説明

浴室の洗い場面構造

【課題】水切れ性を確保しながら、排水溝の数を少なくして清掃性を向上させた浴室の洗い場面構造を提供する。
【解決手段】間隔をおいて平行に延びる複数の主排水溝3,3間に、それぞれ上方へ膨出した凸条面4が形成され、各凸条面4には、隣り合う一対の前記主排水溝3,3間を連通させる副排水溝5が複数形成されてなる浴室の洗い場面において、前記各凸条面4には、隣り合う前記主排水溝3,3間の幅寸法と、一対の前記副排水溝5,5間の幅寸法との比率が1:4以上で、かつ、一対の前記副排水溝5,5間の幅寸法が160mm以下をなす部分が少なくとも1カ所以上設けられているとともに、隣接する凸条面4,4において、一方の凸条面4に形成された前記一対の副排水溝5,5間に他方の凸条面4の副排水溝5が少なくとも1本以上存在するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場面の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水溜まりができにくく、早期に乾燥させることのできる浴室の洗い場面として、例えば特許文献1に開示されているような凸形状と凹形状の溝を組み合わせたモザイクパターンのものが存在する。
【特許文献1】特開2003−176558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されている洗い場面構造では、凸形状と凹形状の溝を組み合わせることで乾燥性能は向上したが、溝に付着した汚れが掃除しにくいという新たな問題が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、汚れの付着が少なく掃除が容易となる洗い場面構造を提供するものであり、その請求項1は、間隔をおいて平行に延びる複数の主排水溝間に、それぞれ上方へ膨出した凸条面が形成され、各凸条面には、隣り合う一対の前記主排水溝間を連通させる副排水溝が複数形成されてなる浴室の洗い場面において、前記各凸条面には、隣り合う前記主排水溝間の幅寸法と、一対の前記副排水溝間の幅寸法との比率が1:4以上で、かつ、一対の前記副排水溝間の幅寸法が160mm以下をなす部分が少なくとも1カ所以上設けられているとともに、隣接する凸条面において、一方の凸条面に形成された前記一対の副排水溝間に他方の凸条面の副排水溝が少なくとも1本以上存在するように構成したことである。
【0005】
また、請求項2は、前記各凸条面には、隣り合う前記主排水溝間の幅寸法と一対の前記副排水溝間の幅寸法との比率が1:1〜1:4をなす部分が少なくとも1カ所以上設けられていることである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、間隔をおいて平行に延びる複数の主排水溝間に、それぞれ上方へ膨出した凸条面が形成され、各凸条面には、隣り合う一対の前記主排水溝間を連通させる副排水溝が複数形成されてなる浴室の洗い場面において、前記各凸条面には、隣り合う前記主排水溝間の幅寸法と、一対の前記副排水溝間の幅寸法との比率が1:4以上で、かつ、一対の前記副排水溝間の幅寸法が160mm以下をなす部分が少なくとも1カ所以上設けられているとともに、隣接する凸条面において、一方の凸条面に形成された前記一対の副排水溝間に他方の凸条面の副排水溝が少なくとも1本以上存在するように構成したことにより、主排水溝は平行に一方向を向いているため清掃性が良くなる。また、凸条面の水切れ性を確保しながら副排水溝の数を減らすことができるため、副排水溝の数が減ることで付着する汚れが少なくなり、掃除がし易いものとなる。
【0007】
また、前記各凸条面には、隣り合う前記主排水溝間の幅寸法と一対の前記副排水溝間の幅寸法との比率が1:1〜1:4をなす部分が少なくとも1カ所以上設けられていることにより、主排水溝が排水勾配方向に直角に交わる場合でも、副排水溝を通して良好に排水することができるものとなる。
