説明

消波構造物用ユニット、消波構造物及び消波構造物用ユニットの使用方法

【課題】高い消波性能を示す消波構造物を容易に構築できる消波構造物用ユニットを提供する。
【解決手段】当該消波構造物用ユニット4は、ボックス5をもって形成されており、そのボックス形状に基づき、積み上げたり、施工面に敷設したりして、容易に構造物を構築できることになっている。また、当該消波構造物用ユニット4のボックス5内部には、自然石16をもって、空隙率が大きい表面層20が形成されていると共に、その表面層20よりも内部においては、割栗石7により、表面層20よりも空隙率が小さい内部層21が形成されており、その内部構造に基づき、予め、高い消波性能を確保されている。これにより、当該消波構造物用ユニットを構造物構成要素として利用することによって、高い消波性能を示す消波構造物を容易に構築できることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消波性能を有する消波構造物用ユニット、消波構造物及び消波構造物用ユニットの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
護岸には、特許文献1に示すように、傾斜した基礎壁面上に詰め材層(砕石又は栗石層)を寄せ掛けて設け、その詰め材層の表面を複数の塊状表面部材(石)により覆ってその塊状表面部材により護岸表面を構成したものが提案されている。具体的には、詰め材層は、各詰め材を係合させて一体化されたものが、その全体の重量を利用して基礎壁面に寄せ掛ける構成となっており、各塊状表面部材は、詰め材層における表面側の詰め材が崩れ落ちることを確実に防止すべく、アンカー部材を介して詰め材層にそれぞれ取付けられている。
ところで、上記護岸を含む構造物において、表面層の空隙率を大きくし(例えば50〜60%)、その表面層の空隙率よりも内部側の空隙率を小さくした場合(例えば30〜50%)には、表面側の構造(空隙率が大)に基づき、波の砕波、波の内部への案内、砕波に伴う飛沫発生抑制等に関し、好ましい結果を得ることができ、内部側の構造(低い空隙率)に基づき、その内部に導かれる波エネルギに対して、高い消波効果(減衰効果)を得ることができる。
【特許文献1】特許第2983207号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記構造物においては、高い消波性能を確保するために、上述のような構造(空隙率が異なる構造)にする必要があると共に、そのような構造を維持するために(内部材料が流失しないようにするために)、アンカー部材を用いて各塊状表面部材を詰め材層に取付けてその塊状表面部材により表面層を形成しなければならず、その施工作業は、その施工工事が大規模にならざるを得ないことと相まって、かなりの時間を要すると共に、作業負担を伴うものとなる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その第1の技術的課題は、高い消波性能を示す消波構造物を容易に構築できる消波構造物用ユニットを提供することにある。
第2の技術的課題は、上記消波構造物用ユニットを用いた消波構造物を提供することにある。
第3の技術的課題は、上記消波構造物用ユニットを使用するための消波構造物用ユニットの使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
構成面の一つが開口するボックスと、
前記ボックス内に該ボックスの開口を覆うように配置されて、外部に臨む表面層を形成する複数の塊状表面部材と、
前記ボックス内に前記表面層よりも内方側において充填されて、該表面層に隣接する内部層を形成する中詰め材と、
前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材と、を備えている、
ことを特徴とする消波構造物用ユニットとした構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜13の記載の通りとなる。
【0006】
上記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項14に係る発明)にあっては、
施工面に複数の消波構造物用ユニットが敷き詰められ、
前記各消波構造物用ユニットが、施工面に対して垂直方向において外部に開口するボックスと、該ボックス内に、該ボックスの開口側において該開口を覆うように配置されて表面層を形成する複数の塊状表面部材と、前記ボックス内に、前記表面層よりも内方側において充填されて内部層を形成する中詰め材と、前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材と、を備えている、
ことを特徴とする消波構造物とした構成としてある。この請求項14の好ましい態様としては、請求項15〜17の記載の通りとなる。
【0007】
