説明

浴室用洗い場床

【課題】表面材の有無や仕様にかかわらず排水トラップを共通化でき、排水口周りの表面材の端部の処理を容易化しつつ美観を向上させる浴室用洗い場床を提供する。
【解決手段】基材11と、前記基材の浴室表面側に積層された表面材12と、を備え、前記基材は、洗い場床部11fと、前記洗い場床部よりも低い位置に凹状に形成され、排水トラップ16が取り付けられる開口が形成された排水口部11dと、を有し、前記表面材の前記排水口部側の端部12bは、前記排水トラップが取り付けられた状態において、排水口部の前記排水トラップの構成部品の1つである締付フランジ16bとは干渉しない位置に配置されており、且つ、表面材の排水口部側の端部と、排水トラップの上端縁部と、の間において、基材はコーキング剤によって覆われていることを特徴とする浴室用洗い場床が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴室用洗い場床に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、浴室ユニットに用いられる洗い場床として、例えば基材と基材の上に設けられる表面材との積層構造を有するものがある。例えば、親水性や撥油性など、基材には無い特性を持たせた表面材を基材の上に設けることで、洗い場床の表面にこのような特性を付与できる。
【0003】
また、例えば特許文献1(特許第4174740号公報)に記載されているように、基材と表面材(表面層)との間にクッション層を設け、クッション層で不足する基本性能(耐摩耗性、耐薬品性、耐傷性、耐候性、防水性など)を表面材に持たせることができ、基本性能を備えつつクッション性に富む洗い場床を実現できる。
【0004】
この構成において、排水口周りに位置する表面材の端部は、洗い場側に露出している。このため、外観を損ねないように表面材の端部を高精度にコーキング処理する必要がある。また、排水口周りに位置する表面材の端部は、使用者が触れる箇所になるため、耐摩耗性などの耐久性にも優れた高価なコーキング剤が必要となり、改善の余地がある。
【0005】
また、洗い場床を積層構造とすることによって、例えば、リサイクルした基材の上に新しい表面材を貼り合わせて新品同様にすることができ、省資源になる。例えば特許文献2(特開2006−63554号公報)には、リフォーム用途のために、洗い場の床面に貼り付けるためのシートが提案されている。
【0006】
この構成において、シートの端部の一部は、排水口内に配置させられているが、端部の他の部分は、洗い場側に露出しており、上記と同様の課題がある。そして、排水口の内部においては、基材と表面材との両方が露出し、目立つため、意匠性に劣る。
【0007】
このように積層構造の洗い場床において、表面材の排水口周りの端部の処理を容易化し、そして美観を向上することが望まれている。
【0008】
さらに、積層構造の洗い場床において、洗い場床に取り付けられる排水トラップの部品である締め付けフランジと、洗い場床の表面材と、が接触し、互いに干渉する構成である場合には、表面材の有無や表面材の厚さなどの仕様によって、対応する締め付けフランジを変える必要がある。つまり、表面材を積層しない基材単層の洗い場床として使用する場合には、基材単層用の排水トラップを用意する必要が生じる。このため、表面材の有無や仕様によって排水トラップを共通化できないという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4174740号公報
【特許文献2】特開2006−63554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の態様は、表面材の有無や仕様にかかわらず排水トラップを共通化でき、排水口周りの表面材の端部の処理を容易化しつつ美観を向上させる浴室用洗い場床を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、基材と、前記基材の浴室表面側に積層された表面材と、を備え、前記基材は、洗い場床部と、前記洗い場床部よりも低い位置に凹状に形成され、排水トラップが取り付けられる開口が形成された排水口部と、を有し、前記表面材の前記排水口部側の端部は、前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記排水口部内の前記排水トラップの構成部品の1つである締付フランジとは干渉しない位置に配置されており、且つ、前記表面材の前記排水口部側の端部と、前記排水トラップの上端縁部と、の間において、前記基材はコーキング剤によって覆われていることを特徴とする浴室用洗い場床が提供される。
