説明

流量測定器及び流量測定方法

【課題】水蒸気等の流体の流量を好適に測定できる流量測定器及び流量測定方法を提供する。
【解決手段】流路を通過する流体の流量を測定する測定器32において,開口40を設けたダイアフラム41を備え,前記流体は,ダイアフラム40の上流側の流路11aから,開口40を通過して,ダイアフラムの下流側の流路31に流れる構成とし,ダイアフラム41のひずみを検出するためのひずみゲージ42と,ひずみゲージ42の出力に基づいて前記流量を検出する演算部45とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,流量測定器及び流量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLSI等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては,半導体ウェハ(以下,「ウェハ」という)に対して処理液や処理ガス等の処理流体を供給することにより,洗浄処理,レジスト除去処理等,様々な処理が施される。
【0003】
処理流体を供給する配管には,ポンプ,バルブ等の他,配管内の流量を測定する流量測定器が介設される(例えば,特許文献1参照)。かかる流量測定器としては,フロート式,カルマン渦式等の方式が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−151458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,例えばウェハのレジスト水溶化処理において処理流体として用いられる水蒸気に関しては,適切な流量測定器を選択することが難しい問題があった。例えばフロート式等,機械的な方式を用いた流量測定器で測定する場合,結露等の影響により,フロートがテーパ管に固着することがあったりして,測定誤差が大きくなるおそれや,測定不能な状態になるおそれがあった。また,水蒸気の熱の影響により,流量測定器が故障するおそれもあった。
【0006】
本発明の目的は,水蒸気等の流体の流量を好適に測定できる流量測定器及び流量測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため,本発明によれば,流路を通過する流体の流量を測定する測定器であって,開口を設けたダイアフラムを備え,前記流体は,前記ダイアフラムの上流側の流路から,前記開口を通過して,前記ダイアフラムの下流側の流路に流れる構成とし,前記ダイアフラムのひずみを検出するためのひずみゲージと,前記ひずみゲージの検出値に基づいて前記流量を検出する演算部とを備えたことを特徴とする,流量測定器が提供される。
【0008】
この流量測定器にあっては,前記演算部は,前記ひずみゲージの検出値から,前記ダイアフラムの上流側における流体の圧力Pと前記ダイアフラムの下流側における流体の圧力Pとの差圧ΔP(ΔP=P−P)を求めるとしても良い。また,前記演算部は,前記流量Qを次式:Q=CA(2ΔP/ρ)1/2(C:定数,A:前記開口の開口面積,ΔP:前記ダイアフラムの上流側における流体の圧力Pと前記ダイアフラムの下流側における流体の圧力Pとの差圧,ρ:前記流体の密度)に基づいて算出することとしても良い。
【0009】
前記流体は水蒸気であっても良い。また,前記ダイアフラムは,樹脂モールドによって形成されたものであっても良い。前記ダイアフラムの下流側の流路は,前記ダイアフラムと対向する面が曲面に形成された略半円筒形状の内部空間であるとしても良い。
【0010】
また本発明によれば,流路を通過する流体の流量を測定する方法であって,前記流体を,ダイアフラムの上流側から前記ダイアフラムに設けた開口に通過させ,前記ダイアフラムの下流側に流入させ,前記ダイアフラムのひずみに基づいて,前記流量を検出することを特徴とする,流量測定方法が提供される。
【0011】
前記流量Qは次式:Q=CA(2ΔP/ρ)1/2(C:定数,A:前記開口の開口面積,ΔP:前記ダイアフラムの上流側における流体の圧力Pと前記ダイアフラムの下流側における流体の圧力Pとの差圧,ρ:前記流体の密度)に基づいて求めても良い。前記流体は水蒸気であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,ダイアフラムが流体に押されることにより生じるひずみを利用して,流体の流量を好適に測定できる。構造が単純であるため,高い清浄度を保つことができ,故障の可能性も低い。流路測定器部分の流路が比較的単純であり,結露が生じる危険性が低い。万一結露が発生しても,測定誤差への影響が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下,本発明の好ましい実施の形態を,基板としてのウェハの表面に塗布されたレジストを除去する前にレジストを水溶化させる処理を施す基板処理装置において,処理流体の供給路に備えられた流量測定器に基づいて説明する。図1に示すように,基板処理装置1は,略円板形状のウェハWを収納するチャンバー2を備えている。
