Aおよび図5Bは、それぞれ、本発明による振幅エンコーダの第2変形例および対応するエンコード信号を示す図である。
【図6A】図6Aおよび図6Bは、それぞれ、本発明による振幅エンコーダの第3変形例および対応するエンコード信号を示す図である。
【図6B】図6Aおよび図6Bは、それぞれ、本発明による振幅エンコーダの第3変形例および対応するエンコード信号を示す図である。
【図7A】図7Aおよび図7Bは、それぞれ、本発明による振幅エンコーダの第4変形例および対応するエンコード信号を示す図である。
【図7B】図7Aおよび図7Bは、それぞれ、本発明による振幅エンコーダの第4変形例および対応するエンコード信号を示す図である。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態による流体流れの速度および方向を計測するためのデバイスを示す概略図である。
【図9】図9は、本発明の第3実施形態による流体流れの速度および方向を計測するためのデバイスを示す概略図である。
【図10】図10は、複数の多重通信計測デバイスを含む本発明による一つの計測装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、井坑(well-bore)WBの掘削作業を実施し、ケーシングストリング(casing string)CSを延ばし、環状部CA(すなわち井坑WBとケーシングストリングCSとの間の空間)をシールするためにセメント作業を実施した後における代表的な陸上炭化水素井戸(hydrocarbon well)の位置関係および表面機器(surface equipment、地表設備、地表機器)SEを概略的に示している。
【0034】
この段階では、鑿井検層(logging operation) を実施してもよい。鑿井検層は、炭化水素井戸地層の様々なパラメータ(例えば、様々な深さでの抵抗、多孔度等)、および、井坑内の様々なパラメータ(例えば、様々な深さでの温度、圧力、流体の種類、流体の流量等)を計測するのに役立つ。こうした計測は、検層工具(logging tool)TLによって行われる。検層工具は、一般的には、少なくとも一つのセンサ(例えば、抵抗ゾンデ、機械的ゾンデ、γ線中性子ゾンデ、加速度計、圧力センサ、温度センサ、流量計、等)を含み、少なくとも一つのパラメータを計測する。一つまたはそれ以上のパラメータを計測する、同一または異なる複数のセンサを有していてもよい。ケーブルLNによって様々なパラメータについてのデータを集めるため、検層工具を坑穴(bore hole)内で上下に移動させる。
【0035】
本発明によれば、ケーブルは、光ケーブルであり、井坑内に存在する潜在的に過酷な環境に対して保護されたファイバラインを含んでいる。光ケーブルは、光信号を、検層工具TLから表面ユニット(地表ユニット)、例えば車輛SUまで伝送する。
【0036】
検層工具は、適合した表面機器SEによって井坑内部に展開してもよい。表面機器SEは、車輛SUおよび適合した展開システム、例えば掘削リグDR等を含んでいてもよい。検層工具TLで集めた炭化水素地層GFまたは井坑WBに関するデータを、表面に、例えば適当な電子装置EAを装備した車輛にリアルタイム(実時間)で伝送するようにしてもよい。電子装置は、データ収集−分析コンピュータを有していてもよく、データ収集−分析ソフトウェアが組み込まれていてもよい。
【0037】
図1は、さらに、工具TLがセントラライザーCTによって位置決めされている、表面層を備えた井坑の一部の拡大図を示している。工具TLは、流量計ゾンデ(flow-meter sonde)FSに連結された枢動可能な手段、例えばスピナー2を含んでいる(流体流れの速度および方向を本発明にしたがって計測するためのデバイスのこの部分を以下においてさらに詳細に説明する)。スピナーの回転速度および方向は、工具のレベルを流れる流体FFの量と関連(連動)する。図1は、生産井(production well)、すなわち表面に向かって(上向きの矢印)流れる原油およびガスを産出する井戸である井坑を示している。しかしながら、井坑は、圧入井(injection well)、すなわち流体を表面から地層に向かって圧入する井戸であってもよい。
【0038】
工具TLは、他のセンサOSを含んでいてもよい。工具TLは、接続ラインLNを通して表面機器に計測値を提供する。この検出値を工具TLによる深さの計測値と相関することによって、深さに対する流れの計測値の記録(検層、log)を行うことができる。
【0039】
図2は、流体流れの速度および方向を計測するための本発明の第1実施形態によるデバイス1を概略的に示している。
【0040】
流体流れの速度および方向を計測するためのデバイス1は、流量計ゾンデFSと、光ファイバ4と、電子装置EAと、を含んでいる。
【0041】
流量計ゾンデFSは、スピナー2と、モジュレータ3と、ビームシェーパ45と、鏡46と、を含んでいる。モジュレータ3、ビームシェーパ45および鏡46は、ハウジング7内に収容されている。ハウジング7は、井坑内に存在するであろう過酷な環境(高圧、高温、振動等)に対して適切な保護をもたらし、光学的エレメントの調整された状態を許容範囲内に維持する。スピナー2はハウジングの外に配置されており、流体流れFFにさらされている(接触している)。スピナーは、流体流れFFの軸線方向成分(矢印で示す)に依存するスピナー回転速度および方向で回転する。
【0042】
モジュレータ3はスピナー2に連結されており、スピナーと関連(連動)して回転する。好ましくは、モジュレータ3およびスピナー2は互いに磁気で連結されている。この構成は、流量計ゾンデFSの光学的エレメントを清浄な環境に維持することができる簡単な構成である。
【0043】
