説明

浸出水処理装置および浸出水処理方法

【課題】活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって再利用可能な塩を生成することのできる浸出水の処理方法を提供する。
【解決手段】塩類および着色有機成分のうちの少なくとも一方を含む浸出水を濃縮処理する濃縮処理装置と、前記濃縮処理により得られた濃縮液を電気化学的に酸化処理する電気化学処理装置と、で浸出水処理装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩類および着色有機成分を含む浸出水を処理するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴミ焼却場や工場から排出される各種産業廃棄物は、焼却場の焼却炉などで焼却され、当該焼却炉から排出される多量の灰は埋立地(処分場)に埋め立てられる。この埋立地から降雨などの原因で流出する浸出水には多くの塩分や有機物が含まれており、そのまま河川などに放流することはできないため、環境汚染を防止するために種々の処理方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、図6に示すような装置を用いた浸出水の処理方法が提案されている。ここでは、産業廃棄物の焼却炉から排出された灰の埋立地(処分場)101から流出する浸出水が、調整槽102を経てCaおよび遷移元素除去装置103に送られ、浸出水中のMnおよびFeなどの遷移元素とCaが除去される。ついで、浸出水は酸化分解装置104から逆浸透膜を使用した濃縮装置5に送られて濃縮され、透過水は経路7を経て河川などに放流され、濃縮液は酸化分解装置104に送られる。
【0004】
そして、酸化分解装置104においては、NaClO、O3およびH22などの酸化剤(活性酸素種)とともに酸化ニッケル系の酸化触媒を用いて濃縮液中の有機物が酸化分解される。その後、酸化分解処理後の濃縮液は、真空乾燥装置8において低温(40〜60℃)かつ真空状態下で乾燥され、副生塩109を生成する。
【0005】
また、例えば特許文献2においては、塩類および難分解性化合物を含む排水の処理方法として、図7に示すような装置を用いた処理方法が提案されている。塩類および難分解性化合物を含有する排水が前処理手段201において前処理され、前処理手段201で前処理された排水は逆浸透装置202において逆浸透膜処理されて透過液と濃縮液とに分離される。
【0006】
そして、逆浸透装置202で濃縮された濃縮液中の難分解性化合物は、吸着酸化分解装置203において、例えば活性炭などの多孔体に担持した遷移金属または遷移金属化合物などの酸化剤分解触媒(活性化学種)により吸着酸化分解処理され、その後脱塩処理装置204において脱塩処理される。
【特許文献1】特開平11−300166号公報
【特許文献2】特開2003−10867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および2において提案されている装置では、NaClO、O3およびH22などの酸化剤(活性酸素種)ならびに活性炭などの多孔体に担持した遷移金属または遷移金属化合物などの酸化剤分解触媒(活性化学種)を発生させるための装置や、貯留させるための装置、さらにはこれらを酸化分解装置に供給するための装置が必要となり、設備全体が複雑化するという問題がある。また、浸出水中の金属やリンなどの無機成分が触媒に付着して触媒機能(酸化能力)が低下したり無くなってしまったりするおそれがあり、その結果、高価な触媒の交換が必要になって、設備の維持管理費用がかかるという問題もあった。
【0008】
さらには、上記特許文献1および2における処理方法によって回収される塩は、例えば凍結防止塩として再利用することも考えられるが、着色されていることからそのまま再利用することは困難であり、処理液(処理後の浸出水)も着色していることが多くそのまま河川などに放流することが環境上好ましくないという問題もある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上述のような活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって再利用可能な塩や色度の低い処理液(処理後の浸出水)を生成することのできる浸出水の処理方法および処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、塩類および着色有機成分のうちの少なくとも一方を含む浸出水を濃縮処理する濃縮処理装置と、前記濃縮処理により得られた濃縮液を電気化学的に酸化処理する電気化学処理装置と、を具備することを特徴とする浸出水処理装置を提供する。
