説明

浮遊懸濁物質採取装置

【課題】簡単な構成で、吸入口の周囲のみならず広範囲に亘って浮遊懸濁物質を効率良く吸引・採取可能な浮遊懸濁物質採取装置を提供すること。
【解決手段】水面上に浮遊可能な浮遊支持体によって水面下に位置するように支持された懸濁物質吸入口12と、懸濁物質吸入口12に浮遊する懸濁物質を寄せ集める寄せ集め手段と、寄せ集め手段によって寄せ集められた浮遊懸濁物質を吸引・採取する吸引ポンプ16と、を有する浮遊懸濁物質採取装置1において、寄せ集め手段を、懸濁物質吸入口12を略中心として放射状に配置固定された8本のレーン18と、レーン18の外縁側端部と懸濁物質吸入口12側端部とを移動する掻き寄せ手段によって構成した。掻き寄せ手段は、レーン18の両端部に設けられた回転機構部20と、回転機構部20に架け渡された無端ベルト24と、無端ベルト24上に設けられた複数枚の掻きブレード26とによって形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊懸濁物質採取装置、特にダム湖、池、湖沼、貯水池、ダムの入り江、堀又は海域等で、浮遊懸濁物質が滞留している閉鎖性水域若しくは微流動水域を浄化する浮遊懸濁物質採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム湖、池、湖沼、貯水池、ダムの入り江、堀又は海域等の閉鎖性水域若しくは微流動水域には、植物プランクトン等を含む浮遊懸濁物質が滞留している。それらの代表的なものがアオコである。懸濁物質をそのまま放置しておくと、環境上の問題のみならず水域に生息する動植物の生死の問題も発生するため、それらの懸濁物質を積極的に回収することが行われている。
【0003】
水面若しくは水面近傍に浮遊している懸濁物質を効率良く採取するために、多くの特許文献で開示された技術によれば、水域に強制的に回流又は渦流を発生させ、発生させた回流又は渦流によって懸濁物質を中心側に集め、これを懸濁物質吸入口から、この懸濁物質吸入口に接続されている吸水ポンプ等により懸濁物質を吸引・採取する方法が採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、上記の回流又は渦状の水流を利用するもので、アオコ等の水面浮遊物を広い範囲で回収することができる水質浄化装置及び水質浄化方法を提供することを目的として、以下の構成を開示している。すなわち、周囲に複数の翼部を備えた回転翼を有する回流発生手段の中心部に吸水管の吸込口を配置し、上記の回転翼の回転と共に吸込口から吸水作用を行わせて、吸込口を中心とした渦状の水流を直径の広い範囲の水域に発生させている。この渦状の水流により、水域上に浮遊するアオコを水と共に吸引し、回収するというものである。ここで、吸込口は水面下に配置され、複数の翼部を備えた回転翼は水中においてこの吸込口を中心として回転する構成になっている。
【0005】
すなわち、特許文献1の採取方法は、水中にある吸水管の吸込口を取り巻くように回転翼を設け、この回転翼によって吸込口周囲に環状の水流を発生させると共に、吸込口から吸水作用を行わせて渦状の水流を発生させ、この渦状の水流にアオコを乗せて前記吸込口へ導くというものである。
【0006】
一方、特許文献2には、比重の軽い油はもとより、粘度が高くなった油やスカム等を確実に回収するため、メインフロートに支持され液体に浮かぶ流入口を有する回収パイプと、回収パイプの外周に遊嵌されサブフロートに支持された流入堰とを有する回収槽値が開示されている。この流入堰は液体に浮かび、かつ流入口を介して回収パイプ内に液体と共に油、スカム、ゴミ等の浮遊物が流入する構成になっている。更に、この流入堰の開口部を臨む位置に、浮遊物を掻き集めて回収パイプ内に流入させる掻き寄せ手段を設けた構成が開示されている。
【0007】
したがって、液体の液面が風等によって揺れて変化し回収パイプが動いても流入堰の開口部をそれに追従させることが可能である。また、流入堰の開口部を臨む位置に設けた掻き寄せ手段によって浮遊油と共にスカム、ゴミ等を掻き集めているので、確実に回収パイプに回収することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2000−303438号公報
