説明

流量測定方法、流量測定装置およびこの流量測定装置を備えた水力機械

【課題】流路系統が複雑であっても、より一層精度の高い流量データを得ることのできる流量測定方法、およびこの流量測定装置を備えた水力機械流量測定装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る流量測定方法は、流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、前記超音波伝播経路上で測定された平均流速(ステップ1)と、流れ解析で求めた前記超音波伝播経路に相当する位置での平均流速が(ステップ3)一致するまで流れ解析の流量を変えた流れ解析を行い(ステップ2)、このときの流れ解析の流量をもって実際の真の流量と設定する(ステップ4)方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水車やポンプ水車等の流体機械の現地試験における流量の測定に好適な流量測定方法、流量測定装置およびこの流量測定装置を備えた水力機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フランシス形の水車やポンプ水車等の水力機械について流量測定試験を現地で行う場合、種々の測定方法があるものの、その仕様や条件によって流量測定方法が規格されている。中でも、超音波流量計を用いて流量を測定する技術は、機器装置が比較的取り扱い容易である点からしてより多く採用されている。
【0003】
この超音波流量計を用いて流量を測定する技術は、図9に示すように、流体が流速Vで流れている内径dの流路1に、一対の超音波送受信器2aおよび超音波送受信器2bを設置し、流量の計測を行っている。
【0004】
この場合、上流側の超音波送受信器2aから下流側の超音波送受信器2bに向って超音波経路3上を超音波が発射されると、管内流速Vの分だけ伝播速度が増加するため、音速をCとすると、伝播時間tは、
[数1]
=d/{sinθ(C+Vcosθ)} ……(1)
として表わすことができる。
【0005】
なお、厳密には、管壁内の伝播時間や電気的な遅延時間など一定の遅れ時間を加算する必要があるが、ここでは簡略化のため省略する。
【0006】
ところで、逆に、下流側から上流側へ向って超音波を発射した場合、伝播時間tは、
[数2]
=d/{sinθ(C−Vcosθ)} ……(2)
として表わすことができる。
【0007】
(1)式と(2)式とから、伝播時間差dt=t−tは、
【数3】

【数4】

【0008】
ここで、音速Cは、流体の温度、圧力等の状態によって変化するので、(4)式から除外するために、平均伝播時間t=(t+t)/2=d/(Csinθ)を導入すると、
【数5】

【0009】
したがって、超音波伝播経路における平均流速は、
【数6】

【0010】
但し、この平均流速は、あくまでも超音波伝播経路上の平均流速であり、管軸に垂直な断面上の真の平均流速Vとは、通常異なる。このため、V=K・Vとする流量補正係数Kを用いると、求める流量Qは、
【数7】

【0011】
なお、補正係数Kは、流量が変化すると流速分布が変わるので、レイノルズ数をパラメータとする計算式が適用されている。
【0012】
この流量測定方法は、従来から好まれて多く用いられてきたものであるが、管軸を横断するルート(パス)に沿って超音波を発信する1パス方式であり、管路断面内の流速分布が不均一であると、測定誤差が大きくなるので、相対流量の測定方法として位置付けられている。
【0013】
最近では、一つの管路内に4本の伝播経路で超音波を発信し、各々の位置での速度を求め、この速度分布から断面全体の流量を求める4パス方式で絶対流量を求める計測方法が実用化されつつある。
【0014】
しかし、現状では、まだ1パス方式を採用することが多い。このため、流速分布に応じた適正な補正係数を選択することができれば、1パス方式でも不均一な流速分布をもつ流れの流量を精度よく計測することが可能になり、実用上有益である。
【0015】
ところで、河川や用水路等の開水路では、有限要素法を用いたシミュレーションによる流量分布データに基づいて流量の校正係数を求め、測定された流速から補正流量を計算する方法が、例えば特許文献1等で提案されている。
【0016】
また、JIS規格外の大口径配管の流量を計測する場合、配管系統をモデル化し、そのモデルから解析によって流量を求めておき、計測した実流量を予めモデルから求めておいた流量に突き合せて流量補正を行う流量計測定方法が、例えば特許文献2等で提案されている。
【特許文献1】特開2004−69615号公報