本発明の浸出水処理装置において、前記濃縮処理装置が逆浸透膜により前記浸出水を濃縮処理する構成を有しているのが好ましい。
また、前記濃縮処理により得られた濃縮液および前記酸化処理により得られた酸化処理液のうちの少なくとも一方、を固液分離する固液分離装置を具備するのが好ましい。
【0011】
さらに本発明の浸出水処理装置は、前記酸化処理により得られた酸化処理液、または、前記固液分離処理により得られた分離液から、水分を蒸発させて塩を得る乾燥装置を具備するのが好ましい。
また、前記酸化処理により得られた酸化処理液、または、前記固液分離処理により得られた分離液を、キレート樹脂により吸着処理するキレート樹脂吸着装置を具備するのが好ましい。
【0012】
ここで、本発明において「浸出水」とは、ゴミ焼却場や工場から排出される各種産業廃棄物が焼却場の焼却炉などで焼却された後、当該焼却炉から排出される多量の灰が埋め立てられた埋立地(処分場)から流出する浸出水をいい、特に塩類および着色有機成分を含むものをいう。
また、「浸出水」に含まれる「塩類」とは、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどの塩すべてを含む。さらに、「着色有機成分」とは、例えばCOD成分(化学的酸素要求量として検出される成分)、フミン酸(質)などを含む概念である。
【0013】
また、本発明においては、上記浸出水または濃縮処理により得られた濃縮液を電気化学的によって酸化処理する前に、固液分離処理してもよい。浸出水に懸濁物質(固形物)が含まれる場合が多く、電気化学処理装置に供給する前に、予め懸濁物質を除去することにより、電極への懸濁物質の付着を防止することができ、メンテナンスの手間やコストを低減できる。
さらに、電気化学的によって酸化処理する前に予めそのpHを酸性に調整するとともに、固液分離処理しておいてもよい。浸出水に一般的に含まれている有機物のうち、フミン酸はアルカリ性の溶媒に溶解し、酸性の溶媒中では凝集する性質を有する。このため、予め浸出水または濃縮液のpHを予め酸性に調整し、かつ、フィルターなどでフミン酸を除去しておいてもよい。このように予め浸出水または濃縮液のpHを予め調整し、かつ、フィルターなどでフミン酸を除去しておけば、電気化学処理装置にかかる負荷を低減させることができる。また、予めpHを調整しておけば、予めpHを調整しない場合に比べて、フィルターの孔径を大きくすることができる。
なお、本発明における「濃縮」とは、逆浸透膜法、蒸発法を用いた一般的な濃縮に加えて、広く浸出水の塩濃度を高める操作をも含む概念である。
【0014】
上記のような構成によれば、浸出水を濃縮して得られる濃縮液中の塩類および着色有機成分を電気化学的に酸化処理することができ、最終的に無色の塩を回収することができる。例えば、着色有機成分を分解することができるとともに、浸出水に鉄分が含まれる場合、鉄分を固液分離により除去することが可能となり、効果的に塩および処理液(処理後の浸出水)の脱色を実現することができる。また、一般的に塩の回収時には蒸発濃縮を行うことが必要であるが、この際にNH4+が混入しているとアンモニアガスが発生するおそれがあり、アンモニアの処理が別途必要となる。これに対し、本発明によれば、上記の電気化学的な酸化処理によってNH4+が分解するため、このような問題がないという効果がある。
【0015】
さらに、本発明は、塩類および着色有機成分のうちの少なくとも一方を含む浸出水を濃縮処理する濃縮処理工程(A)と、前記濃縮処理により得られた濃縮液を電気化学的に酸化処理する酸化処理工程(B)と、を具備することを特徴とする浸出水処理方法を提供する。
前記濃縮処理工程(A)においては、逆浸透膜により前記浸出水を濃縮処理することが好ましい。
本発明の浸出水処理方法は、前記濃縮処理工程(A)において前記濃縮処理により得られた濃縮液および前記酸化処理工程(B)における前記酸化処理により得られた酸化処理液のうちの少なくとも一方、を固液分離する固液分離工程(C)をさらに具備するのが好ましい。
【0016】
