海中貯水槽
【課題】大量の駆動エネルギーを必要とする大掛りな水質悪化防止装置を用いることなしに、海中貯水槽内の貯留水の水質悪化を自然エネルギーを用いて効率よく防止する。
【解決手段】常時海中に位置し、取水口を通して流入した真水の貯水量に応じて内容積が変るフレキシブルなシート材製の大径筒状袋体3と、袋体と連通する小径筒状体と、袋体の壁面上方に配設したフロートと、袋体の壁面外方を囲繞するネット体6と、ネット体の外方に袋体の側壁3aと対向状に配設され、押圧体を介して袋体内容積を縮減させるシリンダ12と、フロート上に配設され、シリンダへ作動用流体を供給する加圧流体供給装置と、その駆動エネルギーを供給する太陽電池設備又は風車型回転駆動装置若しくは水車型回転駆動装置と、制御弁とを備え、シリンダロッド12bの前進、後退による、貯留水の強制流動させる。さらに散気管、撹拌羽根によるエアレーション、撹拌なども付加する。
【解決手段】常時海中に位置し、取水口を通して流入した真水の貯水量に応じて内容積が変るフレキシブルなシート材製の大径筒状袋体3と、袋体と連通する小径筒状体と、袋体の壁面上方に配設したフロートと、袋体の壁面外方を囲繞するネット体6と、ネット体の外方に袋体の側壁3aと対向状に配設され、押圧体を介して袋体内容積を縮減させるシリンダ12と、フロート上に配設され、シリンダへ作動用流体を供給する加圧流体供給装置と、その駆動エネルギーを供給する太陽電池設備又は風車型回転駆動装置若しくは水車型回転駆動装置と、制御弁とを備え、シリンダロッド12bの前進、後退による、貯留水の強制流動させる。さらに散気管、撹拌羽根によるエアレーション、撹拌なども付加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の地上の水を海中に貯え、貯えられた水を必要に応じて海水と真水の比重差を利用して地上に供給するようにした海中貯水槽の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明者は、貯水用ダムや溜め池等を用いて水資源を確保すると云う従前の貯水手段の発想を転換し、海中に真水を貯えると共に海水と真水の比重差を利用して地上へ真水を供給するようにした新規な海中貯水槽を開発し、これを特公平4−42265号及び特公平5−25754号等として公開している。
【0003】
図12は、本願発明者が先に開発をした海中貯水槽の利用状態の説明図であり、また図13は当該海水貯水槽の縦断面概要図である。
海中貯水槽を形成する貯留タンク本体Aは海Sの適宜の箇所に設置され、アンカ及びアンカロープ等(図示省略)により係留されている。
また、貯留タンク本体Aの取水口1と陸地L上の取水設備Cとの間は取水管Dにより連結され、取水管Dを通して河川Rの真水Wが貯留タンク本体A内へ貯留される。
更に、貯留タンク本体Aの給水口2との陸地L上の給水設備F間は給水管Eにより連結され、給水管Eを通して貯留タンク本体A内の真水Wが海水と真水の比重差を利用して陸上Lの給水設備Fへ供給される。当該給水設備では給水(真水)Wを中水、上水、工業用水等の用途に応じて消毒・浄化し、需要箇所へ圧送する。
【0004】
図13を参照して、当該海中貯水槽を形成する貯留タンク本体Aは、海面下に位置する大径筒状袋体3と海面上に位置する小径筒状体4とから形成されている。また、大径筒状袋体3の上端にはフロート5が配設固定されており、貯留タンク本体A自体に所要の浮力が賦与されている。
【0005】
前記小径筒状体4は、耐食性金属板等により円筒体に形成されており、その側壁の下端部には給水口2が穿設されている。また、前記大径筒状袋体3は、合成樹脂等のフレキシブルなシート材等により円筒状の袋体に形成されており、取水管Dを通して袋体4内へ流入した真水Wの貯水量に応じて、袋体内容積がフレキシブルに変化する。
尚、図12及び図13に於いて、Lは陸地、Rは河川、6は真水Wを貯留した際に袋体3の形態を円筒状に保持するための非伸縮性の円筒状のネット体である。
【0006】
取水設備Cで取入れられた真水Wは、取水管D及び取水口1を通して大径筒状袋体3内へ貯留され、袋体3はフレキシブルにその内容積を変えることにより、真水Wの貯留量に対応した高さの円筒状形態になる。
尚、袋体3の側部外方は円筒状のネット体6により覆われているため、袋体3の直径がネット体6の内径を越えて外部へ膨出することはない。
【0007】
所定量の真水Wが貯留されると、海水Sと真水Wの比重差により小径筒状体4内の真水Wの水面が上昇する。そのため給水設備Fと真水Wの水位上面間のヘッド差h1−h4でもって、真水Wが給水設備Fへ自動的に給水される。
尚、小径筒状体4内の水位h1は、圧力の釣合(h1×S1+h2×S2=1.05×h2×S2)から、h1=0.05×h2×S2/S1となり、大径筒状袋体3の水深h2のS2/20S1倍だけ水位h1が上昇することによって、真水Wの自然給水が行われる。但しここで、S1は小径筒状体4の断面積、S2は大径筒状袋体3の横断面積、1.05は海水Sの比重である。
【0008】
上記従前の海中貯水槽は、イ.海水中に位置する大径筒状袋体3には内・外から水圧が加わるため、袋体3の材料そのものに特別に高い強度を必要とせず、構築が比較的容易で経済性にも優れていること,ロ.真水Wの位置エネルギーを利用して真水の取水及び真水の給水が出来るため、省エネルギーを図れること,ハ.大気との接触面積が少なく、蒸発による貯水量の減少が少ないこと等の優れた特有の効用を具備するものであり、所謂地上の貯水ダムや溜池或いは地下式貯水ダムを用いた貯水方式に比較して、より経済的な貯水が行えるうえ、環境破壊や人家の移転,それに伴う補償等の困難な問題の発生が防げると云う優れた効用を奏するものである。
【0009】
