説明

浮遊溶解炉の反応シャフトの熱平衡制御方法、および精鉱バーナ

本発明は、浮遊溶解炉の反応シャフトの熱平衡制御方法、および反応ガスおよび微粉状固形物を浮遊溶解炉の反応シャフトに供給する精鉱バーナに関するものである。本方法では、吸熱性材料(16)を、精鉱バーナ(4)を使用して供給し、粉末状固形物(6)および反応ガス(5)から成る混合物の一部を構成することで、粉末状固形物(6)、反応ガス(5)、および吸熱性材料(16)を含有する混合物を反応シャフト(2)内に形成する。精鉱バーナ(4)は、吸熱性材料(16)を添加して混合物の一部を形成させる冷却剤供給器(15)を含み、混合物は、供給パイプの開口部(8)から放出される微粉状固形物(6)と、環状放出口(14)から放出される反応ガス(5)とから成る。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明の対象は、請求項1の前段に係る浮遊溶鉱炉の反応シャフトの熱平衡制御方法である。
【0002】
また、本発明の対象は、請求項16に係る、反応ガスおよび微粉状固形物を浮遊溶解炉の反応シャフトに供給する精鉱バーナである。
【0003】
本発明は、フラッシュ・スメルティング炉などの浮遊溶鉱炉内で実行される方法、および反応ガスおよび微粉状固形物をフラッシュ・スメルティング炉などの浮遊溶鉱炉の反応シャフトに供給する精鉱バーナに関するものである。
【0004】
フラッシュ・スメルティング炉は3つの主要部で構成される。すなわち、反応シャフト、下層炉、およびアップテイクから成る。フラッシュ製錬処理では、硫化精鉱、スラグ生成剤、およびその他の微粉状構成材料を含む微粉状固形物を、反応シャフト上部の精鉱バーナを使用して、反応ガスと混合させる。反応ガスは、空気、酸素、または酸素富化空気でよい。精鉱バーナは、一般に、微粉状固形物を反応シャフトに供給する供給パイプを備えていて、供給パイプの開口部は反応シャフトに対して開口している。精鉱バーナは、通常、散布装置も備えていて、散布装置は供給パイプの内側に同心状に配設され、供給パイプの開口部から反応シャフト内にある程度延伸していて、散布ガスを散布装置の周りを流動する微粉状固形物の方へ送り出す散布ガス穴を含んでいる。また精鉱バーナは、一般に、反応ガスを反応シャフトに供給するガス供給装置を備え、ガス供給装置は環状の放出口を介して反応シャフトに対して開口し、放出口は、供給パイプを同心状に取り囲んで、放出口から放出される反応ガスを微粉状固形物と混合するものであり、微粉状固形物は供給パイプの中央から放出されて散布ガスによって側部へと導かれる。フラッシュ製錬処理は、微粉状固形物を精鉱バーナの開口部から反応シャフトに供給する段階を含む。フラッシュ製錬処理はさらに、散布ガスを精鉱バーナの散布装置の散布ガス穴から反応シャフト内に供給して、散布ガスを散布装置の周りを流動する微粉状固形物の方へ送る段階と、反応ガスを精鉱バーナのガス供給装置の環状放出口から反応シャフト内に供給して、供給パイプの中央部から放出されて散布ガスによって側部へと誘導された固形物に反応ガスを混合させる段階とを含む。
【0005】
たいていの場合、反応シャフトに投入される混合物の構成材料である粉末状固形物と反応ガスが互いに反応するのであれば、溶解に必要なエネルギーは混合物自体から得る。しかしながら、原料のなかには、反応が起きた際に十分なエネルギーを発生せず、十分に溶解させるためのエネルギーを発生させるため反応シャフトに供給する燃料ガスも必要なものもある。
【0006】
現在、浮遊溶解炉の反応シャフトの熱平衡を上方修正する公知の代替案がいくつかある。すなわち、浮遊溶解炉の反応シャフトの温度を上げて、浮遊溶鉱炉の反応シャフトが冷めるのを防止する。浮遊溶解炉の反応シャフトの熱平衡を下方修正する、つまり、浮遊溶解炉の反応シャフトの温度を下げる公知の方法は、さほど多くない。公知の方法の1つに、供給量を減らす方法がある。つまり、例えば、より少ない量の精鉱および反応ガスを反応シャフトに供給するのである。この方法は、生産性の面で見れば、供給量を減らさずに熱平衡を低下させるのにも有効であろう。
【0007】
国際特許公開明細書第WO 2009/030808号に、本願特許請求項16の前段に係る精鉱バーナが提示されている。
【発明の簡単な説明】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解消することを目的とする。
【0009】
