説明

海上輸送用コンテナ及びその製造方法並びにそれに使用する被覆材料

【課題】大気中などの水分により硬化して諸物性に優れたゴム状弾性体となる、海上輸送用コンテナの内装用途に使用可能な、溶剤臭、刺激臭の無い、硬化速度の速い被覆材料、並びにこれを用いた海上輸送用コンテナ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】架橋性シリル基含有樹脂を含有する海上輸送コンテナ用被覆材料である。また、扉を一方又は双方に有する2枚の金属端壁と2枚の金属側壁と金属天壁と金属底壁とを箱状に接合し、塗装した収納本体に、コンテナ船への固定具と、コンテナ同士を固定する係止具と、クレーンフック係合具が固設されてなる海上輸送用コンテナにおいて、前記の塗装収納本体の接合部内側表面に、更に前記海上輸送コンテナ用被覆材料を塗装し、硬化させてなる海上輸送用コンテナ、及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上輸送用(貨物)コンテナ内においてその製造に好適に使用される、有機溶剤を含まずかつ低臭気、速硬化性で低コストの海上輸送コンテナ用被覆材料並びに海上輸送用コンテナ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ輸送は現在、貨物輸送の世界において重要な地位を担うまでになっている。海上輸送用(貨物)コンテナは、主な用途が船舶による国際間の海上輸送であるが、国内の陸上輸送、海上輸送にも多く利用されており、保管用としても使用されている。特に海上貨物のコンテナ輸送の割合は高く、一度に大量の貨物をドア・ツー・ドアで輸送できる点で効率のよい輸送手段であるといえる(例えば特許文献1参照。)。
また、海上輸送用コンテナは一旦使用され始めると長時間使い続けることが多く、さらに海上輸送、港湾等での保管という過酷な環境条件で使用されるため、要求される性能も高いものであることが多い。一般的に金属材料で構成されている海上輸送用コンテナにとって、海上輸送、港湾等での保管中に水分、塩分、湿分、高温等にさらされて腐食が進行し、強度が低下したり、防水性能が低下して積荷に悪影響を与えたりすることが危惧されるため、特に防錆防食に対する要求性能が高くなっている。このために、防食塗料が使用され、特に重防食塗料が多く用いられ、海上輸送用コンテナの過酷な環境条件での長期使用を可能としている。
このような海上輸送用コンテナで運ばれる貨物には、例えば、野菜や穀物類などの食料をはじめとして、衣料品、家電製品、自動車、機械、液体物品、鋼材など多種多様なものがある。しかしながら、従来使用の海上輸送用コンテナは、コンテナ内装に用いる塗装材や被覆材が有機溶剤や刺激物質を発散するものであり、その溶剤臭や刺激臭が問題となっている。特に野菜や穀物類などの食料品が貨物である場合は、発生する有機溶剤や刺激物質が貨物に付着したり吸収されたりして、貨物の品質の劣化を生じたり、人に対する有害性の点で問題となっている。また、新規に海上輸送用コンテナを製造する際にも、塗装材や被覆材の乾燥、硬化に長時間が必要であり、更には前記臭いや刺激臭が消えるまでに長時間を要し、運用効率の低下等の問題が生じている。
【特許文献1】特開平11−222289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記従来公知技術の問題点を解決して、大気中などの水分により硬化して諸物性に優れたゴム状弾性体となる、海上輸送用コンテナの内装用途に使用可能な、溶剤臭、刺激臭の無い、硬化速度の速い被覆材料、並びにこれを用いた海上輸送用コンテナ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため、本発明は次の(1)〜(8)である。
(1) 架橋性シリル基含有樹脂を含有すること、を特徴とする海上輸送コンテナ用被覆材料。
(2) 前記架橋性シリル基含有樹脂が、複合金属シアン化錯体触媒を使用して得られる数平均分子量(Mn)6,000以上、分子量分布(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量の比=Mw/Mn)1.6以下、総不飽和度0.07meq/g以下のポリオキシアルキレンポリオールと、該ポリオキシアルキレンポリオールに反応性を有する有機基と少なくとも1つの架橋性シリル基を有する化合物との反応生成物である、前記(1)の海上輸送コンテナ用被覆材料。
(3) 前記架橋性シリル基含有樹脂が、有機溶剤を含まずかつ低臭気、速硬化性の架橋性シリル基含有樹脂である、前記(1)又は(2)の海上輸送コンテナ用被覆材料。
(4) 更に添加剤を含有する、前記(1)〜(3)のいずれかの海上輸送コンテナ用被覆材料。
(5) 架橋性シリル基含有樹脂100重量部、硬化触媒0〜2.0重量部、可塑剤50〜200重量部及び揺変性付与剤50〜450重量部の割合で含有すること、を特徴とする海上輸送コンテナ用被覆材料。
(6) 前記添加剤が、充填材、耐候安定剤、接着性付与剤、保存安定性改良剤(脱水剤)及び着色剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、前記(5)の海上輸送コンテナ用被覆材料。
(7) 扉を一方又は双方に有する2枚の金属端壁と2枚の金属側壁と金属天壁と金属底壁とを箱状に接合して収納本体を製造し、次いで該収納本体に、コンテナ船への固定具とコンテナ同士を固定する係止具とクレーンフック係合具とを固設し、更にこれら全体の内外を全面的に塗装する海上輸送用コンテナの製造方法において、前記の塗装収納本体の接合部内側表面に、更に前記(1)〜(6)のいずれかの海上輸送コンテナ用被覆材料を塗装し、硬化させること、を特徴とする海上輸送用コンテナの製造方法。
