説明

浄水器専用水栓

【課題】十分な浄水能力を有する一方で、シンク上、シンク横またはシンク下の特別な設置スペースを必要とせず、更に、特に設置面に立設される基部部分のデザインを多様化して意匠性を向上することができる浄水器専用水栓の提供。
【解決手段】水栓本体1を、ベース部10、センター部20、キャップ部30の3ピース構成とする。キャップ部の内周面の下側に、キャップ部の上端に向かって所定のテーパー率で縮径するテーパー面を設けると共に、キャップ部の内周面においてテーパー面より上側に段差面を設け、キャップ部のテーパー面の軸方向所定位置の外径を、浄水カートリッジの封止部材がテーパー面に圧接して水密を維持できる直径以下に設定して、テーパー面の軸方向所定位置から段差面までの間隔の範囲で、浄水カートリッジの上端の吐水端面の位置を調節して、キャップ部側の入水孔端面と浄水カートリッジの吐水端面との間の距離を増減変更自在とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所の流し台等の設置面に固定的に配設される浄水器専用水栓に関し、特に、設置面に立設される収容部に浄水カートリッジを内蔵した浄水器専用水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給水源からの原水(水道水)をろ過及び浄化して浄水を吐出する浄水器として、水栓一体型浄水器(スパウトイン浄水器とも呼ばれる)、キッチン据置型浄水器、アンダーシンク型浄水器がある。このうち、水栓一体型浄水器は、設置面(シンク上)に立設される基部と基部から前方に延びるスパウト部(吐水パイプ)とからなり、通常の湯水混合水栓やシャワー水栓と同様の外観を有する。一方、水栓一体型浄水器では、スパウト部の内部空間(吐水流路)に、対応する形状の浄水カートリッジを収納し、給水源から基部に所定の動水圧で供給した原水がスパウト部の吐水流路に流入して先端の吐水口から吐出される過程で、吐水流路内の浄水器カートリッジの内部のろ過材(活性炭や中空糸膜等)によって原水をろ過して浄水とする。したがって、スパウト部の吐水流路に収納する関係上、浄水カートリッジの容量が限定され、浄水能力を大きく確保することができない。次に、キッチン据置型浄水器は、通常の水栓とは別個の浄水器の一対の通水管(入水管及び出水管)をそれぞれ水栓の吐水口に付設した切換コックに接続し、水栓からの原水を浄水器内部の浄水カートリッジで浄水とした後に水栓に給水して、水栓の吐水口から吐出する。したがって、浄水器や切換コックとの接続用の配管をキッチンのシンク上やシンク横等の所定のスペースに設置及び配設する必要があり、そのためのスペースが必要となる。次に、アンダーシンク型浄水器は、シンク下の浄水器本体を設置し、シンク上に設置した水栓(浄水器専用水栓または浄水器専用吐水パイプを設けた水栓)に浄水器本体を配管により接続し、給水源からの原水を浄水器本体内部の浄水カートリッジで浄水とした後に水栓に給水して、水栓の吐水口から吐出する。したがって、浄水器本体をシンク下に設置するためのスペースが必要となる。なお、例えば、特許文献1には、上記浄水器のうちのアンダーシンク型浄水器についての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−249946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の浄水器は、上記のように、水栓一体型水栓については浄水能力の点で改善する余地があり、キッチン設置型浄水器についてはシンク上またはシンク横の設置スペースについて改善する余地があり、アンダーシンク型浄水器についてはシンク下の設置スペースについて改善する余地がある。一方、従来の水栓は、前記水栓一体型水栓やアンダーシンク型浄水器で使用される水栓も含め、設置面に立設される基部が単純円筒状等の単調な外形となっており、意匠性の点でも改善する余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、十分な浄水能力を有する一方で、シンク上、シンク横またはシンク下の特別な設置スペースを必要とせず、更に、特に設置面に立設される基部部分のデザインを多様化して意匠性を向上することができる浄水器専用水栓の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る浄水器専用水栓は、ベース部、センター部及びキャップ部を備える。ベース部は、内部に通水空間を有すると共に、(例えば、軸方向に同一直径で延びる、または、テーパー状となる)円筒状の外形を有する。センター部は、下端部を前記ベース部の上端部の直径と同一の直径とし、上端に向かって第1のテーパー率で縮径し、かつ、軸方向両端を円形に開口した円筒状をなす。また、センター部は、下端部が前記ベース部の上端部に着脱自在に接続されて前記ベース部と同心状に延びると共に、その内周面により前記上端に向かって前記第1のテーパー率に対応するテーパー率(例えば、同一のテーパー率または切削により形成可能な程度の若干異なるテーパー率)で縮径して延びる円柱状の内部空間を形成する。また、キャップ部は、下端部を前記センター部の上端部の直径と同一の直径とし、上端に向かって前記センター部の第1のテーパー率以上となる第2のテーパー率(例えば、同一のテーパー率または大きなテーパー率)で縮径し、かつ、下端を開口する一方で上端を閉塞した円筒状をなす。キャップ部は、下端部が前記センター部の上端部に着脱自在に接続されて前記センター部と同心状に延びる。なお、キャップ部は、その内周面により上端に向かって前記第2のテーパー率に対応するテーパー率(同一のテーパー率または大きなテーパー率)で縮径して延びる円柱状の内部空間を形成するよう構成することもできる。請求項1に係る浄水器専用水栓は、更に、吐水パイプ、弁部材及びハンドル部を備える。吐水パイプは、前記キャップ部に装着される。弁部材は、前記ベース部の前記通水空間の上端側に内蔵される。ハンドル部は、前記ベース部の外側において前記弁部材と対応する位置に配設され、前記弁部材を開弁及び閉弁操作自在なよう当該弁部材に作用的に連結されると共に、軸方向が前記ベース部の軸方向に対して上方に所定角度で傾斜する請求項1に係る浄水器専用水栓は、前記ベース部、センター部及びキャップ部により水栓本体を構成して、当該水栓本体の内部空間により浄水カートリッジを収納するカートリッジ内蔵部を構成する。また、請求項1に係る浄水器専用水栓は、前記キャップ部の内周面の下側に、当該キャップ部の上端に向かって所定のテーパー率で縮径するテーパー面を設けると共に、前記キャップ部の内周面において前記テーパー面より上側に段差面を設け、キャップ部のテーパー面の軸方向所定位置の外径を、前記浄水カートリッジの封止部材が当該テーパー面に圧接して水密を維持できる直径以下に設定して、前記テーパー面の軸方向所定位置から前記段差面までの間隔の範囲で、前記浄水カートリッジの上端の吐水端面の位置を調節して、前記キャップ部側の入水孔端面と前記浄水カートリッジの吐水端面との間の距離を増減変更自在としている。
【0007】
請求項2に係る浄水器専用水栓では、請求項1の構成において、前記キャップ部の段差面と入水端面との間の距離は、前記浄水カートリッジの吐水端面からの浄水が要求入水効率で前記入水端面内に入水するために必要な最小距離に設定すると共に、前記キャップ部のテーパー面の上端を前記浄水カートリッジの上端外径より小径の直径を有して当該浄水カートリッジの上端に当接係止して移動阻止する段差面としている。
【0008】
請求項3に係る浄水器専用水栓では、請求項1または2の構成において、前記ハンドル部は、前記ベース部の上端側において前記ベース部から上方に傾斜して延びている。
【0009】