【0012】
本発明の別の一態様によれば、基材と、前記基材の浴室表面側に積層された表面材と、を備え、前記基材は、洗い場床部と、前記洗い場床部よりも低い位置に凹状に形成され、排水トラップが取り付けられる開口が形成された排水口部と、を有し、前記表面材の前記排水口部側の端部は、前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記排水トラップの構成部品の1つである締付フランジと干渉しない位置に配置されつつ、前記排水トラップの構成部品の一つである封水筒によって覆い隠されることを特徴とする浴室用洗い場床が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、表面材の有無や仕様にかかわらず排水トラップを共通化でき、排水口周りの表面材の端部の処理を容易化しつつ美観を向上させる浴室用洗い場床が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る浴室用洗い場床の要部を例示する模式的断面図である。
【図2】第1及び第2の実施形態に係る浴室用洗い場床の概要を例示する模式的斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る変形例の浴室用洗い場床を例示する模式的断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、基材と、前記基材の浴室表面側に積層された表面材と、を備え、前記基材は、洗い場床部と、前記洗い場床部よりも低い位置に凹状に形成され、排水トラップが取り付けられる開口が形成された排水口部と、を有し、前記表面材の前記排水口部側の端部は、前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記排水口部内の前記排水トラップの構成部品の1つである締付フランジとは干渉しない位置に配置されており、且つ、前記表面材の前記排水口部側の端部と、前記排水トラップの上端縁部と、の間において、前記基材はコーキング剤によって覆われていることを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、表面材端部が洗い場床部に露出しないため、コーキング処理を容易化できる。そして、表面材と基材との継ぎ目の部分の基材がコーキング剤によって覆われるので、美観が向上する。そして、表面材の排水口部側の端部は、締め付けフランジと干渉しないため、表面材の有無や仕様にかかわらず排水トラップを共有化できる。
【0016】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記表面材は、前記基材の前記洗い場床部及び前記排水口部の形状と沿う形状に形成されており、前記排水トラップを取り付けた状態において、前記基材の前記排水口部における前記端部の全てが、前記排水口部内の前記締付フランジとは干渉しない位置に配置されており、且つ、前記表面材の前記排水口部側の端部と、前記排水トラップの上端縁部と、の間において、前記基材はコーキング剤によって覆われていることを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、排水口部において、表面材と基材の排水口部の形状が合わせられ、基材と表面材とを積層する工程において、表面材の積層位置を位置決めすることが容易になる。
【0017】
また、第3の発明は、基材と、前記基材の浴室表面側に積層された表面材と、を備え、前記基材は、洗い場床部と、前記洗い場床部よりも低い位置に凹状に形成され、排水トラップが取り付けられる開口が形成された排水口部と、を有し、前記表面材の前記排水口部側の端部は、前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記排水トラップの構成部品の1つである締付フランジと干渉しない位置に配置されつつ、前記排水トラップの構成部品の一つである封水筒によって覆い隠されることを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、端部が排水トラップに覆い隠されるので、表面材の端部処理が容易化でき美観を向上させると供に、端部が締付フランジと干渉しないので、表面材の仕様にかかわらず排水トラップを共通化できる。
