説明

海塩粒子の捕捉分析方法

【課題】フィルターに付着している空気中の埃やごみに影響されることなく、大気中に飛散している海塩粒子を分析する。
【解決手段】海塩粒子11よりも目が細かいフィルタ12を通して大気を吸引し、大気中に飛散している海塩粒子11をフィルタ12で捕捉した後、紫外線が実質的に照射されない環境下でフィルタ12の捕捉海塩粒子11’を硝酸銀と反応させてフィルタ12に未感光の塩化銀を固定し、未感光の塩化銀を染色剤と反応させて、未感光の塩化銀の色と、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’以外の付着物の色及びフィルタ12の色とを識別可能とするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海塩粒子の捕捉分析方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、大気中に飛散している海塩粒子を大気ごと吸引してフィルタに捕捉し、フィルタに捕捉された海塩粒子を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海塩粒子を捕捉する方法として、例えば特許文献1に記載の方法が知られている。この方法は、海塩粒子よりも目が細かく且つ硝酸銀が含浸又は塗布されているフィルタを通して大気を吸引し、大気中に飛散している海塩粒子をフィルタで捕捉し、フィルタが海塩粒子を捕捉した後も大気の吸引を続けて大気中の水分によって海塩粒子を湿らせ、硝酸銀と反応させて塩化銀として固定するものである。塩化銀としてフィルタに固定された海塩粒子は、紫外線を照射して感光させ、これを画像計測に供することによって、海塩粒子の粒径やその分布を分析するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−71653号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紫外線を照射して感光させた塩化銀を画像計測に供すると、塩化銀と同時にフィルタに付着している空気中の埃(例えば土埃)やごみが検出されるという問題があった。したがって、フィルタに付着している空気中の埃やごみの影響を十分に排除して捕捉海塩粒子の分析を行うことが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、フィルターに付着している空気中の埃やごみに影響されることなく、大気中に飛散している海塩粒子を分析する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者等は、紫外線を照射して感光させた塩化銀を画像計測に供した際に、塩化銀と同時にフィルタに付着している空気中の埃やごみが検出される要因について検討した。その結果、この要因は、紫外線を照射して感光させた塩化銀の色が、フィルタに付着している空気中の埃やごみの色とほぼ同色である青色あるいは黒色を呈する点にあることを見出した。
【0007】
そこで、本願発明者等は、塩化銀の色を、フィルタに付着している空気中の埃やごみの色と識別可能な色として分析に供することができれば、フィルタに付着している空気中の埃やごみを検出することなく、海塩粒子のみを分析できると考えて鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の海塩粒子の捕捉分析方法は、海塩粒子よりも目が細かいフィルタを通して大気を吸引し、大気中に飛散している海塩粒子をフィルタで捕捉した後、紫外線が実質的に照射されない環境下でフィルタの捕捉海塩粒子を硝酸銀と反応させてフィルタに未感光の塩化銀を固定し、未感光の塩化銀を染色剤と反応させて、未感光の塩化銀の色と、フィルタの捕捉海塩粒子以外の付着物の色及びフィルタの色とを識別可能とするようにしている。
【0009】
フィルタを通して大気を吸引すると、大気中に飛散している海塩粒子がフィルタによって捕捉される。そして、紫外線が実質的に照射されない環境下でフィルタの捕捉海塩粒子を硝酸銀と反応させることで、塩化銀が未感光のままフィルタに固定される。ここで、未感光の塩化銀は白色であり、紫外線により感光された塩化銀のように青色や黒色を呈していないことから、染色剤により染色処理を行うことで所望の色に発色させることができる。したがって、塩化銀の色と、フィルタの捕捉海塩粒子以外の付着物の色及びフィルタの色とを識別可能とすることができる。
【0010】
例えば、赤色付着物を識別可能な色のフィルタを使用し、染色剤としてフルオレセインナトリウムを使用して塩化銀の色を赤色とすることで、塩化銀の色と、フィルタの捕捉海塩粒子以外の付着物の色(青色あるいは黒色)及びフィルタの色とを識別することが可能となる。したがって、フィルタに付着している空気中の埃やごみに影響されることなく、フィルタに捕捉された海塩粒子のみを分析することができる。