【特許文献2】特開2004−251695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明方法が適用されるフランシス形の水車やポンプ水車等の水力機械でも、有限要素法にこだわらないが、流路の流れ解析を行い、得られた流速分布データを基に実測の流速から補正流量を算出することは可能である。
【0018】
しかし、フランシス形の水車やポンプ水車等の水力機械では、水圧鉄管や吸出し管等の流路系統が分岐・合流流路を持つ複雑な配管系統になっている。
【0019】
このような複雑な流路系統に上記特許文献1,2に記載の流量計測定方法を適用したとしても、適正な流れ解析を行っていないと、実際と異なった流速分布になり、誤差の大きい流量計測になる心配がある。
【0020】
したがって、水力機械の分野では、現地で流量測定を行う場合、流量系統が複雑であっても高精度の流量測定を行い得る流量測定手法の実現が求められていた。
【0021】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、流路系統が複雑であっても、より一層精度の高い流量データを得ることのできる流量測定方法、およびこの流量測定装置を備えた水力機械流量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、前記超音波伝播経路上で測定された平均流速と、流れ解析で求めた前記超音波伝播経路に相当する位置での平均流速が一致するまで流れ解析の流量を変えた流れ解析を行い、このときの流れ解析の流量をもって実際の真の流量と設定する方法である。
【0023】
また、本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項2に記載したように、流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、流れ解析の流量を種々変えた流れ解析を行い、この解析結果から求めた超音波伝播経路に相当する位置での平均流速とそのときの解析流量を対応させたデータセットを作成し、前記超音波流量計により測定された超音波伝播経路上における平均流速から前記データセットを用いて実際の真の流量を補間して求める方法である。
【0024】
また、本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項3に記載したように、流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、複数の超音波伝播経路を設定し、設定したそれぞれの超音波伝播経路での平均流速を測定するとともに、流れ解析により前記複数の超音波伝播経路に相当する位置でのそれぞれの平均流速を求め、計測された平均流速の代表値と流れ解析による平均流速の代表値とが一致するまで流れ解析の流量を変えた流れ解析を行い、このときの流れ解析の流量をもって実際の真の流量と設定する方法である。
【0025】
また、本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項4に記載したように、流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、複数の超音波伝播経路を設定し、設定したそれぞれの超音波伝播経路での平均流速を測定するとともに、流れ解析の流量を種々変えた流れ解析を行い、この解析結果から求めた前記複数の超音波伝播経路に相当する位置でのそれぞれの平均流速の代表値とそのときの解析流量を対応させたデータセットを作成し、前記測定された複数の超音波伝播経路上における平均流速の代表値から前記データセットを用いて実際の真の流量を補間して求める方法である。
【0026】
また、本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項5に記載したように、流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、前記流路が分岐流路を備えているとき、その分岐流路をモデル化するとともに、分岐位置よりも上流側の流路をモデル化して流れ解析を行う一方、前記流路の下流側に合流流路がある場合、その合流流路をモデル化し、合流位置から下流側の流路をモデル化して流れ解析を行う方法である。
【0027】
また、本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項6に記載したように、請求項5記載の流量測定方法において、分岐流路を備えた流路をモデル化する際、前記分岐流路の分岐位置よりも上流側の流路径をDとすると、流れ解析の入口境界条件を、分岐位置よりも25D以上で、かつ40D以下に離れた上流側に設定した方法である。
