海水淡水化装置
【課題】電力消費量を削減することができる海水淡水化装置を提供する。
【解決手段】逆浸透膜モジュール4と、高圧ポンプP1と、高圧ラインL3,L31,L5と、低圧ラインL2,L21,L6と、内部が可動ピストンで仕切られたシリンダとシリンダ連通流路を切り替える切替弁を有する動力回収装置5と、淡水の流量を検出する第1の流量センサQ5と、濃縮海水の流量を検出する第2の流量センサQ1と、動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサQ2と、動力回収装置の入口側および出口側の高圧ラインに設けられ、流量センサで検出した流量に基づいて動力回収装置へ送水される濃縮海水の量を調整する送水流量制御弁V1と、を有する。
【解決手段】逆浸透膜モジュール4と、高圧ポンプP1と、高圧ラインL3,L31,L5と、低圧ラインL2,L21,L6と、内部が可動ピストンで仕切られたシリンダとシリンダ連通流路を切り替える切替弁を有する動力回収装置5と、淡水の流量を検出する第1の流量センサQ5と、濃縮海水の流量を検出する第2の流量センサQ1と、動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサQ2と、動力回収装置の入口側および出口側の高圧ラインに設けられ、流量センサで検出した流量に基づいて動力回収装置へ送水される濃縮海水の量を調整する送水流量制御弁V1と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、本発明は、逆浸透膜を用いて海水を淡水化処理するプラントで利用されている動力回収装置の性能を引き出し、所望の運転状態に制御するための海水淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に水問題が深刻化するなかで、水ビジネスを巨大市場と捉えた世界規模でのビジネス競争が加速している。河川などの表流水や地下水を水源として持たない中東諸国や、国内でも渇水リスクの高い地域では、水源確保のために海水淡水化技術を導入し、大型の海水淡水化プラントを建設している。これまでの海水淡水化技術は、海水を加熱・蒸発後に凝縮・回収する蒸発法が主流であったが、近年は経済性の観点から例えば特許文献1や特許文献2に記載された逆浸透膜を用いた方式が拡大しつつある。
【0003】
逆浸透膜を利用する従来の海水淡水化装置は、高圧ポンプ、逆浸透膜、ブースターポンプ、低圧側出口弁などから構成されている。取水された海水は、水質に応じて適当な前処理が行われ、高圧ポンプおよび動力回収装置へ送水される。高圧ポンプは受水した前処理水を高圧な状態(例えば、6MPa)まで昇圧して逆浸透膜へ送水する。逆浸透膜は、前処理水に含まれる塩分を除去し淡水を生成する。除去した塩分は淡水化されなかった水とともに濃縮海水として動力回収装置へ送水される。このとき、濃縮海水は逆浸透膜入口圧力と同程度の圧力(例えば、5.8MPa)であるため、動力回収装置は、濃縮海水の持つ圧力(動力)を回収し、送水された前処理水へ伝達する。回収した動力により高圧(例えば、5.8MPa)となった前処理水はブースターポンプにより昇圧され、高圧ポンプにより送水された前処理水とともに、逆浸透膜へ送水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−279472号公報
【特許文献2】特開2009−154070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
逆浸透膜による海水淡水化プラントのランニングコスト(円/m3)のうち、電力費(動力費)は50%以上を占める。そのため、運用・制御で改善可能なランニングコストで競争力を持つには、特に動力費を削減することが重要である。近年では、高圧ポンプの動力を高効率で回収する動力回収装置を設置することが一般的となっている。動力用消費エネルギー(電力量)を大幅に改善できる動力回収装置の効率は、運転点により変動するため、より効率的な運転点を常に実現する動力回収制御が求められている。
【0006】
しかしながら、従来は運転条件が運転当初に決定した固定条件の運転であり、電力量を限界まで削減できないのと同時に、運転条件を変更するために必要なセンサや制御方法が備わっていないのが現状である。
【0007】
一般に、逆浸透膜へ入る前処理水流量Qbに対する生産淡水量Qaの比を百分率で表わした指数を膜の回収率(=(Qa/Qb)×100%)と呼ぶ。運転する膜の回収率によって、生産淡水、濃縮海水の流量が変わるため、それに応じて生産淡水量や濃縮海水から回収する動力エネルギー量も変化する。その変化に応じて、単位生産水量に対する電力消費量も変化する。図12に単位生産水量あたりの電力消費量と回収率の関係の一例を示す。図に示すとおり、ある一定の生産淡水量や前処理水水質では電力消費量を最小とする運転点が存在する。ただし、単位生産水量あたりの電力消費量を最小とする運転点は、前処理水の水質やポンプの吐出圧力、生産淡水量などの条件により変動する。このため、海水淡水化装置のプロセス条件が運転当初に決定された条件で不変である場合、電力消費量を限界まで削減することができなかった。
【0008】
本発明は上記事情を鑑みて成されたものであって、電力消費量を削減することができる海水淡水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る海水淡水化装置は、海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュールと、前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプと、前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ラインと、前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ラインと、内部が可動ピストンで仕切られたシリンダおよび前記シリンダに連通する流路を切り替える切替弁を有し、前記シリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインが連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインが連通し、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記一方側シリンダ内スペースに導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに送り出す動力回収装置と、前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される海水の流量を検出する第2の流量センサと、前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサと、前記動力回収装置の高圧入口側の前記高圧ラインおよび高圧出口側の前記高圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置へ送水される濃縮海水の量を調整する送水流量制御弁と、前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、を具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る海水淡水化装置は、海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュールと、前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプと、前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ラインと、前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ラインと、内部が可動ピストンでそれぞれ仕切られた第1及び第2のシリンダおよびこれらのシリンダに連通する流路をそれぞれ切り替える切替弁を有し、前記第1及び第2のシリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインがそれぞれ連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインがそれぞれ連通し、さらに前記第1のシリンダの内部スペースと前記第2のシリンダの内部スペースとが互いに連通しあっており、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記第1及び第2のシリンダの一方側シリンダ内スペースに同期して導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記第1及び第2のシリンダの他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに同期して送り出す動力回収装置と、前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサと、前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本明細書中の重要な用語を以下に定義する。
【0012】
「単位生産水量当たりの電力消費量」とは、逆浸透膜を透過して出てきた生産淡水の単位水量当たりに対して高圧ポンプの駆動に消費される消費電力の電力量をいう。
【0013】
「膜の回収率」とは、逆浸透膜に圧力を掛けて供給した海水の水量に対する逆浸透膜を透過して出てきた生産淡水の水量を百分率で表わした指数をいう。膜の回収率は、前処理水の水質やポンプの吐出圧力、生産淡水量などの条件により変動し、消費電力を最小にする最適の膜の回収率が存在する(図12中の変曲点)。この最適の膜の回収率は、プロセス条件が変わるとそれに応じて変動し、さらに逆浸透膜の経年劣化とともに変動する変数パラメータである。例えば、海水の水温が上昇すると、最適の膜の回収率は上昇する(図12中の変曲点が右方に移動する)。一方、電気伝導度(EC)が上昇すると、最適の膜の回収率は下降する(図12中の変曲点が左方に移動する)。
【0014】
このような変曲点(最適の膜の回収率)が存在するのは次の理由による。
【0015】
高圧ポンプの送水圧力を大きくして膜の回収率を増加させようとすると、濃縮海水(ブライン)の塩分濃度が上昇してそれに伴い浸透圧が大きくなるので、高圧ポンプから逆浸透膜に向けてより以上の圧力で濃縮海水を押し込む必要があり、それだけ逆浸透膜モジュールにおけるエネルギーロスが大きくなる。一方、エネルギーロスを減らすためにポンプ圧力を下げると、海水の供給量に比べて生産淡水量が少なくなり、その結果として膜の回収率が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る海水淡水化装置を示す構成ブロック図。
【図2】ブースターポンプ無しの動力回収装置の基本動作を説明するためのブロック図。
【図3】(a)〜(d)はブースターポンプ無しの動力回収装置の動作を各段階に分けて説明する断面ブロック図。
【図4】第1の実施形態の装置の動作を説明するための構成ブロック図。
【図5】(a)〜(c)は動力回収装置における上下段のシリンダ位置をそれぞれ示すタイミングチャート。
【図6】第2の実施形態の海水淡水化装置の制御ブロック図。
【図7】第3の実施形態の海水淡水化装置(シリンダが連結された動力回収装置を含む)を示す構成ブロック図。
【図8】図7の装置の制御ブロック図。
【図9】第4の実施形態の海水淡水化装置を示す構成ブロック図。
【図10】第5の実施形態の海水淡水化装置の制御ブロック図。
【図11】第6の実施形態の海水淡水化装置(並列配置された複数の動力回収装置を含む)の制御ブロック図。
【図12】膜の回収率と単位生産水量当たりの電力消費量との相関を示す特性線図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0018】
