説明

流量制御装置

【課題】応答性の良い流量制御を、容易な設定で実現する。
【解決手段】流量制御装置100において、コンパレータ40は、流量の指令値信号Vi1と、センサ出力信号Vsに応じた信号Vi2との比較に基づき第1の制御電圧Vrefを出力する。フィードバック電流生成部30は、センサ出力信号Vsと、指令値信号Vi1に応じた信号Vi2と、の差に応じたフィードバック電流Ifbを生成する。フィードバック電圧生成部50は抵抗器である。フィードフォワード電流生成部20は、指令値信号Vi1に応じてフィードフォワード電流Iffを生成する。合成部60は、フィードバック電流Ifbとフィードフォワード電流Iffの和に応じた電圧をフィードバック電圧Vfbに加算した電圧である第2の制御電圧Vdrv*を生成する。弁部90は、第1の制御電圧Vrefと第2の制御電圧Vdrv*に応じて制御される、流量制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等に所定の質量流量のガス等を供給するための流量制御装置に関し、特に流量制御装置の応答性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造プロセス等に所定の質量流量のガス等を供給するために流量制御装置が用いられる。このような流量制御装置においては、ガス等が流れる流路中に流量センサと制御バルブが設けられている。そして、流量センサの検知値が流量設定信号と比較され、両者の差に基づいて制御バルブの弁開度が制御される。半導体製造プロセスにおいては、流量制御装置の応答性が半導体製造の生産性に大きな影響を及ぼす。このため、流量制御装置について従来種々の改善がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1の技術には、流量制御において、流量設定値が変更された際、流量設定信号と流量センサの検知値との偏差から求められる制御バルブ駆動電圧よりも僅かに小さい初期電圧を制御バルブに印加し、その後直ちに速度型PID制御に移行する。そして、この方法によって、オーバーシュートを生じることなく迅速に所望の流量にすることができるとしている。
【0004】
また、特許文献2のマスフローコントローラは、流体が流れる流路に設けられた制御バルブと、前記流路に設けられた流量センサと、流量センサによる測定値が流量設定信号による設定値になるように前記制御バルブを開閉制御するための制御信号を出力するPID回路とを有するマスフローコントローラであって、前記流量設定信号が入力された時点から流量センサが流体の流れを検知する時点までの間、前記PID回路に補正信号を出力する応答改善回路を設けたマスフローコントローラである。特許文献2では、この構成により、流量制御の応答性が改善したとしている。
【0005】
さらに特許文献3の弁制御装置は、設定流量とフィードフォワード計算式とから最適弁開度を演算する第1演算手段と、流量検出手段で検出された実流量と設定流量とを比較し、その偏差を求める比較手段と、比較手段によって求められた偏差に基づいてPID制御演算を行う第2演算手段と、第1演算手段の演算結果と第2演算手段の演算結果を足し合わせる第3演算手段とを有する弁制御装置である。そしてフィードフォワード計算式によって最適弁開度を得ることによって制御の応答性が速くなり、PID制御演算によって最適弁開度の補正量を求めて微調整を加えることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−147723号公報
【特許文献2】特開2002−41149号公報
【特許文献3】特開平9−171412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の技術によれば、流量設定値が変更された際の流量制御の応答性は改善される。しかし、PID制御が支配的であることに代わりはないため、応答速度の向上が、不十分である。
【0008】
特許文献2においては、PID回路に補正信号を出力する応答改善回路を設けたことで、流量制御の改善を図っている。しかし、補正信号の大きさ、補正信号が出力される時間長を規定する閾値の調節には多大な工数を要する。なぜなら、補正信号はPID回路を経て制御バルブをコントロールするため、PIDゲインが変わってしまったら補正信号の大きさや閾値は再調整する必要があるからである。
【0009】
また、特許文献3においては、フィードフォワード演算出力結果が制御中も常時印加されることになり、最適な制御応答性を実現するためにフィードフォワードパラメータとフィードバックパラメータを調整する際には、両パラメータの相関を考慮し、調整する必要がある。すなわち、フィードフォワードパラメータとフィードバックパラメータのいずれかを変更すると、他方のパラメータに影響を与えるために、調整時間がかかるという問題点がある。
【0010】
以上で述べた応答性の改善と、フィードバック制御とフィードフォワード制御の両立の問題は、半導体製造プロセスに使用されるマスフローメータにおける流量制御に限らず、さまざまな流体の流量制御において存在する。
【0011】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を取り扱うためになされたもので、応答性の良い流量制御を、容易な設定で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[適用例1]
流量制御装置であって、
流路内を通る流体の流通を制御する弁部と、
前記流体の流量に応じたセンサ出力信号を出力する流量センサと、
前記流体の流量の指令値を表す指令値信号である第1の入力信号と、前記センサ出力信号に応じた信号である第2の入力信号と、を入力され、前記第1の入力信号と前記第2の入力信号の比較に基づいて、第1の制御電圧を出力するコンパレータと、
前記センサ出力信号または前記センサ出力信号に応じた信号と、前記指令値信号に応じた信号と、の差に応じたフィードバック電流を生成するフィードバック電流生成部と、
前記フィードバック電流に応じたフィードバック電圧を生成するフィードバック電圧生成部と、
前記指令値信号に応じてフィードフォワード電流を生成するフィードフォワード電流生成部と、
前記フィードバック電流と前記フィードフォワード電流の和に応じた電圧を前記フィードバック電圧に加算した電圧である第2の制御電圧を生成する合成部と、を備え、
前記弁部は、前記第1の制御電圧と前記第2の制御電圧に応じて制御される、流量制御装置。
【0013】
このような態様においては、フィードフォワードの成分を含む第2の制御電圧に応じて、弁部が制御される。このため、フィードフォワード制御を行わない態様に比べて、指令値信号の変化に対する流量の応答速度の改善を図ることができる。
【0014】