(8) 扉を一方又は双方に有する2枚の金属端壁と2枚の金属側壁と金属天壁と金属底壁とを箱状に接合し、塗装した収納本体に、コンテナ船への固定具と、コンテナ同士を固定する係止具と、クレーンフック係合具が固設されてなる海上輸送用コンテナにおいて、前記の塗装収納本体の接合部内側表面に、更に前記(1)〜(6)のいずれかの海上輸送コンテナ用被覆材料を塗装し、硬化させてなること、を特徴とする海上輸送用コンテナ。
【発明の効果】
【0005】
本発明により初めて、大気中などの水分により硬化して諸物性に優れたゴム状弾性体となる、海上輸送用コンテナの内装用途に使用可能な、溶剤臭、刺激臭の無い、硬化速度の速い被覆材料、並びにこれを用いた海上輸送用コンテナ及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明における架橋性シリル基含有樹脂としては、一般にシリコーン樹脂と変成シリコーン樹脂と呼ばれているものを好適に挙げることができ、湿気(水)と反応してシロキサン結合を形成することにより架橋してゴム状硬化物を形成する、分子内に架橋性シリル基を含有する樹脂である。本発明においては、変成シリコーン樹脂が好ましい。この架橋性シリル基含有樹脂としては、有機溶剤を含まずかつ低臭気、速硬化性の架橋性シリル基含有樹脂が更に好ましい。
【0007】
シリコーン樹脂は主鎖がオルガノポリシロキサンであり、分子内に架橋性シリル基を含有する樹脂である。
具体的には、主成分として末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサンと架橋成分として架橋性シリル基含有低分子化合物とを含有する一液型シリコーン樹脂と、主剤として末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサンと硬化剤としてアミノキシアルキルシランとを含有する二液型シリコーン樹脂が代表例として挙げられる。架橋性シリル基含有低分子化合物としては、アシルオキシアルキルシラン、アミノキシアルキルシラン、アルコキシアルキルシランなどが挙げられる。
【0008】
変成シリコーン樹脂としては、例えば、特開昭52−73998号公報、特開昭55−9669号公報、特開昭59−122541号公報、特開昭60−6747号公報、特開昭61−233043号公報、特開昭63−6003、特開昭63−112642号公報、特開平3−79627号公報、特開平4−283259号公報、特開平5−287186号公報、特開平11−80571号公報、特開平11−116763号公報、特開平11−130931号公報中に開示されているもの、具体的には、分子内に架橋性シリル基を含有する、主鎖がビニル系重合体、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタンジエンなどの脂肪族炭水化水素系重合体、ポリエステル系重合体、ポリサルファイド重合体、これらの共重合体、混合物などが挙げられる。
変成シリコーン樹脂の主鎖は、硬化後の引張接着性などの物性の点から、ポリオキシアルキレン系重合体が好ましい。また、架橋性シリル基は、被覆材料の硬化性や硬化後の物性などの点で、分子内に1.0個以上、特に1.0〜5.0個含まれるのが好ましい。
更に、架橋性シリル基は、架橋しやすく製造しやすい次の一般式で示されるものが好ましい。
【0009】
【化1】

(式中、Rは炭化水素基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Xで示される反応性基はハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基より選ばれる加水分解性の基であり、Xが複数の場合には、Xは同じ基であっても異なった基であってもよい。このうちXはアルコキシ基が好ましく、メトキシ基が最も好ましい。aは0、1又は2の整数であり、0が最も好ましい。)
【0010】
架橋性シリル基の主鎖への導入は、例えば、以下の公知の方法で行うことができる。
(1)末端に水酸基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系やビニル系などの重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物(例えばアリルイソシアネート)を反応させ、次いで、得られる反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
(2)末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系やビニル系などの重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基及び架橋性シリル基を有する化合物を反応させる。
この反応性官能基及び架橋性シリル基を有する化合物としては、アミノ基含有シラン類、メルカプト基含有シラン類、エポキシ基含有シラン類、ビニル型不飽和基含有シラン類、塩素原子含有シラン類、イソシアネート基含有シラン類、ハイドロシラン類などが挙げられる。
(3)重合性不飽和結合と架橋性シリル基を有する化合物(例えば、CH=CHSi(OCH33 やCH=CHCOO(CHSi(OCH33)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とを共重合させる。
