浄水器
【課題】使用者により安全な飲料水を供給できる浄水器を提供する。
【解決手段】一端面に原水を流入する流入口を、他端面に浄水を流出する流出口を有する外ケース61と、外ケース61に収納される内ケース62とを備え、外周面側に配設される外フィルタ64と内周面側に配設される内フィルタ63との間に配設される筒状のろ材充填部65と、内フィルタ63の内周側に設けられる集合流路69とを内ケース62に備え、外フィルタ64の外周側に設けられる外周流路68と集合流路69との間で、原水がろ材充填部65を径方向に通水して浄化される浄水器において、ろ材充填部65の軸方向に通水可能な開口部74を内ケース62に設け、開口部74から原水をろ材充填部65に導き、得られた浄水を流出口67に導く。
【解決手段】一端面に原水を流入する流入口を、他端面に浄水を流出する流出口を有する外ケース61と、外ケース61に収納される内ケース62とを備え、外周面側に配設される外フィルタ64と内周面側に配設される内フィルタ63との間に配設される筒状のろ材充填部65と、内フィルタ63の内周側に設けられる集合流路69とを内ケース62に備え、外フィルタ64の外周側に設けられる外周流路68と集合流路69との間で、原水がろ材充填部65を径方向に通水して浄化される浄水器において、ろ材充填部65の軸方向に通水可能な開口部74を内ケース62に設け、開口部74から原水をろ材充填部65に導き、得られた浄水を流出口67に導く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、一端面に原水を流入する流入口を、他端面に浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納される内ケースとを備え、外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備えた浄水器、及び浄水を貯水する貯水槽と貯水した前記浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納され原水を貯水する原水槽と、前記外ケースに収納され前記原水槽に連通して原水が流入する内ケースを備え、外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備えた浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような浄水器として、流入口から流入した原水がろ材充填部を径方向に通過することで、浄化される浄水カートリッジを備えた浄水器が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
そして、このような浄水器を用いることで、ろ材充填部を軸方向に通過する場合と比較して、短いろ過長で原水を浄化できるため、ろ材に微粒ろ材を用いることができ、浄水性能を向上させることができる。
【0004】
更に、上記の浄水器では、ろ材の流入口側端面に弾性体を配設することで、ろ材充填部の圧密を加速することができるため、浄水性能を向上させることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−212555号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図11に示すような従来の浄水器では、浄水器の浄水カートリッジ6内において、通水性のない蓋部78により止水が滞留するデッドスペース76が発生する。すなわち、塩素が脱離され殺菌効果の低下した浄水が上記デッドスペース76に停滞し止水となることで、浄水器内での細菌繁殖リスクが増大する可能性があるため、細菌が繁殖しやすい夏季や、長期間浄水器を使用しなかった後に、使用者が捨て水をせずに上記浄水器を使用すると衛生管理上好ましくなく、改善の余地があった。
【0007】
本願発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用者により安全な飲料水を供給できる浄水器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するための本願発明に係る浄水器は、一端面に原水を流入する流入口を、他端面に浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納される内ケースとを備え、外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備え、前記外フィルタの外周側に設けられる外周流路と前記集合流路との間で、前記原水が前記ろ材充填部を径方向に通水して浄化される浄水器であって、その特徴構成は、前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を前記内ケースに設け、前記開口部から前記原水を前記ろ材充填部に導き、得られた浄水を前記流出口に導く点にある。この構成は例えばカウンタートップ据え置き型の浄水器や、蛇口直結型浄水器、ポット型浄水器などの浄水器に採用できる。
【0009】
上記特徴構成によれば、前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を設けることで、前記ろ材充填部の軸方向の原水流入口側に生じる充填隙間を原水が流れる状態に維持できるため、止水が滞留するデッドスペースを解消でき、細菌繁殖リスクを低減することができる。
【0010】
また、従来構造では通水がなされていないがために、充分な浄水機能を発揮できなかったろ材特定部位(今回の発明で開口部を設ける側にあるろ材充填部の軸方向端部側部位)に対し軸方向に通水がなされることで、前記ろ材特定部位を有効に活用することができる。更に、前記ろ材充填部に開口部から軸方向に水圧が加えられることで、前記ろ材充填部への圧密を加速することができるため、浄水性能を向上させることができる。
【0011】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部が前記流出口側に設けられ、前記外周流路がU字型に屈曲した形状で前記開口部に連通する構造を有する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、前記開口部を前記流出口側に備えることにより、前記外周流路がU字型に屈曲した形状で前記開口部に連通する構造を有することで、従来構造において袋小路となり止水が停滞していたデッドスペースを解消することができ、細菌繁殖リスクを低減して、浄水性能の低下を抑制することができる。
【0013】
上記目的を達成するための本願発明に係る浄水器は、浄水を貯水する貯水槽と貯水した前記浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納され原水を貯水する原水槽と、前記外ケースに収納され前記原水槽に連通して原水が流入する内ケースを備え、