【0011】
また、本発明の海塩粒子の捕捉分析方法は、海塩粒子よりも目が細かく且つ白色付着物を識別可能な色のフィルタを通して大気を吸引し、大気中に飛散している海塩粒子をフィルタで捕捉した後、紫外線が実質的に照射されない環境下でフィルタの捕捉海塩粒子を硝酸銀と反応させてフィルタに未感光の塩化銀を固定するようにしている。
【0012】
フィルタを通して大気を吸引すると、大気中に飛散している海塩粒子がフィルタによって捕捉される。そして、紫外線が実質的に照射されない環境下でフィルタの捕捉海塩粒子を硝酸銀と反応させることで、塩化銀が未感光のままフィルタに固定される。ここで、未感光のままフィルタに固定された塩化銀は白色であり、白色付着物を識別可能な色のフィルタを使用していることから、塩化銀の色と、フィルタの捕捉海塩粒子以外の付着物の色(青色あるいは黒色)及びフィルタの色とを識別することが可能となる。したがって、フィルタに付着している空気中の埃やごみに影響されることなく、フィルタに捕捉された海塩粒子のみを分析することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によれば、フィルタに付着している空気中の埃やごみに影響されることなく、フィルタに捕捉された海塩粒子のみを分析することが可能となる。
【0014】
しかも、フィルタに硝酸銀を含浸または塗布することなく海塩粒子を捕捉するようにしているので、フィルタに硝酸銀を含浸または塗布して海塩粒子の捕捉を行う従来法と比較して、フィルタの取り扱いが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
本発明の海塩粒子の捕捉分析方法は、図1に示すように、海塩粒子11よりも目が細かいフィルタ12を通して大気を吸引し、大気中に飛散している海塩粒子11をフィルタ12で捕捉する工程(工程S1)と、紫外線が実質的に照射されない環境下でフィルタ12の捕捉海塩粒子11’を硝酸銀と反応させてフィルタ12に未感光の塩化銀を固定する工程(工程S2)と、未感光の塩化銀を染色剤と反応させて、未感光の塩化銀の色と、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’以外の付着物の色及びフィルタ12の色とを識別可能とする工程(工程S3)とを含むようにしている。
【0017】
工程S1では、海塩粒子11よりも目が細かいフィルタ12を通して大気を吸引し、大気中に飛散している海塩粒子11をフィルタ12で捕捉する。
【0018】
工程S1は、例えば図2及び図3に示す粒子捕捉装置により実施される。この粒子捕捉装置は、海塩粒子11よりも目が細かいフィルタ12と、フィルタ12を通して空気を吸引する吸引装置13とを少なくとも備えるものである。
【0019】
フィルタ12は、例えばセルロースフィルタであり、ホルダ14内に設置されている。フィルタ12は海塩粒子11よりも細かい目を有している。例えば、捕捉対象が粒径数μm〜数十μmの海塩粒子である場合には、口径0.45μm程度の目を有するセルロースフィルタを使用するのが好適であるが、海塩粒子を捕捉可能なフィルタであればこの条件に限定されるものではない。
【0020】
ホルダ14の断面を図3に示す。ホルダ14は、例えば先端14aが開口し、後端14bが閉塞している円筒体であり、例えば脚15によって地面から所定の高さの位置に支持される。ホルダ14内にはメッシュ状のフィルタ支持体16が設けられており、フィルタ支持帯16の前面にフィルタ12を設置する。
【0021】
吸引装置13は、例えば単位時間当たりの吸引流量が調節可能な排気ポンプであり、チューブ18によってホルダ14の後端14bに接続されている。吸引装置13はバッテリ17から電力の供給を受けて作動する。吸引装置13には、例えば瞬間的な流量と積算流量とを計測できる流量計測装置としての気体用マスフローメータが設けられている。
【0022】
次に、図2及び図3に示す粒子捕捉装置を用いて海塩粒子11を捕捉する方法について説明する。
【0023】
吸引装置13が吸引を開始すると、ホルダ14の先端の開口から大気が吸い込まれる。ホルダ14内に吸い込まれた大気はフィルタ12を通過し、チューブ18を通って吸引装置13に吸い込まれ、そして外に排出される。大気がフィルタ12を通過する際、大気中の海塩粒子11がフィルタ12によって捕捉される。
【0024】