【特許文献2】特開平11−90426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の回収装置は、水中に位置する吸水管の吸込口を取り巻くように回転翼を設け、この回転翼によって吸込口周囲に環状の水流を発生させると共に吸込口から吸水作用を行わせて渦状の水流を発生させ、この渦状の水流に浮遊懸濁物質を捕捉させて吸込口に誘導している。また、特許文献2の回収装置は、流入堰の開口部を臨む位置に掻き寄せ手段を設け、この掻き寄せ手段により浮遊物を掻き集めて回収パイプ内に流入させている。
【0010】
したがって、上記の特許文献1、2の装置においては、回流発生手段や掻き寄せ手段により効果的に浮遊懸濁物質が採取されるものの、それらの手段による作用は吸込口の限られた周囲にのみ発揮されるため、吸込口近くの浮遊懸濁物質しか効果的に回収できないと言う問題があった。すなわち、発生される回流若しくは渦流の直径は、回流若しくは渦流を発生させる装置の容量や吸入ポンプの容量によって決められるが、事実上吸込口を中心とした狭い範囲にのみ作用するものであった。したがって、水域の広範囲にある浮遊懸濁物質を回収するためには、回収装置を懸濁物質が浮遊している場所まで頻繁に移動させる必要があり、手間と時間が掛かっていた。また、懸濁物質は浮遊しているため、湖面上に吹く風の影響を受け易く、風向きによって移動することから、風の強いときには吸引ポンプの吸引力や強制的に発生させた渦流だけでは回収力が非常に低いという問題もあった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で、吸入口の周囲のみならず広範囲に亘って浮遊懸濁物質を効率良く吸引・採取可能な浮遊懸濁物質採取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の浮遊懸濁物質採取装置は、
水面上に浮遊可能な浮遊支持体によって水面下に位置するように支持された懸濁物質吸入口と、同じく前記浮遊支持体によって支持され前記懸濁物質吸入口に浮遊する懸濁物質を寄せ集める寄せ集め手段と、前記懸濁物質吸入口に連結され前記寄せ集め手段によって寄せ集められた浮遊懸濁物質を前記懸濁物質吸入口から吸引する吸引手段と、を有する浮遊懸濁物質採取装置において、前記寄せ集め手段は、前記懸濁物質吸入口を略中心として放射状に前記浮遊支持体に固定配置された複数のレーンと、各レーンに設けられ該レーンの外縁側端部から中心側端部へ移動することで前記浮遊懸濁物質を前記懸濁物質吸入口へ掻き集める掻き寄せ手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
斯かる構成を採用することにより、浮遊懸濁物質採取装置の寄せ集め手段は、懸濁物質吸入口を略中心として放射状に固定配置された複数のレーンと、各レーンの外縁側端部と中心側端部とを移動する掻き寄せ手段を有している。したがって、各レーンの掻き寄せ手段が浮遊懸濁物質を掻き寄せるので、懸濁物質吸入口近傍の浮遊懸濁物質のみならず、レーンを長く設定することで懸濁物質吸入口を中心として放射状に広範囲の領域に存在する浮遊懸濁物質が濁物物質吸入口近傍に直接的に寄せ集められることとなる。例えば、レーン長さの設定により直径10m以上の範囲とすることも容易である。そして、このように広範囲をカバーできるだけでなく、掻き寄せ手段が直接に浮遊懸濁物質を懸濁物質吸入口に移動させるので、風の強い状況においても、それに影響されることなく確実に浮遊懸濁物質を寄せ集めることができる。したがって、寄せ集められた浮遊懸濁物質を懸濁物質吸入口から吸引手段により吸引することで、簡単な構成で、広範囲に亘る浮遊懸濁物質を効率良く吸引・採取することが可能である。
【0014】
請求項2に記載の浮遊懸濁物質採取装置は、請求項1に記載の浮遊懸濁物質採取装置において、