しかし、この種海中貯水槽にも解決すべき多くの問題が多く残されている。その中でも、イ.海水温度が比較的高いうえ、貯留水と空気との接触面積が極めて小さいこと等により、ダム式貯水や溜池貯水に比較して貯留中の真水Wの腐敗や水質の低下が起こり易いこと,ロ.貯留タンク本体Aの設置箇所への電力供給に相当の設備を必要とし、水質低下を防止するために大量の電力を消費する設備を設けることが不可能なこと,等が緊急に解決すべき問題点として残されている。
【0010】
【特許文献1】特公平4−42265号
【特許文献2】特公平5−25754号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、従前の海中貯水槽に於ける上述の如き問題、即ちイ.水と空気との接触面積が少ないため、貯留中の真水Wの腐敗や水質低下が起り易いこと,ロ.電力供給が容易でないため、水質防止用の大型機器を適用することが困難なこと等の問題を解決せんとするものであり、外部から電力エネルギーや化石エネルギーを供給することなしに、潮流や風力、太陽光等の自然エネルギーを利用して真水の腐敗や水質の悪化を容易に防止できるようにした海中貯水槽を提供することを発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、常時海中に位置し、取水口を通して流入した真水の貯水量に応じて内容積が変るフレキシブルなシート材製の大径筒状袋体と、大径筒状袋体と連通する小径筒状体と、大径筒状袋体の壁面上方に配設したフロートと、前記大径筒状袋体の壁面外方を囲繞し、筒状袋体の形態を筒状に維持するネット体と、前記ネット体の外方に大径筒状袋体の側壁と対向状に配設され、作動時に押圧体を介して袋体側壁を内方へ押圧変形させ、袋体内容積を縮減させるシリンダと、前記フロート上に配設され、シリンダへ作動用流体を供給する加圧流体供給装置と、加圧流体供給装置の駆動エネルギーを供給する太陽電池設備又は風車型回転駆動装置若しくは水車型回転駆動装置と、シリンダ作動用流体の供給及び排出を制御する制御弁とを備え、作動用流体の供給によりシリンダロッドを前進させ、大径筒状袋体の内容積を減少させることにより小径筒状体内の水位を上昇させると共に、作動用流体の排出によりシリンダロッドを後過させ、大径筒状袋体内容積を復原させることにより、小径筒状体から大径筒状袋体内へ水の流れを形成することを発明の基本構成とするものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、請求項1の海水貯留槽において、大径筒状袋体内にフレキシブルな散気管を配設し、加圧流体供給装置から加圧流体である空気を水中へ放出する構成としたことを、発明の基本構成とするものである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の海中貯水槽において、フロート上に風車又は水車を設けると共に当該風車又は水車により回転駆動さえる攪拌羽根を大径筒状袋体内の上方部に設ける構成としたことを発明の基本構成とするものである。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1、請求項2または請求項3の発明において、大径筒状袋体の側壁に、円周方向に等間隔で複数のシリンダを配設すると共に、当該複数のシリンダの環状配列を大径筒状袋体の高さ方向に複数段設けるようにしたものである。
【0016】
請求項5の発明は、請求項2又は請求項3の発明において、大径筒状袋体内にフレキシブルな散気管を、大径筒状袋体の高さ方向に複数段設けるようにしたものである。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1、請求項2又は請求項4の発明において、複数のシリンダへの作動用流体の供給及び作動用流体の排出を予め定めた所望のプログラムに従って行い、大径筒状袋体内にその半径方向及び軸方向の水の流れを形成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本願請求項1の発明では、大径筒状袋体の側壁をシリンダにより部分的に内方へ押し込み、大径筒状袋体の内容積を減少せしめて内部の貯留水Wを小径筒状体内へ押し上げてその水位を上昇させると共に、シリンダ内の作動用流体を排出して前記押上げした貯留水Wを急激に下降させることにより、大径筒状袋体内の水Wをその半径方向及び縦軸方向に流動させるようにしている。
その結果、大きな駆動エネルギーを必要とすることなしに、太陽電池や風車、潮流を利用する水車等により得られるエネルギーでもって、大径筒状袋体内の水を効率よく流動させることができ、小径筒状体の断面積を小さくする必要から生じる水と空気との接触面積の減少による不都合(即ち、水質の悪化や水の腐敗)を有効に防止することができる。
【0019】
また、本発明の実施に必要とするエネルギーは、太陽電池や風力式水車、潮流を利用した水車等によって十分にまかなうことの出来る範囲のものであり、水質悪化の防止のために特別な電力供給設備を設ける必要は全く生じない。
【0020】
本願請求項2の発明は、上記シリンダによる貯留水の強制的な流動に加えて、散気管からの空気の噴出によるエアレーションを行う構成としているため、貯留水の水質悪化をより効率よく防止することが出来るうえ、エアーレーション用に必要とするエネルギーも太陽電池等により容易に賄うことが出来る。
【0021】
本願請求項3の発明は、シリンダによる貯留水の強制的な流動とエアレーションに加えて、攪拌羽根により貯留水Wを強制攪拌すると共に、攪拌羽根の駆動を風車又は水車のエネルギーにより行う構成としている。その結果、貯留水Wの水質悪化がより確実に防止させると共に、自然エネルギーの有効利用率がより高められることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の各実施形態を説明する。