(4)重合性不飽和結合と官能基を有する化合物(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートあるいは(メタ)アクリル酸アリルなど)を(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に添加して共重合させ、次いで生成する共重合体を前記の反応性官能基及び架橋性シリル基を有する化合物(例えば、イソシアネート基と−Si(OCH33基を有する化合物や、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどの加水分解性基を有するヒドロシラン類)と反応させる。
【0011】
本発明において、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂の数平均分子量は6,000以上、特に10,000〜30,000、及び数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mn/Mw)で1.6以下の分子量分布の狭いものが、被覆材料の粘度が低いため作業性が良く、硬化後の強度などの物性が優れているので好適である。
【0012】
本発明において架橋性シリル基含有樹脂として好ましい架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系樹脂は、具体的には、ポリオキシアルキレンポリオールと、架橋性シリル基含有イソシアネート化合物とを、逐次或いは同時に反応させて得ることができる。
ポリオキシアルキレンポリオールと、架橋性シリル基含有イソシアネート化合物とは、イソシアネート基/水酸基の当量比が0.1〜1.5/1.0、更には0.5〜1.0/1.0となる範囲で反応させるのが好ましい。
この反応の際には、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートなどの特定の有機金属化合物が低臭気で触媒効果が大きく好適である。
【0013】
前記ポリオキシアルキレンポリオールは、アルキレンオキシドを開環付加重合させたものや、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させたものなどである。
開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、シュークローズなどの低分子アルコール類、ビスフェノールAなどの多価フェノール類、エチレンジアミンなどの低分子ポリアミン類、ジエタノールアミンなどの低分子アミノアルコール類などが挙げられる。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
すなわち、ポリオキシアルキレンポリオールは、具体的には例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)−グリコール、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)−グリコールを挙げることができ、このうちポリオキシプロピレングリコールが特に好ましい。また、これらの各種ポリオールと、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの公知のポリイソシアネートとを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたものも挙げられる。
これらは単独で或いは2種以上を混合して使用できる。
ポリオキシアルキレンポリオールは、硬化物の伸びまたは強度などの点から、複合金属シアン化錯体触媒を使用して得られる数平均分子量(Mn)が6,000以上、さらに10,000〜30,000のものが好ましく、また、1分子当り平均の水酸基の数は2〜4、特に2が好ましく、更に総不飽和度が0.07meq/g以下、特に0.04meq/g以下のものが好ましい。
ここにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールとして、分子量分布(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量の比=Mw/Mn)が、1.6以下のもの又は1.6を超えるものをそれぞれ単独で或いは混合して用いることもできるが、1.6以下のものが好ましい。
【0014】
前記架橋性シリル基含有イソシアネート化合物は、分子内に1個以上のイソシアネート基と1個以上の架橋性シリル基を少なくとも含有すればよいが、反応の制御のしやすさ、硬化後のゴム弾性が良好な点から、分子内に1個のイソシアネート基と1個の架橋性シリル基を含有する化合物が好ましい。
架橋性シリル基含有イソシアネート化合物としては、具体的には、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルイソプロポキシシラン、イソシアネートトリメトキシシラン、ジイソシアネートジメトキシシランなどが挙げられ、これらは単独で或いは2種以上混合して使用できる。これらのうち、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0015】
本発明における添加剤としては、硬化触媒、耐候安定剤、可塑剤、充填材、揺変性付与剤、接着性付与剤、保存安定性改良剤(脱水剤)、着色剤などが挙げられる。このうち、充填材、耐候安定剤、接着性付与剤、保存安定性改良剤(脱水剤)及び着色剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の添加剤が好ましい。
【0016】