また、上記の態様においては、フィードフォワード電流は、フィードバック電流およびフィードバック電圧とは、別個に生成される。そして、フィードフォワード電流に起因する成分を反映した電圧と、フィードバック電流に応じたフィードバック電圧と、の加算により、第2の制御電圧が生成される。すなわち、フィードフォワードの成分とフィードバックの成分とは、生成時に相互に影響されない。このため、弁部を制御する駆動電圧を生成する際に、フィードフォワードの成分とフィードバックの成分の相互の調整が不要である。また、フィードフォワード電流を生成するための設定は、フィードバックのための設定に影響されないため、指令値に応じたフィードフォワード電流を生成するための設定が、容易である。
【0015】
よって、上記の態様によれば、応答性のよい流量制御装置を、少ない調整工数で実現することができる。
【0016】
なお、上記の態様において、「流体」は、気体であってもよく、液体であってもよい。
また、「信号Aに応じた信号B」は、適用例1記載の要素によって信号Aが変換された信号Bであってもよいし、適用例1で言及されていない要素によって信号Aが変換された信号Bであってもよい。
【0017】
上記の態様においては、コンパレータには、指令値信号と、センサ出力信号に応じた信号と、が入力されている。このため、センサ出力信号に応じた信号は、センサ出力信号が反映されるものの、コンパレータ以外の構成要素から見れば、指令値信号とほとんど同じ値に維持される。よって、たとえば、フィードバック電流生成部は、コンパレータの指令値信号が入力されている端子と対になる入力端子に接続されていれば、その端子から、指令値信号とほぼ同じ信号を得ることができる。フィードバック電流生成部における「指令値信号に応じた信号」とは、そのようにして得られる信号であってもよい。
【0018】
なお、コンパレータと、フィードバック電流生成部と、フィードバック電圧生成部と、合成部とは、アナログ回路として構成されることが好ましい。
【0019】
[適用例2]
適用例1の流量制御装置であって、
前記合成部は、前記フィードバック電圧生成部の出力端に直列に接続された抵抗器であって、前記フィードバック電流と前記フィードフォワード電流とが同時に流れるように構成された抵抗器を含む、流量制御装置。
【0020】
このような態様とすることにより、フィードバック電流とフィードフォワード電流の和に応じた電圧をフィードバック電圧に加算して得られる第2の制御電圧を、合成部は、抵抗器の他端に生じさせることができる。
【0021】
[適用例3]
適用例1または2に流量制御装置であって、
前記フィードフォワード電流生成部は、
あらかじめ定められた設定に基づいて前記指令値信号に応じた電圧を出力するCPUと、
前記CPUが出力した電圧に応じて前記フィードフォワード電流を流す抵抗器と、を含む、流量制御装置。
【0022】
このような態様とすれば、弁部の制御においてフィードフォワード制御を実現するための成分を、フィードフォワード電流として生成することができる。
なお、上記態様は、抵抗器がCPUが出力した電圧を直接印加される態様とすることもでき、抵抗器が他の電源からの電圧の印加を受けて、抵抗器がCPUが出力した電圧に応じた電流を流す態様とすることもできる。
【0023】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれかの流量制御装置であって、
前記流量センサは、前記流路内を通る前記流体による熱の移動に基づいて、前記流体の流量を検知するセンサである、流量制御装置。
【0024】
このような態様においては、流量センサは、実際の流量の変化をセンサ出力信号に反映させるのが遅い。しかし、上記各適用例のような構成を採用することで、迅速な応答を実現しつつ、安定的に、流路内を通る流体の流量を制御することができる。
【0025】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれかの流量制御装置であって、さらに、
前記第1の制御電圧を昇圧して第1の駆動電圧とする第1の昇圧部を備え、
前記第1の昇圧部と前記弁部を結ぶ配線は、分圧回路を通して接地されており、
前記合成部は、前記第2の制御信号を昇圧して第2の駆動電圧とする第2の昇圧部を備え、
前記合成部の出力端としての前記第2の昇圧部の出力端は、前記分圧回路に接続されている、流量制御装置。
【0026】
このような態様とすれば、第1の昇圧部と弁部を結ぶ配線に第2の昇圧部の出力端が直接接続されている態様に比べて、第2の昇圧部が生成する第2の駆動電圧を、小さな値とすることができる。
【0027】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれかの流量制御装置であって、さらに、
前記センサ出力信号を微分して得られる成分を含む微分信号を生成する微分部を備え、
前記フィードバック電流生成部は、前記センサ出力信号に応じた信号としての前記微分信号と、前記指令値信号または前記指令値信号に応じた信号と、の差に応じた前記フィードバック電流を生成する、流量制御装置。
【0028】
このような態様とすれば、微分部を備えず、センサ出力信号がそのままフィードバック電流生成部に受信される態様に比べて、実際の流量の変化を反映する際の流量制御装置の応答速度を速くすることができる。
【0029】
[適用例7]
適用例1ないし6のいずれかの流量制御装置であって、
前記フィードバック電圧生成部は、抵抗器とコンデンサとリアクトルのうちのいずれかの二つ以上が直列に結合された回路構成を備える、流量制御装置。
【0030】
このような態様とすれば、フィードバック電圧生成部は、センサ出力信号と指令値信号との差を反映したフィードバック電流に基づいて、フィードバック電圧を生成することにより、P成分、I成分、D成分のいずれか二つの要素を備える制御を反映させたフィードバック電圧を生成することができる。
【0031】
[適用例8]
適用例1ないし7のいずれかの流量制御装置であって、
前記コンパレータは、前記指令値信号または前記指令値信号に応じた信号と、前記センサ出力信号に応じた信号としての前記フィードバック電流生成部の出力端の電圧と、の比較に基づいて、前記第1の制御電圧を出力する、流量制御装置。
【0032】
なお、上記各適用例の各構成を、適宜選択して組み合わせ、または省略することにより、本願明細書に記載された技術的課題を解決できる発明を構成することができる。
【0033】
本発明は、以下に示すような種々の態様で実現することが可能である。
(1)流量制御装置、流量制御システム、流量制御方法。
(2)半導体製造装置、半導体製造システム、半導体製造方法。
(3)上記の装置や方法を実現するためのコンピュータプログラム。
(4)上記の装置や方法を実現するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施例の流量制御装置100の構成図である。