【0014】
チャンバー2は,上面が開口となったチャンバー本体2aと,チャンバー本体2aの上面開口を閉塞する蓋体2bとを備えている。ウェハWはチャンバー2内に略水平に載置される。また,チャンバー2には,チャンバー2内に処理流体を供給する主供給管5と,チャンバー2内から処理流体を排出する排出管6とが接続されている。
【0015】
主供給管5には,処理流体として純水(DIW)の水蒸気(Vapor)を供給する蒸気供給管11,処理流体としてオゾンガス(O)を供給するオゾンガス供給管12,及び,窒素ガス(N)を供給する窒素ガス供給管13が,合流部15を介して接続されている。
【0016】
蒸気供給管11は,蒸気発生器21に接続されている。また,蒸気供給管11には,管内の流路11aの開閉と流量調整を行う流量調整弁22が介設されている。
【0017】
オゾンガス供給管12は,オゾンガス発生器23に接続されている。また,オゾンガス供給管12には,オゾンガスから金属成分を除去してオゾンガスを清浄化するガスクリーンユニット24,及び,管内の流路12aの開閉と流量調整を行う流量調整弁25が,オゾンガス発生器23側からこの順に介設されている。
【0018】
窒素ガス供給管13は,窒素ガス供給源26に接続されている。また,窒素ガス供給管13には,管内の流路13aの開閉と流量調整を行う流量調整弁27が介設されている。
【0019】
図2及び図3に示すように,合流部15は本体30を備えており,本体30の内部には,横方向に向かう細長い略角筒状,即ち略長方形の開口断面形状を有する内面が設けられている。この本体30の内面に囲まれた内部空間が流路31となっている。流路31の両端部には,窒素ガス供給管13内の流路13aの下流端と主供給管5内の流路5aの上流端がそれぞれ接続されている。本体30の内面のうち,上面となっている平面部30aには,蒸気供給管11内の流路11aの下流端が接続されており,さらに流路11aより上流側に,オゾンガス供給管12内の流路12aの下流端が接続されている。各流路11a,12aの下流端部は,それぞれ平面部30a及び流路31の流れ方向に対して略垂直に接続されている。
【0020】
なお,合流部15付近において,蒸気供給管11,オゾンガス供給管12は,それぞれ略円管状をなしている。即ち,蒸気供給管11の内部空間である流路11aの流路断面形状,オゾンガス供給管12の内部空間である流路12aの流路断面形状は,それぞれ略円形になっている。また,蒸気供給管11,オゾンガス供給管12,合流部本体30,主供給管5の材質,即ち,流路11a,12a,31,5aの各内壁面の材質としては,例えばフッ素樹脂等,耐薬品性(耐オゾン性)や耐熱性に優れた樹脂が用いられる。
【0021】
また,合流部15には,流路11aから流路31に供給される蒸気の流量を測定する,本実施の形態にかかる蒸気流量測定器32と,流路12aから流路31に供給されるオゾンガスの流量を測定する,本実施の形態にかかるオゾンガス流量測定器33とが設けられている。
【0022】
蒸気流量測定器32は,開口(オリフィス)40を有するダイアフラム41,ダイアフラム41のひずみを検出するためのひずみゲージ42,及び,ひずみゲージ42の出力に基づいて流量を検出する演算部45を備えている。
【0023】
図3及び図4に示すように,ダイアフラム41は略円形の平板状をなし,流路11aの下流端部と流路31の上部との間を仕切るように,流路11aの流れ方向に対して略直角に横断するように設けられている。ダイアフラム41の外周縁は,流路11aの端部内周縁に対して固定されている。図示の例では,ダイアフラム41は本体30と一体的に形成されており,本体30の内面における平面部30aに設けられている。ダイアフラム41の下面は本体30の平面部30aと平面状に連続した面になっている。ダイアフラム41の上面は,流路11aの内径とほぼ同じ外径を有する略円形状の平面になっている。
【0024】
開口40は,ダイアフラム41の中央部,即ち流路11aの径方向における中央部において,ダイアフラム41の上面側から下面側に貫通するように,また,流路11aの流れ方向に沿って真っすぐに設けられている。開口40の断面形状は,流路11aの流路断面積より小さい開口面積Aを有する略円形をなしている(A=πd/4,d:開口40の直径)。