硬化触媒は、架橋性シリル基含有樹脂の硬化を促進させるための触媒であり、具体的には、有機金属化合物、アミン類等が挙げられ、例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の2価の有機錫化合物、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物の旭硝子社製EXCESTAR C−501、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等の各種金属のキレート化合物、オクチル酸鉛等の有機酸鉛塩、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類、オクチル酸ビスマス、ビスマスバーサテイト等の有機ビスマス化合物、ブチルアミン、オクチルアミン等の第1級アミン類、ジブチルアミン、ジオクチルアミン等の第2級アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の第1級、第2級アミン類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N−エチルモルフォリン等の第3級アミン類、或いはこれらのアミン類とカルボン酸等の塩類、カオリンクレー、塩酸等の無機系酸性化合物、エチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート等の有機燐酸系酸性化合物、或いはこれらとアミンとの塩類などが挙げられる。これらのうち、硬化反応促進効果が大きく低臭気であり刺激臭のない比較的安価である点で有機錫化合物が好ましく、さらにジブチル錫ジラウレートが好ましい。
硬化触媒は、硬化速度、臭気、硬化物の物性などの点から、架橋性シリル基含有樹脂100重量部に対して、0〜2.0重量部、特に0.01〜1.0重量部配合するのが好ましい。
【0017】
耐候安定剤は、架橋性シリル基含有樹脂の硬化後の酸化や光劣化、熱劣化を防止して、耐候性だけでなく耐熱性を更に向上させるために使用する。耐候安定剤としては具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを挙げることができる。
【0018】
酸化防止剤としては具体的には、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の酸化防止剤を挙げることができ、ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。また、旭電化工業社製の商品名アデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87などの分子量1,000未満の低分子量ヒンダードアミン系酸化防止剤、同じくLA−63P、LA−68LD或いはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名CHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LDなどの分子量1,000以上の高分子量ヒンダードアミン系酸化防止剤なども挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)]、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールなどが挙げられる。
【0019】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0020】
耐候安定剤は、架橋性シリル基含有樹脂100重量部に対して、0〜30重量部、特に0.1〜10重量部配合するのが好ましい。
【0021】
可塑剤としては、具体的には、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールエステル等のアルコールエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、塩素化パラフィン、前記の架橋性シリル基含有樹脂の合成に使用されるポリオキシアルキレンポリオール或いはこれをエーテル化又はエステル化などしたポリオキシアルキレン類、中でもシュークロースなどの糖類多価アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオール或いはこれをエーテル化又はエステル化などした糖類系ポリオキシアルキレン類、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレンのオリゴマー類、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、水素添加ポリブテン等のオレフィン系重合体などが挙げられる。
これらのうち、架橋性シリル基含有樹脂との相溶性がよく、被覆材料としたときの粘度を低くすることができ、低臭気であり刺激臭のない比較的低コストである点で、エステル類が好ましく、更にフタル酸エステル類が好ましく、特にフタル酸ジオクチルが好ましい。
可塑剤は、架橋性シリル基含有樹脂100重量部に対して、50〜200重量部、特に70〜150重量部配合するのが好ましい。
【0022】
