説明

浴槽用の目地材

【課題】 目地材の上部が逆勾配になることを防止し、目地材の上部に水が溜まることを防止できる、浴槽用の目地材を提供する。
【解決手段】 浴槽6の端縁61と浴室壁面7との間の隙間に圧入される目地材1であって、前記隙間上方を覆う弾性体よりなる覆い片部2と、この覆い片部2から垂設する脚片部3と、この脚片部3の中間に、浴槽6側に突設して浴槽6端縁61に圧接する弾性体よりなるヒレ片4とを有した目地材1において、脚片部3の上方に浴槽6の端縁61コーナー部に当接する軟質材よりなる断面アール状突起5を突設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、浴槽用の目地材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室内に浴槽を設置する場合には、浴槽の端縁(周縁)を浴室壁面に沿わせて設置するのが通常であり、浴槽の端縁と浴室壁面との間にできる目地(隙間)には壁面に沿って水を目地に浸入させないように止水処理が施されるものである。この止水処理は上記目地を埋めるように目地材を設置することで行われるものであり、この目地材としてはシリコン等の流動性材料からなる湿式の目地材や弾性体からなる乾式の目地材を用いることが考えられるが、一般的には上記湿式の目地材を用いて止水処理が施されていた。しかし、この湿式の目地材を用いての止水処理は、湿式の目地材を外観を損ねずに、かつ、完全に目地内に充填させるのに、手間と熟練を要し、さらに目地内への充填後には乾燥させなければならず、施工性が悪いという問題を有していた。
【0003】
かかる問題を解決するため、たとえば、浴槽の端縁と浴室壁面との目地に止水処理を施すのに、湿式の目地材に比べて外観や施工性も良好な乾式の目地材を用いての浴槽の端縁と浴室壁面との目地構造が提案されている(特許文献1)。図4に沿って、この目地構造を説明すると、浴槽6の端縁61と浴室壁面7との間の隙間上方を覆うための覆い片部2と、この覆い片部2から垂設した脚片部3と、この脚片部3に突設したヒレ片4とを有する乾式の目地材1を、その脚片部3を浴槽6の端縁61と浴室壁面7との隙間に上から押圧して圧入し、ヒレ片4を浴槽6の端縁61に圧接させることで、覆い片部2を浴槽6上面および浴室壁面7と圧接させ、隙間内への水Wの浸入を防止する止水処理を施している。
【特許文献1】特開2003-190036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1および図4に例示した目地構造は、目地材1を圧入する際、過剰な押圧を加えた場合、目地材1の脚片部3が奥に入り過ぎて、目地材1の覆い片部2の上面が逆勾配(浴室壁面7に向かって下がった勾配)になり、目地材1の上部(つまり、覆い片部2の上部)に水Wが溜まるという問題があった。
【0005】
本願発明は、上記従来の問題点を解消するためになされたものであり、目地材の上部が逆勾配になることを防止し、目地材の上部に水が溜まることを防止できる、新しい浴槽用の目地材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、上記の課題を解決するものとして、浴槽の端縁と浴室壁面との間の隙間に圧入される目地材であって、前記隙間上方を覆う弾性体よりなる覆い片部と、この覆い片部から垂設する脚片部と、この脚片部の中間に、浴槽側に突設して浴槽の端縁に圧接する弾性体よりなるヒレ片とを有した目地材において、脚片部の上方に、浴槽の端縁コーナー部に当接する軟質材よりなる断面アール状突起を突設してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、目地材の上部が逆勾配になることを防止し、目地材の上部に水が溜まることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、添付した図面に沿って、本願発明の実施形態について詳細かつ具体的に説明する。
【0009】
図1は、本願発明の浴槽用の目地材の一実施形態を例示した側断面図である。図2は、本願発明の浴槽用の目地材を例示した斜視図である。
【0010】
図1および図2に例示したとおり、本願発明の浴槽用の目地材1は、乾式の目地材1であり、浴槽6の端縁61と浴室壁面7との間の隙間(目地)を塞いで、効果的に止水処理を施すことができるものである。
【0011】
