説明

浴室の床構造

【課題】浴室内において樹脂層が上面に露出している床に温水又は水が落下したときに生じる音を低減することのできる浴室の床構造を提供する。
【解決手段】浴室11の床構造は、金属箔からなる拘束層14bを有する制振シート材14を備えている。この拘束層14bとは反対側の面は、第1の繊維強化プラスチック層13に積層されている。制振シート材14は、その拘束層14bを上層として配置されるとともに、制振シート材14の上層側において、第2の繊維強化プラスチック層16又は木質層15が配置されていることが好ましい。制振シート材14の基材14aは、ブチル系ゴムを含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の床において制振性能を発揮する床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の床構造において、浴室内で発生した音を階下への伝播することを抑制すべく、床パネルの裏面に制振シートの片面を貼り合わせるとともに、その制振シートの他面に拘束部材を貼り合わせた構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−132059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浴室内において樹脂層が上面に露出している床では、例えばシャワーを浴びたときに温水又は水が床面に落下することで音が生じやすい傾向にある。こうした音は、浴室内や浴室の外部において騒音となるおそれがあった。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、浴室内において樹脂層が上面に露出している床に温水又は水が落下したときに生じる音を低減することのできる浴室の床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の浴室の床構造は、浴室内において樹脂層が上面に露出してなる床構造であって、金属箔からなる拘束層を有する制振シート材の前記拘束層とは反対側の面を繊維強化プラスチック層に積層した構成を有することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の浴室の床構造において、前記制振シート材は、その拘束層を上層として配置されてなり、当該制振シート材の上層側において、更に繊維強化プラスチック層及び木質層の少なくとも一方の層が配置されてなることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の浴室の床構造において、前記制振シート材の基材がブチル系ゴムを含むことを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の浴室の床構造において、前記制振シート材の基材が、ベンゾチアジル化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ジフェニルアクリレート化合物、正リン酸エステル化合物、及び芳香族第2級アミン化合物から選ばれる少なくとも一種の制振性向上剤を含有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浴室内において樹脂層が上面に露出している床に温水又は水が落下したときに生じる音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)本実施形態における浴室を示す概略断面図、(b)は床構造を示す部分断面図。
【図2】床構造の変形例を示す部分断面図。
【図3】従来の床構造を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は、浴室の概略を断面で示している。本実施形態の浴室11の床構造は、図1(b)に拡大して示すように、発泡樹脂層12上に第1の繊維強化プラスチック層13、制振シート材14、木質層15、第2の繊維強化プラスチック層16、及び樹脂層17が順に積層されてなる。樹脂層17の上面は、浴室11内において露出している。制振シート材14は、基材14aと金属箔からなる拘束層14bとを有している。拘束層14bとは反対側の面、すなわち基材14aの面には、第1の繊維強化プラスチック層13が積層されている。
【0012】
発泡樹脂層12は、吸音層として配置されている。こうした発泡樹脂層12は、断熱機能を発揮させたり、例えば集合住宅等において階下に音が伝播することを抑制したりする。発泡樹脂層12を構成する発泡樹脂としては、特に限定されないが、高強度であって耐久性に優れるという観点から、発泡ウレタンを用いることが好ましい。発泡樹脂層12の厚さは、例えば5〜50mmである。なお、発泡樹脂層12を設けずに床構造を構成してもよい。
【0013】
第1の繊維強化プラスチック層13は、制振シート材14とともに床構造を構成することで、浴室11内で発生する音を低減する。第1の繊維強化プラスチック層13を構成する繊維としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維等が挙げられる。繊維強化プラスチック層を構成するプラスチックとしては、特に限定されないが、例えば不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が好適に用いられる。第1の繊維強化プラスチック層13の厚さは、例えば0.1〜10mmの範囲とされる。
【0014】
制振シート材14を構成する基材14aには、粘弾性を有する高分子材料が用いられる。こうした高分子材料の制振性能は、例えば、損失正接(tanδ)の値で示される。高分子材料としては、動的粘弾性の測定において、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.5以上の高分子材料が好適に用いられる。
【0015】