変形例(図示せず)として、モジュレータ3およびスピナー2を互いに機械的に連結してもよい。機械的連結は、例えば、直接的なシャフトリンクと、シャフトおよびハウジング間の適当なシールと、によって形成され得る。
【0044】
光ファイバ4は、流量計ゾンデFSを電子装置EAに接続する。光ファイバ4はケーブルLN内に設けられている。ケーブルLNには、外装が設けられていてもよい。これは、光ファイバを塩水、水素および化学的攻撃から保護し、ワイヤ−ライン作業(wire-line operation)を行うための機械的引張強度を提供する。光ファイバは、単モードファイバ(single mode fiber)および多モードファイバ(multi mode fiber)のいずれであってもよい。
【0045】
電子装置EAは、レーザー源41と、検出器42と、光カプラー43と、電子回路5と、を含んでいる。電子装置EAは、カプラー43によって光ファイバ4に接続されている。レーザー源41および検出器42の光側がカプラー43に接続されている。レーザー源41および検出器42の電子側が電子回路5に接続されている。電子回路5は演算処理手段6を有している。この演算処理手段は、例えば、マイクロプロセッサおよび適当なソフトウェアを組み込んだメモリー装置であってもよい。
【0046】
レーザー源は、レーザービームの形態で入射ビームIBを生成する。レーザービームは、単波長、例えば1310nmまたは1550nmを含むようにしてもよい。波長の選択は、電子装置と流量計ゾンデとの間に配置された光ファイバの長さ(ディポート距離(deport distance))で決まる。ディポート長さが数mである場合には、可視領域の波長を使用してもよい。ディポート長さが数kmである場合には、近赤外領域の波長が好ましい。これは、減衰が小さいためである。さらに、レーザー源の出力の選択は、展開した光ファイバの長さおよび光学的構成要素の存在に依存する。例えば、検出器での戻りビームの出力は、数μW程度またはそれよりも高くなければならない。
【0047】
検出器42は、戻りビームRBを電気信号に変換し、この信号を電子回路5に提供する。有利には、検出器42は、光ダイオードである。
【0048】
有利には、カプラーは50/50カプラー(50/50 coupler)であり、戻りビームRBを二つの等しい部分に分割する。
【0049】
ビームシェーパ(beam shaper、ビーム形成器)45および鏡46は、距離が短い(数mm程度)何もない空間(自由空間)を形成している。スピナーの回転と関連した情報にしたがってビームを変調することができるようにして、モジュレータがこの何もない空間(自由空間)内に配置されている。ビームシェーパ45および鏡46は、低い損失および調整された許容範囲を維持するように設計されている。様々なビームシェーパおよび鏡の構成が可能である。
【0050】
図3Aは、ビームシェーパおよび鏡の第1の構成を示す。ビームシェーパは、截頭ファイバ(切頭ファイバ、先端が切り取られたファイバ、truncated fiber)45Aの形態を取っており、凹面鏡46Aと関連している。代表的には、截頭ファイバが提供する入射ビームは、所定の開口数NA(光軸に関する発散角)の発散ビームである。良好な整合を得るため、光ファイバの先端は、好ましくは、鏡の球中心SCPの位置に位置決めされる。この構成は、ファイバ先端の位置における許容範囲が厳密となるが、先端を中心とした光ファイバの回転による影響を受けない。
【0051】
図3Bは、ビームシェーパおよび鏡の第2の構成を示す。このビームシェーパは、コーナーキューブ鏡(二枚の鏡で形成したL字形状断面を持つ鏡)46Bと関連したコリメータ45Bの形態を取っている。代表的には、コリメータが提供する入射ビームは、開口数が発散ビームの開口数よりも小さい平行化ビームである。コーナーキューブ鏡(corner cube mirror)は、入射角に関わらず、入射ビームを反射して入射方向に戻す。かくして、この構成は、角度および長さ方向についての許容範囲が良好であるが、横方向許容範囲が厳密である。良好な整合を得るためには、キューブのコーナーCCCを入射ビーム経路の中央に置かなければならない。そうでない場合には、戻りビームが平行にシフトする。
【0052】
図3Cは、ビームシェーパおよび鏡の第3の構成を示す。このビームシェーパは、平面鏡46Cと関連した焦合器(フォーカサー、focuser)45Cの形態を取っている。代表的には、焦合器が提供する入射ビームは、開口数が平行化ビームの開口数よりも大きい焦合ビームである。この形体は、長さ方向および角度についての許容範囲が良好であり、横方向で自動的に整合する。良好な整合を得るため、鏡を焦点FPに位置決めし、鏡を光軸に対して垂直にする。
【0053】
好ましいビームシェーパおよび鏡の構成は、第2の構成および第3の構成である。これらの構成は、高温による変形が加わった状態で安定しており、整合された状態を容易に維持することができる。
【0054】
しかしながら、複数の多重通信デバイスを含む計測装置でデバイスを使用する場合には、ビームの経路でスペクトルフィルタを使用してもよい。この場合、第2のビームシェーパおよび鏡の構成が好ましい。
【0055】
流体流れの速度および方向を計測するための図2に示すデバイス1は以下のように作動する。
【0056】
レーザー源41は、入射信号を含む入射ビームIBを発生する。入射ビームIBは、カプラー43、光ファイバ4およびビームシェーパ45を介してモジュレータ3に提供される。流体流れFFがデバイス1を通過するとき、スピナー2がスピナー回転速度および方向にしたがって回転する。スピナー2とモジュレータ3との間の連結により、モジュレータ3はスピナー2と協調して回転する。モジュレータ3は、入力信号を変調し、スピナーの回転速度および方向に応じて変調信号を形成する。鏡46は、変調信号を含む戻りビームを、ビームシェーパ45、光ファイバ4およびカプラー43を介し、検出器42に向けて反射する。検出器42は、光型変調信号を電気型変調信号に変換し、この電気型変調信号を電子回路5に提供する。演算処理手段6は、変調信号に基づいて流体流れの速度および方向を計算する。
