説明

浸漬式表面処理装置

【課題】持ち込まれる異物、発生する泡の影響を極力抑えることのできる浸漬式表面処理装置を提供する。
【解決手段】処理槽3の被処理物の入槽側3Aは、処理液5の少なくとも上層流を被処理物の水平移動方向に対し順方向流FL1とし、出槽側3Bは処理液5の流れを対向流FL2とする攪拌手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理物を処理槽内の処理液に浸漬して表面処理する浸漬式表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車ボディの塗装の下塗り塗装工程では、たとえば脱脂処理、化成処理あるいは電着塗装などに、自動車ボディを処理液または塗料液中に浸漬させる浸漬式表面処理装置が広く用いられている。
【0003】
この種の浸漬式表面処理装置では処理槽や塗料槽には大量の処理液や塗料液が用いられ、特に電着塗料液は、常時あるいは間欠的に攪拌しないと顔料沈降が生じ、塗膜が平滑でなくなり、これが上塗り塗膜にまで影響を及ぼす。
【0004】
また、電着塗装においては、塗膜形成時、被塗面で反応ガスが発生し、また、放置すると泡の滞留により、析出中の塗膜内に残留して塗膜欠陥が生じる。槽内の電着塗料液に適当な流速を与え、これらの顔料沈降、反応ガス、泡の滞留による欠陥の発生を防止する必要がある。
【0005】
さらに、電着塗装においては、塗装工程の前工程である溶接工程等での金属粉が、洗浄工程が設けられているとしても、自動車ボディに付着したまま塗装工程に持ち込まれる。電着塗装工程の前処理工程での、このような異物の電着槽内への混入は、塗膜欠陥を引き起こすことになる。
【0006】
このため、塗料液の顔料沈降、反応ガス残留、泡の滞留の防止、金属粉などの異物の除去のため、槽内の攪拌手段または装置が利用される。脱脂処理、化成処理の工程段階においても同様な問題が発生する場合があり、これらの場合にも、槽内の攪拌手段または装置が利用される。
【0007】
従来から、塗料液の流方向を自動車ボディの移動方向と逆一方向とする攪拌手段を有する電着塗装装置(特許文献1)、塗料液の流方向を自動車ボディの移動方向と順一方向とする攪拌手段を有する電着塗装装置(特許文献2)、さらには、塗料液の表面域及び中間域の流方向を自動車ボディの移動方向と逆方向とし、底面域を自動車ボディの移動方向と同方向とする攪拌手段を有する電着塗装装置(特許文献3)が工夫され用いられてきた。従来の表面処理装置では、槽内に持ち込まれた異物、鉄粉等は沈降し、底部域の流れに乗って入槽側に運ばれ、蓄積する傾向があった。これらの除去は、槽内液をセットリングタンクに移送後取り除く必要があった。
【特許文献1】特許第3486096号公報(要約、図1)
【特許文献2】特許第3299922号公報(要約、図1)
【特許文献3】特許第3416122号公報(要約、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、塗料液の上層及び中層流の流方向を逆方向であれ、順方向であれ、一方向に流す従来の電着塗装装置の場合は、持ち込まれた異物、発生した泡が、分散、又は集中する問題がある。順方向では異物、泡は入槽側から電着槽全体に拡がる傾向がきわめて強く、また、逆方向では、入槽側に集まり被処理物に異物が付着し易い傾向が強い。
【0009】
上記は電着塗装装置での問題を中心に述べたが、アルカリ化合物を主成分とする脱脂液が満たされた脱脂処理槽を用いる脱脂処理装置や、リン酸亜鉛を主成分とする化成処理液が満たされた化成処理槽を用いる化成処理装置においても同様の金属粉などの異物付着や発生した泡についての同様の問題を抱えている。
【0010】
そこで本発明の課題は、持ち込まれる異物、発生する泡の影響を極力抑えることのできる新たな浸漬式表面処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明では、被処理物を処理槽内の処理液に浸漬して表面処理する浸漬式表面処理装置であって、前記処理槽の被処理物の入槽側は、前記処理液の少なくとも上層流を前記被処理物の水平移動方向に対し順方向流とし、出槽側は前記処理液の流れを対向流とする攪拌手段を有する浸漬式表面処理装置とする。
【0012】
これによって、入槽側は、前記処理液の少なくとも上層流を前記被処理物の水平移動方向に対し順方向流とし、出槽側は前記処理液の流れを対向流とする攪拌手段により、被処理物とともに入槽側から持ち込まれる異物、泡は入槽側の順方向流によって、すばやく排除され、これらの異物、泡の付着を抑制できる。さらに、出槽側は、処理液の流れが対向流とされるため、処理液流と被処理物との相対速度を高めて、異物、泡の付着を抑制できる。これらにより塗装品質などの品質劣化は、効果的に防止できる。