本発明の目的は、独立請求項1に係る浮遊溶解炉の反応シャフトの熱平衡制御方法によって達成される。
【0010】
また、本発明は、独立請求項6に係る、反応ガスおよび微粉状固形物を浮遊溶解炉の反応シャフトに供給する精鉱バーナに関するものである。
【0011】
本発明の好適な実施形態を各従属請求項に提示する。
【0012】
本発明はさらに、請求項28に規定する方法および精鉱バーナの使用に関するものである。
【0013】
本発明に係る方式では、精鉱バーナを使用して吸熱性材料を供給して、粉末状固形物および反応ガスから成る浮遊物の一部を構成することで、粉末状固形物、反応ガス、および吸熱性材料を含有する混合物が浮遊溶解炉の反応シャフト内で生成される。
【0014】
本発明に係る方式では、反応シャフトの温度を、供給量を減らすことなく低下させられる。これは、反応ガスと粉末状固形物とから成る混合物に構成材料として混合される吸熱性材料が反応シャフト内のエネルギーを消費するという事実に因るものである。液体冷却剤状の吸熱性材料は、例えば、反応シャフト内で気化することでエネルギーを消費し、気化エネルギーは、反応シャフト中の物質から得る。また、吸熱性材料は場合によっては、反応シャフトの状況によってより小さな部分構成材料へと分解可能な構成材料を含むことがある。これにより、反応シャフトの温度を抑制された状態で低下させられる。
【0015】
本発明に係る方式では、最大溶解量を増加できる。すなわち、供給量の増加が可能となる。なぜならば、供給量の増加による温度の上昇を、吸熱性材料の供給量をそれぞれ増やすことで、修正できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態のいくつかを詳細に述べる。
【図1】浮遊溶解炉の基本を示す図であり、その反応シャフトに精鉱バーナが設置されている。
【図2】本発明に係る精鉱バーナの第1の好適な実施形態を示す図である。
【図3】本発明に係る精鉱バーナの第2の好適な実施形態を示す図である。
【図4】本発明に係る精鉱バーナの第3の好適な実施形態を示す図である。
【図5】本発明に係る精鉱バーナの第4の好適な実施形態を示す図である。
【図6】本発明に係る精鉱バーナの第5の好適な実施形態を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0017】
図1は、下層炉1、反応シャフト2、およびアップテイク3を含む浮遊溶解炉を示す。精鉱バーナ4が反応シャフト2内に設けられている。このような溶解炉の運転原理は、例えば、米国特許明細書第2,506,557号の開示などで公知である。
【0018】
本発明は、第一に、反応ガス5および微粉状固形物6を浮遊溶解炉の反応シャフト2に供給する精鉱バーナ4に関する。反応ガス5は、例えば、酸素富化空気、あるいは酸素富化空気を含むガスでよい。微粉状固形物は、例えば、銅またはニッケルの精鉱でよい。
【0019】
精鉱バーナ4は、微粉状固形物6を反応シャフト2に供給する固形物供給装置23、および反応ガス5を反応シャフト2に供給するガス供給装置12を含んでいる。
【0020】
精鉱バーナ4は、吸熱性材料16を添加して混合物の一部を形成する冷却剤供給器15を含んでいて、混合物は浮遊溶解炉の反応シャフト2内で微粉状固形物6および反応ガス5から生成されるものである。
【0021】
冷却剤供給器15は、吸熱性材料16を微粉状固形物供給装置23に供給して、精鉱バーナ4の微粉状固形物供給装置23によって吸熱性材料16を供給するように構成してもよい。
【0022】
冷却剤供給器15は、吸熱性材料16をガス供給装置12に供給して、精鉱バーナ4のガス供給装置12によって吸熱性材料16を供給するように構成してもよい。
【0023】
精鉱バーナ4は、散布ガスを反応シャフト1の微粉状固形物6に直接散布して、反応シャフト1内で微粉状固形物6を反応ガス5に向けて誘導する散布装置9を含んでいてもよい。この場合、冷却剤供給器15は、吸熱性材料16を散布装置9に供給して、精鉱バーナ4の散布装置9によって吸熱性材料16を供給するように構成してもよい。
【0024】
図2ないし図6に示す精鉱バーナ4は、微粉状固形物を反応シャフト2に供給する供給パイプ7を含み、供給パイプの開口部8は反応シャフト2に向かって開口している。
【0025】
