説明

浸漬型膜分離装置

【課題】超音波振動子による超音波を利用して分離膜を洗浄することが実用的レベルで可能であり、それによって、長期間に亘って安定した濾過性能を発揮することが出来る、新規な構造の浸漬型膜分離装置を提供することを、目的とする。
【解決手段】原水18の濾過に伴って分離膜22に付着した付着物を洗浄除去するための超音波振動子24を設けて、かかる超音波振動子24から放射される超音波を利用して、分離膜22に付着した付着物を洗浄除去する。また、分離膜22をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽に貯留されている原水に浸漬された状態で使用される分離膜を備えた浸漬型膜分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄化槽汚泥や生活系排水汚泥、し尿等を浄化処理する設備として膜分離方式を用いた浄化槽が知られている。
【0003】
かかる浄化槽の構造は、一般に、特許文献1(特開平3−213128号公報)等に記載されているように、処理槽に貯留されている原水に浸漬させた分離膜によって原水を濾過するようになっている。ところで、このような浸漬型膜分離装置においては、濾過を継続すると、分離膜に固形物等の不純物が付着して、濾過性能が低下する。それ故、分離膜を洗浄して、分離膜に付着した不純物を除去する必要がある。
【0004】
かかる分離膜の洗浄方法としては、従来から、特許文献1等に記載の如き超音波を利用した方法が提案されている。具体的には、超音波洗浄装置によって膜分離装置の濾過膜の膜面に超音波振動を与えて、膜面の振動および振動する膜面と原水の干渉によって膜面に付着したゲル層等の付着物を洗浄除去する方法である。
【0005】
しかしながら、かくの如き超音波洗浄装置は、未だ実用化に際して大きな問題があり、市場で利用されるに至っていなかったのである。その問題点は、濾過膜の耐久性の問題であり、濾過膜の膜面に対して直接に超音波振動を与えると、分離膜が早期に損傷してしまい、分解状態で原水中に分散してしまう問題も発生することが確認されているのである。
【0006】
また、特許文献2(特開平11−319517号公報)には、超音波振動子による超音波の放射によって原水中に発生するキャビテーション気泡が消失する際の衝撃力を分離膜に及ぼして分離膜を洗浄する方法が、提案されている。しかしながら、このような洗浄方法においては、キャビテーション気泡が消失する際の衝撃力が膜分離装置の全体に及ぼされるので、分離膜だけでなく、膜分離装置そのものの耐久性が問題になる。
【0007】
【特許文献1】特開平3−213128号公報
【特許文献2】特開平11−319517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、超音波振動子による超音波を利用して分離膜を洗浄することが実用的レベルで可能であり、それによって、長期間に亘って安定した濾過性能を発揮することが出来る、新規な構造の浸漬型膜分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
本発明の特徴とするところは、濾材としての分離膜をモジュール本体で所定形状に保持せしめてなる膜モジュールを用い、膜モジュールの複数を処理槽内に設置すると共に、処理槽における膜モジュールの下方に曝気装置を設けて、処理槽に収容された原水を分離膜で濾過する浸漬型膜分離装置において、膜モジュールにおける分離膜としてポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜からなるPTFE分離膜を採用すると共に、PTFE分離膜を洗浄する超音波振動子を設けた浸漬型膜分離装置にある。
【0011】
このような本発明に従う構造とされた浸漬型膜分離装置は、特定材質のPTFE分離膜を超音波振動式膜洗浄機構と組み合わせて採用したことを大きな特徴とするものであり、それによって、分離膜の損傷を回避しつつ、分離膜を超音波洗浄することを可能と為し得たのであり、以て、分離膜の超音波洗浄機能を備えた浸漬型膜分離装置を、実用レベルではじめて提供し得たのである。
【0012】
なお、本発明において、「分離膜を所定の形状に保持する」とは、濾過性能が効率良く発揮される状態に分離膜を保持することをいう。具体的には、分離膜が平膜であれば、分離膜を広げた展張状態に保持することが望ましく、分離膜が中空糸膜であれば、複数の中空糸膜を、相互の密着を少なくして各中空糸膜の原水露呈面積が大きく確保されるように、ある程度の弛緩状態で保持することが望ましい。
【0013】
また、本発明におけるPTFE分離膜は、多孔質の濾材としてPTFEを採用したものであって、その全体がPTFE単体で形成されているものに限定されない。例えば、補強等の目的で、他の材質との一体的な複合構造や積層構造等とすることも可能である。より具体的には、例えば、本発明におけるPTFE分離膜は、ポリエチレンテレフタレートの基膜に対してポリテトラフルオロエチレンをコーティングしたものが好適に採用される。
【0014】
ここにおいて、かかる補強材等である基膜は、PTFE製の多孔質膜よりも大きな孔径の多孔体等であって通水性に優れたものであれば、特に限定されることはない。例えば、フェルト,不織布,織布,メッシュ(網目状シート)等を用いることが出来るが、強度や捕集性,柔軟性等の観点から不織布が望ましい。なお、補強材の繊維材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン等),ポリアミド,ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等),芳香族ポリアミド、或いは、これらを複合したもの等が特に好適に採用される。
【0015】