請求項4に係る浄水器専用水栓は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、前記キャップ部に前記吐水パイプを装着するための別部品としての上側係止部及び下側係止部を備えている。また、請求項4に係る浄水器専用水栓は、前記キャップ部の中心部に、上側を前記上側係止部を収容自在な小径孔部とし、かつ、下側を前記下側係止部の上側部を収容自在な大径孔部とした貫通孔を形成し、当該上側の小径孔部に前記上側係止部を収容して同軸状に配設すると共に、前記下側の大径孔部に前記下側係止部を螺合により同軸状に装着し、前記上側係止部によって前記吐水パイプの基端部を凹凸の関係で係止して軸方向の移動を規制すると共に、前記下側係止部によって前記吐水パイプの下端面を当接係止してそれ以上の軸方向への移動を阻止するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る浄水器専用水栓は、十分な浄水能力を有する一方で、シンク上、シンク横またはシンク下の特別な設置スペースを必要とせず、更に、特に設置面に立設される基部部分のデザインを多様化して意匠性を向上することができる。
【0011】
請求項2に係る浄水器専用水栓は、請求項1の効果に加え、浄水カートリッジの上端がキャップ部内を上方に移動した場合でも、軸方向所定位置に段差面を浄水カートリッジの上端が最大限キャップ部の段差面まで移動したときに、段差面に当接してそれ以上の移動を阻止される。その結果、浄水カートリッジの上端の吐水端面とキャップ部の入水端面との距離が小さくなりすぎて入水端面への入水効率が低下する等の不具合を確実に防止することができる。
【0012】
請求項3に係る浄水器専用水栓は、請求項1または2の効果に加え、使用者がハンドル部を把持するためのハンドル部と設置面との間隔を大きく確保することができ、使用者は、ハンドル部を把持するために手首を適当な方向に折り曲げたりすることなく、容易にハンドル部を把持して必要な回動操作を行うことができる。
【0013】
請求項4に係る浄水器専用水栓では、請求項1乃至3のいずれかの効果に加え、吐水パイプの基端部は、軸方向の移動については上側係止部及び下側係止部により確実に規制及び阻止される一方で、周方向への回動は規制されないため、使用状態に応じて、吐水パイプを自由な角度位置に回動して吐水パイプの先端の吐水口を所望の位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の全体の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の内部構成を示す分解斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の全体の外観構成を示す正面図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の全体の外観構成を示す背面図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の全体の外観構成を示す平面図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の全体の外観構成を示す底面図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の全体の外観構成を示す右側面図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の全体の外観構成を示す左側面図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の全体の構成を示す断面図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の水栓本体の下側部分を示す要部拡大断面図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓の水栓本体の上側部分を示す要部拡大断面図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態2に係る浄水器専用水栓の全体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0016】
実施の形態1
[ベース部10]
本発明の実施の形態1に係る浄水器専用水栓は、原水吐水機能を有さず、浄水吐水機能のみを有する水栓であり、図1に示すように、設置面から起立する全体として略円筒状の水栓本体1を備えている。水栓本体は、ベース部10、センター部20及びキャップ部30からなる三分割構造(3ピース構造)であり、ベース部10、センター部20及びキャップ部30を互いに螺合等によって着脱自在に連結して同心状(同軸状)に配置し、水密に一体化するようになっている。詳細には、図2に示すように、ベース部10は、下端部を下方に向かって拡径するテーパー状の部分(皿状部分である座部)とすると共に、それ以外の部分を円筒状の外形としている。なお、ベース部10の(前記)外形は、軸方向に同一直径で延びる円筒状の外形としてもよく、或いは、(前記テーパー状の下端部以外の部分が)上端に向かって所定のテーパー率で縮径して延びる円筒状の外形としてもよい。また、ベース部10は、図10に示すように、内部に通水空間WS1を形成すると共に、底壁の中心部に、厚さ方向に貫通する断面円形の連通孔10aを形成している。更に、ベース部10は、その内部空間の上部に傾斜壁状の隔壁11を一体形成し、隔壁11の一方側の空間を、内部空間の主要容積を占める前記通水空間WS1とし、他方側の空間をバルブ収容部VSとしている。隔壁11の中央部には連通孔11aが貫通形成され、通水空間WS1をバルブ収容部VSと連通している。更に、ベース部10の外周において前記バルブ収容部VSと対向する部位には、短円筒状の支持壁12が一体形成されている。支持壁12は、ベース部10の外周の一側における上端側乃至通水方向の下流側(ベース部10の上半部)に配設され、その軸心(軸方向)がベース部10の軸心(軸方向)に対して上方に傾斜して延びている。
【0017】
また、ベース部10の上端から下方に所定距離(全軸長の1/4〜1/5程度の距離)を置いた位置には、頂壁13が一体形成され、ベース部10の頂壁13より上側の部分が短円筒状の周壁を形成している。なお、ベース部10の底壁、周壁(隔壁11対応部以外の部分)、隔壁11及び頂壁13により囲まれる空間が前記通水空間WS1となり、また、周壁(隔壁11対応部)及び隔壁11により囲まれる空間が前記バルブ収容部VSとなっている。また、頂壁13には、連通孔13aが貫通形成され、前記バルブ収容部VSを外部空間(頂壁13より上方の周壁により囲まれる空間)と連通している。なお、上記のように、ベース部10は、(前記座部以外の部分)を全体として(テーパー状ではない)単純円筒状としたり、全体を所定のテーパー率で縮径するテーパー状としたりすることもできるが、ベース部10の頂壁13より下側の部分を単純円筒状とすると共に上側の周壁部分のみを所定のテーパー率で縮径するテーパー状としたり、ベース部10の頂壁13より下側の部分及び上側の部分の双方をテーパー状とすると共にそのテーパー率を相違させたりすることも可能である。一方、頂壁13の上面の中心部には、図9〜図19に示すように、小径(頂壁13の直径の1/3程度の直径)の円盤状をなす載置部14が、所定高さだけ軸方向に突出して一体形成されている。
【0018】
[ハンドル部40・バルブカートリッジ50]
ベース部10の支持壁12には、ハンドル部40が正逆方向(時計回り方向及び反時計回り方向)に所定角度で回動自在となるよう装着されている。詳細には、ハンドル部40は、軸方向両端を円形の開口とした円筒状をなす保持部41と、保持部41の外周の周方向の所定角度位置に一体的に突出形成された操作片42とを備えている。また、保持部41の軸方向一端(頂部)には、対応する円形の遮蔽板43が着脱自在に嵌合して装着されている。遮蔽板43の表面(外側面)には、「OPEN」の文字表示が、当該文字表示の「O」の文字が外周側に来るよう設けられ、また、遮蔽板43の外周側には、「OPEN」の文字表示の「O」の文字と連続して円周方向に円弧状に一定間隔で並ぶよう、当該文字表示の「O」の文字より徐々に小径となる円形状の白抜き状のドット表示が複数個(3個)配置されている。また、遮蔽板43は、「OPEN」の文字表示の「O」の文字が前記操作片42と同一角度位置に来るよう、保持部41に嵌合装着されている。更に、図10に示すように、ハンドル部40の内部には、小径の円筒状の支持部46が同心状となるよう一体形成され、支持部46内には、インサートブッシュ44を介して、座金付きナベビス等からなる駆動軸45が回動自在に挿通されている。なお、駆動軸45は、前記遮蔽板43により外部から遮蔽及び保護されている。
