説明

流量計

【課題】流量計が備える入力手段に対して特定操作を追加することなく、従来操作をトリガとして、データのコピーを確実かつ容易に実行する。
【解決手段】新規メータ10は、交換対象となる従来メータ20と通信するための通信手段13と、従来メータ20から送出される発呼信号を検出する発呼検出手段133と、発呼検出手段133により発呼信号が検出された場合に通信手段13を介して従来メータ20と通信し、従来メータ20に記憶されている所定のデータを取得するデータ取得手段17と、データ取得手段17により取得された従来メータ20の所定のデータを記憶する記憶手段16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量計に関し、より具体的には、マイコンを搭載して通信機能を有するガスメータ等の流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なガスメータは、計量機能を有する計量部と、積算表示やセキュリティ表示等を行う表示部と、流量センサ,圧力検知器,感震器等を有するセンサ部と、マイクロコンピュータ,インタフェース,電池,テスト遮断スイッチ,容器リセットスイッチ等を有する制御部と、遮断弁,遮断弁開スイッチを有する遮断部と、警報器などガスメータに接続可能な機器を接続する端子台とにより構成されている。
【0003】
マイクロコンピュータは、CPU,ROM,記憶手段(RAMなど),I/Oポートを有している。CPUは演算や制御を行なう。ROMはプログラム等を記憶させておくメモリである。記憶手段はガスメータが備える各機能を実行するために使用される各種の設定データ、積算値データ、遮断履歴、ユーティリティデータ(メータ番号など)といったガスメータが保持するデータ全般を記憶するためのメモリである。I/Oポートには他の部位とのインタフェースが接続される。
【0004】
また、ガスメータの通信手段は、通信電文を送信/受信する電文送信/受信手段と、発呼信号を送出する発呼送出手段とで構成されている。この通信手段は主として信号伝送装置(NCUなど)と通信を行うことを目的として設けられている。
【0005】
図4は、従来のガスメータと信号伝送装置との通信インタフェースを説明するための図である。図中、100は信号伝送装置側の通信インタフェース、200はガスメータ側の通信インタフェース、SW1〜SW4はスイッチ、Rは抵抗、Vcは信号伝送装置の電圧、Vmはガスメータの電圧を示す。
【0006】
従来、ガスメータと信号伝送装置との間では、図5及び図6に示すような2通りの伝送手順が規定されている。
図5は信号伝送装置から通信を開始する場合の伝送手順を示す図で、図6はガスメータから通信を開始する場合の伝送手順を示す図である。
【0007】
図5に示す例の場合、Bモードと呼ばれており、信号伝送装置側からガスメータ側に下り電文を送信し、下り電文の内容に応じて、ガスメータ側から信号伝送装置側に上り電文を送信する。
図6に示す例の場合、メータ発呼と呼ばれており、ガスメータ側から信号伝送装置側に発呼信号を送出する。信号伝送装置側では発呼信号を検出して、所定の処理(センタ装置への通報など)を行った後、ガスメータに下り電文を送信する。以降の伝送手順は、Bモードと同じである。
【0008】
上記のガスメータは法律により使用期間が10年と定められており、ガスメータが使用期間に達した場合には交換する必要がある。ガスメータを交換する場合、これまで使用していたガスメータとこれから使用するガスメータとを同一の内容で運用するために、これまで使用していたガスメータが保持している設定データ等のデータを専用の外部通信機器を用いて読み出し、これから使用するガスメータに対してデータをコピーすることが行われている。これらのデータとしては、ガスメータが備える各種機能を実行するために使用される各種の設定データ、メータ番号などのユーティリティデータなどが含まれる。
【0009】
このようにガスメータを交換(更新)する際には、専用の外部通信機器を準備し、取り付け・取り外しを行う必要があり、また専用の外部通信機器で同一の設定を行う場合、設定するデータの漏れや入力間違い等が発生する恐れがある。この場合、これから使用するガスメータがこれまで使用していたガスメータと同一の動作を行うことができなくなるという問題が発生する。
