説明

浄化装置

【課題】
音響効果室又は水槽内に浮遊するバクテリアを減滅する。
【解決手段】
音響効果室内に設けた吸音板の吸音材表面に光触媒を付着し、又は水槽内に設けた殺菌枠体の光触媒保持部材に光触媒を付着することにより音響効果室又は水槽中を浮遊するバクテリアが光触媒に触れたときこれを光触媒分解作用により分解し、これにより音響効果室又は水槽内のバクテリアを減滅する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浄化装置に関し、特に音響効果を管理された部屋又は水槽内の空気又は水を浄化しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
人が仕切られた部屋内にいれば、当該空気空間にはバクテリアやほこりが浮遊することを避け得ない。
【0003】
また、雨水を水槽に貯水して最利用する場合には、水中のバクテリアが繁殖することを避け得ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば音響調整設備を備えた教室には、音エネルギーを吸収するために複雑な音道をもつ吸音板が用いられているが、長い間使用しいてる間には、当該吸音板に空気中に浮遊している粉塵やバクテリアが付着堆積するおそれがある。
【0005】
また、雨水を溜める水槽に貯水して再利用しようとする設備において、水槽は、バクテリアが繁殖し易い環境であるため、雨水が汚染するおそれがある。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、吸音板によって音響管理された部屋や、雨水を貯水する水槽における汚染を防止できるようにした浄化装置を提案しようとするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、音響室内や水槽内において、比較的大きい表面面積を有する吸音板や殺菌枠体の表面部分にコーティングした光触媒によって、浮遊しているほこりやバクテリアを光触媒分解するようにしたことにより、音響室内や水槽内を浄化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、吸音板5、6によって室内の音を吸音することによって室内の音響効果を管理する部屋において、吸音板5、6の表面部分に光触媒12、22、27を付着し、光触媒12、22、27に部屋1内に浮遊する有機物でなるほこり及びバクテリアが触れたとき当該光触媒12、22、27が光触媒分解作用によりほこり及びバクテリアを分解するようにする。
【0009】
また本発明においては、雨水を貯水する水槽31、41内に、外枠部材38の内側に光触媒を付着した線材でなる光触媒保持部材37を張り付けた構成の殺菌枠体36を浸漬し、光触媒に雨水中に浮遊する有機物でなるバクテリアが触れたとき光触媒が光触媒分解作用によりバクテリアを分解する
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0011】
(1)第1の実施の形態
図1において、1は全体として音響調整設備を有する音響効果を管理された教室として用いられる音響効果室を示し、床2と、天井3と、四方の壁4とによって所定の大きさに仕切られた空間領域を形成している。
【0012】
音響効果室1には、予め設計された音響調整目標を達成するため、四方の壁4の特定の位置に壁用吸音板5を設けると共に、四方の壁4と天井3との間の部分に補助用吸音板6が設けられている。
【0013】
壁用吸音板5及び補助吸音板6は、図2に示すように、3層の板状吸音材、すなわち下層吸音材11A、中間層吸音材11B及び上層吸音材11Cを積層した構成を有する。
【0014】
下層吸音材11A及び上層吸音材11Cは、それぞれ直線状アルミ繊維をほぼ同一方向に整列させるように束ねて圧縮焼結した構成を有する。下層吸音材11Aは矢印aで示す繊維方向を有するのに対して、上層吸音材11Cは矢印aの方向に対して矢印bで示すように直交し、(又は斜行する)ような繊維方向をもつように積層されている。
【0015】
これに対して、中間吸音材11Bは、繊維方向がランダムな綿状アルミ繊維を圧縮焼結した繊維構造を有する。
【0016】