【0019】
一方、図10に示すように、ベース部10のバルブ収容部VS内には、バルブカートリッジ50が収容して装着されている。バルブカートリッジ50は、軸方向の一端側(図10の左斜め下側)にセラミックディスクからなる弁部材としての止水バルブを内蔵したカートリッジであり、当該セラミックバルブを前記隔壁11の連通孔11aに対向配置している。また、バルブカートリッジ50の軸方向の他端側には六角ナット等からなる駆動部51が配設され、ハンドル部40の内部において、駆動軸45の先端に駆動部51が同心状となるよう一体的に固着され、ハンドル部40とセラミックカートリッジ50とを一体的に回動するよう互いに連結固定している。ハンドル部40の保持部41や操作片42を手指により正逆方向に所定角度で回動操作することにより、駆動軸45及び駆動部51を介して、バブルカートリッジ50のセラミックバルブが回転動作され、ベース部10の通水空間WS1内の原水を前記連通孔11aを介してセラミックバルブ内部に導入通水及び通水遮断する弁開閉動作を行うようになっている。そして、バルブカートリッジ50のバブル開状態では、前記通水空間WS11の(水源に応じた所定動水圧の)原水が、連通孔11a及びセラミックバルブから前記連通孔13aを介して外部空間(頂壁13より上方のベース部10の上端部の周壁により囲まれる空間)に流出するようになっている。
【0020】
[センター部20]
図9に示すように、センター部20は、下端部をベース部10の上端部の直径と同一の直径とし、上端に向かって第1のテーパー率で縮径する円筒状をなしている。また、センター部20は、軸方向両端を円形に開口した円筒状をなしている。センター部20は、下端がベース部10の上端に螺合によって着脱自在に接続されてベース部10と同心状に延びるようになっている。即ち、ベース部10の上端部の外周面には雄螺子が、センター部20の下端部の内周面には対応する雌螺子が形成され、ベース部10の雄螺子をセンター部20の雌螺子に螺入して接続すると共に、それら雄螺子と雌螺子との間にOリングOを装着してベース部10とセンター部20との接続部分の水密を維持している。更に、センター部20は、図9に示すように、その内周面により、前記上端に向かって前記第1のテーパー率で縮径して延びる円柱状(上方に向かって当該第1のテーパー率で先細となる円柱状乃至円錐台状)の内部空間を形成している。なお、センター部20の第1のテーパー率は、好ましくは、2〜5%の範囲、更に好ましくは、3〜4%の範囲(例えば、3.5%程度)とすることができる。センター部20をベース部10に接続した状態で、ベース部10の上端部の周壁(頂壁13より上側の部分)の内部空間とセンター部20の内部空間とが連通して一体的な通水空間WS2を形成している。そして、水栓本体10の下側の通水空間WS1と上側の通水空間WS2とが、ベース部10の頂壁13によって水密に区画され、前記隔壁11の連通孔11a、バルブカートリッジ50及び頂壁13の連通孔13aを介して連通自在となっている。
【0021】
[キャップ部30]
図11(a)に示すように、キャップ部30は、下端部をセンター部20の上端部の直径と同一の直径とし、上端に向かって第2のテーパー率で縮径する円筒状をなしている。キャップ部30の第2のテーパー率は、センター部20の第1のテーパー率以上のテーパー率(同一のテーパー率または大きなテーパー率)となっている。なお、キャップ部30の第2のテーパー率は、好ましくは、6〜10%の範囲、更に好ましくは、7〜9%の範囲(例えば、8%程度)とすることができる。即ち、センター部20の第1のテーパー率とキャップ部30の第2のテーパー率とを比較した場合、キャップ部30の第2のテーパー率は、センター部の第1のテーパー率の約2倍程度とすることができる。また、キャップ部30は、下端を開口する一方で上端を閉塞した円筒状をなしている。キャップ部30は、下端部がセンター部20の上端部に着脱自在に接続されてベース部10及びセンター部20と同心状に延びるようになっている。即ち、センター部20の上端部の外周面には雌螺子が、キャップ30の下端部の内周面には対応する雄螺子が形成され、センター部20の雌螺子にキャップ部30の雄螺子を螺入して接続すると共に、それら雌螺子と雄螺子との間にOリングOを装着してセンター部20とキャップ部30との接続部分の水密を維持している。更に、キャップ部30の内部には、上端の頂壁と同心状となるよう略短円筒状の支持壁31が一体形成されている。支持壁31の下端はキャップ部30の軸方向の略中央位置まで延びている。支持壁31の中心部の貫通孔は、上側(軸方向の略上半部)の小径の貫通孔と下側(軸方向の略下半部)の大径の貫通孔とからなる段差付きの孔(段付孔)となっている。支持壁31の貫通孔は、上側の小径の貫通孔の上端がキャップ部30の上面の中心部で所定直径となって(即ち、当該小径の貫通孔の直径で)円形に開口している。そして、支持壁31の上側の小径の貫通孔には、当該小径の貫通孔の直径と同一の外径を有するパイプブッシュからなる上側係止部32が上方から挿入及び嵌合(即ち、密嵌)して装着されている。上側係止部32の軸長は、支持壁31の小径の貫通孔の軸長と同一に設定され、上側係止部32の下端が支持壁31の小径の貫通孔と大径の貫通孔との間の段差面の位置(即ち、小径の貫通孔の下端乃至大径の貫通孔の上端)と一致すると共に、上端が支持壁31の小径の貫通孔の上端と一致してキャップ部30の上面と面一となるように、上側係止部32が所定位置に配置されている。また、上側係止部32の内周面の上端側の所定位置(上端から下方に所定距離を置いた位置)には、内方(放射方向の内側)に向かって突出するリング状の係止凸部32aが一体形成されている。
【0022】
[下側係止部33]
支持壁31の下側の大径の貫通孔には、装填式水栓上部からなる下側係止部33が嵌合して装着されている。下側係止部33は、支持壁31の当該大径の貫通孔の直径と同一の外径を有し、かつ、当該大径の貫通孔の軸長と同一の軸長を有する円筒状の小径部と、支持壁31の外径と同一の外径を有する円環板状またはフランジ状の大径部とからなる段差付きまたはフランジ付きの円筒状をなしている。そして、下側係止部33は、支持壁31の大径の貫通孔の内部に小径部を螺合等して挿着し、大径部を支持壁31の下端面に当接させた状態で、支持壁31に一体的に固定されるようになっている。このとき、下側係止部33の大径部の外周面は支持壁31の外周面と同一直径となって一体的な円筒状の外周面を構成する。また、下側係止部33の小径部は、上端が支持壁31の小径の貫通孔と大径の貫通孔との間の段差面の位置(即ち、小径の貫通孔の下端乃至大径の貫通孔の上端)と一致すると共に、下端が支持壁31の下端と一致する。更に、下側係止部33の中心部の貫通孔は、上側(前記小径部にほぼ対応する部分)の小径の貫通孔と下側(前記大径部にほぼ対応する部分)の若干大径の貫通孔とからなる段差付きの孔(段付孔)となっている。下側係止部33の上側の小径の貫通孔は、前記上側係止部32の内径と同一の内径を有する円形の貫通孔(上側係止部32の円形の貫通孔と同一形状で同一寸法の円形の貫通孔)となっており、上側の小径の貫通孔の内周面(内壁面)の位置が、上側係止部32の厚みと同一の寸法だけ支持壁31の小径の貫通孔の壁面から内方(半径方向)に位置して、上側係止部32の内周面(内壁面)と一致している。そして、支持壁31の小径の貫通孔に上方から挿入された上側係止部32の下端が、支持壁31の大径の貫通孔内にある下側係止部33の上端面に当接して、上側係止部が前記所定位置に配置されると共に、上側係止部32から下側係止部33の小径の貫通孔まで同一直径で連続する円形孔が形成されるようになっている。
【0023】