また、補強材等である基膜とPTFE多孔質膜の積層体を製造する方法としては、例えば、単に重ね合わせるだけでも良いし、接着剤ラミネートや熱ラミネート等の方法を用いても良い。或いは、ホットメルトパウダーのような融着材を介在させて接着積層しても良い。
【0016】
さらに、特開平7−292144号公報に記載のように、複数のPTFE多孔質膜を積層して、本発明に係るPTFE多孔質膜を構成しても良い。更にまた、特開平7−256023号公報に記載のように、合成樹脂製の補強材に加えて、金属製の補強材を積層しても良い。
【0017】
また、本発明の超音波振動子としては、従来から公知の各種超音波振動子が何れも採用可能であるが、制御のし易さ等の観点から、圧電現象を利用したものが好適に採用される。例えば、水晶やニオブ酸リチウム等の結晶,チタン酸バリウムやチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックス,ポリふっ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子材料で形成された圧電素子を備えるものが好適に採用される。更にまた、本発明において、超音波振動子による超音波振動の周波数は、原水の性状等に応じて適宜設定される。
【0018】
さらに、本発明の曝気装置としては、従来から公知のものが何れも採用可能である。また、曝気装置によって原水中に供給される気体の種類は、原水の性状等に応じて適宜選択される。例えば、好気性微生物による分解機能を発揮させるのであれば、空気等の酸素が含まれた気体が選択される。嫌気性微生物による分解機能を発揮させるのであれば、窒素が選択される。
【0019】
また、本発明においては、超音波振動子をモジュール本体に取り付けて、超音波振動子で発せられる超音波振動がモジュール本体からPTFE分離膜に及ぼされるようにした態様を、採用しても良い。かかる態様においては、PTFE分離膜の広い範囲に対して超音波振動を分散的に伝達作用させることが可能となり、PTFE分離膜に対する局所的な高エネルギーでの超音波振動の作用を回避することが出来る。これにより、PTFE分離膜の超音波振動による損傷を一層効果的に防止すると共に、PTFE分離膜の全体に対して超音波振動による洗浄作用を効果的に及ぼすことを可能と為し得たのである。
【0020】
さらに、本発明においては、超音波振動子による超音波の放射によって原水中にキャビテーション気泡を発生させて、かかるキャビテーション気泡が消失する際の衝撃力をPTFE分離膜に及ぼすようにした態様を、採用しても良い。かかる態様においては、PTFE分離膜の全体を効率良く洗浄することが出来る。また、キャビテーション気泡が消失する際の衝撃力によって、攪拌作用も起こすことにより、PTFE分離膜に固形物等の不純物が付着するのを抑えることも出来る。
【0021】
また、本発明においては、分離膜の厚さ寸法が0.1mm〜0.3mmであることが望ましい。これにより、十分な固着強度と耐久性を確保することが出来る。即ち、分離膜の厚さ寸法が0.1mmよりも小さい場合、分離膜に十分な耐久性を与えることが出来ず、分離膜の厚さ寸法が0.3mmよりも大きい場合には、モジュール本体への固着強度を確保することが難しいからである。
【0022】
さらに、本発明では、PTFE分離膜が平膜とされていると共に、モジュール本体が平板形状とされており、モジュール本体における表面側と裏面側の少なくとも一方を覆うようにしてPTFE分離膜が展張状態で固着されている態様が、採用可能である。かかる態様においては、分離膜の形状を安定させることが出来る。その結果、分離膜による濾過性能を安定させ易い。なお、膜モジュールにおいては、公知のとおり、PTFE分離膜を挟んで外部と仕切られた内部領域が形成されており、外部からPTFE分離膜を経て内部領域に導かれた浄化水が、膜モジュールの内部領域で集められて取り出されることとなる。その際、膜モジュールの板厚方向の表裏一方の面だけにPTFE分離膜を配する場合には、他方の面はモジュール本体で閉鎖壁を形成し、この閉鎖壁とPTFE分離膜との対向面間に内部領域が形成され得る。また、膜モジュールの板厚方向の表裏両方の面にPTFE分離膜を配する場合には、それら両側のPTFE分離膜で挟まれた内部領域を形成することが可能となる。
【0023】
また、本発明では、PTFE分離膜が中空糸膜とされていると共に、中空糸膜の少なくとも両端部がモジュール本体で支持されている態様が、採用可能である。かかる態様においては、中空糸膜構造のPTFE分離膜を採用したことにより、平膜状のPTFE分離膜に比して、浄化槽内に設置する分離膜の表面積を、浄化槽内の形状等に拘わらず大きく設定することが容易となる。
【0024】
さらに、前述のように平板形状とされたモジュール本体の表面と裏面の少なくとも一方に平膜状の分離膜が固着された構造の膜モジュールを採用する場合には、以下の構成がより好適に採用される。即ち、処理槽内には、膜モジュールの複数を支持せしめるケース枠体が固設されており、膜モジュールがケース枠体で支持されることによって、複数の膜モジュールが互いに厚さ方向で所定の隙間をあけて並べられていると共に、各膜モジュールのPTFE分離膜が鉛直方向に広がっている一方、各膜モジュールにおけるモジュール本体には、PTFE分離膜を幅方向両側に外れて外方に突出する一対の支持片が形成されており、一対の支持片においてモジュール本体がケース枠体に対して支持されている構成が、好適に採用される。
【0025】
このような構成を採用することにより、曝気装置による曝気に基づいて発生する水流の影響を受けない位置において、膜モジュールがケース枠体へ固定される。それ故、膜モジュールから支持片が突出していても、曝気水流の支持片への作用を抑えることが可能となり、曝気水流が支持片に作用する振動増大等の悪影響を回避できる。しかも、支持片は、PTFE分離膜を外れた両側に突設されていることから、たとえ曝気水流による振動や超音波加振による振動に起因して支持片が磨耗した場合でも、かかる磨耗がPTFE分離膜に対して損傷等の直接被害を及ぼすことがなく、長期間に亘って安定支持が実現可能となる。