図2ないし図6に示す精鉱バーナ4はさらに散布装置9を含んでいて、散布装置は供給パイプ7の内側に同心状に配設されていて、供給パイプの開口部8から反応シャフト2内にある長さだけ延伸している。散布装置9は、散布ガス11を散布装置9の周囲へと導いて、散布装置9の周りを流動する微粉状固形物に送る散布ガス穴10を含んでいる。
【0026】
また、図2ないし図6に示す精鉱バーナ4は、反応ガス5を反応シャフト2に供給するガス供給装置12を含む。ガス供給装置12はガス室13を含み、ガス室は反応シャフト2の外側に配設されて、環状の放出口14を介して反応シャフト2に対して開口し、放出口は、供給パイプ7を同心状に取り囲んで、放出口から放出される反応ガス5を微粉状固形物6と混合するものであり、微粉状固形物は供給パイプ7の中央から放出されて散布ガス11によって側部へと導かれる。
【0027】
さらに、図2ないし図6に示す精鉱バーナ4は、吸熱性材料16を添加する燃料ガス供給器15を含み、このガスは、浮遊溶解炉1の反応シャフト2において、供給パイプの開口部8から放出される微粉状固形物6と環状放出口14から放出される反応ガス5とから成る混合物20の一部を構成する。
【0028】
図2は、本発明に係る精鉱バーナ4の第1の好適な実施形態を示す。図2の冷却剤供給器15は、吸熱性材料16を散布装置9内に供給するように設けられていて、散布ガス穴10から供給される散布ガス11は、少なくとも一部が吸熱性材料16から成る。
【0029】
図3は、本発明に係る精鉱バーナ4の第2の好適な実施形態を示す。図2では、冷却剤供給器15は、吸熱性材料16をガス供給装置12に供給するように設けられていて、供給パイプ7を同心状に囲む環状放出口14を通じて放出口から放出される反応ガス5は、吸熱性材料16を含んでいる。
【0030】
図4は、本発明に係る精鉱バーナ4の第3の好適な実施形態を示す。図4では、冷却剤供給器15は、ガス供給装置12の冷却剤供給装置18を含んでいて、冷却剤供給装置は、第2の環状放出口17を含んで反応ガス室13の外側に配設されて、吸熱性材料16を当該第2の環状放出口を介して供給して、吸熱性材料16を粉末状固形物6および反応ガス5の混合物と混ぜ合わせる。
【0031】
図5は本発明に係る精鉱バーナ4の第4の好適な実施形態を示す。図5では、精鉱バーナ4は散布装置9内に中央ランス21を含んでいて、ランスは浮遊溶解炉の反応シャフト2に対して開口している放出口22を含んでいる。図5に係る第4の実施形態では、冷却剤供給器15は吸熱性材料16を中央ランス21に供給するために設けられていて、これにより、吸熱性材料16を中央ランス21の放出口22から浮遊溶解炉の反応シャフト2に供給することができる。
【0032】
図6は、本発明に係る精鉱バーナ4の第5の好適な実施形態を示す。図6では、冷却剤供給器15は吸熱性材料16を微粉状固形物供給装置23に供給するために設けられていて、供給パイプの開口部8から微粉状固形物6および吸熱性材料16の混合物が反応シャフト2に放出される。
【0033】
吸熱性材料16は、例えば液体、溶液、または懸濁液でよい。吸熱性材料16は液状の冷却剤でよく、気化時にエネルギーを消費する、すなわち、吸熱によって分解するものである。言い換えると、吸熱性材料16は、好ましくは、浮遊溶解炉2の反応シャフト2内に熱エネルギーを発生させるのではなく、浮遊溶解炉の反応シャフト2内の熱エネルギーを消費する材料である。
【0034】
冷却剤供給器15は、吸熱性材料16を噴霧液として浮遊溶解炉の反応シャフト2に供給するように設けてもよい。
【0035】
吸熱性材料16は、必須ではないが好ましくは、水、硫酸などの酸、金属塩、および硫酸銅または硫酸ニッケルなどの金属硫化物のうちの、少なくとも1つを含んでいる。
【0036】
本発明は、浮遊溶解炉の反応シャフト2における熱平衡制御方法を他の対象としている。
【0037】
本方法では、微粉状固形物6を反応シャフト2に供給する微粉状固形物供給装置23と、反応ガス5を反応シャフト2に供給するガス供給装置12とを含む精鉱バーナ4を使用する。
【0038】
本方法は、反応シャフト2に微粉状固形物6を供給すること、および反応ガス5を反応シャフト2に供給することを含み、これにより反応ガス5を微粉状固形物6と混合する。
【0039】
本方法では、精鉱バーナ4を介して吸熱性材料16を供給して、浮遊溶解炉1の反応シャフト2内において粉末状固形物6および反応ガス5から成る混合物の一部を構成させることで、粉末状固形物6、反応ガス5、および吸熱性材料16を含有する混合物を浮遊溶解炉1の反応シャフト1内に形成する。
【0040】