【図2】流量センサ80の構成を示す図である。
【図3】フィードバック電圧生成回路50の回路構成を示す図である。
【図4】フィードフォワード電流生成回路20の回路構成を示す図である。
【図5】指令値信号Vi1に応じたフィードフォワード電流Iffの大きさを示すグラフである。
【図6】図5のグラフに式(7)を適用して得られる、CPU21の出力電圧V21のグラフである。
【図7】比較例の指令値信号Vi1、弁部90を駆動する駆動電圧Vdrv、および流量センサ80のセンサ出力信号Vsを表すグラフである。
【図8】本実施例の指令値信号Vi1、弁部90を駆動する駆動電圧Vdrv、および流量センサ80のセンサ出力信号Vsを表すグラフである。
【図9】フィードフォワード電流生成回路20bの回路構成を示す図である。
【図10】第3実施例の流量制御装置100cの構成図である。
【図11】第4実施例の流量制御装置100dの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を用いて、本願発明の実施例を説明する。
【0036】
A.第1実施例:
A1.流量制御装置の構成および動作:
図1は、第1実施例の流量制御装置100の構成図である。ガス源200は、半導体製造装置300に所定の成分のガスを供給する。流量制御装置100は、このガスの流量を制御する。
【0037】
流量制御装置100は、流量設定部10と、弁部90と、流量センサ80と、コンパレータ40と、第1の昇圧回路70と、フィードバック電流生成回路30と、フィードバック電圧生成回路50と、フィードフォワード電流生成回路20と、合成回路60と、を備える。
【0038】
弁部90は、流路400内を通るガスの流通を制御する。弁部90は、流路400内に設けられた弁と、その弁を駆動するピエゾ素子とを備える。弁部90は、駆動電圧を印加されて、ピエゾ素子により弁の開度を変化させる。なお、弁部90は、ピエゾ素子に印加される駆動電圧Vdrvが高いときに弁開度を小さくし、駆動電圧Vdrvが低いときに弁開度を大きくする。弁開度を調整することにより、弁部90は、流路400内を通るガスの流通量を制御することができる。
【0039】
図2は、流量センサ80の構成を示す図である。流量センサ80は、流路400内を通るガスの流量に応じたセンサ出力信号Vsを出力する。センサ出力信号Vsの大きさは、0〜5Vである。なお、以下、本実施例の説明において、「信号」という場合は、所定の情報を表す電圧を意味する。
【0040】
流量センサ80は、流路400内を流れるガスが流通するバイパス管部82を、流路400内に有している。バイパス管部82は複数のバイパス管からなる。流路400には、センサ管84が接続されている。より具体的には、センサ管84の両端がバイパス管部82の両端の近傍の位置に接続されている。すなわち、センサ管84は、流路400において、バイパス管部82を迂回するように構成される。バイパス管部82とセンサ管84は、センサ管84に、バイパス管部82内を流れるガスに対して一定の比率を保って、バイパス管部82内を流れるガスより少ない量のガスが流れるように構成される。流路400内を流通するガスは、バイパス管部82か、センサ管84かのいずれかを流通する。
【0041】
センサ管84の表面には、互いに直列に接続された抵抗線R1、R4が巻きつけられている。抵抗線R4は、抵抗線R1よりも流路の下流側において、センサ管84表面に巻き付けられている。抵抗線R1、R4は、温度に応じてその抵抗値が変化する素材で構成されている。
【0042】
抵抗線R1、R4は、通電されて発熱する。その状態で、センサ管84にガスが質量流量Qで流れると仮定すると、ガスは、センサ管84の上流側に位置する抵抗線R1の熱を奪って、下流側の抵抗線R4が巻回されている位置まで流れる。そして、抵抗線R4に熱を渡すか、または抵抗線R4からは抵抗線R1ほど熱を奪わない。その結果、抵抗線R1、R4間に温度差が生じる。すると、抵抗線R1、R4の抵抗値に差が生じる。この抵抗線R1、R4の抵抗値の差は、抵抗線R1の両端の電位差と、抵抗線R4の両端の電位差と、の違いとなって表れる。この電位差の違いの大きさは、ガスの質量流量Qにほぼ比例する。流量センサ80のセンサ回路86は、この電位差の違いの大きさに比例する信号Vsを出力する。また、上述のように、バイパス管部82を流れるガスの流量と、センサ管84を流れるガスの流量とは、一定の比を保つ。このため、センサ出力信号Vsは、そのときに流路400内を流れているガスの質量流量を表す。
【0043】
図1に示すコンパレータ40は、反転入力端子を介して、流量設定部10から指令値信号Vi1を受け取る。指令値信号Vi1は、流路400内を通るガスの流量の指令値を表す。指令値信号Vi1の大きさは、0〜5Vである。コンパレータ40は、また、非反転入力端子を介して、センサ出力信号Vsに応じた信号Vi2を受け取る。信号Vi2の大きさも、0〜5Vである。そして、コンパレータ40は、指令値信号Vi1と、センサ出力信号Vsに応じた信号Vi2と、の比較に基づいて、第1の制御電圧Vrefを出力する。信号Vi2が指令値信号Vi1よりも小さい場合、第1の制御電圧Vrefは正の値となる。信号Vi2が指令値信号Vi1よりも大きい場合、第1の制御電圧Vrefは負の値となる。信号Vi2が指令値信号Vi1と等しい場合、第1の制御電圧Vrefは0となる。
【0044】
コンパレータ40は、よく知られているように、入力インピーダンスが大きく、かつ利得が大きい。このため、コンパレータ40の機能を考察する際には、非反転入力端子の電位Vi2を反転入力端子の電位Vi1と同じとみなして差し支えない。
【0045】
図1に示す第1の昇圧回路70は、コンパレータ40から第1の制御電圧Vrefを受け取って、これを昇圧し、第1の駆動電圧Vdrv1を生成する。第1の駆動電圧Vdrv1は、少なくとも一部において弁部90のピエゾ素子を駆動するための駆動電圧である。なお、第1の駆動電圧Vdrv1は、第1の制御電圧Vrefが増加すると減少し、第1の制御電圧Vrefが減少すると増加するように生成される。これは、弁部90が、駆動電圧Vdrvが高いときに弁開度を小さくし、駆動電圧Vdrvが低いときに弁開度を大きくする構成であるためである。
【0046】
フィードバック電流生成回路30は、センサ出力信号Vsと、コンパレータ40の非反転入力端子の電位である信号Vi2と、の差に応じたフィードバック電流Ifbを生成する。より具体的には、フィードバック電流生成回路30は、一端が流量センサ80に接続され、他端がコンパレータ40の非反転入力端子およびフィードバック電圧生成回路50に接続された抵抗器(抵抗値Rx)を備える。その抵抗器の一端の電位がVsであり、他端の電位がVi2となる結果、その抵抗器には、以下の式で表される電流Ifbが流れる。なお、電流Ifbにおいては、図1において左から右に向かう向きの電流をプラスとする。
【0047】
【数1】