【0026】
また、上述の平膜状のPTFE分離膜が固着された膜モジュールをケース枠体に複数収容支持する態様を採用するのであれば、ケース枠体の外面に超音波振動子が重ね合わせられた状態で取り付けられることが望ましい。これにより、PTFE分離膜の近くに超音波振動子を配設することが出来る。
【0027】
また、上述の平膜状のPTFE分離膜が固着された膜モジュールをケース枠体に複数収容支持する態様を採用するのであれば、以下の構成が好適に組み合わせて採用される。即ち、ケース枠体において、一対の支持片のそれぞれに対して鉛直方向に把持力を及ぼすことで各支持片を把持する把持機構を設けると共に、把持機構による一対の支持片の把持位置をケース枠体に対して鉛直方向で調節する支持位置調節機構を設けた構成が、採用され得る。
【0028】
ここにおいて、把持機構は、モジュール本体の上端部分に形成されることが望ましく、モジュール本体の下端支持機構と組み合わせてより好適に採用される。かかるモジュール本体の下端支持機構としては、例えば次の構成が採用される。即ち、例えば、ケース枠体の底部には、モジュール本体の下端を鉛直下方から当接状態で支持せしめる底面支持部が設けられることにより、モジュール本体の下端を支持する構造が実現され得る。
【0029】
また、本発明の把持機構としては、例えば、以下の構造が採用可能である。即ち、複数の膜モジュールの整列方向に延びて、各膜モジュールの各支持片に対して鉛直方向両側から重ね合わせられる一対の長手状の連結部材と、これら一対の連結部材を相互に接近方向に締め付けて一対の連結部材間で各膜モジュールの各支持片を把持せしめる締結部材とを、含んで構成された把持機構が、好適に採用され得る。
【0030】
なお、かかる締結部材としては、一対の連結部材を対向方向で締め付けて膜モジュールの支持片を挟持されるボルトとナットによる締め付け構造等が好適に採用される。また、かかる締め付け構造を構成するボルトを利用して或いは別体ボルトを用いて、連結部材とケース枠体とを相互に連結固定すると共に、それら連結部材とケース枠体との少なくとも一方に対する固定位置をボルト軸方向で調節可能なナット締付構造を採用することにより、前述の支持位置調節機構が実現可能である。
【0031】
更にまた、本発明において把持機構を採用するに際しては、かかる把持機構による一対の支持片の把持部位には、超音波振動吸収材を介在配置することが望ましい。かかる超音波振動吸収材により、把持機構による各支持片の把持部分への超音波振動の作用が低減されて、支持部の磨耗等が軽減されることとなり、膜モジュールに対してより耐久性および信頼性の高い支持構造が実現可能となる。なお、前述の底面支持部を採用する場合には、モジュール本体の最下部と底面支持部とを、超音波振動吸収材を介して、当接させるようにしても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0033】
図1及び図2には、本発明の第一の実施形態としての浸漬型膜分離装置10が示されている。かかる浸漬型膜分離装置10は、複数の膜モジュール12がケース枠体14に収容配置された構造とされており、膜モジュール12が処理槽16に貯留されている原水としての被処理水18に浸漬された状態で使用される。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、膜モジュール12のケース枠体14への挿入方向となる図2中の上下方向をいう。
【0034】
より詳細には、複数の膜モジュール12は、それぞれ、図3にも示されているように、モジュール本体20にPTFE分離膜としての分離膜22が固着された構造とされている。モジュール本体20は、ABS等の硬質な合成樹脂材料で形成されており、全体として矩形平板形状を呈している。
【0035】
そこにおいて、本実施形態では、モジュール本体20には、超音波振動子24が設けられている。超音波振動子24は、特開平10−314672号公報等において、従来から公知のプレート型超音波振動子24である。簡単に説明すると、本実施形態の超音波振動子24は、基板26の片面に形成された基板側電極(図示せず)に対して、駆動電極(図示せず)が表裏に形成された圧電素子34を接合材(図示せず)によって貼着した構造とされている。そして、圧電素子34の両駆動電極間に高周波の交番電圧を印加することにより、超音波振動が発生する。かかる超音波振動の周波数は、圧電素子34の厚さ寸法等で決まる。従って、目的とする振動周波数が得られるように、圧電素子34の厚さ寸法等が設定されている。そこにおいて、超音波振動の周波数は、特に限定されるものではないが、20kHz〜50kHzが望ましい。また、圧電素子34の両駆動電極間への交番電流の印加は、圧電素子34の駆動電極のうち基板側電極に対して電気的に接続されていない駆動電極に取り付けられたリード線38と、基板側電極に取り付けられたリード線40を通じて行われる。
【0036】
このような超音波振動子24は、モジュール本体20に形成された収容凹所42に収容された状態で、基板26がモジュール本体20に対して接着や超音波溶着等で固定されることにより、モジュール本体20に固定されている。そして、この超音波振動子24の加振力が直接にモジュール本体20に伝達されるようになっている。なお、収容凹所42の形成位置は、分離膜22の固着面や分離膜22の大きさ,要求される洗浄性能等に応じて決定される。因みに、本実施形態では、収容凹所42は、モジュール本体20の表面と裏面のそれぞれにおいて、モジュール本体20の幅方向中央であって、且つ、モジュール本体20の長手方向中間部分に適当な距離だけ離れて、複数箇所形成されている。即ち、本実施形態では、超音波振動子24がモジュール本体20の表裏両面に二つずつ設けられている。