(1)本実施形態の海水淡水化装置は、海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜(41)を有する逆浸透膜モジュール(4)と、前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプ(P1)と、前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ライン(L3,L31,L5)と、前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ライン(L2,L21,L6)と、内部が可動ピストン(52,54)で仕切られたシリンダ(51,53)および前記シリンダに連通する流路を切り替える切替弁(CV1,CV2)を有し、前記シリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインが連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインが連通し、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記一方側シリンダ内スペースに導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに送り出す動力回収装置(5)と、前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサ(Q5)と、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される海水の流量を検出する第2の流量センサ(Q1,Q3)と、前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサ(Q2,Q4)と、前記動力回収装置の高圧入口側の前記高圧ラインおよび高圧出口側の前記高圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置へ送水される濃縮海水の量を調整する送水流量制御弁(V1,V3,…V2n-1,V11,V12)と、前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁(V2,V4,…V2n,V21,V22)と、を具備することを特徴とする。
【0019】
本実施形態によれば、第1、第2、第3の流量センサで検出した流量検出情報を用いて高圧ラインの送水流量制御弁と低圧ラインの排水流量制御弁とで各ラインの流量を調整することにより、従来のブースターポンプの補助動力を用いることなく、逆浸透膜モジュールから高圧力で排出される濃縮海水から圧力エネルギーを効率良く回収することが可能になる。
【0020】
(2)上記(1)の装置において、生産淡水の目標水量と膜の目標回収率とをそれぞれ予め設定し、前記流量センサからの流量検出結果に応じて、生産淡水の水量が前記目標水量になるように前記高圧ポンプの駆動を制御するとともに、膜の回収率が前記目標回収率となるように前記送水流量制御弁のうちの少なくとも1つの弁開度を制御し、かつ排水流量制御弁のうちの少なくとも1つの弁開度を制御する制御部(8)を、さらに有することが好ましい。
【0021】
本実施形態では、第1、第2、第3の流量センサから制御部に流量検出信号が入ると、制御部は生産淡水量と膜の回収率をそれぞれ演算し、メモリから生産淡水の目標水量と膜の目標回収率を呼び出し、演算により求めた生産淡水の実績水量と目標水量とを比較するとともに、演算により求めた膜の実績回収率と目標回収率とを比較し、両差分がそれぞれゼロか又は許容値以下となるように高圧ポンプの駆動を制御し、かつ送水流量制御弁を制御し、かつ排水流量制御弁を制御し、これにより濃縮海水の圧力エネルギーを効率良く回収することができる。
【0022】
(3)本実施形態の海水淡水化装置は、海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜(41)を有する逆浸透膜モジュール(4)と、前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプ(P1)と、前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ライン(L3,L31,L5)と、前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ライン(L2,L21,L6)と、内部が可動ピストン(52,54)で仕切られたシリンダ(51,53)および前記シリンダに連通する流路を切り替える切替弁(CV1,CV2)を有し、前記第1及び第2のシリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインがそれぞれ連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインがそれぞれ連通し、さらに前記第1のシリンダの内部スペースと前記第2のシリンダの内部スペースとが互いに連通しあっており、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記第1及び第2のシリンダの一方側シリンダ内スペースに同期して導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記第1及び第2のシリンダの他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに同期して送り出す動力回収装置(5A,5B)と、前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサ(Q2,Q4)と、前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、を具備することを特徴とする。
【0023】
本実施形態によれば、第1、第3の流量センサで検出した流量検出情報を用いて排水流量制御弁により低圧ラインの流量を調整することにより、従来のブースターポンプの補助動力を用いることなく、逆浸透膜モジュールから高圧力で排出される濃縮海水から圧力エネルギーを効率良く回収することが可能になる。
【0024】
(4)上記(3)の装置において、前記制御部は、前記流量センサからの流量検出結果に基づいて、生産淡水の水量が前記目標水量となるように前記高圧ポンプの回転駆動を制御し、かつ膜の回収率が前記目標回収率となるように前記排水流量制御弁の少なくとも1つの弁開度を制御することが好ましい。
【0025】
本実施形態では、第1、第3の流量センサから制御部に流量検出信号が入ると、制御部は生産淡水量と膜の回収率をそれぞれ演算し、メモリから生産淡水の目標水量と膜の目標回収率を呼び出し、演算により求めた生産淡水の実績水量と目標水量とを比較するとともに、演算により求めた膜の実績回収率と目標回収率とを比較し、両差分がそれぞれゼロか又は許容値以下となるように高圧ポンプの駆動を制御し、かつ排水流量制御弁を制御し、これにより濃縮海水の圧力エネルギーを効率良く回収することができる。
【0026】
(5)上記(2)〜(4)のいずれか1の装置において、前記高圧ポンプよりも上流側において前処理された海水の温度を計測する水温計と、前記前処理海水の電気伝導率を計測する電気伝導度計と、前記前処理海水の水素イオン濃度を計測する水素イオン指数計と、海水淡水化装置全体で消費される電力消費量を計測する電力量計と、をさらに有することが好ましく、これにより前記制御部は、電力量計からの計測結果と前記水温計、電気伝導度計および水素イオン指数計のうちの少なくとも1つからの計測結果とに基づいて、前処理海水の水質や生産淡水量といった運転条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量を表示することができる。
【0027】
本実施形態によれば、水温計、電気伝導度計、水素イオン指数計および電力量計を用いて逆浸透膜プロセスに影響を及ぼす前処理海水の水質を計測し、それらの計測結果を用いて表示装置を備えた制御部が単位生産水量当たりの消費電力量を表示することができるので、オペレータは海水淡水化プロセスの進行状況をリアルタイムで知ることができ、何らかの異常が発生したときであってもそれに迅速に対応することができる。
【0028】
(6)上記(5)の装置において、電力量計からの計測結果と前記水温計、電気伝導度計および水素イオン指数計のうちの少なくとも1つからの計測結果とに基づいて、前処理海水の水質条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量が最小となる運転条件を演算し、その演算結果を前記制御部に送る運転条件設定部(9)をさらに有することが好ましい。
【0029】
本実施形態では、水温、電気伝導度、水素イオン指数などの水質に関する計測結果および電力消費量の計測結果が運転条件設定部に入力されると、運転条件設定部は、海水の水質条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量が最小となる運転条件を求め、それを制御部へ送り、制御部から各駆動機器に指令信号を出させ、濃縮海水の圧力エネルギーを回収させる。
【0030】
(7)上記(2)〜(4)のいずれか1の装置において、昇圧比の異なる複数台の動力回収装置(5a,5b,…5n)を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを変更することができる。
【0031】
本実施形態では、異なる昇圧比をもつ複数の動力回収装置を組み合わせることにより、プロセス条件の変化に応じて単位生産水量当たりの電力消費量が最小になるように運転することができる(表1)。
【0032】
(8)上記(5)の装置において、昇圧比の異なる複数台の動力回収装置(5a,5b,…5n)を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、水質センサにより測定される前処理水の水質条件に応じて前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを動的に変更することができる。
【0033】
本実施形態では、異なる昇圧比をもつ複数の動力回収装置を組み合わせ、その組み合わせを水質や生産淡水量の変化に応じてオンラインで動的に変更することにより、単位生産水量当たりの電力消費量が最小になる条件で運転することができる(表2)。
【0034】
(9)上記(7)の装置において、昇圧比の異なる複数台の動力回収装置(5a,5b,…5n)を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、水質センサにより測定される前処理水の水質条件と前記運転条件設定部により演算された膜の回収率に応じて前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを動的に変更することができる。
【0035】
本実施形態では、流量センサから制御部に流量検出信号が入ると、制御部は生産淡水量と膜の回収率をそれぞれ演算し、メモリから生産淡水の目標水量と膜の目標回収率を呼び出し、演算により求めた生産淡水の実績水量と目標水量とを比較するとともに、演算により求めた膜の実績回収率と目標回収率とを比較し、両差分がそれぞれゼロか又は許容値以下となるように高圧ポンプの駆動を制御し、かつ昇圧比の異なる動力回収装置(表1、表2)に連通する送水流量制御弁をそれぞれオンオフ制御し、かつ昇圧比の異なる動力回収装置に連通する排水流量制御弁をそれぞれオンオフ制御し、これにより濃縮海水の圧力エネルギーをさらに効率良く回収することができる。
【0036】
以下に種々の実施の形態を具体的に説明する。
【0037】
対象プロセスである海水淡水化プラントの動力回収システムは、高圧ポンプP1、逆浸透膜モジュール4、動力回収装置5などから構成される。海水供給装置2で取水された海水は、水質に応じて前処理装置3で適当な前処理が行われ、高圧ポンプP1および動力回収装置5へ送水される。高圧ポンプP1は受水した前処理水を高圧な状態(例えば、6MPa)まで昇圧して逆浸透膜モジュール4へ送水する。モジュール4内の逆浸透膜は、前処理水に含まれる塩分を分離し、淡水を透過させる。膜分離した塩分は淡水化されなかった水とともに濃縮海水(ブライン)として動力回収装置5へ送水される。このとき、濃縮海水は逆浸透膜入口圧力と同程度の圧力(例えば、5.8MPa)であるため、動力回収装置5では、濃縮海水の持つ圧力(動力)を回収し、送水された前処理水を逆浸透膜入口圧力(例えば、6MPa)まで昇圧する。回収した動力により高圧となった前処理水は、高圧ポンプにより送水された前処理水とともに、逆浸透膜へ送水される。圧力を失った濃縮海水は動力回収装置5から排水される。
【0038】