充填材としては、例えば、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、スレート粉、無水ケイ酸、石英微粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、沈降性シリカなどの合成シリカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機粉末状充填材、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状充填材などの無機系充填材、或いはこれらの表面を脂肪酸等の有機物で処理した充填材、木粉、クルミ穀粉、もみ殻粉、パルプ粉、木綿チップ、ゴム粉末、さらにポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂の粉末などの有機系充填材などの他、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の難燃性付与充填材なども挙げられ、粒径0.01〜1,000μmのものが好ましい。
【0023】
搖変性付与剤としては、コロイダルシリカ、石綿粉、前記有機表面処理炭酸カルシウム(脂肪酸処理炭酸カルシウム)等の無機系揺変性付与剤、有機ベントナイト、変性ポリエステルポリオール、脂肪酸アマイド等の有機系揺変性付与剤が挙げられる。これらのうち、コロイダルシリカは少量の配合で搖変性を付与できるが、海上輸送コンテナ用被覆材料の硬化を促進するために配合する硬化触媒により搖変性付与構造が破壊され、垂直面に充填や塗布したときにダレを生ずることがあり、使用が制限されてしまう。また、石綿粉、有機系揺変性付与剤は、有害な物質であったり、臭気や当該被覆材料の外観の点等で不都合がある。しかし、有機表面処理炭酸カルシウムはこのような欠点が無く、海上輸送コンテナ用被覆材料に安定した揺変性を付与することができるため好ましい。
搖変性付与剤は、架橋性シリル基含有樹脂100重量部に対して、50〜450重量部配合するのが好ましい。
【0024】
前記有機表面処理炭酸カルシウムは、公知の方法で製造することができるものである。すなわち、まず微粉末状の炭酸カルシウムは、例えば石灰石を焼成炉で焼成し、炭酸ガスと生石灰に分解した後、生石灰に水を加えて水化精製し、石灰乳とし、炭酸ガスを吹き込んで反応させるか、又は炭酸ガス気流中に石灰乳を噴霧し向流又は並流のかたちで接触させて製造することができ(一般に軽質炭酸カルシウムと称される。)、次いでこの微粉末状炭酸カルシウムに揺変性付与効果を与える目的と二次凝集を防ぐ目的で脂肪酸金属塩や、ロジン酸等の脂肪酸の金属塩或いは脂肪酸エステルなどで微粉末状炭酸カルシウムの表面を処理して脂肪酸表面処理炭酸カルシウムや樹脂酸表面処理炭酸カルシウムなどの有機表面処理炭酸カルシウムが得られる。ここで脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸等の炭素数10〜25の脂肪酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムの塩が好ましい。これらの市販品としては、例えば、白艶華CC、CCR、R06、VIGOT−10、VIGOT−15、STAVIGOT−15A(以上、白石工業社製)、NCC#3010、NCC#1010(以上、日東粉化工業社製)、カルファイン100、カルファイン200、カルファイン200M、カルファイン500(以上、丸尾カルシウム社製)等が挙げられる。これらのうち、揺変性付与効果が高い点で、脂肪酸表面処理炭酸カルシウムが特に好ましい。
この有機表面処理炭酸カルシウムの平均粒径は、0.01〜0.5μm、更に0.03〜0.15μmが好ましく、BET比表面積は5〜200m/g、更に10〜60m/gが好ましい。平均粒径が0.01μmを下回るか、或いはBET比表面積が200m/gを超えると、得られる被覆材料の粘度が上がって作業性が悪化し、平均粒径が0.5μmを上回るか或いはBET比表面積が5m/gを下回ると、揺変性付与効果がなくなるため好ましくない。
【0025】
接着性付与剤としては、カップリング剤のほか、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、アルキルチタネート類、有機ポリイソシアネート等が挙げられる。
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系などの各種カップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物が挙げられる。これらのうちシラン系カップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物が接着性に優れている点で好ましい。
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランなどの炭化水素基結合アルコキシシラン類、ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシランなどの炭化水素基結合イソプロペノキシシラン類、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類やイソプロペノキシシラン類などの分子量500以下、好ましくは400以下の低分子化合物及び/又はこれらシランカップリング剤の1種又は2種以上の部分加水分解縮合物で分子量200〜3,000の化合物が挙げられる。
【0026】
保存安定性改良剤としては、系中に存在する水分と反応する、前記ビニルトリメトキシシランなどの低分子の架橋性シリル基含有化合物、酸化カルシウム、p−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0027】
着色剤としては、酸化チタンや酸化鉄などの無機系顔料、銅フタロシアニンなどの有機系顔料、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0028】