上記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項18に係る発明)にあっては、
垂直に起立する裏込め壁に沿うようにして消波構造物用ユニットが垂直に積み上げられ、
前記各消波構造物用ユニットが、前部外方に向けて開口するボックスと、該ボックス内に、該ボックスの開口側において該開口を覆うように配置されて表面層を形成する複数の塊状表面部材と、前記ボックス内に、前記表面層よりも内方側において充填されて内部層を形成する中詰め材と、前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材と、を備えている、
ことを特徴とする消波構造物とした構成としてある。
【0008】
上記第3の技術的課題を達成するために本発明(請求項19に係る発明)にあっては、
消波構造物用ユニットとして、構成面の一つが開口するボックスと、該ボックス内に、該ボックスの開口側において該開口を覆うように配置されて表面層を形成する複数の塊状表面部材と、前記ボックス内に、前記表面層よりも内方側において充填されて内部層を形成する中詰め材と、前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材とを備えているものを複数用意し、
前記消波構造物用ユニットを、前記表面層を外部側方に向けつつ積み上げる、
ことを特徴とする消波構造物用ユニットの使用方法とした構成としてある。
【0009】
上記第3の技術的課題を達成するために本発明(請求項20に係る発明)にあっては、
消波構造物用ユニットとして、構成面の一つが開口するボックスと、該ボックス内に、該ボックスの開口側において該開口を覆うように配置されて表面層を形成する複数の塊状表面部材と、前記ボックス内に、前記表面層よりも内方側において充填されて内部層を形成する中詰め材と、前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材とを備えているものを複数用意し、
前記消波構造物用ユニットを、前記表面層を表面側に向けつつ施工面に敷き詰める、
ことを特徴とする消波構造物用ユニットの使用方法とした構成としてある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、当該消波構造物用ユニットのボックスとしての形状に基づき、積み上げたり、施工面に敷設したりして、容易に構造物を構築することができる一方、当該消波構造物用ユニットは、予め、高い消波性能を確保する観点から、空隙率が大きい表面層とその表面層よりも空隙率が小さくされた内部層とに形成されている。このため、当該消波構造物用ユニットを利用することにより、高い消波性能を示す消波構造物を容易に構築できることになる。
しかも、各塊状表面部材、中詰め材がボックスの各壁に基づき外力から保護されることから、各塊状表面部材、中詰め材が流失することを高い確実性をもって防止できることになり、長期に亘って高い消波性能を維持できることになる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、各塊状表面部材がボックスの開口端面に対して略面一になるように配置されていることから、当該消波構造物用ユニットにより構築される消波構造物において、平坦な面(垂直な護岸壁面、傾斜した護岸壁面)を形成して、平坦な面を要求する用途に的確に対応できることになる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、各塊状表面部材が、ボックスの開口端面よりも突出されていることから、当該消波構造物用ユニットにより構築される消波構造物において、粗度を高めることができ、流水エネルギ、波エネルギの吸収、減衰効果を高めることができることになる。
しかも、ボックス内に充填できる中詰め材の量を増加させて(空隙率を小さくして)、消波効果を高めることができることになる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、ボックスが非透水性壁をもって形成されていることから、ボックスの強度を高めることができ、これに伴い、設置後の信頼性は勿論、吊り上げ運搬等に対する当該消波構造物用ユニットの信頼性、取り扱い性をも高めることができることになる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、非透水性壁がコンクリート壁であることから、コンクリート壁をもって、前記請求項4に係る作用効果を具体的に実現できることになる。
【0015】
請求項6に係る発明によれば、ボックスが流水通過可能壁をもって形成されていることから、当該消波構造物用ユニットを用いて消波構造物を構築すれば、各消波構造物用ユニットにおける内部層同士間の連通が可能となり、波エネルギの減衰効果を高めて消波効果を向上させることができることになる。
【0016】
請求項7に係る発明によれば、流水通過可能壁が格子状の壁であることから、ボックスの壁として格子状の壁を用いることにより、前記請求項6に係る作用効果を具体的に実現できることになる。