吸引装置13は予め決められた時間が経過するまで大気を吸引し続ける。例えば0.5〜1時間大気の吸引が継続される。吸引を継続する時間は、例えば大気の湿度、海塩粒子11の大気中濃度等を考慮して決定される。つまり、大気の湿度が低く、海塩粒子11が乾燥している場合には、海塩粒子11を湿らせて、海塩粒子11を確実にフィルタ12に捕捉することのできる程度の時間(大気の湿度を考慮した時間)となるよう吸引を継続する時間を決定する。これにより、捕捉の信頼性を向上させることができる。また、フィルタ12上に海塩粒子11が隣同士で著しく重ならない程度の時間(海塩粒子11の大気中濃度を考慮した時間)等を考慮して、吸引を継続する時間を決定する。ただし、通常は後者の時間の方が前者の時間よりも長く、後者の時間条件を満たせば前者の時間条件も満たすことになるので、後者の時間を主に考慮して吸引継続時間を決定する。
【0025】
所定時間が経過した後、吸引装置13を停止させてホルダ14からフィルタ12を取り出す。また、必要に応じて、取り出したフィルタ12に大気の積算流量値を記入する。これにより、海塩粒子11の捕捉作業が終了する。
【0026】
次に、工程S2では、紫外線が実質的に照射されない環境下でフィルタ12の捕捉海塩粒子11’を硝酸銀と反応させてフィルタ12に未感光の塩化銀を固定する。
【0027】
ここで、紫外線が実質的に照射されない環境下とは、例えば暗室であり、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’と硝酸銀とを反応させて生成される塩化銀を未感光の状態に保つことができる程度に紫外線が遮蔽されている環境のことを意味している。
【0028】
硝酸銀は、水溶液の状態で捕捉海塩粒子11’との反応に供する。硝酸銀水溶液の濃度は例えば50重量%程度とすればよいが、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’を反応させて塩化銀とすることができる濃度であれば、この濃度には限定されない。
【0029】
フィルタ12の捕捉海塩粒子11’は、硝酸銀水溶液と接触させることで反応し、塩化銀としてフィルタ12に固定される。尚、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’と硝酸銀水溶液との接触は、フィルタ12に硝酸銀水溶液を含浸させたり、フィルタ12の表面に硝酸銀水溶液を滴下させたりして行うようにすればよい。要は、捕捉海塩粒子11’をフィルタに固定させたまま塩化銀を生成させることができればよい。また、捕捉海塩粒子11’と硝酸銀水溶液の接触は、例えば25℃で10秒程度実施することで、十分に反応して塩化銀を生成させることができる。尚、塩化銀の生成に関与しなかった未反応の硝酸銀水溶液がフィルタ12に過剰に含まれていると染色工程で赤色の懸濁物が発生し、誤差の要因となる。したがって、塩化銀を生成した後にフィルタ12に残留している硝酸銀水溶液は例えば水洗等によりフィルタ12から除去することが望ましい。
【0030】
このように、工程S2では、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’と硝酸銀との反応を紫外線が実質的に照射されない環境下で行うようにしているので、捕捉海塩粒子11’を未感光の塩化銀としてフィルタ12に固定することができる。したがって、塩化銀は、画像計測の際に空気中の埃やごみとの識別が困難となる青色や黒色を呈することなく、工程S3に供される。
【0031】
工程S3では、未感光の塩化銀を染色剤と反応させて、未感光の塩化銀の色と、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’以外の付着物の色及びフィルタ12の色とを識別可能とする。
【0032】
工程S3に供される塩化銀は未感光の状態であることから白色である。したがって、感光された青色や黒色を呈する塩化銀のように、塩化銀自体の色によって、染色処理による発色が妨害されることがない。したがって、塩化銀を所望の色として、塩化銀の色と、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’以外の付着物の色及びフィルタ12の色とを識別可能とすることができる。また、この色の差を明瞭なものとすることによって、フィルタ12と塩化銀、捕捉海塩粒子11’以外の付着物と塩化銀のコントラストが明瞭となり、画像計測による捕捉海塩粒子11の分析精度を高めることができる。
【0033】
未感光の塩化銀と染色剤との反応には、例えばフルオレセインナトリウムを用いることができる。フルオレセインナトリウムは、水溶液の状態で塩化銀との反応に供する。ここで、フルオレセインナトリウム水溶液の濃度は、0.02〜0.2重量%とすることが好適である。0.02重量%未満とすると、塩化銀が十分に染色されない虞がある。また、0.2重量%よりも高濃度とすると、赤色の懸濁物が発生し、誤差の要因となる虞がある。
