説明

浸漬ノズル

【課題】ドロマイトクリンカーを配合した耐火物を内孔に配置した浸漬ノズルにおいて、吐出口部のアルミナ付着を防止しかつ耐用性を向上すること。
【解決手段】吐出口部を含む主流通孔の内孔体として、主としてドロマイトクリンカーもしくはドロマイトクリンカーとマグネシアクリンカーから成り、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比P=W1/W2が0.33〜3.0になるように配合してなるドロマイト質耐火物を適用し、該吐出口部の本体部としてZrO−CaO−C質耐火物を適用する連続鋳造用浸漬ノズル。ZrO−CaO−C質耐火物は、ZrO―CaO原料と黒鉛、もしくはZrO―CaO原料とジルコニアクリンカーと黒鉛とから成り、しかもCaO成分含有量Q(質量%)が下記式(1)を満足する。
−2.62P+12.9≦Q≦20 ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造に使用される浸漬ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造においては、タンディッシュからモールドへ溶鋼を注入するために浸漬ノズルが広く使用されている。この浸漬ノズルには、長時間使用されてくると内孔面に溶鋼中のアルミナ介在物が付着してくる問題がある。このアルミナ介在物は、合体して大型の介在物になると、溶鋼流と共に鋳片内に取り込まれて鋳片の欠陥となり品質を低下させる。また、アルミナ介在物の付着によってノズル孔が詰まってしまう場合には、連続鋳造が中断し製造ラインがストップすることもある。このアルミナの付着は、アルミニウムで脱酸されたアルミキルド鋼の連続鋳造においてはとくに顕著である。
【0003】
近年、とくに薄板等の高級鋼については鋼材品質の厳格化に伴い、浸漬ノズルのアルミナ付着を防止することに多くの努力が払われている。
【0004】
その対策の一つは、ノズルの内孔面からアルゴンガスを溶鋼中に吹き込んで物理的にアルミナの付着を防止することである。しかし、この方法ではアルゴンガスの吹き込み量が多すぎると気泡が鋳片内に取り込まれてピンホールとなり欠陥となる。従って、ガスの吹き込み量には制約があるためアルミナの付着防止には必ずしも十分な対策とはなり得ない。
【0005】
また、ノズルを構成する耐火物にCaOを含有せしめて、付着したアルミナとの反応によってCaO−Al系の低融物を生成させるという耐火物にアルミナ付着防止機能を持たせる手法もある。生成したCaO−Al系の低融物は、溶鋼流とともに流されてしまうためアルミナ付着を防止することができる。アルミナ付着防止機能を有するCaO含有材料としては、石灰クリンカー、ドロマイトクリンカー、カルシウムジルコネート等がある。ただし、この手法においては、CaOが流失してしまうため溶損が大きくなる問題がある。
【0006】
これに対して、例えば特許文献1には、少なくとも溶鋼に接する部分の耐火物を、ZrO、CaO、Cを主成分とするZrO―CaO―C質耐火物を使用することが記載されている。このZrO―CaO―C質耐火物は、キュービックZrOとZrO・CaOとからなる電融原料を主体に含有するものである。ZrO−CaO原料は、CaOがZrOと化学的に結合しているため、CaOが安定した状態で存在し、消化することもなく耐食性も比較的高い。しかしながら、CaOの安定性が高い分、アルミナとの反応性も低く、期待したほどノズル閉塞防止効果が得られない場合があり、実際には一部のアルミナ介在物の少ない鋼種に対してしか実用化されていない。
【0007】
一方、特許文献2には、湯道表層部が20〜97質量%の石灰クリンカー及び3〜80質量%の炭素質からなり、外層が50〜95質量%のアルミナ質及び5〜50質量%の炭素質からなる溶鋼鋳造用ノズルが開示されている。また、石灰クリンカーの一部をドロマイトクリンカーあるいはCaOを20質量%以上含有するカルシウムジルコニアクリンカーなどで置換できることも開示されている。しかしながら、このようなノズルを適用した場合、長時間鋳造の場合や溶鋼中に懸濁したアルミナの量が多い場合には、溶鋼中のアルミナとの反応によって耐火物中のCaOが低融点物を生成し溶出することによる溶損が大きくなり、つまりは耐食性に問題が生じる。