また、交換すべきガスメータから専用の外部通信機器でデータを読み出し、新たなガスメータにデータをコピーする場合、通信時間や交換作業に多大な時間を費やさなくてはならない。
【0010】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、新設するガスメータに間違った設定をしてしまうことを防止するために、既設ガスメータの設定データを新設ガスメータに移植できるようにしたガスメータ用設定データ移植器が記載されている。
【0011】
これによれば、ガスメータ用設定データ移植器(以下、設定データ移植器)を既設ガスメータに接続して、設定データ移植器の操作ボタンを押すと、既設ガスメータの設定データの一括読み込み動作が行われ、設定データ移植器の記憶手段(RAM)内に保持される。そして、設定データ移植器を新設ガスメータに接続して、操作ボタンを押すと、記憶手段内の設定データが一括して新設ガスメータに書き込まれる。
【0012】
上記の設定データ移植器では、通常動作状態において操作ボタンが操作され、記憶手段にガスメータの設定データが記憶・保持されていない場合には、ガスメータから設定データを読み込む動作を行い、読み込んだ設定データを記憶手段に記憶・保持する。一方、記憶手段に設定データが既に記憶・保持されている場合には、その設定データをガスメータに向けて転送し、ガスメータに設定する書き込み動作を行う。これによりガスメータに間違った設定をしてしまうことを防止している。
【0013】
また、特許文献2には、新設メータと既設メータを直接接続し、新設ガスメータの入力手段に対して特定の操作を行うことにより、新設ガスメータから既設ガスメータに設定データを読み込みにいくことが記載されている。
【特許文献1】特開2006−330882号公報
【特許文献2】特開2007−333305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述したように、ガスメータの交換を行う際に専用の外部通信機器で同一の設定を行う場合、設定するデータの漏れや入力間違い等が発生すると、新設のガスメータが既存のガスメータと同一の動作を行うことができなくなるという課題がある。
また、交換すべきガスメータから専用の外部通信機器でデータを読み出し、新たなガスメータにデータをコピーする場合、通信時間や交換作業に多大な時間を費やさなくてはならないという問題が生じる。
【0015】
特許文献1に記載の発明の場合、設定データをコピーするために設定データ移植器が必要となり、ガス事業者にとってコスト負担が大きなものとなる。また、ガスメータの交換作業時に、設定データ移植器を忘れてしまったり、該移植器が電池切れの場合には、設定データをコピーするという目的が果たせなくなる。
【0016】
また、特許文献2に記載のガス遮断装置は、入力手段に対する特定操作により旧ガス遮断装置の設定情報を取得し自ら設定する移植設定手段を有するが、ユーザは1つの入力手段に対して異なる操作方法を覚える必要があり、ユーザにとって負担となる。
また、復帰信号出力機能と移植信号出力機能のように、入力手段に割り付けられた機能に関連性が無いため、操作方法がわかりにくいという問題がある。
また、既に入力手段の特定操作に割り付けられた機能が存在する場合、上記の移植設定手段に対応する特定操作をさらに追加しなくてはならず、操作方法を複雑にし、好ましくない。
【0017】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、流量計の交換時にデータのコピーを確実かつ容易に実行できるようにした流量計を提供すること、を目的とし、
より具体的には、流量計が備える入力手段に対して特定操作を追加することなく、従来操作をトリガとして、データのコピーを確実かつ容易に実行できるようにすること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、被測定流体の流量を計測する流量計であって、他の流量計と通信するための通信手段と、該他の流量計から送出される発呼信号を検出する発呼検出手段と、該発呼検出手段により発呼信号が検出された場合に前記通信手段を介して前記他の流量計と通信し、該他の流量計に記憶されている所定のデータを取得するデータ取得手段と、該データ取得手段により取得された前記他の流量計の所定のデータを記憶する記憶手段とを備えることを特徴としたものである。