図1は、本発明で使用する海中貯水槽の貯留タンク本体Aの基本構造を示す一部破断正面図であり、図2はその一部拡大断面図である。図1及び図2において1は取水口、2は給水口、3は大径筒状袋体、4は小径筒状体、5はフロート、6は円筒状のネット体、7はバンド体、8はスペーサ、9はネット体支持枠、10は接続用鏡板である。
尚、図1乃至図11に於いて前記図12及び図13と同一の部位には同一の図番号を使用するものとする。
【0023】
前記小径筒状体4はステンレス鋼等の耐食製鋼材により形成されており、本実施例では厚さ2.0mmのステンレス鋼により高さ1000mm×直径400mmの円筒形の小径筒状体4を形成している。
また、前記大径筒状袋体3は、厚さ2mmのナイロンターポリン(ユニチカ株式会社製)のシート体を用いて高さ2000mm×直径2000mmの円筒形の大径筒状体3に形成されており、貯水量が定格容量の場合には図1の如き円筒状体が伸長している。
尚、前記貯留タンク本体1の形態や外形寸法は、その最大貯留量により適宜に選択されるものであり、形状は円筒形とするのが望ましい。
【0024】
前記筒状のネット体6は、大径筒状袋体3の底面及び側部外周面を覆う状態に配設されており、外径3mmφのステンレス鋼を100mmピッチで格子状に組み合せした網体が用いられている。
尚、本実施例では、後述するように袋体3の底面をネット体6により支える構成としているが、後述するように、貯留水を強制循環させるために袋体3の内壁面を内側へ強制変形させない場合には、ネット体6の袋体3の底面を支持する部分は不要となることは勿論である。
【0025】
[実施形態1]
実施形態1は、前記図1及び図2に示した貯留タンク本体1内の貯留水Wを、後述するシリンダの作動により強制的に攪拌流動させることにより、貯留水Wの腐敗や水質の低下を防止するようにしたものである。
即ち、図4〜図6に示す如く、大径筒状袋体3の側壁3aの一部をシリンダ12のロッド12bの先端に固定した押圧体12aにより一定量だけ内方へ押圧し、袋体3の内容積を強制的に減少せしめて内部の貯留水Wの一部を小径筒状体4内へ押し上げる。その後シリンダ12内の押圧力を喪失させ、袋体3を初期位置まで膨らませてその内容積を初期の容積へ戻すことにより小径筒状体4内の水位を急激に下降させ、この時の水の位置エネルギーを用いて、袋体3内の貯留水Wを袋体3の半径方向及び縦軸方向へ強制流動させる。
【0026】
図4〜図6を参照して、前記シリンダ12は、袋体3の側壁3aの外方に嵌合したリング状のシリンダ支持バンド11に固定されており、また、このシリンダ支持バンド11はネット体支持枠9に固定されている。
また、シリンダ12のロッド12bの先端には押圧体12aが固定されており、シリンダ12の作動により押圧体12aが袋体側壁3aを内方へ押圧し、その内容積を減少させる。
尚、図6において、6はネット体(100mm×100m×3φのステンレス線)、9はネット体支持枠(10φステンレス鋼)、11はシリンダ支持バンド(2mmt×12mmのステンレス鋼)、13は作動用流体給・排管である。
【0027】
前記円環状のシリンダ支持バンド11は、袋体3の高さ方向の略中央位置に嵌合固定されており、本実施例では4基のシリンダ12が等間隔でシリンダ支持バンド11に固定されている。
【0028】
尚、袋体3の内容積等に応じてシリンダ支持バンド11の配列段数を複数にしたり、或いは支持バンド11に固定するシリンダ12の数を増減することは勿論である。
また、前記複数のシリンダ12は、同時若しくは所定のプログラムに従って順に作動させるようにしてもよく、更に、シリンダロッド12bの作動速度も適宜に調整されることは勿論であり、袋体3内の貯留水Wが半径方向及び縦軸方向に円滑に強制流動されるように設定する。
【0029】
図4〜図6に示した本実施例においては、4個のシリンダ12を同時作動させる構成としており、これにより袋体3の内容積に約0.1〜0.15m3(袋体3の内容積約6.5m3)の変化を、10〜11回/hの割合で加えている。
【0030】
前記各シリンダ12への作動用流体は、図5に示す如く貯留タンク本体1のフロート5の上面に配設した加圧流体供給装置14から供給されており、本実施例では加圧流体供給装置14としてコンプレッサを使用している。また、コンプレッサ14はモータ15により回転駆動されており、このモータ15へはフロート5上に配設した太陽電池装置16から給電されている。
尚、コンプレッサ14、モータ15、太陽電池16及び後述する各制御弁V0〜V2等の作動制御は、制御装置17を介して行われる。
【0031】
図7は、前記シリンダ12の作動系統を示すものであり、制御弁V1を開、制御弁V2を閉とすることにより各シリンダ12が同時作動され、また、制御弁V1を閉、制御弁V2を開に切換えることにより、作動用流体が大気へ排出される。これにより、前述の如く袋体3の内容積が初期状態に戻ると共に小径筒状体4内の水位が急下降することになり、これによって袋体3内の貯留水Wに加わる衝撃的な運動エネルギーによって、貯留水Wが袋体3の半径方向及び軸方向に不規則な流動を行うことになる。
【0032】
[試験結果]
シリンダ12の作動による袋体3の内容積変化(0.1〜0.15m3)によって、小径筒状体4の水位を3〜5分間で約800〜1000mm上昇させ、また、小径筒状体4内の上昇した水位を、50〜60秒間で初期水位に戻すように、給気用制御弁V2の開度を夫々調整した。
そして、上記条件下における水位変動を10回/1hrの割合で30日間連続して行った。
その後、貯留水のCOD値分析を行って、本発明を実施しない場合との比較を行った。
【0033】
表1は、試験結果を示すものであり、本発明の第1実施形態によれば、BOD値の悪化や臭気の発生、透明度の低下等が生じないことが判る。