前記掻き寄せ手段は、前記各レーンの外縁側端部と中心側端部とにそれぞれ設けられた回転機構部と、該回転機構部に架け渡され該回転機構部の回転動作により周回する無端ベルトと、該無端ベルトの外側面に突出形成され、前記無端ベルトの周回動作によって前記浮遊懸濁物質を前記中心側端部へ掻き寄せる掻きブレードと、を有することを特徴とする。
【0015】
斯かる構成を採用することで、各レーンの外縁側端部と中心側端部には、それぞれ回転機構部が設けられる。これらの回転機構部に架け渡された無端ベルトの外側面には掻きブレードが突出形成されている。したがって、無端ベルトが周回すると、無端ベルトに形成された掻きブレードがレーン内の浮遊懸濁物質を直接引っ掛けて懸濁物質吸入口に掻き集めることとなる。したがって、風の強い状況においても、それに影響されることなく確実に浮遊懸濁物質を寄せ集めることができることとなる。
【0016】
請求項3に記載の浮遊懸濁物質採取装置は、請求項1又は2に記載の浮遊懸濁物質採取装置において、
前記懸濁物質吸入口の上部には、前記浮遊支持体による浮遊状態にて該懸濁物質吸入口に対向する下面側が少なくとも水面に接するように、かつ回転駆動可能に構成された回転ボードが設けられ、前記回転ボードの下面には前記回転駆動により前記寄せ集められた浮遊懸濁物質を前記浮遊懸濁物質吸入口に集中させるためのフィンが設けられていることを特徴とする。
【0017】
斯かる構成を採用することによって、回転ボードは回転することによってフィンにより渦流が発生し、浮遊懸濁物質を懸濁物質吸入口に集中させることができる。したがって、掻き寄せ手段によって寄せ集められた浮遊懸濁物質は、上記の発生された渦流により一層効果的に懸濁物質吸入口に引き寄せられることとなる。
【0018】
請求項4に記載の浮遊懸濁物質採取装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の浮遊懸濁物質採取装置において、
前記浮遊支持体による浮遊状態にて少なくとも1つのレーンの外縁側端部近傍に、前記放射状に固定配置されたレーン全体を前記懸濁物質吸入口を中心として回転させる推進力を付与する回転力発生手段を設けたことを特徴とする。したがって、複数のレーン全体が懸濁物質吸入口を中心に回転すると、レーン間に浮遊していた浮遊懸濁物質はレーン内に入り、レーンに設けられた掻き寄せ手段により積極的に掻き寄せられることとなる。したがって、懸濁物質吸入口を中心としこの懸濁物質吸入口とレーンの外縁端部との距離を半径とする領域内の遊懸濁物質を満遍なく採取することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の浮遊懸濁物質採取装置は、請求項4に記載の浮遊懸濁物質採取装置において、
前記回転力発生手段は、回転駆動可能に前記レーン側部に設けられ、外側面に羽根部の形成された回転体によって構成されたことを特徴とする。したがって、回転体が回転すると、羽根部が水面を掻くことになり、レーン全体を回転させる推進力が発生する。したがって、簡単な構成で回転力発生手段を構成することが可能である。
【0020】
請求項6に記載の浮遊懸濁物質採取装置は、請求項5に記載の浮遊懸濁物質採取装置において、
前記掻き寄せ手段の前記回転機構と、前記回転ボードと、前記回転力発生手段の前記回転体とは、同一の駆動源によって回転駆動されることを特徴とする。したがって、駆動源は少なくとも1機で済み浮遊懸濁物質採取装置全体を小型で軽量とすることができる。
【0021】
請求項7に記載の浮遊懸濁物質採取装置は、請求項1〜6の何れか1項に記載の浮遊懸濁物質採取装置において、