【0019】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記データ取得手段は、前記発呼検出手段により検出された発呼信号の内容を判定し、該判定結果に基づいて、前記他の流量計の所定のデータを取得するか否かを決定することを特徴としたものである。
【0020】
第3の技術手段は、第2の技術手段において、前記データ取得手段は、前記発呼信号の内容がテスト遮断の場合、前記他の流量計の所定のデータを取得することを特徴としたものである。
【0021】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段において、前記他の流量計の所定のデータは、該他の流量計が備える各種機能を実行するための設定データを含むことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、流量計の交換時に、交換対象となる流量計の発呼信号を検出することによりデータのコピーを実行することができるため、流量計が備える入力手段に対して特定操作を追加することなく、従来操作をトリガとして、確実且つ容易な操作方法でデータの移植作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の流量計に係る好適な実施の形態について説明する。なお、以下の実施形態では、流量計の一形態であるガスメータを例として説明するが、本発明に係る流量計は水道メータに対して適用することもでき、以下の実施形態と同様の制御によってデータのコピーを実行することができる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る流量計の要部構成例を示すブロック図で、図中、10は新規に交換され交換後に使用される本発明のガスメータ(以下、新規メータという)、20は交換される従来のガスメータ(以下、従来メータという)を示す。
【0025】
新規メータ10は、ユーザによる操作入力を受け付けるテスト遮断スイッチなどの入力手段11と、遮断弁や遮断弁開スイッチなどで構成される遮断手段12と、外部機器との通信を行うための通信手段13と、通信手段13と外部機器とを接続する通信インタフェースとなる通信端子14と、マイクロコンピュータ,インタフェース,電池,テスト遮断スイッチ,容器リセットスイッチなどで構成される制御手段15と、新規メータ10が保持すべきデータ全般を記憶するための記憶手段16と、従来メータ20に記憶されている所定のデータを取得するデータ取得手段17とを備える。通信手段13は、発呼信号を送出する発呼送出手段131と、通信電文を送信/受信する電文送信/受信手段132と、発呼信号を検出する発呼検出手段133とで構成される。
【0026】
また、従来メータ20は、入力手段21、遮断手段22、通信手段23、通信端子24、制御手段25、及び記憶手段26を備える。通信手段23は、発呼送出手段231、電文送信/受信手段232とで構成される。これらの各手段は新規メータ10が備える各手段と同様であるため、ここでの説明は省略する。本例においては、従来メータ20の通信端子24と新規メータ10の通信端子14とを通信線で接続しているが、無線通信により接続するようにしてもよい。
【0027】
このように、新規メータ10は従来メータ20の構成に加えて、テスト遮断等によるメータ発呼を検出し発呼検出信号を出力する発呼検出手段133と、この発呼検出信号を受けて通信手段13を介して接続された従来メータ20と通信し、従来メータ20に記憶されている所定のデータを取得するデータ取得手段17とを備えて構成される。なお、図1の例では、データ取得手段17を制御手段15と区別して示しているが、データ取得手段17を制御手段15の一部として機能させ、制御手段15にデータ取得手段17の機能を行わせるようにしてもよい。
【0028】
上記の所定のデータとは、ガスメータの交換時にメータ間でコピーされるデータであり、例えば、ガスメータが備える各種機能を実行するための設定データを含み、さらには、メータ番号などのユーティリティデータ、積算値データ、遮断履歴といったガスメータが保有するデータ全般まで含めるようにしてもよい。
【0029】
ここでメータ発呼とは、通常、ガスメータにセキュリティに関わる事象等が発生した場合に集中監視センタ等へ通報する目的で行われるものである。集中監視センタはNCU,通信回線を介して通報を受け取り、通信電文によりセキュリティデータを要求する。ガスメータは集中監視センタから通信電文を受信すると、通信電文の内容に応じてセキュリティデータを応答するように構成されている。