[試験結果]
【表1】
【0034】
[実施形態2]
図8及び図9は、本発明の実施形態2を示すものであり、この実施形態3では、袋体3の縦方向の中央部より下方位置に散気管18を設け、コンプレッサ14からの空気を散気管18のノズルから貯留水W内へ供給する構成としたものである。
【0035】
本実施形態では柔軟性を有する塩化ビニール製のパイプを散気管18として使用しており、袋体3の内部に十字状に配置して、その各端部を袋体側壁3aの内壁面へ固定している。
【0036】
尚、図8及び図9において、19は空気供給管であり、コンプレッサ14から制御弁V1を通して所要量の空気が連続的に供給されている。
また、フロート5の上部には、実施形態1の場合と同様に、コンプレッサ14、駆動用モータ15、太陽電池16及び制御装置17等が配設されており、コンプレッサ14の運転に必要な電力が太陽電池16から供給される。
更に、図8及び図9に於いては、一つの散気管18を袋体3内へ配設しているが、これを複数段に亘って袋体3内に設けるようにしても良いことは勿論である。
【0037】
前記実施形態1及び実施形態2では、太陽電池16の電力をコンプレッサ14の駆動エネルギーとしているが、太陽電池に替えて、潮流により回転駆動されている水車をフロート5上に配設し、その回転力を用いてコンプレッサ14を回転駆動させるようにしてもよい。
また、前記太陽電池に替えて、風力発電機をフロート5上に設置して、その発生電力によりコンプレッサ14を回転駆動させることも可能である。
更に、フロート5上に風車を設け、風車の回転力を用いてコンプレッサ14を回転駆動させることも可能である。
【0038】
[実施形態3]
図10及び図11は、本発明の実施形態3を示すものであり、貯留タンク本体1のフロート5上に風車20を設置すると共に、当該風車20の回転力を用いて袋体3内の攪拌羽根21を回転駆動させ、小径筒状体4近傍の空気を比較的多く含有する貯留水Wを強制循環させるものである。
尚、攪拌羽根21は、可能な限り袋体3の上方部で且つ小径筒状体4の軸心に近い位置に設けるのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、単に真水の貯水のみならず、海上レジャー産業や養殖漁業、真水の供給基地等の産業分野へも広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る海中貯水槽の要部を構成する貯留タンク本体Aの一部縦断正面図である。
【図2】図1のイ部の部分拡大断面図である。
【図3】円筒状ネット体の部分拡大正面図である。
【図4】本発明で使用する海中貯水槽の貯留タンク本体1の正面概要図である。
【図5】図4の貯留タンク本体1の平面図である。
【図6】図5のイ−イ視断面図である。
【図7】シリンダの駆動系統の説明図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る海中貯水槽の貯留タンク本体の正面概要図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る海中貯水槽の貯留タンク本体1の正面概要図である。
【図11】図10の平面図である。
【図12】従前の海中貯水槽の設置状況の説明図である。
【図13】従前の海中貯水槽の縦断面概要図である。
【符号の説明】
【0041】
A 貯留タンク本体
S 海(海水)
L 陸地
C 取水設備
D 取水管
E 給水管
V 制御弁
F 給水設備
W 真水
R 河川
G 作動用流体
1 取水口
2 給水口
3 大径筒状袋体
3a 袋体側壁
4 小径筒状体
5 フロート
6 ネット体
7 バンド体
8 スペーサ
9 ネット体支持枠
10 接続用鏡板
11 シリンダ支持バンド
12 シリンダ
12a 押圧体
12b シリンダロッド
13 作動用流体給・排管
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の地上の水を海中に貯え、貯えられた水を必要に応じて海水と真水の比重差を利用して地上に供給するようにした海中貯水槽の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明者は、貯水用ダムや溜め池等を用いて水資源を確保すると云う従前の貯水手段の発想を転換し、海中に真水を貯えると共に海水と真水の比重差を利用して地上へ真水を供給するようにした新規な海中貯水槽を開発し、これを特公平4−42265号及び特公平5−25754号等として公開している。
【0003】
図12は、本願発明者が先に開発をした海中貯水槽の利用状態の説明図であり、また図13は当該海水貯水槽の縦断面概要図である。
海中貯水槽を形成する貯留タンク本体Aは海Sの適宜の箇所に設置され、アンカ及びアンカロープ等(図示省略)により係留されている。
また、貯留タンク本体Aの取水口1と陸地L上の取水設備Cとの間は取水管Dにより連結され、取水管Dを通して河川Rの真水Wが貯留タンク本体A内へ貯留される。
更に、貯留タンク本体Aの給水口2との陸地L上の給水設備F間は給水管Eにより連結され、給水管Eを通して貯留タンク本体A内の真水Wが海水と真水の比重差を利用して陸上Lの給水設備Fへ供給される。当該給水設備では給水(真水)Wを中水、上水、工業用水等の用途に応じて消毒・浄化し、需要箇所へ圧送する。
【0004】
図13を参照して、当該海中貯水槽を形成する貯留タンク本体Aは、海面下に位置する大径筒状袋体3と海面上に位置する小径筒状体4とから形成されている。また、大径筒状袋体3の上端にはフロート5が配設固定されており、貯留タンク本体A自体に所要の浮力が賦与されている。
【0005】