【0057】
様々な可能なモジュレータの変形例およびこれらの変形例のそれぞれの作動を、以下に詳細に説明する。
【0058】
図4Aは、第1の変形例による振幅エンコーダ30の形態を取ったモジュレータを示している。
【0059】
振幅エンコーダ30は、直径がDであるディスク形状を有している。このディスク形状の材料には、レーザービームを実質的に遮断する特定のパターンが切り込んである。例えば、特定のパターンが金属プレートに切り込んである。エンコーダ30は、シャフト(図示せず)に連結するための穴38を有している。エンコーダ30は、第1部分31および第2部分32を含み、これらの部分の各々は、180°の角度セクタを構成する。第1部分31は、第1角度セクタ34と、第2角度セクタ35と、第3角度セクタ36と、を含んでいる。第1角度セクタ34は、第1半径R1を有し、角度θ1によって画定(形成)されている。第2角度セクタ35は、第2半径R2を有し、実質的に同一の角度θ1によって画定(形成)されている。第3角度セクタ36は、第3半径R3を有し、実質的に同一の角度θ1によって画定(形成)されている。
【0060】
図4Aの例では、角度θ1は60°である。単一のビーム(シングルビーム、一光束、single beam)は所定の大きさ(横断面)を有している。かくして、第1半径R1は、単一のビームSBが第1角度セクタに入射したとき、前記ビームを実質的に通すように選択されている。第2半径R2は、単一のビームSBが第2角度セクタに入射したとき、前記ビームのほぼ半分を通すように選択されている。第3半径R3は、単一のビームSBが第2角度セクタに入射したとき、前記ビームを実質的に遮断するように選択されている。
【0061】
第2部分32は実質的に同一であり、したがって、これ以上説明しない。
【0062】
一例として、直径Dは9mmであり、第1半径R1は2mmであり、第2半径R2は3.25mmであり、第3半径R3は4.5mmである。単一のビームの直径は0.8mm乃至2mmである。
【0063】
図4Bは、図4Aの振幅エンコーダ30で得られたエンコード信号を示している。
【0064】
エンコーダ30が矢印にしたがって(反時計廻り方向に)回転すると、入射信号の振幅が以下のスキームにしたがって変調される。0°乃至60°において、第1角度セクタは、入射ビームを実質的に通す。エンコード信号は、入射ビームのほぼ100%の透過Tと対応する第1部分64を含むようになる。60°乃至120°において、第2角度セクタは、入射ビームのほぼ半分を通す。エンコード信号は、入射ビームのほぼ50%の透過Tと対応する第2部分65を含むようになる。120°乃至180°において、第3角度セクタは、入射ビームを実質的に遮断する。エンコード信号は、入射ビームのほぼ0%の透過Tと対応する第3部分66を含むようになる。単一のビームSBがエンコーダの第2部分32に入射するとき、同じスキームが180°乃至360°で繰り返される。したがって、本例では、変調信号は、エンコーダが完全に一回転する度毎に、一連の第1部分64、第2部分65および第3部分66を、二度繰り返す。
【0065】
図5Aは、第2の変形例による振幅エンコーダの形態を取ったモジュレータを示している。
【0066】
振幅エンコーダ130は、直径がDであるディスク形状を有している。このディスク形状の材料には、レーザービームを実質的に遮断する特定のパターンが切り込まれている。エンコーダ130は、シャフト(図示せず)に連結するための穴138を有している。エンコーダ130は、第1部分131および第2部分132を含み、これらの部分の各々は、180°の角度セクタを構成する。第1部分131は、第1角度セクタ134と、第2角度セクタ135と、第3角度セクタ136と、を含んでいる。第1角度セクタ134は、第1半径R1を有し、角度θ2によって画定(形成)されている。第2角度セクタ135は、第2半径R2を有し、実質的に同じ角度θ2によって画定(形成)されている。第3角度セクタ136は、第3半径R13を有し、実質的に同じ角度θ2によって画定(形成)されている。
【0067】
図5Aの例では、角度θ2は60°である。さらに、第1半径R1、第2半径R2および第3半径R3は、第1トラック139Aおよび第2トラック139Bを形成するように選択されている。
【0068】
第2部分132は実質的に同一であり、したがって、これ以上説明しない。
【0069】
第2の変形例においては、単一のビームの代りに二つのビーム(デュアルビーム、二光束、dual beam)が用いられる。二つのビームは、単一のビームと比較して小さい第1ビームDB1および第2ビームDB2を含んでいる。第1ビームDB1および第2ビームDB2は、スプリット装置(図示せず)によって、発生させられる。スプリット装置は、スプリッターおよび二つの平行なコリメータを含んでいる。
【0070】
第1ビームDB1は、エンコーダの第1トラック139Aに入射するように位置決めされる。第2ビームDB2は、エンコーダの第2トラック139Bに入射するように位置決めされる。かくして、第1ビームDB1は、第1および第2の角度セクタに入射したとき、実質的に通過する。第1ビームDB1は、第3角度セクタに入射したとき、実質的に遮断される。第2ビームDB2は、第2角度セクタおよび第3角度セクタに入射したとき、実質的に遮断される。第2ビームDB2は、第1角度セクタに入射したとき、実質的に通過する。両ビームは、スプリット装置のところで再度組み合わせられて単一の戻りビームとなる。
【0071】