【0030】
ガスメータは、メータ発呼を行った後、一定時間内に通信電文によるセキュリティデータの要求が無い場合、メータ発呼の再試行を行う。この再試行は、通信電文によるセキュリティデータの要求があるまで行うか、あるいは、一定回数行うまで継続して行われる。
【0031】
また、テスト遮断とは、マイコン,遮断弁等の作動試験等を行う機能であり、ガスメータに取り付けられたテスト遮断スイッチ(入力手段に相当)を特殊工具で作動させ、遮断弁を駆動し、遮断理由の表示を行うと共に、メータ発呼を行うものである。
【0032】
図1において、新規メータ10が備える発呼検出手段133は、従来メータ20から送出される発呼信号、すなわちメータ発呼を検出する。メータ発呼としては例えばテスト遮断によるものが挙げられる。データ取得手段17は、発呼検出手段133によりメータ発呼が検出された場合に通信手段13を介して従来メータ20と通信し、従来メータ20の記憶手段26に記憶されている設定データ等を取得し、この設定データ等を記憶手段16に記憶・保持する。以下、従来メータ20の設定データを新規メータ10にコピーする際のデータコピー手順の例について図2及び図3に基づいて説明する。
【0033】
図2は、図1に示したガスメータ間におけるデータコピー手順の一例を説明するための図である。なお、本例では、従来メータ20をガスメータB、新規メータ10をガスメータAとして説明する。
【0034】
図2において、まず、ガスメータAの通信端子14とガスメータBの通信端子24とを通信線で接続する。
次に、ユーザがガスメータBの入力手段21に対して所定の操作を行い、ガスメータAに対してメータ発呼させる(S1)。この際、メータ発呼させるための操作方法としてはテスト遮断を行う際の操作方法が望ましいが、他の方法を用いても構わない。
【0035】
ガスメータAは、ガスメータBが送出する発呼信号(メータ発呼)を発呼検出手段133により検出し、データ取得手段17に発呼検出信号を出力する。データ取得手段17は、発呼検出手段133からの発呼検出信号を受けて、ガスメータBに対してデータコピー処理を開始する。この際、ガスメータAからガスメータBに対してセキュリティデータの要求を行うことが望ましい。これは、ガスメータBがメータ発呼後にセキュリティデータの要求がないと、メータ発呼の再試行を行ってしまうため、これを防ぐためである。
【0036】
ガスメータA(データ取得手段17及び電文送信/受信手段132)はガスメータBに対して通信電文によりセキュリティデータを要求し(S2)、ガスメータBはガスメータAに対して通信電文に応じたセキュリティデータを応答する(S3)。次に、ガスメータA(データ取得手段17及び電文送信/受信手段132)はガスメータBに対してデータ要求を行い(S4)、ガスメータBはガスメータAに対してデータ要求に応じたデータを応答する(S5)。そして、ガスメータA(データ取得手段17)は、ガスメータBの応答から設定データ等を取得し、この設定データ等を記憶手段16に記憶・設定する。以降、データ要求とデータ応答を繰り返し、ガスメータBに記憶されているデータをガスメータAにコピーする。
【0037】
このように、メータの交換時に、交換対象となるメータの発呼信号を検出することによりデータのコピーを実行することができるため、メータが備える入力手段に対して特定操作を追加することなく、従来操作をトリガとして、確実且つ容易な操作方法でデータの移植作業を行うことができる。
また、メータの入力手段に対して特定操作を追加することなく、データのコピーを実行することができるため、操作方法を複雑にすることがない。
また、既に入力手段の特定操作に割り付けた機能がある場合でも、入力手段に対する従来操作を利用することで、データコピー機能を付加することができる。
【0038】
図3は、図1に示したガスメータ間におけるデータコピー手順の他の例を説明するための図である。なお、本例では、図2の例と同様に、従来メータ20をガスメータB、新規メータ10をガスメータAとして説明する。図2に示した例との違いは、メータ発呼がテスト遮断か否かを判定し、テスト遮断である場合に、データコピーを実行し、一方、テスト遮断以外の場合に、データコピーを中止することにある。
【0039】