外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備え、前記外フィルタの外周側と前記集合流路との間で、前記原水が前記ろ材充填部を径方向に通水して浄化される浄水器であって、その特徴構成は、前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を前記内ケースに設け、前記原水槽から前記開口部を経て前記原水を前記ろ材充填部に導き、得られた浄水を前記貯水槽に導く点にある。この構成は、例えばポット型浄水器や、蛇口直結型浄水器、カウンタートップ型浄水器などの浄水器に採用できる。
【0014】
上記特徴構成によれば、前述したものと同様に、前記内ケース内の止水が滞留するデッドスペースを解消でき、細菌繁殖リスクを低減させ、浄水性能の低下を防止することができる。さらに、前記内ケース内の通水経路が簡略化した構造とすることが可能なため、容易で廉価な浄水器を製造することができる。また、従来構造では、通水がなされていないがために、充分な浄水機能を発揮できなかったろ材特定部位に対し軸方向に通水がなされることで、前記ろ材特定部位を有効に活用できる。更に、前記ろ材充填部に前記開口部から軸方向に水圧が加えられることで、前記ろ材充填部への圧密を加速することができるため、浄水性能を向上させることができる。
【0015】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記原水が前記ろ材充填部を前記外フィルタの外周側から前記集合流路へ向う径内方向に通水する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、流路が浄水カートリッジの外側から内側に向かって形成されるため、外周側の広断面の外周流路から、内周側の低断面の集合流路に原水を流すことで充分な浄水性能を発揮できる。また、流路が軸心に向いていることで浄水カートリッジの構造の安定性が向上し、漏水などが発生する可能性を低減することができる。
【0017】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部に、通水可能な第1フィルタを配設している点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、第1フィルタで通水を可能としながら、例えば比較的粒径の大きい異物がろ材充填部に到達・蓄積することを防止することができ、且つろ材充填部からろ材が外部へ流出することを防止することができる。
【0019】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部と前記ろ材充填部との間に、前記内フィルタ又は前記外フィルタのうち流入側のフィルタより通水性の低い第2フィルタを前記ろ材充填部の軸方向に摺動可能に配設した点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、前記ろ材充填部の前記開口部において、原水の流入による水圧により、前記通水性の低い第2フィルタが押圧され軸方向に摺動して前記ろ材充填部の圧密を加速するため、浄水性能を向上させることができる。また、上記第2フィルタを備えることにより、前記開口部におけるろ材充填部の端面が、上記フィルタを備えない構造と比較して、強く押圧されることで圧密が加速されるため、浄水能力が向上する。また、水が通路の特定箇所のみを多量に流れるチャネリングを抑制することができ、一定の水質を維持することができる。さらに、ろ材充填部の端面を均一に押圧することができ、前記端面が軸方向に対して水平に保たれるため、どの流路においてもろ過長を一定に保つことができ、常に一定の水質を維持することができる。さらに、上記第2フィルタが通水可能な構造を有することで、充填隙間を常に通水する構造とすることにより、細菌の繁殖を防止することができる。
【0021】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部と前記ろ材充填部との間に、通水により体積が膨張する素材を配設した点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、通水により体積が膨張する乾燥イオン交換樹脂や吸水性樹脂などの素材(以下、膨張素材)に通水されることで、体積が膨張し充填隙間を埋めるとともに、ろ材充填部の圧密を加速するため、浄水性能を向上させることができる。また、ろ材と膨張素材を分離して配設することにより、ろ材内に膨張素材を混合する場合と比較して、ろ過性能を高く維持できるため、浄水性能を向上することができる。
【0023】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部を介して前記ろ材充填部を軸方向に通水してろ過するろ過長が、前記ろ材充填部を径方向に通水してろ過するろ過長より長い点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、ろ材充填部を軸方向に通過した原水であっても、径方向に通過した場合と同等以上の水質を確保することができる。すなわち、ろ材充填部のろ材は流動可能に構成されているため、軸方向からの流入口端面は軸に対して垂直な面を維持しておらず、原水の流入する端面の位置によってろ過長が変化するが、軸方向の考えうる最短のろ過長が径方向のろ過長と同等以上となるようにろ材充填部の端面を配設することで、原水がろ材充填部を軸方向に通過する場合であっても、径方向に通過した場合と同等以上の水質を確保することができる。
【0025】
発明者らは、従来構造の浄水器におけるデッドスペースと本願構造の浄水器において従来デッドスペースを形成していた構造部分において、細菌を意図的に繁殖させて通水した場合に、吐出管から検出される細菌数を測定した。その結果、従来構造では時間が経過しても細菌が検知され続けたのに対し、本願発明の考案構造では通水後10秒程度で細菌数が検知されなくなるという実験結果を得た。この結果から、本願構造をとることにより、浄水器内を細菌の繁殖しにくい環境とすることができ、使用者により安全性の高い浄水を供給できる浄水器であるという知見を得た。本願発明は、これらの知見に基づくものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
本願発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示す浄水器は、キッチンカウンターに設置されるカウンタートップ型浄水器として構成されており、蛇口1に接続される切替バルブ2と、その切替バルブ2から給水ホース3を通じて水が供給される浄水器本体4と、浄水器本体4から受け入れた水をろ過する浄水カートリッジ6と、浄水カートリッジ6でろ過された浄水を浄水吐出口81に導いて吐出する浄水吐出管8とを備えている。