【0017】
請求項8に係る発明によれば、アンカー部材が、その一端部をもって塊状表面部材に連結され、アンカー部材の他端部に抵抗力増大手段が備えられ、アンカー部材の一端部よりも他端側が内部層内に埋設されていることから、ボックス内に充填されて互いに噛み合った状態で係合することになる中詰め材と、アンカー部材(抵抗力増大手段)とを利用して、塊状表面部材を内部層に当接した状態で的確に保持できることになる。
また、アンカー部材を内部層に連結するに際して、アンカー部材の一端部よりも他端側(抵抗力増大手段)を中詰め材により埋設するだけで足りることになり、アンカー部材の他端部に対する連結作業を不要として作業性を向上させることができることになる。
【0018】
請求項9に係る発明によれば、アンカー部材が、その一端部をもって塊状表面部材に連結され、アンカー部材の他端部が、前記ボックスの開口に対向する構成壁に連結されていることから、当該消波構造物用ユニット全体の重量がアンカー部材の移動抵抗となり、その極めて大きな移動抵抗に基づき、塊状表面部材の脱落を確実に防止できることになる。
【0019】
請求項10に係る発明によれば、ボックスの開口に対向する構成壁が網状体をもって構成され、その網状体に対してアンカー部材の他端部が連結されていることから、網状体の網目、その網目を区画する線材を利用して、アンカー部材の他端部の連結作業を容易にすることができることになる。
【0020】
請求項11に係る発明によれば、当該消波構造物用ユニットのボックス形状を護岸構築用の用途に巧みに利用して、消波構造物として消波護岸を構築できることになる。
【0021】
請求項12に係る発明によれば、当該消波構造物用ユニットのボックス形状を根固め用の用途に巧みに利用して、消波構造物として、消波機能を有する根固め構造物を構築できることになる。
【0022】
請求項13に係る発明によれば、当該消波構造物用ユニットのボックス形状を人工リーフ用の用途に巧みに利用して、消波構造物として人工リーフを構築できることになる。
【0023】
請求項14に係る発明によれば、施工面に多数の消波構造物用ユニットが敷き詰められ、前記各消波構造物用ユニットが、施工面に対して垂直方向において外部に開口するボックス内に、該ボックスの開口側において、複数の塊状表面部材が覆うように配置されて表面層が形成されていると共に、該表面層よりも内方側において、前記塊状表面部材よりも小さい中詰め材が充填されて内部層が形成され、前記各塊状表面部材が、アンカー部材により、前記内部層に当接するようにそれぞれ保持されていることから、前記請求項1に係る消波構造物用ユニットを利用した消波構造物を得ることができることになる。
【0024】
請求項15に係る発明によれば、施工面が護岸施工用法面であることから、前記請求項1に係る消波構造物用ユニットを施工面に設置するだけで、消波構造物として、傾斜した消波護岸を得ることができることになる。
【0025】
請求項16に係る発明によれば、施工面が水中内とされ、各消波構造物用ユニットの表面層が根固め面を構成していることから、前記請求項1に係る消波構造物用ユニットを利用することにより、消波構造物として、消波機能を有する根固め構造物を簡単に構築できることになる。
【0026】
請求項17に係る発明によれば、施工面が人工リーフ用造成マウンドであることから、前記請求項1に係る消波構造物用ユニットを用いて敷設するだけで、消波構造物として、人工リーフを簡単に構築できることになる。
【0027】
請求項18に係る発明によれば、垂直な裏込め壁に沿うようにして消波構造物用ユニットが垂直に積み上げられ、各消波構造物用ユニットは、外部側方に開口するボックス内に、該ボックスの開口側において、複数の塊状表面部材が覆うように配置されて表面層が形成されていると共に、該表面層よりも内方側において、前記塊状表面部材よりも小さい中詰め材が充填されて内部層が形成され、各塊状表面部材が、アンカー部材により、内部層に当接するようにそれぞれ保持されていることから、前記請求項1に係る消波構造物用ユニットを利用することにより、消波構造物として、直立消波護岸を簡単に得ることができることになる。
【0028】
請求項19に係る発明によれば、前記請求項1に係る消波構造物用ユニットを積み上げるだけで、簡単に消波構造物としての直立消波護岸を構築できることになる。
【0029】
請求項20に係る発明によれば、前記請求項1に係る消波構造物用ユニットを施工面に敷き詰めるだけで、簡単に、消波機能を有する消波構造物を構築できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係る直立消波護岸を説明する説明図。
【図2】第1実施形態に係る直立消波護岸の構築のために用いられる消波構造物用ユニットを示す斜視図。
【図3】図2に係る消波構造物用ユニットを示す縦断面図。
【図4】図2に係る消波構造物用ユニットの組立過程を示す説明図。