なお、メータ発呼の内容は、前述のセキュリティデータの内容から判定することができる。具体的には、このセキュリティデータには警告事象に応じたフラグが付与されており、フラグの内容からどの警告事象のものかを判定することができる。この警告事象としては、テスト遮断以外にも、例えば、合計・増加流量遮断、継続使用時間遮断、微小漏洩警告、電池電圧低下警告などが含まれる。
【0040】
図3において、まず、ガスメータAの通信端子14とガスメータBの通信端子24とを通信線で接続する。
次に、ユーザがガスメータBの入力手段21に対して所定の操作を行い、ガスメータAに対してメータ発呼させる(S11)。
【0041】
ガスメータAは、ガスメータBが送出する発呼信号(メータ発呼)を発呼検出手段133により検出し、データ取得手段17に発呼検出信号を出力する。データ取得手段17は、発呼検出手段133からの発呼検出信号を受けて、ガスメータBに対してデータコピー処理を開始する。
【0042】
ガスメータA(データ取得手段17及び電文送信/受信手段132)はガスメータBに対して通信電文によりセキュリティデータを要求し(S12)、ガスメータBはガスメータAに対して通信電文に応じたセキュリティデータを応答する(S13)。ガスメータAはガスメータBからのセキュリティデータの内容からメータ発呼がテスト遮断によるものか否かを判定する(S14)。ここで、メータ発呼がテスト遮断である場合(YESの場合)、ガスメータA(データ取得手段17及び電文送信/受信手段132)はガスメータBに対してデータ要求を行い(S15)、ガスメータBはガスメータAに対してデータ要求に応じたデータを応答する(S17)。そして、ガスメータA(データ取得手段17)は、ガスメータBの応答から設定データ等を取得し、この設定データ等を記憶手段16に記憶・設定する。以降、データ要求とデータ応答を繰り返し、ガスメータBに記憶されているデータをガスメータAにコピーする。
【0043】
一方、S14において、メータ発呼がテスト遮断以外である場合(NOの場合)、ガスメータAはガスメータBに対してデータ要求を行わず、データコピー処理を中止する(S16)。この際、ガスメータAはデータコピーを中止した旨を示す情報を表示部に表示するようにしてもよく、あるいは、ビープ音などの警告音によりユーザに通知するようにしてもよい。
【0044】
このように、新規メータが従来メータからの発呼信号の内容を判定し、判定結果に基づいて、従来メータからデータのコピーを行うか否かを決定することができるため、ユーザが意図しない状況におけるデータのコピーを確実に防止することができる。
【0045】
上記のような動作によって、従来メータから新規メータへのデータのコピーが可能となるが、上記のように、従来メータから新規メータへのデータのコピー処理(新規メータが従来メータのデータを取得して設定する処理)を行う際に、新規メータでは、コピー処理を実行中であることを報知するとともに、コピー処理が成功したか否かを報知するようにしてもよい。報知手段としては、メータの表示手段を用いることができる。
【0046】
例えばガスメータの表示手段の1つであるLEDを利用し、交換する2つのガスメータを接続してデータのコピー処理を行っているときに、LEDによりその進行状態または実施結果を明示的に示すことができる。例えばガスメータ間でデータのコピー処理を行っているときにはLEDを赤色に点滅させ、データのコピー処理が終了した場合には緑色に数秒間点灯させ、さらにコピー処理が失敗した場合には赤色で数秒間点灯させるようにすることで、コピーの進行状態または実施結果をユーザに知らせることができる。
また表示手段の他の形態であるLCDを利用して、コピー処理の進行状況や処理結果を文字列やマークなどで明示させるようにしてもよい。
【0047】
また、従来メータから新規メータへのデータのコピー処理を行う際に、新規メータでは、接続されている従来メータの形式を判別して、自身とは異なる形式のメータが接続されていることを検出した場合には、報知手段によって処理の失敗を報知させるようにしてもよい。これにより、形式が異なるメータからの異常なデータをコピーすることを防ぐことができる。従来メータの形式を判別する手法として、例えば、新規メータから従来メータに対してメータの形式が判別できる電文を要求してもよいし、従来メータから新規メータへの応答電文に含まれるメータ形式情報で判別してもよい。