本方法では、吸熱性材料16および微粉状固形物6を反応シャフト1の外で混合してもよく、吸熱性材料16と微粉状固形物6の混合物を、精鉱バーナ4を介して反応シャフト1に供給してもよい。
【0041】
本方法では、吸熱性材料16を微粉状固形物供給装置23に供給して、吸熱性材料16と微粉状固形物6とを反応シャフト1の外に設けられた微粉状固形物供給装置23内で混合し、吸熱性材料16と微粉状固形物6との混合物を精鉱バーナ4を介して反応シャフト1に供給してもよい。
【0042】
本方法では、本方法では、吸熱性材料16および反応ガス5を反応シャフト1の外で混合してもよく、吸熱性材料16と反応ガス5の混合物を精鉱バーナ4を介して反応シャフト1に供給してもよい。
【0043】
本方法では、吸熱性材料16をガス供給装置12に供給して、吸熱性材料16と反応ガス5とを反応シャフト1の外に設けられたガス供給装置12内で混合し、吸熱性材料16と反応ガス5との混合物を、精鉱バーナ4を介して反応シャフト1に供給してもよい。
【0044】
本方法では、散布ガス11を反応シャフト1内の微粉状固形物6に送って、反応シャフト1内で微粉状固形物6を反応ガス5のほうに導く散布装置9を備えているような精鉱バーナ4を使用してもよい。この場合、吸熱性材料16および散布ガス11を反応シャフト1の外で混合してもよく、吸熱性材料16と散布ガス11の混合物を、精鉱バーナ4を介して反応シャフト1に供給する。また別の方法として、もしくは上記に加えて、本例における吸熱性材料16を散布装置9に供給してもよく、吸熱性材料16と散布ガス11を反応シャフト1の外に設けられた散布装置9で混合して、吸熱性材料16と散布ガス11の混合物を精鉱バーナ4を介して反応シャフト1に供給してもよい。
【0045】
本方法において、次のような精鉱バーナ4を使用する。すなわち、精鉱バーナは、(i)微粉状固形物6を反応シャフト2に供給する供給パイプ7を備え供給パイプの開口部8が反応シャフト2に対して開口している微粉状固形物供給装置23と、(ii)供給パイプ7内に同心状に設けられ供給パイプの開口部8から反応シャフト2内側にある程度延伸し、散布装置9の周囲を取り巻く散布ガス11を散布装置9の周りを流動する微粉状固形物6に向かって送る散布ガス穴10を備える散布装置9と、(iii)反応ガス5を反応シャフト2に供給し、供給パイプ7を同心状に囲む環状放出口14を介して反応シャフト2に対して開口して、環状放出口14から放出される上記反応ガス5を、供給パイプ7の中央から放出されて散布ガスによって側部へと誘導される微粉状固形物6と混合するためのガス供給装置12とを含む。上述の精鉱バーナ4を、図2ないし図6に示す。
【0046】
本方法において図2ないし図6に示す型の精鉱バーナ4を使用する場合、微粉状固形物6は精鉱バーナ4の供給パイプの開口部8から反応シャフト2に投入する。
【0047】
本方法において図2ないし図6に示す型の精鉱バーナ4を使用する場合、散布ガス11は精鉱バーナ4の散布装置9の散布ガス穴10から反応シャフト2に供給して、散布ガス11を散布装置9の周りを流動する微粉状固形物6へ送る。
【0048】
図2ないし図6に示す型の精鉱バーナ4を使用する場合、反応ガス5は精鉱バーナ4のガス供給装置の環状放出口14から反応シャフト2に供給して、反応ガス5を、供給パイプ7の中央部から放出されて散布ガス11によって側部へと誘導された微粉状固形物6と混合させる。
【0049】
図2ないし図6に示す型の精鉱バーナ4を使用する場合、精鉱バーナ4を吸熱性材料16の供給に使用して、吸熱性材料が浮遊溶解炉1の反応シャフト2内で粉末状固形物6および反応ガス5から形成される混合物の一構成材料となるようにする。これにより、浮遊溶解炉1の反応シャフト2で形成された混合物は、粉末状固形物6、反応ガス5、および吸熱性材料16を含有することになる。
【0050】
本発明に係る方法の第1の好適な実施形態において、吸熱性材料16は精鉱バーナ4の散布装置9の散布ガス穴10から供給されるため、供給される散布ガス11は吸熱性材料16の少なくとも一部を構成する。図2は、本発明に係る方法の第1の好適な実施形態に適用される精鉱バーナ4を示している。
【0051】
本発明に係る方法の第2の好適な実施形態では、吸熱性材料16は精鉱バーナ4のガス供給装置12に供給されるため、供給パイプ7を同心状に囲むガス供給装置の環状放出口14から放出される反応ガス5は、吸熱性材料16を含んでいる。図3は、本発明に係る方法の第2の好適な実施形態に適用される精鉱バーナ4を示している。