【0013】
また、前記順方向流と前記対向流とのぶつかる位置の前記処理槽の長手方向サイドに泡きり用のサイドオーバーフロータンクを設ければ、被処理物とともに入槽側から持ち込まれる異物、泡は入槽側の順方向流によって、すばやく泡きり用のサイドオーバーフロータンクに流れ込むため、これらの異物、泡の付着を抑制できる。さらに、泡きり用のサイドオーバーフロータンクの位置から出槽側は、処理液の流れが対向流とされるため、処理液流と被処理物との相対速度を高めて、異物、泡の付着を抑制できる。これらの異物、泡は出槽側に滞留せず、そのまま泡きり用のサイドオーバーフロータンクに流し込まれる。これらにより塗装品質などの品質劣化は、効果的に防止できる。
【0014】
また、前記攪拌手段による前記順方向流と前記対向流とのぶつかる位置を、前記処理槽の長手方向の長さに対し1/3乃至1/4の入槽側近傍の位置とし、この位置の前記処理槽の長手方向サイドに泡きり用のサイドオーバーフロータンクを設けた浸漬式表面処理装置とすれば、泡きり用のサイドオーバーフロータンクへの流れ込みを左右バランスよくスムーズにでき、被処理物の左右バランスのよい加工処理が可能となる。
【0015】
また、前記処理槽内の入槽側端部に前記順方向流補強の補強用ライザー(液吹き出し用配管)を設けた浸漬式表面処理装置とすれば、入槽側上層の流速を高めて、異物、泡の付着を抑制でき、これらの異物、泡はそのまま泡きり用のサイドオーバーフロータンクにスムーズに流し込め、塗装品質などの品質劣化を抑制できる。
【0016】
また、前記処理槽の入槽側底部にろ過用のホッパーを設けた浸漬式表面処理装置とすれば、処理槽内に持ち込まれた異物の除去をスムーズにできる。
【0017】
また、前記処理槽の前記入槽側における、前記処理液の下層流を対向方向流とすれば、ろ過用のホッパーの処理槽内の入槽側底端部への配設を可能とでき、処理槽内に持ち込まれた異物をさらにスムーズに排出できる。
【0018】
また、前記浸漬式表面処理装置が、前記処理槽を電着槽とし、前記処理液を電着塗料液とし、この電着塗料液に浸漬した被処理物と電極の間に電圧をかけて塗膜形成を行う電着塗装装置である浸漬式表面処理装置とすれば、特に、電着槽への入槽時における被処理物が反応ガスと接触することを抑制でき、電着塗装における塗装品質などの品質劣化を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、入槽側は、前記処理液の少なくとも上層流を前記被処理物の水平移動方向に対し順方向流とし、出槽側は前記処理液の流れを対向流とする攪拌手段を備えたことにより、被処理物とともに入槽側から持ち込まれる異物、泡は入槽側の順方向流によって排除され、これらの異物、泡の被処理物への付着を抑制できる。さらに、出槽側は、処理液の流れが対向流とされるため、処理液流と被処理物との相対速度を高めて、異物、泡の付着を抑制できる。これらにより塗装品質などの品質劣化は、効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を、図を参照しつつ説明する。
【0021】
図1乃至図3は、本発明による浸漬式表面処理装置を電着塗装装置とした場合の一実施形態を示す。図1は、処理液、ここでは電着塗料液の基本的流れを示す説明平面図で、図2は、図1の電着処塗装装置の処理槽、ここでは電着槽の長手方向の中央線に沿った説明断面図で、流れ方向、パイプ、ノズルの位置と噴出し方向を示す。図3は、図1の電着処塗装装置の電着槽の説明斜視図で、パイプ先端とノズルの位置と噴出し方向を示す。なお、図2ではノズルの一部を省略して示す。
【0022】
この実施の形態の電着塗装装置1は、図1乃至図3に示すように、長い船状(平面長方形状)の電着槽(処理槽)3を有し、この電着槽3内に電着塗料液5が満たされている。図2に示すように、被塗物(被処理物)24(ここでは自動車ボディを例としている)は、ハンガ22に搭載されオーバーヘッドコンベア20により一定速度で搬入される。矢印X1にてその搬入方向を示す。また矢印X2にて、オーバーヘッドコンベア20の運行方向を示す。オーバーヘッドコンベア20は、電着槽3内へ被塗物24を全没させるために、電着槽3の入槽側3Aで下向きに傾斜され、電着槽3の中央有効範囲3Cにおいて被塗物24が全没する高さを水平に保ち、出槽側3Bで上向き傾斜とされる。