【0048】
次に通信機能付きメータが備える各種の機能と、その機能を実行するために設定されるデータについてその具体例を説明する。上記のように、メータ間でコピーするデータとしてはメータが備える各種機能を実行するための設定データ、積算値データ、遮断履歴やメータ番号などのユーティリティデータといった、ガスメータが保有するデータ全般が該当する。
【0049】
メータが備える機能の例としては、例えば、所定のアラームを発するためのアラーム機能や検針データを記憶するための検針データ記憶機能、あるいは発呼先の電話番号を設定するための発呼先電話番号設定機能などがある。
また上記のアラーム機能には、残量管理機能、ガス漏れ検知機能、流量ゼロ検知機能、逆流検知機能、過大流量検知機能、及び超過流量検知機能などがある。また上記検針データ記憶機能には、定時検針機能、及びロードサーベイデータ機能などがある。さらに、上記発呼先電話番号設定機能には、アラーム機能用発呼先電話番号設定機能、ロードサーベイデータ機能用発呼先電話番号設定機能、ロードサーベイデータ機能用発呼先電話番号設定機能、及び定時検針機能用発呼先電話番号設定機能などがある。また、設定データの1つとしてメータ制御コードがある。以下にこれらの具体例を説明する。
【0050】
(残量管理機能)
残量管理機能は、容器リセットスイッチの作動以降のガス通過体積を残量管理カウンタ値に積算していき、予め設定されている残量管理警告レベルに達した時、警告を発する機能である。すなわち、残量管理機能における設定データは、残量管理カウンタ値および、残量管理レベルが該当する。
【0051】
(メータ制御コード)
メータ制御コードは、ガスメータの各種動作に関わる設定を行うコードであり、それ自身が設定データに該当する。
【0052】
(ガス漏れ検知機能)
ガス漏れ検知機能は、ガスメータに接続される配管におけるガス漏れを検知するための機能である。ガスメータは、予め定めた一定時間毎にガスメータを流れるガスの流量チェックを行い、その流量が予め定められている流量判定値を越え、かつその流量判定値を越えた状態が予め定められている時間判定値を越えたときに、「ガス漏れ」であると判定して警告表示を行う。すなわち、ガス漏れ検知機能における設定データは、上記の流量判定値と時間判定値が該当する。
【0053】
(流量ゼロ検知機能)
流量ゼロ検知機能は、メータに接続される配管におけるガスの流量がないことを検知するための機能である。メータは、予め定めた一定時間毎にメータに接続される配管における流量をチェックし、その流量の増加量がない(増加量ゼロ)状態が連続して所定時間続いたときに、「流量ゼロ日数」が1日であることを記録する。そしてこの流量ゼロ日数が予め設定されている流量ゼロ判定値に達したときに、「流量ゼロ」が発生したものと判定して警告表示を行う。すなわち、流量ゼロ判定機能における設定データは、上記の所定時間と流量ゼロ判定値とが該当する。
【0054】
(逆流検知機能)
逆流検知機能は、メータに接続される配管におけるガスが逆流していることを検知するための機能である。メータは、予め定めた一定時間毎にメータに接続される配管における流量をチェックし、逆流が生じている状態が予め定めた逆流判定回数まで連続して発生したときに、「逆流」が発生したものと判定して警告表示を行う。すなわち、逆流検知機能における設定データは、上記の逆流判定回数が該当する。
【0055】
(過大流量検知機能(超過流量検知機能))
過大流検知機能は、過大な流量のガスが流れた状態を検知するための機能である。メータは、予め定めた一定時間毎にメータに接続される配管における流量をチェックし、その流量が、予め定められている流量判定値を越え、かつその超過量の合計(累積値)が、予め設定されている過大判定値に達したときに、「過大流量」であると判定して警告表示を行う。すなわち、過大流量判定機能における設定データは、上記の流量判定値と過大判定値が該当する。
【0056】
(定時検針機能)
定時検針機能は、予め設定された定時検針時にメータの検針値をメータが記憶、更新する機能である。定時検針機能によって記憶された定時検針値とアラーム情報は、遠隔から通信によって確認することができる。定時検針機能における設定データは、上記の定時検針を行うための日時設定値が該当する。
【0057】
(ロードサーベイデータ機能)