高分子材料の具体例としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴム類に分類される。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン・アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、各種ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、非晶性ポリアミド、ポリメタクリルイミド等が挙げられる。スチレン・アクリロニトリル系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0016】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
ゴム類としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチル系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0017】
これらの高分子材料は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせたポリマーアロイやブロック共重合体として使用してもよい。
高分子材料の中でも、浴室11の使用温度下において制振性能が発揮されやすいという観点から、ブチル系ゴムが好ましい。すなわち、ブチル系ゴムを含む基材14aを用いることで、浴室11の使用温度下で優れた制振性能を発揮させることが容易となる。ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、及びポリイソブチレンが挙げられる。これらのブチル系ゴムは、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせてもよい。基材14a中におけるブチル系ゴムの含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。
【0018】
高分子材料には、制振シート材14の制振効果を高めるという観点から、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物及び芳香族第二級アミン系化合物から選ばれる少なくとも一種の制振性向上剤を含有させることが好ましい。
【0019】
ベンゾチアジル系化合物としては、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルスルフィド(MBTS)、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(OBS)、N,N−ジイソプロピルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DPBS)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0020】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゼン環にアゾール基が結合したベンゾトリアゾールを母核とし、これにフェニル基が結合したものであって、2−[2’−ハイドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”テトラハイドロフタリミデメチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール(2HPMMB)、2−(2’−ハイドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール(2HMPB)、2−(2’−ハイドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HBMPCB)、2−(2’−ハイドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HDBPCB)、及び2−(2’−ハイドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2HOPB)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0021】
ジフェニルアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(ECDPA)、及びオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(OCDPA)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0022】
正リン酸エステル系化合物としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及び2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0023】
芳香族第二級アミン系化合物としては、例えばp−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレン時アミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン及び4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0024】
制振性向上剤の含有量は、基材14aの100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部であり、より好ましくは5〜15質量部である。
高分子材料には、充填剤を含有させることもできる。充填剤としては、例えばマイカ、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、グラファイト及び硫酸バリウムが挙げられる。
【0025】
基材14aの厚さは、例えば0.1〜10mmの範囲とされる。