また、前記酸化処理工程(B)により得られた酸化処理液、または、前記固液分離工程(C)により得られた分離液から、水分を蒸発させて塩を得る乾燥処理工程をさらに具備するのが好ましい。
さらに、前記酸化処理工程(B)により得られた酸化処理液、または、前記固液分離工程(C)の後に、キレート樹脂により吸着処理する工程を具備するのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって、色度が低く再利用可能な塩や色度の低い処理液(処理後の浸出水)を生成することのできる浸出水の処理方法および処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
[第一の実施形態]
図1は、本発明の浸出水処理装置の第一の実施形態の構成を示す図である。図1に示すように、本発明の浸出水処理装置10においては、埋立地1からの浸出水を濃縮処理するための濃縮処理装置2と、濃縮処理装置2からの濃縮液を電気化学的に酸化処理するための電気化学処理装置3と、電気化学処理装置3で酸化処理した後の酸化処理液を乾燥処理するための乾燥装置4を具備している。なお、図示しないが、埋立地1からの浸出水を濃縮処理するための濃縮処理装置2の間に、浸出水中の懸濁物質を除去する砂濾過槽や、カートリッジフィルターなどの除濁装置が設けられている。
【0019】
そして、上記の本発明の浸出水処理装置10を用いた本発明の浸出水処理方法においては、埋立地1から降雨などの原因で流出し、塩類および着色有機成分のうちの少なくとも一方を含む浸出水を、例えば逆浸透膜を利用した濃縮処理装置2に送って濃縮し(工程(A))、透過水は処理水として例えば河川などに放流するとともに、濃縮液を電気化学処理装置3に送って電気化学的に酸化処理する(工程(B))。ついで、酸化処理後の処理液を乾燥し、塩(副生塩)を得る。
【0020】
埋立地1は、一般廃棄物や産業廃棄物などの焼却炉から排出された灰の埋立地(処分場)であり、降雨などの原因で塩類および着色有機成分のうちの少なくとも一方を含む浸出水を発生させる場所を含むものである。
【0021】
濃縮処理装置2および濃縮処理装置2に含まれる逆浸透膜としては、従来公知のものを使用することができる。逆浸透膜としては、有機系膜でも無機系膜でも用いることができ、また、例えば相分離法などにより非対称構造が同一素材で形成された非対称膜と、多孔性支持体上に選択分離性を有する薄膜を異なる素材で形成してなる複合半透膜などが挙げられる。
【0022】
特に後者の半透膜としては、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなる薄膜が多孔性支持体上に形成されたものなどが挙げられる。多官能芳香族アミンと多官能脂環式酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなる薄膜が多孔性支持体上に形成されたものなども挙げられる。
【0023】
また、上記複合半透膜には、当該半透膜の水透過性をさらに向上させるために、例えば水酸化ナトリウムやリン酸三ナトリウムなど、界面反応にて生成するハロゲン化水素を除去しうる物質や、公知のアシル化触媒、界面反応時の反応場の界面張力を減少させる化合物などが添加されていてもよい。
【0024】
さらに、逆浸透膜のモジュールを用いる場合、このモジュールの形式は、平面膜型モジュール、管型モジュール、スパイラル巻きモジュールおよび中空系モジュールなど、公知の種々のモジュールを用いることができるが、特に浸出水は懸濁物質を含むため、濃縮処理装置2の前段の除濁装置で除去しきれなかった懸濁物質による膜モジュール内の目詰まりをできるだけ防止する観点から、例えば特許第2955579号公報に開示されているような平膜タイプの逆浸透膜と複数の突起を有するディスクを積層したモジュールを用いるのが好ましい。
【0025】
ここで、上記工程(A)において、浸出水を濃縮処理した後に得られる濃縮液の塩濃度は、ある程度高い塩濃度を有するように濃縮処理を行うことが好ましい。これは、濃縮液に含まれる塩が、続く工程(B)における電気化学処理の際に、酸化剤および電解質としての機能を発揮するからである。
【0026】
例えば濃縮液の塩(特にCl-イオン)の濃度は、600mg/リットル以上であるのが好ましい。600mg/リットル以上であれば、当該塩が電気化学処理の際に酸化剤および電解質としての機能をより確実に果たし、電気化学的な酸化処理を効果的に進行させることができるとともに、追加的に電解質などの薬品を添加する必要がなく、工程を容易にしかつコストを削減することもできるからである。