図2に動力回収装置の各入出力口の呼称を定義する。
【0039】
本実施形態のようにブースターポンプを持たない動力回収システムにおいても、膜の回収率に応じて、単位生産水量あたりの電力消費量は変化する。したがって、単位生産水あたりの電力消費量を限界まで抑えるためには、生産水量が一定の条件の下では逆浸透膜モジュール4から動力回収装置5へ流れる高圧入口側の濃縮海水量を変化させる必要がある。
【0040】
この動力回収装置5は図3の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)の動作を繰り返すことにより逆浸透膜モジュールから排出される濃縮海水の圧力エネルギー(動力)を回収するシリンダ/ピストン機構を有する。図3(a)の状態で動力の回収を行っているのは、上段のピストン部52である。高圧入口側から濃縮海水がシリンダ51の右側の部屋に流入し、高い圧力がピストン部52へ伝わる。ピストン部52へ伝わった圧力はシリンダ51の左側の部屋の前処理水を押し出し、逆浸透膜入口の圧力まで昇圧させる。図3(b)の状態を経て、上段のピストン部52が左端に到達するまでは、濃縮海水の圧力により、左側の部屋の前処理水は押し出され続ける。上段ピストン部52が左端へ到達した後は左右の切替弁CV1,CV2により、上段ピストン部52は排水の役割を担う。図3(c)と(d)に示すように、左側の部屋へ流入する前処理水により上段ピストン部52は右方向へ移動し、図3(a),(b)で動力を回収した濃縮海水をシリンダ51から右方向へ押し出し排水する。
【0041】
これまで、上段ピストンに注目してきたが、実際には上段のピストン部52が圧力伝達を行っている図3(a)と(b)の状態では下段のピストン部54が排水を行い、上段のピストン部52が排水を行っている図3(c)と(d)の状態では下段のピストン部54が圧力伝達を行い、切替弁CV1,CV2により交互にピストン部52,54の移動方向を切り替えている。このように、2つのシリンダ/ピストン機構の動作を切り替えながら、図3の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)の動作を繰り返し行い、濃縮海水の圧力エネルギーを回収し、前処理水を昇圧する。
【0042】
また、上述の動力回収装置にて昇圧される圧力は、ピストン部が圧力を受ける面積により一意的に決定される。濃縮海水が持つ圧力をPI、ピストン部の右側断面積をAI、前処理水が昇圧される圧力をPO、ピストン部の左側断面積をAO、シリンダにかかる力をFとすると、次の等式(1)と(2)が成立する。
【0043】
F = PI × AI …(1)
F = PO × AO …(2)
したがって、PI:Po = AO:AIである。例えば、濃縮海水が持つ圧力5.8MPaに対して、6MPaへ昇圧をする場合、シリンダ右側面積AIとシリンダ左側面積AOの比は6.0:5.8 = 30:29である。すなわち、動力回収装置の昇圧比は30:29になる。
【0044】
次に本発明を実施するために種々の好ましい実施の形態をそれぞれ説明する。
【0045】
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態の海水淡水化装置1は、主要なラインL1,L2,L3,L4に沿って上流側から順に直列に配列された、海水供給装置2、前処理装置3、高圧ポンプP1、逆浸透膜モジュール4、生産淡水槽6を備えている。この主要ラインと並列なラインL21,L31,L5,L6に動力回収装置5が設けられている。
【0046】
動力回収装置5は、逆浸透膜モジュール4からの濃縮海水(ブライン)をシリンダ51(又は53)内に導入してピストン部52(又は54)を押し、シリンダ51(又は53)から海水(前処理水)を押し出し、高圧ブラインから圧力エネルギーを回収し、圧力エネルギー回収後のブラインを最終的には濃縮海水槽7に排出するものである。
【0047】
図2と図3に示すように、動力回収装置5の高圧入口側は高圧ラインL5を介して逆浸透膜モジュール4の一次側スペースに接続され、動力回収装置5の高圧出口側は高圧ラインL31を介して高圧ラインL3(高圧ポンプP1から逆浸透膜モジュール4までの間のライン)に接続されている。また、動力回収装置5の低圧入口側は低圧分岐ラインL21を介して前処理装置3に連通する低圧ラインL2に接続され、動力回収装置5の低圧出口側は低圧ラインL6を介して濃縮海水槽7に接続されている。
【0048】
逆浸透膜モジュール4は、内部が逆浸透膜41により仕切られ、仕切られた上流側スペースに高圧ラインL3に接続された入口が連通し、下流側スペースに生産淡水ラインL4に接続された出口が連通している。
【0049】
第1の流量センサQ5が生産淡水ラインL4に設けられ、逆浸透膜モジュール4から生産淡水槽6へ送られる生産淡水の流量が検出されるようになっている。
【0050】
また、第2の流量センサQ1が動力回収装置5の高圧側入口ラインL5に取り付けられている。また、第3の流量センサQ2が動力回収装置5の低圧側出口ラインL6に取り付けられている。
【0051】
図1と図2を参照して本実施形態の作用を説明する。
【0052】
海水淡水化装置では、淡水を得るために逆浸透膜41へ海水中の塩分が持つ浸透圧以上の圧力で送水する。その際、生産淡水量は高圧ポンプP1の回転数に大きく依存する。したがって、生産淡水量を所望の流量にするためには、例えば、生産淡水量の計測値が目標値と一致するよう高圧ポンプP1の回転数をPID制御する方法が考えられる。
【0053】
また、逆浸透膜から送水される濃縮海水の目標水量は、予め設定した膜の目標回収率と生産淡水の目標水量とを用いて演算により求めることができ、求めた目標水量と濃縮海水量とが一致するように、高圧入口側弁V11(V1)または高圧出口側弁V12のいずれか一方の開度により制御する必要がある。
【0054】
目標とする濃縮海水流量Qhbsvは、設定された膜の目標回収率MRsvと高圧ポンプ制御の設定値である生産淡水の目標生産水量設定値Qpsvとを用いて下式(3)から求められる。
【0055】
Qhbsv = Qpsv×(100/MRsv−1) …(3)
但し、MRsv≠0である。
【0056】
また、動力回収装置の効率を上げるために、動力回収装置における高圧側入口流量と低圧側入口流量の差を所望の値にする必要がある。
【0057】
切替弁CV1,CV2とシリンダ/ピストン機構51,52,53,54を用いた動力回収装置の上下段ピストンのシリンダ位置のタイミングチャートとして、高圧側の流量が低圧側の流量より過剰な場合を図5の(a)に、両者の流量が適切な場合を図5の(b)に、低圧側の流量が高圧側の流量より過剰な場合を図5の(c)にそれぞれ示した。
【0058】
2つの切替弁CV1,CV2により上下段のシリンダ/ピストン機構51,52,53,54は圧力伝達もしくは排水のどちらかの機能を交互に担うため、上下段のピストン部52,54は同方向に動くことはない。高圧側、低圧側の流量が適切である場合、図5(b)に示すように、上段ピストン部52がシリンダ左端(右端)に到着するタイミングt1,t3(t2,t4)と下段ピストン部54がシリンダ右端(左端)に到着するタイミングt1,t3(t2,t4)とがぴったりと合致し、上下段のピストン部52,54は無駄なく圧力伝達と排水の役割を切り替えることができる。
【0059】
一方、高圧側の流量が過剰の場合、図5(a)に示すように、上段ピストン部52がシリンダ左端(右端)に到着するタイミングt1,t5(t4)と下段ピストン部54がシリンダ右端(左端)に到着するタイミングt2,t6(t3)との間にズレを生じ、圧力伝達のピストン移動が左端に留まる時間が生じて、圧力伝達の機能を果たしていない時間が生じることになる。
【0060】
また、低圧側の流量が過剰となる場合、図5(c)に示すように、上段ピストン部52がシリンダ左端(右端)に到着するタイミングt2,t6(t3)と下段ピストン部54がシリンダ右端(左端)に到着するタイミングt1,t5(t4)との間にズレを生じ、ピストン部52,54が右端に留まり濃縮海水の排水の機能を果たさない時間が生じ、その結果、高圧ポンプの入口流量が増加することになる。この場合、高圧ポンプの入り口流量はピストン部52,54が右端に留まる時間と移動中の時間に対応して脈動することになり、ポンプへダメージを与えることになる。
【0061】
したがって、動力回収装置の効率を上げるためには、膜の回収率に応じて変化する高圧入口側の流量に対応して低圧側の流量を制御する必要がある。
【0062】
(第2の実施形態)
次に図6と図4を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0063】
本実施形態の海水淡水化装置1Aは、第1の流量センサQ5、2つの第2の流量センサQ1,Q3、2つの第3の流量センサQ2,Q4、2つの送水流量制御弁V11,V21、2つの排水流量制御弁V12,V22および制御部8を備えている。
【0064】
第1の流量センサQ5は、生産淡水ラインL4に設けられ、逆浸透膜モジュール4から生産淡水槽6へ送られる生産淡水の流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。
【0065】
2つの第2の流量センサQ1,Q3は、動力回収装置5の高圧ラインL5,L31にそれぞれ設けられている。一方の第2の流量センサQ1は、動力回収装置5の高圧側入口ラインL5に取り付けられ、上段のシリンダ/ピストン機構51,52へ送られるブライン流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。また、他方の第2の流量センサQ3は、動力回収装置5の高圧側出口ラインL31に取り付けられ、下段のシリンダ/ピストン機構53,54から押し出される海水流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。
【0066】
2つの第3の流量センサQ2,Q4は、動力回収装置5の低圧ラインL21,L6にそれぞれ設けられている。一方の第3の流量センサQ2は、動力回収装置5の低圧側入口ラインL21に取り付けられ、下段のシリンダ/ピストン機構53,54へ送られる海水の流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。また、他方の第3の流量センサQ4は、動力回収装置5の低圧側出口ラインL6に取り付けられ、下段のシリンダ/ピストン機構53,54から押し出される海水の流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。
【0067】
2つの送水流量制御弁V11,V21は、動力回収装置5の入口側高圧ラインL5と入口側低圧ラインL21とにそれぞれ設けられている。一方の送水流量制御弁V11は、入口側高圧ラインL5に取り付けられている。他方の送水流量制御弁V21は、入口側低圧ラインL21に取り付けられている。これらの送水流量制御弁V11,V21は、制御部8によってオンオフ制御されるようになっている。
【0068】
2つの排水流量制御弁V12,V22は、動力回収装置5の出口側高圧ラインL31と出口側低圧ラインL6とにそれぞれ設けられている。一方の排水流量制御弁V12は、出口側高圧ラインL31に取り付けられている。他方の排水流量制御弁V22は、出口側低圧ラインL6に取り付けられている。排水流量制御弁V12,V22は、制御部8によってオンオフ制御されるようになっている。
【0069】
本実施形態の作用を説明する。
【0070】
第1〜第3の流量センサQ1〜Q5から制御部8に流量検出信号が入力されると、制御部8は、各ラインL4,L5,L6,L31,L21を流れる流体(ブラインまたは前処理海水)の流量および膜の回収率をそれぞれ算出し、算出した実測流量と目標流量とを比較するとともに、算出した実測回収率と目標回収率とを比較し、実測値と目標値との差分がゼロまたは所定の許容値以下となるように弁V11,V12,V21,V22の開度をそれぞれ制御する。
【0071】
これにより、入口側高圧ラインL5を流れるブライン流量、出口側高圧ラインL31を流れる海水流量、入口側低圧ラインL21を流れる海水流量、出口側低圧ラインL6を流れるブライン流量がそれぞれ制御され、上式(1)〜(3)に従って高圧ブラインから圧力エネルギーが回収される。
【0072】
(第3の実施形態)
次に図7を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0073】