一方、下側係止部33の下側の大径の貫通孔は、所定寸法の断面正六角形状(六角ナット状)をなす流路孔33aとなっている。また、下側係止部33の流路孔33aの寸法は、前記上側の小径の貫通孔の直径(及び、上側係止部32の内径)より若干の寸法(微小寸法)だけ小さく設定されている。即ち、六角ナット状の外形を有する挿通孔33aの対向端面間の間隔(直径方向に対向する平行な一対の端面間の間隔)は、上側の小径の貫通孔の直径(及び、上側係止部32の内径)より吐水パイプ90の(周壁の)厚み分だけ小さい寸法に設定されている。そして、下側係止部33の小径の貫通孔と大径の貫通孔との間の境界面に、当該小径の貫通孔の円形と大径の貫通孔の六角ナット形状との相違に応じた段差形状の係止面33bが形成されている。即ち、当該大径の貫通孔の正六角形が当該小径の貫通孔の円形に内接して、小径の貫通孔の円周方向に合計6個の円弧形状の係止面33bが形成されている。このようにしてキャップ部30の中心部に装着した上側係止部32及び下側係止部33には、吐水パイプ90の基端部が挿入及び嵌合(密嵌)して保持されている。具体的には、吐水パイプ90の基端部は、前記上側係止部32の係止凸部32aに対応する位置(下端から上方に前記上側係止部32の下端から係止凸部32aまでの距離と同一距離だけおいた位置)に、係止凸部32aのリング形状と対応するリング溝形状をなす係止凹部91を形成し、上側係止部32に吐水パイプ90の基端部を挿入することにより、係止凹部91内に係止凸部32aを嵌合及び係止自在である。これにより、キャップ部30に上側係止部32及び下側係止部33を装着した状態で、吐水パイプ90の基端部を上側係止部32に挿入すると、吐水パイプ90の基端部が上側係止部32によって軸方向への移動不能となるよう保持されるようになっている。また、このとき、吐水パイプ90の基端(下端)が、下側係止部33の係止面33bに当接して軸方向に位置決めされると共に、キャップ部30の内方(軸方向の奥側)へのそれ以上の移動を阻止されるようになっている。この吐水パイプ90の装着状態では、吐水パイプ90の下端開口及び内部流路が、下側係止部33の流路孔33aと連通し、流路孔33aを介してキャップ部30の内部空間と連通するようになっている。なお、支持壁31と下側係止部33との間、及び、下側係止部33と吐水パイプ90(係止凹部91より下端側の部分)との間には、それぞれ、封止部材としてのOリングOが介装されてそれらの間での水密を維持している。
【0024】
また、キャップ部30の内周面と支持壁31の外周面との間には、支持壁31の軸長と同一長さの円筒状をなす狭小空間NSが形成されている。狭小空間NSは、キャップ部30の内周面の内径と同一の外径、及び、支持壁31の外周面の外径と同一の内径を有する円筒状の空間であり、その分の肉抜きによってキャップ部30を軽量化している。また、キャップ部30の内周面の軸方向所定位置(下側係止部33の下端面から下方に所定距離を置いた位置)には、リング状の段差面34が形成されている。段差面34の位置は、下側係止部33の下端から前記円筒状の狭小空間NSの厚みと同程度の寸法だけ下方の位置となるように設定されている。ここで、キャップ部30は、その下端面から前記段差面34までの間の軸方向範囲において、その内周面が上端(段差面34)に向かって所定のテーパー率で縮径して延びるテーパー面35となっており、上方に向かって(下端から段差面34まで)当該所定のテーパー率で先細となる円柱状乃至円錐台状の内部空間を形成している。なお、テーパー面35のテーパー率は、キャップ部30の外周面のテーパー率である前記第2のテーパー率と同一としてもよく、或いは、相違するテーパー率(例えば、若干小さいテーパー率)としてもよい。
【0025】
即ち、キャップ部30は、底面側から見た底面視で、図11(b)に示すように、下端の円形開口より所定距離だけ放射方向内方に段差面34の円形の輪郭線(外側及び内側の輪郭線からなる二重の円形)が表れ、その内方に狭小空間NSの円形の輪郭線(外側及び内側の輪郭線からなる二重の円形)が表れるようなテーパー状の内周面構成を備えている。なお、下側係止部33の外形線(外側の輪郭線)は狭小空間NSの内側の輪郭線と一致して表れる(即ち、下側係止部33はテーパー状ではなく、軸方向に同一直径の断面円形状の外周面を有している)。これにより、円筒状の狭小空間NSは、下側係止部33の外周面により構成される内周側、及び、キャップ部30の段差面34より上側の内周面により構成される外周側の双方が単純円筒状となるが、例えば、キャップ部30の段差面34より上側の内周面を所定のテーパー率で縮径するテーパー状とすることにより、狭小空間NSの外周面側を当該キャップ部30のテーパー面のテーパー率で縮径するようにし、狭小空間NSの厚みを先細となるよう(上端に向かって縮径するテーパー状の狭小空間NSとなるよう)形成することもできる。
【0026】
ここで、典型的には、ベース部10は、青銅等の所定の金属を上記形状及び構造となるよう鋳造することにより製造され、センター部20及びキャップ部30は、それぞれ、黄銅(真鍮)等の所定の金属を上記形状及び構造となるよう切削等することにより製造される。このとき、センター部20及びキャップ部30は、軸方向全体を通して同一肉厚とすることもできるが、特にキャップ部30は、下端から上端に向かって徐々に薄肉となるよう形成することもできる。
【0027】
[水栓本体のカートリッジ内蔵部]
水栓本体は、前記ベース部10の上端にセンター部20を螺合し、センター部20の上端にキャップ部30を螺合することで一体化される。また、ベース部10とセンター部20との接合部分(螺合部分)、及び、センター部20とキャップ部30との接合部分(螺合部分)には、それぞれ、封止部材としてのOリングOが介装されてそれらの間での水密を維持している。これにより、ベース部10の頂壁13とキャップ部30の頂壁(並びに、支持壁11及び下側係止部33)との間に、ベース部10の頂壁13より上側の周壁、センター部20の全周壁及びキャップ部30の周壁により囲まれる水栓本体の内部空間が形成される。そして、かかる水栓本体1の内部空間が、所定の浄水カートリッジ100を内蔵するカートリッジ内蔵部として機能する。この浄水カートリッジ100は、原水に含まれる所定の物質を除去する(典型的には5項目の物質を除去する)ためのものであり、吸着ろ過部としての円筒状(外観は円柱状)の活性炭部110と、膜分離ろ過部としての円柱状の中空糸膜部120とを同軸状となるよう連結した段付きの円筒状をなす。活性炭部110は、円筒状の活性炭111を上下のキャップ状の保持部112,113間に挟持したものであり、その中心部を円柱状の流路114が軸方向に延びている。また、中空糸膜部120は、円筒状のケース121内に中空糸膜122を充填したものであり、ケース121の上端の円形の開口で中空糸膜122がポッティングされ、中空糸膜122の各中空糸の開口端が開口して吐水端面123を構成している。なお、ケース121の上端部の外周面には、リング溝121aが形成され、リング溝121a内に封止部材としてのOリングOが装着されている。そして、浄水カートリッジ100では、原水は、まず、活性炭部110の活性炭111の外周面から流路114内に流入し、その過程で活性炭によって所定の複数種類の有害物質(典型的には残留塩素や重金属等の3項目の有害物質)が吸着除去され、その後、流路114から中空糸膜部121のケース121の内部空間に流入して、中空糸膜122により所定の物質(細菌や濁り成分等)が膜分離され、このようにして浄化された浄水が、吐水端面123から吐出される。ここで、特に、キャップ部30は、上水カートリッジ100の装着及び交換のために、センター部20に着脱される回数が多いため、センター部20の上端部の螺子(雌螺子)及びキャップ部30の下端部の螺子(雄螺子)は、多条螺子(例えば、4条螺子)として、通常の螺子の場合よりも小さい回動角度でキャップ30をセンター部に着脱できる構成とすることが好ましい。一方、ベース部10の上端部の螺子及びセンター部20の下端部の螺子は、多条螺子とすることも可能であるが、着脱の回数は相対的に少ないため、通常の螺子(1条螺子)とすることが好ましい。
【0028】
[交換時期ダイヤル80]