【0027】
なお、詳細は後述するが、上記浄水カートリッジ6は、外ケース61と外ケース61に収納されている内ケース62を備えており、その内部の流路は、水が滞留することなく通水するように構成されている。
【0028】
さらに浄水カートリッジ6は、下方に突出し浄水器本体4の給水路43に連通した流入口60と、上方に突出し後述する浄水吐出管8が一体接続される流出口67とが形成された円筒状の外ケース61を備え、浄水器本体4の給水路43から流入口60を通じて内ケース62内に受け入れた水をろ過し、そのろ過後の浄水を流出口67から浄水吐出管8に供給するように構成されている。
【0029】
切替バルブ2は、切替レバー2aの揺動操作により、蛇口1から受け入れた原水を給水ホース3を通じて浄水器本体4に供給して浄水を浄水吐出口81から浄水を吐出させる浄水吐出状態と、蛇口1から受け入れた原水を図示しない原水吐出口から吐出させる原水吐出状態と、蛇口1から受け入れた原水を図示しないシャワー口から吐出させるシャワー状態とに切替自在に構成されている。
【0030】
浄水器本体4は、円筒状の本体ケーシング部材41と、その本体ケーシング部材41の下方に設けられ給水ホース3が接続される継手部42とが設けられ、本体ケーシング部材41の中心部には、その給水ホース3から供給された水が流通する給水路43が設けられている。
【0031】
次に、上記浄水カートリッジ6が、内部での細菌の繁殖を抑制し、且つ浄水性能を向上させる構造について、図1を用いて説明する。
【0032】
上記浄水カートリッジ6は、カートリッジケーシング77内において一端面に原水を流入する流入口60と他端面に浄水を流出する流出口67を有する外ケース61と、前記外ケースに収納される内ケース62とを備えている。そして、前記内ケース62が、外周側面に通水可能な外フィルタ64を、前記外フィルタ内部において原水を浄化する筒状のろ材充填部65を、前記ろ材充填部65の内周側面に通水可能な内フィルタ63を、前記内フィルタ63内に前記流出口67と連通する集合流路69を有し、前記外ケース61と前記内ケース62との間に外周流路68を備えている。さらに、前記ろ材充填部65が、側面から径方向に通水可能な通水部75と、前記流出口67側端面から軸方向に通水可能な開口部74と、前記開口部74にろ材の流出を防止する第1フィルタ96と、前記流出口67側の内側面と外側面に隔壁66とを備えている。上記外フィルタ63と内フィルタ64には、ネットや不織布等が用いられる。
上記浄水カートリッジ6に供給された原水は、ろ材充填部65を径方向に通過する流路(a)に加えて、一部の原水はろ材充填部65を軸方向に通過する流路(b)を通過する。流路(a)を通過する原水は、外周流路68を通過し通水部75からろ材充填部65を径方向へ通過する。一方で、流路(b)を通過する原水は、通水部65を通らず外周流路68を流出口67側へ通過し開口部74を通り、ろ材充填部65を軸方向に通過する。
【0033】
上記(b)の流路が形成される構造をとることにより、図11に示す従来の構造において存在していたデッドスペースが解消され、止水の滞留による細菌の繁殖リスクが低減される。さらに、外周流路68における流出口側の空間73に形成されていたデッドスペースについても、止水の滞留が抑制され良好な流路が形成できる。
【0034】
さらに、上記(b)の流路のろ過長L2は、上記(a)の流路のろ過長L1よりも長く構成されている。このようにすることで、例えば、ろ材充填部65の原水の流入口側端面が軸心に対して垂直をなしていない場合でも、ろ材充填部65における最短ろ過長を常にろ過長L1以上として、必要最低限のろ過長を維持することができ、浄水の水質を一定以上に維持できる。
【0035】
上記浄水カートリッジ6は、図2のように、原水が軸心から径外方向にろ材充填部を通過して浄化する構成にしてもよい。このような構成にすることで、上記とほぼ同様の作用・効果が得られる。
【0036】
〔第2実施形態〕
本願発明の第2実施形態について、図面に基づいて説明する。
図3に示す浄水器は、第1実施形態の図1に示す浄水器の構造に加えて、開口部74とろ材充填部65との間に、流入側のフィルタである外フィルタ64より通水性の低い第2フィルタ92を軸方向に対して摺動可能な形態で備えている。また、隔壁66に対して、ガイド93が備えらており、上記第2フィルタ92は上記ガイド93とともに隔壁66に沿う形態で、軸方向にフィルタ面を垂直にして摺動する。さらに、ガイド93の上記開口部74側には、ストッパー94が備えられており、上記第2フィルタ92の軸方向の摺動を一定の範囲内に拘束できる形態となっている。
【0037】
流入口60から原水が流入した場合、上記第2フィルタ92には、通水性の関係から外フィルタ64よりも高い水圧がかかり、ろ材充填部65の軸方向の原水流入口端面を上記ガイド93に沿う形態で押圧する。一方で、原水の流入が停止した場合、上記第2フィルタ92は水圧から開放され、上記ストッパー94とろ材充填部65の原水流入口端面との間に拘束される形態で浮遊して存在する。
【0038】
このような構造をとることにより、ろ材充填部65の圧密が加速されるとともに、ろ材充填部65の端面が均一に押圧されるという効果を奏する。前記の効果により、ろ材充填部65におけるチャネリングを防止することができる。さらに、後記の作用により、ろ過長を均一に維持することができ、どのろ過経路を通過した原水でも一定レベル以上の水質を維持できる。
【0039】
また、上記第2フィルタ92が通水可能な構造を有することで、図11の従来構造にある充填隙間72が存在しない構造をとることができるため、細菌の繁殖する環境を防ぐことができる。
【0040】
又、図4に示すように、上記第1実施形態の図2に示す浄水器の構成に加え、開口部74とろ材充填部65との間に、流入側のフィルタである内フィルタ63より通水性の低い第2フィルタ92を軸方向に対して摺動可能な形態で備えて構成してもよい。
【0041】
〔第3実施形態〕
本願発明の第3実施形態について、図面に基づいて説明する。
図5に示す浄水器では、上記第1実施形態の図1に示す浄水器の構造に加えて、上記開口部74の下流側でろ材充填部65の軸方向の原水流入口端面において、通水により体積が膨張する素材95を備えている。上記素材95の開口部74側にはストッパー96としてネットや不織布等のフィルタが備えられている。また、上記素材95は、乾燥イオン交換樹脂や吸水性樹脂等が用いられ、通水後1から2秒で最大体積まで膨張し、膨張した後はその膨張した形態を維持する。ただし、この膨張した状態でも、当該部位の通水性はある程度確保される。
【0042】
上記のような構造をとることで、原水が流入しているか否かに関わらず、常にろ材充填部65の圧密が加速されている状態であるため、浄水性能の安定性を向上させることができる。また、上記素材95がろ材充填部65の軸方向の原水流入口端面を均一に押圧するため、ろ過長を一定に保つことができ、どのろ過通路を通過した原水でも一定レベル以上の水質を維持できる。