前記各レーンの外縁側端部間を繋ぎ、前記浮遊支持体による浮遊状態で、下端部が水面に没するようにフェンスが設けられていることを特徴とする。したがって、各レーンの外縁側端部を架け渡してフェンスが設けられているので、フェンスで囲まれた領域には小枝等の浮遊物質は入り込まず、浮遊懸濁物質以外の浮遊物質を誤って吸引することが防止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の浮遊懸濁物質採取装置によれば、懸濁物質吸入口を略中心として、放射状に配置された複数のレーン内で設けられた掻き寄せ手段が浮遊懸濁物質を懸濁物質吸入口に誘導するので、簡単な構成で懸濁物質吸入口近傍に浮遊する浮遊懸濁物質のみならず懸濁物質吸入口から各レーンの外縁端部に至る広範囲に亘る浮遊懸濁物質を効果的に吸引採取することが可能である。また、各レーンでは寄せ集め動作が行われるため、風の強い状況においても、それに影響されることなく確実に浮遊懸濁物質を寄せ集めることができる。その結果、懸濁物質採取作業を行った後の水域に清澄な水面をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の浮遊懸濁物質採取装置の平面図、図2は図1中のA−A線に沿う浮遊懸濁物質採取装置の概略断面図である。なお、本実施の形態では、水面下の水面近傍又は水面に浮遊する懸濁物質としてアオコを想定して説明する。
【0024】
浮遊懸濁物質採取装置1の概略構成は、懸濁物質吸入口12を中心に円筒形状に構成された中央室6と、この中央室6から懸濁物質吸入口12を中心に放射状に固定配置された8本のレーン18と、各レーン18の外縁側端部と中心側端部に設けられた回転機構部20、20と、各レーン18の外縁側端部の両外側に取り付けられた回転力発生手段28、28と、各レーン18の外縁側端部に取り付けられた浮遊支持体の構成要素であるフロート8aと、このフロート8aの外側に設けられたフェンス38とを有する。
【0025】
中央室6は、鋼材又は木材等によって形成され、下部に懸濁物質吸入口12を有する吸引ポンプ16が取り付けられる。吸引ポンプ16にはその懸濁物質吸入口12の周りに皿部16aが取り付けられ、皿部16aの下側の吸引ポンプ16の周囲には浮遊支持体の構成要素であるフロート8bが配置されている。
【0026】
吸引ポンプ16には懸濁物質吸入口12が吸引ポンプ16に直結して設けられており、その懸濁物質吸入口12の開口面には塵介等の吸い込みを防止する網12aが取り付けられている。吸引ポンプ16には、自在ジョイント16bを介してフレキシブルホース16cが接続され、吸引・採取された浮遊懸濁物質はこのフレキシブルホース16cを通って沈殿槽(図示せず)へと送出されることとなる。ここで、吸引手段は少なくとも吸引ポンプ16とフレキシブルホース16cとを有する。なお、懸濁物質吸入口12は、水面S上に浮遊可能な浮遊支持体の構成要素であるフロート8a及びフロート8bにより浮遊された状態で水面S下の水面近傍の所定の高さに位置するように構成されている。なお、本実施の形態では、前述の中央室16、フロート8a、8b、後述するレーン18の構成要素である長手部材18a、及びレーン18間を補強する補強材66によって浮遊支持体が形成されている。
【0027】
中央部6内の上部には駆動源であるモータ22が設置されている。このモータ22の軸にピニオンギア42が取り付けられ、このピニオンギア42と噛合するように平歯車44が設けられている。平歯車44の回転軸46には、平歯車44の下部にハイポイドギア40、ハイポイドギア40の下部に回転ボード34がそれぞれ取り付けられ、同期して回転する。回転ボード34については後述する。
【0028】
上記中央部6の外側には、この中央部6から放射状に8本のレーン18が配置されている。各レーン18は2本の長手部材18aを平行に所定間隔を空けて並べて構成され、中心側端部が中央室6の枠部に固定されている。また、外縁側端部には前述のようにフロート8aが取り付けられている。長手部材18aは鋼材、木材等を適宜選択して使用することができる。本実施の形態では、各長さを約5m程度に形成している。すなわち、直径10m以上の範囲をカバーできるように構成されている。各レーン18の間には棒状の補強材66が架け渡されて固定され装置全体の強度補強を行っている。図1に示したように、本実施の形態では、レーン18の略中間部分と外縁側端部の2箇所に補強材66が配置されている。
【0029】
また、レーン18の中心側端部と外縁側端部には、回転機構部20がそれぞれ設けられている。回転機構部20は、軸部20aが軸受け20bに設けられ、この軸部20aに回転自在にスプロケット20cが取り付けられている。そして、2つの回転機構部20のスプロケット20cに無端ベルト24が架け渡され、無端ベルト24がそれらの回転機構部20間で所定方向に周回駆動されるように構成されている。