図1等に示すように、キャップ部30の上面には、交換時期ダイヤル80が配設されている。交換時期ダイヤル80は、円形リング状をなす回動部81と、回動部81の外周部の周方向の所定角度位置に一体的に突出形成された操作片82と、回動部81の外周を囲むよう同心状に密接して接合されるダイヤル部83とを備えている。ダイヤル部83の表面(上側面)には、「次回交換月」の文字表示と共に、交換時期を月単位で表す「3」、「6」「9」、「12」の数字と、それらの月数の間の月に相当する数の「O」の文字とが、連続して円周方向に一定間隔で並ぶよう配置されている。ダイヤル部83の外径は、キャップ部30の外径より所定寸法(若干寸法)だけ小さく設定されている。一方、回動部81は、中心部に、吐水パイプ90の外径に対応する(若干大径の)円形孔を貫通形成し、当該円形孔を介して吐水パイプ90を挿通し、キャップ部30の上面に載置して回動自在に保持されている。このとき、ダイヤル部83の外周縁がキャップ部30の上面の外周縁との間に若干の隙間を置いて配置されている。一方、ダイヤル部83は、キャップ部30の上面に回動不能に固定されている。
【0029】
図9及び図11に示すように、回動部81の円形孔の内周縁部とダイヤル部83の内周縁部との間(即ち、回動部81とダイヤル部83との対向周縁部間)には、当該対向周面の形状に対応する円形リング状の位置決め部材84が介装して配設されている。位置決め部材84は、その内周縁部が回動部81の内周縁部と凹凸係合や接着等の手段によって回動部81に対して一体回動するよう保持及び固定されている。また、位置決め部材84の外周縁部には、一定間隔で所定個数の凹部または凸部からなる係合部が形成されると共に、ダイヤル部83の内周縁部には、前記位置決め部材84の係合部と同一の一定間隔で同一の所定個数の凸部または凹部からなる係止部が形成されている。位置決め部材84の係合部とダイヤル部83の係止部は互いに凹凸の関係で係合自在である。また、位置決め部材84の係合部及びダイヤル部83の係止部の個数は、前記ダイヤル部83の月表示の数(12か月)に対応して12個とされている。なお、位置決め部材84の係合部及びダイヤル部83の係止部を互いに係合状態としたときには、いずれの係合位置でも、前記操作片82がダイヤル部83の月表示のいずれかの位置に合致するようになっている。即ち、操作片82は、そのような円周方向角度位置に配置されて、月表示を指示する指示部をも構成している。これにより、操作片82を介して回動部81を正逆いずれかの方向に回動することで、回動部81をダイヤル部83に対して前記係合部及び係止部の間隔でクリック感を持って所定角度ずつ回動することができ、これにより、操作片82をダイヤル部83のいずれかの所望の月表示に合致するよう配置することができる。
【0030】
[取付部60]
水栓本体1は、上記のように吐水パイプ90を装着した状態で、キッチンシンク等の設置面の所定位置、例えば、キッチンシンクの既設の湯水混合水栓の側方に隣接した位置に、取付部60によって取り付けて固定される。取付部60は、ネジ棒61と、座ゴムパッキン62と、発泡パッキン63と、菊座金64と、六角ナット状の締結具65とからなる。ネジ棒61は、その上端がベース部10の底壁の中心部に同軸状となるよう連結して固定され、ベース部10の下面から下方に直交して所定軸長で延びている。また、ネジ棒61は、外周面に所定ピッチで雄螺子を螺刻形成すると共に、断面円形の流水孔を軸芯に沿って貫通形成したものであり、上端の円形開口がベース部10の内部空間WS1と対面配置され、これにより、水源の原水を流水孔を介して上端の円形開口からベース部10の内部空間WS1に供給するようになっている。また、座ゴムパッキン62は、ベース部10の下面の直径より若干小径の円形リング状をなし、その中心部にネジ棒61の外径に対応する円形孔を形成したものであり、ネジ棒61の下端から挿通してベース部10の下面に当接配置されるようになっている。発泡パッキン63は、座ゴムパッキン62と同一直径の円形リング状をなし、その中心部にネジ棒61の外径に対応する円形孔を形成したものであり、ネジ棒61の下端から挿通して座ゴムパッキン62の下面に当接配置されるようになっている。菊座金は、発泡パッキン63より小径の円形リング状をなし、その中心部にネジ棒61の外径に対応する円形孔を形成したものである。結具65は、ネジ棒61に螺合する六角ナット状である。非使用状態では、座ゴムパッキン62、発泡パッキン63及び菊座金64は、この順番でネジ棒に挿通された状態で、ネジ棒61の基端(ベース部10の下面)と締結具65との間に配置される。
【0031】
[逆止弁部材70]
ネジ棒61の下端には、逆止弁部材70が同軸状に連結されている。逆止弁部材70は、ネジ棒61の下端部に螺合して連結自在(及び取外し自在)なネジ部71と、ネジ部71の下端から同軸状に下方に延びる収容部72とを備えている。逆止弁部材70は、ネジ部71及び収容部72を軸心に沿って貫通する連通孔を有し、ネジ部71によるネジ棒61への連結状態で、連通孔を介してネジ棒61の流水孔と連通するようになっている。また、ネジ部71は袋ナット状または六角ナット状の外形を有し、内部底面に綿入り合成ゴム等からなる円形リング状のパッキン73を収容配置している。パッキン73の外径はネジ部71の内径と同一とされ、また、中心部の円形穴の直径は連通孔の直径と同一とされている。更に、収容部72の内部(連通孔部分)には、逆止弁74が装着して固定されている。これにより、逆止弁部材70は、ネジ部71をネジ棒61に螺合して連結した状態で、逆止弁74が、原水の供給源(水源)とネジ棒61との間(流水経路上)に配置されることになり、ベース部10の通水空間WS1内部の水(浄水)がネジ棒61の流水孔から水源へと逆流するのを逆止弁74によって防止するようになっている。
【0032】
[取付部60による取付け]
本実施の形態の浄水器専用水栓は、キッチンシンク等の設置面の所定位置、例えば、キッチンシンクの既設の湯水混合水栓の側方に隣接した位置に、水栓本体1を取付部60によって取り付けて固定することで設置される。具体的には、まず、ネジ棒61から逆止弁部材70を取り外すと共に、菊座金64及び締結具65を取り外し、座ゴムパッキン62及び発泡パッキン63のみを残した(装着した)状態で、ネジ棒61を接地対象(シンクの上板等)に形成した対応する直径の円形孔に上方から挿通し、座ゴムパッキン62及び発泡パッキン63をベース部10の下面と接地対象の上面との間に介装し、座ゴムパッキン62及び発泡パッキン63に緩衝効果を発揮させる。次に、ネジ棒61の下端から発泡パッキン63及び菊座金64をこの順番で挿通し、締結部65をネジ棒61に螺入して締め付ける。これにより、座ゴムパッキン62及び発泡パッキン63を介して、ベース部10の下面と菊座金64との間で設置対象を締結具65により締結し、浄水器専用水栓の全体を設置対象の設置面に立設して固定する。その後、ネジ棒61の下端にネジ部71を完全に螺入して逆止弁部材70を連結し、逆止弁部材70の収容部72の下端に配管ホース等を介して水源側の配管部材(分岐栓等)を連結する。これにより、水源からの原水を浄水器専用水栓の内部通水空間WS1,WS2等に供給することができるようになる。なお、前記座ゴムパッキン62は、設置対象に形成した取付用の貫通孔から下方に水が漏れるのを防止する。
【0033】
[浄水カートリッジ100の装着]
浄水カートリッジ100は、図2に示すように、ベース部10にセンター部20を完全に螺合して装着すると共に、センター部20からキャップ部を取り外した状態で、センター部20の上端開口を介して内部に挿入自在(及び内部から抜取自在)である。この状態から、センター部20の上端にキャップ部30を完全に螺合して装着することで、水栓本体1の内部空間に浄水カートリッジ100を収納して装着することができる。このとき、図9〜11に示すように、ベース部10の載置部14の上面とキャップ部30の段差面34との間の間隔(軸方向寸法)が、浄水カートリッジ100の最大収容寸法(収容可能な浄水カートリッジ100の最大軸長)を規定している。即ち、水栓本体1は、内部に前記最大収容寸法までの軸長の浄水カートリッジ100を収納自在であり、最大収容寸法の範囲で、浄水カートリッジ100の寸法の相違に対応可能となっている。また、このとき、キャップ部30の段差面34より下側のテーパー面35は、上端の最小直径部の直径が、浄水カートリッジ100の中空糸膜部120の最大直径(ケース121の最大外径)と同一とされ、下端の最大直径部の直径が、中空糸膜部120の最大直径より所定寸法だけ(即ち、そのテーパー率に応じた上端と下端との間の寸法差の分だけ)大きくなっている。そして、浄水カートリッジ100を水栓本体1に装着した状態で、中空糸膜部120の上端部のOリングOがキャップ部30のテーパー面35に弾性的に接触し、テーパー面35との間での水密を維持する。これにより、中空糸膜部120の上端部のOリングOより上側の内部空間と、OリングOより下側の内部空間との間を水密に遮断する。
