説明

浴室用椅子の背もたれの取付構造及びこれを備えた浴室用椅子

【課題】全体の構成が簡易で使い勝手が良く、確実且つ強固に座部に取付けることのできる浴室用椅子の背もたれの取付構造及びこれを備えた浴室用椅子を提供する。
【解決手段】後部側上面に凹部10が設けられた座部2と、前記凹部10に着脱自在に嵌入される凸状部が設けられた背もたれと、該凸状部の底部又は前記凹部10の底部の何れか一方に設けられる凹溝11と、該凹溝11に嵌合すべく前記凸状部の底部又は前記凹部10の底部の何れか他方に設けられる嵌合凸部28とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者、病人、身障者等が浴室内で使用する浴室用椅子の背もたれの取付構造及びこれを備えた浴室用椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浴室用椅子としては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは、座部と、背もたれと、脚部とから構成されている。背もたれは、背中を保持する板状の背もたれ本体と、該背もたれ本体の背面に設けられる一対のパイプ支柱とからなっている。かかるパイプ支柱は前方に向けて折曲形成されており、その先端部を座部の裏面に固定した接続パイプの後端部に挿着して取付けられている。
【0003】
また、パイプ支柱の先端部には、先端部側程縮径するテーパ状の傾斜部と、該傾斜部に延設された直管部とが設けられており、該直管部の側面に突設された係止ピンが前記接続パイプに設けられた係止孔に係止されている。更に、接続パイプの先端に嵌挿された圧迫リングの一端部内周面にはテーパ面が形成されており、これを前記パイプ支柱の傾斜部に係合させることにより、該パイプ支柱を接続パイプに固定している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3087260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のものに於いては、パイプ支柱を座部に固定するために、別途接続パイプ、係止ピン及び圧迫リング等の多数の部材が必要となる。しかも、これらの各部材は特殊な構成からなるために、製作費用が必要以上に嵩んでしまうという大なる問題点があった。
【0006】
また、パイプ支柱を接続パイプに接続する際には、該接続パイプを含めた椅子本体を保持しつつ、両パイプ支柱を接続パイプに挿入しなければならないために、組立作業が非常に厄介なものになるという難点も有していたのである。
【0007】
それ故に、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、全体の構成が簡易で使い勝手が良く、確実且つ強固に座部に取付けることのできる浴室用椅子の背もたれの取付構造及びこれを備えた浴室用椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る背もたれの取付構造は、後部側上面に凹部が設けられた座部と、前記凹部に着脱自在に嵌入される凸状部が設けられた背もたれと、該凸状部の底部又は前記凹部の底部の何れか一方に設けられる凹溝と、該凹溝に嵌合すべく前記凸状部の底部又は前記凹部の底部の何れか他方に設けられる嵌合凸部とを備えたものである。
【0009】
このような背もたれの取付構造に於いては、背もたれの凸状部を座部の凹部に嵌入して両部材を簡単に取付けることができる。また、凸状部又は凹部の底部の何れか一方に設けた凹溝に、凸状部又は凹部の底部の何れか他方に設けた嵌合凸部が嵌合することになる。
【0010】
従って、例えば寸法誤差等により凹部の内側面と凸状部の外側面間に隙間が形成されてしまうような場合であっても、前記凹溝と嵌合凸部との嵌合によって、背もたれをがたつかせることなく座部に取付けることができる。
【0011】
また、これにより背もたれの凸状部に於ける変形の発生が抑制されるために、単に背もたれの凸状部を座部の凹部に嵌入した場合と比較して、その取付強度が大幅に向上することになる。その結果、使用者に不安感や不快感等を与えることなく、安全で且つ快適な入浴が可能となる。
【0012】