【0028】
また、本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項7に記載したように、請求項5記載の流量測定方法において、他の流体機械への分岐流路の流れ解析の出口境界条件を流量条件で規定した方法である。
【0029】
また、本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項8に記載したように、流体機械よりも上流側に位置する流路または下流側に位置する流路のそれぞれに超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行う際に、前記超音波流量計に設置する流路に対し、予め流れ解析を行い、流れ解析による流速分布が均一になる直線上に超音波伝播経路を設定する方法である。
【0030】
また、本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項9に記載したように、流体機械よりも上流側に位置する流路または下流側に位置する流路のそれぞれに超音波送受信器を設置した超音波流量計を用いて流量測定を行う際に、前記超音波流量計を設置する流路に対し、予め流れ解析を行い、前記中央流量計を設置する流路位置の中心軸に垂直な断面線上の流速分布が最も均一になる直径を選定し、この直径が前記断面線への投影に相当する超音波伝播経路になるように設定した方法である。
【0031】
また、本発明に係る流量測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項10に記載したように、流量の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計と、流路形状等の入力情報を基に流れ解析を行う流れ解析演算装置と、前記超音波流量計で測定された超音波伝播経路上での平均流速の情報と前記流れ解析演算装置で行った流れ解析に基づく流速分布情報とが一致するまで演算し、一致したときに真の流量を設定するコントローラ装置とを備えたものである。
【0032】
また、本発明に係る流量測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項11に記載したように、流量の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計と、この超音波流量計で測定した平均流速データ情報を基にして真の流量を設定するパソコンとを備えたものである。
【0033】
また、本発明に係る流量測定方法は、上述の目的を達成するために、請求項12に記載したように、流量の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計と、流路形状等の入力情報を基に流れ解析を行うとともに、流れ解析の流量を種々変えた流れ解析を行い、この解析結果から求めた超音波伝播経路に相当する位置での平均流速とそのときの解析流量を対応させたデータセットを作成する流れ解析演算装置と、前記超音波流量計により測定された超音波伝播経路上における平均流速の情報と前記流れ解析演算装置で行った流れ解析に基づくデータセット情報とが一致するまで演算し、一致したときに真の流量を設定するコントローラ装置と、このコントローラ装置で演算した情報を記憶する記憶装置とを備えたものである。
【0034】
また、本発明に係る流量測定装置は、上述の目的を達成するために、請求項13に記載したように、記憶装置は、コントロール装置で演算した平均流量から真の流量を補間して算出するための流れ解析に基づくデータセットを記憶する構成にしたものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る流量測定方法および流量測定装置は、超音波送受信器により超音波伝播経路上の平均流速を測定するとともに、モデル化した流路の流れ解析を行った後、モデル化した流路の超音波伝播経路に相当する位置における平均流速を算出し、上述実平均流速とモデルから算出した流速とが一致した真の流量を設定するので、実流路内の流速分布が不均一であっても現地での流量測定を高い精度で求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る流量測定方法、流量測定装置およびこの流量測定装置を備えた水力機械の実施形態を、フランシス形の水車およびポンプ水車を例に採り、図面および図面に付した符号を引用して説明する。