【0048】
図3は、フィードバック電圧生成回路50の回路構成を示す図である。フィードバック電圧生成回路50(図1参照)は、フィードバック電流Ifbに応じたフィードバック電圧Vfbを生成する。フィードバック電圧生成回路50の回路構成は、図3に示すように、直列に接続された抵抗器(抵抗値Rb)、コンデンサ(容量Cb)、リアクトル(インダクタンスLb)で表すことができる。フィードバック電圧生成回路50は、フィードバック電流生成回路30とコンパレータ40の非反転入力端子に接続されている(図1参照)。そして、コンパレータ40の入力インピーダンスは無限大と考えることができるので、コンパレータ40の非反転入力端子には、電流は流れない。このため、フィードバック電圧生成回路50には、フィードバック電流Ifbが流れる。フィードバック電圧生成回路50の両端の電位差VD50は、以下の式(2)で表される。
【0049】
【数2】

【0050】
図1に示すように、フィードバック電圧生成回路50の一端は、コンパレータ40の非反転入力端子に接続されている。このため、フィードバック電圧生成回路50のその一端の電位は、Vi2である。なお、この電位Vi2は、コンパレータ40により、反転入力端子の電位Vi1とほぼ同じ値に保たれている。フィードバック電圧生成回路50の他端の電位Vfbは、以下の式(3)で表される。
【0051】
【数3】

【0052】
上記式(1)より、式(3)は、以下のように表すことができる。
【0053】
【数4】

【0054】
電位Vi2は、コンパレータ40により、反転入力端子の電位Vi1と同じ値に保たれている(図1参照)。このため、式(4)は、以下のように表すことができる。
【0055】
【数5】

【0056】
式(5)より、フィードバック電圧生成回路50の他端の電位Vfbは、実際のガスの流量を表すセンサ出力信号Vsと、流路400内を通るガスの流量の指令値を表す指令値信号Vi1と、の偏差(Vs−Vi1)に基づいて、PID制御を行って、センサ出力信号Vsが指令値信号Vi1に追従するように制御するものとして、把握することができる。ここで、Pゲインは、(Rb/Rx)であり、Iゲインは、{1/(Cb×Rx)}であり、Dゲインは、(Lb/Rx)である。
【0057】
図4は、フィードフォワード電流生成回路20の回路構成を示す図である。フィードフォワード電流生成回路20(図1参照)は、指令値信号Vi1に応じてフィードフォワード電流Iffを生成する。フィードフォワード電流生成回路20(図1参照)は、図4に示すように、CPU21と、オペアンプ22と、抵抗器23と、pnp型トランジスタ24と、抵抗器25(抵抗値R22)とを備えている。抵抗器25には、電源(電位Vcc)が接続されている。トランジスタ24のコレクタは、合成回路60(図1参照)に接続されている。
【0058】
図5は、指令値信号Vi1に応じたフィードフォワード電流Iffの大きさを示すグラフである。フィードフォワード電流生成回路20は、指令値信号Vi1に応じて図5のようなフィードフォワード電流Iffを生成する。すなわち、Vi1が0近傍の所定の範囲にあるときには、フィードフォワード電流Iffは0であり、Vi1が前記の所定の範囲よりも大きい範囲にあるときには、フィードフォワード電流Iffは指令値信号Vi1の増加に伴い線形に増加する。このような不連続なフィードフォワード電流IffをCPU21により生成することで、指令値信号Vi1が0近傍のときの弁部90の密閉性と流量の制御の応答性が両立される。このような電流の制御は、後述するように、CPU21によって実現される。
【0059】
図4のオペアンプ22の非反転入力端子には電流は流れ込まない。このため、抵抗器25およびトランジスタ24のエミッタ−コレクタ間を流れる電流をIx、抵抗器25(抵抗値R22)とトランジスタ24の間の電位をV24とすると、Ixは、以下の式(6)で表される。
【0060】
【数6】

【0061】
オペアンプ22の働きにより、非反転入力端子の電位V21と、反転入力端子の電位V24とは、同じ値に保たれる。このため、抵抗器25とトランジスタ24の間の電位V24は、CPU21の出力電圧V21と同じになる。よって、電流Ixを所望の値Iffにしたい場合には、式(6)より、CPU21の出力電圧V21を以下の値にすればよい。
【0062】
【数7】

【0063】
図6は、図5のグラフに式(7)を適用して得られる、CPU21の出力電圧V21のグラフである。あらかじめ定められた設定に基づいて指令値信号Vi1に応じた所定の電流Iffが流れるように(図5参照)、CPU21は、指令値信号Vi1を受け取って、これを変換し、出力電圧V21(図6参照)としてオペアンプ22の反転入力端子に出力する。言い換えれば、CPU21は、指令値信号Vi1を受け取って、出力電圧V21に変換して出力することにより、指令値信号Vi1に応じた所定の電流Iffを流す。フィードフォワード電流生成回路20は、このような構成および動作により、あらかじめ定められた設定に基づいて、指令値信号Vi1に応じた所定のフィードフォワード電流Iffを出力する。
【0064】
図1に示す合成回路60は、フィードバック電流Ifbとフィードフォワード電流Iffの和に応じた電圧をフィードバック電圧Vfbに加算した電圧である第2の制御電圧Vdrv*を生成する。第2の制御電圧Vdrv*は、一例として、0〜15Vの値を取りうる。
【0065】
合成回路60は、抵抗器62(抵抗値Rg)と第2の昇圧回路65を備えている。合成回路60の抵抗器62は、フィードバック電圧生成回路50の出力端に直列に接続されている(図1参照)。そして、合成回路60の抵抗器62は、フィードフォワード電流生成回路20にも直列に接続されている(図1参照)。このため、合成回路60の抵抗器62には、フィードバック電流Ifbとフィードフォワード電流Iffとが同時に流れる。その結果、合成回路60の抵抗器62(抵抗値Rg)の両端の電位差VD60は、以下の式(8)で表される。
【0066】
【数8】