【0027】
したがって、電気化学処理装置3に供される浸出水の塩濃度が低い場合には、浸出水に塩を添加してその塩濃度を600mg/リットル以上に調整することによって、当該浸出水を濃縮してもよい。この場合、塩濃度の調整方法としては特に制限はなく、例えば塩化ナトリウムなどの塩を浸出水に添加すればよい。さらに、上記のような逆浸透膜を用いた濃縮とともに塩の添加を行うことによって、浸出水の塩濃度を向上(濃縮)させてもよい。また、乾燥装置4で回収した副生塩を利用することも可能である。
【0028】
また、上記濃縮液のpHは、中性〜酸性(具体的には4〜8)であるのが好ましい。これは酸性が強いほうが後述する電気化学処理装置3において濃縮液中のClO-が増え、濃縮液中の分解能が向上するためであり、さらに沈殿物の生成促進という理由によるものである。ただし、pHが低くなると(2以下)水素ガスが発生し易くなるため、好ましくない。
【0029】
したがって、電気化学処理装置3に供される濃縮液のpHが上記範囲外にある場合には、あらかじめ、濃縮液のpHを中性〜酸性に調整しておくのが好ましい。この場合、pHの調整方法としては特に制限はなく、例えば、塩酸や硫酸などを濃縮液に添加すればよい。
【0030】
つぎに、上記のようにして得られた濃縮液を、電気化学的処理装置3において電気化学的に酸化処理する。電気化学的処理装置3としては、従来から用いられている陰極と、陽極と、陰極および陽極を接続する電源装置とを具備する電解槽を用いることができ、濃縮液を電気化学的に酸化処理することによって次亜塩素系の強酸化物質を生成し、当該強酸化性物質によって上記濃縮液に含まれる有機成分(COD成分)およびアンモニア成分を分解し、金属を酸化する。
【0031】
濃縮液中に含有されるCl−イオン、水および硝酸イオンに起因して、電気化学処理装置3の陽極および陰極においては以下のような反応が代表的に起こる。
陽極:2Cl- →Cl2+2e-
Cl2+H2O → HClO+HCl
2NaOH+Cl2→NaClO+NaCl+H2O(アルカリ性)
陰極:NO3-+6H2O+8e-→NH3+9OH-
2H2O+2e- →2OH-+H2
【0032】
陽極では、塩素が発生し、さらにその塩素が水と反応し、強力な酸化力を有する次亜塩素酸(HClO)を生成する。一方、陰極では、濃縮液中に硝酸イオンが含まれる場合は、アンモニアへ還元される。また、硝酸イオンが含まれない場合は、水の分解により水素が発生する。また、濃縮液中に含まれるアンモニアおよび電気分解によって生成したアンモニアは、陽極で生成した次亜塩素酸によって、以下の式によって分解し除去される。
2NH3+3HClO → N2+3HCl+3H2
2NH3+3NaClO → N2+3NaCl+3H2O(アルカリ性)
【0033】
電気化学処理装置3に含まれる電解槽には、陽極および陰極に付着する物質などを除去するために一定期間毎に逆電圧をかけたり、処理を停止して洗浄したりして電解効率を維持してもよい。電気化学処理装置3における電気化学処理は連続処理でもバッチ処理でもよい。また、電気分解の時間、温度、電圧、電力量(電気量)および処理量(滞留時間)などは、処理対象物の分解性などに依存するが、適宜選択することによって、本発明の効果を得ることができる。
【0034】
なお、陽極および陰極としては、従来のものを用いることができ、例えば金属チタン板の表面を導電性の酸化ルテニウム、酸化イリジウムまたは白金が主成分の層で被覆した電極、金属チタン板の表面に白金や酸化イリジウムが主成分の層で被覆した電極などが挙げられる。また、導電性セラミックスからなる基材と、前記基材に添加または分散された金属触媒や酸化物触媒とを含む複合電極を用いることもできる。
【0035】
最後に、上記のように電気化学的に酸化処理をした後の濃縮液を、乾燥装置4において乾燥することにより、副生塩を得ることができる。上記電気化学処理装置3における電気化学的な酸化処理により、着色の原因となり得る鉄イオンは不溶化して沈殿し、着色有機成分は分解されるため、白色の塩を得ることができる。
【0036】