【0034】
尚、フルオレセインナトリウムで塩化銀を染色処理する場合、フィルタ12の色は、白色とすることが好適である。白色のフィルタを使用することで、赤色に染色された塩化銀とフィルタとの識別性を十分なものとすることができる。但し、フィルタの色は白色に限定されるものではなく、染色処理後に赤色付着物を識別可能な色であればよい。
【0035】
フィルタ12の塩化銀は、フルオレセインナトリウム水溶液と接触させることで反応し、赤色を呈する。これにより、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’のみを赤色とすることができる。尚、フィルタ12の塩化銀とフルオレセインナトリウム水溶液との接触は、フィルタ12にフルオレセインナトリウム水溶液を滴下させたり、フィルタ12の表面にフルオレセインナトリウム水溶液を含浸させたりして行うようにすればよい。要は、塩化銀をフィルタに固定させたまま塩化銀を赤色にすることができればよい。また、フルオレセインナトリウム水溶液と塩化銀の接触は、例えば25℃で1分間程度実施することで、塩化銀を十分に発色させることができる。尚、フルオレセインナトリウム水溶液と白色フィルタを接触させると、フィルタはフルオレセインナトリウム水溶液の色である黄色蛍光色に染色されるが、塩化銀の色(赤色)とフィルタの色(黄色蛍光色)との識別は十分に可能である。
【0036】
以上、本発明によって、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’のみを赤色とすることができる。即ち、フィルタ12は染色剤による染色処理後にも赤色付着物を識別可能な色である白色等としており、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’以外の付着物である空気中の埃やごみは青色や黒色であることから、赤色の部分を分析することで、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’の痕跡のみを分析することができる。したがって、この痕跡の直径を測定し、その測定結果に基づいて大気中に飛散している海塩粒子11の実際の粒径を、空気中の埃やごみの影響を排除しながら精度よく求めることができる。また、大気中には多数の海塩粒子11が飛散している場合があり、フィルタ12には多数の反応の痕跡が生じるが、各痕跡を測定することで、大気中に飛散している海塩粒子11の粒径分布を、空気中の埃やごみの影響を排除しながら精度よく求めることができる。逆に、大気中に飛散している海塩粒子11の影響を排除しながら、空気中の埃やごみの粒径及び粒径分布を精度よく求めることもできる。
【0037】
ここで、上述した海塩粒子の捕捉分析方法においては、未感光の塩化銀を染色処理して分析に供するようにしていたが、染色処理を行うことなく分析に供することも可能である。即ち、フィルタ12を白色付着物を識別可能な色とすることで、白色の未感光の塩化銀をそのまま検出することも可能である。
【0038】
黒色のフィルタを用いた場合を例に挙げて具体的に説明すると、図4に示すように、海塩粒子よりも目が細かい黒色フィルタ12を通して大気を吸引し、大気中に飛散している海塩粒子11を黒色フィルタ12で捕捉する工程(工程S1)と、紫外線が実質的に照射されない環境下で黒色フィルタ12の捕捉海塩粒子11’を硝酸銀と反応させて黒色フィルタ12に未感光の塩化銀を固定する工程(工程S2)とを含むようにしている。
【0039】
未感光の塩化銀は白色を呈することから、黒色フィルタ12及び黒色フィルタ12の捕捉海塩粒子11’以外の付着物である空気中の埃やごみの色(黒色あるいは青色)と区別することができる。したがって、未感光の塩化銀を染色することなく、未感光の塩化銀が本来的に有している色そのものによって、フィルタ及び空気中の埃やごみとの識別が可能となる。
【0040】
尚、フィルタの色は黒色に限定されるものではなく、白色付着物を識別可能な色とすればよい。例えば、青色や緑色等としても白色付着物の識別は可能である。また、フィルタの色を捕捉海塩粒子11’以外の付着物である空気中の埃やごみの色よりも薄い色とし、且つ白色付着物を識別可能な色、例えば灰色等とすることで、白色付着物と共に、捕捉海塩粒子11’以外の付着物である空気中の埃やごみの識別も同時に可能となる。
【0041】