充填材、揺変性付与剤、接着性付与剤、保存安定改良剤(脱水剤)及び着色剤の合計の配合量は、架橋性シリル基含有樹脂100重量部に対して、0〜800重量部、特に10〜300重量部が好ましい。このうち特に、架橋性シリル基含有樹脂100重量部に対し、エステル系可塑剤は50〜200重量部、揺変性付与剤は50〜450重量部の割合で含有するのが好ましい。
【0029】
本発明において、前記各添加剤成分はそれぞれ単独で或いは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
なお、本発明の被覆材料は用途に応じて一液型としても、二液型としても使用できるが、主剤と硬化剤を混合する手間が無く、また混合不良による硬化不良などの不具合も無く作業性に優れているため、一液型の被覆材料が好ましく、更に一液湿気硬化型被覆材料が好ましい。
【0031】
次に、本発明の海上輸送用コンテナについて、図1及び2を参照して説明する。
図1は、本発明の海上輸送用コンテナの開扉状態を示す正面図である。図2は、図1の海上輸送用コンテナの内側左上角部の拡大図である。
【0032】
本発明の海上輸送用コンテナは、塗装箱状収納本体1に、コンテナ船への固定具(図示省略)と、コンテナ同士を固定する係止具(図示省略)と、クレーンフック係合具(図示省略)とが固設された基本構成である。
収納本体1は、扉2−1、2−2を一方又は双方に有する2枚の金属端壁2、2′と、2枚の金属側壁3、3′と、金属天壁4と、金属底壁5とが、溶接やボルト止めなどにより箱状に接合され、構成されている。
収納本体1の内外及び前記固定具、係止具、係合具などは、全面的に内外装用の防食性、耐水性、耐薬品性等の塗装が施されている。
収納本体1は、この接合部内側の塗装表面a、b、c、d、e、fに、更に前記海上輸送コンテナ用被覆材料が塗装され、硬化されている。接合部内側の塗装表面a、b、c、d、e、fとは、具体的には、塗装鋼板の接合部(突合せ部や重ね合わせ部)、金属底壁5と金属側壁3、3′との突合せ部、内部に設置される器具(取っ手等)・機器(換気扇、冷凍冷蔵機器)と金属側壁3、3′、金属底壁5又は金属天壁4の接合部であり、ビス頭等も含まれる。
本発明の海上輸送用コンテナとしては、具体的には、ドライコンテナ、ハイキューブコンテナ、冷凍コンテナ、ハンガーコンテナなどが挙げられる。例えば、冷凍コンテナの場合には、前記構成の本発明の海上輸送用コンテナに更に、冷凍装置が内蔵され、設置されている。
【0033】
本発明の海上輸送用コンテナは、例えば、まず2枚の金属端壁2、2′と2枚の金属側壁3、3′と金属天壁4と金属底壁5とを箱状に接合して収納本体を製造し、次いで該収納本体1に、コンテナ船への固定具とコンテナ同士を固定する係止具とクレーンフック係合具とを固設し、更にこれら全体の内外を全面的に塗装する。更に、前記の塗装収納本体1の接合部内側表面a、b、c、d、e、fには、前記海上輸送コンテナ用被覆材料を塗装し、硬化させて好適に製造することができる。
【0034】
塗装には、防食塗料や、塗料を厚塗りして長時間の防錆、防食を計る重防食塗料、超重防食塗料が用いられる。
一般に塗料の厚さは、防食塗装で100〜150μm、重防食塗装で200〜500μm、超重防食塗装で1000〜2000μmである。多くが下塗り塗料(ショッププライマーおよびアンダーコーティング)、中塗り塗料(ミッドプライマー)、上塗り塗料(トップコーティング)の三層の構成となっている。下塗り塗料には、まず、本塗装に先立って鋼材をブラスト処理し直ちにジンクリッチペイントを薄く塗るショッププライマー、本塗装の下塗り塗料であるジンクリッチペイント等がある。ジンクリッチペイントとしては、亜鉛粉末と少量のバインダーであるエチルシリケートとを含有する無機系のもの、亜鉛粉末と少量のバインダーのエポキシ樹脂とを含有する有機系のものなどがあり、具体的にはEPICON ZINC SC B−2(中国塗料社製)など挙げられる。中塗り塗料には、さび止め塗料として酸化鉄などの顔料を多く含むエポキシ系樹脂などがあり、具体的にはEPICON SC PRIMER(中国塗料社製)などが挙げられる。上塗り塗料としては、外装用として、コンテナ外面の防食性、塗膜外観、耐候性、耐汚染性などに優れたエポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂などが用いられ、具体的にはUNYMARINE SC FINISH、ACRI SC FINISH HB(いずれも中国塗料社製)などを挙げることができ、内装用としては、コンテナ内部の防食性、塗膜外観、耐薬品性、耐摩耗性などに優れたエポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが用いられ、具体的にはEPICON SC INTERIOR NP、低臭気タイプのEPICON SC INTERIOR NP−FFやPOLYULAC NO.200 F−HB(いずれも中国塗料社製)などを挙げることができる。特に、コンテナ貨物が食料品や衣料品などの塗装材の臭気が付着したりして品質の劣化が懸念される場合には、溶剤臭などの臭気の低い低臭気タイプを使用するのが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例等により更に詳細に説明する。
【0036】
実施例1