これにより壁用吸音板5及び補助用吸音板6は、上層吸音材11Cの方向から吸音処理すべき音が到来したとき、矢印b方向に整列焼結されているアルミ繊維間に形成された音道を通った後、中間吸音材11Bにおいてランダムな方向に焼結されたアルミ繊維によって形成された音道を通り抜け、さらに下層吸音材11Aにおいて矢印a方向に整列焼結されたアルミ繊維によって形成された音道を通り抜けて行く。
【0017】
かくして壁用吸音板5及び補助用吸音板6に入った音が、複雑に折れ曲がるように構成された音道を通る際に熱エネルギーに変換されることにより、吸音される。
【0018】
かかる構成に加えて、壁用吸音板5及び補助用吸音板6の上層吸音材11Cの表面部分のアルミ繊維の表面には、酸化チタンでなる光触媒12がメッキ又は塗装により付着されている。
【0019】
以上の構成において、音響効果室1内において発生した音は、四方の壁4に設けられた壁用吸音板5と、四方の壁4及び天井3間に設けられた補助吸音板6とによって吸音されることにより所定の吸音特性を呈する。
【0020】
これに加えて、壁用吸音板5及び補助用吸音板6の上層吸音材11Cに付着された酸化チタンでなる光触媒12は、窓から入射する太陽光L1及び天井3に照明器具として取り付けられている蛍光灯13から照射される照明光L2とによって照明されたとき、光触媒分解現象を起す。
【0021】
この光触媒12にの光触媒分解現象については、例えば酸化チタンは、波長380〔nm〕以下の紫外線を吸収したときに、光触媒反応を起こし、これにより、有機物を二酸化炭素と水とに分解する。
【0022】
従って、音響効果室1内の空気に、有機物でなる粉塵や、菌、ウィルスなどのバクテリアが浮遊しているとき、当該粉塵やバクテリアが、光触媒12に触れたとき、光触媒反応によって分解される。
【0023】
かくして、音響効果室1内の空間は、壁用吸音板5及び補助用吸音板5の吸音作用によって音響効果が調整されると共に、壁用吸音板5及び補助用吸音板6の表面に付着された光触媒12によって、粉塵やバクテリアを減滅処理できる。
【0024】
かくして音響効果室1のユーザが安全かつ快適に活動できるような空間を形成することができる。
【0025】
例えば、音響効果室1を教室として利用した場合、室内の音響効果を調整すると共に、室内の粉塵やバクテリアを低減できることにより、教師のストレスが軽減できることにより、生徒が聴き易い声で授業を行うことができる。
【0026】
(2)他の実施の形態
図1及び図2の実施の形態の場合、壁用吸音板5及び補助用吸音板6として3層の吸音材11A、11B及び11Cを重ね合せた多層構造の吸音板を用いたが、これに代え、壁用吸音板5及び補助用吸音板6として、図3に示すように、アルミニウムチップを焼結してなる単層吸音材21の表面に光触媒22をメッキ又は塗装により付着した構成のものを用いても良い。
【0027】
この場合、単層吸音材21は、アルミニウム薄板材を細かいチップに切断し、当該アルミニウムチップを圧縮焼結加工することにより、全体として板状形状を有すると共に、隣合うアルミニウムチップが部分的に溶着し合うことにより、アルミニウムチップ間に複雑に折れ曲がる音道を形成するようにする。
【0028】
かくして単層吸音材21は、単層構造でありながら、音を吸音するための音道として比較的複雑な音道を形成できると共に、アルミニウムチップを溶着した構成をもつことにより、質量が大きく、かつ強度と耐久性が優れた吸音部材又は遮音部材を形成できる。
【0029】
因に、図3の単層吸音材21は、アルミニウムチップの大きさや、単層吸音材21の厚さを必要に応じて選定することにより、吸音特性を制御できる。
【0030】
また、アルミニウムチップとして容器の廃材(例えば飲料水の)でなるアルミニウム缶を活用できることにより資源の有効利用が実現できる。
【0031】
この場合も、単層吸音材21の表面に酸化チタンでなる光触媒22が付着されていることにより、当該光触媒22により音響空間の粉塵やバクテリアの減滅機能を実現できる。
【0032】
図4はさらに他の実施の形態を示すもので、この場合の壁用吸音板5及び補助用吸音板6は、細かいアルミニウムチップを圧縮焼結加工してなる基板吸音材25上に、音響特性制御用吸音材26を積層した構成を有する。
【0033】
この場合、音響特性制御用吸音材26は、得ようとする室内の音響効果に応じてアルミニウムチップの大きさを選定することにより、吸音効果を生ずる音道の大きさ及び複雑さを決めるようになされ、これにより基板吸音材25の吸音特性と、音響特性制御用吸音材26によって制御された吸音特性との総和により吸音特性が実現できる。
