説明

流量制御弁

【課題】弁体を駆動するモータのトルクを低減するため、弁体にチャンバー室を設け、弁体の移動時に弁体の移動を阻害する方向に作用する水圧を相殺させる流量調節弁において、チャンバー室からの連通は弁体の先端側に開口しているが、水流がこの開口に向かって流れるときに、通水管内の異物が開口を閉塞しない流量調節弁を提供する。
【解決手段】連通路7の開口をワッシャー状の座金5により閉塞すると共に、弁軸3の軸線方向に対して直角方向に開口する通路口71を上記連通路に連通させて設け、異物が通路口に直接ぶつからないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置に内蔵され、給湯装置内の給水管内を流れる水の流量を連続して増減させる流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の流量制御弁は弁体をモータで駆動して開度を増減させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようにモータで弁体を駆動するものでは、水圧に抗して弁体を移動させなければならないため大きなトルクを必要とする。そこで、弁体にチャンバー室を設け、このチャンバー室内に周囲の水圧が影響しないように独立させると共に弁体の先端側の通路に連通させることにより、弁体の先端側に作用する水圧をチャンバー室内において弁体の後端側から相殺させるようにしている。
【0003】
なお、チャンバー室を弁体の先端側の通路に連通させるため、弁体をモータ側である後端側から先端側に向かって貫通する弁軸を設け、弁体の貫通孔と弁軸との間に隙間を設けて、その隙間を弁体の先端側の通路とチャンバー室とを連通する連通路としている。但し、この連通路を設けたため、弁体が弁軸から容易に脱落することを防止する必要が生じる。そこで、弁軸を弁体の先端側に突出させ、その突出した部分にEリングを装着して弁体が弁軸から脱落しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−106723号公報(段落0024、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成では、連通路は弁体の先端側の通路に向い、流れ方向に対向して開口することになり、その開口部分にEリングが装着されるが、Eリングはワッシャのように開口を塞ぐことがない。従って、水流がEリングの隙間を通って連通路の開口に対して直接ぶつかることになる。
【0006】
上述のように連通路の開口が弁軸の軸線方向に向かって開口していると、連通路の開口に通水管内の粘性スラッジやその他の異物が衝突し付着して開口を閉塞する恐れが生じる。
【0007】
このように開口が閉塞されるとチャンバー室への水の出入りができなくなるので、弁体を移動する際に弁体に作用する水圧が強力な抵抗となり、モータに大きなトルクが必要となったり、あるいは弁体を移動できなくなるという不具合が生じる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上記連通路が通水管内の異物によって閉塞させることのない流量制御弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明による流量制御弁は、モータによって往復駆動される弁体を備え、この弁体の先端側から弁体に作用する水圧を弁体の後端側から相殺させるチャンバー室を弁体の後端側に形成し、弁体の中央に先端側と後端側とを貫通する貫通孔に、弁体の後端側から挿通された弁軸に弁体を固定すると共に、弁体の貫通孔と弁軸との隙間を連通路として弁体の先端側とチャンバー室とを連通させた流量制御弁において、連通路の先端側の開口をワッシャー状の座金により閉塞すると共に、弁軸の軸線方向に対して直角方向に開口する通路口を上記連通路に連通するように形成したことを特徴とする。
【0010】
連通孔は弁軸の軸線方向に沿って弁体の先端側に開口する。そのままでは水流が開口にぶつかる状態では水流に異物が含まれていれば開口内に異物が進入し、開口を閉塞してしまう恐れがある。本発明ではその開口を座金により閉塞することとした。このように閉塞することにより、水流に異物が含まれていても、その異物は座金にブロックされ開口内に進入することはない。但し、連通路は弁体の先端側に開口する必要があるので、通路口を設けた。この通路口は弁軸の軸線方向に対して直角方向に開口しているので上記異物が直接通路口に進入することがない。
【0011】
なお、通路口への異物の進入を確実に防止するためには、上記座金に対して弁軸の軸線方向にぶつかる水流に対して、上記通路口を上記座金の裏側に隠れるようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、弁体に形成したチャンバー室と弁体の先端側とを連通する連通路の開口を水流中の異物が塞がないのようにするので、流量制御弁の機能が損なわれるという不具合が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】弁体の構造を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、1は本発明による流量制御弁の一例であり、給湯装置に内蔵されるものである。この流量制御弁1の上流側には水抜き栓Rが設けられており、下流側には熱交換器HEが設けられている。通常の給湯動作の際には、入水口11から流量制御弁1内に入水され、流量がコントロールされた状態で出水口12から熱交換器HEへ水を流出される。流量は弁体4の位置によって増減するが、その弁体4を駆動するためのモータが流量制御弁1に取り付けられている。2はそのモータの回転軸であり、回転軸2の外周にはウォーム21が設けられている。このウォーム21にはウォームホイル22が噛合しており、回転軸2が回転するとウォームホイル22が高トルクで回転する。