【0043】
図6に示すように、上記第1実施形態の図2に示す浄水器の構成に加え、原水が集合流路69から径外方向に流れ開口部74に流れ込む構造にしておいてもよい。
【0044】
〔第4実施形態〕
本願発明の第4実施形態について、図面に基づいて説明する。
第1実施形態では蛇口取付型浄水器について説明したが、図7に示すようにポット型浄水器に適用してもよい。ポット型浄水器では、原水槽101に貯められた原水が、内ケース64内の集合流路69又は開口部74に流入する。集合流路69に流入した原水は、内フィルタ63を通過した後、ろ材充填部65で径方向でL1のろ過長を通過することでろ過されて、外フィルタ64を通過することにより、外ケースに備えられた貯水槽102に貯えられる。一方、開口部74を通過した原水は、ろ材充填部65を一定距離L2だけ軸方向に通過してろ過された後、外フィルタ64を通過して、貯水槽102に貯水される。
上記ポット型浄水器は、図8に示すように、上記内フィルタ63より通水性の低い第2フィルタ92を軸方向に対して摺動可能な形態で備えるようにすることもできる。また、隔壁66に対してガイド93が備えらており、上記第2フィルタ92は上記ガイド93とともに隔壁66に沿う形態で、軸方向にフィルタ面を垂直にして摺動するように配設し、ガイド93の上記開口部74側には、ストッパー94が備えられており、上記第2フィルタ92の軸方向の摺動を一定の範囲内に拘束できる形態とする。
さらに、上記ポット型浄水器は、図9に示すように、上記開口部74の下流側でろ材充填部65の軸方向の流入口端面において、通水により体積が膨張する素材95を備えるようにすることもできる。上記素材95の開口部74側にはストッパー96としてネットや不織布等のフィルタを備える。
【0045】
さらに、上記ポット型浄水器は、図10に示すように、原水槽101に貯められた原水が、外周流路68から流入し外フィルタ64を介してろ材充填部65を流通し内フィルタ63を介して集合流路69へ流出する経路と、開口部74から流入し第2フィルタ92を介してろ材充填部65を流通し内フィルタ63を介して集合流路69へ流出する経路とのそれぞれを、流通する形態でろ過されるように構成することができる。この場合、開口部74におけるろ材充填部65の軸方向の流入口側端面に備えられる第2フィルタ92は、流入側のフィルタである外フィルタ64より通水性の低いものが用いられる。また、第2フィルタ92に替えて、上記開口部74の下流側でろ材充填部65の軸方向の流入口端面において、通水により体積が膨張する素材95を備えることもできる。
【0046】
本願発明に係る浄水カートリッジ6は、浄水器と一体型であってもよいし、浄水カートリッジ6のみを取替え可能な構造としておいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本願発明に係る浄水器は、例えば各家庭のキッチンカウンター上のシンクの脇に設置され、使用者により安全な飲料水を供給できる浄水器として有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】浄水器の概略構成を示す側断面図
【図2】図1の浄水カートリッジにおいて集合流路と開口部が連通する構造とした浄水カートリッジの側断面図
【図3】開口部にフィルタを備えた構造の浄水カートリッジの側断面図
【図4】図3の浄水カートリッジにおいて集合流路と開口部が連通する構造とした浄水カートリッジの側断面図
【図5】通水により体積が膨張する素材を備えた構造の浄水カートリッジの側断面図
【図6】図5の浄水カートリッジにおいて集合流路と開口部が連通する構造とした浄水カートリッジの側断面図
【図7】ポット型浄水器の概略構成を示す側断面図
【図8】図7のポット型浄水器において開口部にフィルタを備えた構造の据え置き型浄水ポットの側断面図
【図9】図7のポット型浄水器において通水により体積が膨張する素材を備えたとしたポット型浄水器の側断面図
【図10】図7のポット型浄水器において原水が外周流路から集合流路へ通水する構造としたポット型浄水器の側断面図
【図11】従来の浄水器の概略構成を示す側断面図
【符号の説明】
【0049】
60:流入口
61:外ケース
62:内ケース
63:内フィルタ
64:外フィルタ
65:ろ材充填部
67:流出口
68:外周流路
69:集合流路
72:充填隙間
73:外周流路における流出口側の空間
74:開口部
92:第2フィルタ
95:通水により体積が膨張する素材
96:第1フィルタ
101:原水槽
102:貯水槽
【技術分野】
【0001】
本願発明は、一端面に原水を流入する流入口を、他端面に浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納される内ケースとを備え、外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備えた浄水器、及び浄水を貯水する貯水槽と貯水した前記浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納され原水を貯水する原水槽と、前記外ケースに収納され前記原水槽に連通して原水が流入する内ケースを備え、外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備えた浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような浄水器として、流入口から流入した原水がろ材充填部を径方向に通過することで、浄化される浄水カートリッジを備えた浄水器が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
そして、このような浄水器を用いることで、ろ材充填部を軸方向に通過する場合と比較して、短いろ過長で原水を浄化できるため、ろ材に微粒ろ材を用いることができ、浄水性能を向上させることができる。
【0004】
更に、上記の浄水器では、ろ材の流入口側端面に弾性体を配設することで、ろ材充填部の圧密を加速することができるため、浄水性能を向上させることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−212555号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図11に示すような従来の浄水器では、浄水器の浄水カートリッジ6内において、通水性のない蓋部78により止水が滞留するデッドスペース76が発生する。すなわち、塩素が脱離され殺菌効果の低下した浄水が上記デッドスペース76に停滞し止水となることで、浄水器内での細菌繁殖リスクが増大する可能性があるため、細菌が繁殖しやすい夏季や、長期間浄水器を使用しなかった後に、使用者が捨て水をせずに上記浄水器を使用すると衛生管理上好ましくなく、改善の余地があった。