乾燥装置4としては、特に制限はないが、例えば真空(減圧)乾燥装置などを用いることができる。乾燥方法の条件(時間、温度など)については適宜選択することができ、例えば80℃で減圧乾燥する方法などが挙げられる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって、色度が低く再利用可能な塩を生成することのできる浸出水の処理方法および処理装置を実現することができる。
【0038】
[第二の実施形態]
つぎに、本発明の浸出水処理装置の第二の実施形態について説明する。この第二の実施形態の浸出水処理装置は、図1に示した第一の実施形態の浸出水処理装置における電気化学処理装置と乾燥装置との間に濾過(固液分離)装置を設けたものであり、固液分離装置以外の構成は第一の実施形態の浸出水処理装置と同様である。
以下、第二の実施形態の浸出水処理装置に備えられる固液分離装置を中心に、本実施形態を説明する。図2は、本実施形態の浸出水処理装置の構成を示す図である。
【0039】
図2に示すように、本実施形態の浸出水処理装置においては、電気化学処理装置3で酸化処理された後の酸化処理液が、固液分離装置5に送られ、ここで水酸化鉄、フミン質などの固形物を除去し、濾液を乾燥装置4によって乾燥することにより、塩を得る。
【0040】
したがって、本発明の第二の実施形態の浸出水処理装置10を用いた本発明の浸出水処理方法においては、上記工程(B)において得られた酸化処理液を固液分離する工程(C)を実施する。固液分離装置5に用いるフィルターとしては、例えば孔径が0.1〜200μmのフィルターを用いるのが好ましい。なお、白色塩を得るという観点からは、小さい孔径例えば、約0.4〜2μmのフィルターを用いるのが好ましいが、装置コストの観点からは、100〜150μm(カートリッジフィルターの孔径)であるのが好ましい。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって、色度が低く再利用可能な塩をより確実に生成することのできる浸出水の処理方法および処理装置を実現することができる。
【0042】
[第三の実施形態]
つぎに、本発明の浸出水処理装置の第三の実施形態について説明する。この第二の実施形態の浸出水処理装置は、図2に示した第二の実施形態の浸出水処理装置における濃縮処理装置の前にカルシウム除去装置を設けたものであり、カルシウム除去装置以外の構成は第二の実施形態の浸出水処理装置と同様である。
以下、第三の実施形態の浸出水処理装置に備えられるカルシウム除去装置を中心に、本実施形態を説明する。図3は、本実施形態の浸出水処理装置の構成を示す図である。
【0043】
図3に示すように、本実施形態の浸出水処理装置においては、埋立地1から送られる浸出水が、濃縮処理装置2に送られる前にカルシウム(Ca)除去装置6に送られ、ここで浸出水中に含まれるカルシウム成分を除去する。ここでカルシウム成分を除去しておくと、逆浸透膜や電極へのスケール付着防止というメリットがある。
【0044】
したがって、本発明の第三の実施形態の浸出水処理装置10を用いた本発明の浸出水処理方法においては、浸出水を濃縮処理する前に、当該浸出水からカルシウム成分を除去する工程を実施する。カルシウム除去装置6としては、カルシウム析出剤および凝集剤を具備する成分調整槽を用いればよい。また、カルシウム析出剤としては例えばNa2CO3などが挙げられ、凝集剤としては例えばポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。
【0045】
このカルシウム成分除去工程においては、上記浸出水のpHは9.5〜11.5であるのが好ましく、Na2CO3/Caのモル比は1.0〜1.5であるのが好ましい。pH調整剤としては例えば例えばNaOHなどを用いればよい。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって、色度が低く再利用可能な塩をより確実に生成することのできる浸出水の処理方法および処理装置を実現することができる。
【0047】
上記においては、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、塩類および着色有機成分のうちの少なくとも一方を含む浸出水を濃縮処理し、前記濃縮処理により得られた濃縮液を電気化学的に酸化処理することを特徴とし、その他の技術的事項については適宜組み合わせて利用することができる。
【0048】
[第四の実施形態]