【0052】
本発明に係る方法の第3の好適な実施形態において、冷却剤供給器15は冷却剤供給装置18を備えたガス供給装置12の外側に配設し、冷却剤供給装置は、第2の環状放出口17を含み、第2の環状放出口はガス供給装置の環状放出口14と同心であり且つ反応室に対して開口している。この好適な実施形態では、吸熱性材料16を上述の第2の環状放出口を介して供給して、吸熱性材料16の少なくとも一部を粉末状固形物6および反応ガス5の混合物と混ぜ合わせる。図2は、本発明に係る方法の第3の好適な実施形態に適用される精鉱バーナ4を示している。
【0053】
本発明に係る方法の第4の好適な実施形態において、中央ランス21を精鉱バーナ4の散布装置9の中に配設し、ランスは浮遊溶解炉の反応シャフト2に対して開口している放出口22を含んでいる。この実施形態では、吸熱性材料16を中央ランス21の放出口22から浮遊溶解炉の反応シャフト2に投入して、吸熱性材料16の少なくとも一部を粉末状固形物6および反応ガス5の混合物と混ぜ合わせる。本発明に係る方法の第4の好適な実施形態では、吸熱性材料16を微粉状固形物供給装置23に供給することで、供給パイプの開口部8から微粉状固形物6と吸熱性材料16との混合物が反応シャフト2に放出する。
【0054】
吸熱性材料16は、例えば液体、溶液、または懸濁液でよい。吸熱性材料16は液状の冷却剤でよく、気化時にエネルギーを消費する、すなわち、吸熱によって分解するものである。言い換えると、吸熱性材料16は、好ましくは、浮遊溶解炉2の反応シャフト2内に熱エネルギーを発生させるのではなく、浮遊溶解炉の反応シャフト2内の熱エネルギーを消費する材料である。
【0055】
本発明に係る方法において、例えば、吸熱性材料16を噴霧液として浮遊溶解炉の反応シャフト2に供給してもよい。
【0056】
本発明に係る方法において、吸熱性材料16は、必須ではないが好ましくは、水、金属塩、硫酸などの酸、および硫酸銅または硫酸ニッケルなどの金属硫化物のうちの、少なくとも1つを含んでいる。
【0057】
本発明に係る方法および精鉱バーナは、浮遊溶解炉の反応シャフト2における熱平衡の制御に用いることもできる。
【0058】
技術の向上にともなって、本発明の基本的な発想をさまざまな態様で実現できることは、当業者には明白なことである。したがって、本発明ならびにその実施形態は上述の例に限定されるものでなく、本願特許請求の範囲内において変更してもよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉状固形物(6)を反応シャフト(2)に供給する微粉状固形物供給装置(23)と、 反応ガス(5)を前記反応シャフト(2)に供給するガス供給装置(12)とを備えた精鉱バーナ(4)を使用することを含み、
前記反応シャフト(2)に前記微粉状固形物(6)を供給することと、
反応ガス(5)を前記反応シャフト(2)に供給して、反応ガス(5)を微粉状固形物(6)と混合することを含む浮遊溶解炉の反応シャフト(2)の熱平衡制御方法において、
前記精鉱バーナ(4)を使用して吸熱性材料(16)を供給して、前記浮遊溶解炉(1)の反応シャフト(2)内で粉末状固形物(6)および反応ガス(5)から形成される混合物の一部を構成することで、粉末状固形物(6)、反応ガス(5)、および吸熱性材料(16)を含有する混合物を前記浮遊溶解炉(1)の反応シャフト(1)内で形成することを特徴とする熱平衡制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
吸熱性材料(16)および微粉状固形物(6)は前記反応シャフト(1)の外部で混合し、
吸熱性材料(16)と微粉状固形物(6)との混合物を、前記精鉱バーナ(4)を使用して前記反応シャフト(1)に供給することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
吸熱性材料(16)を前記微粉状固形物供給装置(23)に供給して、吸熱性材料(16)と微粉状固形物(6)を前記反応シャフト(1)の外側に位置する微粉状固形物供給装置(23)で混合し、
吸熱性材料(16)と微粉状固形物(6)との混合物を、前記精鉱バーナ(4)を使用して前記反応シャフト(1)に供給することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、吸熱性材料(16)と反応ガス(5)とを前記反応シャフト(1)の外で混合し、