前記小径筒状体4は、耐食性金属板等により円筒体に形成されており、その側壁の下端部には給水口2が穿設されている。また、前記大径筒状袋体3は、合成樹脂等のフレキシブルなシート材等により円筒状の袋体に形成されており、取水管Dを通して袋体4内へ流入した真水Wの貯水量に応じて、袋体内容積がフレキシブルに変化する。
尚、図12及び図13に於いて、Lは陸地、Rは河川、6は真水Wを貯留した際に袋体3の形態を円筒状に保持するための非伸縮性の円筒状のネット体である。
【0006】
取水設備Cで取入れられた真水Wは、取水管D及び取水口1を通して大径筒状袋体3内へ貯留され、袋体3はフレキシブルにその内容積を変えることにより、真水Wの貯留量に対応した高さの円筒状形態になる。
尚、袋体3の側部外方は円筒状のネット体6により覆われているため、袋体3の直径がネット体6の内径を越えて外部へ膨出することはない。
【0007】
所定量の真水Wが貯留されると、海水Sと真水Wの比重差により小径筒状体4内の真水Wの水面が上昇する。そのため給水設備Fと真水Wの水位上面間のヘッド差h1−h4でもって、真水Wが給水設備Fへ自動的に給水される。
尚、小径筒状体4内の水位h1は、圧力の釣合(h1×S1+h2×S2=1.05×h2×S2)から、h1=0.05×h2×S2/S1となり、大径筒状袋体3の水深h2のS2/20S1倍だけ水位h1が上昇することによって、真水Wの自然給水が行われる。但しここで、S1は小径筒状体4の断面積、S2は大径筒状袋体3の横断面積、1.05は海水Sの比重である。
【0008】
上記従前の海中貯水槽は、イ.海水中に位置する大径筒状袋体3には内・外から水圧が加わるため、袋体3の材料そのものに特別に高い強度を必要とせず、構築が比較的容易で経済性にも優れていること,ロ.真水Wの位置エネルギーを利用して真水の取水及び真水の給水が出来るため、省エネルギーを図れること,ハ.大気との接触面積が少なく、蒸発による貯水量の減少が少ないこと等の優れた特有の効用を具備するものであり、所謂地上の貯水ダムや溜池或いは地下式貯水ダムを用いた貯水方式に比較して、より経済的な貯水が行えるうえ、環境破壊や人家の移転,それに伴う補償等の困難な問題の発生が防げると云う優れた効用を奏するものである。
【0009】
しかし、この種海中貯水槽にも解決すべき多くの問題が多く残されている。その中でも、イ.海水温度が比較的高いうえ、貯留水と空気との接触面積が極めて小さいこと等により、ダム式貯水や溜池貯水に比較して貯留中の真水Wの腐敗や水質の低下が起こり易いこと,ロ.貯留タンク本体Aの設置箇所への電力供給に相当の設備を必要とし、水質低下を防止するために大量の電力を消費する設備を設けることが不可能なこと,等が緊急に解決すべき問題点として残されている。
【0010】
【特許文献1】特公平4−42265号
【特許文献2】特公平5−25754号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、従前の海中貯水槽に於ける上述の如き問題、即ちイ.水と空気との接触面積が少ないため、貯留中の真水Wの腐敗や水質低下が起り易いこと,ロ.電力供給が容易でないため、水質防止用の大型機器を適用することが困難なこと等の問題を解決せんとするものであり、外部から電力エネルギーや化石エネルギーを供給することなしに、潮流や風力、太陽光等の自然エネルギーを利用して真水の腐敗や水質の悪化を容易に防止できるようにした海中貯水槽を提供することを発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、常時海中に位置し、取水口を通して流入した真水の貯水量に応じて内容積が変るフレキシブルなシート材製の大径筒状袋体と、大径筒状袋体と連通する小径筒状体と、大径筒状袋体の壁面上方に配設したフロートと、前記大径筒状袋体の壁面外方を囲繞し、筒状袋体の形態を筒状に維持するネット体と、前記ネット体の外方に大径筒状袋体の側壁と対向状に配設され、作動時に押圧体を介して袋体側壁を内方へ押圧変形させ、袋体内容積を縮減させるシリンダと、前記フロート上に配設され、シリンダへ作動用流体を供給する加圧流体供給装置と、加圧流体供給装置の駆動エネルギーを供給する太陽電池設備又は風車型回転駆動装置若しくは水車型回転駆動装置と、シリンダ作動用流体の供給及び排出を制御する制御弁とを備え、作動用流体の供給によりシリンダロッドを前進させ、大径筒状袋体の内容積を減少させることにより小径筒状体内の水位を上昇させると共に、作動用流体の排出によりシリンダロッドを後過させ、大径筒状袋体内容積を復原させることにより、小径筒状体から大径筒状袋体内へ水の流れを形成することを発明の基本構成とするものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、請求項1の海水貯留槽において、大径筒状袋体内にフレキシブルな散気管を配設し、加圧流体供給装置から加圧流体である空気を水中へ放出する構成としたことを、発明の基本構成とするものである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の海中貯水槽において、フロート上に風車又は水車を設けると共に当該風車又は水車により回転駆動さえる攪拌羽根を大径筒状袋体内の上方部に設ける構成としたことを発明の基本構成とするものである。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1、請求項2または請求項3の発明において、大径筒状袋体の側壁に、円周方向に等間隔で複数のシリンダを配設すると共に、当該複数のシリンダの環状配列を大径筒状袋体の高さ方向に複数段設けるようにしたものである。
【0016】