【0025】
なお,ダイアフラム41は,柔軟性を有する樹脂等の材質によって形成されており,流体の圧力を受けて弾性変形するようになっている。また,ダイアフラム41をフッ素樹脂によって形成し,あるいは,ダイアフラム41の表面をフッ素樹脂によってコーティングするようにしても良い。そうすれば,十分な耐薬品性,耐熱性が得られる。また,ダイアフラム41を樹脂モールド成型によって形成しても良い。この場合,ひずみゲージ42を樹脂によって封止するように成型することが好ましい。即ち,ダイアフラム41の形状を形成する鋳型内にフッ素樹脂等のモールド樹脂を流し入れ,ひずみゲージ42をモールド樹脂中に入れた状態で硬化させるようにすれば良い。これにより,ひずみゲージ42を内蔵したダイアフラム41を簡単に製造できる。また,ひずみゲージ42の外面を樹脂によって覆うことで,ひずみゲージ42の損傷を防止できる。
【0026】
ひずみゲージ42は,ダイアフラム41の内部に内蔵されており,図示しない導線や必要に応じて設けられた増幅器などを備えた電気回路を介して,演算部45に接続されている。このひずみゲージ42としては,例えば金属からなる抵抗体を用いた抵抗線ひずみゲージが用いられる。なお,ひずみゲージ42としては,他の構造,例えば箔ひずみゲージ,半導体ひずみゲージ等を使用しても良い。
【0027】
演算部45は,例えばマイクロコンピュータ等であり,ひずみゲージ42の抵抗値を電気回路において必要に応じて信号処理した検出値Rを電気信号として受信し,検出値Rに基づいて,流路11aから流路31に供給される蒸気の体積流量(測定値)Q[m/s]を算出することができる。
【0028】
演算部45における流量Qの算出方法の理論は,以下のようなものである。周知のように,ダイアフラム41のひずみは,ダイアフラム41が受ける外力,即ち,流路11aにおける流体(蒸気)の圧力Pと流路31における流体の圧力Pとの差圧ΔP[Pa](ΔP=P―P)と相関関係にある。従って,ひずみゲージ42の検出値Rは差圧ΔPと相関関係にある。また,管オリフィスに関して,次式(1)が知られている。
=C(2ΔP/ρ1/2・・・(1)
ここで,Cは定数(流量係数,約0.6〜0.8),A[m]は前述した開口40の開口面積,ρ[kg/m]は流体(蒸気)の密度である。式(1)から明らかなように,流量Qは差圧ΔPの平方根と比例関係にある。従って,差圧ΔPと相関関係にある検出値Rから,流量Qを算出できる。
【0029】
具体的には,予め実験により,ある差圧ΔP’を与えたときのときの検出値R’を調べ,その比例定数αを求めておけば良い。そうすれば,検出値Rから差圧ΔPが一義的に求められ(ΔP=α),さらに,式(1)に基づいて流量Qを算出できる。
【0030】
オゾンガス流量測定器33は,上述した蒸気流量測定器32と実質的に同一の機能構成,即ち,流路12aの端部と流路31の上部との間に設けられたダイアフラム41,ひずみゲージ42,図示しない電気回路,及び,演算部45を備えている。オゾンガス流量測定器33の構成において蒸気流量測定器32のものと実質的に同一の構成については,本明細書及び図面において同一の符号を付することとし,詳細な説明は省略する。勿論,例えばオゾンガス流量測定器33のダイアフラム41,開口40の大きさ等は,蒸気流量測定器32に備えたものと異なっていても良い。
【0031】
オゾンガス流量測定器33の演算部45は,オゾンガス流量測定器33のひずみゲージ42の抵抗値を必要に応じて信号処理した検出値Rを電気信号として受信し,検出値Rに基づいて,流路12aから流路31に供給されるオゾンガスの流量(測定値)Q[m/s]を算出する。流量Qの算出方法の理論は,上述した流量Qの場合と同様である。即ち,差圧ΔP[Pa](ΔP=P―P,P:流路12aにおける流体(オゾンガス)の圧力)と相関関係にある検出値Rから,次式(2)に基づいて算出できる。
=C(2ΔP/ρ1/2・・・(2)
ここで,Cは定数(流量係数,約0.6〜0.8),A[m]はオゾンガス流量測定器33における開口40の開口面積(A=πd/4,d:オゾンガス流量測定器33における開口40の直径),ρ[kg/m]は流体(オゾンガス)の密度である。具体的には,予め実験により,ある差圧ΔP’を与えたときのときの検出値R’を調べ,その比例定数αを求め(ΔP=α),式(2)に基づいて流量Qを算出すれば良い。
【0032】