吸熱性材料(16)と反応ガス(5)の混合物を、前記精鉱バーナ(4)を使用して該反応シャフト(1)に供給することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法において、
吸熱性材料(16)を前記ガス供給装置(12)に供給して、吸熱性材料(16)と反応ガス(5)を前記反応シャフト(1)の外側に位置する該ガス供給装置(12)で混合し、
吸熱性材料(16)と反応ガス(5)の混合物を、前記精鉱バーナ(4)を使用して前記反応シャフト(1)に供給することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法において、散布ガス(11)を前記反応シャフト(1)中の微粉状固形物(6)に送って、該反応シャフト(1)内で微粉状固形物(6)を反応ガス(5)の方へ誘導する散布装置(9)を含む精鉱バーナ(4)を使用することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
吸熱性材料(16)と散布ガス(11)を前記反応シャフト(1)の外で混合し、
吸熱性材料(16)と散布ガス(11)の混合物を、前記精鉱バーナ(4)を使用して前記反応シャフト(1)に供給することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法において、
吸熱性材料(16)を前記散布装置(9)に供給して、吸熱性材料(16)と散布ガス(11)を前記反応シャフト(1)の外側に位置する散布装置(9)で混合し、
吸熱性材料(16)と散布ガス(11)の混合物を、前記精鉱バーナ(4)を使用して該反応シャフト(1)に供給することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の方法において、該方法は精鉱バーナ(4)を使用し、該精鉱バーナは、
微粉状固形物(6)を前記反応シャフト(2)に供給する供給パイプ(7)を含み、該供給パイプの開口部(8)が該反応シャフト(2)に対して開口している微粉状固形物供給装置(23)と、
供給パイプ(7)の内側に同心状に配設されて該供給パイプの開口部(8)から前記反応シャフト(2)中にある長さだけ延伸している散布装置(9)とを含み、該散布装置は、散布ガス(11)を該散布装置(9)の周囲に誘導して、該散布装置(9)の周りを流動する微粉状固形物(6)の方へ送る散布ガス穴(10)を備え、
前記精鉱バーナはさらに、反応ガス(5)を前記反応シャフト(2)に供給するガス供給装置(12)を含み、該ガス供給装置は、前記供給パイプ(7)を同心状に取り囲む環状放出口(14)を介して前記反応シャフト(2)に対して開口し、該環状放出口(14)から放出される反応ガス(5)を、前記供給パイプ(7)の中央から放出されて散布ガス(11)によって側部へと誘導される微粉状固形物(6)と混合し、
該方法は、
微粉状固形物(6)を前記精鉱バーナの供給パイプの開口部(8)から前記反応シャフト(2)に供給し、
散布ガス(11)を前記精鉱バーナの散布装置(9)の散布ガス穴(10)から前記反応シャフト(2)に供給して、散布ガス(11)を該散布装置(9)の周りで流動する微粉状固形物(6)の方へ誘導し、
反応ガス(5)を前記精鉱バーナのガス供給装置の環状放出口(14)から前記反応シャフト(2)に供給して、反応ガス(5)を、前記供給パイプ(7)の中央から放出されて散布ガス(11)によって側部へと誘導される微粉状固形物(6)と混合させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、吸熱性材料(16)を前記精鉱バーナの散布装置(9)の散布ガス穴(10)を通じて供給することで、供給される散布ガス(11) の少なくとも一部が吸熱性材料(16)から構成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、吸熱性材料(16)は前記精鉱バーナのガス供給装置(12)に供給されるため、該精鉱バーナの供給パイプ(7)を同心状に取り囲む前記環状放出口(14)から放出される反応ガス(5)は吸熱性材料(16)を含有していることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれかに記載の方法において、