請求項5の発明は、請求項2又は請求項3の発明において、大径筒状袋体内にフレキシブルな散気管を、大径筒状袋体の高さ方向に複数段設けるようにしたものである。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1、請求項2又は請求項4の発明において、複数のシリンダへの作動用流体の供給及び作動用流体の排出を予め定めた所望のプログラムに従って行い、大径筒状袋体内にその半径方向及び軸方向の水の流れを形成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本願請求項1の発明では、大径筒状袋体の側壁をシリンダにより部分的に内方へ押し込み、大径筒状袋体の内容積を減少せしめて内部の貯留水Wを小径筒状体内へ押し上げてその水位を上昇させると共に、シリンダ内の作動用流体を排出して前記押上げした貯留水Wを急激に下降させることにより、大径筒状袋体内の水Wをその半径方向及び縦軸方向に流動させるようにしている。
その結果、大きな駆動エネルギーを必要とすることなしに、太陽電池や風車、潮流を利用する水車等により得られるエネルギーでもって、大径筒状袋体内の水を効率よく流動させることができ、小径筒状体の断面積を小さくする必要から生じる水と空気との接触面積の減少による不都合(即ち、水質の悪化や水の腐敗)を有効に防止することができる。
【0019】
また、本発明の実施に必要とするエネルギーは、太陽電池や風力式水車、潮流を利用した水車等によって十分にまかなうことの出来る範囲のものであり、水質悪化の防止のために特別な電力供給設備を設ける必要は全く生じない。
【0020】
本願請求項2の発明は、上記シリンダによる貯留水の強制的な流動に加えて、散気管からの空気の噴出によるエアレーションを行う構成としているため、貯留水の水質悪化をより効率よく防止することが出来るうえ、エアーレーション用に必要とするエネルギーも太陽電池等により容易に賄うことが出来る。
【0021】
本願請求項3の発明は、シリンダによる貯留水の強制的な流動とエアレーションに加えて、攪拌羽根により貯留水Wを強制攪拌すると共に、攪拌羽根の駆動を風車又は水車のエネルギーにより行う構成としている。その結果、貯留水Wの水質悪化がより確実に防止させると共に、自然エネルギーの有効利用率がより高められることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の各実施形態を説明する。
図1は、本発明で使用する海中貯水槽の貯留タンク本体Aの基本構造を示す一部破断正面図であり、図2はその一部拡大断面図である。図1及び図2において1は取水口、2は給水口、3は大径筒状袋体、4は小径筒状体、5はフロート、6は円筒状のネット体、7はバンド体、8はスペーサ、9はネット体支持枠、10は接続用鏡板である。
尚、図1乃至図11に於いて前記図12及び図13と同一の部位には同一の図番号を使用するものとする。
【0023】
前記小径筒状体4はステンレス鋼等の耐食製鋼材により形成されており、本実施例では厚さ2.0mmのステンレス鋼により高さ1000mm×直径400mmの円筒形の小径筒状体4を形成している。
また、前記大径筒状袋体3は、厚さ2mmのナイロンターポリン(ユニチカ株式会社製)のシート体を用いて高さ2000mm×直径2000mmの円筒形の大径筒状体3に形成されており、貯水量が定格容量の場合には図1の如き円筒状体が伸長している。
尚、前記貯留タンク本体1の形態や外形寸法は、その最大貯留量により適宜に選択されるものであり、形状は円筒形とするのが望ましい。
【0024】
前記筒状のネット体6は、大径筒状袋体3の底面及び側部外周面を覆う状態に配設されており、外径3mmφのステンレス鋼を100mmピッチで格子状に組み合せした網体が用いられている。
尚、本実施例では、後述するように袋体3の底面をネット体6により支える構成としているが、後述するように、貯留水を強制循環させるために袋体3の内壁面を内側へ強制変形させない場合には、ネット体6の袋体3の底面を支持する部分は不要となることは勿論である。
【0025】
[実施形態1]
実施形態1は、前記図1及び図2に示した貯留タンク本体1内の貯留水Wを、後述するシリンダの作動により強制的に攪拌流動させることにより、貯留水Wの腐敗や水質の低下を防止するようにしたものである。
即ち、図4〜図6に示す如く、大径筒状袋体3の側壁3aの一部をシリンダ12のロッド12bの先端に固定した押圧体12aにより一定量だけ内方へ押圧し、袋体3の内容積を強制的に減少せしめて内部の貯留水Wの一部を小径筒状体4内へ押し上げる。その後シリンダ12内の押圧力を喪失させ、袋体3を初期位置まで膨らませてその内容積を初期の容積へ戻すことにより小径筒状体4内の水位を急激に下降させ、この時の水の位置エネルギーを用いて、袋体3内の貯留水Wを袋体3の半径方向及び縦軸方向へ強制流動させる。
【0026】
図4〜図6を参照して、前記シリンダ12は、袋体3の側壁3aの外方に嵌合したリング状のシリンダ支持バンド11に固定されており、また、このシリンダ支持バンド11はネット体支持枠9に固定されている。
また、シリンダ12のロッド12bの先端には押圧体12aが固定されており、シリンダ12の作動により押圧体12aが袋体側壁3aを内方へ押圧し、その内容積を減少させる。
尚、図6において、6はネット体(100mm×100m×3φのステンレス線)、9はネット体支持枠(10φステンレス鋼)、11はシリンダ支持バンド(2mmt×12mmのステンレス鋼)、13は作動用流体給・排管である。
【0027】
前記円環状のシリンダ支持バンド11は、袋体3の高さ方向の略中央位置に嵌合固定されており、本実施例では4基のシリンダ12が等間隔でシリンダ支持バンド11に固定されている。
【0028】
尚、袋体3の内容積等に応じてシリンダ支持バンド11の配列段数を複数にしたり、或いは支持バンド11に固定するシリンダ12の数を増減することは勿論である。
