説明

浮桟橋埋立工法

【課題】護岸際を含む広い範囲の埋立てを可能にし、施工コストの低減と施工の安全性の向上とを図る。
【解決手段】護岸1で囲まれた埋立水域A内に浮桟橋2を護岸法線に対して直角をなすように浮かべ、護岸1と浮桟橋2との間を該浮桟橋2に連結された渡橋台船10により連絡し、車両を護岸1から渡橋台船10を経て浮桟橋2上に乗入れて埋立材を水中投棄し、浮桟橋2に沿う1ラインの埋立てを終えるごとに浮桟橋2を護岸法線の方向へ平行移動させて埋立てを繰返す浮桟橋埋立工法において、前記渡橋台船10の両舷を拡幅して、車両が走行および方向転換できる拡幅部分12、12を設け、この拡幅部分12からも埋立材を水中投棄して、浮桟橋2の周りはもちろん渡橋台船10の周り(護岸際)を含む広い範囲の埋立てを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗入れが可能な浮桟橋を利用して水面埋立てを行う浮桟橋埋立工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浮桟橋埋立工法においては、図4および図5に示すように、護岸1で囲まれた埋立水域A内に浮桟橋2を護岸法線に対して直角をなすように浮かべ、護岸1と浮桟橋2との間は、浮桟橋2に連結された渡橋台船3により連絡し、渡橋台船3に設けた可動橋4および固定橋5を利用して車両(ダンプトラック)を護岸1から浮桟橋2上に乗入れて、埋立材を水中投棄するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、浮桟橋2は、多数の台船6を相互に連結してなるもので、その左・右舷側および末端にはダンプトラックから排出された埋立材を水中へ誘導するための土砂シュート7(図4)が所定のピッチで多数配設され、さらにその左・右舷側および末端に沿う部位にはダンプトラックの移動を規制するための車止め8が設けられている。なお、各台船6上にはダンプトラックを走行させるための覆工板が敷設されているが、これについては図示を省略している。一方、渡橋台船3の可動橋4は、ガントリー9の上端部を迂回させたワイヤ9aをウインチ(図示略)により操作することにより昇降駆動され、その先端部を護岸1に自重であずけた状態で位置固定されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−353382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の浮桟橋埋立工法によれば、図6に示すように浮桟橋2を相対向する一方の護岸1aと他方の護岸(対岸)1bとを結ぶように浮桟橋2を浮かべ、浮桟橋2に沿う1ラインの埋立てを終えるごとに、浮桟橋2を護岸法線の方向(矢印F方向)へ平行移動させて埋立てを繰返すようにしている。しかるに、従来の浮桟橋2は、渡橋台船5からの水中投棄が不可能となっているため、一度に造成される埋立地Bは浮桟橋2の周辺に限定され(図4)、この結果、護岸際である渡橋台船3の移動域Cが埋立空白域(デットスペース)となっていた。このため、従来の浮桟橋埋立工法においては、図6に示すように埋立域Aの終端で浮桟橋2を反転させて、戻り方向F´へ浮桟橋2を平行移動させながら、前記埋立空白域Cの追加埋立てを行うか、あるいは一方の護岸1aからダンプトラックにより護岸際に直接埋立材を水中投棄することを行っていた。
【0005】