【0007】
本願発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用者により安全な飲料水を供給できる浄水器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するための本願発明に係る浄水器は、一端面に原水を流入する流入口を、他端面に浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納される内ケースとを備え、外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備え、前記外フィルタの外周側に設けられる外周流路と前記集合流路との間で、前記原水が前記ろ材充填部を径方向に通水して浄化される浄水器であって、その特徴構成は、前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を前記内ケースに設け、前記開口部から前記原水を前記ろ材充填部に導き、得られた浄水を前記流出口に導く点にある。この構成は例えばカウンタートップ据え置き型の浄水器や、蛇口直結型浄水器、ポット型浄水器などの浄水器に採用できる。
【0009】
上記特徴構成によれば、前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を設けることで、前記ろ材充填部の軸方向の原水流入口側に生じる充填隙間を原水が流れる状態に維持できるため、止水が滞留するデッドスペースを解消でき、細菌繁殖リスクを低減することができる。
【0010】
また、従来構造では通水がなされていないがために、充分な浄水機能を発揮できなかったろ材特定部位(今回の発明で開口部を設ける側にあるろ材充填部の軸方向端部側部位)に対し軸方向に通水がなされることで、前記ろ材特定部位を有効に活用することができる。更に、前記ろ材充填部に開口部から軸方向に水圧が加えられることで、前記ろ材充填部への圧密を加速することができるため、浄水性能を向上させることができる。
【0011】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部が前記流出口側に設けられ、前記外周流路がU字型に屈曲した形状で前記開口部に連通する構造を有する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、前記開口部を前記流出口側に備えることにより、前記外周流路がU字型に屈曲した形状で前記開口部に連通する構造を有することで、従来構造において袋小路となり止水が停滞していたデッドスペースを解消することができ、細菌繁殖リスクを低減して、浄水性能の低下を抑制することができる。
【0013】
上記目的を達成するための本願発明に係る浄水器は、浄水を貯水する貯水槽と貯水した前記浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納され原水を貯水する原水槽と、前記外ケースに収納され前記原水槽に連通して原水が流入する内ケースを備え、
外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備え、前記外フィルタの外周側と前記集合流路との間で、前記原水が前記ろ材充填部を径方向に通水して浄化される浄水器であって、その特徴構成は、前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を前記内ケースに設け、前記原水槽から前記開口部を経て前記原水を前記ろ材充填部に導き、得られた浄水を前記貯水槽に導く点にある。この構成は、例えばポット型浄水器や、蛇口直結型浄水器、カウンタートップ型浄水器などの浄水器に採用できる。
【0014】
上記特徴構成によれば、前述したものと同様に、前記内ケース内の止水が滞留するデッドスペースを解消でき、細菌繁殖リスクを低減させ、浄水性能の低下を防止することができる。さらに、前記内ケース内の通水経路が簡略化した構造とすることが可能なため、容易で廉価な浄水器を製造することができる。また、従来構造では、通水がなされていないがために、充分な浄水機能を発揮できなかったろ材特定部位に対し軸方向に通水がなされることで、前記ろ材特定部位を有効に活用できる。更に、前記ろ材充填部に前記開口部から軸方向に水圧が加えられることで、前記ろ材充填部への圧密を加速することができるため、浄水性能を向上させることができる。
【0015】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記原水が前記ろ材充填部を前記外フィルタの外周側から前記集合流路へ向う径内方向に通水する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、流路が浄水カートリッジの外側から内側に向かって形成されるため、外周側の広断面の外周流路から、内周側の低断面の集合流路に原水を流すことで充分な浄水性能を発揮できる。また、流路が軸心に向いていることで浄水カートリッジの構造の安定性が向上し、漏水などが発生する可能性を低減することができる。
【0017】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部に、通水可能な第1フィルタを配設している点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、第1フィルタで通水を可能としながら、例えば比較的粒径の大きい異物がろ材充填部に到達・蓄積することを防止することができ、且つろ材充填部からろ材が外部へ流出することを防止することができる。
【0019】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部と前記ろ材充填部との間に、前記内フィルタ又は前記外フィルタのうち流入側のフィルタより通水性の低い第2フィルタを前記ろ材充填部の軸方向に摺動可能に配設した点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、前記ろ材充填部の前記開口部において、原水の流入による水圧により、前記通水性の低い第2フィルタが押圧され軸方向に摺動して前記ろ材充填部の圧密を加速するため、浄水性能を向上させることができる。また、上記第2フィルタを備えることにより、前記開口部におけるろ材充填部の端面が、上記フィルタを備えない構造と比較して、強く押圧されることで圧密が加速されるため、浄水能力が向上する。また、水が通路の特定箇所のみを多量に流れるチャネリングを抑制することができ、一定の水質を維持することができる。さらに、ろ材充填部の端面を均一に押圧することができ、前記端面が軸方向に対して水平に保たれるため、どの流路においてもろ過長を一定に保つことができ、常に一定の水質を維持することができる。さらに、上記第2フィルタが通水可能な構造を有することで、充填隙間を常に通水する構造とすることにより、細菌の繁殖を防止することができる。