【実施例】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、浴室の洗い場面の平面構成図であり、図2は一部を拡大した平面図である。
浴室の洗い場面1の図示しない浴槽側には、中央部に排水口2が形成されており、この排水口2に向かって水勾配を形成させるために、洗い場面1には勾配折り目6a,6bが形成されており、この勾配折り目6a,6b間はaゾーン1aとなっており、また勾配折り目6aの図示左側はbゾーン1bとなっており、また勾配折り目6bの図示右側はcゾーン1cとなっている。
aゾーン1aの排水口2に向かう水勾配は1/45〜1/28、即ち1.3°〜2°の勾配に設定されている。また、bゾーン1b及びcゾーン1cの水勾配は1/29〜1/23、即ち2°〜2.5°の水勾配に設定されている。
【0009】
本例の洗い場面1には、排水口2が形成されている辺に向かって、平行に複数の主排水溝3,3,3が間隔をおいて、それぞれ直線状に縦方向に延びて形成されており、一対の主排水溝3と主排水溝3間には、それぞれ上方へ膨出した凸条面4が図示縦方向に形成されている。また、各凸条面4には、隣り合う一対の主排水溝3,3間を連通させる副排水溝5,5,5が主排水溝3と直交状に複数それぞれ平行に形成されている。
【0010】
なお、図3に主排水溝3と凸条面4の断面図を示すように、一対の主排水溝3,3間の幅寸法dは15mm〜30mmに設定されており、また、各主排水溝3の幅寸法eは3mm〜4mmに設定されている。また、主排水溝3の深さfは0.6〜1mmに設定されている。
図3では、凸条面4は、曲率半径20〜152mmで上方へ円弧状に膨出した曲面R1で形成されており、凸条面4の頂上と主排水溝3の底間の高さgは、1.2〜1.65mmに設定されている。また、主排水溝3は、曲率半径2〜4mmで下側へ凹んだ曲面R2で形成されており、主排水溝3と凸条面4間は、曲率半径2〜10mmの曲面R3で結ばれている。
【0011】
更に、図3に代えて図4の断面図で示すような断面形状に形成される場合もある。
即ち、図4では、主排水溝3,3間の幅寸法dは15mm〜30mmに設定されており、凸条面4は、曲率半径15〜120mmで上方へ円弧状に膨出した曲面R1で形成されており、主排水溝3は、曲率半径2〜4mmで下側へ凹んだ曲面R2で形成されており、主排水溝3と凸条面4間は、凸条面4に外接する円弧で繋がれている。なお、主排水溝3の底面と凸条面4の頂上間の高さ寸法gは、1.2〜1.4mmに設定されている。
【0012】
なお、図5は、副排水溝5の断面図を示すものであり、図5では、副排水溝5は曲率半径2〜4mmの曲面R4で凹み状に形成されており、副排水溝5は凸条面4に向かって傾斜角αが25〜30°をなし、副排水溝5から凸条面4に繋がる部分は、曲率半径1.5〜3mmの曲面R5で形成されている。
【0013】
更に、副排水溝5は、図6または図7に示すような断面形状に形成しておくこともでき、図6では、副排水溝5の形状は、前記図3に示した主排水溝3と同じ形状寸法に設定したものであり、副排水溝5から凸条面4に繋がる部分は、曲率半径20〜152mmの曲面R5で形成されている。
【0014】
また、図7では、副排水溝5の形状および寸法は、前記図4に断面図で示した主排水溝3と同じであり、副排水溝5と凸条面4を繋げる部分は、曲率半径15〜120mmの緩やかな曲面R5で形成されている。
【0015】
なお、図3および図4に示した主排水溝3の断面形状、および図5,図6,図7に示した副排水溝5の断面形状を組み合わせて、主排水溝3および副排水溝5を形成させておくことができるものである。
一対の平行な主排水溝3,3間に形成される各凸条面4には、縦方向に間隔をおいて平行に複数の副排水溝5が形成されているが、一対の副排水溝5,5間の間隔が大な部分と小な部分、および中間的な部分が、それぞれの凸条面4に存在している。
【0016】