【0067】
合成回路60のフィードバック電圧生成回路50側の端の電位は、フィードバック電圧生成回路50の出力端の電位Vfbであるので、式(5),(8)より、合成回路60の抵抗器の他端の電位Vdrv*は、以下の式(9)で表される。なお、ここでは、図1において左から右に向かう向きの電流をプラスとする。
【0068】
【数9】

【0069】
式(1)よりIfbが得られ、式(1)中のVi2は、コンパレータ40の機能によりVi1と等しいので、合成回路60の抵抗器の他端の電位Vdrv*は、以下の式(10)で表される。
【0070】
【数10】

【0071】
合成回路60の第2の昇圧回路65は、抵抗器62が生成した第2の制御電圧Vdrv*(一例として、0〜15V)を昇圧し、第2の駆動電圧Vdrv2(一例として、0〜150V)を生成する。第2の駆動電圧Vdrv2は、第1の駆動電圧Vdrv1とともに、弁部90のピエゾ素子を駆動するための駆動電圧である。なお、第2の駆動電圧Vdrv2は、第2の制御電圧Vdrv*が増加すると減少し、第2の制御電圧Vdrv*が減少すると増加するように生成される。これは、弁部90が、駆動電圧Vdrvが高いときに弁開度を小さくし、駆動電圧Vdrvが低いときに弁開度を大きくする構成であるためである。
【0072】
弁部90は、第2の制御電圧Vdrv*(式(10)参照)を反映した合成回路60による第2の駆動電圧Vdrv2と、第1の制御電圧Vrefを反映した第1の昇圧回路70による第1の駆動電圧Vdrv1と、に基づく駆動電圧Vdrvにより、ピエゾ素子を駆動されて、弁の開度を変更する。なお、駆動電圧Vdrvの大きさは、一例としては、0〜約150Vである。
【0073】
式(10)より、Vdrv*には、フィードバック制御(PID制御)の効果を発揮する右辺第2項〜第4項が含まれる。すなわち、流量制御装置100は、フィードバック制御(PID制御)の効果を発揮する成分を駆動電圧Vdrvに反映させて、弁部90を制御している。よって、本実施例の流量制御装置100は、安定して正確な流量制御を行うことができる。
【0074】
また、式(10)より、Vdrv*には、フィードフォワード電流生成回路20のCPU21(図4参照)によって制御されフィードフォワード制御の効果を発揮する右辺第5項(Rg×Iff)が含まれる。すなわち、流量制御装置100は、フィードフォワード制御の効果を発揮する成分を駆動電圧Vdrvに反映させて、弁部90を制御している。このため、流量制御装置100は、ガスの流量の指令値(指令値信号Vi1)に急激な変化があった場合にも、迅速にその指令値の変化に追従することができる。
【0075】
より具体的には、流路400内を通るガスの流量の指令値を表す指令値信号Vi1が0から所定の値に変化した場合、まず、変化の直後の段階では、指令値信号Vi1の変化がフィードバック制御にあまり反映されない。これに対して、フィードフォワード電流生成回路20に起因する第2の駆動電圧Vdrv2は、指令値信号Vi1の所定の値に応じた一定の電位となるようにCPU21によって制御される(図4参照)。その結果、指令値信号Vi1の変化の直後の段階では、フィードフォワード電流生成回路20に起因する第2の駆動電圧Vdrv2の成分が、弁部90の駆動電圧Vdrvにおいて支配的となり、フィードフォワード制御の効果を発揮する。このため、流量制御装置100は、ガスの流量の指令値に急激な変化があった場合にも、迅速にその指令値の変化に追従することができる。
【0076】
その後、指令値信号Vi1の変化(センサ出力信号Vsを反映した信号Vi2と、変化後の指令値信号Vi1との差)がフィードバック制御に反映されてくると、弁部90の駆動電圧Vdrvにおいて、コンパレータ40に起因する第1の駆動電圧Vdrv1が、支配的となる。その結果、この第1の駆動電圧Vdrv1により、フィードバック制御の効果が発揮される。このため、流量制御装置100においては、装置のハードウェア構成等に起因して、実際の流量が指令値に対する偏差を含みうる場合にも、それが定常偏差として残りにくい。なお、フィードフォワード電流生成回路20に起因する第2の駆動電圧Vdrv2は、指令値信号Vi1が一定である限り、時間経過によらず一定である。
【0077】
さらに、本実施例の流量制御装置100においては、Vdrv*中のフィードバック制御の効果を発揮する成分と、フィードフォワード制御の効果を発揮する成分とは、それぞれフィードバック電流生成回路30と、フィードフォワード電流生成回路20と、において、別個に生成される(図1参照)。このため、フィードバック制御の効果を発揮する成分と、フィードフォワード制御の効果を発揮する成分とは、互いに影響を与えることがない。
【0078】
よって、フィードバック制御の効果を発揮する成分と、フィードフォワード制御の効果を発揮する成分とを、合成回路60によって容易に合成することができる。そして、フィードバック電流生成回路30の設定(すなわち、フィードバック制御の設定)と、フィードフォワード電流生成回路20の設定(すなわち、フィードフォワード制御の設定)とを、独立に行うことができる。すなわち、フィードバック電流生成回路30の設定と、フィードフォワード電流生成回路20の設定が容易である。言い換えれば、少ない調整工数でフィードバック制御の設定と、フィードフォワード制御の設定とを行うことができる。
【0079】