図1に示すように,前述した流量調整弁22,25,27,蒸気流量測定器32の演算部45,オゾンガス流量測定器33の演算部45は,基板処理装置1の各機能要素の制御を行う制御部50に対して,図示しない信号ライン等を介してそれぞれ接続されている。
【0033】
制御部50は,蒸気流量測定器32による流量の測定値Qを監視し,その測定値Qが目標値になるように,流量調整弁22の開度を調節する機能を有する。即ち,流量調整弁22,蒸気流量測定器32,制御部50を備えたフィードバック制御系によって,蒸気の流量が制御されるようになっている。
【0034】
また,制御部50は,オゾンガス流量測定器33による流量の測定値Qを監視し,その測定値Qが目標値になるように,流量調整弁25の開度を調節する機能を有する。即ち,流量調整弁25,オゾンガス流量測定器33,制御部50を備えたフィードバック制御系によって,オゾンガスの流量が制御されるようになっている。
【0035】
図5に示すように,ガスクリーンユニット24には,貯留した純水にオゾンガスをバブリングさせるバブラータンク61,バブラータンク61から導出した蒸気とオゾンガスの混合流体を冷却しながら送流させる配管62,水冷式のペルチェ冷却器63,フィルタ64,結露分離タンク65が備えられている。
【0036】
バブラータンク61内の底部には,オゾンガス供給管12の一部でありオゾンガス発生器23とガスクリーンユニット24との間の部分を構成する供給管12bの端部が配設されている。また,バブラータンク61内に純水を供給する純水供給路71,及び,バブラータンク61内を加熱及び保温するヒータ72が設けられている。配管62は,バブラータンク61の天井部に接続されている。かかるバブラータンク61内には,純水供給路71から供給された純水が貯留される。
【0037】
純水供給路71は,バブラータンク61の底部に接続されている。また,純水供給路71には,純水供給路71の開閉及び流量調整を行う流量調整弁73,及び,バブラータンク61内を排液する排液路74が介設されている。排液路74には開閉弁75が介設されている。バブラータンク61内の純水は,純水供給路71,排液路74を介してガスクリーンユニット24外に排液されるようになっている。
【0038】
バブラータンク61の側壁には,液面を検出する液面センサー76a,76b,76cが,下からこの順に設けられている。液面センサー76a〜76cの検出信号は,流量調整弁73の開度を制御するコントローラ77に送信される。コントローラ77は,液面センサー76a,76b,76cの検出信号によってバブラータンク61内の液面の位置を監視し,液面が所定の高さから下がったときは流量調整弁73を開く命令を与え,純水をバブラータンク61に適宜補充する。即ち,液面が所望の高さに維持されるように制御を行う。
【0039】
供給管12bには,パージ用ガスとして例えば空気(Air)を供給するパージ用ガス供給路78が介設されている。なお,パージ用ガスとしては窒素等を用いても良い。バブラータンク61内をパージするときは,パージ用ガス供給路78,供給管12bを介してバブラータンク61内にパージ用ガスを供給することにより,バブラータンク61内のオゾンガスを配管62に押し出して排気させるようになっている。さらに,バブラータンク61から配管62,フィルタ64,結露分離タンク65にパージ用ガスを供給することにより,配管62,フィルタ64,結露分離タンク65内のオゾンガスを後述する供給管12cに押し出して排気し,配管62,フィルタ64,結露分離タンク65,供給管12c内をパージすることもできる。このようなバブラータンク61,配管62,フィルタ64,結露分離タンク65等のパージを行うことにより,例えばガスクリーンユニット24のメンテナンス等の作業時に,人体に有害なオゾンガスが漏れることを防止でき,メンテナンス等を安全に行うことができる。
【0040】
配管62の途中には,蛇管部62aが形成されている。蛇管部62aは,例えば複数回互い違いに反対方向に向けて湾曲させるように蛇行させた形状をなしている。
【0041】
ペルチェ冷却器63は,蛇管部62aより下流側に設けられている。ペルチェ冷却器63は,図示しないペルチェ素子と,ペルチェ素子の放熱側を冷却する冷却水送水路81とを備えており,ペルチェ素子の吸熱面が配管62の外面に近接させられるようにして配設されている。そして,冷却水送水路81に冷却水を循環させることにより,ペルチェ素子の放熱側から熱を移送し,放熱側を強制的に冷却させるようになっている。
【0042】