本願発明の目地材1は、前記隙間上方を覆うゴム材やシリコン材等の弾性体よりなる覆い片部2と、この覆い片部2から垂設し、かつ、樹脂材等の硬質材からなる脚片部3と、この脚片部3の中間に、浴槽6側に突設して浴槽6の端縁61に圧接するゴム材やシリコン材等の弾性体よりなるヒレ片4とを有した目地材1である。そして、この目地材1の脚片部3の上方には、浴槽6の端縁61コーナー部近傍に当接する軟質材よりなる断面アール状突起5(もしくは、断面略半円状突起)を突設している。
【0012】
本願発明の目地材1の構成をさらに説明すると、本願発明の目地材1は、浴室壁面7に沿う直線状の長手部材であって、略水平な板状の覆い片部2の下面から脚片部3を略垂直方向に垂下して縦断面が略T字状に形成されたものである。つまり、本願発明の目地材1は、浴槽6の浴槽壁面7に沿う長手方向の全長に亘って形成することができる。
【0013】
ここで、覆い片部2は、浴槽6の端縁61と浴室壁面7との隙間(目地)上方(上方開口)を塞いで覆う部位であって、たとえばゴム材やシリコン材等の弾性体で形成されている。また、脚片部3は、浴槽6の端縁61と浴室壁面7との隙間内に圧入される部位であって、プラスチック等をはじめとする樹脂材等の硬質材で形成されていることが好ましい。
【0014】
この脚片部3は、覆い片部2の壁面側端部22の近傍位置における下面から下方に延出され、覆い片部2の壁面側端部22は脚片部3よりも浴室壁面7側に突出されて形成されているとともに、覆い片部2の浴槽側端部21は、浴槽6側に突出されている。また、覆い片部2の下面に垂設した脚片部3の基部には、浴槽6側に突出して浴槽6の端縁61(具体的には、端縁61におけるコーナー部上方近傍)に当接する当接部11を形成しており、当接部11は脚片部3と一体に硬質材で形成されている。そして、脚片部3の中間には、長手方向に亘るヒレ片4が上下方向に略等間隔に複数本浴槽6側に突設されている。さらに、このヒレ片4を突設した部分の脚片部3には、浴室壁面7に対する緩衝用として浴室壁面7側に突出した緩衝突起部41を設けている。
【0015】
そして、脚片部3の上方の浴槽6側には、浴槽6の長手方向の全長に亘る断面アール状突起5(もしくは、断面略半円状突起)が、最上部のヒレ片4よりも上部にて突設されている。
【0016】
これらヒレ片4および緩衝突起部41は、ゴム材やシリコン材等の弾性体で形成されるとともに、脚片部3を隙間内に圧入したときには浴槽6の端縁61および浴室壁面7に圧接し、隙間内に圧入した脚片部3を抜けにくくするように上方に向いた傾斜を有して形成されている。このヒレ片4の形状についてさらに説明すると、ヒレ片4は緩衝突起部41に比べてその突出量を大きくするとともに、突出先端に行くほど薄い肉厚になるように形成されている。そして、断面アール状突起5(もしくは、断面略半円状突起)についても、軟質材から形成されることが好ましく、この断面アール状突起5(もしくは、断面略半円状突起)が、浴槽6の端縁61コーナー部に当接して、脚片部3、ひいては目地材1の隙間内への過剰な圧入を防止することができる。
【0017】
通常、浴室に設置される浴槽6は浴室壁面7に沿わせて設置されている。このように設置された浴槽6において、浴槽6の端縁61と浴室壁面7との間には隙間が形成されてしまうものであるが、この浴槽6の端縁61と浴室壁面7とにある隙間に、上記のとおりの特徴を有する本願発明の目地材1を圧入して嵌合配置させることで、隙間を塞いで隙間内への浸水を防止する止水処理を施すことができる。つまり、弾性体よりなる覆い片部2から垂設する脚片部3を隙間に圧入し、そして、覆い片部2で隙間上方を覆って塞いでいる。さらに、このとき、当接部11が浴槽6の端縁61のコーナー部上方近傍に当接するとともに、脚片部3のヒレ片4よりも上方において突設している軟質材からなる断面アール状突起5(もしくは、断面略半円状突起)が、当接部11の当接箇所より下方における浴槽6の端縁61コーナー部近傍に当接することで、目地材1の脚片部3が奥に入り過ぎることを防止している。
【0018】
このように、本願発明の目地材1を圧入する際に、過剰な押圧を加えた場合、従来では目地材1を奥に圧入し過ぎて、目地材1の覆い片部2の上部が逆勾配(浴槽壁面7に向かって下がった勾配)になるが、断面アール状突起5(もしくは、断面略半円状突起)によって、これを防止することができ、目地材1の上部(つまり、覆い片部2の上面)が逆勾配になることを防止し、目地材1の上部に水が溜まることを防止することができる。
【0019】
なお、図1および図2では、目地材1は、浴槽6の長手方向に沿って形成された直線式目地材1aを例示した。
【0020】
図3は、本願発明の浴槽用の目地材の別の形状を例示した図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【0021】