即ち、図2において、隣り合う主排水溝3,3間の幅寸法dと、一対の副排水溝5,5間の幅寸法hとの比率が1:4以上で、かつ、一対の副排水溝5,5間の幅寸法hが160mm以下をなす大比率部分4aと、比率が1:2〜1:4をなす中比率部分4bと、比率が1:1〜1:2をなす小比率部分4cがそれぞれの凸条面4に形成されており、幅寸法dと幅寸法hの比率が1:4以上で、かつ、一対の副排水溝5,5間の幅寸法hが160mm以下をなす大比率部分4aにおいては、この大比率部分4aを構成する一対の副排水溝5,5間に、隣接する凸条面4の副排水溝5が1本以上存在するように構成されている。
【0017】
なお、洗い場面1全体としては、大比率部分4aの面積比率は40〜55%であり、小比率部分4cの面積比率は5〜15%であり、中比率部分4bの面積比率は30〜55%である。
なお、大比率部分4aの副排水溝5,5間の幅寸法hを160mm以下としたのは、160mmを超えると、凸条面4表面に残る排水の水切れが悪くなり、水が途切れて、凸条面4上に水が残ってしまうこととなるからである。また、bゾーン1bおよびcゾーン1cでは、主排水溝3を挟んだ隣り合う副排水溝5,5間の幅寸法jが80mmを超えると、主排水溝3に水が停滞し、水切れが悪くなるからである。
一方、幅寸法dと幅寸法hの比率を1:1以下にした場合は、副排水溝5の本数が多くなり、その分、副排水溝5に汚れが残り、清掃性が悪くなるからである。
従って、本例では、排水の水切れ性を確保しながら、なるべく副排水溝5の溝数を少なくして、清掃性を高めるように、大比率部分4aを各凸条面4に少なくとも1カ所以上設けて構成したものである。
【0018】
なお、大比率部分4aを構成する一対の副排水溝5,5間には、隣接する凸条面4に少なくとも1本は副排水溝5が形成されているため、この大比率部分4a上の排水は、良好な水切れ性が確保されて、隣接する凸条面4の副排水溝5を通して、途切れることなく排水口2側へ排水できるものとなる。なお、図2に示すように、大比率部分4aを構成する副排水溝5と、隣接する凸条面4に形成されている副排水溝5間の寸法jは、15mm以上が好ましい。
なお、前述した排水勾配折り目6a,6bの部分に、副排水溝5が設けられていると、水が排水口2に流れ易いものとなるため、この勾配折り目6a,6bの部分になるべく副排水溝5が配置されている。
【0019】
なお、図8の平面図で、また図9に一部を拡大して平面図で示す洗い場面1は、副排水溝5の本数を増やした変更例であり、この図8および図9に示すような洗い場面のモザイクパターンでは、副排水溝5の本数が増やされているため、水切れ効果はより向上したものとなる。
【0020】
このような主排水溝3と副排水溝5で形成されるモザイクパターンは、前記aゾーン1aと、bゾーン1bおよびcゾーン1cでは異なっており、aゾーン1aでは大比率部分4aが50〜55%の面積を占め、小比率部分4cは5〜10%程度の面積となっており、また中比率部分4bは35〜45%の面積比率となっている。
一方、bゾーン1bおよびcゾーン1cでは、大比率部分4aは25〜30%の面積比率となっており、小比率部分4cは10〜15%の面積比率で、中比率部分4bは55〜65%の面積比率となっている。
即ち、bゾーン1bおよびcゾーン1cには、大比率部分4aが少なく、副排水溝5の本数がaゾーン1aよりも多く形成されている。これは、bゾーン1bおよびcゾーン1cでは、主排水溝3が水勾配方向に対して直角に交わるため、副排水溝5の本数を増やして、排水口2への排水性を確保しているのである。なお、aゾーン1aでは、主として主排水溝3を通り、排水は排水口2に流されるため、このaゾーン1aでは副排水溝5の本数がなるべく少なくなるように設定されている。
【0021】
なお、図10の平面図で、また図11の要部拡大図で示す洗い場面1は、1本の副排水溝5が、5本の主排水溝3,3,3を繋げるようなモザイクパターンに構成したものである。