【0018】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記封水筒の外周縁が、前記締め付けフランジよりも上方に位置する前記排水口部の立ち面と密接するように取り付けられ、前記表面材の前記排水口部の側の端部は、前記封水筒によって覆い隠されることを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、端部は、封水筒によって覆い隠される。
【0019】
また、第5の発明は、第3の発明または第4の発明において、前記表面材は、前記基材の前記洗い場床部及び前記排水口部の形状に沿う形状に形成されており、前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記基材の前記排水口部における前記端部の全てが、前記排水口部内の前記締付フランジとは干渉しない位置に配置されつつ、前記排水トラップの構成部品の一つである封水筒によって覆い隠されることを特徴とする浴室用洗い場床である。
この浴室用洗い場床によれば、排水口部において、表面材と基材の排水口部の形状が合わせられ、基材と表面材とを積層する工程において、表面材の積層位置を位置決めすることが容易になる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1〜図4は、本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示する模式図である。
すなわち、図1は、第1の実施形態に係る浴室用洗い場床の要部を例示する模式的断面図である。図2は、第1及び第2の実施形態に係る浴室用洗い場床の概要を例示する模式的斜視図である。図3は、第1の実施形態に係る変形例の浴室用洗い場床を例示する模式的断面図である。図4は、第2の実施形態に係る浴室用洗い場床を例示する模式的断面図である。
【0021】
(第1の実施の形態)
まず、図2によって、本発明の第1の実施形態の浴室用洗い場床の概要を説明する。
図2に表したように、浴室用洗い場床10は、基材11と表面材12とを備える。
【0022】
基材11は、洗い場床部11fと排水口部11dとを有する。排水口部11dは、洗い場床部11fよりも低い位置に凹状に形成され、底面に排水トラップが取り付けられる開口が形成された部分である。
【0023】
表面材12は、基材11の浴室表面側に積層される。表面材12は、床部12fと垂下部12dとを有する。床部12fは、基材11の洗い場床部11fに積層される部分である。垂下部12dは、床部12fから下方に延在する部分であり、基材11の排水口部11dの内側において基材11に積層される部分である。
【0024】
このように、洗い場床10は、基材11と表面材12との少なくとも2層以上の積層構造を有する。例えば、洗い場床10は、基材11と表面材12との間に設けられたクッション層をさらに有しても良く、2層以上の構成を有していれば良い。
【0025】
基材11は、浴室外に湯水を漏出させない防水性、及び浴室壁パネル、天井パネル、風呂椅子、洗面器などの静荷重、使用者の動荷重を受けても撓んだり破損しない強度を有する硬質材料から形成される。基材11は、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等の熱硬化性樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂に補強を施したものから形成される。
【0026】
表面材12は、耐水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐衝撃性など、洗い場床表面に要求される基本性能(耐久性)を満足する材料から形成されている。表面材12には、例えば、FRP、PVC(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン・ポリエステル・オレフィン・アクリル系の各種エラストマー、EVA、EPDM、シリコンゴムなどのゴム(硬質)系、あるいはこれらを十分な耐久性が期待できる程度の硬さに調整したもの、あるいはこれらをベースに充填材や強化材を加えた複合材料などが用いられる。但し、これらの材料は一例であって、その他、表面材12の材料としては、浴室の一般的な使用に際し十分な耐久性を有するべく強靱な材料であれば良く、前述したものに限られない。なお、表面材12には、例えば親水性や撥油性など、基材11には無い特性を持たせることができる。
【0027】
なお、基材11と表面材12との間にクッション層が設けられる場合には、クッション層には、弾性変形可能であり、例えばウレタン等の発泡体等を用いることができる。