【0034】
かくして、壁用吸音板5及び補助用吸音板6としてそれぞれ同じような形状を持たせながら、吸音特性を異にする複数種類の吸音又は遮音部材を実現できる。
【0035】
この場合も音響特性制御用吸音材26の表面部分には、酸化チタンでなる光触媒27がコーティングされており、これにより音響調整されかつ粉塵やバクテリアの減滅機能を有する音響空間を実現できる。
【0036】
(3)第2の実施の形態
図5は、第2の実施の形態を示すもので、地上水槽31は上部採光窓32に設けたガラス蓋33を通して内部に自然光を照射できるように地上に設置されており、雨水集水設備(図示せず)によって集められた雨水を貯水している。
【0037】
地上水槽31に貯水された雨水は、循環用配管34に設けられた循環ポンプ35によって循環されるようになされ、これにより雨水は循環用配管34の引水管部34Aによって地上水槽31の一端底部から引き抜かれた後、復水管部34Bによって地上水槽31の他端上部に戻される。
【0038】
これにより地上水槽31には、復水管部34Bが設けられている他端上部から、引水管部34Aが設けられている一端底部の方向に横方向に向かう水の流れ(破線矢印dで示す)が起こっている。
【0039】
地上水槽31内には、ほぼ縦方向に立設することにより水の流れdを横切るように、複数の殺菌枠体36が配設されている。
【0040】
この殺菌枠体36は、アルミニウム繊維でなる線状の光触媒保持部材37を縦及び横方向に2〜3〔mm〕程度の間隔で互いに交差するように、網状に、外枠部材38に張り付けた構成を有する。
【0041】
光触媒保持部材37には、例えば酸化チタンでなる光触媒39がメッキ又は塗装によって付着されており、これにより水の流れdに沿って雨水が光触媒保持部材37に触れながら流れて行く。
【0042】
以上の構成において、地上水槽31に貯水された雨水は、降雨した後地上水槽31に集められるまでの間に粉塵やバクテリアが入り込んでおり、これが水の流れdと共に殺菌枠体36の光触媒保持部材37に触れながら通り抜けて行く。
【0043】
このとき光触媒保持部材37には、上部採光窓32から採光された自然光が照射されているから、光触媒保持部材37にコーティグされている光触媒が、水の流れdと共に流れて来る粉塵やバクテリアを、光触媒分解現象によって分解する。
【0044】
この光触媒分解作用は、貯水された雨水が循環用配管34によって循環されることにより循環ごとに繰り返され、これにより貯水された雨水内の粉塵及びバクテリアは減滅されることにより殺菌浄化される。
【0045】
かくして地上水槽31内に貯水された雨水は、常に殺菌浄化された状態に保持される。従って当該貯水された雨水を安全に種々の目的に有効利用することができる。
【0046】
図6は図5の他の実施の形態を示すもので、図5の場合は本発明を地上水槽31に適用したが、図6の場合は、これに代え、地下水槽41に適用したものである。
【0047】
地下水槽41は、図5との対応部分に同一符号を付して図6に示すように、地下水槽41に貯水した雨水を循環ポンプ35によって循環させることにより起こした水の流れdを通すように、光触媒保持部材37を外枠部材38に張り付けてなる殺菌枠体36を有する。
【0048】
この場合地下水槽41は地下に設置されているため、自然光を直接に殺菌枠体36の光触媒保持部材37に照射できないので、図5の上部採光窓32に代えて、採光装置42を設ける。
【0049】
採光装置42は、地下水槽41の近傍に設けた採光器43から自然光を採光して当該自然光を光ファイバ44を介して各殺菌枠体36の光触媒保持部材37に対向するように設けられた複数の光照射器45に分配する。
【0050】
この実施の形態の場合、採光器43は地下水槽41に隣接するように建設された建築物46の屋上に設置されている。
【0051】
この場合建築物46には地下水槽31に貯水する雨水を集水する雨どい47が設けられている。
【0052】
図6の構成において、地下水槽41に貯水された雨水に含まれる粉塵やバクテリアなどの有機物は、水の流れdと共に殺菌枠体36の光触媒39に触れながら循環される。
【0053】
このとき殺菌枠体36の光触媒保持部材37には、採光器43によって採光された自然光が光ファイバ44及び光照射器45を介して光触媒保持部材37に照射されることにより、光触媒保持部材37に付着された光触媒39が光触媒分解作用を起こすことにより、当該光触媒保持部材37に触れた粉塵やバクテリアを分解する。