【0015】
ウォームホイル22の内側にはセレーション23が設けられており、セレーション23には可動子24の外周に形成したセレーション25が噛合している。可動子24にはネジ部26が形成されており、このネジ部26は流量制御弁1の本体側に固定されたネジ部27に噛合している。従って、回転軸2が回転すると可動子24が直線移動することになる。
【0016】
この可動子24には弁軸3が固定されている。そして、この弁軸3は弁体4の中心に形成された貫通孔に挿入され、その先端31は弁体4を突き抜けて反対側に露出している。そして、その先端31をワッシャ状の座金5を装着した状態でかしめて座金5および弁体4が弁軸3から脱落しないようにした。
【0017】
一方、弁体4の1次側にはチャンバー室6を形成した。このチャンバー室6は1次側に対して隔絶すると共に、2次側に連通させている。具体的には、弁体4の貫通孔と弁軸3との隙間を連通路7としてチャンバー室6と2次側とが連通している。なお、チャンバー室6内にはバネ61が取り付けられており、弁体4はこのバネ61によって常に座金5に対して押し付けられている。
【0018】
図2を合わせて参照して、座金5と接触する座面41には3カ所に切欠きを形成した。この切欠きは座金5を装着すると通路口71となる。これら通路口71は連通路7に対して連通するので、座金5を装着しても連通路7が閉塞されることはなく、これら通路口71を介して2次側に開口することになる。そして、これら通路口71は弁軸3の軸線方向に対して直角方向に開口することになる。
【0019】
通常の給湯動作中であれば、水流は1次側から2次側に流れるので、その水流は座金5から離れる方向になる。ところが、水抜き栓Rを開栓して熱交換器HE内の水を放出する際には、2次側から1次側に向かって水が逆流する。その逆流方向は座金5に対して直角にぶつかる方向になる。
【0020】
熱交換器HEの管内にスラッジが生じていると、そのスラッジが逆流する水の流れに乗って座金5にぶつかることになる。ところが、座金5には開口部分がないのでスラッジは1次側へと流れ水抜き栓Rから外部へと排出される。なお、通路口71は弁軸3の軸線方向に対して直角方向に開口しているので、座金5にぶつかるようなスラッジが通路口71に進入することはないが、より確実に通路口71へのスラッジの進入を防止するためには、逆流方向に対して座面41を座金5によって完全に覆うことが望ましい。本実施の形態では座金5の直径と座面41の直径とをほぼ同一にしたが、座金5の直径を座面41の直径より大きくしてもよい。
【0021】
ところで、上記実施の形態では図において、通常時では下側から上側に向かって水が流れるように流量制御弁を設置したが、逆に通常時において出水口12側から入水口11側に流れるように流量調節弁を用いてもよい。この場合には水抜き時ではなく通常の使用時に水流は座金5にぶつかる方向に流れる。そして、Eリングを用いる従来のものでは連通路7が異物によって閉塞される恐れが増大するが、上記本発明による構成では座金5が異物の進入を防いで異物により通路口71や連通路7が閉塞される恐れが生じない。
【0022】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0023】
1 流量制御弁
2 (モータの)回転軸
3 弁軸
4 弁体
5 座金
6 チャンバー室
7 連通路
HE 熱交換器
R 水抜き栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって往復駆動される弁体を備え、この弁体の先端側から弁体に作用する水圧を弁体の後端側から相殺させるチャンバー室を弁体の後端側に形成し、弁体の中央に先端側と後端側とを貫通する貫通孔に、弁体の後端側から挿通された弁軸に弁体を固定すると共に、弁体の貫通孔と弁軸との隙間を連通路として弁体の先端側とチャンバー室とを連通させた流量制御弁において、連通路の先端側の開口をワッシャー状の座金により閉塞すると共に、弁軸の軸線方向に対して直角方向に開口する通路口を上記連通路に連通するように形成したことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
上記座金に対して弁軸の軸線方向にぶつかる水流に対して、上記通路口を上記座金の裏側に隠れるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−53676(P2013−53676A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192339(P2011−192339)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】