【0034】
即ち、このとき、水栓本体1の内部では、浄水カートリッジ100の底面の中心部がベース部10の載置部14に載置され、活性炭部110の下面とベース部10の頂壁13の上面との間に、載置部14部分を除いて、円形リング状の隙間空間が形成される。また、浄水カートリッジ100の活性炭部110の全体及び中空糸膜部120の主要部(上端部を除く大部分)は、ベース部10及びセンター部20内の通水空間WS2内に配置される。更に、ベース部10の通水空間WS1が、弁収容部VSのバルブカートリッジ50及び通水孔13aを介して、前記円形リング状の隙間空間と連通し、当該円形リング状の隙間空間を介して通水空間WS2と連通する。これに対し、浄水カートリッジ100の中空糸膜部120の上端部は、キャップ部30の内部に配置される。このとき、ケース121の外周のOリングOがキャップ部30のテーパー面35に弾性的に圧接し、OリングOより下側には、ケース121の外周面とキャップ部30のテーパー面35との間に、下方に向かって(前記テーパー面35のテーパー率で拡径する)テーパー状の微小隙間空間が形成される。この微小隙間空間は、前記通水空間WS2と連通する。また、中空糸膜部120の上端にある吐水端面123は、キャップ部30の下側係止部33の下面全面及び前記狭小空間NSの内周側の一部と対向配置される。このとき、浄水カートリッジ100の全軸長が前記水栓本体内部の最大収容寸法に満たない場合は、吐水端面123の位置は、キャップ部30の段差面34の位置よりその分だけ(前記最大収容寸法と全軸長との差の分だけ)下方になり、下側係止部33の下面中心部で開口する挿通孔33aの下端との距離は、下側係止部33の下端から段差面34までの距離より当該差の分だけ大きくなる。
【0035】
[浄水カートリッジ100の位置調節]
一方、浄水カートリッジ100は、センター部20の上端開口からベース部10のキャップ部30の内部に挿入して載置部14に載置する以外に、キャップ部30に押し込んで固定した後、センター部20の上端開口からベース部10のキャップ部30の内部に挿入して収容することもできる。即ち、この場合、浄水カートリッジ100のOリングOが、キャップ部30のテーパー面35に案内されて内方(軸方向の奥側、即ち、下側係止部33に向かう方向)に進むにつれ、OリングOが徐々に弾性的に圧縮され、OリングOの弾性圧縮による反発力によって、浄水カートリッジ100の上端部(OリングO部分)がキャップ部30の内部に保持される(意図して引き抜く力を加えない限り、その位置を保持する)。そして、浄水カートリッジ100は、最大限、中空ケース121の上端が段差面34に当接するまで押し込まれたときに、段差面34によってそれ以上の進入を阻止される。したがって、キャップ部30のテーパー面35の軸方向所定位置の外径(例えば、最大直径となる下端の外径)を浄水カートリッジのOリングOの動作外径(即ち、封止部材としてのOリングOがテーパー面35に圧接して水密を維持できる直径であり、非圧縮状態の外径より若干小さい直径)以下に設定することで、当該テーパー面35の軸方向所定位置から段差面34までの間隔の範囲で、浄水カートリッジ100の吐水端面123の位置を調節して、キャップ部30側の入水孔端面となる下側係止部33の流路孔33aの下端と浄水カートリッジ100の吐水端面123との間の距離を増減変更して最適値となるように調整することが可能である。なお、このとき、浄水カートリッジ100の全軸長は、ベース部10における浄水カートリッジ100の下端の当接位置である載置部14上面の位置からキャップ部30のテーパー面35の前記軸方向所定位置(OリングOが水密機能を発揮する弾接位置)までの距離以下の寸法とする必要がある。即ち、キャップ部30側の入水孔端面となる下側係止部33の流路孔33aの下端と浄水カートリッジ100の吐水端面123との間の距離(間隔)は、吐水端面123の直径(ケース121の上端開口の内径にほぼ一致)、外形(輪郭)、総面積等に応じて、適宜設定変更することが好ましい場合があり、実施の形態1では、このような吐水端面123の位置の設定変更を前記テーパー面の前記軸方向所定位置から段差面までの間の範囲で自由に行うことができる。
【0036】
[浄水カートリッジ100の移動規制]
また、本実施の形態では、浄水カートリッジ100の吐水端面123とキャップ部30の入水端面(流路孔33aの下端)との最小間隔を規定する段差面34と流路孔33aとの間の距離は、使用予定の全ての浄水カートリッジ100を想定して、当該浄水カートリッジの(各種の外形形状等を有する)吐水端面123からの浄水が必要な入水効率(規格等によって要求される入水効率、即ち、要求入水効率)で入水端面としての流路孔33a内に入水するために必要な最小距離に設定している。ここで、ベース部10の連通孔13aからの原水流入による水圧によって、載置部14上の浄水カートリッジ100の下面に上方への圧力が発生し、浄水カートリッジ100のOリングOとキャップ部30のテーパー面35との弾接状態に応じた位置保持力によっては、浄水カートリッジ100が通水空間WS2内を上方に移動する可能性もある。しかし、本実施の形態では、キャップ部30のテーパー面35の上端を浄水カートリッジ100の上端外径より小径の直径を有して浄水カートリッジ100の上端に当接係止して移動阻止する段差面34としているため、浄水カートリッジ100の上端がキャップ部30内を上方に移動した場合でも、軸方向所定位置に段差面を浄水カートリッジ100の上端が最大限キャップ部30の段差面34まで移動したときに、段差面34に当接してそれ以上の移動を阻止される。その結果、浄水カートリッジ100の上端の吐水端面123とキャップ部30の入水端面である流路孔33a下端との距離(通水間隔)が小さくなりすぎて流路孔33aへの入水効率が低下する等の不具合を確実に防止することができる。また、本実施の形態によれば、上記のような作用効果を発揮するキャップ部30の入水端面(流路孔33aの下端)と段差面34との間の間隔は、下側係止部33の大径部の厚みを増減変更することでも増減変更することができる。したがって、異なる厚みの大径部を有する下側係止部33を複数用意し、必要とされるキャップ部30の入水端面(流路孔33aの下端)と段差面34との間の間隔に応じて、それら複数の下側係止部33から、最適な厚みの大径部を有するものを選択してキャップ部30に装着することで、浄水カートリッジ100の仕様(軸長や吐水端面123の構成等)に応じて、キャップ部30の入水端面(流路孔33aの下端)と段差面34との間の間隔を最適な値に容易に設定することもできる。
【0037】
[ハンドル部40の操作性]