【0054】
かくして図6の場合も、地下水槽41に貯水された雨水を殺菌枠体36によって減滅されることにより殺菌浄化することができる。
【0055】
なお、図5及び図6の実施の形態においては、地上水槽31及び地下水槽41内に横方向に水の流れdを作り、これに対してほぼ縦方向に立設することにより水の流れdを横切るように、殺菌枠体36を配設するようにした。
【0056】
これに代え、又はこれと共に、殺菌枠体36を横方向に延長するように横たえると共に、地上水槽31及び地下水槽41の底部から空気泡を放出する(空気ポンプから放出配管を介して放出する)ことにより、空気泡の上昇に伴って水の対流を生じさせる。
【0057】
その結果対流する水が殺菌枠体36を横切るように流れることにより、上述の実施の形態の場合と同様に、水と共に流れて来る粉塵やバクテリアを光触媒保持部材37によって分解させるようにできる。
【0058】
また、図6の実施の形態においては、採光器43を建築物46の屋上に設置した場合について述べたが、採光器43の設置場所はこれに限らず、充分な採光ができる場所であれば良い。
【0059】
さらに、図1の実施の形態においては、音響効果室1の天井3に設けた蛍光灯13から光触媒12に対する蛍光源を得るようにしたが、これに代え、例えばハロゲンランプ等の白色灯からの白色光源を用いるようにしても、上述の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、音響効果室又は雨水貯水層を浄化する場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による音響効果室内の構成を示す略線的斜視図である。
【図2】図1の壁用吸音板又は補助用吸音板を構成する多層吸音板を一部を破断して示す斜視図である。
【図3】壁用吸音板又は補助用吸音板の他の実施の形態としての単層吸音板を一部を断面にして示す斜視図である。
【図4】壁用吸音板又は補助用吸音板のさらに他の実施の形態を一部を断面にして示す斜視図である。
【図5】本発明を適用した地上水槽の内部構造を一部を透過して示す斜視図である。
【図6】本発明を適用した地下水槽を一部を透過して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1……音響効果室、2……床、3……天井、4……四方の壁、5……壁用吸音板、6……補助用吸音板、13……蛍光灯、11A……下層吸音材、11B……中間吸音材、11C……上層吸音材、12、22、27、39……光触媒、21……単層吸音材、24……2層吸音材、25……基板吸音材、26……音響特性制御用吸音材、31……地上水槽、32……上部採光窓、33……ガラス蓋、34……循環用配管、34A……引水管部、34B……復水管部、35……循環ポンプ、36……殺菌枠体、37……光触媒保持部材、38……外枠部材、41……地下水槽、42……採光装置、43……採光器、44……光ファイバ、45……光照射器、46……建築物、47……雨どい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音板によって室内の音を吸音することによって上記室内の音響効果を管理する部屋において、
上記吸音板の表面部分に光触媒を付着し、上記光触媒に上記部屋内に浮遊する有機物でなるほこり及びバクテリアが触れたとき当該光触媒が光触媒分解作用により上記ほこり及びバクテリアを分解する
ことを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
雨水を貯水する水槽内に、外枠部材の内側に光触媒を付着した線材でなる光触媒保持部材を張り付けた構成の殺菌枠体を浸漬し、上記光触媒に上記雨水中に浮遊する有機物でなるバクテリアが触れたとき上記光触媒が光触媒分解作用により上記バクテリアを分解する
ことを特徴する浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−115939(P2006−115939A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304713(P2004−304713)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(593112632)
【Fターム(参考)】