説明

流量測定装置

【課題】空気流量を測定するための流量測定装置を構成する構成部材を高い組み付け精度で組み付け可能にすることにより、流量測定精度を確保する。
【解決手段】副通路13と、一方の面側に流量を測定するための発熱抵抗体のパターンが設けられ副通路内に配置された平板状部材4とを有する流量測定装置において、前記副通路13が少なくとも2つの部材2,5を組み合わせることにより形成されており、少なくとも2つの部材2,5のうちいずれか一方の部材には挿入穴21、他方の部材には潰され代23aのある突起23と挿入穴21より小さい突起24とを有するピン22とが設けられ、ピン22が挿入穴21に挿入され、2つの部材2,5を組み合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量計に係わり、特に自動車エンジンの吸気系を構成して、その吸気量を検出、さらには制御するのに適する流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気流量を計測する流量測定装置として、発熱抵抗体を加熱制御し発熱抵抗体の放熱量によって流量を計測するものや、発熱抵抗体を加熱制御し発熱抵抗体の近傍に配置した感温抵抗体の温度変化によって流量を計測するものなどが知られている。
【0003】
流量測定装置の流量検出部は、二部品以上の部材で構成された副通路内に配置されている。そのため、副通路形状は流量測定装置の流量測定精度に大きな影響を与える部分であり、副通路構成部材を組み合わせる際には、高い組み付け位置精度が要求される。
【0004】
特許文献1において、流量測定装置が複数の構造部材により構成された構造に対して、挿入穴に対して潰され代のある圧入ピン構造により高い組み付け位置精度を確保した流量測定装置が公知技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−62174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流量測定装置が複数の構造部材において、内燃機関など周囲温度が変わり易い環境でも、圧入ピン長さが長くなることによる熱変形による破損を生じにくく、また製造工程においても変形や破損などが生じにくい構造部材の組み合わせ位置精度が確保可能な構造、すなわち出力特性変化を引き起こすことのない構造が望まれている。さらには、ピンを大きくするという一般的な技術で、強度を確保することができるが、組み立て製造工程において挿入力が大きくなり、組み合わせが容易にできないといった課題もある。
【0007】
しかし上述の公知技術では、アルミワイヤの高寿命化や組み立て精度に関する記述はあるが、強度確保のためのピン構造に関する記述がない。
【0008】
本発明の目的は、位置精度確保に優れ、特性誤差が生じにくく信頼性の高い流量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の流量測定装置は、流体が流れる主通路内に配置される副通路を備えた流量測定装置において、前記副通路が少なくとも2つの部品を組み合わせて形成されており、少なくとも2つの部品のうちいずれか一方の部品には挿入穴が設けられ、他方の部品には潰され代のある突起と前記挿入穴より小さい突起とを有するピンとが設けられ、前記挿入穴に前記ピンを挿入することによって2つの部品を組み合わせ、前記副通路を形成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧入ピンの強度を確保することができるだけではなく、構造部材の位置精度を確保でき、出力特性変化が生じにくく、製造工程での組み立て作業を容易にする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例による一実施形態である流量測定装置の部材構成と圧入ピン形状詳細図。
【図2】図1において突起の配置を変更した場合の圧入ピン形状詳細図。
【図3】図1において挿入穴より小さい突起に潰され代形状を設けた場合の圧入ピン形状詳細図。
【図4】発明の流量測定装置を用いた電子燃料噴射方式の内燃機関の具体的構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る具体的な構成は、以下の通りである。
【0013】