更に、図12の平面図で、また図13の拡大図で示す洗い場面1は、副排水溝5を、それぞれ間隔をおいて平行に斜め方向に形成させたものであり、しかも1本の副排水溝5が3本の主排水溝3,3を繋げるようなモザイクパターンに構成したものである。
更に、図14の平面図で、図15の要部拡大図で示す洗い場面1は、斜めに形成した副排水溝5を、別の凸条面4では反対側に傾斜する方向に形成して、副排水溝5の傾斜方向を凸条面4で異なるようなモザイクパターンに構成したものである。
【0022】
このような図8〜図15に示すような変形モザイクパターンの洗い場面1においても、各凸条面4には、隣り合う主排水溝3,3間の幅寸法dと、一対の副排水溝5,5間の幅寸法hとの比率が1:4で、かつ、一対の副排水溝5,5間の幅寸法hが160mm以下をなす大比率部分4aが少なくとも1カ所設けられており、この大比率部分4aを構成する一対の副排水溝5,5間には、隣接する凸条面4に副排水溝5が少なくとも1本以上存在するように構成されており、また、各凸条面4には1:1〜1:4の比率の小比率部分4cが少なくとも1カ所設けられており、水切れ性を確保しながら、なるべく副排水溝5の溝数を少なくして清掃性が向上するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】洗い場面の平面構成図である。
【図2】図1の要部拡大平面構成図である。
【図3】主排水溝の断面構成図である。
【図4】主排水溝の変更例を示す断面構成図である。
【図5】副排水溝の断面構成図である。
【図6】副排水溝の変更例を示す断面構成図である。
【図7】更に異なる副排水溝の変更例を示す断面構成図である。
【図8】第2実施例のモザイクパターンの洗い場面の平面構成図である。
【図9】図8の要部拡大平面構成図である。
【図10】第3実施例の洗い場面の平面構成図である。
【図11】図10の要部拡大平面構成図である。
【図12】第4実施例の洗い場面の平面構成図である。
【図13】図12の要部拡大平面構成図である。
【図14】第5実施例の洗い場面の平面構成図である。
【図15】図14の要部拡大平面構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 洗い場面
1a aゾーン
1b bゾーン
1c cゾーン
2 排水口
3 主排水溝
4 凸条面
4a 大比率部分
4b 中比率部分
4c 小比率部分
5 副排水溝
6a,6b 勾配折り目
d 一対の主排水溝間の幅寸法
h 一対の副排水溝間の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて平行に延びる複数の主排水溝間に、それぞれ上方へ膨出した凸条面が形成され、各凸条面には、隣り合う一対の前記主排水溝間を連通させる副排水溝が複数形成されてなる浴室の洗い場面において、
前記各凸条面には、隣り合う前記主排水溝間の幅寸法と、一対の前記副排水溝間の幅寸法との比率が1:4以上で、かつ、一対の前記副排水溝間の幅寸法が160mm以下をなす部分が少なくとも1カ所以上設けられているとともに、隣接する凸条面において、一方の凸条面に形成された前記一対の副排水溝間に他方の凸条面の副排水溝が少なくとも1本以上存在するように構成したことを特徴とする浴室の洗い場面構造。
【請求項2】
前記各凸条面には、隣り合う前記主排水溝間の幅寸法と一対の前記副排水溝間の幅寸法との比率が1:1〜1:4をなす部分が少なくとも1カ所以上設けられていることを特徴とする請求項1に記載の浴室の洗い場面構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−239307(P2007−239307A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63405(P2006−63405)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】