説明

浴室床及び歩行面パネル

【課題】 短時間のうちに自然乾燥しやすいとともに、汚れが付着しにくく、掃除が容易な浴室床や歩行面パネルを提供する。
【解決手段】
上部平面部と下部平面部とを有する溝付きFRP製の浴室床であって、上部平面部の最短直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との深さが0.2〜0.3mmであり、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であり、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜1.9mm、好ましくは0.8〜1.6mmであり、上部平面部の平面形状が角の丸い浴室床である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴室床または歩行面パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
システムバスルームやユニットバスルーム等の浴室における床として、防水性を有するFRP(強化繊維プラスティック)や人工大理石等の樹脂材料による防水パンが普及している。防水パンの表面には滑り止め、排水性、美観の観点から各種のパターンで凹凸模様や排水溝が設けられている。
【0003】
近時、次の特許文献に観られるように、防汚材料を含有させ防汚性能を高めた防水パン(特許文献1)、水の表面張力を破壊する凸部と流速を遅くする溝を備えた乾燥性に優れた防水パン(特許文献2)、表面に親水や撥水機能を有するコーティングを施した樹脂被膜成形体(特許文献3)による浴室床用の防水パンが開発されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−056625号公報
【特許文献2】特開2002−054295号公報
【特許文献3】特開2001−334593号公報
【0005】
また、本発明は、鉄道駅、飛行場、オフィスビル、銀行、郵便局、デパート、スーパーマーケット、マンション等の床や歩道、陸橋階段などに用いる歩行面パネルに関する。歩行面パネルとして、耐水性を有するセラミック、リノリューム、プラスティック製のパネルが従来用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の浴室床や歩行面パネルは、排水性が悪く、表面に水が溜り、長時間経過しても浴室床が自然乾燥しにくいという問題がある。
また、特許文献2に開示されている方法は、溝に汚れが溜りやすく清掃がしにくいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、短時間のうちに自然乾燥しやすいとともに、汚れが付着しにくく、掃除が容易な浴室床や歩行面パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、請求項1に記載の本発明に係る浴室床、すなわち、上部平面部と下部平面部とを有する溝付きFRP製の浴室床であって、上部平面部の最短直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との深さが0.2〜0.3mmであり、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であり、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜1.9mm、好ましくは0.8〜1.6mmであり、上部平面部の平面形状が角の丸い浴室床によって、達成される。
【0009】
また、上記目的は、請求項2に記載の本発明に係る歩行面パネル、すなわち、上部平面部と下部平面部とを有する溝付きFRP製の歩行面パネルであって、上部平面部の最短直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との深さが0.2〜0.3mmであり、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であり、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜1.9mm、好ましくは0.8〜1.6mmであり、上部平面部の平面形状が角の丸い歩行面パネルによって、達成される。
【0010】
本発明の好ましい実施態様においては、請求項3または4に記載のように、楕円形状の上部平面部を千鳥状に配置している。
【0011】
さらに、上記目的は、請求項5に記載の本発明に係る浴室床、すなわち、上部平面部と下部平面部とを有する溝付き人工大理石製の浴室床であって、上部平面部の最短直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との深さが0.14〜0.4mm、好ましくは0.2〜0.3mmであり、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であり、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜2.3mm、好ましくは0.8〜2.0mmであり、上部平面部の平面形状が角の丸い浴室床によって、達成される。
【0012】
また、上記目的は、請求項6に記載の本発明に係る歩行面パネル、すなわち、上部平面部と下部平面部とを有する溝付き人工大理石製の歩行面パネルであって、上部平面部の最短直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との深さが0.14〜0.4mm、好ましくは0.2〜0.3mmであり、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であり、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜2.3mm、好ましくは0.8〜2.0mmであり、上部平面部の平面形状が角の丸い歩行面パネルによって、達成される。
【0013】
本発明の好ましい実施態様においては、請求項7または8に記載のように、楕円形状の上部平面部を千鳥状に配置している。
【発明の効果】
【0014】
上部平面部と下部平面部との深さを0.14〜0.4mm、好ましくは0.2〜0.3mmとすると、浴室床全面の凹凸が低くよりフラットになり、汚れやゴミが溜りにくく、かつ、掃除しやすくなる。
【0015】
上部平面部の最短直線部を含む断面について、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜1.9mm、好ましくは0.8〜1.6mmであると、水がすばやく床面に広がり、しかも溝の深さが0.2〜0.3mm程度と浅いと、水が蒸発しやすく、自然乾燥が早い。
【0016】
上部平面部の最長直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であると、水がすばやく床面に広がり、局所的に水が残ることがほとんどない。また、掃除もしやすい。
【0017】
したがって、本発明に係る浴室床及び歩行面パネルは汚れやゴミを清掃しやすいとともに、水が蒸発しやすく、自然乾燥しやすい。すなわち、清潔かつ乾燥した状態に保つことができるので、浴室内で滑りにくく、雨天時の歩行中滑りにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して、詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明に係る実施形態の浴室床の平面図である。上部平面部1は孤立した楕円形状であり、同一高さに千鳥状に配置されており、下部平面部2は連続し同一高さである。上部平面部1の周囲には傾斜部3がある。全面には不図示の凹凸が形成されており、表面粗さ形状測定機での測定結果は、算術平均粗さ(Ra)、算術平均傾斜(Δa)を表示してある。
【0020】
図2は本発明に係る実施形態の浴室床の断面図であり、図1におけるA−A断面図である。上部平面部1の断面は直線状であり、上部平面部1と傾斜部3との間の第2中間部5の断面は曲率半径R2の円弧状であり、傾斜部3の断面は傾斜の直線状であり、傾斜部3と下部平面部2との間の第1中間部4の断面は曲率半径R1の円弧状であり、下部平面部2の断面は直線状である。上部平面部1と下部平面部2との深さはdで示されている。
【0021】
第1実施形態
SMC(シート・モールディング・コンパウンド)の加熱加圧・圧縮成形により種々のFRP製の浴室床を作製した。SMCの加熱加圧・圧縮成形は、シート状の固体原料を下型に敷いた後、上型を閉じて加圧するため、型への摩擦力は大きい。よって、微細な凹凸を維持するために、摩擦力に耐えられる型表面にする必要がある成形方法である。摩擦力に耐えられるようにする方法として、イオンプレーティング等によりTiNやCrNの被膜を型表面に付ける方法等が挙げられる。浴室床に設けた凹凸についての寸法を表1に示す。凹凸形状は、輪郭形状測定機によって測定した。
【0022】
次に、清掃性の評価は次のようにして行った。浴室床に歯磨きクリームまたはクレンジングクリームをそれぞれ所定量塗った後に、一定条件で拭き取り、浴室床に残った歯磨きクリームまたはクレンジングクリームの量を目視して、二重丸、丸、丸ダッシュ、三角、バツと評価した。清掃性の評価結果も表1に合せて示す。
【表1】