動力回収装置の効率を上げるためには、高圧側の流量に応じて低圧側の流量を制御し、上下段のピストンのシリンダを同期させることが有効である。
【0074】
本実施形態の海水淡水化装置1Bでは、低圧側の流量を低圧入口側弁もしくは低圧側出口弁のいずれか一方にて制御する方法以外に、動力回収装置5A,5Bの2つシリンダを物理的に連結し、シリンダ内でのピストン往復移動の周期を同期させている。この場合、図7に示すように低圧側流量を調節する低圧入口側および低圧出口側に流量制御弁V21,V22を設置するだけでよく、高圧側流量を調節する高圧入口側および高圧出口側に流量制御弁を設置する必要がなくなる。
【0075】
本実施形態の作用を説明する。
【0076】
本実施形態の装置1Bでは、制御部8への信号の入出力は図8に示すようになる。すなわち、第1の流量センサQ5および2つの第3の流量センサQ2,Q4からの流量検出信号が入力すると、制御部8は、各ラインL4,L5,L6,L31,L21を流れる流体(ブラインまたは前処理海水)の流量および膜の回収率をそれぞれ算出し、算出した実測流量と目標流量とを比較するとともに、算出した実測回収率と目標回収率とを比較し、実測値と目標値との差分がゼロまたは所定の許容値以下となるように弁V21,V22の開度をそれぞれ制御する。
【0077】
これにより、入口側低圧ラインL21を流れる海水流量、出口側低圧ラインL6を流れるブライン流量がそれぞれ制御され、上式(1)〜(3)に従って高圧ブラインから圧力エネルギーが回収される。
【0078】
(第4の実施形態)
次に図9を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0079】
本実施形態の海水淡水化装置1Cでは、前処理水の水素イオン指数、電気伝導度、水温を計測する水素イオン指数計11、水温計12、電気伝導度計13と、海水淡水化装置が消費する消費電力量を計測する電力量計(図示せず)を備えている。これらの計測器11,12,13は、前処理装置3から高圧ポンプP1までの間の低圧ラインL2に取り付けられ、検出信号を制御部8にそれぞれ送るようになっている。
【0080】
本実施形態によれば、各種の計測器により前処理水の水質を計測できるので、前処理水の水質や生産淡水量といった運転条件に応じて、運転時の動力回収装置、ポンプの効率や逆浸透膜の特性は変化するため、単位生産水量あたりの消費電力量は変化する。その変化を例えば、テーブルや2次元グラフや3D(3次元)グラフなどで可視化することもできる。
【0081】
(第5の実施形態)
次に図10を参照して本発明の第5の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0082】
本実施形態の海水淡水化装置1Dは、プロセス条件の変更に応じて各種の運転条件を設定する運転条件設定部9をさらに備えている。運転条件設定部9は、前処理水の水質条件ごとに単位生産水量あたりの総電力量を最小とする運転機能を実現することができるものである。
【0083】
制御部8は、各種計測器11,12,13からの前処理海水の水質に関する計測情報に加えてさらに運転条件設定部9により設定される運転条件に基づき送水流量制御弁V11,V21および排水流量制御弁V12,V22をそれぞれ制御する。
【0084】
本実施形態によれば、前処理水の水質や生産淡水量といった運転条件に応じてさらに高効率に動力を回収することができる。
【0085】
(第6の実施形態)
次に図11および表1、表2を参照して第6の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0086】
ブースターポンプのない動力回収装置において、高圧入口側圧力PIと高圧出口側圧力POの比PI:POは動力回収装置によって一意に決定される。しかしながら、本実施形態の海水淡水化装置1Eでは、図11に示すように、異なる昇圧比PI:POの複数台の動力回収装置5a,5b,…,5nを並列ラインで接続することにより、動力回収装置群全体の昇圧比を変化させることが可能となる。一例として表1に示す各種の昇圧比を持つ3台の動力回収装置1〜3が設置された装置を考えることとする。
【表1】
【0087】
このように異なる昇圧比の動力回収装置群を有する海水淡水化装置1Eにおいて、1台の動力回収装置を未使用の状態にしておき2台の動力回収装置のみで運転することを想定してみると、表2に示すように動力回収装置群全体の昇圧比として3つの組み合わせを選択することが可能になり、動力回収装置の昇圧比を制御することができるようになる。このように前処理水の水質や生産淡水量といった運転条件に応じて、単位生産水量あたりの総電力量を最小とする運転機能を実現することもできる。
【表2】
【0088】
本発明によれば、ブースターポンプのような駆動源を用いることなく、高い回収率で回収した圧力を逆浸透膜モジュールの一次側に戻すことができ、電力消費量を大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0089】
1,1A,1B,1C,1D,1E…海水淡水化装置、
2…海水供給装置、3,31,32…前処理装置、
4…逆浸透膜モジュール、41…逆浸透膜、
5,5A,5B,5a〜5n…動力回収装置、
51,53…シリンダ、52,54…ピストン部、
6…生産淡水槽、7…濃縮海水槽、
8…制御部、9…運転条件設定部、
11…水素イオン指数計、12…温度計、13…電気伝導率計、
P1…高圧ポンプ、
L2,L21,L6…低圧ライン、L3,L31,L5…高圧ライン、
V1,V3,…,V2n-1,V11,V12…送水流量制御弁、
V2,V4,…,V2n,V21,V22…排水流量制御弁、
Q1,Q3…第2の流量センサ、
Q2,Q4…第3の流量センサ、
Q5…第1の流量センサ、
CV1,CV2…切替弁。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、本発明は、逆浸透膜を用いて海水を淡水化処理するプラントで利用されている動力回収装置の性能を引き出し、所望の運転状態に制御するための海水淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に水問題が深刻化するなかで、水ビジネスを巨大市場と捉えた世界規模でのビジネス競争が加速している。河川などの表流水や地下水を水源として持たない中東諸国や、国内でも渇水リスクの高い地域では、水源確保のために海水淡水化技術を導入し、大型の海水淡水化プラントを建設している。これまでの海水淡水化技術は、海水を加熱・蒸発後に凝縮・回収する蒸発法が主流であったが、近年は経済性の観点から例えば特許文献1や特許文献2に記載された逆浸透膜を用いた方式が拡大しつつある。
【0003】
逆浸透膜を利用する従来の海水淡水化装置は、高圧ポンプ、逆浸透膜、ブースターポンプ、低圧側出口弁などから構成されている。取水された海水は、水質に応じて適当な前処理が行われ、高圧ポンプおよび動力回収装置へ送水される。高圧ポンプは受水した前処理水を高圧な状態(例えば、6MPa)まで昇圧して逆浸透膜へ送水する。逆浸透膜は、前処理水に含まれる塩分を除去し淡水を生成する。除去した塩分は淡水化されなかった水とともに濃縮海水として動力回収装置へ送水される。このとき、濃縮海水は逆浸透膜入口圧力と同程度の圧力(例えば、5.8MPa)であるため、動力回収装置は、濃縮海水の持つ圧力(動力)を回収し、送水された前処理水へ伝達する。回収した動力により高圧(例えば、5.8MPa)となった前処理水はブースターポンプにより昇圧され、高圧ポンプにより送水された前処理水とともに、逆浸透膜へ送水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−279472号公報
【特許文献2】特開2009−154070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
逆浸透膜による海水淡水化プラントのランニングコスト(円/m3)のうち、電力費(動力費)は50%以上を占める。そのため、運用・制御で改善可能なランニングコストで競争力を持つには、特に動力費を削減することが重要である。近年では、高圧ポンプの動力を高効率で回収する動力回収装置を設置することが一般的となっている。動力用消費エネルギー(電力量)を大幅に改善できる動力回収装置の効率は、運転点により変動するため、より効率的な運転点を常に実現する動力回収制御が求められている。
【0006】
しかしながら、従来は運転条件が運転当初に決定した固定条件の運転であり、電力量を限界まで削減できないのと同時に、運転条件を変更するために必要なセンサや制御方法が備わっていないのが現状である。
【0007】
一般に、逆浸透膜へ入る前処理水流量Qbに対する生産淡水量Qaの比を百分率で表わした指数を膜の回収率(=(Qa/Qb)×100%)と呼ぶ。運転する膜の回収率によって、生産淡水、濃縮海水の流量が変わるため、それに応じて生産淡水量や濃縮海水から回収する動力エネルギー量も変化する。その変化に応じて、単位生産水量に対する電力消費量も変化する。図12に単位生産水量あたりの電力消費量と回収率の関係の一例を示す。図に示すとおり、ある一定の生産淡水量や前処理水水質では電力消費量を最小とする運転点が存在する。ただし、単位生産水量あたりの電力消費量を最小とする運転点は、前処理水の水質やポンプの吐出圧力、生産淡水量などの条件により変動する。このため、海水淡水化装置のプロセス条件が運転当初に決定された条件で不変である場合、電力消費量を限界まで削減することができなかった。
【0008】
本発明は上記事情を鑑みて成されたものであって、電力消費量を削減することができる海水淡水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る海水淡水化装置は、海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュールと、前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプと、前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ラインと、前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ラインと、内部が可動ピストンで仕切られたシリンダおよび前記シリンダに連通する流路を切り替える切替弁を有し、前記シリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインが連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインが連通し、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記一方側シリンダ内スペースに導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに送り出す動力回収装置と、前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される海水の流量を検出する第2の流量センサと、前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサと、前記動力回収装置の高圧入口側の前記高圧ラインおよび高圧出口側の前記高圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置へ送水される濃縮海水の量を調整する送水流量制御弁と、前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、を具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る海水淡水化装置は、海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュールと、前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプと、前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ラインと、前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ラインと、内部が可動ピストンでそれぞれ仕切られた第1及び第2のシリンダおよびこれらのシリンダに連通する流路をそれぞれ切り替える切替弁を有し、前記第1及び第2のシリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインがそれぞれ連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインがそれぞれ連通し、さらに前記第1のシリンダの内部スペースと前記第2のシリンダの内部スペースとが互いに連通しあっており、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記第1及び第2のシリンダの一方側シリンダ内スペースに同期して導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記第1及び第2のシリンダの他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに同期して送り出す動力回収装置と、前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサと、前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本明細書中の重要な用語を以下に定義する。