加熱、冷却装置及び窒素シール管付混練容器に、窒素ガスを流しながらトリメトキシシリル基含有ポリオキシプロピレン系樹脂I(旭硝子社製EXCESTAR−AX2340、ポリオキシプロピレン構造部分の分子量が約13,000のジオール型である架橋性シリル基含有ポリオキシプロピレン系樹脂)100g、フタル酸ジオクチル130g、予め90〜100℃の乾燥器中で乾燥し含有水分0.05質量%以下にした重質炭酸カルシウム350g、更に予め乾燥器中で乾燥した表面処理炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製カルファイン)210gを仕込み、内容物が均一になるまで攪拌、混合した。次に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤I−1010 1.5g、ビニルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS−210)6.2g仕込み、20〜30℃で撹拌、混合し、次いでジブチル錫ジラウレート0.3g、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS−320)1.5gを添加し、さらに30分間混合した後、30〜100hPaで減圧脱泡し、容器に充填密封して、海上輸送コンテナ用被覆材料を調製した。
【0037】
実施例2
実施例1において、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを4.4g使用した以外は同様にして、海上輸送コンテナ用被覆材料を調製した。
【0038】
実施例3
実施例1において、トリメトキシシリル基含有ポリオキシプロピレン系樹脂I(旭硝子社製EXCESTAR−AX2340)の代わりにトリメトキシシリル基含有ポリオキシプロピレン系樹脂II(旭硝子社製EXCESTAR−G3440ST、ポリオキシプロピレン構造部分の分子量が約14,000のトリオール型である架橋性シリル基含有ポリオキシプロピレン系樹脂)100gを使用した以外は同様にして、海上輸送コンテナ用被覆材料を調製した。
【0039】
〔性能試験〕
実施例1〜3で調製した海上輸送コンテナ用被覆材料、及び比較例1として1成分形クロロプレンゴム系シーラント(LIDA−988、74.7質量%キシレン溶液)、比較例2として1成分形ネオプレンゴム系シーラント(HY−901、77.0質量%キシレン溶液)を使用して、次の性能試験を行った。
(1)臭気
20Lペール缶(金属製、円筒状)の底面に近い側面部分に、海上輸送コンテナ用被覆材料22.2gをヘラで塗布した。海上輸送コンテナ用被覆材料を施工後1日、20Lペール缶の蓋を開けた状態で23℃の標準状態に静置した。海上輸送コンテナ用被覆材料を施工して1日後に20Lペール缶の蓋を完全に閉め、下記の間隔で蓋を開封して20Lペール缶の中の臭気を官能評価した。
蓋を閉める → 1週間後 → 2週間後
なお、評価後はただちに20Lペール缶の蓋を閉めず、23℃の標準状態で30分開放し、開放30分経過後に蓋を閉めて次回の検査まで静置した。
官能評価は、溶剤臭及び/又は薬品様臭が殆どない場合を○、溶剤臭及び/又は薬品様臭が強い場合又は明らかに感じられる場合を×とした。
(2)タックフリー時間
JIS A1439;1997「建築用シーリング材の試験方法」4.19タックフリー試験に準拠して、タックフリー時間を測定した(測定温度23℃)。
(3)硬化性
錫メッキ鋼板上に海上輸送コンテナ用被覆材料を幅約10mm、高さ約7mmのビード状に施工し、5℃50%相対湿度下に静置し、施工1日後及び7日後の指蝕による硬化性を評価した。なお、錫メッキ鋼板および海上輸送コンテナ用被覆材料は、1日以上、5℃、50%相対湿度下に置いたものを使用した。
硬化性の評価は、殆ど硬化しており指で押してもへこまず又はへこんでも直ぐに戻る場合を○、表面は硬化しているが指で押すと柔らかくへこみが生じ戻らない場合を△、未硬化又は表層のみ硬化し指で押すと柔らかくへこみが生じ戻らない場合を×とした。
(4)スランプ
JIS A1439;1997「建築用シーリング材の試験方法」4.1スランプ試験に準拠して、スランプ(縦)を測定した(測定温度23℃)。
(5)接着性
ピール試験により評価した。試験体は、海上輸送コンテナ用被覆材料を幅約10mm、高さ約7mm、長さ70mmのビード状に2列防食塗装鋼板(中国塗料社製EPICON SC INTERIOR NP−FF GREY CSC−9107、下塗り;EPICON ZINC SC B−2(M)GREEN、中塗り;EPICON ZINC SC B−2(M)GREY、上塗り;EPICON SC INTERIOR NP−FF GREY CSC−9107)上に打設し、23℃、50%相対湿度で14日間養生してゴム状硬化物とした。次に、カッターを使用して2列の硬化物のうちの1列の端部に硬化物と塗装面の界面に硬化物の長さ方向に対して直角に刃を入れ、刃を入れた硬化物を摘み折り返えして硬化物の長さ方向に引張り、接着性を試験した。
海上輸送コンテナ用被覆材料が塗装面から容易に剥離しないか又は海上輸送コンテナ用被覆材料が破断する場合を○、海上輸送コンテナ用被覆材料が塗装面から容易に剥離する場合を×と評価した。
これらの原料組成及び性能試験の結果をまとめて表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例4
〔海上輸送用コンテナの製造〕
ロール状の金属板をカッティングして各部材を作製した。各部材はブラスト処理し、ショッププライマーを塗布し、加熱乾燥した。
2枚の金属端壁2、2′と2枚の金属側壁3、3′と金属天壁4と金属底壁5とを、溶接やボルト止めなどにより箱状に接合して、収納本体を製造した。金属端壁2は、観音開きの2枚の扉2−1、2−2からなる。次いで、該収納本体1に、コンテナ船への固定具(図示省略)とコンテナ同士を固定する係止具(図示省略)とクレーンフック係合具(図示省略)とを固設した。