【0037】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る流量測定方法の第1実施形態を示すフローチャート図である。
【0038】
本実施形態は、先ず、流路に設置した超音波送受信器およびこれらのコントロール装置によって超音波伝播経路上の平均流速Vmを測定する(ステップ1)。
【0039】
この場合、超音波流量計の設置位置は、水車またはポンプ水車の上流側に配置する上池から水車等に動力水を案内する水圧鉄管でもよく、あるいは水車等の下流側に配置して下池に動力水を供給する吸出し管であってもよい。
【0040】
次に、超音波流量計を設置した流路のモデル化を行い、モデル化した流量に予め定められた流量Qcを流し、流れ解析を行う(ステップ2)。
【0041】
流れ解析が終了すると、超音波流量計で流量測定を行った超音波伝播経路に相当する位置(直線上の位置)における平均流速Vcを算出する(ステップ3)。
【0042】
次に、モデル上の平均流速Vcと実測上の平均流速Vmとを比較する(ステップ4)。ステップ4でVc=Vmの場合(YES)、流れ解析を行った流量Qcをもって真の流量をQmと設定する(ステップ5)。
【0043】
一方、ステップ4での比較でモデル上の平均流速Vcと実測上の平均流量Vmとが異なる場合(NO)、流量Qcを変更し、新たに流れ解析を行い、モデル上の平均流速Vcを算出し、実測上の平均流速Vmと比較する。これをVc=Vmになるまで繰り返す。
【0044】
なお、初期の流量Qcを決めるとき、通常、超音波流量計の測定で用いられている流量補正係数を用いて、実測上の平均流速Vmから計算される概算流量で、繰返し計算の回数を減らしてもよい。
【0045】
このように、本実施形態は、超音波送受信器で測定した実測上の平均流速とモデルから流れ解析によって算出した計算上の平均流速とが一致する場合、真の流量とする構成を採るので、実流路内の流速分布が不均一の場合であっても現地での流量測定を高い精度で求めることができる。
【0046】
なお、本実施形態は、平均流速Vmを測定する際、超音波流量計を用いたが、この超音波流量計に限ることなく他の流量計でもよい。
【0047】
[第2実施形態]
図2は、本発明に係る流量測定方法の第2実施形態を示すフローチャート図である。
【0048】
本実施形態は、流れ解析による超音波伝播経路相当位置での平均流速と解析流量とのデータセットを作成するため、複数種類の流量における流れ解析を行うものであり、ステップ21〜ステップ24は第1実施形態のステップ1〜ステップ4に対応する。
【0049】
すなわち、n組のデータセットを作成する(ステップ25)ために、流量Qciによる流れ解析(ステップ22)をi=nまで順次行い(ステップ24)、それぞれの流量に対する超音波伝播経路相当位置までの平均流速Vciを求める(ステップ23)。
【0050】
ステップ25で作成したn組のデータセットのうち、超音波流量計による測定流量、つまり真の流量は、測定された超音波伝播経路上の平均流速Vmから(ステップ21)流れ解析によるデータセットを用い、値を補間して算出する(ステップ26)。
【0051】
このように、本実施形態は、流れ解析による超音波伝播経路相当位置での平均流量と解析流量とのn組のデータセットを作成するため、流量Qciによる流れ解析をi=n回まで行い、それぞれの流量Qciに対する超音波伝播経路相当位置での平均流速Vciを求め、求めた平均流速Vciに対し、実測の平均流速Vmで補間し、真の流量Qmを算出する構成にしたので、実流路内の流速分布が不均一の場合であっても現地での流量測定を高い精度で求めることができる。
【0052】
なお、本実施形態は、n組のデータセットを超音波流量計の記憶装置に入力しておかなくとも、超音波伝播経路上の平均流速を測定し、後から真の流量を算出することもできる。
【0053】
[第3実施形態]
図3は、本発明に係る流量測定方法の第3実施形態を示す図である。
【0054】
なお、図3中、(a)は、流路に対して複数組の超音波送受信器を対向配置させた例を示す図であり、(b)は、フローチャート図である。
【0055】
本実施形態は、図3中の(a)に示すように、流路10を境に上流側超音波送受信器11a,11bと下流側超音波送受信器12a,12bとを組み合せて設置するとともに、2組の超音波伝播経路13a,13bを設定し、それぞれの伝播経路13a,13b上の平均流速の代表値、例えば算術平均値から真の流量を求めようとするものである。
【0056】
図3中、(b)は、超音波伝播経路を2つ設定したときの真の流量を算出するときのフローチャートを示す図である。
【0057】