フィルタ64は,箱状の筐体64a内に,筒状のフィルタ本体64bが備えられた構造になっている。フィルタ本体64bは,長さ方向を縦方向に向けた状態で備えられている。配管62の下流端は,筐体64aの側壁に接続され,フィルタ本体64bの外側において開口している。一方,筐体64aの天井部には,フィルタ本体64bの内側から流体を導出する配管83が接続されている。また,筐体64aの底部には,フィルタ本体64bの外側に溜まった液体や不純物等を排出する排液路84が接続されている。排液路84には,開閉弁85が介設されている。排液路84の下流端部は,結露分離タンク65の底部に接続されている。
【0043】
筐体64aの側壁には,液面を検出する液面センサー86が設けられている。液面センサー86の検出信号は,開閉弁85の開閉を制御するコントローラ87に送信される。開閉弁85は通常状態では閉じられているが,液面センサー86において液面が検出されたとき,コントローラ87から命令が与えられて開かれる。即ち,筐体64a内において液体が所定の高さまで溜まったとき,開閉弁85が開かれ,排液路84を介して結露分離タンク65に排液されるようになっている。
【0044】
配管83は,結露分離タンク65の上部に接続されている。結露分離タンク65の天井部には,オゾンガス供給管12の一部でありガスクリーンユニット24と流量調整弁25との間の部分を構成する供給管12cが接続されている。また,結露分離タンク65の底部には,結露分離タンク65内の液体をガスクリーンユニット24外に排液する排液路91が接続されている。排液路91には,開閉弁92が介設されている。
【0045】
結露分離タンク65の側壁には,液面を検出する液面センサー93a,93b,93cが,下からこの順に設けられている。液面センサー93a〜93cの検出信号は,開閉弁92の開閉を制御するコントローラ94に送信される。開閉弁92は通常状態では閉じられているが,例えば液面センサー93bにおいて液面が検出されたとき,コントローラ94から命令が与えられて開かれる。即ち,結露分離タンク65内において液体が所定の高さまで溜まったとき,開閉弁92が開かれ,排液路91によって排液されるようになっている。また,開閉弁92が開かれた後,例えば液面センサー93aにおいて液面が検出されると,コントローラ94から命令が与えられて,開閉弁92が再び閉じられる。即ち,結露分離タンク65内において液面が所定の適切な高さまで下がると,排液路91による排液が停止されるようになっている。
【0046】
かかる構成において,オゾンガス発生器23から供給された高温のオゾンガスは,バブラータンク61内の加熱された純水中に浸漬した供給管12bの端部から噴出させられ,純水中を浮上し,純水の水蒸気と混合した状態で,配管62によってバブラータンク61から導出される。なお,このときのバブラータンク61内の純水は,ヒータ72によって例えば約50℃〜80℃程度に昇温させておくことが好ましい。バブラータンク61から配管62に導出された直後のオゾンガスと蒸気との混合流体は,高温状態となっているが,蛇管部62a内の蛇行した流路を通過する間に,流体の熱が蛇管部62aを介して大気中に放熱される。これにより,混合流体が空冷される。空冷後,配管62内の流体は,ペルチェ冷却器63によってさらに効率的に冷却され,常温以下にされる。こうして冷却されることにより,オゾンガスと混合していた蒸気が凝縮して水滴となるが,その際,オゾンガス中に含まれていた金属成分が水滴に取り込まれ,オゾンガスから分離される。その後,配管62内のオゾンガスと水滴がフィルタ64に流入すると,水滴や異物はフィルタ本体64bの外側に捕集され,オゾンガスはフィルタ本体64bの内側に流入し,配管83を介して結露分離タンク65内に導入される。結露分離タンク65内においては,オゾンガスが滞留させられる間に,オゾンガスに含まれていた細かいミストは,結露分離タンク65の下部に落下し,オゾンガスから分離される。こうして水分が分離させられた後,供給管12cによって結露分離タンク65からオゾンガスが導出されるようになっている。
【0047】
このようにして,オゾンガスに蒸気を混合させた後,蒸気を結露させることにより,オゾンガス発生器23においてオゾンガスを発生させる際にオゾンガスに混入した金属成分を水滴に取り込ませ,水滴と共にオゾンガスから除去することができる。即ち,金属成分が低減された清浄なオゾンガスをチャンバー2内のウェハWに供給できるので,ウェハWに金属成分による悪影響が発生することを防止できる。
【0048】
なお,上記のように,ペルチェ冷却器63によって冷却する前に,蛇管部62aにおいて自然に空冷させることにより,流体の冷却に要するコストの低減を図ることができる。また,蛇管部62aにおいて,流体を比較的遅い冷却速度で冷却させることにより,金属成分の捕集効果を高めることができる。
【0049】