【0037】
また、モジュール本体20の表裏両面には、それぞれ、誘導溝44が形成されている。そして、これら表側の誘導溝44と裏側の誘導溝44は、モジュール本体20の上端部分を厚さ方向に貫通する連通孔46を通じて接続されている。なお、本実施形態では、連通孔46が二つ形成されている。
【0038】
さらに、モジュール本体20の上端面には、上方に向かって突出するノズル48が設けられている。そして、ノズル48に形成されたノズル穴50は、連通孔46の壁面に開口している。即ち、ノズル穴50は、連通孔46に対して、側方から接続されている。
【0039】
そこにおいて、上述の如くモジュール本体20に固定された超音波振動子24に接続されている一対のリード線38,40は、誘導溝44内に配されており、一方のノズル48のノズル穴50からモジュール本体20の外部に取り出されている。なお、本実施形態では、一方のノズル48にゴム製のキャップ52が被せられており、かかるキャップ52に形成された穴からリード線38,40が取り出されている。これにより、分離膜22で濾過された被処理水18が、リード線が通されたノズル穴50から外部に流れ出ることが防止されている。
【0040】
また、外部に取り出された一対のリード線38,40は、超音波発生器54に接続されている。そして、超音波発生器54から超音波振動子24の駆動電極に電圧が印加されるようになっている。なお、超音波発生器54としては、従来から公知のものが何れも採用可能である。
【0041】
更にまた、モジュール本体20の上端部分には、両側面から幅方向外方に突出する一対の支持片56,56が設けられている。なお、本実施形態では、各支持片56の厚さ寸法(図2における紙面に垂直な方向の寸法)は、モジュール本体20の板厚方向の寸法よりも大きくされている。
【0042】
また、モジュール本体20の表裏両面には、それぞれ、モジュール本体20の外周縁部近くを全周に亘って延びる溶着突部58が設けられている。かかる溶着突部58は、分離膜22の外周形状に対応した形状とされている。
【0043】
一方、分離膜22は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成されており、全体としてシート形状を呈している。特に、本実施形態では、PTFE多孔質膜が補強材に積層された構造とされている。因みに、本実施形態の分離膜22は、補強材としてのPET製不織布にPTFE多孔質膜が熱溶着でコーティングされた構造とされている。
【0044】
そこにおいて、本実施形態では、分離膜22の厚さ寸法が0.1mm〜0.3mmとされている。即ち、分離膜22の厚さ寸法が0.1mmよりも小さいと、分離膜22の耐久性を確保することが難しく、分離膜22の厚さ寸法が0.3mmよりも大きいと、分離膜22のモジュール本体20への固着強度を有利に確保することが難しいからである。
【0045】
このような分離膜22は、モジュール本体20の表面と裏面にそれぞれ重ね合わされた状態で固着されている。具体的には、分離膜22の外周縁部が溶着突部58に対して超音波溶着されている。
【0046】
また、上述の如く固着されたモジュール本体20と分離膜22の対向面間には、スペーサ60が収容配置されている。かかるスペーサ60は、原水に対して耐蝕性のある適当な合成樹脂材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されており、薄板形状を有している。そして、このスペーサ60によって、分離膜22の有効面積が決定されている。
【0047】
すなわち、このスペーサ60は、多孔質体であり、分離膜22のモジュール本体20への密着による不透水化を防止すると共に、分離膜22の裏面を担持することで分離膜22の圧力作用時の耐久性を確保している。ここにおいて、分離膜22の有効面積は、モジュール本体20の表側と裏側の両方で、例えば0.8〜1.3平方メートルに設定される。なお、モジュール本体20と分離膜22の対向面間へのスペーサ60の配設は、モジュール本体20にスペーサ60を重ね合わせ、必要に応じてスペーサ60をモジュール本体20に対して固着した後、スペーサ60を覆うようにして、モジュール本体20に分離膜22を重ね合わせて固着することによって実現される。
【0048】
また一方、ケース枠体14は、一対の側壁構成部材62,62を備えている。一対の側壁構成部材62,62は、それぞれ、ステンレス鋼等の耐食性を有する高剛性材料で形成されており、長手平板形状を呈する側壁部64を備えている。なお、側壁構成部材62に耐食性を付与する方法は、耐食性を有する材料で側壁構成部材62を形成する方法であっても良いし、メッキを施す方法であっても良い。
【0049】
そこにおいて、側壁部64の上端には、厚さ方向一方の側へ延び出す上側延出板部66が全長に亘って設けられている。また、側壁部64の下端には、厚さ方向他方の側へ延び出す底面支持部としての下側延出板部68が全長に亘って設けられている。更に、側壁部64には、厚さ方向他方の面側において、側壁部64の長手方向に適当な間隔で並んだ複数のスリット70が形成されたスリット部材72が設けられている。更にまた、下側延出板部68の上面には、当接ゴム74が全長に亘って設けられている。
【0050】
このような一対の側壁構成部材62,62は、スリット部材72が向き合う状態で対向配置される。かかる状態下、スリット部材72に形成された複数のスリット70は、一対の側壁構成部材62,62の対向方向で、それぞれ、対向位置せしめられている。また、上述の如く対向配置された一対の側壁構成部材62,62は、長手方向両端部分において、ステンレス鋼等の耐食性を有する高剛性材料で形成された連結部材76で連結されている。なお、連結部材76と各側壁構成部材62の固定方法としては、溶接やボルト固定,かしめピンによる固定等、従来から公知の各種固定方法が何れも採用可能である。