つぎに、本発明の浸出水処理装置の第四の実施形態について説明する。この第四の実施形態の浸出水処理装置は、図1に示した第一の実施形態の浸出水処理装置における電気化学処理装置の後段にキレート樹脂吸着装置を設けたものであり、キレート樹脂吸着装置以外の構成は第一の実施形態の浸出水処理装置と同様である。
以下、第四の実施形態の浸出水処理装置に備えられるキレート樹脂吸着装置を中心に、本実施形態を説明する。図4は、本実施形態の浸出水処理装置の構成を示す図である。
【0049】
図4に示すように、本実施形態の浸出水処理装置においては、電気化学処理装置3における酸化処理により得られた酸化処理液が、乾燥装置4に送られる前にキレート樹脂吸着装置7に送られ、ここで酸化処理液に含まれるPbなどを除去する。ここでPbなどを除去しておくと、より高品質な白色塩を得ることができるというメリットがある。
【0050】
したがって、本発明の第四の実施形態の浸出水処理装置10を用いた本発明の浸出水処理方法においては、酸化処理液をキレート樹脂により吸着処理する工程を実施する。キレート樹脂吸着装置7としては、キレート樹脂を具備する吸着処理槽を用いればよい。
【0051】
ここで、「キレート樹脂」とは、遷移金属およびアルカリ土類金属などの金属イオンならびにある種の陰イオンが、特定の化学種(配位子)と配位結合による相互作用を起こして錯体を形成するという性質を利用し、特定のイオン種を選択的に吸着捕集できるように設計された樹脂をいう。キレート樹脂には各種金属用に様々な種類が存在するが、本発明においては、特にPb、Fe、Zn、Cuなどの重金属イオンを含む金属イオン除去能を有していればよく、例えば三菱化学(株)製のダイヤイオン(登録商標)CR11などを使用することができる。
【0052】
なお、錯体とは、配位結合(または水素結合)によって形成された分子性化合物の総称であり、狭義には、金属原子を中心として、周囲に配位子が結合した構造を持つ化合物(金属錯体)をいう。また、中心金属と酸化数と配位子の電荷が打ち消しあっていないイオン性の錯体は錯イオンと呼ばれる。
このキレート樹脂吸着工程においては、上記酸化処理液のpHは約7〜8であるのが好ましい。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって、色度が低く再利用可能で特に高品質な塩をより確実に生成することのできる浸出水の処理方法および処理装置を実現することができる。
【0054】
[第五の実施形態]
つぎに、本発明の浸出水処理装置の第五の実施形態について説明する。この第五の実施形態の浸出水処理装置は、図2に示した第二の実施形態の浸出水処理装置における固液分離装置の後段にキレート樹脂吸着装置を設けたものであり、キレート樹脂吸着装置以外の構成は第二の実施形態の浸出水処理装置と同様である。図5は、本実施形態の浸出水処理装置の構成を示す図である。
【0055】
図5に示すように、本実施形態の浸出水処理装置においては、固液分離装置5における固液分離により得られた分離液が、乾燥装置4に送られる前にキレート樹脂吸着装置7に送られ、ここで分離液に含まれるPbなどを除去する。ここでPbなどを除去しておくと、より高品質な白色塩を得ることができるというメリットがある。
【0056】
したがって、本発明の第五の実施形態の浸出水処理装置10を用いた本発明の浸出水処理方法においては、分離液をキレート樹脂により吸着処理する工程を実施する。キレート樹脂吸着装置7としては、上記第四の実施形態と同様に、キレート樹脂を具備する吸着処理槽を用いればよい。
【0057】
以上のように、本実施形態によっても、活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって、色度が低く再利用可能で特に高品質な塩をより確実に生成することのできる浸出水の処理方法および処理装置を実現することができる。
【0058】
[第六の実施形態]
つぎに、本発明の浸出水処理装置の第六の実施形態について説明する。この第六の実施形態の浸出水処理装置は、図1に示した第一の実施形態の浸出水処理装置における濃縮処理装置2と電気化学処理装置3との間に濾過(固液分離)装置を設けたもの(すなわち、図2に示した第二の実施形態の浸出水処理装置における電気化学処理装置3と固液分離装置5との順序を入れ替えたもの)であり、これら以外の構成は第一の実施形態の浸出水処理装置と同様である。図6は、本実施形態の浸出水処理装置の構成を示す図である。
【0059】