【0028】
以下では、洗い場床10が基材11と表面材12との2層構造である場合として説明する。
【0029】
なお、表面材12は、例えば接着剤によって基材11に貼り合わせられている。
【0030】
図1(a)及び(b)は、浴室用洗い場床10に排水トラップが取り付けられた状態を例示する模式的断面図であり、図1(b)は、図1(a)のB部の拡大図である。図1(c)は、浴室用洗い場床10に排水トラップが取り付けられる前の状態を例示している。
【0031】
図1(a)〜(c)に表したように、表面材12の排水口部11dの側の端部12bは、排水口部11dに取り付けられる排水トラップ16が排水口部11dに取り付けられた状態において、排水トラップ16の構成部品の1つである締付フランジ16bと干渉しない位置であって、排水トラップ16の上端縁部16uと離間した上端縁部16uの直上の位置に配置される。
【0032】
すなわち、例えば、図1(b)に例示したように、排水口部11dの下端11hが、環状のシールリング16cに挟み込まれ、下端11hは、その状態で、排水トラップ16の締付フランジ16bによって締め付けられる。そして、締付フランジ16bの上から、排水トラップ16の封水筒16aが挿入される。
【0033】
そして、排水トラップ16の上端縁部16uの上方であって、上端縁部16uと離間しつつ、上端縁部16uの直上の位置に、表面材12の排水口部11dの側の端部12bが配置される。
【0034】
すなわち、表面材12の端部12bは、排水トラップ16の上端縁部16uと干渉しない程度の近傍位置に配置される。
【0035】
表面材12の端部12bが、排水トラップ16の近傍に配置されることで、端部12bは目立たない。これにより、端部12bの位置精度などのばらつきの許容が広がり、表面材12の端部12bの端部処理が容易化できる。例えば、端部処理が粗くても良く、または、場合によっては端部の処理を省略できる。
また、この構成により、端部12bが目立たないことから、美観が向上できる。
【0036】
そして、表面材12の端部12bが、排水トラップ16の上端縁部16uと干渉せず、端部12bと上端縁部16uとの間に間隔があけられるので、例えば、浴室洗い場床として、基材11に表面材12が積層されない単層床を用いた場合と、基材11に表面材12が積層される積層床を用いた場合と、で、上端縁部16uと端部12bとの間の距離が変化しても排水トラップ16は正しい設計位置に設置できる。すなわち、この構成により、表面材の仕様にかかわらず排水トラップを共通化できる。
【0037】
さらに、本具体例においては、表面材12の排水口部11dの側の端部12bと、排水トラップ16の上端縁部16uと、間の基材11を覆うようにコーキング剤17が設けられる。
【0038】
これにより、表面材端部が洗い場床部に露出しないため、コーキング処理を容易化できる。そして、表面材12と基材11との継ぎ目の部分の基材11がコーキング剤17によって覆われるので、美観が向上する。そして、表面材12の排水口部11d側の端部12bは、締め付けフランジ16bと干渉しないため、表面材の有無や仕様にかかわらず排水トラップ16を共有化できる。
【0039】
さらに、基材11がコーキング剤によって覆われ、露出しないので、基材11をコストダウンすることもできる。
例えば、表面材12の端部12bと排水トラップ16の上端縁部16uとの間の幅が広く、基材11が露出している場合には、その部分において、表面材12の下の基材11が使用者に目立って見える。このため、目的とする色や光沢などの外観特性を基材11に持たせて意匠性を高めるために、基材11となる材料に顔料が混合され、また、基材11に各種の表面処理等が施されることがある。このとき、本実施形態に係る構成を採用し、さらに、コーキング剤17を塗布することによって、例えば上記の顔料の混合や各種の表面処理が省略でき、基材11をコストダウンすることもできる。
【0040】
なお、表面材12の端部12bが上端縁部16uの近傍位置に配置されるので、端部12bと上端縁部16uとの間の間隔は狭く、表面材12に覆われていない基材11の幅は狭く、継ぎ目の部分は目立たない。この部分にコーキング剤17を塗布するので、基材11はさらに目立たない。また、このコーキング剤17を塗布する幅が狭いので、コーキング剤17を塗布する工程における作業性も優れる。
【0041】