【0051】
また、一対の側壁構成部材62,62の長手方向両端には、塩化ビニル等の合成樹脂材料で形成された縦板78が掛け渡されている。これにより、全体として上下両側に開口するケース枠体14が形成されている。なお、縦板78と各側壁構成部材62の固定方法としては、ボルト固定やかしめピンによる固定等、従来から公知の各種固定方法が何れも採用可能である。
【0052】
このような構造とされたケース枠体14に対して、複数の膜モジュール12が収容支持されている。特に、本実施形態では、各膜モジュール12の幅方向両端が、ケース枠体14の幅方向で対向位置せしめられて対を為すスリット70,70内に位置せしめられている。これにより、複数の膜モジュール12が板厚方向に所定の間隔で並んでいる。そして、この状態で、各膜モジュール12の分離膜22は鉛直方向に広がっている。
【0053】
また、各膜モジュール12の一対の支持片56,56は、それぞれ、図4にも示されているように、上側延出板部66の上方に設けられた第一の板状連結部材80に載置されている。第一の板状連結部材80は、ステンレス鋼等の高剛性材料で形成されており、長手方向の寸法が幅方向の寸法に比して十分に大きくされた平板状部82を備えている。なお、平板状部82の幅方向両端には、長手方向の全長に亘って延びる補強リブ84,84が設けられている。これにより、第一の板状連結部材80は、全体として凹溝形状を呈している。
【0054】
このような第一の板状連結部材80は、補強リブ84,84が上側延出板部66に向かって突出する状態で、上側延出板部66の上方に配置される。具体的には、上側延出板部66の長手方向両端部分に突設されたボルト86が、第一の板状連結部材80の長手方向両端部分に形成された挿通孔88に挿通された状態で、第一の板状連結部材80がボルト86に螺合された位置決めナット90に載置されることにより、第一の板状連結部材80が上側延出板部66の上方に配置される。なお、ボルト86は、それに螺合される固定ナット92によって、上側延出板部66に固定されている。
【0055】
そして、本実施形態では、支持片56が超音波振動吸収材としての挟圧ゴム94を介して第一の板状連結部材80に載置された状態で、膜モジュール12がケース枠体14に収容支持されている。なお、この状態で、各膜モジュール12は当接ゴム74に当接されている。
【0056】
また、本実施形態では、第二の板状連結部材96が、超音波振動吸収材としての挟圧ゴム98を介して、各膜モジュール12の支持片56に重ね合わせられている。なお、本実施形態では、第二の板状連結部材96は、第一の板状連結部材80と同じ部材で構成されているので、その詳細な説明は省略する。
【0057】
そこにおいて、本実施形態では、第一の板状連結部材80と第二の板状連結部材96が、対向方向となる上下方向でボルト86で相互に連結固定されている。なお、本実施形態では、第一及び第二の板状連結部材80,96の長手方向両端部分だけにおいて、それぞれボルト86で連結されているが、その連結構造は限定されるものでなく、第一及び第二の板状連結部材80,96の長手方向の3箇所以上でボルト等により連結しても良い。
【0058】
具体的には、支持片56と第二の板状連結部材96のそれぞれに形成された挿通孔100,102に挿通されて、第二の板状連結部材96の上方へ突出したボルト86の先端部分(第二の板状連結部材96から上方へ突出している部分)に螺合される締付ナット104と位置決めナット90で支持片56が挟圧保持されることにより、整列方向両端の膜モジュール12が固定される。即ち、本実施形態では、ボルト86と締付ナット104と位置決めナット90を含んで把持機構が構成されている。なお、第一の板状連結部材80と第二の板状連結部材96による支持片56の挟圧保持は、挟圧ゴム94,98を介して為されている。
【0059】
これにより、全ての膜モジュール12は、何れも、両側に突設された支持片56において、締付ナット104と位置決めナット90による締付力を利用することにより、第一の板状連結部材80と第二の板状連結部材96で挟圧保持されている。
【0060】
上述の如く複数の膜モジュール12が収容支持されたケース枠体14は、処理槽16内に配置される。そこにおいて、本実施形態では、上側延出板部66が処理槽16に掛け渡された一対の吊下支持部材106,106に載置されることにより、ケース枠体14が吊下げ状態で処理槽16内に配置されている。かかる状態下、各膜モジュール12の分離膜22の全体が被処理水18に浸漬されている。
【0061】
また、上述の如くケース枠体14が処理槽16内に配置された状態で、膜モジュール12の下方には、処理槽16の底部に設置された曝気装置108が位置せしめられている。かかる曝気装置108は、空気管110を通じて、処理槽16の外部に設置されたブロワ112に接続されている。
【0062】
更にまた、上述の如くケース枠体14が処理槽16内に配置された状態で、各膜モジュール12の他方のノズル48には、送水管114が接続されている。そして、この送水管114には、吸引ポンプ116が接続されている。なお、本実施形態では、吸引ポンプ116の作動は、貯留されている被処理水18の量に応じて、ON/OFFされる。このような吸引ポンプ116の作動制御は、被処理水18の液面の位置を検出するセンサからの信号を利用することで実現される。
【0063】
続いて、上述の如き構造とされた浸漬型膜分離装置10の作動について説明する。先ず、処理槽16の上部に配置された汚水供給管(図示せず)から汚水が供給される。この汚水は、処理槽16で活性汚泥と混合されて被処理水18となる。そして、被処理水18は、曝気装置108から供給される空気で曝気されると共に、活性汚泥によって浄化処理される。また、被処理水18は、吸引ポンプ116によって吸引される。これにより、被処理水18が分離膜22で濾過される。濾過された被処理水18は、送水管114を通って外部に排出される。