【0023】
図2に示すように、電着槽3の中央有効範囲3Cの長さは、塗装に適切な全没時間が確保されるように設定される。カチオン型電着塗装では、電着槽3の側壁および底壁に配置された電極板(図示を省略する。)を介して、電着塗料液5に直流電圧が印加され、被塗物24がアースされ、被塗物24に電着塗膜が形成される。
【0024】
図1に示すように、電着槽3の長手方向の長さに対し1/3乃至1/4の入槽側3A近傍の、電着槽3の長手方向両サイドに泡きり用のサイドオーバーフロータンク7A,7Bを設ける。このサイドオーバーフロータンク7A,7Bは、それぞれ電着槽3の側面壁切込部3K,3L(図3に示す)によって電着槽3と繋がっており、配置位置は後述する攪拌手段による順方向流と対向流とのぶつかる位置としている。このサイドオーバーフロータンク7A,7Bには、それぞれ吸引ポンプP、フィルタF、が繋がれたパイプ11Pに伸びる吸引口11S、吸引ポンプP、フィルタF、が繋がれたパイプ12Pに伸びる吸引口12Sがサイドに設けられ、処理槽3内の入槽側3A端部上層に設けられた順方向流を補強する補強用ライザー10などに繋がれる。図3にも示すように、補強用ライザー10は、パイプ10Pと多数の順方向に向いたノズル10Nを有する。
【0025】
図2に示すように、入槽側3Aの下部には、大型のホッパー13が、沈殿する異物を強力に除去するために設けられる。ホッパー13はパイプ13PによりポンプP,フィルタFと繋がれ、その先は、縦パイプ13P2,13P3に繋がれる。この縦パイプ13P2,13P3には、上層と中層に、順方向を向いた複数のノズル13N2,13N3がそれぞれに設けられ、さらに、その先端には、下層に、対向方向を向いた複数のノズル13N4,13N5がそれぞれに設けられる。図2には、入槽側3A側から見て、左サイド側に配置された、ノズル及びパイプを主として示しているが、図3に示すように、右サイドには、それらと対称に、縦パイプ14P2,14P3に順方向を向いた複数のノズル14N2,14N3がそれぞれに設けられ、さらに、その先端には、対向方向を向いた複数のノズル14N4,14N5がそれぞれに設けられる。これらの縦パイプ14P2,14P3もパイプ13P(図3には図示せず)によりフィルタF,ポンプPを介してホッパー13に繋がれる。
【0026】
図3に示すように入槽側3Aの斜面3A1に沿って、複数のパイプ15P1乃至15P3がそれぞれ斜面を登る方向へ向いた複数のノズル15N1を持って、幅方向に水平に配置されている。入槽側3Aの水平底面3A2に沿って、複数のパイプ15P4乃至15P6がそれぞれ対向方向へ向いた複数のノズル15N2をもって、幅方向に水平配置されている。
【0027】
図2に示すようにサイドオーバーフロータンク7Aには、底部に吸引口17Sを有しポンプP,フィルタFと繋がれるパイプ17P1,17P2が設けられ、サイドオーバーフロータンク7Bにも同様、対称的に吸引口(図示せず)が配設される。
【0028】
図3に示す複数のパイプ15P1乃至15P6は、上記のホッパー13、吸引口11S,12S,17S等のいずれかにポンプP,フィルタFを介して繋がれる。
【0029】
サイドオーバーフロータンク7A、7Bから出槽側3Bに近い電着槽3内には、サイドオーバーフロータンク7A底部に設けられた吸引口17Sからパイプ17P2を介して繋がれた縦パイプ17P3乃至17P9が入槽側3Aから向かって左側サイドに設けられ、同様に、サイドオーバーフロータンク7B底部に設けられた吸引口(図示せず)からパイプ(図示せず)を介して繋がれた縦パイプ18P3乃至18P9が入槽側3Aから向かって右側サイドに設けられる。これらの縦パイプ17P3乃至17P9,18P3乃至18P9のそれぞれには、いずれも対向方向を向いた複数のノズル17N1、18N1が設けられている。
【0030】
出槽側3Bに近い側の電着槽3内の水平底面に沿って、複数のパイプ16P1乃至16P6がそれぞれ対向方向へ向いた複数のノズル16N1をもって、幅方向に水平配置されている。出槽側3Bの斜面に沿って、複数のパイプ16P7乃至16P9がそれぞれ斜面を下る方向へ向いた複数のノズル16N6をもって、横方向に水平に配置されている。
【0031】
複数のパイプ16P1乃至16P9などは、上記のホッパー13、吸引口11S,12S,17S等のいずれかにポンプP,フィルタFを介して繋がれる。各パイプには、ポンプP,フィルタFのほかに、電着塗料液を適切な温度に調節するための熱交換器を必要に応じ設ける。
【0032】