なお、本実施例においては、流量センサ80は、作動原理に熱の移動を利用しているため(図2参照)、応答速度が遅い。このため、この流量センサ80をフィードバック用のセンサとして使用しつつ、上述の制御(フィードバック制御およびフィードフォワード制御)をデジタル制御でおこなう場合には、サンプリング周期に対して流量センサ80の応答が遅いために、システムが不安定になる可能性がある。また、そのような不安定性を解消するために、流量センサ80の応答の遅さによる悪影響を十分排除しようとすると、フィードバック電圧生成回路50で設定される制御ゲインを十分に上げることができない。その結果、制御の応答速度が遅くなる。
【0080】
一方、本実施例の流量制御装置100においては、フィードフォワード電流生成回路20が、フィードフォワード制御の成分を反映させるための出力として、電流を出力している。そして、コンパレータ40と、フィードバック電流生成回路30と、フィードバック電圧生成回路50と、合成回路60とが、いずれもアナログ回路として電流および電圧を制御することにより、フィードバック制御およびフィードフォワード制御を達成している。このため、応答速度が遅い流量センサ80をフィードバック用のセンサとして使用しても、システムが不安定になることがない。また、不要な応答遅れを含むこともない。
【0081】
A2.流量制御装置の性能:
本実施例と、フィードフォワード制御を行わない比較例とについて、応答性の比較を行った。比較例においては、フィードフォワード電流Iffを指令値信号Vi1によらず0とした。比較例の他の点は、本実施例と同じである。一方、本実施例においては、フィードフォワード電流Iffは、指令値信号Vi1に応じて図5のように出力される。
【0082】
図7は、比較例の指令値信号Vi1、弁部90を駆動する駆動電圧Vdrv、および流量センサ80のセンサ出力信号Vsを表すグラフである。図8は、本実施例の指令値信号Vi1、弁部90を駆動する駆動電圧Vdrv、および流量センサ80のセンサ出力信号Vsを表すグラフである。
【0083】
図7および図8の上段の指令値信号Vi1のグラフから分かるように、この試験は、指令値信号Vi1がある時点t1において0からVi11に変化したときの、本実施例の流量制御装置100と比較例の流量制御装置の応答を示すものである。なお、本実施例および比較例において、弁部90は、駆動電圧Vdrvが高いときに弁開度を小さくし、駆動電圧Vdrvが低いときに弁開度を大きくする構成である。このため、図7および図8のグラフにおいて、指令値信号Vi1(上段)および流量センサ80のセンサ出力信号Vs(下段)が、時刻t1まで一定値であり、時刻t1以降の範囲でそれまでよりも大きな値を取っているのに対して、弁部90を駆動する駆動電圧Vdrvは、時刻t1まで一定値であり、時刻t1以降の範囲で、それまでよりも小さい値をとっている。
【0084】
図7および図8の中段の弁部90の駆動電圧Vdrvのグラフから分かるように、本実施例においては、比較例よりも、時刻t1直後の駆動電圧Vdrvの変化の傾きが急峻である。すなわち、指令値信号Vi1の変化に対して(図7および図8の上段参照)、駆動電圧Vdrv、すなわち弁部90の弁の開度が、より敏速に追従している。
【0085】
また、図7および図8の下段の流量センサ80のセンサ出力信号Vsのグラフから分かるように、本実施例においては、比較例よりも、センサ出力信号Vsの変化の傾きが急峻である。そして、本実施例においては、比較例よりも早期に一定値に達している。すなわち、本実施例においては、指令値信号Vi1の変化に対して(図7および図8の上段参照)、流路400内を流れるガスの流量が、より敏速に追従している。
【0086】
B.第2実施例:
第2実施例の流量制御装置は、第1実施例の流量制御装置100とは、フィードフォワード電流生成回路の構成が異なっている。第2実施例の流量制御装置の他の点は、第1実施例の流量制御装置100と同じである。
【0087】
図9は、フィードフォワード電流生成回路20bの回路構成を示す図である。第2実施例の流量制御装置が備えるフィードフォワード電流生成回路20bも、指令値信号Vi1に応じてフィードフォワード電流Iffを生成する。フィードフォワード電流生成回路20bは、図9に示すように、CPU21bと、抵抗器25b(抵抗値Rff)とを備えている。抵抗器25の一端には、CPU21bの出力端が接続されている。抵抗器25の他端(出力端)には、合成回路60(図1参照)が接続されている。
【0088】
抵抗器25bを流れる電流をIff、CPU21bの出力端の電位(CPU21bの出力電圧)をVff、抵抗器25bの出力端の電位をV25bとすると、Iffは、以下の式(11)で表される。
【0089】
【数11】

【0090】
抵抗器25bの出力端は、フィードバック電圧生成回路50の出力端および合成回路60の入力端と接続されている。このため(図9および図1参照)、抵抗器25bの出力端の電位V25bは、Vfbに等しい。よって、式(11)より、以下の式(12)が得られる。
【0091】
【数12】

【0092】
合成回路60の入力端の電位は、Vfbであり、合成回路60には、フィードフォワード電流Iffとフィードバック電流Ifbが流れる(図1参照)。よって、合成回路60(抵抗値Rg)の出力端の電位Vdrv*は、以下の式(13)で得られる。
【0093】
【数13】