【0030】
ここで、懸濁物質吸入口12側端部の回転機構部20には、その軸部20aにハイポイドギア48が取り付けられ、中央室6の回転軸46に取り付けられたハイポイドギア40から、ハイポイドピニオン50を介して回転力が伝達される。したがって、レーン18が複数あって回転させるべき一対の回転機構部20が複数組ある場合において、互いの回転軸にオフセットを持たせることができるので駆動源であるモータ22からの駆動力を伝達する伝達機構を簡潔に構成することができる。伝達機構が簡潔になることから装置全体の重量を軽くすることが可能となっている。
【0031】
無端ベルト24の外側面には、所定の間隔を置いて複数枚の掻きブレード板26が突出して設けられている。この掻きブレード26はゴム材で構成されているが、樹脂材や金属材等であっても良い。無端ベルト24が回転すると、水面に接する側の掻きブレード26は懸濁物質吸入口12(中心側端部)に向かって水面及び水面下の水面近傍を掻くこととなり、懸濁物質吸入口12に水面下の水面近傍及び水面上に浮遊する懸濁物質を直接的に掻き集めることができる。直接的に掻き集めることから、従来の渦流を用いる方法に比べて効率が良く、また風の強い状況においても、それに影響されることなく確実に浮遊懸濁物質を寄せ集めることができる。なお、本実施の形態では、レーン18と掻き寄せ手段によって寄せ集め手段が形成され、回転機構部20と無端ベルト24と掻きブレード26によって掻き寄せ手段が形成されている。
【0032】
中央室6の回転軸46の最下部、すなわち懸濁物質吸入口12の直上には、前述のように回転ボード34が取り付けられている。図3は、この回転ボード34の斜視図が示されており、懸濁物質吸入口12に対向する下面36を上方に向けた状態が示されている。図示のように、この下面36にはフィン34aが設けられ、したがって、回転ボード34が回転することによりフィン34aにより渦流が発生し、寄せ集められた懸濁物質が懸濁物質吸入口12に集中させることができる。懸濁物質吸入口12近傍に寄せ集められた浮遊懸濁物質は、吸引ポンプ16により吸引・採取される。なお、本実施の形態では、この回転ボード34はレーン18の無端ベルト24を駆動する駆動源のモータ22と連動して回転するように構成されているが、別途駆動源を用意して回転させても良い。
【0033】
レーン18の外縁側端部であってレーン18の両外側には、回転力発生手段28を構成する回転体30が設けられている。図4はこの回転体30の側面図である。この回転体30は、略円錐台形状に枠部31が構成され、その枠部31に複数の羽根部32が取り付けられている。この回転体30は、レーン18の外縁側端部の回転機構20の軸部20aに取り付けられて、無端ベルト24の周回と連動して回転するように構成されている。なお、回転体30は軽量とするため中空になっており、羽根部32は水面を効率良く掻くために、回転方向に傾斜若しくは湾曲して取り付けられている。
【0034】
上述の円錐台形状の回転体30が、レーン18の外縁側端部に取り付けられた回転機構20に連動して回転すると、回転体30の外側面に取り付けられた複数の羽根部32が水面Sを掻くこととなる。図4では、回転体30が矢印100方向に回転すると、図4の紙面に対して鉛直下方に推進力が奏される。これにより、レーン18全体は懸濁物質吸入口12を中心として図1の矢印200方向に回転することとなる。なお、レーン18が回転可能な構成になっているのは前述のように吸引ポンプ16が自在ジョイント16bを介してフレキシブルホース16cと接続されていることによる。
【0035】
したがって、レーン18全体が懸濁物質吸入口12を中心に回転するので、レーン18間に存在する浮遊懸濁物質は、レーン18内に入り、レーン18の無端ベルト14に設けられた複数枚の掻きブレード26により掻き寄せられることとなる。なお、本実施の形態では各レーン18の全てに2台、合計16台の回転体30を設けたが、回転状態を確保できる限り個数を減らしても良い。