先ず、2つの超音波伝播経路上の平均流速Vm1,Vm2を測定し(ステップ31)、これらの代表値として算術平均値Vmaveを算出する(ステップ32)。
【0058】
次に、図1で示した第1実施形態と同様に、超音波流量計を設置した流路をモデル化し、予め定められた流量Qcで流れ解析を行う(ステップ33)。
【0059】
流れ解析が終了した後、超音波流量計で測定を行った2つの超音波伝播経路に相当する位置における平均流速Vc1,Vc2を算出し(ステップ34)、それらの代表値(算術平均値)Vcaveを求める(ステップ35)。VcaveとVmaveを比較し(ステップ36)、両データが同一である場合(YES6)、流れ解析を行った流量Qcをもって真の流量Qmとする(ステップ37)。
【0060】
一方、VcaveとVmaveが異なる場合(NO)、流量Qcを変更し、ステップ33で新たに流れ解析を行い、Vcaveを算出し、Vmaveと比較し、Vcave=Vmaveとなるまで繰り返す。
【0061】
なお、代表値には、上述の算術平均値のほかに幾何平均値でもよい。また、初期のQcを決めるとき、超音波流量計の測定で用いられる流量補正係数で、測定した平均流速の代表値Vmaveを補正し、補正した平均流速に基づいて流量を算出してもよい。
【0062】
このように、本実施形態は、4つの超音波送受信器11a,11b,12a,12bで2組の超音波伝播経路13a,13bを形成し、形成した超音波伝播経路13a,13bで測定した平均実流速Vm1およびVm2と、モデルを用いて算出した平均流速Vc1,Vc2とを互いが対応する流速で比較して真の流量を算出するので、実流路内の流速分布が不均一の場合であっても、現地での流量測定を高い精度で求めることができる。
【0063】
なお、本実施形態は、超音波送受信器11a,11b,12a,12bを管軸に対して対向配置させたが、この例に限らず、例えば、図3中、(c)に示すように、超音波送受信器11a,11b,12a,12bを位置をずらして上流側、下流側にそれぞれ配置してもよい。
【0064】
[第4実施形態]
図4は、本発明に係る流量測定方法の第4実施形態を示す図である。
【0065】
なお、図4中、(a)は、流路に対して複数組の超音波送受信器を対向配置させた例を示す図であり、(b)はフローチャート図である。
【0066】
本実施形態は、図3で示した第3実施形態と同様に、流路に対して4つの超音波送受信器11a,11b,12a,12bを対応配置させるとともに、流路における2つの超音波伝播経路13a,13b上の平均流速の代表値から真の流量を求めようとするものである。但し、測定された流速から流れ解析結果を基にした流量の算出手法は、図2で示した第2実施形態と同様に、流れ解析による超音波伝播経路相当位置での平均流速の代表値と解析を行った流量とのデータセットから補間して算出する。
【0067】
図4中、(b)は、超音波伝播経路を2つ設定したときの真の流量を算出するときのフローチャート図であり、ステップ41〜47は第3実施形態のステップ31〜37に対応する。
【0068】
本実施形態は、n組のデータセットを作成するために、流量Qciにおける流れ解析をi=nまで順次行い(ステップ43、ステップ44、ステップ45、ステップ46)、それぞれの流量に対する2つの超音波伝播経路相当位置での平均流速Vci1およびVci2を求め(ステップ44)、それらの代表値として各流量に対する算術平均値Vcaveiを算出する(ステップ45)。
【0069】
そして、超音波流量計による測定流量、すなわち、真の流量は、2本の超音波伝播経路上の平均流速Vm1,Vm2を測定し(ステップ41)、これらの代表値(算術平均値)Vmaveから流れ解析によるデータセットを用いて値を補間して真の流量Qmが算出される(ステップ42、ステップ48、ステップ49、ステップ47)。
【0070】
このように、本実施形態は、モデル化した超音波伝播経路相当位置での平均流速を求め、求めた平均流速から平均流量代表値Vcaveiを算出し、算出した平均流量代表値をn回繰返してデータセットを作成し、作成したデータセットを超音波伝播経路で測定した平均流速Vc1,Vc2で補間して真の流量を算出するので、実流路内の流速分布が不均一の場合であっても、現地での流量測定を高い精度で求めることができる。
【0071】
[第5実施形態]
図5は、本発明に係る流量測定方法および流量測定装置の第5実施形態を示す概念図である。
【0072】