また、背もたれの凸状部は座部の凹部に着脱自在に嵌入されているために、その分解及び組立が可能である。これにより、各構成部材を分解した状態で保管できると共に、この状態で搬送することが可能になる。従って、保管スペースの削減や搬送費の軽減を図ることができる。
【0013】
更に、座部と背もたれとの組立に際して、上記のような共通の取付構造を採用すれば、形状その他の仕様が相違する座部と背もたれとを任意に組合わせることが可能になる。これにより、使用者の選択肢が広がって、好みの浴室用椅子を入手できるのである。
【0014】
また、前記凹溝に座部又は背もたれの幅方向に設けられる第1凹溝と、該第1凹溝に略垂直に交差させて連設される第2凹溝とを備えさせると共に、嵌合凸部に前記第1凹溝に嵌合する第1嵌合凸部と、前記第2凹溝に嵌合する第2嵌合凸部とを備えさせるようにしてもよい。
【0015】
これによれば、第1凹部と第1嵌合凸部との嵌合により、背もたれの前後方向のがたつきの発生が規制されると共に、第2凹溝と第2嵌合凸部との嵌合により、背もたれの左右方向(幅方向)のがたつきの発生が規制される。即ち、凹溝と嵌合凸部との嵌合によって、前後左右のがたつきが規制された状態で、背もたれを座部に取付けることができるのである。
【0016】
更に、前記凹溝及び嵌合凸部は、凹部又は凸状部の幅方向に所定間隔を有して一対形成することもできる。
【0017】
これによると、凹溝と嵌合凸部との嵌合による背もたれと座部間のがたつきの規制が、より一層確実なものとなる。
【0018】
また、前記凹部を座部の幅方向に所定間隔を有して一対形成し、且つ、前記背もたれに、人の背中を保持する背もたれ本体と、該背もたれ本体に幅方向に所定間隔を有して下向きに設けられる一対の支柱と、該支柱の下端部間に架設されて前記座部上に配されると共に、底部に前記凸状部が所定間隔を有して一対設けられる基部とを備えさせてもよい。
【0019】
この場合は、背もたれに設けた一対の凸状部が座部の各凹部に夫々嵌入されて、背もたれの基部が座部上に配された状態で座部と背もたれとが取付けられることになる。
【0020】
更に、本発明に係る浴室用椅子は、前記背もたれの取付構造を備えたものである。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る浴室用椅子の背もたれの取付構造及びこれを備えた浴室用椅子は、全体の構成が簡易で且つ安価に製作することができると共に、座部に背もたれを確実且つ強固に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す浴室用椅子を示し、(a)は正面図で、(b)は側面図である。
【図2】同座部の平面図である。
【図3】同背もたれを示し、(a)は正面図で、(b)は底面図である。
【図4】同嵌合凸部の凹溝への嵌合状態を示す断面図である。
【図5】同ロックピンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る背もたれの取付構造の一実施形態について、図面に従って説明する。図1に示す浴室用椅子1は、上面に人が着座する座部2と、該座部2の後部側に取付けられる背もたれ3と、前記座部2の四隅部分に下向きに取付けられる脚部4とを備えている。座部2と背もたれ3とは、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の合成樹脂で構成されており、脚部4はステンレスやアルミニウム等の金属製パイプで構成されている。
【0024】
座部2の後部側上面には、図2に示すように、平面略台形状で且つ有底状に形成された一対の凹部10が、幅方向に所定間隔を有して設けられている。また、各凹部10の底部の後部側隅部分には、一対の凹溝11が対称に設けられている。この凹溝11は上下に貫通しており、幅方向に設けられる第1凹溝11aと、該第1凹溝11aに略垂直に交差させて連設される第2凹溝11bとからなる平面略Lの字状に形成されている。また、凹部10の略中央には水切り用小孔12が設けられている。
【0025】
凹溝11、11間に位置する座部2の略中央には、長孔13が前後方向に形成されている。また、座部2の所定位置には、図1に示すように、発泡EVA等からなる着座パッド14を取付けるための取付用円孔15と、水切り用円孔16とが複数形成されている。更に、座部2の四隅には下部開口状の筒状部17が設けられている。