上記のようにして、水栓本体1内に浄水カートリッジ100を装着した浄水器専用水栓では、ハンドル部40を止水位置から吐水位置に回動して切り替える(吐水位置とする)ことにより、バルブカートリッジ50のセラミックバルブを開弁状態とし、水源からの原水を、前記逆止弁部材70及びネジ棒61から下側の通水空間WS1内に導入し、バルブカートリッジ50を介して連通孔13aから上側の通水空間WS2へと供給することができる。このとき、浄水器専用水栓が配置される設置場所の高さ位置は、通常は、使用者の視線の位置よりかなり下方の位置となるのに対応して、ハンドル部40がベース部10の上端側に設けられると共に上方に傾斜して延びているため、ハンドル部40の遮蔽板43の表面にある文字表示が、(特に遮蔽板43を正面方向にまたはそれに近い方向から見た場合)使用者の視線の向かう方向に対応して配置されることになり、使用者が遮蔽板43の文字表示を容易に視認することができる。また、従来のようにハンドル部が水栓の基端付近(設置面に近接する位置)で水平に延びる場合、使用者がハンドル部を把持するためのハンドル部と設置面との間隔が小さくなり、使用者がハンドル部を把持するためには手首を適当な方向(例えば、ハンドル部の配置態様に合わせて不自然な方向)に折り曲げたりする必要があるが、本実施の形態では、ハンドル部40がベース部10の上側で上方に傾斜して延びるため、使用者がハンドル部40を把持するためのハンドル部40と設置面との間隔を大きく確保することができ、使用者は、ハンドル部を把持するために手首を適当な方向に折り曲げたりすることなく、容易にハンドル部40を把持して必要な回動操作を行うことができる。特に、使用状態によっては、使用者がハンドル部40の正面側または正面側に近い方向からハンドル部40を把持して回動することも考えられるが、この場合、従来のように設置面付近で水平に延びるハンドル部の場合は、使用者が手首を手前側に折り曲げないとハンドル部を把持することができないのに対し、本実施の形態では、ハンドル部40が従来よりも上方の位置で上方に傾斜して延びるため、使用者は、手首をあまり折り曲げなくてもハンドル部40の保持部41及び操作片42を円滑に把持することができる。更に、本実施の形態によれば、ハンドル部40がベース部10の上端側に設けられると共に上方に傾斜して延びているため、浄水器専用水栓の設置場所においてその周辺を掃除する場合等において、ハンドル部40の下側に十分なスペースを確保することができ、掃除等の各種作業を円滑かつ容易に行うことができる。
【0038】
[吐水パイプ90の固定]
また、本実施の形態では、上記のように、水栓本体のキャップ部30に吐水パイプ90を装着するために、別部品としての上側係止部32及び下側係止部33を備え、キャップ部30の中心部の貫通孔の上側の小径孔部に上側係止部32を収容して同軸状に配設すると共に、下側の大径孔部に下側係止部33を螺合により同軸状に装着し、上側係止部32の係止凸部32aによって吐水パイプ90の基端部の係止凹部91を凹凸の関係で係止して軸方向の移動を規制すると共に、下側係止部33の係止面33bによって吐水パイプ90の下端面(基端面)を当接係止してそれ以上の軸方向への移動を阻止している。したがって、本実施の形態では、吐水パイプ90の基端部をキャップ部30の中心部の貫通孔に上方から挿入するだけで、吐水パイプ90の基端部を上側係止部32によって保持して軸方向両側(押し込み方向及び抜き取り方向の両方向)へ移動規制すると共に、下側係止部33によって押し込み方向への移動を完全に阻止して、吐水パイプ90をキャップ部30の定位置に確実に位置決めして装着保持し、かつ、その定位置に安定的に固定することができる。また、このとき、上側係止部32及び下側係止部33は、上記凹凸の関係による係止及び当接係止によって吐水パイプ90の基端部の軸方向の移動を規制する一方で、吐水パイプ90の回動を規制するものではない(即ち、単に吐水パイプ90の回動を許容する構成である)ため、吐水パイプ90の基端部は、軸方向の移動については上側係止部32及び下側係止部33により確実に規制及び阻止される一方で、周方向への回動は規制されないため、使用状態に応じて、吐水パイプ90を自由な角度位置に回動して吐水パイプ90の先端の吐水口を所望の位置に配置することができる。
【0039】
[ダイヤル部80の操作性]
また、本実施の形態では、交換時期ダイヤル80の回動部81を回動して、ダイヤル部83の所望の月表示に操作片82を配置することで、浄水カートリッジ100の交換時期を使用者に対して確実に報知することができる。例えば、浄水カートリッジ100の製品寿命が6カ月の場合、次回の交換時期を現在の月の6ヶ月後の月として(3月に設置する場合は、9月を交換時期として)、操作片82をその月表示となる角度位置まで回動することで、使用者は、交換時期ダイヤル80を確認するだけで、次回の浄水カートリッジ100の交換時期を確実に把握することができる。
【0040】
[3ピース構成の水栓本体]
本実施の形態によれば、水栓本体が、ベース部10、センター部20及びキャップ部30の3部品構成(3ピース構成)となっているため、水栓本体内部に浄水カートリッジ100を装着したり、水栓本体内部から浄水カートリッジ100を交換等の目的で取り外したりする場合に、センター部20からキャップ部30のみを取り外すだけで、上水カートリッジの装着や離脱が可能になり、その作業性を向上することができる。また、このとき、センター部20の上端部の雌螺子及びキャップ部30の下端部の雄螺子は、対応する多条螺子(例えば、4条螺子)として構成されるため、通常の螺子の場合よりも小さい回動角度でキャップ30をセンター部20に対して着脱することができ、この点からも作業性を向上することができる。更に、水栓本体は、全体として先細となるテーパー付円筒形状乃至略円錐台形状の外観形状となるように構成されると共に、当該テーパー付円筒形状の外観形状とするために、水栓本体が、ベース部10、センター部20及びキャップ部30の3部品から構成されている。ここで、従来の水栓本体は1部品からなる単純円筒形状の外観形状であり、全体としてスリムでコンパクトな外観を呈してその意匠性(デザイン性)を向上することができるが、1部品からなる水栓本体に対して本実施の形態のようなテーパー付円筒形状の外観形状を付与するためには、水栓本体の加工が複雑となり、そのための適切な材料選定や適切な加工処理が容易でなく、製造コストの上昇につながる可能性がある。一方、本実施の形態によれば、水栓本体の基端部(下端部)、中間部及び先端部(上端部)を、ベース部10、センター部20及びキャップ部30からなる別ピース構成(3ピース構成)としているため、水栓の各部分に応じて必要とされるテーパー率、外観形状や外周面形状等の外側の構成、内周面形状等の内部構成等、種々の必要構成や仕様に応じて、加工面やコスト面等から最適な材料、製造方法等を採用することができる。例えば、水栓本体の基端部となるベース部10は、上方に傾斜するハンドル部40等の特殊な構造が付加されるため、青銅等の鋳造用の金属材料を使用して鋳造によって上記構造となるよう形成することが好ましいが、水栓本体の中間部となるセンター部20や先端部となるキャップ部30は、上記第1のテーパー率や第2のテーパー率、或いは、狭小空間NSや支持壁31等の構成を得るために、快削黄銅等の切削用の金属材料を使用して切削によって上記構造となるよう形成することが好ましい。その結果、本実施の形態の浄水器専用水栓は、このように3分割構成とした水栓本体により、水栓本体の不良率を低減することで、製品全体の不良率も低減することができる。
【0041】
更に、本実施の形態の浄水器専用水栓は、水栓本体の基端部(下端部)、中間部及び先端部(上端部)を、ベース部10、センター部20及びキャップ部30からなる別ピース構成(3ピース構成)としているため、各部のベース部10の頂壁13より上側の周壁(全体または内周面のみ)を所定のテーパー率で縮径するテーパー状とし、センター部20(全体または内周面のみ)を所定の第1のテーパー率で縮径するテーパー状とし、キャップ部30を所定の第2のテーパー率で縮径するテーパー状とすることにより、水栓本体の全体を所望のテーパー付円筒形状とすることができるが、ベース部10、センター部20及びキャップ部30のそれぞれのテーパー率を相違させることにより、異なるテーパー率の基端部、中間部及び先端部から水栓本体の意匠外観を構成することもでき、多様な意匠構成やデザイン構成が可能となる。
【0042】
[通水時・止水時の動作]