制振シート材14の有する拘束層14bは、基材14aとともに制振シート材14を拘束型の制振材としている。拘束層14bを構成する金属箔としては、例えばアルミ箔、鉛箔、銅箔等が挙げられる。拘束層14bの厚さは、例えば0.01〜3mmの範囲とされる。
【0026】
木質層15及び第2の繊維強化プラスチック層16は、床構造を補強している。木質層15は、合板であってもよいし、単板であってもよい。木質層15の厚さは、例えば1〜20mmの範囲とされる。第2の繊維強化プラスチック層16としては、上記の第1の繊維強化プラスチック層13として例示したものが挙げられる。第2の繊維強化プラスチック層16の厚さは、例えば0.1〜10mmの範囲とされる。
【0027】
樹脂層17は、床表面を構成することで、防水性を付与するとともに床表面の意匠性を高める。こうした樹脂層17には、床の表面を滑らかに仕上げるという観点から、補強繊維は含まれていない。樹脂層17を構成する樹脂材料としては、耐久性が得られやすいという観点から熱硬化性樹脂であることが好ましい。熱硬化性樹脂としては、上記高分子材料として例示した熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせてもよい。樹脂層17の厚さは、例えば0.1〜10mmの範囲とされる。
【0028】
こうした床構造を有する床材を製造する方法は、特に限定されず、例えば金型を用いた製造方法を挙げることができる。この製造方法では、まず金型に樹脂層17を構成する樹脂材料を流し込んだ後に、その上に網状をなす補強繊維シートを載置する。次に、第2の繊維強化プラスチック層16を構成するプラスチックを流し込んだ後に、木質層15を構成する板材、制振シート材14、第1の繊維強化プラスチック層13を構成する補強繊維及びプラスチック、並びに、発泡樹脂層12を構成する発泡樹脂材を順次載置して加熱することで容易に得ることができる。
【0029】
上述した床構造は、主にユニットバスに適用される。このように構成された床構造では、剛性の高められている第1の繊維強化プラスチック層13に、基材14aが支持されるとともに、その基材14aが拘束層14bにより拘束されることで、優れた制振性能が発揮されるようになる。こうした床構造を有する浴室11内において、例えばシャワーを使用したとき温水又は水の落下により床で生じる振動又は衝撃のエネルギーは、熱エネルギーに変換されるようになる。これにより、温水又は水が床に落下したときに発生する音が好適に抑制されるようになる。
【0030】
次に、床構造について、騒音レベルを測定した測定例について説明する。
(測定例1)
図1(b)に示される床構造を有する浴室(3480mm×2770mm、高さ2360mm)を製造した。発泡樹脂層12は、発泡ウレタンからなる層(厚さ20mm)である。第1の繊維強化プラスチック層13は、ガラス繊維を補強繊維とするとともに不飽和ポリエステルをマトリックスとして形成した層(厚さ1.5mm)である。制振シート材14は、アルミ箔(厚さ0.1mm)を拘束層14bとしている。制振シート材の基材14aは、ブチル系ゴム90質量部とベンゾチアジル系化合物10質量部との混合物から成形した基材(厚さ1.5mm)である。木質層15は、合板(9mm)から構成されている。第2の繊維強化プラスチック層16は、ガラス繊維を補強繊維とするとともに不飽和ポリエステルをマトリックスとして形成した層(厚さ1.5mm)である。樹脂層17は、不飽和ポリエステルを硬化した樹脂層(厚さ0.5mm)である。
【0031】
(測定例2)
図3に示されるように、制振シート材14を用いずに従来の床構造を構成した以外は測定例1と同様にして浴室を製造した。
【0032】
(騒音レベルの測定)
浴室内のシャワーを使用したときの騒音レベルを計測した。シャワーヘッドは、浴室の隅部から水平方向に0.3m離れた位置であって、床面からの高さ1.7mの位置に設置した。シャワーの水温は23℃であり、水の流量は10L/分とした。
【0033】
騒音レベルの計測は、浴室内及び浴室外で行った。浴室内の騒音レベルは、浴室ドアの内側中央から水平方向に0.3m離れた位置であって、床面からの高さ1mの位置で計測した。浴室外の騒音レベルは、浴室ドアの外側中央から水平方向に1m離れた位置であって、床面からの高さ1mの位置で測定した。騒音計としては精密騒音計(LA−5110、株式会社小野測器製)を用いて、測定周波数は31.5〜8000Hzの領域とするとともに、同領域のオーバーオール(O.A)値を算出した。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

表1に示されるように、測定例1では、8000Hzを除く各測定周波数において測定例2よりも騒音レベルが低減されている。また、測定例1では、オーバーオール値において測定例2よりも騒音レベルが低減されていることが分かる。また、測定例1の床構造では、制振シート材14の基材14aがブチル系ゴムを含むため、その粘着力を発揮させることができる。これにより、第1の繊維強化プラスチック層13に対する制振シート材14の密着性が十分に得られることで、音の低減効果についての持続性も得られるようになる。
【0035】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態の浴室11の床構造は、金属箔からなる拘束層14bを有する制振シート材14の拘束層14bとは反対側の面を第1の繊維強化プラスチック層13に積層した構成を有している。このため、浴室11内において樹脂層17が上面に露出している床に温水又は水が落下したときに生じる音を低減することができる。従って、浴室内で生じる騒音や、床から壁や扉に伝わって浴室外に漏れる騒音を抑制することができる。また、こうした床構造とすることで、所定の防音性能を発揮させる範囲において床構造を薄肉化することも可能となる。
【0036】