また、図3(A)(B)に例示したように、本願発明の目地材1は、屈曲式目地材1bとしてもよい。基本的には、図1および図2に例示した直線式目地材1aと同じ構造であって、角隅形状のコーナー部分の浴槽6の端縁61や、角隅形状のコーナー部分の浴室壁面7に沿わせ得るように、覆い片部2および脚片部3を屈曲させて形成したものである。
【0022】
この屈曲式目地材1bの覆い片部2にあっては、その浴槽側端部21と壁面側端部22との間の寸法(以下、幅寸法)が、直線式目地材1aの覆い片部2の幅寸法に比べて幅広に形成されているとともに、その長手方向の全長が脚片部3の長手方向の全長に比べて長く形成されている。つまり、覆い片部2の長手方向の両端部が、脚片部3の長手方向の両端部よりも長手方向の外側に位置している。また、屈曲式目地材1bの覆い片部2の壁面側端部22には長手方向に亘って、覆い片部2の上面から外方に延出させたヒダ片23が形成されている。そして、このヒダ片23は、覆い片部2および脚片部3が屈曲する屈曲式目地材1bのコーナー部分でその延出量が大きくなるように形成されている。
【0023】
以上のように、本願発明の目地材1は、直線状の浴槽6の端縁61と直線状の浴室壁面7との間の隙間に配置できる直線式目地材1aとしてもよいし、角隅形状のコーナー部分の浴槽6の端縁61と、角隅形状のコーナー部分の浴室壁面7との隙間に配置できる屈曲式目地材1bとしてもよい。したがって、隙間の形状(目地形状)に合わせて本願発明の目地材1を、適宜に直線式目地材1aや屈曲式目地材1bを配置させることができ、浴室壁面7に沿う浴槽6の端縁61全長にわたって、浴槽6の端縁61と浴室壁面7との間の隙間を塞ぐことができる。そして、断面アール状突起5(もしくは、断面略半円状突起)によって、目地材1の脚片部3が奥に入り過ぎるのを阻止することができるため、目地材1の覆い片部2上部が逆勾配(つまり、覆い片部2の浴槽側端部21よりも壁面側端部22が下降して、浴室壁面7に向かった下り勾配)になることを防止することができ、目地材1の上部に水が溜まることを防止することができる。つまり、目地材1の上部は浴槽6側に向かって下がった勾配を形成し、水は浴槽6側へと流れるのである。
【0024】
もちろん、本願発明の目地材1は、以上の例示によって限定されるものではない。たとえば、覆い片部2やヒレ片4等の材質としては、特に制限されるものではないが、たとえば、プラスチック材等の樹脂材、ゴム材やシリコン材等を例示することができる。また、断面アール状突起5(もしくは、断面略半円状突起)の軟質材についても、ゴム材やシリコン材等、各種の材質を例示することができ、特に制限されるものではない。
【0025】
また、本願発明の目地材1の形状についても様々な態様とすることも可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の浴槽用の目地材の一実施形態を例示した側断面図である。
【図2】本願発明の浴槽用の目地材を例示した斜視図である。
【図3】本願発明の浴槽用の目地材の別の形状を例示した図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図4】従来の目地材を用いた目地構造を例示した側断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 目地材
1a 直線式目地材
1b 屈曲式目地材
11 当接部
2 覆い片部
21 浴槽側端部
22 壁面側端部
23 ヒダ片
3 脚片部
4 ヒレ片
41 緩衝突起部
5 凸部
6 浴槽
61 端縁
7 浴室壁面
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の端縁と浴室壁面との間の隙間に圧入される目地材であって、前記隙間上方を覆う弾性体よりなる覆い片部と、この覆い片部から垂設する脚片部と、この脚片部の中間に、浴槽側に突設して浴槽の端縁に圧接する弾性体よりなるヒレ片とを有した目地材において、脚片部の上方に、浴槽の端縁コーナー部に当接する軟質材よりなる断面アール状突起を突設してなることを特徴とする浴槽用の目地材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−87773(P2006−87773A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278946(P2004−278946)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】