流体が流れる主通路内に配置される副通路と、一方の面側に流量を測定するための発熱抵抗体のパターンが設けられ前記副通路内に配置された平板状部材とを有し、平板状部材における発熱抵抗体のパターンの設けられた面が副通路内の流体の流れに沿うように配置され、平板状部材の面と副通路の通路形成面との間に流体が流れる発熱抵抗体パターン側流体通路部と、平板状部材の面とは反対側の面と副通路の通路形成面との間に背面側流体通路部とが構成された流量測定装置において、前記副通路が少なくとも2つの部品(部材)を組み合わせて形成されており、少なくとも2つの部品(部材)のうちいずれか一方の部品(部材)に挿入穴、もう一方の部品(部材)には潰され代のある突起を持つピンが設けられ、ピンにはさらに少なくとも一つ以上の前記挿入穴より小さい突起を設ける。
【0014】
このとき、挿入穴より小さい突起は、潰され代のある突起と前記挿入穴の中心から放射状に交互に均等配置するとよい。
【0015】
また、挿入穴より小さい突起は、長手方向の一部に潰され代のある突起部が設けられているとよい。
【0016】
また、挿入穴とピンは、二箇所以上設けるとよい。
【0017】
また、挿入穴とピンは、副通路の通路形成面を囲むように設けるとよい。
【実施例1】
【0018】
本発明に係る以下の実施例は、自動車用の内燃機関に吸入される空気流量を測定するために用いられる流量測定装置に係り、本発明による圧入ピン構造によって熱や製造工程において変形,破損を生じにくく、組み立て位置精度を確保しながら信頼性の高い構造を提供するものである。
【0019】
本発明の実施例を具体的に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施例を示す、流量測定装置の正面図(A),圧入ピン形状のB詳細図(B)及びC−C断面図(C)である。
【0021】
図1に従い本実施例の構造部材を説明する。
【0022】
図1(A)に示す吸入空気11の吸気通路12である流体通路構成部材のボディ1内には、副吸気通路13を構成する流量測定装置の構造部材のハウジング枠体2が固定ネジ3にて固定される。
【0023】
ハウジング枠体2に内包され平板状部材である電子回路4は、一方の面側に流量を測定するための発熱抵抗体のパターンが設けられ、副吸気通路13を流れる流体14の流れに沿うように配置される。尚、本実施例において流体14は、空気である。
【0024】
電子回路4の発熱抵抗体のパターン面と副吸気通路13の通路形成面との間には、流体14が流れる発熱抵抗体パターン側流体通路部が、発熱抵抗体のパターン面とは反対側の面と副吸気通路13の通路形成面との間には、背面側流体通路部が構成される。すなわち電子回路4の両面に流体14が流れるように構成されている。
【0025】
副吸気通路13の副吸気通路形成面は、ベース5とハウジング枠体2で構成され、ベース5に挿入穴21が、ハウジング枠体2に圧入ピン22が設けられ組み付けられている。
【0026】
複数の構造部材で構成される流量測定装置は、製造工程においてベース5の挿入穴21にハウジング枠体2の圧入ピン22を挿入し組み付ける。その組み付け工程において過度な荷重がかかることも想定される。圧入ピン22の太さを太くしたり、潰され代のある突起23を増やしたりすることで圧入ピン22の強度を確保することはできるが、潰され代23aによる挿入力が大きくなり組み合わせが容易にできないデメリットが考えられる。そこで、圧入ピン22はその荷重に耐えうる構造が必要となる。本実施例の圧入ピン22の形状は、図1(B)(C)に示す、潰され代のある突起23と挿入穴21より小さい突起24を設け、ベース5の挿入穴21にハウジング枠体2の圧入ピン22を挿入し組み付ける際、挿入穴21より小さい突起24は、挿入力を大きくすることなく圧入ピン22の強度を確保できるばかりでなく、構造部材の組み合わせ位置精度を保つことが可能になる。また潰され代のある突起23は、エンジンルーム内の熱環境下においても、圧入ピン22の長さが長くなったとしても熱変形による破損を生じにくく、すなわち空気流量を測定する流量測定部が配置される副通路形状を正確に維持することができる。
【0027】
なお、突起24が挿入穴21より小さいとは、圧入ピン22の中心から突起24の最外周部(最外周面)までの長さが挿入穴21の半径よりも小さい、或いは圧入ピン22の中心を挟んで圧入ピン22の両側に設けられた2つの突起24の最外周部(最外周面)間の長さが挿入穴21の直径よりも小さいことを言う。潰され代のある突起23について同様に表現すれば、突起23は挿入穴21より大きいということになり、圧入ピン22の中心から突起23の最外周部(最外周面)までの長さが挿入穴21の半径よりも大きい、或いは圧入ピン22の中心を挟んで圧入ピン22の両側に設けられた2つの突起23の最外周部(最外周面)間の長さが挿入穴21の直径よりも大きいことを意味する。
【実施例2】
【0028】