また、本具体例においては、表面材12は、基材11の洗い場床部11f及び排水口部11dの形状と沿う形状に形成されており、浴室用洗い場床10に排水トラップ16を取り付けた状態において、基材11の排水口部11dにおける端部12bの全てが、締付フランジ16bと干渉しない位置であって、排水トラップ16の上端縁部16uと離間した、上端縁部16uの直上の位置に配置される。
【0042】
このような構成にすることで、排水口部11dにおいて、表面材12と基材11の排水口部の形状が合わせられ、例えば、基材11と表面材12とを積層する工程において、表面材12の積層位置を位置決めすることが容易になる。
【0043】
なお、図1に例示したように、本具体例においては、基材11の浴槽の側には、洗い場床部11fから上方に突出した土手部13が設けられている。土手部13は、洗い場側と浴槽側とを区切る。
【0044】
そして、表面材12は、浴槽の側の端において床部12fから上方に立ち上がった、立ち上がり部12sを有している。この立ち上がり部12sは、表面材12と基材11とが積層されたときに、基材11の土手部13に沿うように形成されている。これにより、基材11と表面材12とを積層する工程において、表面材12の基材11に対する位置決め精度をさらに向上させることができる。
【0045】
図3に表したように、実施形態に係る別の変形例の浴室用洗い場床10aにおいては、基材11の排水口部11dは、漏斗状の形状を有している。この浴室用洗い場床10aにおいては、漏斗状の排水トラップ16が用いられる。
【0046】
すなわち、排水トラップ16の封水筒16aの上部は、上方に拡開した漏斗状の形状を有している。そして、排水トラップ16の締付フランジ16bは、封水筒16aの上端よりも下方に配置されている。
【0047】
そして、基材11の排水口部11dは、この漏斗状の封水筒16aの下側に延在する。この封水筒16aの下側の排水口部11dの部分の上に、表面材12が積層されている。そして、表面材12において、床部12fから下方に延在する垂下部12dの端部12bは、締付フランジ16bと干渉しない位置であって、排水トラップ16の上端縁部16uと離間した、上端縁部16uの直上の位置に配置される。
【0048】
この場合も、表面材12の端部12bが目立たないので、表面材12の端部12bの端部処理が容易化できる。また、例えば、基材11に表面材12が積層されない単層床と、基材11に表面材12が積層される積層床と、で、排水トラップを共通化できる。
【0049】
この場合も、表面材12の排水口部11dの側の端部12bと、排水トラップ16の上端縁部16uと、の間の基材11がコーキング剤17によって覆われる。このようにコーキング剤17が塗布されることにより、表面材12と基材11との継ぎ目の部分の基材11が露出しないので意匠性に優れる。さらに、表面材12から露出する基材11の幅が狭いため、基材11をコストダウンすることもできる。また、表面材12から露出した基材11の幅は狭く、コーキング剤17を塗布する工程における作業性も優れる。
【0050】
なお、上記の浴室用洗い場床10及び10aにおいては、排水トラップ16が取り付けられる取付部11mが設けられる。取付部11mは、排水トラップ16が取り付けられる位置に対応して設けられた各種の凹凸や湾曲を有する。この部分において、排水トラップ16が浴室用洗い場床に取り付けられる。すなわち、浴室用洗い場床10に排水トラップ16を取り付けた状態において、排水トラップ16の構成部品の1つである締付フランジ16bの上端縁部16uは、この取付部11mと実質的に一致する位置に配置される。従って、基材11の排水口部11dにおける端部12bは、取付部11mと離間した、取付部11mの直上の位置に配置される。
【0051】
これにより、表面材の仕様にかかわらず排水トラップを共通化でき、排水口周りの表面材の端部の処理を容易化しつつ美観を向上させる浴室用洗い場床を提供できる。
【0052】
(第2の実施の形態)
図4に表したように、第2の実施形態に係る浴室用洗い場床10bにおいても、基材11の排水口部11dは、漏斗状の形状を有している。この浴室用洗い場床10aにおいても、漏斗状の排水トラップ16が用いられる。
【0053】
具体的には、排水トラップ16の封水筒16aの上部が、上方に拡開した漏斗状の形状を有しており、排水トラップ16の締付フランジ16bは、封水筒16aの上端よりも下方に配置されている。
【0054】
そして、基材11の排水口部11dは、この漏斗状の封水筒16aの下側に延在する。この封水筒16aの下の排水口部11dの部分の上に、表面材12が積層されている。
【0055】