ロードサーベイデータ機能は、一定間隔でメータの積算値を記憶する機能である。例えばロードサーベイ機能には、「日量」、「連続」、「停止」、「継続」などの設定が可能である。「日量」の場合、1日に一度予め定めた定時検針時刻に積算値を記憶する。積算値は所定回数分だけ記憶され、常に最新の所定回数分のデータを記憶する。また「連続」の場合、予め設定された開始時刻から、予め設定された時間間隔毎に積算値を記憶する。積算値は所定回数分だけ記憶され、常に最新の所定回数分のデータを記憶する。
【0058】
また「停止」の場合、予め設定された開始時刻から、予め設定された時間間隔毎に積算値を記憶する。そして積算値は所定回数分だけ記憶され、その時点で積算値の記憶処理を停止する。ここでは記憶している最古のデータ取得日時を記憶する。
また「継続」の場合、予め設定された開始時刻から、予め設定された時間間隔毎に積算値を記憶する。積算値は所定回数のブロック×複数の回数だけ記憶され、通信による最初のブロックのデータ要求を受信するか、もしくは全記録データ数(所定回数のブロック×複数)が一杯になったときに、最初のブロックのデータを消去する。
【0059】
ロードサーベイデータ機能においては、「日量」設定の場合の定時検針日時、「連続」設定の場合の積算値の記憶の開始時刻(月日時分)及び積算値を記憶する時間間隔、「停止」設定の場合の積算値の記憶の開始時刻及び積算値を記憶する時間間隔、「継続」設定の場合の積算値の記憶の開始時刻及び積算値を記憶する時間間隔が、ロードサーベイデータ機能を実行するための設定データに該当する。
【0060】
(発呼先電話番号設定機能)
発呼先電話番号設定機能は、アラーム機能、ロードサーベイデータ機能、及び定時検針機能において、集中監視センタなどの通信相手先を発呼するための電話番号を設定するための機能である。発呼先電話番号設定機能を用いて、各機能毎に個別の電話番号を設定することができる。例えば定時検針機能を使用して検針値を送信する通信相手先、アラーム機能によりアラーム情報(警告情報)が発生したときにそのアラーム情報を送信する通信相手先、あるいはロードサーベイ機能により生成したロードサーベイ情報を送信する通信相手先を設定することができる。上記各機能に応じた通信相手先(集中監視センタなど)は、各機能ごとに別々の通信相手先を設定することができ、また全て同一の通信相手先を設定することもできる。上記の各機能に応じた発呼先電話番号が、発呼先電話番号設定機能における設定データに該当する。
【0061】
(合計流量遮断機能)
合計流量遮断機能は、ガス流量が、ガス消費先の保有燃焼器具の合計消費流量(予め設定された遮断設定値)を超えて流れた場合、元栓の誤開放やゴムホースの抜け等による大量のガス漏れと判断して遮断弁を駆動しガス通路を遮断する機能である。遮断設定値は手動設定するか、または、自動設定機能により、ガス消費先のガス消費パターンを学習し、ガス消費先に合わせた遮断設定値が設定される。すなわち、合計流量遮断機能における設定データは、遮断設定値が該当する。
【0062】
(増加流量遮断機能)
増加流量遮断機能は、ガス流量の増加が、ガス消費先の保有燃焼器具の内、最大機器の消費量(予め設定された遮断設定値)に比較して非常に大きい流量の増加であった場合、元栓の誤開放やゴムホースの抜け等による大量のガス漏れと判断して遮断弁を駆動しガス通路を遮断する機能である。遮断設定値は手動設定するか、または、自動設定機能により、ガス消費先のガス消費パターンを学習し、ガス消費先に合わせた遮断設定値が設定される。すなわち、増加流量遮断機能における設定データは、遮断設定値が該当する。
【0063】
(使用時間遮断機能)
使用時間遮断機能は、ガス器具の使用状態が、普通ではありえないような使用状態であるとガスメータの制御手段が判断したとき、ガス器具の消し忘れ又は、器具栓の不完全閉止等によるガス漏れと判断して遮断弁を駆動しガス通路を遮断する機能である。
使用状態の判断は、流量区分毎の使用制限時間に基づき判断される。使用制限時間は手動設定するか、または、自動設定機能により、ガス消費先のガス消費パターンを学習し、ガス消費先に合わせた使用制限時間が設定される。すなわち、使用時間遮断機能における設定データは、流量区分毎の使用制限時間が該当する。
【0064】
(口火登録機能)
口火登録機能は、ガス器具の口火流量をガスメータの記憶手段に予め記憶させる機能である。ガスメータの制御手段は、ガス器具の口火が長時間連続して使用された場合に微少漏洩と区別し、記憶手段に記憶された口火流量以外の連続したガスの流れを検知した場合のみガス漏れと判断する。すなわち、口火登録機能における設定データは、口火流量が該当する。