本実施形態は、流れ解析演算装置14とコントロール装置15とを備え、流れ解析演算装置14で与えられた流路形状や解析条件等の情報を基に流れ解析を行う一方、コントロール装置15で、流れ解析演算装置14で行って解析情報と超音波送受信器11a,12aで検出した超音波伝播経路13aを通る動力水の流速Vの情報とを基に図1で示した第1実施形態におけるフローチャートあるいは図3で示した第3実施形態におけるフローチャートに沿って演算を行い、真の流量を算出するものである。
【0073】
このように、本実施形態は、流路形状等の情報を与えて流れ解析を行う流れ解析演算装置14と、この流れ解析演算装置14からの情報と測定した動力水の流速の情報とを基に第1実施形態におけるフローチャートあるいは第3実施形態におけるフローチャートに沿って演算を行い、真の流量を算出するので、実流路内の流速分布が不均一の場合であっても、現地での流量測定を高い精度で求めることができる。
【0074】
なお、本実施形態は、流れ解析演算装置14とコントローラ装置15とを備えたが、この例に限らず、現地で超音波流量計による超音波伝播経路上の平均流速を測定し、測定したデータを持ち帰ってEWSやパソコン等で流れ解析を行って真の流量を求めてもよい。
【0075】
[第6実施形態]
本実施形態は、図6に示すように、コントロール装置15に測定された平均流速Vmから真の流量Qmを補間して算出するための流れ解析に基づくデータセットを記憶する記憶装置16を組み込み、真の流量を求めてもよい。
【0076】
この場合、データセットの記憶装置16は、物理的にコントロール装置15に組み込まなくとも真の流量を求める際、流量計算の校正モデルとして参照できればよい。
【0077】
[第7実施形態]
図7は、動力水の流れ解析を行う際、実機をモデル化した本発明に係る流量測定方法および流量測定装置の第7実施形態を示す概念図である。
【0078】
なお、図7中、(a)は一つの水圧鉄管を複数の分岐水圧鉄管にし、各分岐水圧鉄管に水車と吸出し管を備えた概念図であり、(b)は分岐される前の水圧鉄管に入口境界を設定したことを示す図である。
【0079】
本実施形態は、例えば、2台の水車17a,17bおよび2本の吸出し管18a,18bを備えた水圧鉄管19が上流側で第1分岐水圧鉄管20aと第2分岐水圧鉄管20bとに分岐されているとき、流量校正のための流れ解析を行う際、分岐流量である他号機17b側の水圧鉄管20bについてモデル化するとともに分岐位置よりも充分に上流側に流れ解析の入口境界を設定したものである。
【0080】
これにより、本実施形態は、分岐流路との間で相互に及ぼす影響を考慮することができ、また、入口境界から分岐位置までの間に境界層が充分に発達するなど実際の流れに近い状態を模擬することができる。
【0081】
また、図7中、(b)に示すように、他号機側の出口境界条件を流量条件で規定することにより、色々な水車出力の組合せの運転パターンを想定した流れ解析を行うことができる。
【0082】
さらに、図7中、(b)で示すように、本実施形態は、分岐位置の上流側の水圧鉄管19の内径をDとすると、入口境界を分岐位置から25D〜40D離れたところに設けてモデル化している。そして、第1分岐水圧鉄管20aの破線で示す位置は、流量計の設置位置である。
【0083】
一方、管内流れが乱流の場合、入口で断面全体に亘って一様な流速分布である流れを、管壁側で境界層の充分に発達した流速分布を形成するのに必要な助走区間の長さLは、Kristein Nikuradseの実験式に従って、L=(25〜40)Dとして確保されている。
【0084】
なお、管路長さを必要以上に長くモデル化して流れ解析を行うのは、解析時間の観念から好ましくない。
【0085】
このような事情から、本実施形態では、水圧鉄管の分岐位置の上流側に25D以上、40D以下の助走区間を設けたものであり、この助走区間の確保によって水圧鉄管の分岐位置において実際に近い流速分布が得られ、流れ解析を効率的かつ高精度に行うことができる。
【0086】
[第8実施形態]
図8は、流れ解析を行う際、実機をモデル化した本発明に係る流量測定方法および流量測定装置の第8実施形態を示す概念図である。
【0087】
なお、図8中、(a)は動力水の流れ解析を行う際、動力水の流速分布の測定を示す概念図であり、(b)は、(a)で示した動力水の流速分布を等流速で表わした図である。
【0088】
本実施形態は、図8(a)に示すように、流路の動力水の流速分布を測定する際、管軸21に対し、交差し、上流側に上流側超音波送受信器11aと下流側超音波送受信器12aとが設置される。
【0089】
このように設置された上流側送受信器11a、下流側送受信器12aは、超音波伝播経路13aと管軸21の交点を含み、管軸21に垂直な断面線22を通る流速を測定する。
【0090】