一例として、直径Dは9mmであり、第1半径R1は2mmであり、第2半径R2は3.25mmであり、第3半径R3は4.5mmである。二つのビームの各々の直径は0.2mm乃至0.4mmである。
【0072】
図5Bは、図5Aの振幅エンコーダで得られたエンコード信号を示している。
【0073】
エンコーダ130が矢印にしたがって(反時計廻り方向に)回転すると、入射信号の振幅が以下のスキームにしたがって変調される。0°乃至60°において、第1部分の第1角度セクタは、第1ビームを実質的に通す。第2部分の第1角度セクタは、第2ビームを実質的に通す。エンコード信号は、入射ビームのほぼ100%の透過Tと対応する第1部分164を含むようになる。60°乃至120°において、第1部分の第2角度セクタは、第1ビームを実質的に通す。第2部分の第2角度セクタは、第2ビームを実質的に遮断する。エンコード信号は、入射ビームのほぼ50%の透過Tと対応する第2部分165を含むようになる。120°乃至180°において、第1部分および第2部分の第3角度セクタは、第1ビームおよび第2ビームをそれぞれ実質的に遮断する。エンコード信号は、入射した二つのビームのほぼ0%の透過Tと対応する第3部分166を含むようになる。第1ビームDB1がエンコーダの第2部分132に入射し、第2ビームDB2がエンコーダの第1部分131に入射するとき、同じスキームが180°乃至360°で繰り返される。
【0074】
このように、本例では、変調信号は、エンコーダが完全に一回転する度毎に、一連の第1部分164、第2部分165および第3部分166を、二度繰り返す。
【0075】
この変形例では、異なる部分間での移行を第1の変形例よりもはっきりとさせることができる。
【0076】
図6Aは、第3の変形例による振幅エンコーダの形態を取ったモジュレータを示している。
【0077】
この振幅エンコーダ230は、直径がDであるディスク形状を有している。エンコーダ230は、シャフト(図示せず)に連結するための穴238を有している。エンコーダ230は、360°の角度セクタを形成する単一の部分231でできている。単一の部分231は、第1角度セクタ234と、第2角度セクタ235と、第3角度セクタ236と、を含んでいる。各角度セクタは、120°の角度θ3によって画定(形成)されている。第1角度セクタは、第1フィルタエレメントで形成されており、第2角度セクタは、第2フィルタエレメントで形成されており、第3角度セクタは、第3フィルタエレメントで形成されている。第1フィルタエレメントは、入射ビームのほぼ100%を透過する。第2フィルタエレメントは、入射ビームのほぼ50%を透過する。第3フィルタエレメントは、入射ビームを実質的に遮断する。本例では、フィルタエレメントは、幅がWとなっているエンコーダの外周部に配置されている。幅は、単一のビームSBが外周部に入射したときにこのビームよりも実質的に大きい大きさのウィンドウを形成するように選択されている。
【0078】
一例として、直径Dは9mmであり、周囲の幅Wは2mmであり、単一のビームの直径は0.8mm乃至2mmである。エンコーダは、透明材料、例えばガラスプレートで形成されている。様々なフィルタエレメントは、フォトリソグラフィープロセスによってガラスプレートに付着させられ厚さが制御された金属コーティングから形成されている。別の反射防止コーティングをエンコーダの両側に付着させて反射損を減少させるようにしてもよい。
【0079】
図6Bは、図6Aの振幅エンコーダで得られたエンコード信号を示している。
【0080】
エンコーダ230が矢印にしたがって(反時計廻り方向に)回転すると、入射信号の振幅が以下のスキームにしたがって変調される。0°乃至120°において、第1角度セクタは、入射ビームを実質的に透過する。エンコード信号は、入射ビームのほぼ100%の透過Tと対応する第1部分264を含むようになる。120°乃至240°において、第2角度セクタは、入射ビームを実質的に透過する。エンコード信号は、入射ビームのほぼ50%の透過Tと対応する第2部分265を含むようになる。240°乃至360°において、第3角度セクタは、入射ビームを実質的に遮断する。エンコード信号は、入射ビームのほぼ0%の透過Tと対応する第3部分266を含むようになる。
【0081】
このため、本例においては、変調信号は、エンコーダが完全に一回転する度毎に、一連の第1部分264、第2部分265および第3部分266を、一つ含むようになる。
【0082】
図7Aは、第4の変形例による振幅エンコーダの形態を取ったモジュレータを示している。
【0083】
この振幅エンコーダ330は、直径がDであるディスク形状を有している。エンコーダ330は、シャフト(図示せず)に連結するための穴338を有している。エンコーダ330は、第1部分331、第2部分332および第3部分333を含み、これらの部分の各々は、120°の角度セクタを含んでいる。第1部分331は、第1角度セクタ334、第2角度セクタ335、第3角度セクタ336および第4角度セクタ337を含んでいる。各角度セクタは、30°の角度θ4によって画定(形成)されている。第1、第2、第3および第4の角度セクタは、それぞれ、第1、第2、第3および第4のフィルタエレメントから形成されている。第1フィルタエレメントは、入射ビームを実質的に100%透過する。第2フィルタエレメントは、入射ビームを実質的に33%透過する。第3フィルタエレメントは、入射ビームを実質的に66%透過する。第4フィルタエレメントは、入射ビームを実質的に遮断する。本例では、フィルタエレメントは、幅がWとなっているエンコーダの外周部に配置されている。幅は、単一のビームSBが外周部に入射したとき、各フィルタエレメントが、このビームよりも実質的に大きい大きさのウィンドウを形成するように選択されている。
【0084】
第2部分332および第3部分333は実質的に同じであり、したがって、これ以上説明しない。