【0008】
そこで、特許文献3では、粒径1mm以上のドロマイトクリンカーを5〜60質量%と、残部は粒径1mm未満のドロマイトクリンカー及び/またはマグネシアクリンカーとからなり、しかもCaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2が0.33〜3.0になるように配合してなる耐火物を内孔に配置した浸漬ノズルが開示されている。ドロマイトクリンカーの粒径を特定することで、耐食性が向上することが記載されている。
【0009】
ドロマイトを含有する耐火物は一般の浸漬ノズルに汎用されているアルミナグラファイト材質と比較すると、耐用性が劣るため内孔等の溶鋼が通過する部位のみに配置して使用される場合が多い。この内孔へ配置する方法としては、ノズル本体の成形と同時に一体成形する方法、ノズル本体のみを成形した後、ノズル本体の内孔の表面にコーティングしたり流し込み成形する方法、さらには、内孔体を別に製造しておき、モルタル等を介してノズル本体に配置する方法等さまざまな方法がある。
【0010】
しかしながら、このドロマイトを含有する耐火物は熱膨張が大きいため、内孔へ配置する場合に膨張吸収代を確保するために複雑な構造になる。
【0011】
例えば、特許文献4では、ドロマイト質その他の耐火骨材で成形された円筒状内孔体を複数に分割し、それぞれの間に目地部を設けて浸漬ノズルの内孔内面に配置し、これによって熱膨張差による発生応力を緩和し耐スポーリング性を向上させることが開示されている。また、特許文献5には、CaOを70質量%以上含有する内孔体を浸漬ノズルの内孔に配置する際に、その内孔体の熱膨張により浸漬ノズル本体が圧迫されないように、浸漬ノズル本体と内孔体との間に空間を設けることが提案されている。
【0012】
このように、CaOを含有する耐火物を配置する場合には、膨張吸収代を確保する工夫が必要である。浸漬ノズルの内孔は、導入口を含む鉛直方向の主流通孔と吐出口から成っているが、吐出口は浸漬ノズル壁面に横方向に形成されていることが多く長さが短い。このため、前記特許文献4、5のような構造を吐出口の内孔に適用すると、製造するために非常に手間を要し、しかも使用中に内孔体が脱落し易くなる問題がある。
【特許文献1】特公平7−34978号公報
【特許文献2】特開昭61−53150号公報
【特許文献3】WO2004/082868A1
【特許文献4】実公平7−18467号公報
【特許文献5】特開平7−232249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ドロマイトクリンカーを配合した耐火物を内孔に配置した浸漬ノズルにおいて、複雑な構造にすることなく吐出口へのアルミナ付着を防止しかつ耐用性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の浸漬ノズルは、吐出口を含む主流通孔の内孔体として、主原料がドロマイトクリンカー、もしくはドロマイトクリンカーとマグネシアクリンカーとから成り、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比P=W1/W2が0.33〜3.0になるように配合してなるドロマイト質耐火物を適用し、前記吐出口の本体部としてZrO−CaO−C質耐火物を適用したものである。
【0015】
また、ZrO−CaO−C質耐火物が、主原料がZrO―CaO原料と黒鉛、もしくはZrO―CaO原料とジルコニアクリンカーと黒鉛とから成り、しかもCaO成分含有量Q(質量%)が下記式(1)を満足する浸漬ノズルである。
−2.62P+12.9≦Q≦20 ・・・(1)