この流速分布を、図8中の(b)で等流速分布等高速線23として表わした場合、断面線22の直径に沿った流速分布が最も均一となるのは、直線24の場合である。このため、直線24が断面線22への投影に相当する超音波伝播経路13aを選定すれば、比較的安定した流れに対する測定を行うことができ、誤差の少ない流量測定ができると考えられる。
【0091】
本実施形態は、このような事象を考慮したもので、上流側送受信器11aおよび下流側送受信器12aで動力水の流速分布を測定するとき、管軸21に垂直な断面線22の流速分布が最も均一になる直線24を選定し、選定した直線24の直径が断面線22への投影に相当する超音波伝播経路13aになるようにしたものである。
【0092】
したがって、本実施形態によれば、流量測定の際、より一層精度の高い流量測定を行うことができる。
【0093】
また、本実施形態は、流量測定位置前後の直管長さが比較的短く、動力水の流れの不均一性が高い場合であっても、高い精度の流量測定を行うことができる。
【0094】
なお、このように選定した超音波伝播経路に沿った流速分布を流れ解析結果から再度確認し、必要に応じて超音波伝播経路を変更すれば、さらに高精度の流量測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係る流量測定方法の第1実施形態を示すフローチャート図。
【図2】本発明に係る流量測定方法の第2実施形態を示すフローチャート図。
【図3】本発明に係る流量測定方法の第3実施形態を示す図で、(a)は、流路に対して複数台の超音波送受信器を対向配置させた例を示す図、(b)は、フローチャート図、(c)は、(a)の変形例を示す図。
【図4】本発明に係る流量測定方法の第4実施形態を示す図で、(a)は、流路に対して複数台の超音波送受信器を対向配置させた例を示す図、(b)は、フローチャート図。
【図5】本発明に係る流量測定方法および流量測定装置の第5実施形態を示す概念図。
【図6】本発明に係る流量測定方法および流量測定装置の第6実施形態を示す概念図。
【図7】本発明に係る流量測定方法および流量測定装置の第7実施形態を示す図で、(a)は、一つの水圧鉄管を複数の分岐水圧鉄管にし、各分岐水圧鉄管に水車と吸出し管を備えた概念図、(b)は、分岐される前の水圧鉄管に入口境界を設定したことを示す図。
【図8】本発明に係る流量測定方法および流量測定装置の第8実施形態を示す図で、(a)は、動力水の流れ解析を行う際、動力水の流速分布の測定を示す概念図、(b)は、(a)で示した動力水の流速分布を等流速で表わした図。
【図9】従来の動力水の流速分布を測定する図。
【符号の説明】
【0096】
1 流路
2a,2b 超音波送受信器
10 流路
11a,11b 上流側超音波送受信器
12a,12b 下流側超音波送受信器
13a,13b 超音波伝播経路
14 流れ解析演算装置
15 コントローラ装置
16 記憶装置
17a,17b 水車
18a,18b 吸出し管
19 水圧鉄管
20a 第1水圧鉄管
20b 第2水圧鉄管
21 管軸
22 断面線
23 等速分布等高線
24 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、前記超音波伝播経路上で測定された平均流速と、流れ解析で求めた前記超音波伝播経路に相当する位置での平均流速が一致するまで流れ解析の流量を変えた流れ解析を行い、このときの流れ解析の流量をもって実際の真の流量と設定することを特徴とする流量測定方法。
【請求項2】
流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、流れ解析の流量を種々変えた流れ解析を行い、この解析結果から求めた超音波伝播経路に相当する位置での平均流速とそのときの解析流量を対応させたデータセットを作成し、前記超音波流量計により測定された超音波伝播経路上における平均流速から前記データセットを用いて実際の真の流量を補間して求めることを特徴とする流量測定方法。
【請求項3】
流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、複数の超音波伝播経路を設定し、設定したそれぞれの超音波伝播経路での平均流速を測定するとともに、流れ解析により前記複数の超音波伝播経路に相当する位置でのそれぞれの平均流速を求め、計測された平均流速の代表値と流れ解析による平均流速の代表値とが一致するまで流れ解析の流量を変えた流れ解析を行い、このときの流れ解析の流量をもって実際の真の流量と設定することを特徴とする流量測定方法。
【請求項4】