フィルタ12上に固定された塩化銀に基づいて海塩粒子11の実際の粒径を求める手段は、公知の手段によるのでここでは詳しい説明は省略するが、フィルタ12上に固定された塩化銀の直径を測定する公知手段としては、例えばコンピュータを使用した画像測定技術を利用することができる。画像計測を行うソフトウェアとしては、例えばシオンイメージ(Scion Corporation社製)の使用が可能である。また、画像計測による測定データに基づいて海塩粒子11の実際の粒径を求める公知手段としては、例えばフィルタ12上に固定された塩化銀の径と実際の海塩粒子11の粒径との関係を示す検定曲線を利用して算出する手段がある。検定曲線は、例えば予備実験を行って求めることができる。即ち、実際の観測を模擬して海塩粒子11の噴霧を行い、フィルタ12上に固定された塩化銀の直径の分布と噴霧した海塩粒子11の直径の分布とを対比して検定曲線を求めることができる。
【0042】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、フルオレセインナトリウム水溶液を用いて染色処理を行うようにしていたが、この方法には限定されず、未感光の塩化銀を染色して、捕捉海塩粒子以外の付着物及びフィルタとの識別することを可能とする他の染色剤を使用するようにしてもよい。
【実施例】
【0043】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
【0044】
(実施例1)
フルオレセインナトリウムを用いた染色処理により、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀の色と、フィルタ12に付着した空気中の埃やごみの色及びフィルタ12の色とを識別できるか検討した。
【0045】
フィルタ12として、白色の微生物試験用メンブレンフィルタ(孔径0.45μm、アドバンテック東洋株式会社製)を使用し、図2及び図3に示す粒子捕捉装置を用いて海塩粒子11の捕捉を行った。
【0046】
海塩粒子11の捕捉は、埃やごみが付着することなく海塩粒子11のみがフィルタ12に付着する環境(環境A)と、海塩粒子11と共に埃やごみがフィルタ12に付着する環境(環境B)とにおいて実施した。
【0047】
海塩粒子11を捕捉した後、フィルタ12を粒子捕捉装置から取り出し、暗室にて50重量%の硝酸銀溶液を含浸し、捕捉海塩粒子11’を未感光の塩化銀として固定した。次に、余分な硝酸銀水溶液を水で洗い流した後、0.02重量%のフルオレセインナトリウム水溶液をフィルタ12に滴下して、未感光の塩化銀を赤色に染色した。尚、染色処理の際、フィルタ12はフルオレセインナトリウム自体の色である黄色蛍光色に染色された。
【0048】
環境Aにおいて海塩粒子11の捕捉を行ったフィルタ12の顕微鏡写真を図5に示す。また、環境Bにおいて海塩粒子11の捕捉を行ったフィルタ12の顕微鏡写真を図6に示す。
【0049】
図5に示すように、環境Aにおいて海塩粒子11の捕捉を行った場合には、捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀による赤色の痕跡Xのみが観察された。このことから、捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀を赤色に染色することで、フィルタ12の色との識別が可能であることが明らかとなった。
【0050】
また、図6に示すように、環境Bにおいて海塩粒子11の捕捉を行った場合には、捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀による赤色の痕跡Xと共に、空気中の埃やごみ由来の黒色の痕跡Zが観察された。このことから、捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀を赤色に染色することで、空気中の埃やごみの色及びフィルタ12の色との識別が可能であることが明らかとなった。
【0051】
以上の結果から、フルオレセインナトリウムを用いた染色処理により、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀の色と、フィルタ12に付着した空気中の埃やごみの色及びフィルタ12の色とを識別できることが明らかとなった。
【0052】
(実施例2)
未感光の塩化銀を染色処理することなく、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀の色と、フィルタ12に付着した空気中の埃やごみの色及びフィルタ12の色とを識別できるか検討した。
【0053】
フィルタ12として、白色付着物を識別可能な黒色の微生物試験用メンブレンフィルタ(孔径0.45μm、アドバンテック東洋株式会社製)を使用し、図2及び図3に示す粒子捕捉装置を用いて海塩粒子11の捕捉を行った。
【0054】
海塩粒子11の捕捉は、実施例1と同様、環境Aと環境Bにおいて実施した。
【0055】