図1に示すように,排出管6には,排出管6内の流路6aの開閉及び流量調整を行う流量調整弁95が介設されている。この流量調整弁95の開度や,前述した流量調整弁22,25の開度をそれぞれ調節することにより,チャンバー2内の圧力を所定の値に調節することができる。
【0050】
次に,以上のように構成された基板処理装置1におけるウェハWの処理について説明する。まず,チャンバー本体2aから蓋体2bが外され,ウェハWがチャンバー本体2a内に収納され,蓋体2bによってチャンバー本体2aの上面開口が閉じられる。チャンバー2内には密閉された処理空間が形成される。そして,図示しないヒータによってチャンバー2内のウェハWが昇温される。
【0051】
ウェハWが昇温された後,流量調整弁25,95が開かれ,オゾンガス発生器23からオゾンガス供給管12,合流部15,主供給管5を介して,チャンバー2内に所定濃度のオゾンガスが供給される。オゾンガス発生器23から供給されたオゾンガスは,ガスクリーンユニット24において浄化された後,制御部50による流量調整弁25の調節により,所定流量に制御されながら,チャンバー2内に供給される。チャンバー2内の雰囲気は,供給されたオゾンガスによって排出管6に押し出され,排気される。こうして,チャンバー2内がオゾンガス雰囲気によって充填される。
【0052】
チャンバー2内がオゾンガスによって充填された後,流量調整弁22が開かれ,チャンバー2内にオゾンガスと蒸気とが同時に供給される。このオゾンガスと蒸気との混合流体により,ウェハWの表面に塗布されたレジストが水溶化(酸化)される。蒸気発生器21から供給された蒸気,オゾンガス発生器23から供給されたオゾンガスは,それぞれ蒸気供給管11内の流路11a,オゾンガス供給管12内の流路12aを通過して,合流部15に導入され,合流部15において互いに合流させられた後,主供給管5内の流路5aに流入して,チャンバー2内に導入される。
【0053】
蒸気が合流部15に流入する際,蒸気は蒸気流量測定器32によってその流量が測定される。図2に示す蒸気流量測定器32において,蒸気は,ダイアフラム41の上流側である流路11aから,開口40を通過して,ダイアフラム41の下流側である流路31に流れ込み,流路31において流路11aに対して略直角方向に向かい,流路31から流路5aに流出する。ダイアフラム41は,流路11aにおける蒸気の圧力Pと流路31における流体の圧力Pとの差圧ΔPにより,流路11a側から流路31側に向かって押され,流路31側へ凸状に突出するように変形する。従って,ダイアフラム41にひずみが生じ,ひずみゲージ42の検出値Rが変化する。そして,蒸気流量測定器32の演算部45において,検出値Rから流量の測定値Qが求められ,その測定値Qが制御部50に送信され,制御部50によって監視される。
【0054】
また,オゾンガスが合流部15に流入する際,オゾンガスはオゾンガス流量測定器33によってその流量が測定される。オゾンガス流量測定器33において,オゾンガスは,ダイアフラム41の上流側である流路12aから,開口40を通過して,ダイアフラム41の下流側である流路31に流れ込み,流路31において流路12aに対して略直角方向に向かい,流路31から流路5aに流出する。ダイアフラム41は,流路12aにおけるオゾンガスの圧力Pと流路31における流体の圧力Pとの差圧ΔPにより,流路12側から流路31側に向かって押され,流路31側へ凸状に突出するように変形する。従って,ダイアフラム41にひずみが生じ,ひずみゲージ42の検出値Rが変化する。そして,オゾンガス流量測定器33の演算部45において,検出値Rから流量の測定値Qが求められ,その測定値Qが制御部50に送信され,制御部50によって監視される。
【0055】
このように,合流部15に導入される蒸気とオゾンガスの各流量は,蒸気流量測定器32,オゾンガス流量測定器33によってそれぞれ測定され,これらの各測定値Q,Qがそれぞれ所定の値になるように,制御部50の制御によって,それぞれ所定の値に調節される。例えば,測定値Q,Qがそれぞれ約3[リットル/min](5×10−5[m/s])程度になるように制御される。また,チャンバー2内の圧力は,例えば約75[kPa]程度に調節される。
【0056】
混合流体によるレジスト水溶化処理が終了すると,流量調整弁22,25が閉じられ,オゾンガスと蒸気の供給が停止される。そして,流量調整弁27が開かれ,窒素ガス供給源26から窒素ガス供給管13,合流部15,主供給管5を介して,チャンバー2内に窒素ガスが供給される。これにより,チャンバー2内のオゾンガスと蒸気が窒素ガスによって押し出され,排出管6によって排気される。