【0064】
このような分離膜22による濾過の際に、或いは、分離膜22による濾過を中断した際に、超音波発生器54から超音波振動子24に高周波の交番電圧を印加する。これにより、超音波振動子24による超音波振動が発生し、かかる超音波振動がモジュール本体20から分離膜22に伝達される。その結果、分離膜22が振動して、分離膜22に付着した不純物が洗浄除去される。なお、分離膜22の洗浄は、一定間隔で断続的に行っても良いし、所定時間或いは常時連続して行っても良い。
【0065】
そこにおいて、上述の如き浸漬型膜分離装置10においては、PTFE製の分離膜22が採用されていることから、分離膜22に伝達される超音波振動によって分離膜22が破損する等の不具合を回避することが出来る。従って、分離膜22の洗浄を効果的に行うことが出来る。
【0066】
また、本実施形態では、各膜モジュール12のケース枠体14への固定部分が上側延出板部66の上方に位置していることから、曝気装置108による曝気に基づいて発生する水流を外れた位置に各膜モジュール12のケース枠体14への固定部分が位置していることになる。従って、曝気によって発生する水流が膜モジュール12のケース枠体14への固定部位に及ぼす悪影響、例えば、固定部位のガタツキ等を回避することが出来る。
【0067】
さらに、本実施形態では、締付ナット104と位置決めナット90による締付力を支持片56に作用させることで膜モジュール12が支持されていることから、超音波振動や水流による振動に起因して支持片56等が磨耗し、締付ナット104や位置決めナット90が緩んだとしても、締付ナット104を締め直すことで、再度強固に固定することが出来る。
【0068】
特に本実施形態では、締付ナット104がボルト86の先端部分に螺着されていることから、締付ナット104を締め直す作業を容易にすることが出来る。
【0069】
更にまた、本実施形態では、位置決めナット90の螺合位置に応じて膜モジュール12の高さ方向での支持位置が調節可能とされているので、支持片56等の磨耗に起因して締付ナット104を締め直す際に、位置決めナット90の位置を調節して、膜モジュール12の高さ方向での支持位置を所期の位置に調節することが出来る。即ち、本実施形態では、ボルト86と位置決めナット90を含んで支持位置調節機構が構成されている。
【0070】
また、本実施形態では、支持片56が一対の挟圧ゴム94,98で挟まれていることから、超音波振動子24による超音波振動や曝気によって発生する水流に起因した振動が支持片56に伝達され難くなる。その結果、振動に起因する支持片56の磨耗を抑えることが出来る。
【0071】
さらに、本実施形態では、複数の膜モジュール12のうち整列方向の両端に位置する膜モジュール12のみが締付ボルト86と位置決めボルト86を利用して固定されており、その他の膜モジュール12は第一の板状連結部材80と第二の板状連結部材96による挟圧保持で固定されていることから、複数の膜モジュール12のケース枠体14への固定作業を簡単にすることが出来る。
【0072】
続いて、本発明の第二の実施形態としての浸漬型膜分離装置120について、図5に基づいて、説明する。なお、以下に記載の第二の実施形態や後述する第三の実施形態の説明において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0073】
本実施形態の浸漬型膜分離装置120は、第一の実施形態の浸漬型膜分離装置(10)に比して、膜モジュール122が異なっている。本実施形態の膜モジュール122は、中空糸膜で構成された分離膜124を多数備えており、これら多数の分離膜124の両端がモジュール本体としての集水盤126で支持された構造とされている。
【0074】
より詳細には、分離膜124はPTFEで形成されている。また、分離膜124の厚さ寸法(中心から外周面までの寸法と中心から内周面までの寸法の差)は、0.1mm〜0.3mmに設定されている。これにより、分離膜124の耐久性を確保しつつ、集水盤126への固着強度が確保されている。
【0075】
一方、集水盤126は、ABS等の合成樹脂材料で形成されており、全体として矩形箱体形状とされている。なお、本実施形態では、本体部分128に対して蓋体130が溶着されることにより、中空構造の集水盤126が形成されている。また、図面上では必ずしも明らかではないが、集水盤126には、上方に突出するノズル48が二つ形成されている。更に、集水盤126の上端部分には、集水盤126の厚さ方向外方へ突出する支持片56が設けられている。更にまた、集水盤126には、超音波振動子24が設けられている。かかる超音波振動子24の集水盤126への固定は、基板26を集水盤126に対して超音波溶着すること等で実現される。そして、超音波振動子24のリード線38,40は、一方のノズル48に形成されたノズル穴50から外部に出されている。
【0076】
このような構造とされた集水盤126には、分離膜124の端部が固定される。具体的には、集水盤126に形成された支持穴に分離膜124の端部が挿通されて、この状態で、分離膜124の端部が集水盤126に対して超音波溶着される。特に本実施形態では、超音波振動子24を取り囲む位置に分離膜124が固定されている。
【0077】
このような構造とされた膜モジュール122は、集水盤126に形成された支持片56を利用して、ケース枠体14に固定される。かかる状態下、分離膜124の両端を支持する一対の集水盤126,126の離隔距離は、分離膜124が弛緩した状態となるように設定されている。ただし、弛緩した状態であっても、分離膜124同士が接触しないようにされている。
【0078】
上述の如き構造とされた浸漬型膜分離装置120においても、分離膜22がPTFEで形成されていることから、第一の実施形態と同様な効果を得ることが出来る。