図6に示すように、本実施形態の浸出水処理装置においては、濃縮処理装置2における濃縮処理により得られた濃縮液が、電気化学処理装置3に送られる前に固液分離装置5に送られ、ここで固形物(懸濁物質)を除去し、濾液を電気化学処理装置3に送る。これにより、電気化学処理装置における電極への固形物の付着等が抑制され、メンテナンスの手間とコストが低減できるので好ましい。さらに、濃縮液を酸性に調整した後、固液分離することにより、濃縮液中のフミン酸を凝集させて除去することが、電気化学処理の負荷を低減する観点から好ましい。
【0060】
したがって、本発明の第六の実施形態の浸出水処理装置10を用いた本発明の浸出水処理方法においては、上記工程(A)において得られた濃縮液を固液分離する工程(C)を実施する。固液分離装置5は上記第二の実施の形態において説明したものと同じであればよい。
【0061】
以上のように、本実施形態によっても、活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって、色度が低く再利用可能で特に高品質な塩をより確実に生成することのできる浸出水の処理方法および処理装置を実現することができる。
【0062】
上記においては、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、塩類および着色有機成分のうちの少なくとも一方を含む浸出水を濃縮処理し、前記濃縮処理により得られた濃縮液を電気化学的に酸化処理することを特徴とし、その他の技術的事項については適宜組み合わせて利用することができ、それぞれの実施形態において他の実施形態の構成の一部を採用することも可能である。例えば、キレート樹脂吸着装置を用いていない上記実施の形態においても、当該キレート樹脂吸着装置を用いて、キレート樹脂により吸着処理する工程を行ってもよい。
【実施例】
【0063】
上述した本発明の浸出水処理装置および浸出水処理方法における濃縮処理および電気化学処理の効果を確認すべく、以下の実施例を行った。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
《実施例1》
最終処分場で採取した浸出水を逆浸透膜分離という方法で濃縮し、その塩濃度を45000mg/リットルに調整した。濃縮液の中の、TOC(全有機炭素)およびT−N(全窒素)の濃度は、それぞれ約1000mg/L及び約300mg/Lであった(濃縮処理工程(A))。
つぎに、得られた濃縮液を金属チタン板の表面を酸化イリジウム層で被覆した陽極および陰極を具備する電解槽を具備する電気化学処理装置に導入し、反応時間45分間(電力量25kWh/m3)の条件で、電気化学的な酸化処理を行った(酸化処理工程(B))。なお、電極間距離は、1mmとした。
その後、得られた酸化処理液を、孔径0.45μmのフィルター(ミリポア(株)製のメンブランフィルター)で濾過し、固形物1および濾液1を得た。さらに、濾液を、温度95℃という条件で乾燥し、塩1を得た。
【0065】
《実施例2》
浸出水にNaClを添加してその塩濃度を45000mg/リットルに調整した以外は、実施例1と同様にして沈殿物2および濾液2、ならびに塩2を得た。
【0066】
[評価試験]
上記塩1および2について目視により観測したところ、白色であることが確認された。また、上記固形物1および2について、EDS法(エネルギー分散形X線分光法)により元素分析したところ、鉄および酸素に帰属されるピークが確認された。これは、浸出水中に含まれる鉄が電気分解によって価数変化(Fe2+→Fe3+)を起こし、水不溶性の水酸化鉄などを生成し、これが沈殿したものと考えられる。即ち、最終的に得られる塩を着色し得る成分である鉄が沈殿したことにより、白色の塩が得られたものと推定される。
【0067】
また、上記濾液1および2について、元の浸出水に対するCOD成分(化学的酸素要求量として検出される成分)除去率および全チッ素(T−N)除去率を求めたところ、それぞれ76%および82%と、高い値を示した。さらに、濾液1および2について、JISK0101(1998)10.1白金−コバルトによる色度を調べたところ、浸出水の80度に比べてそれぞれ30度および5度と、格段に低下していた。即ち、本発明の処理を施した浸出水は環境基準を十分に満たしていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、活性酸素種や活性化学種を発生させるための装置、貯留させるための装置、およびこれらを酸化分解装置に供給するための装置を必要とせず、比較的容易な構成によって、色度が低く再利用可能な塩を生成することのできる浸出水の処理方法および処理装置を実現することができる。特に、上記塩としては白色の塩を得ることができるため、例えば凍結防止剤として好適に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の浸出水処理装置の第一の実施形態の構成を示す図である。