本発明者は、ドロマイト質耐火物を浸漬ノズルの吐出口を含む主流通孔の内孔体に適用した場合には、その下流部分にあたる吐出口の本体部を含めて吐出口の内面にアルミナ介在物が付着しにくくなることを知見した。この理由は、内孔体のドロマイト質耐火物からCaOが拡散して吐出口内面全体のアルミナ介在物の付着を防止するためと推定される。しかし、通常のアルミナグラファイト材質で吐出口の本体部を形成した場合では、アルミナ付着を完全には抑制することがでず、この付着が浸漬ノズルの寿命のネックとなる。そこで、アルミナ付着防止機能を有するZrO―CaO−C材料を使用して吐出口の本体部を形成することで、アルミナ付着を防止できしかも複雑な構造とすることなく十分な耐用性を示すことがわかった。つまり、ZrO―CaO原料は、アルミナ付着機能を有し、しかもドロマイトクリンカーと比較すると膨張係数が小さく耐食性も高い。このため吐出口の本体部に適用する場合に、膨張代を設ける必要がなく、一般的なアルミナグラファイト材料あるいはジルコニアグラファイト材料と一体成形することができるので複雑な構造をとる必要がない。
【0016】
ZrO−CaO−C質耐火物を吐出口の本体部に適用する際、アルミナ介在物の付着防止効果と耐食性を同時に満足するためは、内孔体として配置されたドロマイト質耐火物中のCaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比Pが0.33〜3.0の間にある必要がある。さらに好ましい条件として、ZrO−CaO−C質耐火物中のCaO含有率Q(質量%)との間に関係があることがわかった。つまり、ZrO−CaO−C質耐火物のCaO成分含有率Qが、−2.62P+12.9(質量%)より小さい場合には、吐出口にアルミナ介在物の付着が多くなり、20質量%を超える場合にはアルミナ付着はないが吐出口の溶損が大きくなってしまう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複雑な構造にすることなく吐出口へのアルミナ付着を防止でき、浸漬ノズルの耐用性が向上する。さらに、この浸漬ノズルを使用した鋼の品質が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施例を図1〜図4に示す。図1は本発明の第1の実施例である浸漬ノズルの縦断面図である。図2は本発明の第2の実施例である浸漬ノズルの一部を示す縦断面図、図3は本発明の第3の実施例である浸漬ノズルの一部を示す縦断面図、図4は本発明の第4の実施例である浸漬ノズルの一部を示す縦断面図である。
【0019】
図1の浸漬ノズル1には、その主流通孔5にドロマイト質耐火物からなる主流通孔の内孔体4が配置されている。本体部2は、上から未浸漬部23、パウダーライン部22、及び吐出口6を含む吐出口の本体部21とから成っている。そして未浸漬部23にはAl−C系材質、パウダーライン部22にはZrO−C系材質、吐出口の本体部21にはZrO−CaO−C質耐火物を適用している。主流通孔の内孔体4は吐出口6を含んでいる。言い換えれば、吐出口6の内面は主流通孔の内孔体4と吐出口の本体部21とで構成されている。つまり、この浸漬ノズル1は、吐出口6を含む主流通孔の内孔体4としてドロマイト質耐火物を、吐出口の本体部21としてZrO−CaO−C質耐火物をそれぞれ適用する。本発明で言う吐出口を含む主流通孔の内孔体とは、図1のように、吐出口6を含むように配置された主流通孔の内孔体4である。
【0020】
このように、吐出口6を含むように配置された主流通孔の内孔体4は、吐出口の本体部21に配置したZrO−CaO−C質耐火物と接することになる。このように配置することで、吐出口6を含むその周囲のアルミナ介在物の付着を防止することができる。この理由は、アルミナ系介在物の付着の多い吐出口6の上流側はドロマイト質耐火物によって付着を防止することができ、その下流側のZrO−CaO−C質耐火物からなる吐出口内は、ZrO−CaO−C質耐火物中のCaOと隣接するドロマイト質耐火物から拡散したCaOとによってアルミナ系介在物の付着防止効果がより高まるためと推定する。主流孔の内孔体4は、アルミナ系介在物の付着形態に応じて配置すればよく、吐出口6の一部を含むように配置することもでき、吐出口6の上部のみあるいは下部のみとすることもできる。
【0021】
また、吐出口の本体部21にZrO−CaO−C質耐火物を配置することで、浸漬ノズル1の外面や吐出口6上方のアルミナ系介在物の付着防止効果も得られる。また、主流通孔の内孔体は、内孔のアルミナ付着防止効果があるため、主流通孔の内面全面あるいは部分的のいずれに配置してもかまわないが、主流通孔の内孔体は吐出口の内孔全面を含みしかもその高さ方向の上端が吐出口上部から10mm以上150mm以下の範囲に配置することでより吐出口近傍のアルミナ介在物の付着防止効果が優れる。