【0026】
背もたれ3は、図3に示すように、人の背中を保持する背もたれ本体20と、該背もたれ本体20の幅方向に所定間隔を有して下向きに突設される一対の支柱21、21と、該支柱21、21の下端部間に架設される略平板状の基部22と、該基部22の下面両端部に下向きに突設される一対の凸状部23、23とを備えている。
【0027】
背もたれ本体20の略中央部には、幅方向に把持用の長円形孔24が形成されると共に、その下部側方位置には一対の取付用円孔25、25が幅方向に所定間隔を有して形成されている。背もたれ本体20の前面には、図1に示すように、取付用円孔25を介して発泡EVA等からなる背もたれパッド26が着脱自在に取付けられる。凸状部23は中空状に形成されており、座部2の凹部10に着脱自在に嵌入される。その際、基部22の下面が座部2の上面に当接するように配されると共に、基部22の略中央に形成した長孔27が座部2の長孔13と一致するように構成されている。
【0028】
また、各凸状部23の後部側両隅部には、前記座部2の凹溝11、11に嵌合する一対の嵌合凸部28、28が下向きに突設されている。即ち、図4に示すように、嵌合凸部28は断面略Lの字状の形成されており、座部2の第1凹溝11aが嵌合する第1嵌合凸部28aと、第2凹部11bが嵌合する第2嵌合凸部28bとを備えている。また、座部2と背もたれ3との取付状態は、これら各部材2、3の長孔13、27に挿着されたロックピン29により維持される。かかるロックピン29は、図5に示すように、把持部30に棒状の軸部31を介して正面略半円状の離脱防止部32が設けられたものであり、離脱防止部32の回動により各長孔13、27からのロックピン29の離脱が阻止されて、座部2と背もたれと3が固定される。
【0029】
前記座部2の各筒状部17に着脱自在に挿着された脚部4は、図1に示すように、連結具40を介して伸縮自在に連結された一対のパイプからなる脚部本体41と、該脚部本体41の下端部に装着されたゴム製の滑り止め42とを備えている。
【0030】
本実施形態に係る浴室用椅子1は、以上のように構成されている。このような浴室用椅子1に於いては、座部2の第1凹溝11aと背もたれ3の第1嵌合凸部28aとの嵌合により、背もたれ3の前後方向のがたつきが規制されると共に、座部2の第2凹溝11bと第2嵌合凸部28bとの嵌合により、背もたれ3の左右方向(幅方向)のがたつきが規制される。従って、例えば寸法誤差等により凹部10の内側面と凸状部23の外側面間に隙間が形成されてしまうような場合であっても、前記凹溝11と嵌合凸部28との嵌合によって、背もたれ3を前後左右にがたつかせることなく座部2に取付けることができる。
【0031】
また、これにより背もたれ3の凸状部23に於ける変形の発生が抑制されるために、単に背もたれ3の凸状部23を座部2の凹部10に嵌入した場合と比較して、その取付強度が大幅に向上することになる。その結果、使用者に不安感や不快感等を与えることなく、安全で且つ快適な入浴が可能となるのである。
【0032】
更に、座部2の凹部10に設けた凹溝11は貫通して形成されているために、その洗浄の際に水切りとしての機能を発揮するのは勿論のこと、洗浄具等を使用した洗浄が容易に且つ的確に行えるという洗浄面に於ける利点がある。尚、背もたれ3のがたつき防止手段としては、例えば座部2の凹部10の内側面に、背もたれ3の凸状部23の外側面に当接する複数のリブを設けたり、該凸状部23内に嵌合する凸部を座部2の凹部10に設けることも考えられるが、このように構成すると、該凹部10の洗浄が困難になるという欠点を有しており、これらの手段は必ずしも最適ながたつき防止手段とは言うことはできない。
【0033】
また、背もたれ3の凸状部23は座部2の凹部10に着脱自在に嵌入されているために、その分解及び組立が可能である。これにより、各構成部材を分解した状態で保管できると共に、この状態で搬送することが可能になる。従って、保管スペースの削減や搬送費の軽減を図ることができる。
【0034】
更に、座部2と背もたれ3との組立に際して、上記のような共通の取付構造を採用すれば、形状その他の仕様が相違する座部2と背もたれ3とを任意に組合わせることが可能になる。これにより、使用者の選択肢が広がって、好みの浴室用椅子1を入手できるのである。