【0057】
こうして,チャンバー2内が窒素ガスによってパージされた後,チャンバー本体2aから蓋体2bが外され,ウェハWがチャンバー2から搬出される。以上のようにして,基板処理装置1における一連の処理工程が終了する。
【0058】
かかる基板処理装置1の蒸気流量測定器32,オゾンガス流量測定器33によれば,ダイアフラム41が流体に押されることにより生じるひずみを利用して,流体の流量を好適に測定できる。流路11a(12a)と流路31との間に開口40を設けただけの比較的単純な構造であるため,ダイアフラム41付近に不純物等が付着したり滞留したりするおそれも少なく,高い清浄度を保つことができる。また,故障の可能性も低い。特に,従来のフロート式等の流量測定器では,流路の形状が複雑なため,蒸気の流量を測定する場合に結露が生じ測定ができなくなる心配があったが,蒸気流量測定器32部分の流路は単純な形状であるため,結露が生じる危険性が低い。万一結露が発生しても,構造が単純であるため,測定誤差への影響が少なく,精度の良い測定を行うことが可能である。
【0059】
また,蒸気流量測定器32,オゾンガス流量測定器33によれば,蒸気とオゾンガスの流量を精度良く確実に測定できるので,これらの測定値に基づいた制御部50における流量の制御も,正確に行われる。従って,チャンバー2内に蒸気とオゾンガスが適切な流量で供給され,チャンバー2内の圧力も適切に調節される。これにより,信頼性の高い基板処理を行うことができる。
【0060】
以上,本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
本実施の形態では,流路11a,12aの流路断面形状は略円形とし,ダイアフラム41,開口40の形状もそれぞれ略円形としたが,これらの形状は円形には限定されず,例えば楕円形であっても良い。
【0062】
本実施の形態では,ダイアフラム41の下流側である流路31は略角筒形状で,ダイアフラム41の上流側である流路11a(12a)と略直角に向いているとしたが,ダイアフラム41の下流側の流路の形状は,例えば図6に示す流路31’のように,略半円筒形状であっても良い。図6において,本体30’の内部には,横方向(図6においては手前から後方に向かう方向)に向かう細長い略半円筒形状,即ち開口断面形状が略半円形状である内面が設けられており,この内面に囲まれた内部空間が流路31’となっている。かかる本体30’の内面は,ダイアフラム41が設けられた平面部30a’と,略半円柱面状の曲面である曲面部30b’とを有している。即ち,ダイアフラム41と対向する面(図6においては底面)が曲面に形成されている。また,平面部30a’が上面となっており,曲面部30b’は下方に向かって凹状に設けられている。流路11a(12a)の下流端部は,流路31’の上方から平面部30a’に対して接続されており,また,平面部30a’及び流路31’の流れ方向に対して略垂直に設けられている。ダイアフラム41は,上記実施形態と同様に,流路11a(12a)の下流端部と流路31’の上部との間を仕切るように設けられている。ダイアフラム41の下面は平面部30a’と連続した平面になっており,曲面部30b’と対向している。かかる構成によれば,流路31’を断面略長方形状にした場合(図6において一点鎖線)よりも,流路31’の容積を小さくすることができ,本体30’の小型化を図ることができる。また,本体30’の内面に円滑な曲面部30b’を設け,内面の角部を少なくすることにより,流路31’内の流体の流れに対する抵抗が抑制され,流体を効率的に送ることができる。
【0063】
また,例えば図7に示すように,流路11a(12a)とダイアフラム41との間に,流路11a(12a)より大きな内径を有する空間(アンダーカット部)100を設け,ダイアフラム41の外径を空間100の内径に合わせ,流路11a(12a)の内径より大きくしても良い。そうすれば,例えば流路11a(12a)の内径が比較的小さい場合でも,ダイアフラム41の外径を大きくし,ひずみが十分に大きく発生するような構造にすることができる。従って,流量測定を精度良く行うことができる。
【0064】
本実施の形態では,流路11a(12a)と流路31との間にダイアフラム41を設け,流路11a(12a)から流路31に流入する流量を測定する形態を説明したが,例えば図8に示すように,流路11a(12a)の途中にダイアフラム41を設け,流路11a(12a)内を流れる途中の流量を測定するようにしても良い。
【0065】