【図2】本発明の浸出水処理装置の第二の実施形態の構成を示す図である。
【図3】本発明の浸出水処理装置の第三の実施形態の構成を示す図である。
【図4】本発明の浸出水処理装置の第四の実施形態の構成を示す図である。
【図5】本発明の浸出水処理装置の第五の実施形態の構成を示す図である。
【図6】本発明の浸出水処理装置の第六の実施形態の構成を示す図である。
【図7】浸出水の処理に用いられる従来の装置の構成を示す図である。
【図8】浸出水の処理に用いられる従来の装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・埋立地
2・・・濃縮処理装置
3・・・電気化学処理装置
4・・・乾燥装置
5・・・固液分離装置
6・・・カルシウム除去装置
7・・・キレート樹脂吸着装置
10・・・浸出水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩類および着色有機成分のうちの少なくとも一方を含む浸出水を濃縮処理する濃縮処理装置と、
前記濃縮処理により得られた濃縮液を電気化学的に酸化処理する電気化学処理装置と、を具備することを特徴とする浸出水処理装置。
【請求項2】
前記濃縮処理装置が逆浸透膜により前記浸出水を濃縮処理すること、を特徴とする請求項1記載の浸出水処理装置。
【請求項3】
前記濃縮処理により得られた濃縮液および前記酸化処理により得られた酸化処理液のうちの少なくとも一方、を固液分離する固液分離装置を具備すること、を特徴とする請求項1または2記載の浸出水処理装置。
【請求項4】
前記酸化処理により得られた酸化処理液、または、前記固液分離処理により得られた分離液から、水分を蒸発させて塩を得る乾燥装置を具備すること、を特徴とする請求項3記載の浸出水処理装置。
【請求項5】
前記酸化処理により得られた酸化処理液、または、前記固液分離処理により得られた分離液を、キレート樹脂により吸着処理するキレート樹脂吸着装置を具備すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浸出水処理装置。
【請求項6】
塩類および着色有機成分のうちの少なくとも一方を含む浸出水を濃縮処理する濃縮処理工程(A)と、
前記濃縮処理により得られた濃縮液を電気化学的に酸化処理する酸化処理工程(B)と、を具備することを特徴とする浸出水処理方法。
【請求項7】
前記濃縮処理工程(A)において、逆浸透膜により前記浸出水を濃縮処理すること、を特徴とする請求項6記載の浸出水処理方法。
【請求項8】
前記濃縮処理工程(A)において前記濃縮処理により得られた濃縮液および前記酸化処理工程(B)における前記酸化処理により得られた酸化処理液のうちの少なくとも一方、を固液分離する固液分離工程(C)をさらに具備すること、を特徴とする請求項6または7記載の浸出水処理方法。
【請求項9】
前記酸化処理工程(B)により得られた酸化処理液、または、前記固液分離工程(C)により得られた分離液から、水分を蒸発させて塩を得る乾燥処理工程をさらに具備すること、を特徴とする請求項8記載の浸出水処理方法。
【請求項10】
前記酸化処理工程(B)により得られた酸化処理液、または、前記固液分離工程(C)の後に、キレート樹脂により吸着処理する工程を具備すること、を特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の浸出水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−54819(P2007−54819A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51608(P2006−51608)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】