【0012】
「単位生産水量当たりの電力消費量」とは、逆浸透膜を透過して出てきた生産淡水の単位水量当たりに対して高圧ポンプの駆動に消費される消費電力の電力量をいう。
【0013】
「膜の回収率」とは、逆浸透膜に圧力を掛けて供給した海水の水量に対する逆浸透膜を透過して出てきた生産淡水の水量を百分率で表わした指数をいう。膜の回収率は、前処理水の水質やポンプの吐出圧力、生産淡水量などの条件により変動し、消費電力を最小にする最適の膜の回収率が存在する(図12中の変曲点)。この最適の膜の回収率は、プロセス条件が変わるとそれに応じて変動し、さらに逆浸透膜の経年劣化とともに変動する変数パラメータである。例えば、海水の水温が上昇すると、最適の膜の回収率は上昇する(図12中の変曲点が右方に移動する)。一方、電気伝導度(EC)が上昇すると、最適の膜の回収率は下降する(図12中の変曲点が左方に移動する)。
【0014】
このような変曲点(最適の膜の回収率)が存在するのは次の理由による。
【0015】
高圧ポンプの送水圧力を大きくして膜の回収率を増加させようとすると、濃縮海水(ブライン)の塩分濃度が上昇してそれに伴い浸透圧が大きくなるので、高圧ポンプから逆浸透膜に向けてより以上の圧力で濃縮海水を押し込む必要があり、それだけ逆浸透膜モジュールにおけるエネルギーロスが大きくなる。一方、エネルギーロスを減らすためにポンプ圧力を下げると、海水の供給量に比べて生産淡水量が少なくなり、その結果として膜の回収率が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る海水淡水化装置を示す構成ブロック図。
【図2】ブースターポンプ無しの動力回収装置の基本動作を説明するためのブロック図。
【図3】(a)〜(d)はブースターポンプ無しの動力回収装置の動作を各段階に分けて説明する断面ブロック図。
【図4】第1の実施形態の装置の動作を説明するための構成ブロック図。
【図5】(a)〜(c)は動力回収装置における上下段のシリンダ位置をそれぞれ示すタイミングチャート。
【図6】第2の実施形態の海水淡水化装置の制御ブロック図。
【図7】第3の実施形態の海水淡水化装置(シリンダが連結された動力回収装置を含む)を示す構成ブロック図。
【図8】図7の装置の制御ブロック図。
【図9】第4の実施形態の海水淡水化装置を示す構成ブロック図。
【図10】第5の実施形態の海水淡水化装置の制御ブロック図。
【図11】第6の実施形態の海水淡水化装置(並列配置された複数の動力回収装置を含む)の制御ブロック図。
【図12】膜の回収率と単位生産水量当たりの電力消費量との相関を示す特性線図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0018】
(1)本実施形態の海水淡水化装置は、海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜(41)を有する逆浸透膜モジュール(4)と、前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプ(P1)と、前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ライン(L3,L31,L5)と、前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ライン(L2,L21,L6)と、内部が可動ピストン(52,54)で仕切られたシリンダ(51,53)および前記シリンダに連通する流路を切り替える切替弁(CV1,CV2)を有し、前記シリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインが連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインが連通し、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記一方側シリンダ内スペースに導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに送り出す動力回収装置(5)と、前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサ(Q5)と、前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される海水の流量を検出する第2の流量センサ(Q1,Q3)と、前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサ(Q2,Q4)と、前記動力回収装置の高圧入口側の前記高圧ラインおよび高圧出口側の前記高圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置へ送水される濃縮海水の量を調整する送水流量制御弁(V1,V3,…V2n-1,V11,V12)と、前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁(V2,V4,…V2n,V21,V22)と、を具備することを特徴とする。
【0019】
本実施形態によれば、第1、第2、第3の流量センサで検出した流量検出情報を用いて高圧ラインの送水流量制御弁と低圧ラインの排水流量制御弁とで各ラインの流量を調整することにより、従来のブースターポンプの補助動力を用いることなく、逆浸透膜モジュールから高圧力で排出される濃縮海水から圧力エネルギーを効率良く回収することが可能になる。
【0020】
(2)上記(1)の装置において、生産淡水の目標水量と膜の目標回収率とをそれぞれ予め設定し、前記流量センサからの流量検出結果に応じて、生産淡水の水量が前記目標水量になるように前記高圧ポンプの駆動を制御するとともに、膜の回収率が前記目標回収率となるように前記送水流量制御弁のうちの少なくとも1つの弁開度を制御し、かつ排水流量制御弁のうちの少なくとも1つの弁開度を制御する制御部(8)を、さらに有することが好ましい。
【0021】
本実施形態では、第1、第2、第3の流量センサから制御部に流量検出信号が入ると、制御部は生産淡水量と膜の回収率をそれぞれ演算し、メモリから生産淡水の目標水量と膜の目標回収率を呼び出し、演算により求めた生産淡水の実績水量と目標水量とを比較するとともに、演算により求めた膜の実績回収率と目標回収率とを比較し、両差分がそれぞれゼロか又は許容値以下となるように高圧ポンプの駆動を制御し、かつ送水流量制御弁を制御し、かつ排水流量制御弁を制御し、これにより濃縮海水の圧力エネルギーを効率良く回収することができる。
【0022】
(3)本実施形態の海水淡水化装置は、海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜(41)を有する逆浸透膜モジュール(4)と、前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプ(P1)と、前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ライン(L3,L31,L5)と、前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ライン(L2,L21,L6)と、内部が可動ピストン(52,54)で仕切られたシリンダ(51,53)および前記シリンダに連通する流路を切り替える切替弁(CV1,CV2)を有し、前記第1及び第2のシリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインがそれぞれ連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインがそれぞれ連通し、さらに前記第1のシリンダの内部スペースと前記第2のシリンダの内部スペースとが互いに連通しあっており、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記第1及び第2のシリンダの一方側シリンダ内スペースに同期して導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記第1及び第2のシリンダの他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに同期して送り出す動力回収装置(5A,5B)と、前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサ(Q2,Q4)と、前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、を具備することを特徴とする。
【0023】
本実施形態によれば、第1、第3の流量センサで検出した流量検出情報を用いて排水流量制御弁により低圧ラインの流量を調整することにより、従来のブースターポンプの補助動力を用いることなく、逆浸透膜モジュールから高圧力で排出される濃縮海水から圧力エネルギーを効率良く回収することが可能になる。
【0024】
(4)上記(3)の装置において、前記制御部は、前記流量センサからの流量検出結果に基づいて、生産淡水の水量が前記目標水量となるように前記高圧ポンプの回転駆動を制御し、かつ膜の回収率が前記目標回収率となるように前記排水流量制御弁の少なくとも1つの弁開度を制御することが好ましい。
【0025】
本実施形態では、第1、第3の流量センサから制御部に流量検出信号が入ると、制御部は生産淡水量と膜の回収率をそれぞれ演算し、メモリから生産淡水の目標水量と膜の目標回収率を呼び出し、演算により求めた生産淡水の実績水量と目標水量とを比較するとともに、演算により求めた膜の実績回収率と目標回収率とを比較し、両差分がそれぞれゼロか又は許容値以下となるように高圧ポンプの駆動を制御し、かつ排水流量制御弁を制御し、これにより濃縮海水の圧力エネルギーを効率良く回収することができる。
【0026】
(5)上記(2)〜(4)のいずれか1の装置において、前記高圧ポンプよりも上流側において前処理された海水の温度を計測する水温計と、前記前処理海水の電気伝導率を計測する電気伝導度計と、前記前処理海水の水素イオン濃度を計測する水素イオン指数計と、海水淡水化装置全体で消費される電力消費量を計測する電力量計と、をさらに有することが好ましく、これにより前記制御部は、電力量計からの計測結果と前記水温計、電気伝導度計および水素イオン指数計のうちの少なくとも1つからの計測結果とに基づいて、前処理海水の水質や生産淡水量といった運転条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量を表示することができる。
【0027】
本実施形態によれば、水温計、電気伝導度計、水素イオン指数計および電力量計を用いて逆浸透膜プロセスに影響を及ぼす前処理海水の水質を計測し、それらの計測結果を用いて表示装置を備えた制御部が単位生産水量当たりの消費電力量を表示することができるので、オペレータは海水淡水化プロセスの進行状況をリアルタイムで知ることができ、何らかの異常が発生したときであってもそれに迅速に対応することができる。
【0028】