本実施の形態では,ウェハWにレジスト水溶化処理を行う基板処理装置1に備えた蒸気流量測定器32,オゾンガス流量測定器33について説明したが,本発明にかかる流量測定器は,かかる基板処理装置1に備えられるものに限定されず,様々な装置やシステムの配管における流量測定に適用することができる。勿論,測定対象とされる流体は蒸気やオゾンガス等には限定されず,他の気体であっても良く,さらには液体であっても良い。なお,本実施の形態において蒸気やオゾンガス等の処理流体が供給される被処理基板は,ウェハに限定されるものではなく,例えばLCD用のガラス基板,フォトマスク基板,CD基板等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は,流量測定器及び流量測定方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】基板処理装置の構成を説明する説明図である。
【図2】蒸気流量測定器及びオゾンガス流量測定器を備えた合流部の縦断面図である。
【図3】図2におけるI−I線による縦断面図である。
【図4】図2におけるII−II線による縦断面図である。
【図5】ガスクリーンユニットの構成を説明する説明図である。
【図6】別の実施形態にかかる合流部の縦断面図である。
【図7】他の実施形態にかかる蒸気流量測定器又はオゾンガス流量測定器の縦断面図である。
【図8】蒸気供給管又はオゾンガス供給管の途中に蒸気流量測定器又はオゾンガス流量測定器を備えた実施形態にかかる縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
W ウェハ
1 基板処理装置
2 チャンバー
11 蒸気供給管
11a 流路
12 オゾンガス供給管
12a 流路
15 合流部
22 流量調整弁
25 流量調整弁
31 流路
32 蒸気流量測定器
33 オゾンガス流量測定器
40 開口
41 ダイアフラム
42 ひずみゲージ
45 演算部
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を通過する流体の流量を測定する測定器であって,
開口を設けたダイアフラムを備え,
前記流体は,前記ダイアフラムの上流側の流路から,前記開口を通過して,前記ダイアフラムの下流側の流路に流れる構成とし,
前記ダイアフラムのひずみを検出するためのひずみゲージと,前記ひずみゲージの検出値に基づいて前記流量を検出する演算部とを備えたことを特徴とする,流量測定器。
【請求項2】
前記演算部は,前記ひずみゲージの検出値に基づいて,前記ダイアフラムの上流側における流体の圧力Pと前記ダイアフラムの下流側における流体の圧力Pとの差圧ΔPを求めることを特徴とする,請求項1に記載の流量測定器。
【請求項3】
前記演算部は,前記流量Qを次式:Q=CA(2ΔP/ρ)1/2(C:定数,A:前記開口の開口面積,ΔP:前記ダイアフラムの上流側における流体の圧力Pと前記ダイアフラムの下流側における流体の圧力Pとの差圧(ΔP=P−P),ρ:前記流体の密度)に基づいて算出することを特徴とする,請求項1又は2に記載の流量測定器。
【請求項4】
前記流体は水蒸気であることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の流量測定器。
【請求項5】
前記ダイアフラムは,樹脂モールドによって形成されたことを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載の流量測定器。
【請求項6】
前記ダイアフラムの下流側の流路は,前記ダイアフラムと対向する面が曲面に形成された略半円筒形状の内部空間であることを特徴とする,請求項1〜5のいずれかに記載の流量測定器。
【請求項7】
流路を通過する流体の流量を測定する方法であって,
前記流体を,ダイアフラムの上流側から前記ダイアフラムに設けた開口に通過させ,前記ダイアフラムの下流側に流入させ,
前記ダイアフラムのひずみに基づいて,前記流量を検出することを特徴とする,流量測定方法。
【請求項8】
前記流量Qを次式:Q=CA(2ΔP/ρ)1/2(C:定数,A:前記開口の開口面積,ΔP:前記ダイアフラムの上流側における流体の圧力Pと前記ダイアフラムの下流側における流体の圧力Pとの差圧(ΔP=P−P),ρ:前記流体の密度)に基づいて求めることを特徴とする,請求項7に記載の流量測定方法。
【請求項9】
前記流体は水蒸気であることを特徴とする,請求項7又は8に記載の流量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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