(2)制振シート材14の上面に樹脂層17を直接設けた場合、その樹脂層17は制振シート材14に支持されることになる。ここで、上記音を抑制する基材14aは、比較的軟質なものが多いため、こうした基材14aが樹脂層17に積層されると、樹脂層17の支持力は低下する傾向にある。こうした樹脂層17を支持する支持力の低下により、樹脂層17が撓みやすくなる結果、樹脂層17の耐久性を低下させるおそれがある。この点、本実施形態では、制振シート材14の上層側において、更に第2の繊維強化プラスチック層16及び木質層15が配置されている。こうした層は、樹脂層17を支持する支持層として有効であるため、樹脂層17の耐久性を高めることができるようになる。
【0037】
(3)制振シート材14の厚さを増すことで、上記音の低減効果は高まるものの、床構造の重量増を招くことになる。この点、制振シート材14の基材14aがブチル系ゴムを含むことで、浴室11の床の使用温度下(例えば20℃〜40℃)において制振性能が発揮されやすくなる。これにより、上記音の低減効果を維持しながら、床構造を軽量化することもできるようになる。また、ブチル系ゴムは比較的軟質であるため、ブチル系ゴムを含む基材14aを用いる場合には、上記(2)欄で述べたように制振シート材14の上層側において、更に第2の繊維強化プラスチック層16及び木質層15が配置されることが好適である。また、ブチル系ゴムは、第1の繊維強化プラスチック層13に対する密着性も良好であるため、床面の位置において、音の低減効果のばらつきが抑制されるようになる。
【0038】
(4)制振シート材14の基材14aが制振性向上剤を含有することで、振動又は衝撃のエネルギーは熱エネルギーに更に変換されやすくなる。このため、上記(1)及び(3)欄で述べた作用効果を更に高めることが容易となる。
【0039】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・前記第2の繊維強化プラスチック層16及び木質層15を設けずに構成することもできる。この場合であっても、上記(1)欄で述べた作用効果を得ることができる。
【0040】
・前記第2の繊維強化プラスチック層16及び木質層15のいずれか一方を設けずに構成することもできる。この場合であっても、第2の繊維強化プラスチック層16及び木質層15のいずれか一方の層により樹脂層17が好適に支持される。すなわち、第2の繊維強化プラスチック層16及び木質層15の少なくとも一方を配置することで、上記(2)欄で述べたように、樹脂層17の耐久性を高めることができるようになる。
【0041】
・図2に示されるように、制振シート材14の拘束層14bを下層として配置するとともに、その拘束層14bとは反対側の面(上面)に第1の繊維強化プラスチック層13を積層した構成に変更してもよい。すなわち、前記実施形態の床構造を発泡樹脂層12上に第2の繊維強化プラスチック層16、木質層15、制振シート材14、第1の繊維強化プラスチック層13、及び樹脂層17が順に積層された床構造に変更してもよい。この場合であっても、制振シート材14の基材14aが拘束層14b及び第1の繊維強化プラスチック層13に挟持された構成により、上記(1)欄で述べた作用効果を得ることができる。またこの場合、樹脂層17は第1の繊維強化プラスチック層13により好適に支持されるため、上記(2)欄で述べたように、樹脂層17の耐久性を高めることができるようになる。なお、図2に示される床構造では、制振シート材14の下層側に木質層15及び第2の繊維強化プラスチック層16が順に配置されている。ここで、制振シート材14の形状安定性を確保するという観点から、制振シート材14を支持させる支持層として、木質層15及び第2の繊維強化プラスチック層16の少なくとも一方を設けることが好ましい。
【0042】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・前記制振シート材は、その拘束層を下層として配置されてなる浴室の床構造。
・前記制振シート材は、その拘束層を下層として配置されてなり、前記制振シート材の下層側には、当該制振シート材を支持させる支持層として、更に繊維強化プラスチック層及び木質層の少なくとも一方が配置されてなる浴室の床構造。
【符号の説明】
【0043】
11…浴室、13…第1の繊維強化プラスチック層、14…制振シート材、14a…基材、14b…拘束層、15…木質層、16…第2の繊維強化プラスチック層、17…樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内において樹脂層が上面に露出してなる床構造であって、
金属箔からなる拘束層を有する制振シート材の前記拘束層とは反対側の面を繊維強化プラスチック層に積層した構成を有することを特徴とする浴室の床構造。
【請求項2】
前記制振シート材は、その拘束層を上層として配置されてなり、当該制振シート材の上層側において、更に繊維強化プラスチック層及び木質層の少なくとも一方の層が配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の浴室の床構造。
【請求項3】
前記制振シート材の基材がブチル系ゴムを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の浴室の床構造。
【請求項4】
前記制振シート材の基材が、ベンゾチアジル化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ジフェニルアクリレート化合物、正リン酸エステル化合物、及び芳香族第2級アミン化合物から選ばれる少なくとも一種の制振性向上剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の浴室の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−202466(P2011−202466A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72753(P2010−72753)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】