【0022】
図2は、ZrO−CaO−C質耐火物を配置した吐出口の本体部21とパウダーライン部22との間24にAl−C系材質を配置した例である。図3は、ZrO−CaO−C質耐火物を配置した吐出口の本体部21とパウダーライン部22との間24と、吐出口の本体部21の下部25にAl−C系材質を配置した例である。図4は、主流通孔5の一部に主流通孔の内孔体4を配置した例で、吐出口6の上半分である一部を含むように配置したものである。このように上部のみあるいは下部のみ等、吐出口6の一部を含むように配置することもできる。
【0023】
浸漬ノズル1の主流通孔5に主流通孔の内孔体4としてドロマイト質耐火物を配置する方法としては、成形時に本体部2と一体的に成形する方法、主流通孔5に吹き付ける方法、主流通孔5に鋳込む方法、別に筒状体として製造する方法等があり、いずれの方法でも良い。
【0024】
吐出口の本体部21にZrO−CaO−C質耐火物を配置する方法としては、パウダーライン部22に適用するZrO−C質耐火物、吐出口の本体部21以外に適用するAl−C質耐火物を一体的に成形する方法が好ましい。未浸漬部23については、コスト等を考慮して、Al−C質耐火物を適用することが好ましい。
【0025】
本発明のZrO−CaO−C質耐火物は、耐火原料を配合した配合物にバインダーを添加して、混練、成形、熱処理して得られるが、CaO量が前記条件(式1)を満足するように、ZrO−CaO原料あるいはジルコニアクリンカーの種類と使用割合を調整することが好ましい。
【0026】
本発明のZrO−CaO−C質耐火物とは、ZrO―CaO原料と黒鉛、またはZrO―CaO原料とジルコニアクリンカーと黒鉛とを主原料としてなる耐火物である。さらに具体的には、ZrO―CaO原料を60〜90質量%と、黒鉛を10〜40質量%とからなる配合物、あるいはZrO―CaO原料を40〜89質量%と、黒鉛を10〜40質量%と、ジルコニアクリンカーを1〜40質量%とからなる配合物を使用することができる。
【0027】
使用するZrO―CaO原料は、溶鋼中のアルミナ介在物に対してCaOを供給するための原料として使用し、CaOを31質量%以下で含有する原料を使用することができる。例えば、一般に市販されている、CaO安定化ジルコニア原料、カルシウムジルコネート原料、キュービックジルコニアとカルシウムジルコネートの混合組成からなる原料等のうち、単体のみあるいは複数の原料を組み合わせて使用することができる。CaOが31質量%を超える場合には、フリーなCaOが含有されるため、消化の問題があり使用しにくくなる。ZrO―CaO原料は、ジルコニアクリンカーを併用使用しない場合には60〜90質量%で使用することが好ましい。60質量%未満ではアルミナ系介在物の付着防止効果が少なくなり90質量%を超えると黒鉛の配合量が少なくなり耐スポーリング性が低下する。また、ZrO―CaO原料は、ジルコニアクリンカーと併用使用する場合には40〜89質量%で使用することが好ましい。40質量%未満ではアルミナ系介在物の付着防止効果が少なくなり89質量%を超えると黒鉛の配合量が少なくなり耐スポーリング性が低下する。
【0028】
本発明のZrO−CaO−C質耐火物で使用するジルコニアクリンカーは、主にZrO―CaO原料と併用してCaO量をコントロールするために使用され、CaOを含有しないタイプであり、耐火原料として一般的に使用されている電融原料を使用することができる。ジルコニアクリンカーの使用量が40質量%を超えると、アルミナ系介在物の付着防止効果が低下してくる。
【0029】
本発明のZrO−CaO−C質耐火物で使用する黒鉛は、耐スポーリング性を付与するために使用し、耐火原料として一般的に使用されている、鱗状黒鉛、人造黒鉛等を使用することができる。黒鉛は10〜40質量%で使用することが好ましい。10質量%未満では耐スポーリング性が不十分で、40質量%を超えると耐食性が低下する。
【0030】