上記のように構成した本実施の形態の浄水器専用水栓は、ハンドル部40を吐水位置とすることにより、原水が、水栓本体の通水空間WS1からバルブカートリッジ50を介して通水空間WS2に流入する。すると、原水は、通水空間WS2内にある浄水カートリッジ100のOリングOとキャップ部30のテーパー面35との間の封止箇所より下側の空間に充満し、活性炭部110の活性炭111の外周面から内部に進入して流路114内に流入する。この過程で、原水に含まれる所定の物質が活性炭111により吸着除去される(一次浄水となる)。このとき、従来のようにカートリッジ内蔵部の内周面が単純円筒状の場合は原水が上水カートリッジの活性炭の外周面と平行な方向に流れるのに対し、本実施の形態では、センター部20の内周面が上端に向かって縮径するテーパー状となっているため、原水がセンター部20のテーパー状の内周面に衝突して、センター部20の軸心に向かう方向、即ち、活性炭111の外周面に向かう方向へと変向して流れることになり、活性炭111の外周面から内部に進入する原水の進入効率を増大することができる。また、前記一次浄水は、活性炭111の流路114から中空糸膜部120の内部に進入し、吐水端面123からキャップ部30に向かって吐出される。この過程で、一次浄水に残留する所定の物質が中空糸膜122に膜分離されて除去される(二次浄水乃至最終的な浄水となる)。そして、中空糸膜部120の吐水端面123から吐出された浄水は、通水空間WS2内にある浄水カートリッジ100のOリングOとキャップ部30のテーパー面35との間の封止箇所より上側の空間に充満し、下側係止部33の流路孔33aから吐水パイプ90の内部に流入し、最終的に、吐水パイプ90の先端の吐水口から吐出される。このとき、やはり、キャップ部30の内周面が上端に向かって縮径するテーパー状となっているため、センター部20の場合と同様に、吐水端面123からの浄水がキャップ部30のテーパー状の内周面に衝突して、キャップ部の軸心に向かう方向、即ち、下側係止部33の流路孔33aに向かう方向へと変向して流れることになり、吐水端面123から下側係止部33の流路孔33aに流入する原水の流入効率乃至集束効果を増大することも期待できる。
【0043】
一方、浄水器専用水栓は、ハンドル部40を止水位置とすることにより、バルブカートリッジ50が水栓本体の通水空間WS1から通水空間WS2への原水の流入を遮断する。このとき、逆止弁部材70の逆止弁74により、ベース部10の通水空間WS1内部の上浄水がネジ棒61の流水孔から水源へと逆流するのを防止することができる。
【0044】
実施の形態2
[定流量弁の付設]
図12に示すように、実施の形態2に係る浄水器専用水栓は、実施の形態1の取付部60とほぼ同様の構成の取付部160内に定流量弁162を内蔵した点、及び、吐水パイプ90の先端の吐水口に樹脂キャップ90aを装着した点を除いて、基本的に実施の形態1の浄水器専用水栓と同様の構成であり、当該構成による同様の作用効果を発揮する。詳細には、実施の形態2では、取付部160のネジ棒61は、実施の形態1のネジ棒61とほぼ同様の構成であり、外周面に所定ピッチで雄螺子を螺刻形成しているが、その一方、内部に軸心に沿って貫通形成される流水孔が、実施の形態1のネジ棒61の流水孔とは異なる構成となっている。即ち、ネジ棒61は、定流量弁162を収容するための収容空間を形成すべく、下端より所定距離だけ(即ち、定流量弁162の高さ分だけ)上方の位置に、リング状の隔壁161を一体形成している。そして、逆止弁部材70からの原水がネジ棒61内の定流量弁162に流入して一定流量でベース部10の通水空間WS1内に流入するようにしている。また、吐水パイプ90の先端の樹脂キャップは、吐水口からの吐水を整流する等の目的で設置される。
【0045】
[本発明の範囲]
ところで、本発明の浄水器専用水栓は、上記実施の形態1及び2の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において、各種の変更が可能である。例えば、水栓本体1に内蔵される浄水カートリッジは、上記浄水カートリッジ100のように活性炭部110を大径とし、中空糸膜部120を小径とした段付円筒状のものとする以外に、活性炭部及び中空糸膜部を同一外径とした単純円筒状の浄水カートリッジとすることもできる。この場合、浄水カートリッジの上端部の外径(即ち、各部の外径)は、上端部のOリングがキャップ部30のテーパー面35に弾接して水密を維持できるよう、当然、キャップ部30のテーパー面35の最少直径よりも大きな動作径を有するものとする。また、この場合、活性炭部の外周面とセンター部20の内周面との間の間隙が上記段付浄水カートリッジの場合より大きくなるが、作用効果的には、上記実施の形態1及び2と同様のものを発揮することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:水栓本体、10:ベース部、20:センター部、30:キャップ部
40:ハンドル部、50:セラミックカートリッジ(弁部材)
100:浄水カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通水空間を有すると共に、円筒状の外形を有するベース部と、
下端部を前記ベース部の上端部の直径と同一の直径とし、上端に向かって第1のテーパー率で縮径し、かつ、軸方向両端を円形に開口した円筒状をなし、下端部が前記ベース部の上端部に着脱自在に接続されて前記ベース部と同心状に延びると共に、その内周面により前記上端に向かって前記第1のテーパー率に対応するテーパー率で縮径して延びる円柱状の内部空間を形成するセンター部と、
下端部を前記センター部の上端部の直径と同一の直径とし、上端に向かって前記センター部の第1のテーパー率以上となる第2のテーパー率で縮径し、かつ、下端を開口する一方で上端を閉塞した円筒状をなし、下端部が前記センター部の上端部に着脱自在に接続されて前記センター部と同心状に延びるキャップ部と、
前記キャップ部に装着された吐水パイプと、
前記ベース部の前記通水空間の上端側に内蔵された弁部材と、
前記ベース部の外側において前記弁部材と対応する位置に配設され、前記弁部材を開弁及び閉弁操作自在なよう当該弁部材に作用的に連結されると共に、軸方向が前記ベース部の軸方向に対して上方に所定角度で傾斜するハンドル部とを備え、
前記ベース部、センター部及びキャップ部により水栓本体を構成して、当該水栓本体の内部空間により浄水カートリッジを収納するカートリッジ内蔵部を構成し、
前記キャップ部の内周面の下側に、当該キャップ部の上端に向かって所定のテーパー率で縮径するテーパー面を設けると共に、前記キャップ部の内周面において前記テーパー面より上側に段差面を設け、キャップ部のテーパー面の軸方向所定位置の外径を、前記浄水カートリッジの封止部材が当該テーパー面に圧接して水密を維持できる直径以下に設定して、前記テーパー面の軸方向所定位置から前記段差面までの間隔の範囲で、前記浄水カートリッジの上端の吐水端面の位置を調節して、前記キャップ部側の入水孔端面と前記浄水カートリッジの吐水端面との間の距離を増減変更自在としたことを特徴とする浄水器専用水栓。
【請求項2】
前記キャップ部の段差面と入水端面との間の距離は、前記浄水カートリッジの吐水端面からの浄水が要求入水効率で前記入水端面内に入水するために必要な最小距離に設定すると共に、前記キャップ部のテーパー面の上端を前記浄水カートリッジの上端外径より小径の直径を有して当該浄水カートリッジの上端に当接係止して移動阻止する段差面としたことを特徴とする請求項1記載の浄水器専用水栓。
【請求項3】
前記ハンドル部は、前記ベース部の上端側において前記ベース部から上方に傾斜して延びることを特徴とする請求項1または2記載の浄水器専用水栓。
【請求項4】
前記キャップ部に前記吐水パイプを装着するための別部品としての上側係止部及び下側係止部を備え、
前記キャップ部の中心部に、上側を前記上側係止部を収容自在な小径孔部とし、かつ、下側を前記下側係止部の上側部を収容自在な大径孔部とした貫通孔を形成し、当該上側の小径孔部に前記上側係止部を収容して同軸状に配設すると共に、前記下側の大径孔部に前記下側係止部を螺合により同軸状に装着し、前記上側係止部によって前記吐水パイプの基端部を凹凸の関係で係止して軸方向の移動を規制すると共に、前記下側係止部によって前記吐水パイプの下端面を当接係止してそれ以上の軸方向への移動を阻止するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の浄水器専用水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−241604(P2011−241604A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114845(P2010−114845)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年4月1日 株式会社早川バルブ製作所発行の「総合カタログ2010−2011」に発表
【出願人】(590006309)株式会社早川バルブ製作所 (18)
【Fターム(参考)】