なお、ここでの攪拌手段は、複数のパイプと、これに設けられた複数のノズル、ポンプ、フィルタ、を含む。
【0033】
次に電着槽3内の電着塗料液5の流れについて図1乃至図3に基づき説明する。
【0034】
上記の構成から、電着槽3内の電着塗料液5の流れは、上面側から観察すれば、図1に示すように入槽側3Aの側では、順方向の流れFL1となり、それぞれのサイドオーバーフロータンク7A、7Bに流れFL4、FL3として流れ込み循環する。図2及び図3に示すように、ホッパー13に繋がった縦パイプ13P2,13P3,14P2,14P3の下層側の複数のノズル13N4,13N5,14N4,14N5により、また、パイプ15P1乃至15P3に設けられ、斜面を登る方向へ向いた複数のノズル15N1、パイプ15P4乃至15P6に設けられ、対向方向へ向いた複数のノズル15N2によって、入槽側3Aの側の流れは流れFL11のように、下層側が対向方向で、さらに斜面を登り、上層、中層は、順方向の流れとなる。この実施の形態では、さらに上層の順方向の流れに補強用ライザー10が加勢している。
【0035】
図1に示すように、出槽側3Bの側では、対向方向の流れ(対向流)FL2となり、それぞれのサイドオーバーフロータンク7A、7Bに流れFL6、FL7として流れ込み循環する。また図2に示すように、上層から下層までの流れが縦パイプ17P3乃至17P9の複数のノズル,18P3乃至18P9の複数のノズル(図3)と、幅方向パイプ16P1乃至16P9の複数のノズル(図3)によって、対向方向の一方向の流れFL12となる。なお、ここでの幅方向パイプ16P7と16P8とは、出槽側3Bの斜面に沿って置かれノズル16N6の方向が斜面に沿った下方に向いている。この流れの下層部は入槽側3Aの下層の流れFL12に合流し、その一部はホッパー13に吸引されて循環する。電着槽3の底部に停滞しがちな異物は、流れFL12と、流れFL11の底部の流れとによって、ホッパー13に吸引されて、排除される。
【0036】
さらにここでオーバーフロータンク7A,7Bについて説明しておきたい。図3には、一点鎖線で従来のオーバーフロータンク9を説明の便宜上示している。サイドオーバーフロータンク7A,7Bを設けたことにより、従来のオーバーフロータンク9は、廃止可能である。事実この実施の形態でも廃止されていることを前提に説明した。
【0037】
出槽側、または、入槽側の従来のオーバーフロータンク9の廃止は、まずもって長さ方向の省スペースを実現できる。また被処理物の必要に応じ、電着槽の延長によって通電時間を確保して、膜厚の適正化を図ることが可能となる。
【0038】
次に、上記の実施の形態での電着塗装装置1の動作と作用につき説明する。
【0039】
図1に示すように、入槽側3Aでは、電着塗料液の流れFL1,FL11(図2),FL3,FL4が循環して生じている。また、出槽側3Bでは、電着塗料液5の流れFL2,FL12(図2),FL6,FL7が循環して生じている。ここで、オーバーヘッドコンベア20のハンガ22に吊り下げられた被処理物24(ここでは自動車のボディが、図2に示されている。)が、オーバーヘッドコンベア20の動きにつれて図2の左方向から電着槽3の入槽側3Aの上部に近づき、オーバーヘッドコンベア20の下向き傾斜によって、斜めに入槽する。このとき被処理物24に付着し、前工程で処理し切れなかった金属粉などの異物が電着塗料液に混入し、被処理物24の入槽に伴う泡が発生する。これらの異物及び泡は、サイドオーバーフロータンク7A,7Bに補強用ライザー10の増流も加わり速やかに排出される。下方に沈む重い金属粉などの異物は、流れFL11に乗ってホッパー13に吸引され排出される。なお、補強用ライザー10は、被処理物24の入槽時に干渉することのない位置に配設されている。
【0040】
被処理物24は、入槽後水平に、電着槽3の中央有効範囲3Cにおいて全没するよう高さが保たれる。出槽側3Bでオーバーヘッドコンベア20の上向き傾斜によって、被処理物24は斜めに出槽し次の工程に至る。電着槽3の中央有効範囲3C及び出槽側3Bでの異物、泡は、電着塗料液5の対向方向の流れFL2,FL12,FL6,FL7によって、サイドオーバーフロータンク7A,7Bに速やかに排出される。流れが対向方向のため、相対流速も大きく、異物、泡と被処理物24との接触時間も短く、異物、泡の影響を抑制できる。
【0041】
なお、上記の実施の形態では、サイドオーバーフロータンクを両サイドに設けバランスのよい塗装品質を得るようにしているが、泡の少ない電着処理、化成処理、水洗処理においては、サイドオーバーフロータンクは、一方サイドのみにして省スペースとすることも可能である。