冷却剤供給器(15)を前記精鉱バーナのガス供給装置(12)の外側に配設し、該供給器は第2の環状放出口(17)を備えた冷却剤供給装置(18)を含み、第2の環状放出口は前記精鉱バーナのガス供給装置の環状放出口(14)と同軸であり、前記浮遊溶解炉の反応シャフト(2)に対して開口し、
吸熱性材料(16)は前記第2の環状放出口(17)から前記浮遊溶解炉の反応シャフト(2)中に供給して、吸熱性材料(16)を粉末状固形物(6)および反応ガス(5)の混合物と混合することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれかに記載の方法において、
中央ランス(21)が前記精鉱バーナの散布装置(9)内に配設され、該ランスは前記浮遊溶解炉の反応シャフト(2)に対して開口している放出口(22)を備え、
前記吸熱性材料(16)は前記中央ランス(21)の放出口(22)から前記浮遊溶解炉の反応シャフト(2)に供給して、吸熱性材料(16)を粉末状固形物(6)と反応ガス(5)の混合物と混合することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9ないし13のいずれかに記載の方法において、吸熱性材料(16)を前記微粉状固形物供給装置(23)に供給して、前記供給パイプの開口部(8)から、微粉状固形物(6)と吸熱性材料(16)との混合物が前記反応シャフト(2)内に放出することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法において、前記吸熱性材料(16)は、水、金属塩、硫酸などの酸、および硫酸銅または硫酸ニッケルなどの金属硫化物のうちの、少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
微粉状固形物(6)を反応シャフト(2)に供給する固形物供給装置(23)と、
反応ガス(5)を前記反応シャフト(2)に供給するガス供給装置(12)とを含む、反応ガス(5)および微粉状固形物(6)を浮遊溶鉱炉の反応シャフト(2)に供給する精鉱バーナ(4)において、該精鉱バーナ(4)は、
吸熱性材料(16)を添加して、前記浮遊溶鉱炉の反応シャフト中で微粉状固形物(6)と反応ガス(5)とから成る混合物の一部を形成する冷却剤供給器(15)を含むことを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項17】
請求項16に記載の精鉱バーナにおいて、前記冷却剤供給器(15)は、吸熱性材料(16)を前記微粉状固形物供給装置(23)に供給して、吸熱性材料(16)を該精鉱バーナ(4)の微粉状固形物供給装置(23)によって投入するよう構成されることを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項18】
請求項16または17に記載の精鉱バーナにおいて、前記冷却剤供給器(15)は、吸熱性材料(16)を前記ガス供給装置(12)に供給して、吸熱性材料(16)を該精鉱バーナ(4)のガス供給装置(12)によって投入するよう構成されることを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項19】
請求項16ないし18のいずれかに記載の精鉱バーナにおいて、該精鉱バーナ(4)は、散布ガス(11)を前記反応シャフト(1)中の微粉状固形物(6)に対して送りこみ、該反応シャフト(1)内で微粉状固形物(6)を反応ガス(5)の方へ誘導する散布装置(9)を含むことを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項20】
請求項19に記載の精鉱バーナにおいて、前記冷却剤供給器(15)は、吸熱性材料(16)を前記散布装置(9)に供給して、吸熱性材料(16)を該精鉱バーナ(4)の散布装置(9)によって投入するよう構成されることを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項21】
請求項16ないし20のいずれかに記載の精鉱バーナにおいて、
前記微粉状固形物供給装置(23)は、微粉状固形物(6)を前記反応シャフト(2)に供給する供給パイプ(7)を含み、該供給パイプ(7)は、該反応シャフト(2)に対して開口している開口部(8)を有し、