流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、複数の超音波伝播経路を設定し、設定したそれぞれの超音波伝播経路での平均流速を測定するとともに、流れ解析の流量を種々変えた流れ解析を行い、この解析結果から求めた前記複数の超音波伝播経路に相当する位置でのそれぞれの平均流速の代表値とそのときの解析流量を対応させたデータセットを作成し、前記測定された複数の超音波伝播経路上における平均流速の代表値から前記データセットを用いて実際の真の流量を補間して求めることを特徴とする流量測定方法。
【請求項5】
流路の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行うとき、超音波伝播経路上で測定された平均流速から流れ解析で求めた流速分布データに基づいて真の流量を求める流量測定方法において、前記流路が分岐流路を備えているとき、その分岐流路をモデル化するとともに、分岐位置よりも上流側の流路をモデル化して流れ解析を行う一方、前記流路の下流側に合流流路がある場合、その合流流路をモデル化し、合流位置から下流側の流路をモデル化して流れ解析を行うことを特徴とする流量測定方法。
【請求項6】
請求項5記載の流量測定方法において、分岐流路を備えた流路をモデル化する際、前記分岐流路の分岐位置よりも上流側の流路径をDとすると、流れ解析の入口境界条件を、分岐位置よりも25D以上で、かつ40D以下に離れた上流側に設定したことを特徴とする流量測定方法。
【請求項7】
請求項5記載の流量測定方法において、他の流体機械への分岐流路の流れ解析の出口境界条件を流量条件で規定したことを特徴とする流量測定方法。
【請求項8】
流体機械よりも上流側に位置する流路または下流側に位置する流路のそれぞれに超音波送受信器を設置した超音波流量計で流量測定を行う際に、前記超音波流量計に設置する流路に対し、予め流れ解析を行い、流れ解析による流速分布が均一になる直線上に超音波伝播経路を設定することを特徴とする流量測定方法。
【請求項9】
流体機械よりも上流側に位置する流路または下流側に位置する流路のそれぞれに超音波送受信器を設置した超音波流量計を用いて流量測定を行う際に、前記超音波流量計を設置する流路に対し、予め流れ解析を行い、前記中央流量計を設置する流路位置の中心軸に垂直な断面線上の流速分布が最も均一になる直径を選定し、この直径が前記断面線への投影に相当する超音波伝播経路になるように設定したことを特徴とする流量測定方法。
【請求項10】
流量の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計と、流路形状等の入力情報を基に流れ解析を行う流れ解析演算装置と、前記超音波流量計で測定された超音波伝播経路上での平均流速の情報と前記流れ解析演算装置で行った流れ解析に基づく流速分布情報とが一致するまで演算し、一致したときに真の流量を設定するコントローラ装置とを備えたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項11】
流量の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計と、この超音波流量計で測定した平均流速データ情報を基にして真の流量を設定するパソコンとを備えたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項12】
流量の上流側および下流側のそれぞれの位置に超音波送受信器を設置した超音波流量計と、流路形状等の入力情報を基に流れ解析を行うとともに、流れ解析の流量を種々変えた流れ解析を行い、この解析結果から求めた超音波伝播経路に相当する位置での平均流速とそのときの解析流量を対応させたデータセットを作成する流れ解析演算装置と、前記超音波流量計により測定された超音波伝播経路上における平均流速の情報と前記流れ解析演算装置で行った流れ解析に基づくデータセット情報とが一致するまで演算し、一致したときに真の流量を設定するコントローラ装置と、このコントローラ装置で演算した情報を記憶する記憶装置とを備えたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項13】
記憶装置は、コントロール装置で演算した平均流量から真の流量を補間して算出するための流れ解析に基づくデータセットを記憶する構成にしたことを特徴とする請求項12記載の流量測定装置。
【請求項14】
請求項10〜13記載の流量測定装置を備えた水力機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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