海塩粒子11を捕捉した後、フィルタ12を粒子捕捉装置から取り出し、暗室にて50重量%の硝酸銀水溶液を含浸し、捕捉海塩粒子11’を未感光の塩化銀として固定した。
【0056】
環境Aにおいて海塩粒子11の捕捉を行ったフィルタ12の顕微鏡写真を図7に示す。また、環境Bにおいて海塩粒子11の捕捉を行ったフィルタ12の顕微鏡写真を図8に示す。
【0057】
図7に示すように、環境Aにおいて海塩粒子11の捕捉を行った場合には、捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀による白色の痕跡Yのみが観察された。このことから、捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀を染色することなく未感光の状態を維持することで、フィルタ12の色(黒色)との識別が可能であることが明らかとなった。
【0058】
また、図8に示すように、環境Bにおいて海塩粒子11の捕捉を行った場合には、捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀による白色の痕跡Yと共に、空気中の埃やごみ由来の黒色の痕跡Zが観察された。このことから、捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀を染色することなく未感光の状態を維持することで、空気中の埃やごみの色及びフィルタ12の色(黒色)との識別が可能であることが明らかとなった。また、フィルタ12の黒色の濃さを空気中の埃やごみの色に起因する黒色の濃さよりも薄いものとすることで、空気中の埃やごみの識別も可能であることが明らかとなった。
【0059】
以上の結果から、捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀を染色することなく未感光の状態を維持することで、フィルタ12の捕捉海塩粒子11’由来の塩化銀の色と、フィルタ12に付着した空気中の埃やごみの色及びフィルタ12の色とを識別できることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の海塩粒子の捕捉分析方法の実施形態の一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明の海塩粒子の捕捉分析方法を実施するための装置の一例を示す図である。
【図3】ホルダを示す断面図である。
【図4】本発明の海塩粒子の捕捉分析方法の実施形態の他の例を示すフローチャートである。
【図5】フルオレセインナトリウムによって捕捉海塩粒子由来の塩化銀が赤色に染色され、且つ埃やごみが付着していない白色フィルタ(染色処理後は黄色蛍光色)の顕微鏡写真である。
【図6】フルオレセインナトリウムによって捕捉海塩粒子由来の塩化銀が赤色に染色され、且つ埃やごみが付着している白色フィルタ(染色処理後は黄色蛍光色)の顕微鏡写真である。
【図7】捕捉海塩粒子が未感光の塩化銀として固定され、且つ埃やごみが付着していない黒色フィルタの顕微鏡写真である。
【図8】捕捉海塩粒子が未感光の塩化銀として固定され、且つ埃やごみが付着している黒色フィルタの顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0061】
11 海塩粒子
11’ 捕捉海塩粒子
12 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海塩粒子よりも目が細かいフィルタを通して大気を吸引し、前記大気中に飛散している前記海塩粒子を前記フィルタで捕捉した後、紫外線が実質的に照射されない環境下で前記フィルタの捕捉海塩粒子を硝酸銀と反応させて前記フィルタに未感光の塩化銀を固定し、前記未感光の塩化銀を染色剤と反応させて、前記未感光の塩化銀の色と、前記フィルタの前記捕捉海塩粒子以外の付着物の色及び前記フィルタの色とを識別可能とすることを特徴とする海塩粒子の捕捉分析方法。
【請求項2】
前記染色剤としてフルオレセインナトリウムを使用し、前記フィルタとして前記染色剤による染色処理後に赤色付着物を識別可能な色のフィルタを使用する請求項1記載の海塩粒子の捕捉分析方法。
【請求項3】
海塩粒子よりも目が細かく且つ白色付着物を識別可能な色のフィルタを通して大気を吸引し、前記大気中に飛散している前記海塩粒子を前記フィルタで捕捉した後、紫外線が実質的に照射されない環境下で前記フィルタの捕捉海塩粒子を硝酸銀と反応させて前記フィルタに未感光の塩化銀を固定することを特徴とする海塩粒子の捕捉分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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