【0042】
さらに、サイドオーバーフロータンク、ホッパーも設けない場合にも、ノズルまたは補強用ライザーからの液噴射のために、必ず循環ポンプにより液を抜いてろ過し、それをノズルか槽内に戻す循環システムは設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明による浸漬式表面処理装置は、脱脂処理、化成処理、電着処理などに活用できるが、特に電着塗装装置に活用して有用である。また、各種の金属部品の表面処理に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による浸漬式表面処理装置を電着塗装装置とした場合の一実施形態における、塗料液の基本的流れを示す説明平面図である。
【図2】図1の電着塗装装置の電着槽長手方向の中央線に沿った説明断面図で、流れ方向、ノズルの位置と噴出し方向を示す。
【図3】図1の電着塗装装置の電着槽の説明斜視図で、ノズルの位置と噴出し方向を示す。
【符号の説明】
【0045】
1 電着塗装装置(浸漬式表面処理装置)、3 電着槽(処理槽)、3A 入槽側、3B 出槽側、3C 中央有効範囲、3K,3L 側面壁切込部、5 電着塗料液(処理液)、7A,7B サイドオーバーフロータンク、9 従来のオーバーフロータンク、10 補強用ライザー、13 ホッパー、20 オーバーヘッドコンベア、22 ハンガ、24 被塗物(被処理物)、FL1 順方向流(流れ),FL2 対向流(流れ),FL3,FL4,FL6,FL7 流れ、FL11 下層流(流れ)、FL12 流れ(対向流)、F フィルタ、P 吸引ポンプ、10P,11P,12P,13P,15P1乃至15P6,16P1乃至16P9,17P1,17P2 パイプ、13P2,13P3,14P2,14P3,17P3乃至17P9,18P3乃至18P9 縦パイプ、11S,12S,17S 吸引口、10N,13N2,13N3,13N4,13N5,14N2,14N3,14N4,14N5,15N1,15N2,16N1,16N6,17N1、18N1 ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理槽内の処理液に浸漬して表面処理する浸漬式表面処理装置であって、前記処理槽の被処理物の入槽側は、前記処理液の少なくとも上層流を前記被処理物の水平移動方向に対し順方向流とし、出槽側は前記処理液の流れを対向流とする攪拌手段を有することを特徴とする浸漬式表面処理装置。
【請求項2】
前記順方向流と前記対向流とのぶつかる位置の前記処理槽の長手方向サイドに泡きり用のサイドオーバーフロータンクを設けたことを特徴とする浸漬式表面処理装置。
【請求項3】
前記攪拌手段による前記順方向流と前記対向流とのぶつかる位置を、前記処理槽の長手方向の長さに対し1/3乃至1/4の入槽側近傍の位置とし、この位置の前記処理槽の長手方向サイドに泡きり用のサイドオーバーフロータンクを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の浸漬式表面処理装置。
【請求項4】
前記処理槽内の入槽側端部に前記順方向流補強の補強用ライザーを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浸漬式表面処理装置。
【請求項5】
前記処理槽の入槽側底部にろ過用のホッパーを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の浸漬式表面処理装置。
【請求項6】
前記処理槽の前記入槽側における、前記処理液の下層流を対向方向流とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の浸漬式表面処理装置。
【請求項7】
前記浸漬式表面処理装置が、前記処理槽を電着槽とし、前記処理液を電着塗料液とし、この電着塗料液に浸漬した被処理物と電極の間に電圧をかけて塗膜形成を行う電着塗装装置であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の浸漬式表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−182616(P2007−182616A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2580(P2006−2580)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】