そして、表面材12の排水口部11d側の端部12bは、排水トラップ16が取り付けられた状態において、排水トラップ16の構成部品の1つである締付フランジ16bと干渉しない位置に配置されつつ、排水トラップ16の構成部品の一つである封水筒16aによって覆い隠される。
【0056】
具体的には、端部12bは、締め付けフランジ16bの縁部よりも上方の位置であって、封水筒16aの縁部よりも下方の位置に配置される。これにより、端部12bは、封水筒16aによって覆われる。
【0057】
すなわち、排水トラップ16が取り付けられた状態において、排水トラップ16の構成部品の1つである封水筒16aの外周縁が、締め付けフランジ16bよりも上方に位置する排水口部11dの立ち面と密接するように取り付けられ、表面材12の排水口部11dの側の端部12bは、封水筒16aによって覆い隠される。
【0058】
表面材12の端部12bが、排水トラップ16の封水筒16bに覆い隠されるので、表面材12の端部12bの端部処理が容易化できる。例えば、端部処理が粗くても良く、または、場合によっては端部の処理を省略できる。
【0059】
そして、表面材12の端部12bが、排水トラップ16の上端縁部16uと干渉せず、端部12bと上端縁部16uとの間に間隔があけられるので、排水トラップを共通化できる。例えば、浴室洗い場床として、基材11に表面材12が積層されない単層床を用いた場合と、基材11に表面材12が積層される積層床を用いた場合と、で、排水トラップを共通化できる。
【0060】
さらに、表面材12から基材11が露出しないので、基材11となる材料への顔料の混合や各種の表面処理が省略でき、基材11をコストダウンすることもできる。
【0061】
このように本実施形態に係る浴室用洗い場床10bによれば、排水口周りの表面材の端部の処理を容易化しつつ美観を向上させた浴室用洗い場床が提供できる。
【0062】
そして、この場合も、表面材12は、基材11の洗い場床部11f及び排水口部11dの形状に沿う形状に形成されており、排水トラップ16が取り付けられた状態において、基材11の排水口部11dにおける端部12bの全てが、締付フランジ16bとは干渉しない排水口部11d内に位置に配置されつつ、排水トラップ16の構成部品である封水筒16aによって覆い隠される。
【0063】
このような構成にすることで、排水口部11dにおいて、表面材12と基材11の排水口部の形状が合わせられ、例えば、基材11と表面材12との積層工程において、表面材12の積層位置を位置決めすることが容易になる。
【0064】
なお、この場合も、図1に例示した浴室用洗い場床10と同様に、基材11の浴槽の側に、洗い場床部11fから上方に突出した土手部13を設け、そして、表面材12に、浴槽の側の端において床部12fから上方に立ち上がった、立ち上がり部12sを設けることができる。この立ち上がり部12sは、表面材12と基材11とが積層されたときに、基材11の土手部13に沿うように形成され、これにより、基材11と表面材12とを積層する工程において、表面材12の基材11に対する位置決め精度をさらに向上させることができる。
【0065】
なお、図3に例示したように、上記の浴室用洗い場床10bにおいても、排水トラップ16が取り付けられる取付部11mが設けられる。取付部11mは、排水トラップ16が取り付けられる位置に対応して設けられた各種の凹凸や湾曲などを有する。この部分において、排水トラップ16が浴室用洗い場床に取り付けられる。従って、表面材12の排水口部11dの側の端部12bは、この取付部11mよりも下方に配置することができる。これにより、端部12bは、排水トラップ16(具体的には封水筒16a)によって覆い隠される。この構成により、表面材の仕様にかかわらず排水トラップを共通化でき、排水口周りの表面材の端部の処理を容易化しつつ美観を向上させる浴室用洗い場床を提供できる。
【0066】
なお、上記の浴室用洗い場床10、10a及び10bにおいて、例えば、基材11と表面材12とを個別に成型した場合は、表面材12と基材11とを積層したときに、これらにずれが生じる可能性がある。このときには、そのずれを吸収するために、例えば、基材11の排水口部11dの全体にコーキング剤を塗布しておき、その状態で上から表面材12を積層する。寸法にずれがある場合は、隙間は接着剤で満たされることとなる。
【0067】
なお、排水口部11dに位置する表面材12の垂下部12dは、他の部分(例えば床部12fなど)よりも薄肉とされ、ある程度の可撓性を有することがさらに好ましい。このようにすることで、排水口部11dにおいて、基材11と表面材12とで形状誤差があった場合においても、多少の形状誤差であれば適応可能となり、実用的には問題がなくなる。