【0094】
上記式(13)の右辺のうち、Ifb、Vfbは、それぞれフィードバック電流生成回路30と、フィードバック電圧生成回路50とで生成される(図1参照)。すなわち、式(13)において、Vfbを含む右辺第1項と、Ifbを含む右辺第3項は、第1実施例と同様にフィードバック制御の効果を発揮する成分である。そして、フィードフォワード電流生成回路20bで生成されるVffを含む第2項が、フィードフォワード制御の効果を発揮する成分である。
【0095】
よって、第2実施例の流量制御装置も、フィードバック制御により、安定して正確な流量制御を行うことができる。そして、フィードフォワード制御により、ガスの流量の指令値(指令値信号Vi1)に急激な変化があった場合にも、迅速にその指令値の変化に追従することができる。さらに、フィードバック制御の効果を発揮する成分と、フィードフォワード制御の効果を発揮する成分とを、合成回路60によって容易に合成することができる。また、フィードバック電流生成回路30の設定と、フィードフォワード電流生成回路20の設定が容易である。
【0096】
C.第3実施例:
図10は、第3実施例の流量制御装置100cの構成図である。第3実施例の流量制御装置100cにおいては、第1の昇圧回路70と弁部90とを結ぶ配線が、分圧回路68を介して接地されている。そして、合成回路60cは、内部に第2の昇圧回路65を備えていない。さらに、合成回路60c(言い換えれば、抵抗器62)の出力端は、分圧回路68に接続されている。第3実施例の流量制御装置100cの他の点は、第1実施例の流量制御装置100と同じである。
【0097】
分圧回路68は、互いに直列につながれた抵抗器66(抵抗値Rd1)と抵抗器67(抵抗値Rd2)とを有している。抵抗器66の他端は接地されている。抵抗器66の他端は第1の昇圧回路70と弁部90とを結ぶ配線に接続されている。抵抗器66と抵抗器67の接続部分には、合成回路60cの出力端が接続されている。
【0098】
このような態様とすることにより、合成回路60cの出力電圧Vdrv*(一例として、0〜15V)を{(Rd1+Rd2)/Rd1}倍にすることができる。よって、たとえば、抵抗値Rd1と抵抗値Rd2の比を、1:9とすることにより、内部に第2の昇圧回路65を備えていない合成回路60cの出力電圧Vdrv*(0〜15V)を10倍することができ、その結果、第2の駆動電圧Vdrv2(0〜150V)に昇圧することができる。よって、合成回路60cの構成を、簡略化することができ、その結果、小型化することができる。
【0099】
D.第4実施例:
図11は、第4実施例の流量制御装置100dの構成図である。第4実施例の流量制御装置100dは、流量センサ80とフィードバック電流生成回路30との間に微分回路35を備えている。第4実施例の流量制御装置100dの他の点は、第1実施例の流量制御装置100と同じである。
【0100】
微分回路35は、流量センサ80のセンサ出力信号Vs(0〜5V)を受け取って、これを微分して得た信号をフィードバック電流生成回路30に供給する。フィードバック電流生成回路30は、微分回路35から受け取った信号と、コンパレータ40の非反転入力端子の電位Vi2(指令値信号Vi1に等しい)との差に応じたフィードバック電流Ifbを生成する。
【0101】
このような態様とすることにより、第1実施例の流量制御装置100に比べて、実際の流量の変化を反映したフィードバック電流Ifbの変化が急峻になる。その結果、第1実施例の流量制御装置100に比べて、実際の流量の変化を反映する際の流量制御装置100dの応答速度を、さらに速くすることができる。
【0102】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0103】
E1.変形例1:
上記実施例では、半導体製造装置に供給するガスの流量を制御する流量制御装置を例に本願発明の説明をした。しかし、本願発明は、気体に限らず、液体など、任意の流体の流量を制御する流量制御装置に適用することができる。
【0104】
E2.変形例2:
上記実施例では、流量センサは、流体による熱の移動を利用した流量センサ80である。しかし、流量センサは、流体による力を利用したものなど、他の原理に基づくセンサであってもよい。ただし、上記各実施例の技術は、流量センサの応答速度が遅い場合に、特に、有効である。
【0105】
E3.変形例3:
上記実施例では、弁は、ピエゾ素子によって動作される。しかし、弁部は他の機構、たとえば油圧やモータなどにより、弁を動作させ、弁開度を変える態様とすることもできる。
【0106】
E4.変形例4:
上記実施例では、コンパレータ40は、信号Vi2が指令値信号Vi1よりも小さい場合、正の値の第1の制御電圧Vrefを出力し、信号Vi2が指令値信号Vi1よりも大きい場合、負の値の第1の制御電圧Vrefを出力する。そして、信号Vi2が指令値信号Vi1と等しい場合、第1の制御電圧Vrefを0とする。しかし、コンパレータ40は、第1の入力信号と前記第2の入力信号の比較に基づいて、制御対象である弁部90の特性に応じた第1の制御電圧を出力することができる態様であれば、他の態様であってもよい。たとえば、上記の態様とは、出力電圧Vrefの符号が逆であってもよいし、二つの入力値が等しい場合に出力する電圧も0以外の所定値であってもよい。
【0107】
E5.変形例5:
図1,図10および図11には明示していないが、流量制御装置は、第1の制御電圧Vdrv1と第2の制御電圧Vdrv2に応じて駆動電圧Vdrvを生成する駆動電圧生成部を備えてもよい。駆動電圧生成部は、第1の制御電圧Vdrv1と第2の制御電圧Vdrv2を受け取って、それらよりも電圧が高い駆動電圧Vdrvを生成してもよい。また、駆動電圧生成部は、第1の制御電圧Vdrv1と第2の制御電圧Vdrv2をそれぞれ昇圧した後、所定の方法でそれらを合成して駆動電圧Vdrvを生成してもよい。
【0108】
E6.変形例6:
上記第4実施例では、微分回路35が生成した、センサ出力信号Vsを微分して得られる信号が、フィードバック電流生成回路30に与えられている。しかし、フィードバック電流生成回路30に与えられる信号は、そのような態様に限らない。ただし、フィードバック電流生成回路30に与えられる信号は、センサ出力信号Vsを微分して得られる成分に他の所定の成分を加えたものなど、センサ出力信号Vsを微分して得られる成分を含む信号であることが好ましい。
【0109】
E7.変形例7:
上記実施例では、フィードフォワード電流生成回路は、図4および図9の様な回路構成を採用している。しかし、フィードフォワード電流生成回路は、あらかじめ設定されたフィードフォワード電流を、指令値信号に応じて生成することができる回路であれば、任意の回路を採用することができる。また、あらかじめなされた設定は、マップによるものであってもよいし、式で与えられたものであってもよい。
【0110】