また、前記複数のシリンダ12は、同時若しくは所定のプログラムに従って順に作動させるようにしてもよく、更に、シリンダロッド12bの作動速度も適宜に調整されることは勿論であり、袋体3内の貯留水Wが半径方向及び縦軸方向に円滑に強制流動されるように設定する。
【0029】
図4〜図6に示した本実施例においては、4個のシリンダ12を同時作動させる構成としており、これにより袋体3の内容積に約0.1〜0.15m3(袋体3の内容積約6.5m3)の変化を、10〜11回/hの割合で加えている。
【0030】
前記各シリンダ12への作動用流体は、図5に示す如く貯留タンク本体1のフロート5の上面に配設した加圧流体供給装置14から供給されており、本実施例では加圧流体供給装置14としてコンプレッサを使用している。また、コンプレッサ14はモータ15により回転駆動されており、このモータ15へはフロート5上に配設した太陽電池装置16から給電されている。
尚、コンプレッサ14、モータ15、太陽電池16及び後述する各制御弁V0〜V2等の作動制御は、制御装置17を介して行われる。
【0031】
図7は、前記シリンダ12の作動系統を示すものであり、制御弁V1を開、制御弁V2を閉とすることにより各シリンダ12が同時作動され、また、制御弁V1を閉、制御弁V2を開に切換えることにより、作動用流体が大気へ排出される。これにより、前述の如く袋体3の内容積が初期状態に戻ると共に小径筒状体4内の水位が急下降することになり、これによって袋体3内の貯留水Wに加わる衝撃的な運動エネルギーによって、貯留水Wが袋体3の半径方向及び軸方向に不規則な流動を行うことになる。
【0032】
[試験結果]
シリンダ12の作動による袋体3の内容積変化(0.1〜0.15m3)によって、小径筒状体4の水位を3〜5分間で約800〜1000mm上昇させ、また、小径筒状体4内の上昇した水位を、50〜60秒間で初期水位に戻すように、給気用制御弁V2の開度を夫々調整した。
そして、上記条件下における水位変動を10回/1hrの割合で30日間連続して行った。
その後、貯留水のCOD値分析を行って、本発明を実施しない場合との比較を行った。
【0033】
表1は、試験結果を示すものであり、本発明の第1実施形態によれば、BOD値の悪化や臭気の発生、透明度の低下等が生じないことが判る。
[試験結果]
【表1】
【0034】
[実施形態2]
図8及び図9は、本発明の実施形態2を示すものであり、この実施形態3では、袋体3の縦方向の中央部より下方位置に散気管18を設け、コンプレッサ14からの空気を散気管18のノズルから貯留水W内へ供給する構成としたものである。
【0035】
本実施形態では柔軟性を有する塩化ビニール製のパイプを散気管18として使用しており、袋体3の内部に十字状に配置して、その各端部を袋体側壁3aの内壁面へ固定している。
【0036】
尚、図8及び図9において、19は空気供給管であり、コンプレッサ14から制御弁V1を通して所要量の空気が連続的に供給されている。
また、フロート5の上部には、実施形態1の場合と同様に、コンプレッサ14、駆動用モータ15、太陽電池16及び制御装置17等が配設されており、コンプレッサ14の運転に必要な電力が太陽電池16から供給される。
更に、図8及び図9に於いては、一つの散気管18を袋体3内へ配設しているが、これを複数段に亘って袋体3内に設けるようにしても良いことは勿論である。
【0037】
前記実施形態1及び実施形態2では、太陽電池16の電力をコンプレッサ14の駆動エネルギーとしているが、太陽電池に替えて、潮流により回転駆動されている水車をフロート5上に配設し、その回転力を用いてコンプレッサ14を回転駆動させるようにしてもよい。
また、前記太陽電池に替えて、風力発電機をフロート5上に設置して、その発生電力によりコンプレッサ14を回転駆動させることも可能である。
更に、フロート5上に風車を設け、風車の回転力を用いてコンプレッサ14を回転駆動させることも可能である。
【0038】
[実施形態3]
図10及び図11は、本発明の実施形態3を示すものであり、貯留タンク本体1のフロート5上に風車20を設置すると共に、当該風車20の回転力を用いて袋体3内の攪拌羽根21を回転駆動させ、小径筒状体4近傍の空気を比較的多く含有する貯留水Wを強制循環させるものである。
尚、攪拌羽根21は、可能な限り袋体3の上方部で且つ小径筒状体4の軸心に近い位置に設けるのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、単に真水の貯水のみならず、海上レジャー産業や養殖漁業、真水の供給基地等の産業分野へも広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る海中貯水槽の要部を構成する貯留タンク本体Aの一部縦断正面図である。
【図2】図1のイ部の部分拡大断面図である。
【図3】円筒状ネット体の部分拡大正面図である。
【図4】本発明で使用する海中貯水槽の貯留タンク本体1の正面概要図である。
【図5】図4の貯留タンク本体1の平面図である。
【図6】図5のイ−イ視断面図である。
【図7】シリンダの駆動系統の説明図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る海中貯水槽の貯留タンク本体の正面概要図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る海中貯水槽の貯留タンク本体1の正面概要図である。
【図11】図10の平面図である。
【図12】従前の海中貯水槽の設置状況の説明図である。
【図13】従前の海中貯水槽の縦断面概要図である。
【符号の説明】
【0041】
A 貯留タンク本体
S 海(海水)
L 陸地
C 取水設備
D 取水管
E 給水管
V 制御弁
F 給水設備
W 真水
R 河川
G 作動用流体
1 取水口
2 給水口
3 大径筒状袋体
3a 袋体側壁