図2に第二の実施例を示す。本実施例は、図1に示した実施例に対し、圧入ピン22の形状を、挿入穴より大きい潰され代のある突起23と挿入穴21より小さい突起24を挿入穴21の中心から放射状に交互に均等配置で形成したもので、圧入ピン22に対する前記組み付け工程や前記熱環境化において受ける荷重や熱荷重に対して応力を均等に分散させる効果が期待できる。すなわち変形や破損などを引き起こす応力集中部をなくすことができる。さらに詳細に説明すると、潰され代のある突起23は圧入ピン22の外周に周方向に120度の角度間隔で均等に配置され、挿入穴21より小さい突起24は圧入ピン22の外周に周方向に120度の角度間隔で均等に配置されている。また、突起24は隣接する2つの突起23の中間に配置され、突起24と突起23とが圧入ピン22の外周に周方向に60度の角度間隔で交互に均等に配置されている。
【実施例3】
【0029】
図3に第三の実施例を示す。本実施例は、図1に示した実施例に対し、圧入ピン22に潰され代のある突起23とは別の挿入穴より小さい潰され代のある突起25を形成したもので、その潰され代の長手方向(圧入ピン22の高さ方向)の長さは、潰され代のある突起23の長手方向の長さよりも短く形成したものである。前記組み付け工程においての嵌合部品の挿入力は、潰され代のある突起23の外形の大きさに依存し、この挿入力は潰され代のある突起23のつぶれ量で調整可能であるが、薄く大きくすることは、圧入ピン22を樹脂成型にあたってショートショットを引き起こすことも想定される。そこで、挿入穴より小さい潰され代のある突起25の潰され代25aの長手方向の長さを自在に調整することで、目的に合う挿入力を確保することができる。
【0030】
潰され代のある突起23と挿入穴より小さい突起24又は挿入穴より小さい潰され代のある突起25とを有する圧入ピン22と挿入穴21とは、少なくとも1つ以上設けられれば良く、流量測定装置の副通路形状面を囲むように複数箇所設けることにより、特に流量測定装置の流量出力特性を決める重要な部分を取り囲むように配置することで、空気流量を測定する流量測定部が配置される副通路形状を正確に維持することができる。
【0031】
図4は、本発明の流量測定装置101を用いた電子燃料噴射方式の内燃機関の動作制御システムの具体的構成例を示す図である。
【0032】
図4において、エアクリーナ100から吸入された吸入空気11は、流量測定装置101が配置されたボディ1,吸気ダクト103,スロットルボディ104及び燃料が供給されるインジェクタ(燃料噴射弁)105を備えたインテークマニホールド106を経て、エンジンシリンダ107に吸入される。そして、エンジンシリンダ107で発生したガス108は排気マニホールド109を経て外部に排出される。流量測定装置101から出力される空気流量信号,吸入空気温度信号,スロットル角度センサ111から出力されるスロットルバルブ角度信号,排気マニホールド109に設けられた酸素濃度計112から出力される酸素濃度信号、及びエンジン回転速度計113から出力されるエンジン回転速度信号等は、コントロールユニット114に供給される。コントロールユニット114は、供給された信号を逐次演算して、最適な燃料噴射量とアイドルエアコントロールバルブ開度とを求め、その値を使ってインジェクタ105及びアイドルエアコントロールバルブ115を制御する。本発明による流量測定装置101を電子燃料噴射方式の内燃機関に使用すれば、正確な流量を測定することができ、内燃機関の正確な動作制御を行うことができる。
【0033】
上述した実施例により、以下のような効果が得られる。
【0034】
流体が流れる主通路内に配置される副通路と、一方の面側に流量を測定するための発熱抵抗体のパターンが設けられ前記副通路内に配置された平板状部材とを備えた流量測定装置において、前記副通路が少なくとも2つの部品(部材)を組み合わせることにより形成されており、少なくとも2つの部品(部材)のうちいずれか一方の部品(部材)に挿入穴、他方の部品(部材)には潰され代のある突起を持つピンを設け、このピンには少なくとも一つ以上の、前記挿入穴より小さい突起を設けることで、ピンの強度を確保することができるだけではなく、構造部材の位置精度を確保でき、出力特性変化が生じにくく、製造工程での組み立て作業を容易にする効果がある。
【0035】
流体が流れる主通路内に配置される副通路と、一方の面側に流量を測定するための発熱抵抗体のパターンが設けられ前記副通路内に配置された平板状部材とを備えた流量測定装置において、前記副通路が少なくとも2つの部品(部材)を組み合わせることにより形成されており、少なくとも2つの部品(部材)のうちいずれか一方の部品(部材)に挿入穴、他方の部品(部材)には潰され代のある突起を持つピンを設け、このピンには少なくとも一つ以上の、前記挿入穴より小さい突起が設けられ、挿入穴より小さい突起は、潰され代のある突起と挿入穴の中心から放射状に交互に均等配置することで、外力が加わったとしても応力の集中部の応力値を極力小さくすることができ、構造部材の位置精度を確保でき、出力特性変化が生じにくく、製造工程での組み立て作業を容易にする効果がある。