該精鉱バーナ(4)は、前記供給パイプ(7)の内側に同心状に配設されて該供給パイプの開口部(8)から前記反応シャフト(2)の内側へある長さだけ延伸している散布装置(9)を含み、該散布装置は、散布ガス(11)を該散布装置(9)の周囲に誘導して該散布装置(9)の周りを流動する微粉状固形物(6)の方へ送る散布ガス穴(10)を備え、
反応ガス(5)を前記反応シャフト(2)に供給するガス供給装置(12)は、該反応シャフト(2)の外に配設されて該反応シャフト(2)に対して開口する反応ガス室(13)を含み、前記供給パイプ(7)を同心状に取り囲む環状放出口(14)の放出口から放出される反応ガス(5)を、該供給パイプ(7)の中央から放出されて散布ガス(11)によって側部へと送られる微粉状固形物(6)と混合させることを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項22】
請求項21に記載の精鉱バーナにおいて、前記冷却剤供給器(15)は吸熱性材料(16)を前記散布装置(9)に供給するように構成され、これにより、該散布装置(9)の前記散布ガス穴(10)から供給される散布ガス(11)が吸熱性材料(16)の少なくとも一部を構成することを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項23】
請求項21または22に記載の精鉱バーナにおいて、前記冷却剤供給器(15)は吸熱性材料(16)を前記ガス供給装置(12)に供給するように構成され、これにより、前記供給パイプ(7)を同心状に取り囲む環状放出口(14)を介して放出口から放出される反応ガス(5)が吸熱性材料(16)を含有することを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項24】
請求項21ないし22のいずれかに記載の精鉱バーナにおいて、前記冷却剤供給器(15)は、第2の環状放出口(17)を備えて前記ガス供給装置(12)の反応ガス室(13)の外側に配設された冷却剤供給装置(18)を含み、該冷却剤供給装置(18)は、吸熱性材料(16)を前記第2の環状放出口(17)から供給して吸熱性材料(16)を粉末状固形物(6)と反応ガス(5)との混合物と混合させることを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項25】
請求項21ないし24のいずれかに記載の精鉱バーナにおいて、
該精鉱バーナ(4)は前記散布装置(9)内に中央ランス(21)を含み、該ランスは前記浮遊溶解炉の反応シャフト(2)に対して開口している放出口(22)を備えていて、
前記冷却剤供給器(15)は吸熱性材料(16)を前記中央ランス(21)に供給するよう配設され、これにより、吸熱性材料(16)を該中央ランス(21)の放出口(22)から前記浮遊溶解炉の反応シャフト(2)に供給できること特徴とする精鉱バーナ。
【請求項26】
請求項21ないし25のいずれかに記載の精鉱バーナにおいて、前記冷却剤供給器(15)は吸熱性材料(16)を前記微粉状固形物供給装置(23)に供給するよう構成され、前記供給パイプの開口部(8)からは、微粉状固形物(6)と吸熱性材料(16)との混合物が前記反応シャフト(2)内に放出されることを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項27】
請求項16ないし26のいずれかに記載の精鉱バーナにおいて、吸熱性材料(16)は、水、金属塩、および硫酸銅または硫酸ニッケルなどの金属硫化物のうちの、少なくとも1つを含むことを特徴とする精鉱バーナ。
【請求項28】
浮遊溶解炉の反応シャフト内の熱平衡制御に対しての、請求項1ないし15のいずれかに記載の方法、または請求項16ないし27のいずれかに記載の精鉱バーナの使用。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−508549(P2013−508549A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534733(P2012−534733)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050812
【国際公開番号】WO2011/048265
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(507221324)オウトテック オサケイティオ ユルキネン (33)
【氏名又は名称原語表記】OUTOTEC OYJ
【Fターム(参考)】