【0085】
一例として、直径Dは9mmであり、周囲の幅Wは2mmであり、単一のビームの直径は0.4mm乃至0.8mmである。エンコーダは、透明材料、例えばガラスプレートで形成されている。様々なフィルタエレメントは、フォトリソグラフィープロセスによってガラスプレートに付着させられた、厚さが制御された金属コーティングから形成されている。別の反射防止コーティングをエンコーダの両側に付着させて反射損を減少させてもよい。
【0086】
図7Bは、図7Aの振幅エンコーダで得られたエンコード信号を示している。
【0087】
エンコーダ330が矢印にしたがって(反時計廻り方向に)回転すると、入射信号の振幅は以下のスキームにしたがって変調される。0°乃至30°において、第1角度セクタは、入射ビームを実質的に透過する。エンコード信号は、入射ビームのほぼ100%の透過Tと対応する第1部分364を含むようになる。30°乃至60°において、第2角度セクタは、入射ビームをほぼ33%透過する。エンコード信号は、入射ビームのほぼ33%の透過Tと対応する第2部分365を含むようになる。60°乃至90°において、第3角度セクタは、入射ビームのほぼ66%を透過する。エンコード信号は、入射ビームのほぼ66%の透過Tと対応する第3部分366を含むようになる。90°乃至120°において、第4角度セクタは、入射ビームを実質的に遮断する。エンコード信号は、入射ビームのほぼ0%の透過Tと対応する第4部分367を含むようになる。
【0088】
このため、本例において、変調信号は、エンコーダが完全に一回転する度毎に、一連の第1部分364、第2部分365、第3部分366および第4部分367を、四つ含むようになる。
【0089】
演算処理手段は、変調信号を分析することによって、流体流れの速度および方向を決定することができる。かなりの期間に亘り、複数の連続した部分を含む一連の部分群をデコーディングすることにより、エンコーダの完全な一回転の数を決定することができる。流体の流速は、単位時間当たりのエンコーダの完全な一回転の数と比例する。かくして、速度は、単位時間当たりの一連の部分群の数を計数することによって決定される。流体の流れ方向は、一連の部分群における異なる信号部分の順番によって確認される。さらに詳細には、上文中に説明した例では、一連の部分群内での信号部分の順番は、反時計廻り方向に回転するエンコーダと対応する特定のパターンを描く(図4B、図5B、図6Bおよび図7B)。信号部分の順番が逆になった場合、時計廻り方向に回転するエンコーダと対応する逆のパターンを描くようになる。
【0090】
図8は、流体流れの速度および方向を計測するための本発明の第2実施形態によるデバイス1001を概略的に示している。本発明の第2実施形態によるデバイスは、カプラーおよび単一の光ファイバの代りに、2つの光ファイバおよび第2ビームシェーパを使用する点で、第1実施形態とは異なる。
【0091】
流体流れの速度および方向を計測するためのデバイス1001は、第1光ファイバ1004Aおよび第2光ファイバ1004Bを通して電子装置EAに接続された流量計ゾンデFSを含んでいる。
【0092】
流量計ゾンデFSは、スピナー1002と、モジュレータ1003と、第1ビームシェーパ1045Aと、第2ビームシェーパ1045Bと、鏡1046と、を含んでいる。モジュレータ1003、ビームシェーパ1045Aおよびビームシェーパ1045B、並びに、鏡1046は、ハウジング1007内に収容されている。ハウジング1007は、井坑内に存在するであろう過酷な環境(高圧、高温、振動等)に対して適切な保護を提供し、光学的エレメントの調整された状態を許容範囲内に維持する。スピナー1002はハウジングの外に配置されており、流体流れFFにさらされている(接触している)。スピナーは、流体流れFFの軸線方向成分(矢印で示す)で決まるスピナー回転速度および方向で回転する。
【0093】
モジュレータ1003は、スピナー1002に連結されており、スピナーと関連して回転する。モジュレータ1003およびスピナー1002は互いに磁気で連結されていてもよいし、あるいは、機械的に連結されていてもよい。
【0094】
第1光ファイバ1004Aおよび第2光ファイバ1004Bは、流量計ゾンデFSを電子装置EAに接続する。これらの光ファイバ1004A、1004Bは、ケーブルLN内に設けられている。
【0095】
電子装置EAは、レーザー源1041と、検出器1042と、電子回路1005と、を含んでいる。電子回路1005は演算処理手段1006を有している。
【0096】
レーザー源1041は、第1光ファイバ1004Aによって第1ビームシェーパ1045Aに連結されている。一方の側に設けられた第1ビームシェーパ1045Aおよび第2ビームシェーパ1045B、および、他方の側に設けられた鏡1046は、距離が短い(数mm)何もない空間(自由空間)をそれらの間に形成している。モジュレータ1003は、入射ビームIBまたは戻りビームRBのいずれかをスピナーの回転と関連した情報によって変調するようにして、この何もない空間(自由空間)内に配置されている。第1光ファイバ1004Aおよび第1ビームシェーパ1045Aは、レーザー源からモジュレータへ入射ビームIBを提供する。鏡が第1ビームを第2ビームシェーパ1045Bに向かって反射する。第2光ファイバ1004Bおよび第2ビームシェーパ1045Bは、モジュレータから検出器への戻りビームRBを提供する。
【0097】
有利には、鏡を除く個々のエレメントは、第1実施形態と関連して説明したものと同じ特徴を有する。好ましくは、鏡1046は、直交する二つの反射面を持つ直角鏡(right-angle mirror)である。入射ビームIBは、第1反射面に当たると、第2反射面に向かって反射される。その後、ビームは反射され、第2ビームシェーパ1045Bに戻る。入射ビームおよび戻りビームは、数mm離間されており、これにより、二つのビームシェーパを収容するのに必要な空間が確保される。モジュレータの作動原理、並びに、流体流れの速度および方向の決定は、第1実施形態に関して上文中に説明したのと同じである。