【0079】
続いて、本発明の第三の実施形態としての浸漬型膜分離装置132について、図6及び図7に基づいて、説明する。本実施形態の浸漬型膜分離装置132は、第一の実施形態の浸漬型膜分離装置(10)に比して、超音波振動子136(超音波振動ユニット134)の取付位置が異なっている。
【0080】
すなわち、本実施形態では、モジュール本体20に超音波振動子(24)が取り付けられておらず、その代わりに、ケース枠体14に超音波振動ユニット134が取り付けられている。具体的には、ケース枠体14を構成する各側壁構成部材62の側壁部64の外面(厚さ方向一方の面)に超音波振動ユニット134が重ね合わされた状態で取り付けられている。
【0081】
そこにおいて、本実施形態の超音波振動ユニット134は、特開平10−52669号公報等において、従来から公知の超音波振動ユニットである。簡単に説明すると、超音波振動ユニット134は、超音波洗浄面を有する超音波振動子136が密封ケース138に収容された構造である。超音波振動子136は、従来から公知のボルト締めランジュバン型振動子で構成されている。特に本実施形態では、密封ケース138の壁部の一部によって、ボルト締めランジュバン型振動子のフロントマス140が構成されている。また、本実施形態では、複数の超音波振動子136がマトリクス状に配設されている。
【0082】
このような構造とされた超音波振動ユニット134は、密封ケース138に設けられた取付フランジにおいて、側壁構成部材62の側壁部64に固定される。具体的には、例えば、取付フランジに形成されたボルト挿通孔に対して、側壁部64に突設された取付ボルトを挿通した状態で、取付ナットを取付ボルトに螺合すること等により、密封ケース138が側壁部64に固定される。
【0083】
そこにおいて、超音波振動ユニット134の側壁部64への取付位置は、ケース枠体14の深さ方向では、ケース枠体14に収容される膜モジュール12の高さ方向の略中央が望ましい。これにより、分離膜22の全体を均一に洗浄することが出来る。また、ケース枠体14の長さ方向では、側壁部64の長さ方向の略中央が望ましい。これにより、全ての膜モジュール12の分離膜22を効率良く洗浄することが出来る。
【0084】
なお、本実施形態において、超音波振動子136は、従来から公知のプレート型超音波振動子で構成されていても良い。また、密封ケース138の壁部の一部をフロントマスとして利用する必要はない。側壁構成部材62の側壁部64をフロントマスとして利用しても良い。更に、各側壁部64に取り付けられる超音波振動ユニット134の数は、複数であっても良い。更にまた、超音波振動ユニット134は、側壁部64に取り付けられている必要はない。
【0085】
このような構造とされた浸漬型膜分離装置132においては、超音波発生器54から超音波振動子136に高周波の交番電圧を印加すると、超音波振動子136による超音波振動が発生する。かかる超音波振動は、密封ケース138及び側壁構成部材62を介して、被処理水18に伝達される。これにより、被処理水18中にキャビテーション気泡が発生する。そして、このキャビテーション気泡が消失する際の衝撃力が分離膜22に及ぼされて、分離膜22が洗浄される。また、キャビテーション気泡が消失する際の衝撃力によって、攪拌作用を起こすことにより、分離膜22に固形物等の不純物が付着するのを抑えることも出来る。
【0086】
以上、本発明の幾つかの実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0087】
例えば、前記第一及び第二の実施形態において、モジュール本体20(第二の実施形態では、集水盤126)を基板の代わりにしても良い。即ち、表裏両面に駆動電極が形成された圧電素子34を、モジュール本体20(第二の実施形態では、集水盤126)に形成された電極に対して、接合材で貼着しても良い。なお、モジュール本体20(第二の実施形態では、集水盤126)にリード線38,40を配するための適当な溝が形成されているのであれば、モジュール本体20(第二の実施形態では、集水盤126)に電極を形成する必要はない。また、前記第一の実施形態において、モジュール本体20に収容凹所42が形成されている必要はない。
【0088】
さらに、前記第二の実施形態において、集水盤126における厚さ方向他方の壁部(分離膜124が固定された壁部と対向位置する壁部)に超音波振動子24を設けても良い。勿論、スペースを確保出来るのであれば、他の壁部に設けても良い。
【0089】
更にまた、前記第二の実施形態において、モジュール本体は管状とされていても良い。この場合、超音波振動子24を固定するための平坦なスペースをモジュール本体内に形成しておくことが望ましい。
【0090】
また、前記第一乃至第三の実施形態において、ケース枠体14は処理槽16の底壁に載置されていても良い。この場合、ケース枠体14に曝気装置を設ける等して、曝気装置の配設スペースを確保する必要がある。
【0091】
さらに、前記第一の実施形態に記載の超音波洗浄機構と、前記第三の実施形態に記載の超音波洗浄機構を、組み合わせた態様を採用しても良い。かかる態様においては、それらの超音波洗浄機構を選択的に作動させても良いし、両方の超音波洗浄機構を同時に作動させても良い。なお、超音波洗浄機構の組み合わせは、前記第二の実施形態に記載の超音波洗浄機構と、前記第三の実施形態に記載の超音波洗浄機構との組み合わせであっても良い。
【0092】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第一の実施形態としての浸漬型膜分離装置を示す平面図。
【図2】図1におけるII−II断面図。
【図3】同浸漬型膜分離装置で採用されている膜モジュールを示す縦断面図であって、図2におけるIII−III方向の縦断面図。
【図4】支持片の支持構造を拡大して示す縦断面図。