(6)上記(5)の装置において、電力量計からの計測結果と前記水温計、電気伝導度計および水素イオン指数計のうちの少なくとも1つからの計測結果とに基づいて、前処理海水の水質条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量が最小となる運転条件を演算し、その演算結果を前記制御部に送る運転条件設定部(9)をさらに有することが好ましい。
【0029】
本実施形態では、水温、電気伝導度、水素イオン指数などの水質に関する計測結果および電力消費量の計測結果が運転条件設定部に入力されると、運転条件設定部は、海水の水質条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量が最小となる運転条件を求め、それを制御部へ送り、制御部から各駆動機器に指令信号を出させ、濃縮海水の圧力エネルギーを回収させる。
【0030】
(7)上記(2)〜(4)のいずれか1の装置において、昇圧比の異なる複数台の動力回収装置(5a,5b,…5n)を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを変更することができる。
【0031】
本実施形態では、異なる昇圧比をもつ複数の動力回収装置を組み合わせることにより、プロセス条件の変化に応じて単位生産水量当たりの電力消費量が最小になるように運転することができる(表1)。
【0032】
(8)上記(5)の装置において、昇圧比の異なる複数台の動力回収装置(5a,5b,…5n)を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、水質センサにより測定される前処理水の水質条件に応じて前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを動的に変更することができる。
【0033】
本実施形態では、異なる昇圧比をもつ複数の動力回収装置を組み合わせ、その組み合わせを水質や生産淡水量の変化に応じてオンラインで動的に変更することにより、単位生産水量当たりの電力消費量が最小になる条件で運転することができる(表2)。
【0034】
(9)上記(7)の装置において、昇圧比の異なる複数台の動力回収装置(5a,5b,…5n)を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、水質センサにより測定される前処理水の水質条件と前記運転条件設定部により演算された膜の回収率に応じて前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを動的に変更することができる。
【0035】
本実施形態では、流量センサから制御部に流量検出信号が入ると、制御部は生産淡水量と膜の回収率をそれぞれ演算し、メモリから生産淡水の目標水量と膜の目標回収率を呼び出し、演算により求めた生産淡水の実績水量と目標水量とを比較するとともに、演算により求めた膜の実績回収率と目標回収率とを比較し、両差分がそれぞれゼロか又は許容値以下となるように高圧ポンプの駆動を制御し、かつ昇圧比の異なる動力回収装置(表1、表2)に連通する送水流量制御弁をそれぞれオンオフ制御し、かつ昇圧比の異なる動力回収装置に連通する排水流量制御弁をそれぞれオンオフ制御し、これにより濃縮海水の圧力エネルギーをさらに効率良く回収することができる。
【0036】
以下に種々の実施の形態を具体的に説明する。
【0037】
対象プロセスである海水淡水化プラントの動力回収システムは、高圧ポンプP1、逆浸透膜モジュール4、動力回収装置5などから構成される。海水供給装置2で取水された海水は、水質に応じて前処理装置3で適当な前処理が行われ、高圧ポンプP1および動力回収装置5へ送水される。高圧ポンプP1は受水した前処理水を高圧な状態(例えば、6MPa)まで昇圧して逆浸透膜モジュール4へ送水する。モジュール4内の逆浸透膜は、前処理水に含まれる塩分を分離し、淡水を透過させる。膜分離した塩分は淡水化されなかった水とともに濃縮海水(ブライン)として動力回収装置5へ送水される。このとき、濃縮海水は逆浸透膜入口圧力と同程度の圧力(例えば、5.8MPa)であるため、動力回収装置5では、濃縮海水の持つ圧力(動力)を回収し、送水された前処理水を逆浸透膜入口圧力(例えば、6MPa)まで昇圧する。回収した動力により高圧となった前処理水は、高圧ポンプにより送水された前処理水とともに、逆浸透膜へ送水される。圧力を失った濃縮海水は動力回収装置5から排水される。
【0038】
図2に動力回収装置の各入出力口の呼称を定義する。
【0039】
本実施形態のようにブースターポンプを持たない動力回収システムにおいても、膜の回収率に応じて、単位生産水量あたりの電力消費量は変化する。したがって、単位生産水あたりの電力消費量を限界まで抑えるためには、生産水量が一定の条件の下では逆浸透膜モジュール4から動力回収装置5へ流れる高圧入口側の濃縮海水量を変化させる必要がある。
【0040】
この動力回収装置5は図3の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)の動作を繰り返すことにより逆浸透膜モジュールから排出される濃縮海水の圧力エネルギー(動力)を回収するシリンダ/ピストン機構を有する。図3(a)の状態で動力の回収を行っているのは、上段のピストン部52である。高圧入口側から濃縮海水がシリンダ51の右側の部屋に流入し、高い圧力がピストン部52へ伝わる。ピストン部52へ伝わった圧力はシリンダ51の左側の部屋の前処理水を押し出し、逆浸透膜入口の圧力まで昇圧させる。図3(b)の状態を経て、上段のピストン部52が左端に到達するまでは、濃縮海水の圧力により、左側の部屋の前処理水は押し出され続ける。上段ピストン部52が左端へ到達した後は左右の切替弁CV1,CV2により、上段ピストン部52は排水の役割を担う。図3(c)と(d)に示すように、左側の部屋へ流入する前処理水により上段ピストン部52は右方向へ移動し、図3(a),(b)で動力を回収した濃縮海水をシリンダ51から右方向へ押し出し排水する。
【0041】
これまで、上段ピストンに注目してきたが、実際には上段のピストン部52が圧力伝達を行っている図3(a)と(b)の状態では下段のピストン部54が排水を行い、上段のピストン部52が排水を行っている図3(c)と(d)の状態では下段のピストン部54が圧力伝達を行い、切替弁CV1,CV2により交互にピストン部52,54の移動方向を切り替えている。このように、2つのシリンダ/ピストン機構の動作を切り替えながら、図3の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)の動作を繰り返し行い、濃縮海水の圧力エネルギーを回収し、前処理水を昇圧する。
【0042】
また、上述の動力回収装置にて昇圧される圧力は、ピストン部が圧力を受ける面積により一意的に決定される。濃縮海水が持つ圧力をPI、ピストン部の右側断面積をAI、前処理水が昇圧される圧力をPO、ピストン部の左側断面積をAO、シリンダにかかる力をFとすると、次の等式(1)と(2)が成立する。
【0043】
F = PI × AI …(1)
F = PO × AO …(2)
したがって、PI:Po = AO:AIである。例えば、濃縮海水が持つ圧力5.8MPaに対して、6MPaへ昇圧をする場合、シリンダ右側面積AIとシリンダ左側面積AOの比は6.0:5.8 = 30:29である。すなわち、動力回収装置の昇圧比は30:29になる。
【0044】
次に本発明を実施するために種々の好ましい実施の形態をそれぞれ説明する。
【0045】
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態の海水淡水化装置1は、主要なラインL1,L2,L3,L4に沿って上流側から順に直列に配列された、海水供給装置2、前処理装置3、高圧ポンプP1、逆浸透膜モジュール4、生産淡水槽6を備えている。この主要ラインと並列なラインL21,L31,L5,L6に動力回収装置5が設けられている。
【0046】
動力回収装置5は、逆浸透膜モジュール4からの濃縮海水(ブライン)をシリンダ51(又は53)内に導入してピストン部52(又は54)を押し、シリンダ51(又は53)から海水(前処理水)を押し出し、高圧ブラインから圧力エネルギーを回収し、圧力エネルギー回収後のブラインを最終的には濃縮海水槽7に排出するものである。
【0047】
図2と図3に示すように、動力回収装置5の高圧入口側は高圧ラインL5を介して逆浸透膜モジュール4の一次側スペースに接続され、動力回収装置5の高圧出口側は高圧ラインL31を介して高圧ラインL3(高圧ポンプP1から逆浸透膜モジュール4までの間のライン)に接続されている。また、動力回収装置5の低圧入口側は低圧分岐ラインL21を介して前処理装置3に連通する低圧ラインL2に接続され、動力回収装置5の低圧出口側は低圧ラインL6を介して濃縮海水槽7に接続されている。
【0048】
逆浸透膜モジュール4は、内部が逆浸透膜41により仕切られ、仕切られた上流側スペースに高圧ラインL3に接続された入口が連通し、下流側スペースに生産淡水ラインL4に接続された出口が連通している。
【0049】
第1の流量センサQ5が生産淡水ラインL4に設けられ、逆浸透膜モジュール4から生産淡水槽6へ送られる生産淡水の流量が検出されるようになっている。
【0050】
また、第2の流量センサQ1が動力回収装置5の高圧側入口ラインL5に取り付けられている。また、第3の流量センサQ2が動力回収装置5の低圧側出口ラインL6に取り付けられている。
【0051】
図1と図2を参照して本実施形態の作用を説明する。
【0052】
海水淡水化装置では、淡水を得るために逆浸透膜41へ海水中の塩分が持つ浸透圧以上の圧力で送水する。その際、生産淡水量は高圧ポンプP1の回転数に大きく依存する。したがって、生産淡水量を所望の流量にするためには、例えば、生産淡水量の計測値が目標値と一致するよう高圧ポンプP1の回転数をPID制御する方法が考えられる。
【0053】
また、逆浸透膜から送水される濃縮海水の目標水量は、予め設定した膜の目標回収率と生産淡水の目標水量とを用いて演算により求めることができ、求めた目標水量と濃縮海水量とが一致するように、高圧入口側弁V11(V1)または高圧出口側弁V12のいずれか一方の開度により制御する必要がある。
【0054】
目標とする濃縮海水流量Qhbsvは、設定された膜の目標回収率MRsvと高圧ポンプ制御の設定値である生産淡水の目標生産水量設定値Qpsvとを用いて下式(3)から求められる。
【0055】
Qhbsv = Qpsv×(100/MRsv−1) …(3)
但し、MRsv≠0である。
【0056】
また、動力回収装置の効率を上げるために、動力回収装置における高圧側入口流量と低圧側入口流量の差を所望の値にする必要がある。
【0057】
切替弁CV1,CV2とシリンダ/ピストン機構51,52,53,54を用いた動力回収装置の上下段ピストンのシリンダ位置のタイミングチャートとして、高圧側の流量が低圧側の流量より過剰な場合を図5の(a)に、両者の流量が適切な場合を図5の(b)に、低圧側の流量が高圧側の流量より過剰な場合を図5の(c)にそれぞれ示した。
【0058】
2つの切替弁CV1,CV2により上下段のシリンダ/ピストン機構51,52,53,54は圧力伝達もしくは排水のどちらかの機能を交互に担うため、上下段のピストン部52,54は同方向に動くことはない。高圧側、低圧側の流量が適切である場合、図5(b)に示すように、上段ピストン部52がシリンダ左端(右端)に到着するタイミングt1,t3(t2,t4)と下段ピストン部54がシリンダ右端(左端)に到着するタイミングt1,t3(t2,t4)とがぴったりと合致し、上下段のピストン部52,54は無駄なく圧力伝達と排水の役割を切り替えることができる。
【0059】
一方、高圧側の流量が過剰の場合、図5(a)に示すように、上段ピストン部52がシリンダ左端(右端)に到着するタイミングt1,t5(t4)と下段ピストン部54がシリンダ右端(左端)に到着するタイミングt2,t6(t3)との間にズレを生じ、圧力伝達のピストン移動が左端に留まる時間が生じて、圧力伝達の機能を果たしていない時間が生じることになる。
【0060】
また、低圧側の流量が過剰となる場合、図5(c)に示すように、上段ピストン部52がシリンダ左端(右端)に到着するタイミングt2,t6(t3)と下段ピストン部54がシリンダ右端(左端)に到着するタイミングt1,t5(t4)との間にズレを生じ、ピストン部52,54が右端に留まり濃縮海水の排水の機能を果たさない時間が生じ、その結果、高圧ポンプの入口流量が増加することになる。この場合、高圧ポンプの入り口流量はピストン部52,54が右端に留まる時間と移動中の時間に対応して脈動することになり、ポンプへダメージを与えることになる。