本発明のZrO−CaO−C質耐火物は、耐火原料として、基本的にZrO―CaO原料と黒鉛、もしくはZrO―CaO原料とジルコニアクリンカーと黒鉛とから成るが、これら以外の原料でも悪影響を与えない範囲であれば、それぞれの原料特有の効果を期待して使用することが可能である。例えば、マグネシア、及び/またはカルシウムシリケートは20質量%以下で使用することができる。さらに、例えば、アルミナ、シリカ、炭化珪素、窒化珪素、カーボンブラック、ピッチ、タール等の耐火原料、Al、Si等の金属粉、BCのような酸化防止剤、及び/またはフリット類等は5質量%以下であれば使用可能である。
【0031】
本発明のドロマイト質耐火物で使用するドロマイトクリンカーは、CaOとMgOとを主成分とする耐火原料であって、一般的にドロマイト系れんが等の耐火物の原料として使用されている原料であれば問題なく使用することができる。例えば、天然のドロマイトを熱処理した天然ドロマイトクリンカー、人工原料によって任意の組成に調合した合成ドロマイトクリンカーも使用可能である。また、CaOによる消化防止のために表面処理したもの、例えば表面に燐酸カルシウムを形成させた原料等も使用可能である。
【0032】
本発明のドロマイト質耐火物で使用するマグネシアクリンカーは、耐火物原料として一般的に使用されている、例えば、焼結マグネシアクリンカー、電融マグネシアクリンカー等を使用することができる。
【0033】
本発明のドロマイト質耐火物は、耐火原料として、基本的にドロマイトクリンカーのみ、あるいはドロマイトクリンカーとマグネシアクリンカーとから成るが、これら以外の原料でも悪影響を与えない範囲であれば、それぞれの原料特有の効果を期待して使用することが可能である。例えば、アルミナ、シリカ、炭化珪素、窒化珪素、カーボンブラック、ピッチ、タール、黒鉛等の耐火原料、Al、Si等の金属粉、BCのような酸化防止剤、及び/またはフリット類等は5質量%以下であれば使用可能である。また、ジルコニアは、耐食性向上効果があるため30質量%以下で併用使用しても良い。
【0034】
また、耐食性と耐スポーリング性の面からドロマイト質耐火物中の炭素含有率は1〜10質量%である必要があり、より好ましくは1〜5質量%である。1質量%未満では耐スポーリング性が不十分となり、10質量%を超えると耐食性が大幅に低下する問題がある。
【0035】
本発明のドロマイト質耐火物は、耐火原料を配合した配合物にバインダーを添加して、混練、成形、熱処理して得られるが、その配合物中のCaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比P=W1/W2が、0.33〜3.0であることが必要である。このCaOとMgOの質量比Pをコントロールするには、使用するドロマイトクリンカー中のMgOとCaO含有量、あるいはドロマイトクリンカーとマグネシアクリンカーの使用割合を調整することによって行うことができる。質量比Pが0.33未満では、吐出口内面に供給されるCaO量が不足して十分なCaO−Al系液相が形成されない。このため、吐出口内面にアルミナ系介在物が付着し易くなる。また、MgO量が多くなり過ぎてスポーリングや割れ等が発生し易くなる。一方、質量比Pが3.0を超えると、稼動面に供給されるCaO量が過多になって過剰なCaO−Al系液相が形成されて、保護層となり得るMgOリッチな層の形成が阻害されるために溶損が激しくなる。さらには、液相成分や、溶損により脱落した内孔体の骨材が溶鋼中に混入して鋳片の品質を低下させることになる。
【0036】
本発明のドロマイト質耐火物においては、炭素質原料の中でも鱗状黒鉛等の黒鉛質原料を使用しない場合に耐用性がより向上する効果が得られる。従って、耐用性をより重視する場合には黒鉛質原料については使用しないかあるいは3質量%以下の添加量であることがより好ましい。
【0037】
また、本発明で使用するバインダーとしては、一般的に耐火物に使用される無機バインダーや有機バインダーを使用することができるが、より好ましくは有機バインダーである。有機バインダーは、炭素ボンドを形成するために使用し、熱硬化性有機樹脂、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂等を使用することができる。炭素ボンドは、熱間強度に優れるため内孔体などの溶鋼と接触する部位に適用すると耐用性が向上する。