4 小径筒状体
5 フロート
6 ネット体
7 バンド体
8 スペーサ
9 ネット体支持枠
10 接続用鏡板
11 シリンダ支持バンド
12 シリンダ
12a 押圧体
12b シリンダロッド
13 作動用流体給・排管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常時海中に位置し、取水口を通して流入した真水の貯水量に応じて内容積が変るフレキシブルなシート材製の大径筒状袋体と、大径筒状袋体と連通する小径筒状体と、大径筒状袋体の壁面上方に配設したフロートと、前記大径筒状袋体の壁面外方を囲繞し、筒状袋体の形態を筒状に維持するネット体と、前記ネット体の外方に大径筒状袋体の側壁と対向状に配設され、作動時に押圧体を介して袋体側壁を内方へ押圧変形させ、袋体内容積を縮減させるシリンダと、前記フロート上に配設され、シリンダへ作動用流体を供給する加圧流体供給装置と、加圧流体供給装置の駆動エネルギーを供給する太陽電池設備又は風車型回転駆動装置若しくは水車型回転駆動装置と、シリンダ作動用流体の供給及び排出を制御する制御弁とを備え、作動用流体の供給によりシリンダロッドを前進させ、大径筒状袋体の内容積を減少させることにより小径筒状体内の水位を上昇させると共に、作動用流体の排出によりシリンダロッドを後過させ、大径筒状袋体内容積を復原させることにより、小径筒状体から大径筒状袋体内へ水の流れを形成する構成としたことを特徴とする海中貯水槽。
【請求項2】
請求項1の海水貯留槽において、大径筒状袋体内にフレキシブルな散気管を配設し、加圧流体供給装置から加圧流体である空気を水中へ放出する構成としたことを特徴とする海中貯水槽。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の海中貯水槽において、フロート上に風車又は水車を設けると共に当該風車又は水車により回転駆動さえる攪拌羽根を大径筒状袋体内の上方部に設ける構成とした海中貯水槽。
【請求項4】
大径筒状袋体の側壁に、円周方向に等間隔で複数のシリンダを配設すると共に、当該複数のシリンダの環状配列を大径筒状袋体の高さ方向に複数段設けるようにした請求項1、請求項2又は請求項3に記載の海中貯水槽。
【請求項5】
大径筒状袋体内にフレキシブルな散気管を、大径筒状袋体の高さ方向に複数段設ける構成とした請求項2又は請求項3に記載の海中貯水槽。
【請求項6】
複数のシリンダへの作動用流体の供給及び作動用流体の排出を予め定めた所望のプログラムに従って行い、大径筒状袋体内にその半径方向及び軸方向の水の流れを形成する構成とした請求項1、請求項2又は請求項3に記載の海中貯水槽。
【請求項1】
常時海中に位置し、取水口を通して流入した真水の貯水量に応じて内容積が変るフレキシブルなシート材製の大径筒状袋体と、大径筒状袋体と連通する小径筒状体と、大径筒状袋体の壁面上方に配設したフロートと、前記大径筒状袋体の壁面外方を囲繞し、筒状袋体の形態を筒状に維持するネット体と、前記ネット体の外方に大径筒状袋体の側壁と対向状に配設され、作動時に押圧体を介して袋体側壁を内方へ押圧変形させ、袋体内容積を縮減させるシリンダと、前記フロート上に配設され、シリンダへ作動用流体を供給する加圧流体供給装置と、加圧流体供給装置の駆動エネルギーを供給する太陽電池設備又は風車型回転駆動装置若しくは水車型回転駆動装置と、シリンダ作動用流体の供給及び排出を制御する制御弁とを備え、作動用流体の供給によりシリンダロッドを前進させ、大径筒状袋体の内容積を減少させることにより小径筒状体内の水位を上昇させると共に、作動用流体の排出によりシリンダロッドを後過させ、大径筒状袋体内容積を復原させることにより、小径筒状体から大径筒状袋体内へ水の流れを形成する構成としたことを特徴とする海中貯水槽。
【請求項2】
請求項1の海水貯留槽において、大径筒状袋体内にフレキシブルな散気管を配設し、加圧流体供給装置から加圧流体である空気を水中へ放出する構成としたことを特徴とする海中貯水槽。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の海中貯水槽において、フロート上に風車又は水車を設けると共に当該風車又は水車により回転駆動さえる攪拌羽根を大径筒状袋体内の上方部に設ける構成とした海中貯水槽。
【請求項4】
大径筒状袋体の側壁に、円周方向に等間隔で複数のシリンダを配設すると共に、当該複数のシリンダの環状配列を大径筒状袋体の高さ方向に複数段設けるようにした請求項1、請求項2又は請求項3に記載の海中貯水槽。
【請求項5】
大径筒状袋体内にフレキシブルな散気管を、大径筒状袋体の高さ方向に複数段設ける構成とした請求項2又は請求項3に記載の海中貯水槽。
【請求項6】
複数のシリンダへの作動用流体の供給及び作動用流体の排出を予め定めた所望のプログラムに従って行い、大径筒状袋体内にその半径方向及び軸方向の水の流れを形成する構成とした請求項1、請求項2又は請求項3に記載の海中貯水槽。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−215008(P2008−215008A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55963(P2007−55963)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(507072254)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(507072254)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】
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