【0061】
したがって、動力回収装置の効率を上げるためには、膜の回収率に応じて変化する高圧入口側の流量に対応して低圧側の流量を制御する必要がある。
【0062】
(第2の実施形態)
次に図6と図4を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0063】
本実施形態の海水淡水化装置1Aは、第1の流量センサQ5、2つの第2の流量センサQ1,Q3、2つの第3の流量センサQ2,Q4、2つの送水流量制御弁V11,V21、2つの排水流量制御弁V12,V22および制御部8を備えている。
【0064】
第1の流量センサQ5は、生産淡水ラインL4に設けられ、逆浸透膜モジュール4から生産淡水槽6へ送られる生産淡水の流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。
【0065】
2つの第2の流量センサQ1,Q3は、動力回収装置5の高圧ラインL5,L31にそれぞれ設けられている。一方の第2の流量センサQ1は、動力回収装置5の高圧側入口ラインL5に取り付けられ、上段のシリンダ/ピストン機構51,52へ送られるブライン流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。また、他方の第2の流量センサQ3は、動力回収装置5の高圧側出口ラインL31に取り付けられ、下段のシリンダ/ピストン機構53,54から押し出される海水流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。
【0066】
2つの第3の流量センサQ2,Q4は、動力回収装置5の低圧ラインL21,L6にそれぞれ設けられている。一方の第3の流量センサQ2は、動力回収装置5の低圧側入口ラインL21に取り付けられ、下段のシリンダ/ピストン機構53,54へ送られる海水の流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。また、他方の第3の流量センサQ4は、動力回収装置5の低圧側出口ラインL6に取り付けられ、下段のシリンダ/ピストン機構53,54から押し出される海水の流量を検出し、その流量検出信号を制御部8に送るようになっている。
【0067】
2つの送水流量制御弁V11,V21は、動力回収装置5の入口側高圧ラインL5と入口側低圧ラインL21とにそれぞれ設けられている。一方の送水流量制御弁V11は、入口側高圧ラインL5に取り付けられている。他方の送水流量制御弁V21は、入口側低圧ラインL21に取り付けられている。これらの送水流量制御弁V11,V21は、制御部8によってオンオフ制御されるようになっている。
【0068】
2つの排水流量制御弁V12,V22は、動力回収装置5の出口側高圧ラインL31と出口側低圧ラインL6とにそれぞれ設けられている。一方の排水流量制御弁V12は、出口側高圧ラインL31に取り付けられている。他方の排水流量制御弁V22は、出口側低圧ラインL6に取り付けられている。排水流量制御弁V12,V22は、制御部8によってオンオフ制御されるようになっている。
【0069】
本実施形態の作用を説明する。
【0070】
第1〜第3の流量センサQ1〜Q5から制御部8に流量検出信号が入力されると、制御部8は、各ラインL4,L5,L6,L31,L21を流れる流体(ブラインまたは前処理海水)の流量および膜の回収率をそれぞれ算出し、算出した実測流量と目標流量とを比較するとともに、算出した実測回収率と目標回収率とを比較し、実測値と目標値との差分がゼロまたは所定の許容値以下となるように弁V11,V12,V21,V22の開度をそれぞれ制御する。
【0071】
これにより、入口側高圧ラインL5を流れるブライン流量、出口側高圧ラインL31を流れる海水流量、入口側低圧ラインL21を流れる海水流量、出口側低圧ラインL6を流れるブライン流量がそれぞれ制御され、上式(1)〜(3)に従って高圧ブラインから圧力エネルギーが回収される。
【0072】
(第3の実施形態)
次に図7を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0073】
動力回収装置の効率を上げるためには、高圧側の流量に応じて低圧側の流量を制御し、上下段のピストンのシリンダを同期させることが有効である。
【0074】
本実施形態の海水淡水化装置1Bでは、低圧側の流量を低圧入口側弁もしくは低圧側出口弁のいずれか一方にて制御する方法以外に、動力回収装置5A,5Bの2つシリンダを物理的に連結し、シリンダ内でのピストン往復移動の周期を同期させている。この場合、図7に示すように低圧側流量を調節する低圧入口側および低圧出口側に流量制御弁V21,V22を設置するだけでよく、高圧側流量を調節する高圧入口側および高圧出口側に流量制御弁を設置する必要がなくなる。
【0075】
本実施形態の作用を説明する。
【0076】
本実施形態の装置1Bでは、制御部8への信号の入出力は図8に示すようになる。すなわち、第1の流量センサQ5および2つの第3の流量センサQ2,Q4からの流量検出信号が入力すると、制御部8は、各ラインL4,L5,L6,L31,L21を流れる流体(ブラインまたは前処理海水)の流量および膜の回収率をそれぞれ算出し、算出した実測流量と目標流量とを比較するとともに、算出した実測回収率と目標回収率とを比較し、実測値と目標値との差分がゼロまたは所定の許容値以下となるように弁V21,V22の開度をそれぞれ制御する。
【0077】
これにより、入口側低圧ラインL21を流れる海水流量、出口側低圧ラインL6を流れるブライン流量がそれぞれ制御され、上式(1)〜(3)に従って高圧ブラインから圧力エネルギーが回収される。
【0078】
(第4の実施形態)
次に図9を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0079】
本実施形態の海水淡水化装置1Cでは、前処理水の水素イオン指数、電気伝導度、水温を計測する水素イオン指数計11、水温計12、電気伝導度計13と、海水淡水化装置が消費する消費電力量を計測する電力量計(図示せず)を備えている。これらの計測器11,12,13は、前処理装置3から高圧ポンプP1までの間の低圧ラインL2に取り付けられ、検出信号を制御部8にそれぞれ送るようになっている。
【0080】
本実施形態によれば、各種の計測器により前処理水の水質を計測できるので、前処理水の水質や生産淡水量といった運転条件に応じて、運転時の動力回収装置、ポンプの効率や逆浸透膜の特性は変化するため、単位生産水量あたりの消費電力量は変化する。その変化を例えば、テーブルや2次元グラフや3D(3次元)グラフなどで可視化することもできる。
【0081】
(第5の実施形態)
次に図10を参照して本発明の第5の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0082】
本実施形態の海水淡水化装置1Dは、プロセス条件の変更に応じて各種の運転条件を設定する運転条件設定部9をさらに備えている。運転条件設定部9は、前処理水の水質条件ごとに単位生産水量あたりの総電力量を最小とする運転機能を実現することができるものである。
【0083】
制御部8は、各種計測器11,12,13からの前処理海水の水質に関する計測情報に加えてさらに運転条件設定部9により設定される運転条件に基づき送水流量制御弁V11,V21および排水流量制御弁V12,V22をそれぞれ制御する。
【0084】
本実施形態によれば、前処理水の水質や生産淡水量といった運転条件に応じてさらに高効率に動力を回収することができる。
【0085】
(第6の実施形態)
次に図11および表1、表2を参照して第6の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0086】
ブースターポンプのない動力回収装置において、高圧入口側圧力PIと高圧出口側圧力POの比PI:POは動力回収装置によって一意に決定される。しかしながら、本実施形態の海水淡水化装置1Eでは、図11に示すように、異なる昇圧比PI:POの複数台の動力回収装置5a,5b,…,5nを並列ラインで接続することにより、動力回収装置群全体の昇圧比を変化させることが可能となる。一例として表1に示す各種の昇圧比を持つ3台の動力回収装置1〜3が設置された装置を考えることとする。
【表1】
【0087】
このように異なる昇圧比の動力回収装置群を有する海水淡水化装置1Eにおいて、1台の動力回収装置を未使用の状態にしておき2台の動力回収装置のみで運転することを想定してみると、表2に示すように動力回収装置群全体の昇圧比として3つの組み合わせを選択することが可能になり、動力回収装置の昇圧比を制御することができるようになる。このように前処理水の水質や生産淡水量といった運転条件に応じて、単位生産水量あたりの総電力量を最小とする運転機能を実現することもできる。
【表2】
【0088】
本発明によれば、ブースターポンプのような駆動源を用いることなく、高い回収率で回収した圧力を逆浸透膜モジュールの一次側に戻すことができ、電力消費量を大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0089】
1,1A,1B,1C,1D,1E…海水淡水化装置、
2…海水供給装置、3,31,32…前処理装置、
4…逆浸透膜モジュール、41…逆浸透膜、
5,5A,5B,5a〜5n…動力回収装置、
51,53…シリンダ、52,54…ピストン部、
6…生産淡水槽、7…濃縮海水槽、
8…制御部、9…運転条件設定部、
11…水素イオン指数計、12…温度計、13…電気伝導率計、
P1…高圧ポンプ、
L2,L21,L6…低圧ライン、L3,L31,L5…高圧ライン、
V1,V3,…,V2n-1,V11,V12…送水流量制御弁、
V2,V4,…,V2n,V21,V22…排水流量制御弁、
Q1,Q3…第2の流量センサ、
Q2,Q4…第3の流量センサ、
Q5…第1の流量センサ、
CV1,CV2…切替弁。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュールと、
前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ラインと、
前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ラインと、
内部が可動ピストンで仕切られたシリンダおよび前記シリンダに連通する流路を切り替える切替弁を有し、前記シリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインが連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインが連通し、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記一方側シリンダ内スペースに導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに送り出す動力回収装置と、
前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、
前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される海水の流量を検出する第2の流量センサと、
前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサと、
前記動力回収装置の高圧入口側の前記高圧ラインおよび高圧出口側の前記高圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置へ送水される濃縮海水の量を調整する送水流量制御弁と、
前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、
を具備することを特徴とする海水淡水化装置。
【請求項2】
生産淡水の目標水量と膜の目標回収率とをそれぞれ予め設定し、前記流量センサからの流量検出結果に応じて、生産淡水の水量が前記目標水量になるように前記高圧ポンプの駆動を制御するとともに、膜の回収率が前記目標回収率となるように前記送水流量制御弁のうちの少なくとも1つの弁開度を制御し、かつ排水流量制御弁のうちの少なくとも1つの弁開度を制御する制御部を、さらに有することを特徴とする請求項1記載の海水淡水化装置。