【0098】
図9は、流体流れの速度および方向を計測するための本発明の第3実施形態によるデバイス2001を概略的に示している。本発明の第3実施形態によるデバイスは、カプラー、鏡および単一の光ファイバの代りに、二つの光ファイバおよび第2ビームシェーパを使用する点で、第1実施形態と異なる。
【0099】
流体流れの速度および方向を計測するためのデバイス2001は、第1光ファイバ2004Aおよび第2光ファイバ2004Bを通して電子装置EAに接続された流量計ゾンデFSを含んでいる。
【0100】
流量計ゾンデFSは、スピナー2002と、モジュレータ2003と、第1ビームシェーパ2045Aと、第2ビームシェーパ2045Bと、を含んでいる。モジュレータ2003、ビームシェーパ2045Aおよびビームシェーパ2045Bは、ハウジング2007内に収容されている。ハウジング2007は、井坑内に存在するであろう過酷な環境(高圧、高温、振動等)に対して適切な保護を提供し、光学的エレメントの調整された状態を許容範囲内に維持する。スピナー2002はハウジングの外に配置されており、流体流れFFにさらされている(接触している)。スピナーは、流体流れFFの軸線方向成分(矢印で示す)で決まるスピナー回転速度および方向で回転する。
【0101】
モジュレータ2003は、スピナー2002に連結されており、スピナーと関連して回転する。モジュレータ2003およびスピナー2002は互いに磁気で連結されていてもよいし、あるいは、機械的に連結されていてもよい。
【0102】
第1光ファイバ2004Aおよび第2光ファイバ2004Bは、流量計ゾンデFSを電子装置EAに接続する。これらの光ファイバ2004A、2004Bは、ケーブルLN内に設けられている。
【0103】
電子装置EAは、レーザー源2041と、検出器2042と、電子回路2005と、を含んでいる。電子回路2005は演算処理手段2006を有している。
【0104】
レーザー源2041は、第1光ファイバ2004Aによって第1ビームシェーパ2045Aに連結されている。検出器2042は、第2光ファイバ2004Bによって第2ビームシェーパ2045Bに接続されている。第1ビームシェーパ2045Aおよび第2ビームシェーパ2045Bは、距離が短い(数mm)何もない空間(自由空間)をそれらの間に形成している。モジュレータ2003は、ビームをスピナーの回転と関連した情報によって変調することができるようにして、この何もない空間(自由空間)内に配置されている。第1光ファイバ1004Aおよび第1ビームシェーパ1045Aは、レーザー源からモジュレータへ入射ビームIBを提供する。第2光ファイバ1004Bおよび第2ビームシェーパ1045Bは、モジュレータから検出器への戻りビームRBを提供する。
【0105】
有利には、個々のエレメントは、第1実施形態と関連して説明したものと同じ特徴を有する。モジュレータの作動原理、並びに、流体流れの速度および方向の決定は、第1実施形態に関して上文中に説明したのと同じである。
【0106】
図10は、複数の多重通信計測デバイスを含む本発明の第3実施形態による計測装置3001を概略的に示している。本発明の第3実施形態による計測装置3001は、複数のゾンデ(ゾンデ群)PS、光ファイバ3004および電子装置EAを含んでいる。
【0107】
複数のゾンデ(ゾンデ群)PSは、第1計測デバイス3011、第2計測デバイス3012および第3計測デバイス3013に、第1光ファイバ3047A、第2光ファイバ3047Bおよび第3光ファイバ3047Cのそれぞれによって接続されたマルチプレクサー(multiplexer)3045を含んでいる。
【0108】
各計測デバイスは、上文中に説明したスピナー流量計であってもよく、光学的に問い合わせ可能(呼掛け可能)な任意の他の種類のセンサであってもよい。光ファイバ3004は、複数のゾンデ(ゾンデ群)PSを電子装置EAに接続する。光ファイバ3004Aは、ケーブルLN内に設けられている。
【0109】
電子装置EAは、レーザー源3041と、三つの検出器3042A、3042Bおよび3042Cと、50/50光カプラー3043と、デマルチプレクサー3048と、電子回路3005と、を含んでいる。電子装置EAは、カプラー3043によって光ファイバ3004に接続されている。レーザー源3041の光側およびデマルチプレクサー(de-multiplexer)3048の入力ポートは、カプラー3043に接続されている。各検出器の光側は、デマルチプレクサー3048の各出力ポートに接続されている。レーザー源3041の電子側、並びに、検出器3042A、3042Bおよび3042Cの電子側は、電子回路3005に接続されている。電子回路3005は、演算処理手段3006を含んでいる。
【0110】
好ましくは、レーザー源3041は、複数の波長BBで伝播する入射ビームを提供する広帯域源である。マルチプレクサー3045は、第1計測デバイス3011、第2計測デバイス3012および第3計測デバイス3013に、第1入射ビームIB1、第2入射ビームIB2および第3入射ビームIB3を、それぞれ提供する。第1入射ビームIB1、第2入射ビームIB2および第3入射ビームIB3は、それぞれ、異なる波長、すなわち第1波長B1、第2波長B2および第3波長B3で進む。第1計測デバイス3011、第2計測デバイス3012および第3計測デバイス3013は、第1戻りビームRB1、第2戻りビームRB2および第3戻りビームRB3のそれぞれをマルチプレクサー3045に提供する。各戻りビームは、計測した量(例えば流体流れの速度および方向)についての情報を含む変調信号を含んでいる。マルチプレクサー3045は、複数の変調波長を搬送する戻りビームRBを、カプラー3043を介して、デマルチプレクサー3048に提供する。デマルチプレクサー3048は、複数の信号をそれらの波長にしたがって分離し、変調信号RB1、RB2およびRB3の各々を、専用の検出器3042A、3042Bおよび3042Cのそれぞれに送出する。これらの検出器から提供される電気信号を電子回路3005によって分析する。