しかしながら、上記したように浮桟橋を反転して追加埋立てを行う方法によれば、長尺な浮桟橋2を反転させなければならないため、その反転に多大の時間と労力とを要し、コスト負担が大きいという問題があった。また、上記したように一方の護岸からダンプトラックにより埋立材を直接投棄する方法によれば、道幅が限られかつ車止めが不完全な護岸1上でダンプトラックを転回および後退させなければならないため、安全面で大きな問題があった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、護岸際を含む広い範囲の埋立てを可能にし、もって施工コストの低減と施工の安全性の向上とに大きく寄与する浮桟橋埋立工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、護岸で囲まれた埋立水域内に浮桟橋を護岸法線に対して直角をなすように浮かべ、護岸と浮桟橋との間を該浮桟橋に連結された渡橋台船により連絡し、車両を護岸から前記渡橋台船を経て浮桟橋上に乗入れて埋立材を水中投棄し、浮桟橋に沿う1ラインの埋立てを終えるごとに浮桟橋を護岸法線の方向へ平行移動させて埋立てを繰返す浮桟橋埋立工法において、前記渡橋台船の片舷または両舷を拡幅してその拡幅部分からも埋立材を水中投棄することを特徴とする。
【0008】
このように行う浮桟橋埋立工法においては、渡橋台船の片舷または両舷を拡幅した拡幅部分からも埋立材を水中投棄するので、護岸際まで埋立てを行うことができ、浮桟橋の平行移動に応じてカバーできる埋立範囲が大幅に拡大する。
【0009】
本発明は、上記浮桟橋の末端を対岸近傍まで延ばし、該浮桟橋の一方向への平行移動により埋立水域の全域の埋立てを完了させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る浮桟橋埋立工法によれば、護岸際まで埋立てを行うことができるので、浮桟橋の平行移動に応じてカバーできる埋立範囲が大幅に拡大し、浮桟橋を反転して追加埋立てを行う必要がなくなって、施工コストの大幅な低減を達成できる。また、護岸際に対して護岸から埋立材を直接投棄する必要もなくなるので、車両の不安全走行も回避でき、安全性の大幅な向上を達成できる。
また、浮桟橋の末端を対岸近傍まで延ばし、該浮桟橋の一方向への平行移動により埋立水域の全域の埋立てを完了させる場合は、より効率よく埋立水域の埋立てを行なうことができ、工期の大幅な短縮を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基いて説明する。
【0012】
図1および図2は、本発明に係る浮桟橋埋立工法の一つの実施形態を示したものである。なお、本工法で用いる浮桟橋2については、従来と全く変更がないので、同一符号を付している。本実施形態において、護岸1と浮桟橋2とを連絡する渡橋台船10は、前記可動橋3、固定橋4およびガントリー9(図4,5)を搭載した既設部分11と該既設部分11の両舷を拡幅した拡幅部分12、12とからなっている。
【0013】
より詳しくは、渡橋台船10の既設部分11は、浮桟橋2を構成する台船6と同サイズの浮体13を複数(ここでは、4つ)並べてなっており、一方、拡幅部分12は、前記浮体13をほぼ二分したサイズの浮体14を複数(同じく、4つ)並べてなっている。浮桟橋2を構成する台船6は、一例として縦a=22m、横b=8mの大きさを有しており、したがって、拡幅部分12の幅Wは、少なくとも10mの大きさとなっている。すなわち、拡幅部分12は、ダンプトラックが自由に走行および方向転換できる十分なる幅を有している。また、渡橋台船10の各増幅部分12の舷側および先端には、浮桟橋2に設けられているものと同じ土砂シュート7が複数設置され、さらに、その周囲には、同じく浮桟橋2上に設けられているものと同じ車止め8が設置されている。なお、前記拡幅部分12の増設方法は任意であり、使用する浮体14の台数を前記と異なる数としても、あるいは既設部分11と一体に形成してもよい。
【0014】
本浮桟橋埋立工法の実施に際しては、図2に示すように、はじめに、護岸1で囲まれた埋立水域Aの始端側(図の左端側)に位置して、相対向する一方の護岸1aと他方の護岸(対岸)1bとを結ぶように浮桟橋2を浮かべ、渡橋台船10の可動橋4をウインチにより操作して一方の護岸1aに橋渡す。そして、ダンプトラックを護岸1(1a)から渡橋台船10を経て浮桟橋2に乗り入れ、浮桟橋2の周りに埋立材を水中投棄する。また、ダンプトラックを渡橋台船10の増幅部分12、12に乗り入れ、渡橋台船10の周りにも埋立材を水中投棄する。これにより、図1に示すように、浮桟橋2の周りはもちろん渡橋台船10の周り(護岸際)を含む広い範囲に埋立地Bが造成される。この場合、図2に示すように浮桟橋2の末端を対岸1bの近傍まで延ばすことで、相対向する護岸1aと1bとを結ぶ1ラインの全長にわたって埋立地Bを造成することができる。