【0036】
更に、本実施の形態に係る浮遊懸濁物質採取装置1は、図1及び図2に示したようにレーン18の外縁側端部に配置されたフロート8aの外側にフェンス38を有している。このフェンス38には下部に錘38aが付けられており、フェンス38は全てのレーン18を囲むように設けられている。したがって、フェンス38で囲まれた領域には水面を浮遊する小枝等の塵芥は入り込まず、このような塵芥を誤って吸引することが防止される。
【0037】
図5は、本発明による浮遊懸濁物質採取装置1の水域内での動作説明図である。浮遊懸濁物質採取装置1は、水域内の浮遊懸濁物質の吸引・採取作業を行うべき場所に設置され、吸引ポンプ16の作動が開始されると同時にモータ22に給電が行われ中央室6の回転軸46が回転される(図2参照)。なお、この給電はフレキシブルホース16cに沿わせた電力ケーブル、又は後述するワイヤ58に沿わせた電力ケーブル等により行うことができる。
【0038】
前述のように、中央室6の回転軸46が回転すると、浮遊懸濁物質を掻き集める掻き寄せ手段の無端ベルト24が回転し、掻きブレード26が水面を掻く若しくは掃くので、水面下の水面近傍及び水面にある浮遊懸濁物質は懸濁物質吸入口12近傍に集められる。懸濁物質吸入口12近傍に寄せ集められた浮遊懸濁物質は、更に回転ボード34の回転により発生された渦流により懸濁物質吸入口12に集中させられるので、効果的に吸引ポンプ16により吸引・採取される。加えて、回転力発生手段である回転体30が回転することによりレーン18全体が懸濁物質吸入口12を中心に回転する(図4の矢印200方向)ので、レーン18間に存在する浮遊懸濁物質も残さず吸引・採取される。
【0039】
浮遊懸濁物質採取装置1により吸水された浮遊懸濁物質を含む水は、水域内の岸辺に設置された貯水槽54にフレキシブルホース16cを介して送出される。このフレキシブルホース16cは、可とう性のある材質で構成され、浮遊懸濁物質採取装置1が水域内を十分に広範囲に移動できるように十分の長さが確保されている。貯水槽54は、図示してはいないが、第一貯水槽で小枝等の塵芥物が取り除かれ、同じく図示していない第二貯水槽を介して岸の上に設置されている処理槽56にポンプにより送出され、処理される。沈殿横54と処理槽56とは導水管55により接続されている。
【0040】
したがって、懸濁物質吸入口12を略中心とする直径10m以上の範囲内の浮遊懸濁物質が、風の強い状況においても、それに影響されることなく、満遍なく確実に吸引・採取されることとなり、懸濁物質吸入口12近傍に浮遊する浮遊懸濁物質のみならず貯水池の広範囲に亘る浮遊懸濁物質を効果的に吸引採取することができる。
【0041】
貯水池の浄化したい領域が更に広範囲に亘る場合には、図5に示したように浮遊懸濁物質採取装置1を移動可能とするため、両端が係留アンカー60で留められたワイヤ58に、浮遊懸濁物質採取装置1の中央室6の屋根に設けられた回転台座62上のフック64(図2参照)を固定しても良い。このように構成することで浮遊懸濁物質採取装置1を、ワイヤ58を引き寄せる又は繰り出すことによって移動させることが可能である。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、レーン18の数を8本としたが4本であっても構わない。また、回転体30の数を16としたが、その数を変えても構わない。更に、各部材の材質及び寸法も、実施の形態に限定されることなく、懸濁物質を除去すべき水域に応じて、適宜設計変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ダム湖、池、湖沼、貯水池、ダムの入り江、堀又は海域等で植物プランクトン等を含む懸濁物質が滞留している閉鎖性水域若しくは微流動水域において利用することが可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々設計変更すれば、例えば、油流出時の油回収等、水面に浮遊しているものの回収に転用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による浮遊懸濁物質採取装置の平面図である。