【0111】
別の態様では、マルチプレクサーまたはデマルチプレクサー、あるいは、これらの両方の代りに、カプラーを使用してもよく、各計測デバイスおよびその対応する検出器は、特定の波長の中央に帯域フィルタをさらに有するようにしてもよい。かくして、各計測デバイスは、計測した量を特定の波長にしたがってエンコードする。
【0112】
[最終意見]
以上において、エンコーダの様々な変形例を説明した。これらのエンコーダの変形例の各々は、所定の部品点数および角度セクタによって、各角度セクタの角度によって、あるいは、各角度セクタの半径によって特徴付けられる。これらが単なる例であるということは当業者には明らかであろう。部品点数、角度セクタ、角度および半径が異なるこの他のエンコーダの変形例もまた、本発明の範疇で可能である。詳細には、エンコーダにさらに多くの角度セクタまたはさらに細かい角度セクタを設けると、さらに複雑なパターンおよび順序が発生し、エンコーダの角度解像度が向上するということは当業者には明らかであろう。
【0113】
さらに、様々な実施形態で言及した透過率または減衰率のパーセンテージは単なる例である。順序が、演算処理手段によって互いから区別することができる部分を含む場合には、透過率または減衰率のこの他のパーセンテージを使用してもよいということは当業者には明らかであろう。
【0114】
陸上ワイヤライン検層と関連した特定の例を詳細に説明したけれども、本発明は、この他の情況(掘削中、海洋上、等のワイヤライン)にも適用することができる。
【0115】
添付図面およびこれらの図面についての以上の説明は、本発明を限定しようとするものではない。
【0116】
特許請求の範囲の参照番号および参照符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。「含む(含んでいる)、有する(有している)、備える(備えている)」という用語は、特許請求の範囲に列挙した以外の要素の存在を除外するものではない。単数形で示した要素は、それが複数個存在することを除外しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流れ(FF)の速度および方向を計測するためのデバイス(1)であって、
前記流体流れにさらされた場合に、前記流体流れの速度および方向に依存した枢動可能手段回転速度および方向で、回転するようになされた枢動可能な手段(2)と、
前記枢動可能な手段と連結されたモジュレータ(3)であって、前記枢動可能な手段と連動して回転するようになされたモジュレータ(3)と、
入射ビーム(IB)を前記モジュレータに提供し前記モジュレータから戻りビーム(RB)を受けるための光ファイバ装置と、を備え、
前記入射ビーム(IB)は入射信号を含み、前記戻りビーム(RB)は変調信号を含み、前記モジュレータ(3)は、前記入射信号を変調して、前記枢動可能な手段(2)の回転速度および方向に応じた前記変調信号を形成し、
前記モジュレータ(3)は、第1角度セクタ(34)と、第2角度セクタ(35)と、第3角度セクタ(36)と、を少なくとも有するエンコーダ(30)を含んでおり、各角度セクタは所定の減衰率を有し、これにより、前記エンコーダ(30)が完全に一回転する度に、前記変調信号は第1部分(64)、第2部分(65)および第3部分(66)を少なくとも含むようになり、
前記デバイス(1)は、前記変調信号の少なくとも前記第1部分(64)、前記第2部分(65)および前記第3部分(66)に基づいて前記流体流れ(FF)の速度および方向を決定するための演算処理手段(6)を、さらに備え、
前記エンコーダは振幅エンコーダ(30、130、230、330)であり、前記第1角度セクタ、前記第2角度セクタおよび前記第3角度セクタは実質的に同じ角度(θ1、θ2、θ3、θ4)を有し、各セクタは、他のセクタとは異なる所定のパーセンテージで前記入射ビームを透過させる、デバイス。
【請求項2】
前記振幅エンコーダ(30、130)はディスク形状を有し、前記第1角度セクタは第1半径(R1)を有し、前記第2角度セクタは第2半径(R2)を有し、前記第3角度セクタは第3半径(R3)を有し、各セクタは、前記入射ビームを実質的に遮断する材料によって形成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記入射ビーム(IB)は、第1ビーム(DB1)および第2ビーム(DB2)に分割され、
前記第2半径(R2)および前記第3半径(R3)は、前記第1ビーム(DB1)用の第1トラック(139A)を画定するように選択され、前記第1角度セクタおよび第2角度セクタが前記第1ビームを実質的に透過させ、前記第3角度セクタが前記第1ビームを実質的に遮断し、
前記第1半径(R1)および前記第2半径(R2)は、前記第2ビーム(DB2)用の第2トラック(139B)を画定するように選択され、前記第1角度セクタが前記第2ビームを実質的に透過させ、前記第2角度セクタおよび第3角度セクタが前記第2ビームを実質的に遮断する、
請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記振幅エンコーダ(230、330)はディスク形状を有し、前記第1角度セクタは第1フィルタエレメントによって形成され、前記第2角度セクタは第2フィルタエレメントによって形成され、前記第3角度セクタは第3フィルタエレメントによって形成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記光ファイバ装置は、