【0035】
また、本実施形態に係る背もたれ3の取付構造及びこれを備えた浴室用椅子1は、全体の構成が非常に簡易であるために、容易に且つ安価に製作できるという実用的な利点もある。
【0036】
尚、上記実施形態に於いては、座部2に凹溝11を設けると共に、これに嵌合する嵌合凸部28を背もたれ3に設けて構成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、座部2に嵌合凸部を設けると共に、背もたれ3に凹溝を設けるようにしてもよい。但し、浴室用椅子1の洗浄という点を考慮すると、上記実施形態のように、座部2側に凹溝11を設けると共に、該凹溝11を貫通させて形成するのが望ましい。
【0037】
また、上記実施形態では、凹溝11を幅方向に設けられる第1凹溝11aと、該第1凹溝11aに略垂直に交差させて連設される第2凹溝11bとからなる平面略Lの字状に形成している。これに伴い、嵌合凸部28を前記座部2の第1凹溝11aが嵌合する第1嵌合凸部28aと、第2凹部11bが嵌合する第2嵌合凸部28bとからなる断面略Lの字状に形成している。そして、凹部10には一対の凹溝11を設けると共に、凸状部23には一対の嵌合凸部28を設けるように構成している。しかるに、凹溝11及び嵌合凸部28の形状や、数等は決してこれに限られるものではない。例えば、凹溝11及び嵌合凸部28は断面略Lの字状ではなく、断面略Tの字状や円弧状等に形成することも可能であり、その数も単数或いは3個以上で構成することも勿論可能である。
【0038】
更に、本発明に係る背もたれ3の取付構造は、種々の浴室用椅子に対して幅広く適用可能であることは言う迄もない。
【0039】
その他、座部2、背もたれ3及び脚部4の形状等の具体的な構成も、本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0040】
1 浴室用椅子
2 座部
3 背もたれ
10 凹部
11 凹溝
11a 第1凹溝
11b 第2凹溝
20 背もたれ本体
21 支柱
22 基部
23 凸状部
28 嵌合凸部
28a 第1嵌合凸部
28b 第2嵌合凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部側上面に凹部が設けられた座部と、
前記凹部に着脱自在に嵌入される凸状部が設けられた背もたれと、
該凸状部の底部又は前記凹部の底部の何れか一方に設けられる凹溝と、
該凹溝に嵌合すべく前記凸状部の底部又は前記凹部の底部の何れか他方に設けられる嵌合凸部と、を備えてなることを特徴とする浴室用椅子の背もたれの取付構造。
【請求項2】
前記凹溝が、座部又は背もたれの幅方向に設けられる第1凹溝と、該第1凹溝に略垂直に交差させて連設される第2凹溝とを備えると共に、
嵌合凸部が、前記第1凹溝に嵌合する第1嵌合凸部と、前記第2凹溝に嵌合する第2嵌合凸部とを備えた請求項1記載の浴室用椅子の背もたれの取付構造。
【請求項3】
前記凹溝及び嵌合凸部が、凹部又は凸状部の幅方向に所定間隔を有して一対形成された請求項1又は2記載の浴室用椅子の背もたれの取付構造。
【請求項4】
前記凹部が、座部の幅方向に所定間隔を有して一対形成され、且つ、
前記背もたれが、人の背中を保持する背もたれ本体と、該背もたれ本体に幅方向に所定間隔を有して下向きに設けられる一対の支柱と、該支柱の下端部間に架設されて前記座部上に配されると共に、底部に前記凸状部が所定間隔を有して一対設けられる基部とを備えた請求項1乃至3の何れか一つに記載の浴室用椅子の背もたれの取付構造。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つに記載の浴室用椅子の背もたれの取付構造を備えた浴室用椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−200785(P2010−200785A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46219(P2009−46219)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】