【図2】図1内のA−A線に沿う概略断面図である。
【図3】図1の回転ボードの下面の斜視図である。
【図4】図1の回転力発生手段の回転体の側面図である。
【図5】本発明による浮遊懸濁物質採取装置の水域内での動作説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 浮遊懸濁物質採取装置
6 中央室
8a、8b フロート
12 懸濁物質吸入口
16 吸引ポンプ
18 レーン
18a 長手部材
20 回転機構部
22 モータ
24 無端ベルト
26 掻きブレード
28 回転力発生手段
30 回転体
32 羽根部
34 回転ボード
38 フェンス
S 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面上に浮遊可能な浮遊支持体によって水面下に位置するように支持された懸濁物質吸入口と、同じく前記浮遊支持体によって支持され前記懸濁物質吸入口に浮遊する懸濁物質を寄せ集める寄せ集め手段と、前記懸濁物質吸入口に連結され前記寄せ集め手段によって寄せ集められた浮遊懸濁物質を前記懸濁物質吸入口から吸引する吸引手段と、を有する浮遊懸濁物質採取装置において、
前記寄せ集め手段は、
前記懸濁物質吸入口を略中心として放射状に前記浮遊支持体に固定配置された複数のレーンと、
各レーンに設けられ該レーンの外縁側端部から中心側端部へ移動することで前記浮遊懸濁物質を前記懸濁物質吸入口へ掻き集める掻き寄せ手段と、を有することを特徴とする浮遊懸濁物質採取装置。
【請求項2】
前記掻き寄せ手段は、
前記各レーンの外縁側端部と中心側端部とにそれぞれ設けられた回転機構部と、
該回転機構部に架け渡され該回転機構部の回転動作により周回する無端ベルトと、
該無端ベルトの外側面に突出形成され、前記無端ベルトの周回動作によって前記浮遊懸濁物質を前記中心側端部へ掻き寄せる掻きブレードと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の浮遊懸濁物質採取装置。
【請求項3】
前記懸濁物質吸入口の上部には、前記浮遊支持体による浮遊状態にて該懸濁物質吸入口に対向する下側面が少なくとも水面に接するように、かつ回転駆動可能に構成された回転ボードが設けられ、
前記回転ボードの前記下側面には前記回転駆動により前記寄せ集められた浮遊懸濁物質を前記浮遊懸濁物質吸入口に集中させるためのフィンが設けられていることを特徴とする請求項1又は2項に記載の浮遊懸濁物質採取装置。
【請求項4】
少なくとも前記1つのレーンの外縁側端部近傍に、前記放射状に固定配置されたレーン全体を前記懸濁物質吸入口を中心として回転させる推進力を付与する回転力発生手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の浮遊懸濁物質採取装置。
【請求項5】
前記回転力発生手段は、回転駆動可能に前記レーン側部に設けられ、外側面に羽根部の形成された回転体によって構成されたことを特徴とする請求項4に記載の浮遊懸濁物質採取装置。
【請求項6】
前記掻き寄せ手段の前記回転機構と、前記回転ボードと、前記回転力発生手段の前記回転体とは、同一の駆動源によって回転駆動されることを特徴とする請求項4又は5に記載の浮遊懸濁物質採取装置。
【請求項7】
前記各レーンの外縁側端部間を繋ぎ、前記浮遊支持体による浮遊状態で、下端部が水面に没するフェンスが設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の浮遊懸濁物質採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−77691(P2010−77691A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247301(P2008−247301)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】