また、フィードバック電流生成部も、実施例で述べた構成に限らず、フィードバック電流に応じたフィードバック電圧を生成することができる構成であれば、任意の構成とすることができる。そして、フィードバック電圧生成部も、実施例で述べた構成に限らず、フィードバック電流に応じたフィードバック電圧を生成することができる構成であれば、任意の構成とすることができる。また、合成部も、実施例で述べた構成に限らず、フィードバック電流とフィードフォワード電流の和に応じた電圧をフィードバック電圧に加算した電圧である第2の制御電圧を生成することができる構成であれば、任意の構成とすることができる。ただし、フィードバック電流生成部と、フィードバック電圧生成部と、合成部とは、アナログ回路として構成されることが好ましい。
【0111】
また、各構成要素を接続する態様も、実施例に記載された態様に限らず、各構成要素が機能を発揮できるような態様であれば、任意の態様とすることができる。
【0112】
E8.変形例8:
上記第3実施例では、合成回路60cは、第2の昇圧回路65を備えていない。しかし、第1実施例のように合成回路60cが第2の昇圧回路65を備えている態様において、さらに、第2実施例の分圧回路68のような分圧回路を備えることができる。そのような態様とすることにより、第2の昇圧回路65が生成する第2の駆動電圧の大きさを、第1実施例に比べて、{Rd1/(Rd1+Rd2)}にすることができる。よって、合成回路60cの構成を、簡略化することができ、その結果、小型化することができる。なお、このような態様において、抵抗値Rd1,Rd2の値は任意の適切な値に定めることができる。
【0113】
E9.変形例9:
上記各実施例の各構成を、適宜選択して組み合わせ、または省略することにより、本願明細書に記載された技術的課題を解決できる発明を構成することができる。また、上記各実施例に記載のない構成要素を加えて、発明を構成することができる。
【符号の説明】
【0114】
10…流量設定部
20…フィードフォワード電流生成回路
20b…フィードフォワード電流生成回路
21…CPU
21b…CPU
22…オペアンプ
23…抵抗器
24…pnp型トランジスタ
25…抵抗器
25b…抵抗器
30…フィードバック電流生成回路
35…微分回路
40…コンパレータ
50…フィードバック電圧生成回路
60…合成回路
62…抵抗器
65…第2の昇圧回路
66…抵抗器
67…抵抗器
68…分圧回路
70…第1の昇圧回路
80…流量センサ
82…バイパス管部
84…センサ管
86…センサ回路
90…弁部
100…流量制御装置
100c…流量制御装置
100d…流量制御装置
200…ガス源
300…半導体製造装置
400…流路
Ifb…フィードバック電流
Iff…フィードフォワード電流
R1…抵抗線
R4…抵抗線
V21…CPU21の出力電圧
V24…トランジスタ24のエミッタの電位
V25b…抵抗器25bの出力端の電位
Vcc…電源の電位
Vdrv…弁部のピエゾ素子の駆動電圧
Vfb…フィードバック電圧
Vi1…指令値信号
Vi2…信号(コンパレータの非反転入力端子の電位)
Vref…第1の制御電圧
Vs…センサ出力信号
t1…指令値信号Vi1が変化する時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制御装置であって、
流路内を通る流体の流通を制御する弁部と、
前記流体の流量に応じたセンサ出力信号を出力する流量センサと、
前記流体の流量の指令値を表す指令値信号である第1の入力信号と、前記センサ出力信号に応じた信号である第2の入力信号と、を入力され、前記第1の入力信号と前記第2の入力信号の比較に基づいて、第1の制御電圧を出力するコンパレータと、
前記センサ出力信号または前記センサ出力信号に応じた信号と、前記指令値信号に応じた信号と、の差に応じたフィードバック電流を生成するフィードバック電流生成部と、
前記フィードバック電流に応じたフィードバック電圧を生成するフィードバック電圧生成部と、
前記指令値信号に応じてフィードフォワード電流を生成するフィードフォワード電流生成部と、
前記フィードバック電流と前記フィードフォワード電流の和に応じた電圧を前記フィードバック電圧に加算した電圧である第2の制御電圧を生成する合成部と、を備え、
前記弁部は、前記第1の制御電圧と前記第2の制御電圧に応じて制御される、流量制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御装置であって、
前記合成部は、前記フィードバック電圧生成部の出力端に直列に接続された抵抗器であって、前記フィードバック電流と前記フィードフォワード電流とが同時に流れるように構成された抵抗器を含む、流量制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に流量制御装置であって、
前記フィードフォワード電流生成部は、
あらかじめ定められた設定に基づいて前記指令値信号に応じた電圧を出力するCPUと、
前記CPUが出力した電圧に応じて前記フィードフォワード電流を流す抵抗器と、を含む、流量制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の流量制御装置であって、
前記流量センサは、前記流路内を通る前記流体による熱の移動に基づいて、前記流体の流量を検知するセンサである、流量制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の流量制御装置であって、さらに、
前記第1の制御電圧を昇圧して第1の駆動電圧とする第1の昇圧部を備え、
前記第1の昇圧部と前記弁部を結ぶ配線は、分圧回路を通して接地されており、
前記合成部は、前記第2の制御信号を昇圧して第2の駆動電圧とする第2の昇圧部を備え、
前記合成部の出力端としての前記第2の昇圧部の出力端は、前記分圧回路に接続されている、流量制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の流量制御装置であって、さらに、
前記センサ出力信号を微分して得られる成分を含む微分信号を生成する微分部を備え、
前記フィードバック電流生成部は、前記センサ出力信号に応じた信号としての前記微分信号と、前記指令値信号または前記指令値信号に応じた信号と、の差に応じた前記フィードバック電流を生成する、流量制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の流量制御装置であって、
前記フィードバック電圧生成部は、抵抗器とコンデンサとリアクトルのうちのいずれかの二つ以上が直列に結合された回路構成を備える、流量制御装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の流量制御装置であって、
前記コンパレータは、前記指令値信号または前記指令値信号に応じた信号と、前記センサ出力信号に応じた信号としての前記フィードバック電流生成部の出力端の電圧と、の比較に基づいて、前記第1の制御電圧を出力する、流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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