【0015】
その後は、図2に矢印Fにて示すように、浮桟橋2に沿う1ラインの埋立てを行うごとに護岸法線の方向へ浮桟橋1を渡橋台船10と一体に平行移動させて埋立てを繰返す。しかして、この埋立てに際しては、渡橋台船10の移動域C(図6)が埋立てのデッドスペースとなることがないので、埋立水域Aの終端側(図2の右端側)まで浮桟橋2が移動した最終段階では、埋立水域Aの全域の埋立てが完了する。
【0016】
ここで、上記実施形態においては、渡橋台船10の両舷に拡幅部分12、12を設けたが、この拡幅部分12は、図3に示すように渡橋台船10の片舷のみに設けてもよいものである。この場合、拡幅部分12は、渡橋台船10の左舷側に設けても、右舷側に設けてもよい。渡橋台船10の右舷側のみに拡幅部分12を設ける場合は、埋立の開始段階で渡橋台船10の既設部分11に隣接する場所に埋立空白域(デッドスペース)が、渡橋台船10の左舷舷側のみに拡幅部分12を設ける場合は、埋立の最終段階で、渡橋台船10の既設部分11に隣接する場所に埋立空白域がそれぞれ残るが、該埋立空白域はわずかであるので、そのまま放置してもよい。
【0017】
なお、上記実施形態においては、浮桟橋2の一方向への平行移動により埋立水域Aの全域の埋立てを完了させるようにしたが、埋立水域が広い場合は、当然に浮桟橋2を反転して残りの水域の埋立てを行うことになる。この場合でも、渡橋台船10の移動域がデッドスペースとならないので、全体の埋立てを効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る浮桟橋埋立工法で用いる浮桟橋および渡橋台船の構造と該工法の実施形態とを示す平面図である。
【図2】本浮桟橋埋立工法による全体的な施工状況を示す平面図である。
【図3】本浮桟橋埋立工法で用いる浮桟橋および渡橋台船の他の構造を示す平面図である。
【図4】従来の浮桟橋埋立工法の実施形態を示す平面図である。
【図5】従来の浮桟橋埋立工法で用いていた渡橋桟橋の構造を示す側面図である。
【図6】従来の浮桟橋埋立工法による全体的な施工状況を示す平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 護岸
2 浮桟橋
4 可動橋
5 固定橋
7 土砂シュート
9 ガントリー
10 渡橋台船
11 既設部分
12 増幅部分
A 埋立水域
B 埋立地
C 渡橋台船の移動域(デッドスペース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
護岸で囲まれた埋立水域内に浮桟橋を護岸法線に対して直角をなすように浮かべ、護岸と浮桟橋との間を該浮桟橋に連結された渡橋台船により連絡し、車両を護岸から前記渡橋台船を経て浮桟橋上に乗入れて埋立材を水中投棄し、浮桟橋に沿う1ラインの埋立てを終えるごとに浮桟橋を護岸法線の方向へ平行移動させて埋立てを繰返す浮桟橋埋立工法において、前記渡橋台船の片舷または両舷を拡幅してその拡幅部分からも埋立材を水中投棄することを特徴とする浮桟橋埋立工法。
【請求項2】
前記浮桟橋の末端を対岸近傍まで延ばし、該浮桟橋の一方向への平行移動により埋立水域の全域の埋立てを完了させることを特徴とする請求項1に記載の浮桟橋埋立工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−52330(P2009−52330A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221305(P2007−221305)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】