【図5】本発明の第二の実施形態としての浸漬型膜分離装置を示す縦断面図。
【図6】本発明の第三の実施形態としての浸漬型膜分離装置を示す平面図。
【図7】図6におけるVII−VII断面図。
【符号の説明】
【0094】
10:浸漬型膜分離装置,12:膜モジュール,14:ケース枠体,16:処理槽,18:被処理水,20:モジュール本体,22:分離膜,24:超音波振動子,80:第一の板状連結部材,86:ボルト,90:位置決めナット,92:固定ナット,94:挟圧ゴム,96:第二の板状連結部材、98:挟圧ゴム,104:締付ナット,108:曝気装置,120:浸漬型膜分離装置,122:膜モジュール,124:分離膜,126:集水盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材としての分離膜をモジュール本体で所定形状に保持せしめてなる膜モジュールを用い、該膜モジュールの複数を処理槽内に設置すると共に、該処理槽における該膜モジュールの下方に曝気装置を設けて、該処理槽に収容された原水を該分離膜で濾過する浸漬型膜分離装置において、
前記膜モジュールにおける前記分離膜としてポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜からなるPTFE分離膜を採用すると共に、
該PTFE分離膜を洗浄する超音波振動子を設けたことを特徴とする浸漬型膜分離装置。
【請求項2】
前記超音波振動子を前記モジュール本体に取り付けて、該超音波振動子で発せられる超音波振動が該モジュール本体から前記PTFE分離膜に及ぼされるようにした請求項1に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項3】
前記超音波振動子による超音波の放射によって前記原水中にキャビテーション気泡を発生させて、かかるキャビテーション気泡が消失する際の衝撃力を前記PTFE分離膜に及ぼすようにした請求項1に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項4】
前記PTFE分離膜は、ポリエチレンテレフタレートの基膜に対してポリテトラフルオロエチレンをコーティングしたものであって、その厚さ寸法が0.1mm〜0.3mmである請求項1乃至3の何れか1項に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項5】
前記PTFE分離膜が平膜とされていると共に、前記モジュール本体が平板形状とされており、該モジュール本体における表面側と裏面側の少なくとも一方を覆うようにして該PTFE分離膜が展張状態で固着されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項6】
前記PTFE分離膜が中空糸膜とされていると共に、該中空糸膜の少なくとも両端部が前記モジュール本体で支持されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項7】
前記処理槽内には、前記膜モジュールの複数を支持せしめるケース枠体が固設されており、該膜モジュールが該ケース枠体で支持されることによって、複数の該膜モジュールが互いに厚さ方向で所定の隙間をあけて並べられていると共に、各該膜モジュールの前記PTFE分離膜が鉛直方向に広がっている一方、各該膜モジュールにおける前記モジュール本体には、該PTFE分離膜を幅方向両側に外れて外方に突出する一対の支持片が形成されており、該一対の支持片において該モジュール本体が該ケース枠体に対して支持されている請求項5に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項8】
前記ケース枠体の外面に前記超音波振動子が重ね合わせられた状態で取り付けられている請求項7に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項9】
前記ケース枠体において、前記一対の支持片のそれぞれに対して鉛直方向に把持力を及ぼすことで各支持片を把持する把持機構を設けると共に、該把持機構による該一対の支持片の把持位置を該ケース枠体に対して鉛直方向で調節する支持位置調節機構を設けた請求項7又は8に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項10】
前記ケース枠体の底部には、前記モジュール本体の下端を鉛直下方から当接状態で支持せしめる底面支持部が設けられている請求項9に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項11】
複数の前記膜モジュールの整列方向に延びて、各該膜モジュールの前記各支持片に対して鉛直方向両側から重ね合わせられる一対の長手状の連結部材と、これら一対の連結部材を相互に接近方向に締め付けて該一対の連結部材間で各該膜モジュールの各該支持片を把持せしめる締結部材とを、含んで前記把持機構が構成されている請求項9又は10に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項12】
前記ケース枠体における前記把持機構による、前記一対の支持片の把持部位には、超音波振動吸収材が介在配置されている請求項9乃至11の何れか1項に記載の浸漬型膜分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149064(P2010−149064A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331156(P2008−331156)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(509000862)志摩環境事業協業組合 (4)
【Fターム(参考)】