更に、収納本体1などの全体の内外を全面的に塗装した。塗装工程は、まずブラスト処理し、続いて下塗り塗装、乾燥、次に中塗り塗装、加熱乾燥、続いて内装の上塗り塗装、次に外装の上塗り塗装、続いて床板塗装、乾燥、床下塗装、乾燥とした。
使用した塗料は、内外装の下塗り塗装(中国塗料社製EPICON ZINC SC B−2、エポキシ樹脂ジンクプライマー)、外装の中塗り塗装(中国塗料社製EPICON SC PRIMER、エポキシ樹脂さび止めプライマー)、内装の上塗り塗装(中国塗料社製EPICON SC INTERIOR NP−FF、低臭気タイプ、変性エポキシ樹脂上塗り塗料)、外装の上塗り塗装(中国塗料社製UNYMARINE SC FINISH、ポリウレタン樹脂塗料)、床面塗装(中国塗料社製POLYULAC NO.200 F−HB低臭気タイプ)、床下塗料(中国塗料社製EPICON ZINC SC B−2下塗り塗料、EPICON SC PRIMER中塗り塗料、ACRI SC FINISH HB上塗り塗料)であった。次いで、塗装した収納本体1の接合部内側表面すべてa、b、c、d、e、f(溶接部やボルト止め接合部、ボルト頭部及びその周端部など)に、実施例3で調製した320mlカートリッジ入り海上輸送コンテナ用被覆材料を用いて、ノズルを内径約10mmに切断し、手動ガンにより溶接部においてはビード状、ボルト止め接合部、ボルト頭部においては覆うように、必要に応じてヘラ等を使用して塗布した後、扉を閉じて、常温で放置し硬化させて、図1(及び2)に示す海上輸送用コンテナ(20ftドライコンテナ)を製造した。
〔海上輸送用コンテナの性能評価〕
海上輸送コンテナ用被覆材料を塗布し、扉を閉じて7日後、14日後に扉を開いて内部に入り臭気を官能評価したところ、溶剤臭気及び/又は薬品様の臭気がないかまたは許容できる程度でかつ目に対する刺激もなかった。なお、塗布から臭気テスト14日後の温度湿度条件(室内)は、15〜19℃、20〜50%RHであった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の海上輸送用コンテナの開扉状態を示す正面図である。
【図2】図1の海上輸送用コンテナの内側左上角部の拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
1 収納本体
2、2′ 金属端壁
2−1、2−2 扉
3、3′ 金属側壁
4 金属天壁
5 金属底壁
a、b、c、d、e、f 収納本体接合部内側の塗装表面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性シリル基含有樹脂を含有すること、を特徴とする海上輸送コンテナ用被覆材料。
【請求項2】
前記架橋性シリル基含有樹脂が、複合金属シアン化錯体触媒を使用して得られる数平均分子量(Mn)6,000以上、分子量分布(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量の比=Mw/Mn)1.6以下、総不飽和度0.07meq/g以下のポリオキシアルキレンポリオールと、該ポリオキシアルキレンポリオールに反応性を有する有機基と少なくとも1つの架橋性シリル基を有する化合物との反応生成物である、請求項1に記載の海上輸送コンテナ用被覆材料。
【請求項3】
前記架橋性シリル基含有樹脂が、有機溶剤を含まずかつ低臭気、速硬化性の架橋性シリル基含有樹脂である、請求項1又は2に記載の海上輸送コンテナ用被覆材料。
【請求項4】
更に添加剤を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の海上輸送コンテナ用被覆材料。
【請求項5】
架橋性シリル基含有樹脂100重量部、硬化触媒0〜2.0重量部、可塑剤50〜200重量部及び揺変性付与剤50〜450重量部の割合で含有すること、を特徴とする海上輸送コンテナ用被覆材料。
【請求項6】
前記添加剤が、充填材、耐候安定剤、接着性付与剤、保存安定性改良剤(脱水剤)及び着色剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項4に記載の海上輸送コンテナ用被覆材料。
【請求項7】
扉を一方又は双方に有する2枚の金属端壁と2枚の金属側壁と金属天壁と金属底壁とを箱状に接合して収納本体を製造し、次いで該収納本体に、コンテナ船への固定具とコンテナ同士を固定する係止具とクレーンフック係合具とを固設し、更にこれら全体の内外を全面的に塗装する海上輸送用コンテナの製造方法において、
前記の塗装収納本体の接合部内側表面に、更に請求項1〜6のいずれか一項に記載の海上輸送コンテナ用被覆材料を塗装し、硬化させること、を特徴とする海上輸送用コンテナの製造方法。
【請求項8】
扉を一方又は双方に有する2枚の金属端壁と2枚の金属側壁と金属天壁と金属底壁とを箱状に接合し、塗装した収納本体に、コンテナ船への固定具と、コンテナ同士を固定する係止具と、クレーンフック係合具が固設されてなる海上輸送用コンテナにおいて、
前記の塗装収納本体の接合部内側表面に、更に請求項1〜6のいずれか一項に記載の海上輸送コンテナ用被覆材料を塗装し、硬化させてなること、を特徴とする海上輸送用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−168913(P2008−168913A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1144(P2007−1144)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】