【0065】
(流量区分別積算機能)
流量区分別積算機能は、予め設定されている設定値に基づき、時間毎の流量データから特定の器具の積算量を推定計測し、流量区分別積算値1〜3として記憶する機能である。
設定値としては、積算開始流量、最大流量、最小流量、標準流量、有効判定時間、停止判定時間、大型器具判定流量がある。
積算開始流量は、特定器具が使用開始されたと推定するガス使用流量の下限流量値である。最大流量は、特定器具が使用するガス使用流量の上限流量値である。最小流量は、特定器具の最小使用流量値である。標準流量は、特定器具の標準的な使用流量である。有効判定時間は、特定器具の最小使用時間である。停止判定時間は、特定器具の使用停止を判定する時間である。大型器具判定流量は、特定器具以外の大型器具判定を判定する流量値である。流量区分別積算機能における設定データとしては、積算開始流量、最大流量、最小流量、標準流量、有効判定時間、停止判定時間、大型器具判定流量、および、流量区分別積算値1〜3が該当する。
【0066】
なお上記の例はメータ間でコピーするデータの例を示すものであって、コピーを行うデータはこれらに限ることなく、予め種々のデータを定めておくことができる。そして本発明に係る実施形態では、このようなデータをメータの記憶手段に記憶し、交換されるメータと交換後に使用するメータとを直接接続し、交換されるメータの発呼信号を検出することによりデータのコピーを実行することができるため、専用の外部通信機器等を使用する必要なく、これまで使用されたメータが保持している所定のデータを、これから使用する新たなメータに直接コピーすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る流量計の要部構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示したガスメータ間におけるデータコピー手順の一例を説明するための図である。
【図3】図1に示したガスメータ間におけるデータコピー手順の他の例を説明するための図である。
【図4】従来のガスメータと信号伝送装置との通信インタフェースを説明するための図である。
【図5】信号伝送装置から通信を開始する場合の伝送手順を示す図である。
【図6】ガスメータから通信を開始する場合の伝送手順を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10…ガスメータ(新規メータ)、11,21…入力手段、12,22…遮断手段、13,23…通信手段、14,24…通信端子、15,25…制御手段、16,26…記憶手段、17…データ取得手段、20…ガスメータ(従来メータ)、131,231…発呼送出手段、132,232…電文送信/受信手段、133…発呼検出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体の流量を計測する流量計であって、
他の流量計と通信するための通信手段と、該他の流量計から送出される発呼信号を検出する発呼検出手段と、該発呼検出手段により発呼信号が検出された場合に前記通信手段を介して前記他の流量計と通信し、該他の流量計に記憶されている所定のデータを取得するデータ取得手段と、該データ取得手段により取得された前記他の流量計の所定のデータを記憶する記憶手段とを備えることを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記データ取得手段は、前記発呼検出手段により検出された発呼信号の内容を判定し、該判定結果に基づいて、前記他の流量計の所定のデータを取得するか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記データ取得手段は、前記発呼信号の内容がテスト遮断の場合、前記他の流量計の所定のデータを取得することを特徴とする請求項2に記載の流量計。
【請求項4】
前記他の流量計の所定のデータは、該他の流量計が備える各種機能を実行するための設定データを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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