【0023】
水はけ性の評価は次のようにして行った。浴室床に水をかけた後、目視により水の広がり方(濡れ性)を観察した。水はけ性を丸、丸ダッシュ、三角、バツと評価した。水はけ性の評価結果も表1に合せて示している。
【0024】
溝深さは0.3mm以下とすると、清掃性が良い。比較例06のように最小溝幅(溝上や溝下)(WUminやWLmin)が0.64mmや0.12mmと小さくなると、清掃性が悪くなる。
【0025】
比較例05のように最大溝幅(溝下や溝上)(WUmaxやWLmax)が1.74や2.00と大きくなると、濡れ性(水はけ性)が悪くなる。
【0026】
第2実施形態
注型成形により種々の人工大理石製の浴室床を作製した。人工大理石の作製方法は、上型と下型を閉じた状態で液状の原料樹脂を流し込み、加熱加圧成形して作製する。液状の原料であるため、型への摩擦力は小さい。また、液状の原料であるため、型締めの圧力も小さくて済む。よって、微細な凹凸を維持しやすい成形方法である。浴室床に設けた凹凸についての寸法を表2に示す。
【表2】

【0027】
同様にして、清掃性の評価を行った。清掃性の評価結果も表2に合せて示す。
【0028】
また、同様にして、水はけ性の評価を行い、水はけ性の評価結果も表2に合せて示す。
【0029】
比較例20のように最小溝幅(溝上や溝下)(WUminやWLmin)が0.65mmや0.15mmと小さくなると、清掃性が悪くなる。
【0030】
比較例19のように最大溝幅(溝上や溝下)(WUmaxやWLmax)が2.35や2.09と大きくなると、濡れ性(水はけ性)が悪くなる。最大溝幅が大きいと、部分的に水が残り、全体としては乾きにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る実施形態の浴室床の平面図である。
【図2】本発明に係る実施形態の浴室床の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 上部平面部
2 下部平面部
3 傾斜部
4 第1中間部
5 第2中間部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部平面部と下部平面部とを有する溝付きFRP製の浴室床であって、上部平面部の最短直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との深さが0.2〜0.3mmであり、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であり、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜1.9mm、好ましくは0.8〜1.6mmであり、上部平面部の平面形状が角の丸い浴室床。
【請求項2】
上部平面部と下部平面部とを有する溝付きFRP製の歩行面パネルであって、上部平面部の最短直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との深さが0.2〜0.3mmであり、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であり、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜1.9mm、好ましくは0.8〜1.6mmであり、上部平面部の平面形状が角の丸い歩行面パネル。
【請求項3】
楕円形状の上部平面部を千鳥状に配置していることを特徴とする請求項1に記載の浴室床。
【請求項4】
楕円形状の上部平面部を千鳥状に配置していることを特徴とする請求項2に記載の歩行面パネル。
【請求項5】
上部平面部と下部平面部とを有する溝付き人工大理石製の浴室床であって、上部平面部の最短直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との深さが0.14〜0.4mm、好ましくは0.2〜0.3mmであり、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であり、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜2.3mm、好ましくは0.8〜2.0mmであり、上部平面部の平面形状が角の丸い浴室床。
【請求項6】
上部平面部と下部平面部とを有する溝付き人工大理石製の歩行面パネルであって、上部平面部の最短直線部を含む断面について、上部平面部と下部平面部との深さが0.14〜0.4mm、好ましくは0.2〜0.3mmであり、上部平面部と下部平面部との間の傾斜が20°〜70°、好ましくは30°〜65°であり、隣り合う上部平面部の間の距離が0.7〜2.3mm、好ましくは0.8〜2.0mmであり、上部平面部の平面形状が角の丸い歩行面パネル。
【請求項7】
楕円形状の上部平面部を千鳥状に配置していることを特徴とする請求項5に記載の浴室床。
【請求項8】
楕円形状の上部平面部を千鳥状に配置していることを特徴とする請求項6に記載の歩行面パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−9510(P2006−9510A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191702(P2004−191702)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】