【0036】
流体が流れる主通路内に配置される副通路と、一方の面側に流量を測定するための発熱抵抗体のパターンが設けられ前記副通路内に配置された平板状部材とを備えた流量測定装置において、前記副通路が少なくとも2つの部品(部材)を組み合わせることにより形成されており、少なくとも2つの部品(部材)のうちいずれか一方の部品(部材)に挿入穴、他方の部品(部材)には潰され代のある突起を持つピンを設け、このピンには少なくとも一つ以上の、前記挿入穴より小さい突起が設けられ、挿入穴より小さい突起は、長手方向の一部に潰され代のある突起を設けることで、その長さを調整することで、製造工程での組み立て作業の容易性を犠牲にせず、組み立て後のピンの抜け強度を確保することができる効果がある。
【0037】
前述の挿入穴と突起を持つピンとの組み合わせを二箇所以上設けることで、さらなる構造部材の位置精度を確保できる効果がある。
【0038】
前述の挿入穴と突起を持つピンとの組み合わせを副通路の通路形成面を囲むように複数設けることで、出力特性変化に影響を及ぼす副通路形状を性格に形成することが可能となり、特性誤差が生じにくく信頼性を高める効果がある。
【0039】
製造工程での組み立て作業を容易にし出力特性変化が生じにくい流量測定装置とすることで、信頼性の高い内燃機関の動作制御システムを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
車輌でのエンジン制御が主な使用用途になるが、船舶や発電機等のディーゼルエンジンを使った制御に対しても同様に利用が可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 ボディ
2 ハウジング枠体
3 固定ネジ
4 電子回路(回路基板)
5 ベース
11 吸入空気
12 吸気通路
13 副吸気通路
14 流体
21 挿入穴
22 圧入ピン
23 潰され代のある突起
24 挿入穴より小さい突起
25 挿入穴より小さい潰され代のある突起
100 エアクリーナ
101 流量測定装置
103 吸気ダクト
104 スロットルボディ
105 インジェクタ
106 インテークマニホールド
107 エンジンシリンダ
108 ガス
109 排気マニホールド
111 スロットル角度センサ
112 酸素濃度計
113 エンジン回転速度計
114 コントロールユニット
115 アイドルエアコントロールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる主通路内に配置される副通路を備えた流量測定装置において、
前記副通路が少なくとも2つの部品を組み合わせて形成されており、
少なくとも2つの部品のうちいずれか一方の部品には挿入穴が設けられ、他方の部品には潰され代のある突起と前記挿入穴より小さい突起とを有するピンとが設けられ、
前記挿入穴に前記ピンを挿入することによって2つの部品を組み合わせ、前記副通路を形成したことを特徴とする流量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流量測定装置において、
挿入穴より小さい前記突起と潰され代のある前記突起とは、それぞれ前記ピンの中心から放射状に形成されており、挿入穴より小さい前記突起と潰され代のある前記突起とは、前記ピンの周方向に交互に均等配置されていることを特徴とする流量測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流量測定装置において、
挿入穴より小さい前記突起の長手方向の一部に潰され代のある突起を設けたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流量測定装置において、
前記ピンと前記挿入穴とを、二箇所以上設けたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流量測定装置において、
前記ピンと前記挿入穴とを、前記副通路の前記通路形成面を囲むように設けたことを特徴とする流量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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