【0068】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、浴室用洗い場床を構成する、基材及び表面材などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0069】
その他、本発明の実施の形態として上述した浴室用洗い場床を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての浴室用洗い場床も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0070】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0071】
10、10a、10b…洗い場床(浴室用洗い場床)、 11…基材、 11d…排水口部、 11f…洗い場床部、 11h…下端、 11m…取付部、 12…表面材、 12b…端部、 12d…垂下部、 12f…床部、 12s…立ち上がり部、 13…土手部、 16…排水トラップ、 15…排水口、 16…排水トラップ、 16a…封水筒、 16b…締付フランジ、 16c…シールリング、 16u…上端縁部、
17…コーキング剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の浴室表面側に積層された表面材と、
を備え、
前記基材は、洗い場床部と、前記洗い場床部よりも低い位置に凹状に形成され、排水トラップが取り付けられる開口が形成された排水口部と、を有し、
前記表面材の前記排水口部側の端部は、前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記排水口部内の前記排水トラップの構成部品の1つである締付フランジとは干渉しない位置に配置されており、
且つ、前記表面材の前記排水口部側の端部と、前記排水トラップの上端縁部と、の間において、前記基材はコーキング剤によって覆われていることを特徴とする浴室用洗い場床。
【請求項2】
前記表面材は、前記基材の前記洗い場床部及び前記排水口部の形状と沿う形状に形成されており、前記排水トラップを取り付けた状態において、前記基材の前記排水口部における前記端部の全てが、前記排水口部内の前記締付フランジとは干渉しない位置に配置されており、
且つ、前記表面材の前記排水口部側の端部と、前記排水トラップの上端縁部と、の間において、前記基材はコーキング剤によって覆われていることを特徴とする請求項1記載の浴室用洗い場床。
【請求項3】
基材と、
前記基材の浴室表面側に積層された表面材と、
を備え、
前記基材は、洗い場床部と、前記洗い場床部よりも低い位置に凹状に形成され、排水トラップが取り付けられる開口が形成された排水口部と、を有し、
前記表面材の前記排水口部側の端部は、前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記排水トラップの構成部品の1つである締付フランジと干渉しない位置に配置されつつ、前記排水トラップの構成部品の一つである封水筒によって覆い隠されることを特徴とする浴室用洗い場床。
【請求項4】
前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記封水筒の外周縁が、前記締め付けフランジよりも上方に位置する前記排水口部の立ち面と密接するように取り付けられ、
前記表面材の前記排水口部の側の端部は、前記封水筒によって覆い隠されることを特徴とする請求項3記載の浴室用洗い場床。
【請求項5】
前記表面材は、前記基材の前記洗い場床部及び前記排水口部の形状に沿う形状に形成されており、前記排水トラップが取り付けられた状態において、前記基材の前記排水口部における前記端部の全てが、前記排水口部内の前記締付フランジとは干渉しない位置に配置されつつ、前記排水トラップの構成部品の一つである封水筒によって覆い隠されることを特徴とする請求項3または4に記載の浴室用洗い場床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−229790(P2010−229790A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81445(P2009−81445)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】