前記入射ビーム(IB)を発生させるためのレーザー源(41)と、
前記戻りビーム(RB)を電気信号に変換するための検出器(42)と、
前記レーザー源および前記検出器を光ファイバ(4)の一端に連結するためのカプラー(43)と、
前記光ファイバ(4)の他端に設けられたビームシェーパ(45)であって、前記入射ビーム(IB)を前記モジュレータ(3)に提供し前記戻りビーム(RB)を前記モジュレータ(3)から受けるためのビームシェーパ(45)と、
前記ビームシェーパ(45)へ前記戻りビームを反射させるための鏡(46)と、を含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記鏡は前記ビームシェーパと関連しており、これらは、凹面鏡(46A)および截頭光ファイバ(45A)、あるいは、コーナーキューブ鏡(46B)およびコリメータ(45B)、あるいは、平面鏡(46C)および焦合器(45C)によって形成されている、
請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記光ファイバ装置は、
前記入射ビーム(IB)を発生させるためのレーザー源(1041、2041)と、
前記戻りビーム(RB)を電気信号に変換するための検出器(1042、2042)と、
前記レーザー源を前記モジュレータ(1003、2003)に連結する第1光ファイバ(1004A、2004A)であって、前記入射ビームを前記モジュレータに提供するための第1光ファイバ(1004A、2004A)と、
前記モジュレータ(1003、2003)を前記検出器に連結する第2光ファイバ(1004B、2004B)であって、前記戻りビーム(RB)を前記検出器に提供するための第2光ファイバ(1004B、2004B)と、を含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記モジュレータは、前記枢動可能な手段と磁気的または機械的に連結されている、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
計測装置(3001)であって、
複数の波長を搬送する入射ビーム(IB)を提供するレーザー源(3041)と、
前記複数の波長を分離し再結合するためのマルチプレクサー(3045)と、
各々が請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載された計測デバイス(3011、3012、3013)であって、各計測デバイスが特定の波長(B1、B2、B3)に応答し前記特定の波長(B1、B2、B3)に応じた戻しビーム(RB1、RB2、RB3)を提供する、複数の計測デバイスと、
前記特定の波長(B1、B2、B3)にしたがって複数の専用の検出器(3042A、3042B、3042C)へ前記戻しビームを分配するデマルチプレクサー(3048)と、を備える、計測装置。
【請求項10】
流体流れの速度および方向を計測するための方法において、
前記流体流れにさらされた場合に前記流体流れの速度および方向に依存した枢動可能手段回転速度および方向で回転する枢動可能な手段と、連動して回転するモジュレータであって、複数の角度セクタを含むモジュレータに、入射信号を含む入射ビームを提供する工程と、
前記枢動可能な手段の回転速度および方向に応じて前記入射信号を変調することにより、変調信号を含む戻しビームを発生させる工程と、
前記モジュレータから前記戻しビームを受け、前記変調信号を演算処理する工程と、を備え、
前記入射信号を変調する工程は、エンコーダが完全に一回転する度に、前記変調信号が少なくとも一連の第1部分、第2部分および第3部分を含むように、前記変調信号をエンコードする工程を含み、
前記変調信号を演算処理する工程は、前記変調信号の少なくとも前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分に基づいて前記流体流れの方向を決定するため、前記一連の部分をデコーディングする工程を含み、
少なくとも前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分は、異なる振幅を有し、各角度セクタにそれぞれ対応する、方法。
【請求項11】
前記変調信号を演算処理する工程は、前記流体流れの速度を決定するため、単位時間当たりの前記一連の部分の数を計数する工程を、さらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記変調信号を演算処理する工程は、前記流体流れの方向を決定するため、一連の部分内での前記部分の順番を確認する工程を、さらに含む、
請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−257425(P2011−257425A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−179818(P2011−179818)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【分割の表示】特願2008−519811(P2008−519811)の分割
【原出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(597124903)シュランベルジェ、ホールディング、リミテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】SCHLUMBERGER HOLDINGS LIMITED
【Fターム(参考)】