【請求項3】
海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュールと、
前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ラインと、
前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ラインと、
内部が可動ピストンでそれぞれ仕切られた第1及び第2のシリンダおよびこれらのシリンダに連通する流路をそれぞれ切り替える切替弁を有し、前記第1及び第2のシリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインがそれぞれ連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインがそれぞれ連通し、さらに前記第1のシリンダの内部スペースと前記第2のシリンダの内部スペースとが互いに連通しあっており、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記第1及び第2のシリンダの一方側シリンダ内スペースに同期して導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記第1及び第2のシリンダの他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに同期して送り出す動力回収装置と、
前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、
前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサと、
前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、
を具備することを特徴とする海水淡水化装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記流量センサからの流量検出結果に基づいて、生産淡水の水量が前記目標水量となるように前記高圧ポンプの回転駆動を制御し、かつ膜の回収率が前記目標回収率となるように前記排水流量制御弁の少なくとも1つの弁開度を制御することを特徴とする請求項3記載の海水淡水化装置の制御方法。
【請求項5】
前記高圧ポンプよりも上流側において前処理された海水の温度を計測する水温計と、前記前処理海水の電気伝導率を計測する電気伝導度計と、前記前処理海水の水素イオン濃度を計測する水素イオン指数計と、海水淡水化装置全体で消費される電力消費量を計測する電力量計と、をさらに有し、
前記制御部は、電力量計からの計測結果と前記水温計、電気伝導度計および水素イオン指数計のうちの少なくとも1つからの計測結果とに基づいて、前処理海水の水質や生産淡水量といった運転条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量を表示することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の海水淡水化装置。
【請求項6】
電力量計からの計測結果と前記水温計、電気伝導度計および水素イオン指数計のうちの少なくとも1つからの計測結果とに基づいて、前処理海水の水質条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量が最小となる運転条件を演算し、その演算結果を前記制御部に送る運転条件設定部をさらに有することを特徴とする請求項5記載の海水淡水化装置。
【請求項7】
昇圧比の異なる複数台の動力回収装置を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを変更することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の海水淡水化装置。
【請求項8】
昇圧比の異なる複数台の動力回収装置を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、水質センサにより測定される前処理水の水質条件に応じて前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを動的に変更することを特徴とする請求項5記載の海水淡水化装置。
【請求項9】
昇圧比の異なる複数台の動力回収装置を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、水質センサにより測定される前処理水の水質条件と前記運転条件設定部により演算された膜の回収率に応じて前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを動的に変更することを特徴とする請求項7記載の海水淡水化装置。
【請求項1】
海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュールと、
前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ラインと、
前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ラインと、
内部が可動ピストンで仕切られたシリンダおよび前記シリンダに連通する流路を切り替える切替弁を有し、前記シリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインが連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインが連通し、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記一方側シリンダ内スペースに導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに送り出す動力回収装置と、
前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、
前記逆浸透膜を透過しない濃縮海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される海水の流量を検出する第2の流量センサと、
前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサと、
前記動力回収装置の高圧入口側の前記高圧ラインおよび高圧出口側の前記高圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置へ送水される濃縮海水の量を調整する送水流量制御弁と、
前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、
を具備することを特徴とする海水淡水化装置。
【請求項2】
生産淡水の目標水量と膜の目標回収率とをそれぞれ予め設定し、前記流量センサからの流量検出結果に応じて、生産淡水の水量が前記目標水量になるように前記高圧ポンプの駆動を制御するとともに、膜の回収率が前記目標回収率となるように前記送水流量制御弁のうちの少なくとも1つの弁開度を制御し、かつ排水流量制御弁のうちの少なくとも1つの弁開度を制御する制御部を、さらに有することを特徴とする請求項1記載の海水淡水化装置。
【請求項3】
海水を淡水と濃縮海水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透膜モジュールと、
前記逆浸透膜に海水を高圧力で供給する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプより下流側において前記逆浸透膜モジュールから排水される高圧力の濃縮海水が通流する高圧ラインと、
前記高圧ポンプより上流側において低圧力の海水が通流する低圧ラインと、
内部が可動ピストンでそれぞれ仕切られた第1及び第2のシリンダおよびこれらのシリンダに連通する流路をそれぞれ切り替える切替弁を有し、前記第1及び第2のシリンダ内部の仕切られた一方側のシリンダ内スペースに前記高圧ラインがそれぞれ連通し、他方側のシリンダ内スペースに前記低圧ラインがそれぞれ連通し、さらに前記第1のシリンダの内部スペースと前記第2のシリンダの内部スペースとが互いに連通しあっており、前記高圧ラインから前記濃縮海水を前記第1及び第2のシリンダの一方側シリンダ内スペースに同期して導入し、導入した濃縮海水の圧力で前記ピストンを押して前記第1及び第2のシリンダの他方側シリンダ内スペースから前記海水を前記低圧ラインに同期して送り出す動力回収装置と、
前記逆浸透膜を透過した淡水の流量を検出する第1の流量センサと、
前記動力回収装置に供給される海水の流量を検出するか、または、前記動力回収装置から送り出される濃縮海水の流量を検出する第3の流量センサと、
前記動力回収装置の低圧入口側の前記低圧ラインおよび低圧出口側の前記低圧ラインのうち少なくとも一方に設けられ、前記流量センサで検出した流量に基づいて前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水流量制御弁と、
を具備することを特徴とする海水淡水化装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記流量センサからの流量検出結果に基づいて、生産淡水の水量が前記目標水量となるように前記高圧ポンプの回転駆動を制御し、かつ膜の回収率が前記目標回収率となるように前記排水流量制御弁の少なくとも1つの弁開度を制御することを特徴とする請求項3記載の海水淡水化装置の制御方法。
【請求項5】
前記高圧ポンプよりも上流側において前処理された海水の温度を計測する水温計と、前記前処理海水の電気伝導率を計測する電気伝導度計と、前記前処理海水の水素イオン濃度を計測する水素イオン指数計と、海水淡水化装置全体で消費される電力消費量を計測する電力量計と、をさらに有し、
前記制御部は、電力量計からの計測結果と前記水温計、電気伝導度計および水素イオン指数計のうちの少なくとも1つからの計測結果とに基づいて、前処理海水の水質や生産淡水量といった運転条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量を表示することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の海水淡水化装置。
【請求項6】
電力量計からの計測結果と前記水温計、電気伝導度計および水素イオン指数計のうちの少なくとも1つからの計測結果とに基づいて、前処理海水の水質条件ごとに単位生産水量当たりの消費電力量が最小となる運転条件を演算し、その演算結果を前記制御部に送る運転条件設定部をさらに有することを特徴とする請求項5記載の海水淡水化装置。
【請求項7】
昇圧比の異なる複数台の動力回収装置を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを変更することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の海水淡水化装置。
【請求項8】
昇圧比の異なる複数台の動力回収装置を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、水質センサにより測定される前処理水の水質条件に応じて前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを動的に変更することを特徴とする請求項5記載の海水淡水化装置。
【請求項9】
昇圧比の異なる複数台の動力回収装置を有し、前記制御部は、単位生産水量当たりの電力消費量を最小とするために、水質センサにより測定される前処理水の水質条件と前記運転条件設定部により演算された膜の回収率に応じて前記複数台の動力回収装置のうちから使用する動力回収装置の組み合わせを動的に変更することを特徴とする請求項7記載の海水淡水化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−192324(P2012−192324A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57241(P2011−57241)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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