【0021】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部と前記ろ材充填部との間に、通水により体積が膨張する素材を配設した点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、通水により体積が膨張する乾燥イオン交換樹脂や吸水性樹脂などの素材(以下、膨張素材)に通水されることで、体積が膨張し充填隙間を埋めるとともに、ろ材充填部の圧密を加速するため、浄水性能を向上させることができる。また、ろ材と膨張素材を分離して配設することにより、ろ材内に膨張素材を混合する場合と比較して、ろ過性能を高く維持できるため、浄水性能を向上することができる。
【0023】
本願発明に係る浄水器の更なる特徴構成は、前記開口部を介して前記ろ材充填部を軸方向に通水してろ過するろ過長が、前記ろ材充填部を径方向に通水してろ過するろ過長より長い点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、ろ材充填部を軸方向に通過した原水であっても、径方向に通過した場合と同等以上の水質を確保することができる。すなわち、ろ材充填部のろ材は流動可能に構成されているため、軸方向からの流入口端面は軸に対して垂直な面を維持しておらず、原水の流入する端面の位置によってろ過長が変化するが、軸方向の考えうる最短のろ過長が径方向のろ過長と同等以上となるようにろ材充填部の端面を配設することで、原水がろ材充填部を軸方向に通過する場合であっても、径方向に通過した場合と同等以上の水質を確保することができる。
【0025】
発明者らは、従来構造の浄水器におけるデッドスペースと本願構造の浄水器において従来デッドスペースを形成していた構造部分において、細菌を意図的に繁殖させて通水した場合に、吐出管から検出される細菌数を測定した。その結果、従来構造では時間が経過しても細菌が検知され続けたのに対し、本願発明の考案構造では通水後10秒程度で細菌数が検知されなくなるという実験結果を得た。この結果から、本願構造をとることにより、浄水器内を細菌の繁殖しにくい環境とすることができ、使用者により安全性の高い浄水を供給できる浄水器であるという知見を得た。本願発明は、これらの知見に基づくものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
本願発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示す浄水器は、キッチンカウンターに設置されるカウンタートップ型浄水器として構成されており、蛇口1に接続される切替バルブ2と、その切替バルブ2から給水ホース3を通じて水が供給される浄水器本体4と、浄水器本体4から受け入れた水をろ過する浄水カートリッジ6と、浄水カートリッジ6でろ過された浄水を浄水吐出口81に導いて吐出する浄水吐出管8とを備えている。
【0027】
なお、詳細は後述するが、上記浄水カートリッジ6は、外ケース61と外ケース61に収納されている内ケース62を備えており、その内部の流路は、水が滞留することなく通水するように構成されている。
【0028】
さらに浄水カートリッジ6は、下方に突出し浄水器本体4の給水路43に連通した流入口60と、上方に突出し後述する浄水吐出管8が一体接続される流出口67とが形成された円筒状の外ケース61を備え、浄水器本体4の給水路43から流入口60を通じて内ケース62内に受け入れた水をろ過し、そのろ過後の浄水を流出口67から浄水吐出管8に供給するように構成されている。
【0029】
切替バルブ2は、切替レバー2aの揺動操作により、蛇口1から受け入れた原水を給水ホース3を通じて浄水器本体4に供給して浄水を浄水吐出口81から浄水を吐出させる浄水吐出状態と、蛇口1から受け入れた原水を図示しない原水吐出口から吐出させる原水吐出状態と、蛇口1から受け入れた原水を図示しないシャワー口から吐出させるシャワー状態とに切替自在に構成されている。
【0030】
浄水器本体4は、円筒状の本体ケーシング部材41と、その本体ケーシング部材41の下方に設けられ給水ホース3が接続される継手部42とが設けられ、本体ケーシング部材41の中心部には、その給水ホース3から供給された水が流通する給水路43が設けられている。
【0031】
次に、上記浄水カートリッジ6が、内部での細菌の繁殖を抑制し、且つ浄水性能を向上させる構造について、図1を用いて説明する。
【0032】
上記浄水カートリッジ6は、カートリッジケーシング77内において一端面に原水を流入する流入口60と他端面に浄水を流出する流出口67を有する外ケース61と、前記外ケースに収納される内ケース62とを備えている。そして、前記内ケース62が、外周側面に通水可能な外フィルタ64を、前記外フィルタ内部において原水を浄化する筒状のろ材充填部65を、前記ろ材充填部65の内周側面に通水可能な内フィルタ63を、前記内フィルタ63内に前記流出口67と連通する集合流路69を有し、前記外ケース61と前記内ケース62との間に外周流路68を備えている。さらに、前記ろ材充填部65が、側面から径方向に通水可能な通水部75と、前記流出口67側端面から軸方向に通水可能な開口部74と、前記開口部74にろ材の流出を防止する第1フィルタ96と、前記流出口67側の内側面と外側面に隔壁66とを備えている。上記外フィルタ63と内フィルタ64には、ネットや不織布等が用いられる。
上記浄水カートリッジ6に供給された原水は、ろ材充填部65を径方向に通過する流路(a)に加えて、一部の原水はろ材充填部65を軸方向に通過する流路(b)を通過する。流路(a)を通過する原水は、外周流路68を通過し通水部75からろ材充填部65を径方向へ通過する。一方で、流路(b)を通過する原水は、通水部65を通らず外周流路68を流出口67側へ通過し開口部74を通り、ろ材充填部65を軸方向に通過する。
【0033】
上記(b)の流路が形成される構造をとることにより、図11に示す従来の構造において存在していたデッドスペースが解消され、止水の滞留による細菌の繁殖リスクが低減される。さらに、外周流路68における流出口側の空間73に形成されていたデッドスペースについても、止水の滞留が抑制され良好な流路が形成できる。
【0034】
さらに、上記(b)の流路のろ過長L2は、上記(a)の流路のろ過長L1よりも長く構成されている。このようにすることで、例えば、ろ材充填部65の原水の流入口側端面が軸心に対して垂直をなしていない場合でも、ろ材充填部65における最短ろ過長を常にろ過長L1以上として、必要最低限のろ過長を維持することができ、浄水の水質を一定以上に維持できる。