【実施例1】
【0038】
表1に示す原料を均一に混練し、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比P=W1/W2が0.20〜3.3になるような6種類のドロマイト系配合物を作製した。さらに、表2に示す原料を均一に混練し、CaO量Qが3〜26質量%になるような9種類のZrO−CaO−C系配合物を作製した。
【表1】

【表2】

【0039】
これらの配合物を図5に示すように、ドロマイト系材質が厚さ7mm、ZrO−CaO−C系材質が厚さ13mmとなるように2層に成形し、1000℃で焼成後20mm×20mmの断面を有するサンプルを作製した。これを高周波誘導炉内にて1550℃に溶解したアルミキルド鋼中に浸漬し、200分浸漬後において図5に示すZrO−CaO−C系材質のドロマイト系材質と隣接した部分のアルミナ付着量と溶損量を測定し、3段階で評価した。
【0040】
評価結果を表3及び4に示す。○は結果が良好であること、△はやや不良であること、×は不良であることを示す。
【表3】

【表4】

【0041】
図6には、PとQを変化させた場合の総合評価の結果をプロットしたものである。この結果から明らかなように、Pが0.33〜3.0の場合、比較的良好な結果が得られていることがわかる。特に結果が良好な○印は図中の斜線の範囲にあり、この結果から、さらに次の(1)式を満足する範囲がより好ましいことが分かる。
−2.62P+12.9≦Q≦20 ・・・(1)
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施例である浸漬ノズルの縦断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例である浸漬ノズルの一部を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第3の実施例である浸漬ノズルの一部を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第4の実施例である浸漬ノズルの一部を示す縦断面図である。
【図5】実施例で使用した試験サンプルの概略図である。
【図6】実施例においてPとQを変化させた場合の総合評価結果を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 浸漬ノズル
2 本体部
21 吐出口の本体部
22 パウダーライン部
23 未浸漬部
24 吐出口の本体部とパウダーライン部との間
25 吐出口の本体部の下部
4 主流通孔の内孔体
5 主流通孔
6 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼の連続鋳造に使用される浸漬ノズルにおいて、吐出口を含む主流通孔の内孔体として、主原料がドロマイトクリンカー、もしくはドロマイトクリンカーとマグネシアクリンカーとから成り、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比P=W1/W2が0.33〜3.0になるように配合してなるドロマイト質耐火物を適用し、前記吐出口の本体部としてZrO−CaO−C質耐火物を適用することを特徴とする浸漬ノズル。
【請求項2】
ZrO−CaO−C質耐火物が、主原料がZrO―CaO原料と黒鉛、もしくはZrO―CaO原料とジルコニアクリンカーと黒鉛とから成り、しかもCaO成分含有量Q(質量%)が下記式(1)を満足する請求項1に記載の浸漬ノズル。
−2.62P+12.9≦Q≦20 ・・・(1)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−83283(P2007−83283A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275050(P2005−275050)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】