説明

海産物用の収納容器とそれを用いた海産物の保存方法

【課題】海産物の鮮度を保つのに適した収納容器と、これを用いた、特に輸送や配送を含む流通段階での海産物の保存方法を提供すること。
【解決手段】上面が開口したほぼ直方体形状の箱体5と、上面の開口部を覆う蓋体2と、該蓋体2とほぼ相似形状で前記箱体5の内部に配置された棚板3とからなる海産物用の収納容器1であって、該棚板3は多数の透過孔を有しており、かつ、前記箱体の側壁の高さ(深さ)の半分よりも底面側に設けられた支持部6によって支持され、前記箱体5の内部空間に着脱自在に配置できるようになっている収納容器1、及び、かかる収納容器1と塩分を含む氷を用いた海産物の保存方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海産物の鮮度保持に適した収納容器と、それを用いた、特に輸送や配送を含む流通段階での海産物の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海産物の鮮度保持のための保存方法としては、漁獲した海産物を木箱や発泡スチロール等の箱に入れそのまま冷凍保存する方法、海産物と氷を共存させる方法等の保存方法が用いられている。しかし、海産物と氷を直接接触した状態で共存させる方法では、氷が融解した水に、例えば、魚介類の旨み成分が溶出するとともに、魚介類に水が吸われ、見た目の鮮度はある程度保持されているものの、魚介類本来の味を保持することができないという問題があった。また、淡水氷を使用した氷冷や海水と氷との混合による保存では、魚介類の場合、生鮮度の維持期間が3〜4日が限度であるという問題もある。
【0003】
上記のような問題を解決するための方法の一つとして、海水以下の塩分濃度の食塩水からなる氷を用いることにより、魚が持つ浸透圧との差を少なくすると共に、氷の溶解温度を魚の氷温温度に近づけることで、魚の味を損なうこと無く鮮度保持を行う方法も提案されている(例えば、特許文献1と特許文献2参照)。しかしながら、例えば、長距離での輸送に際しては、氷から溶け出した水のために、魚介類の鮮度が落ちるという問題を必ずしも十分に解決することができない。
【0004】
海産物の輸送・配送等の流通段階での鮮度を保持するために、海産物を収納した容器ごと、冷却装置が装備された輸送車を利用することも行われているが、かかる輸送車の利用は当然高コストになるだけでなく、環境負荷も増え、昨今の地球環境の温暖化対策にも逆行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−354454号公報
【特許文献2】特開2002−115945号公報
【特許文献3】特開平9−229525号公報
【特許文献4】特開2004−150742号公報
【特許文献5】特開2006−3038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、海産物の収納容器に工夫を凝らし、これを用いた、特に輸送や配送を含む流通段階での海産物の鮮度の保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された下記の本発明によって達成される。
【0008】
本発明のうち請求項1に記載された発明は、上面が開口したほぼ直方体形状の箱体と、上面の開口部を覆う蓋体と、該蓋体とほぼ相似形状で前記箱体の内部に配置された棚板とからなる海産物用の収納容器であって、該棚板は多数の透過孔を有しており、かつ、前記箱体の側壁の高さ(深さ)の半分よりも底面側に設けられた支持部によって支持され、前記箱体の内部空間に着脱自在に配置できるようになっていることを特徴とする海産物用の収納容器である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、棚板を支持するための支持部が、箱体の側壁に設けられていることを特徴とする請求項1記載の海産物用の収納容器である。
【0010】
請求項3に記載された発明は、棚板を支持するための支持部が、棚板の裏面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の海産物用の収納容器である。
【0011】
請求項4に記載された発明は、蓋体に多数の通気孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の海産物用の収納容器である。
【0012】
請求項5に記載された発明は、側壁の高さ(深さ)の半分よりも上面側において、箱体の側壁に、多数の通気孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の海産物用の収納容器である。
【0013】
請求項6に記載された発明は、上面が開口したほぼ直方体形状の箱体と、上面の開口部を覆う蓋体と、該蓋体とほぼ相似形状で前記箱体の内部に配置された棚板とからなる収納容器であって、該棚板は多数の透過孔を有しており、かつ、前記箱体の側壁の高さ(深さ)の半分よりも底面側に設けられた支持部によって支持され、前記箱体の内部空間に配置されている収納容器を用い、該収納容器の前記棚板の上に海産物と氷を載置することを特徴とする海産物の保存方法である。
【0014】
そして、請求項7に記載された発明は、収納容器の棚板の上に海産物と塩分を含む氷を載置することを特徴とする請求項6記載の海産物の保存方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の海産物用の収納容器を用いると、長時間の保存のために保存用の氷が溶け出しても、生成した水は棚板の透過孔から棚板の下部空間に落下し海産物と直接接触することが少ないので、海産物の鮮度等が長時間保持される。また、氷として塩分を含む氷を用いることで、淡水の氷の場合よりも氷解時間が長くなるだけでなく、海産物の冷却温度もより低くすることができる。また、氷とそれが溶解した水にも塩分が含まれているので、一般的な雑菌の繁殖が抑えられるという特徴もある。そして、本発明によると、これらの技術の組み合わせにより、特に輸送や配送を含む流通段階での、海産物の効果的かつ低コストでの保存と輸送手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の海産物用の収納容器の垂直方向断面の概略図である。