【0035】
上記浄水カートリッジ6は、図2のように、原水が軸心から径外方向にろ材充填部を通過して浄化する構成にしてもよい。このような構成にすることで、上記とほぼ同様の作用・効果が得られる。
【0036】
〔第2実施形態〕
本願発明の第2実施形態について、図面に基づいて説明する。
図3に示す浄水器は、第1実施形態の図1に示す浄水器の構造に加えて、開口部74とろ材充填部65との間に、流入側のフィルタである外フィルタ64より通水性の低い第2フィルタ92を軸方向に対して摺動可能な形態で備えている。また、隔壁66に対して、ガイド93が備えらており、上記第2フィルタ92は上記ガイド93とともに隔壁66に沿う形態で、軸方向にフィルタ面を垂直にして摺動する。さらに、ガイド93の上記開口部74側には、ストッパー94が備えられており、上記第2フィルタ92の軸方向の摺動を一定の範囲内に拘束できる形態となっている。
【0037】
流入口60から原水が流入した場合、上記第2フィルタ92には、通水性の関係から外フィルタ64よりも高い水圧がかかり、ろ材充填部65の軸方向の原水流入口端面を上記ガイド93に沿う形態で押圧する。一方で、原水の流入が停止した場合、上記第2フィルタ92は水圧から開放され、上記ストッパー94とろ材充填部65の原水流入口端面との間に拘束される形態で浮遊して存在する。
【0038】
このような構造をとることにより、ろ材充填部65の圧密が加速されるとともに、ろ材充填部65の端面が均一に押圧されるという効果を奏する。前記の効果により、ろ材充填部65におけるチャネリングを防止することができる。さらに、後記の作用により、ろ過長を均一に維持することができ、どのろ過経路を通過した原水でも一定レベル以上の水質を維持できる。
【0039】
また、上記第2フィルタ92が通水可能な構造を有することで、図11の従来構造にある充填隙間72が存在しない構造をとることができるため、細菌の繁殖する環境を防ぐことができる。
【0040】
又、図4に示すように、上記第1実施形態の図2に示す浄水器の構成に加え、開口部74とろ材充填部65との間に、流入側のフィルタである内フィルタ63より通水性の低い第2フィルタ92を軸方向に対して摺動可能な形態で備えて構成してもよい。
【0041】
〔第3実施形態〕
本願発明の第3実施形態について、図面に基づいて説明する。
図5に示す浄水器では、上記第1実施形態の図1に示す浄水器の構造に加えて、上記開口部74の下流側でろ材充填部65の軸方向の原水流入口端面において、通水により体積が膨張する素材95を備えている。上記素材95の開口部74側にはストッパー96としてネットや不織布等のフィルタが備えられている。また、上記素材95は、乾燥イオン交換樹脂や吸水性樹脂等が用いられ、通水後1から2秒で最大体積まで膨張し、膨張した後はその膨張した形態を維持する。ただし、この膨張した状態でも、当該部位の通水性はある程度確保される。
【0042】
上記のような構造をとることで、原水が流入しているか否かに関わらず、常にろ材充填部65の圧密が加速されている状態であるため、浄水性能の安定性を向上させることができる。また、上記素材95がろ材充填部65の軸方向の原水流入口端面を均一に押圧するため、ろ過長を一定に保つことができ、どのろ過通路を通過した原水でも一定レベル以上の水質を維持できる。
【0043】
図6に示すように、上記第1実施形態の図2に示す浄水器の構成に加え、原水が集合流路69から径外方向に流れ開口部74に流れ込む構造にしておいてもよい。
【0044】
〔第4実施形態〕
本願発明の第4実施形態について、図面に基づいて説明する。
第1実施形態では蛇口取付型浄水器について説明したが、図7に示すようにポット型浄水器に適用してもよい。ポット型浄水器では、原水槽101に貯められた原水が、内ケース64内の集合流路69又は開口部74に流入する。集合流路69に流入した原水は、内フィルタ63を通過した後、ろ材充填部65で径方向でL1のろ過長を通過することでろ過されて、外フィルタ64を通過することにより、外ケースに備えられた貯水槽102に貯えられる。一方、開口部74を通過した原水は、ろ材充填部65を一定距離L2だけ軸方向に通過してろ過された後、外フィルタ64を通過して、貯水槽102に貯水される。
上記ポット型浄水器は、図8に示すように、上記内フィルタ63より通水性の低い第2フィルタ92を軸方向に対して摺動可能な形態で備えるようにすることもできる。また、隔壁66に対してガイド93が備えらており、上記第2フィルタ92は上記ガイド93とともに隔壁66に沿う形態で、軸方向にフィルタ面を垂直にして摺動するように配設し、ガイド93の上記開口部74側には、ストッパー94が備えられており、上記第2フィルタ92の軸方向の摺動を一定の範囲内に拘束できる形態とする。
さらに、上記ポット型浄水器は、図9に示すように、上記開口部74の下流側でろ材充填部65の軸方向の流入口端面において、通水により体積が膨張する素材95を備えるようにすることもできる。上記素材95の開口部74側にはストッパー96としてネットや不織布等のフィルタを備える。
【0045】
さらに、上記ポット型浄水器は、図10に示すように、原水槽101に貯められた原水が、外周流路68から流入し外フィルタ64を介してろ材充填部65を流通し内フィルタ63を介して集合流路69へ流出する経路と、開口部74から流入し第2フィルタ92を介してろ材充填部65を流通し内フィルタ63を介して集合流路69へ流出する経路とのそれぞれを、流通する形態でろ過されるように構成することができる。この場合、開口部74におけるろ材充填部65の軸方向の流入口側端面に備えられる第2フィルタ92は、流入側のフィルタである外フィルタ64より通水性の低いものが用いられる。また、第2フィルタ92に替えて、上記開口部74の下流側でろ材充填部65の軸方向の流入口端面において、通水により体積が膨張する素材95を備えることもできる。
【0046】
本願発明に係る浄水カートリッジ6は、浄水器と一体型であってもよいし、浄水カートリッジ6のみを取替え可能な構造としておいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本願発明に係る浄水器は、例えば各家庭のキッチンカウンター上のシンクの脇に設置され、使用者により安全な飲料水を供給できる浄水器として有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】浄水器の概略構成を示す側断面図
【図2】図1の浄水カートリッジにおいて集合流路と開口部が連通する構造とした浄水カートリッジの側断面図
【図3】開口部にフィルタを備えた構造の浄水カートリッジの側断面図
【図4】図3の浄水カートリッジにおいて集合流路と開口部が連通する構造とした浄水カートリッジの側断面図
【図5】通水により体積が膨張する素材を備えた構造の浄水カートリッジの側断面図
【図6】図5の浄水カートリッジにおいて集合流路と開口部が連通する構造とした浄水カートリッジの側断面図
【図7】ポット型浄水器の概略構成を示す側断面図
【図8】図7のポット型浄水器において開口部にフィルタを備えた構造の据え置き型浄水ポットの側断面図
【図9】図7のポット型浄水器において通水により体積が膨張する素材を備えたとしたポット型浄水器の側断面図
【図10】図7のポット型浄水器において原水が外周流路から集合流路へ通水する構造としたポット型浄水器の側断面図
【図11】従来の浄水器の概略構成を示す側断面図
【符号の説明】
【0049】
60:流入口
61:外ケース
62:内ケース
63:内フィルタ
64:外フィルタ
65:ろ材充填部
67:流出口
68:外周流路
69:集合流路
72:充填隙間
73:外周流路における流出口側の空間
74:開口部
92:第2フィルタ
95:通水により体積が膨張する素材
96:第1フィルタ
101:原水槽
102:貯水槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面に原水を流入する流入口を、他端面に浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納される内ケースとを備え、
外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備え、前記外フィルタの外周側に設けられる外周流路と前記集合流路との間で、前記原水が前記ろ材充填部を径方向に通水して浄化される浄水器であって、
前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を前記内ケースに設け、前記開口部から前記原水を前記ろ材充填部に導き、得られた浄水を前記流出口に導く浄水器。
【請求項2】
前記開口部が前記流出口側に設けられ、前記外周流路がU字型に屈曲した形状で前記開口部に連通する請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
浄水を貯水する貯水槽と貯水した前記浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納され原水を貯水する原水槽と、前記外ケースに収納され前記原水槽に連通して原水が流入する内ケースを備え、
外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備え、前記外フィルタの外周側と前記集合流路との間で、前記原水が前記ろ材充填部を径方向に通水して浄化される浄水器であって、
前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を前記内ケースに設け、前記原水槽から前記開口部を経て前記原水を前記ろ材充填部に導き、得られた浄水を前記貯水槽に導く浄水器。
【請求項4】
前記原水が前記ろ材充填部を前記外フィルタの外周側から前記集合流路へ向う径内方向に通水する請求項1から3のいずれか一項に記載の浄水器。
【請求項5】
前記開口部に、通水可能な第1フィルタを配設して成る請求項1から4のいずれか一項に記載の浄水器。
【請求項6】
前記開口部と前記ろ材充填部との間に、前記内フィルタ及び前記外フィルタのうち流入側のフィルタより通水性の低い第2フィルタを前記ろ材充填部の軸方向に摺動可能に配設して成る請求項1から5のいずれか一項に記載の浄水器。
【請求項7】
前記開口部と前記ろ材充填部との間に、通水により体積が膨張する素材を配設して成る請求項1から5のいずれか一項に記載の浄水器。
【請求項8】
前記開口部を介して前記ろ材充填部を軸方向に通水してろ過するろ過長が、前記ろ材充填部を径方向に通水してろ過するろ過長より長い請求項1から7のいずれか一項に記載の浄水器。
【請求項1】
一端面に原水を流入する流入口を、他端面に浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納される内ケースとを備え、
外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備え、前記外フィルタの外周側に設けられる外周流路と前記集合流路との間で、前記原水が前記ろ材充填部を径方向に通水して浄化される浄水器であって、
前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を前記内ケースに設け、前記開口部から前記原水を前記ろ材充填部に導き、得られた浄水を前記流出口に導く浄水器。
【請求項2】
前記開口部が前記流出口側に設けられ、前記外周流路がU字型に屈曲した形状で前記開口部に連通する請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
浄水を貯水する貯水槽と貯水した前記浄水を流出する流出口を有する外ケースと、前記外ケースに収納され原水を貯水する原水槽と、前記外ケースに収納され前記原水槽に連通して原水が流入する内ケースを備え、
外周面側に配設される外フィルタと内周面側に配設される内フィルタとの間に配設される筒状のろ材充填部と、前記内フィルタの内周側に設けられる集合流路とを前記内ケースに備え、前記外フィルタの外周側と前記集合流路との間で、前記原水が前記ろ材充填部を径方向に通水して浄化される浄水器であって、
前記ろ材充填部の軸方向に通水可能な開口部を前記内ケースに設け、前記原水槽から前記開口部を経て前記原水を前記ろ材充填部に導き、得られた浄水を前記貯水槽に導く浄水器。
【請求項4】
前記原水が前記ろ材充填部を前記外フィルタの外周側から前記集合流路へ向う径内方向に通水する請求項1から3のいずれか一項に記載の浄水器。
【請求項5】
前記開口部に、通水可能な第1フィルタを配設して成る請求項1から4のいずれか一項に記載の浄水器。
【請求項6】
前記開口部と前記ろ材充填部との間に、前記内フィルタ及び前記外フィルタのうち流入側のフィルタより通水性の低い第2フィルタを前記ろ材充填部の軸方向に摺動可能に配設して成る請求項1から5のいずれか一項に記載の浄水器。
【請求項7】
前記開口部と前記ろ材充填部との間に、通水により体積が膨張する素材を配設して成る請求項1から5のいずれか一項に記載の浄水器。
【請求項8】
前記開口部を介して前記ろ材充填部を軸方向に通水してろ過するろ過長が、前記ろ材充填部を径方向に通水してろ過するろ過長より長い請求項1から7のいずれか一項に記載の浄水器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−313501(P2007−313501A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118916(P2007−118916)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]