【図2】図2は、本発明の海産物用の収納容器の水平方向断面の概略図で、棚板の形態を説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の海産物用の収納容器の側面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を説明する。図1は、本発明の海産物用の収納容器の垂直方向断面の概略図であり、1は収納容器、2は蓋体、3は棚板、4は棚板の下部空間、5は側壁、6は支持部を表す。収納容器は、上面が開口したほぼ直方体形状、即ち、直方体あるいはそれに類似した形状の箱体と、開口部を覆うための蓋体とからなる。蓋体2は開口部を覆う機能を有すればよく、それ以外の形状等は特に制限されるものではない。収納容器1の材質は、特に制限されるものではないが、木、発泡ポリスチレン、その他のプラスチックが適当である。
【0018】
棚板3は、蓋体2とほぼ相似形状で箱体の内部に配置されるようになっている。棚板3は、箱体の側壁の高さ(深さ)の半分よりも底面側に設けられた支持部6によって支持され、箱体の内部空間に着脱自在に配置できるようになっている。そのため、支持部6は箱体の側壁に突起状に取り付けられたものであっても、あるいは、棚板の裏面に足状に取り付けられたものでもよい。いずれの場合でも、支持部は、箱体あるいは棚板を成型加工する際に一体的に取り付けるのが好ましい。
【0019】
図2は、本発明の海産物用の収納容器の水平方向断面の概略図で、棚板の形態を説明するための図である。図2に示したように、棚板3は、多数の透過孔を有している。また、棚板3は、箱体の側壁の高さ(深さ)の半分よりも底面側に設けられた支持部6によって支持されているので、棚板3の下の部分は下部空間(図1の4参照)になっている。従って、棚板の多数の透過孔は下部空間に連通している。本発明においては、収納容器の棚板3の上に海産物と氷が載置され保存されるので、保存中に氷が溶解し生成した水は、棚板3の透過孔から棚板の下部空間(図1の4)に落下し、そこに貯留する。透過孔の数と形状は特に制限されるものではなく、例えば、発泡ポリスチレン等のプラスチックの板に任意の形状の多数の透過孔を設けたものであってもよく、あるいは金網状のものであってもよい。載置・保存される海産物の種類によって適当に決めることできる。
【0020】
棚板3は、箱体の内部空間に着脱自在に配置できるようになっているので、前記下部空間に溜まった水は、棚板3を取り外して箱体を傾けるなどして排水することができる。あるいは、箱体の底面や側面の底部に、水抜き用の止水栓付の孔を設けておいてもよい。
【0021】
図3は、本発明の海産物用の収納容器の側面の概略図であり、5は側壁を表す。7は、側壁の高さ(深さ)の半分よりも上面側において、箱体の側壁に設けられた通気孔を表す。また、通気孔は蓋体に設けられていてもよい。このような通気孔の数と形状は特に制限されるものではない。
【0022】
本発明の他の態様は、上記の収納容器を用いることを特徴とする、海産物の運送・配送を含む流通段階での保存方法である。海産物は、通常、粉砕された氷と共に前記収納容器の棚板の上に載置して保存される。本発明の方法において特に好ましいのは、氷として塩分を含む氷(シャーベット状のものも含む)を用いる態様である。
【0023】
本発明における塩分を含む氷は、海水から製氷したものであっても、人工的に作った食塩水から製氷したものであってもよい。製氷の方法・手段は何ら制限されるものではなく、例えば、従来の製氷方法、即ち、原水として海水又は塩分濃度を調整した海水、あるいは人工の塩水を用い、過冷却製氷方式、製氷板に流下させるプレート、フレーク式製氷方式で製氷することができる。あるいは、その他の改良方法を採用して製氷してもよい(例えば、特許文献2〜5参照)。塩分濃度は、海水の塩分濃度以下が好ましく、特に0.5〜2.5%が好ましい。
【符号の説明】
【0024】
1 収納容器
2 蓋体
3 棚板
4 棚板の下部空間
5 側壁
6 支持部
7 通気孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口したほぼ直方体形状の箱体と、上面の開口部を覆う蓋体と、該蓋体とほぼ相似形状で前記箱体の内部に配置された棚板とからなる海産物用の収納容器であって、該棚板は多数の透過孔を有しており、かつ、前記箱体の側壁の高さ(深さ)の半分よりも底面側に設けられた支持部によって支持され、前記箱体の内部空間に着脱自在に配置できるようになっていることを特徴とする海産物用の収納容器。
【請求項2】
棚板を支持するための支持部が、箱体の側壁に設けられていることを特徴とする請求項1記載の海産物用の収納容器。
【請求項3】
棚板を支持するための支持部が、棚板の裏面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の海産物用の収納容器。
【請求項4】
蓋体に多数の通気孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の海産物用の収納容器。
【請求項5】
側壁の高さ(深さ)の半分よりも上面側において、箱体の側壁に、多数の通気孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の海産物用の収納容器。
【請求項6】
上面が開口したほぼ直方体形状の箱体と、上面の開口部を覆う蓋体と、該蓋体とほぼ相似形状で前記箱体の内部に配置された棚板とからなる収納容器であって、該棚板は多数の透過孔を有しており、かつ、前記箱体の側壁の高さ(深さ)の半分よりも底面側に設けられた支持部によって支持され、前記箱体の内部空間に配置されている収納容器を用い、該収納容器の前記棚板の上に海産物と氷を載置することを特徴とする海産物の保存方法。
【請求項7】
収納容器の棚板の上に海産物と塩分を含む氷を載置することを特徴とする請求項6記載の海産物の保存方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−179929(P2010−179929A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23706(P2009−23706)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(505438719)
【Fターム(参考)】