【図5】図4の次の組立過程を説明する説明図。
【図6】図5の次の組立過程を説明する説明図。
【図7】図1に係る直立消波護岸の施工過程を説明する説明図。
【図8】図7の次の施工過程を説明する説明図。
【図9】第2実施形態に係る消波構造物用ユニットを説明する縦断面図。
【図10】図9に係る消波構造物用ユニットの組立過程を説明する説明図。
【図11】第3実施形態に係る消波構造物用ユニットを説明する斜視図。
【図12】第3実施形態に係る消波構造物用ユニットで用いられるアンカー部材と格子状壁(背壁部)との連結態様を説明する説明図。
【図13】第4実施形態に係るアンカー部材と格子状壁(背壁部)との連結態様を説明する説明図。
【図14】第5実施形態に係るアンカー部材と格子状壁(背壁部)との連結態様を説明する説明図。
【図15】第6実施形態に係る急勾配消波護岸を説明する縦断面図。
【図16】第7実施形態に係る緩勾配消波護岸を説明する縦断面図。
【図17】第7実施形態に係る緩勾配消波護岸に用いられる消波構造物用ユニットを示す斜視図。
【図18】図17に係る消波構造物用ユニットを説明する断面図。
【図19】第8実施形態に係る消波構造物用ユニットを説明する断面図。
【図20】第9実施形態に係る消波構造物用ユニットを説明する断面図。
【図21】図20に係る消波構造物用ユニットの組立過程を説明する説明図。
【図22】図21の次の組立過程を説明する説明図。
【図23】図22の次の組立過程を説明する説明図。
【図24】図23の次の組立過程を説明する説明図。
【図25】図24の次の組立過程を説明する説明図。
【図26】第10実施形態に係る消波構造物用ユニットを示す斜視図。
【図27】第10実施形態に係る消波構造物用ユニットの内部構造を説明する説明図。
【図28】第11実施形態に係る根固め構造物を説明する縦断面図。
【図29】第12実施形態に係る消波構造物用ユニットを説明する断面図。
【図30】図29に係る消波構造物用ユニットの組立過程を示す説明図。
【図31】図30の次の組立過程を説明する説明図。
【図32】図31の次の組立過程を説明する説明図。
【図33】図32の次の組立過程を説明する説明図。
【図34】図33の次の組立過程を説明する説明図。
【図35】第13実施形態に係る人工リーフを示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図8は第1実施形態を示す。その図1において、符号1は、海で用いられる直立消波護岸を示す。この消波護岸1においては、その下部において土台としての基礎捨石2が形成され、その基礎捨石2の上面には、コンクリート方塊3が前面(図1中、左面)を揃えつつ積み上げられている。
【0032】
前記コンクリート方塊3のうち、最上段のものの上に実施形態に係る消波構造物用ユニット4が複数積み上げられている。この各消波構造物用ユニット4は、その各前面を前記コンクリート方塊3の前面に揃えて直立に積み上げられており、コンクリート方塊3、複数の消波構造物用ユニット4の各前面は、垂直な護岸壁面を形成している。
【0033】
前記各消波構造物用ユニット4は、図2、図3に示すように、ボックス5と、該ボックス5内に収納される複数のアンカー付き塊状表面部材6と、該ボックス5内に充填される中詰め材としての割栗石7とを備えている。
【0034】
前記ボックス5は、非透水性壁としてのコンクリート壁を用いて直方体形状に形成されている。このボックス5は、コンクリート壁として、一対の側壁部8、上壁部9、底壁部10、背壁部11を有し、それら各壁部8〜11が、その外形形状を形成する一方、その表部には、壁が設けられずに表部開口12が形成され、ボックス5の内部空間は、その表部開口12を通じて外部に臨むことになっている。本実施形態においては、このボックス5として、一対の側壁部8、底壁部10、背壁部11が一体的に成形されたものに対して、上壁部9を構成するコンクリート壁30を、埋め込みナット、ボルト等の取付け具或いは嵌め込み(図示略)を利用して取付けるものが用いられており、その大きさは、高さL1=2400mm前後,横幅L2=2400mm前後、奥行きL3=2500mm前後とされている。
【0035】
このボックス5には、図1、図2、図4、図5に示すように、その両側壁部8の上端面(上面)には突部13が形成され、そのボックス5の底壁部10(側壁部8下端面)には凹部14が形成されている。突部13は、その突部13を備えるボックス5の上段に配置されるボックス5の凹部14に嵌合され、凹部14は、その凹部14を備えるボックス5の下段に配置されるボックス5の突部13を嵌合状態をもって受け入れることになっており、これにより、各ボックス5は、上下方向に直立に積み上げられた状態で前後方向(図1中、左右方向)に移動することが規制されることになっている。また、このボックス5の背壁部11内面には、後述のアンカー部材17を取付けるための複数の取付け孔15が形成されている(図3等参照)。この複数の取付け孔15は、予め又はアンカー部材17を取付けるに際して、背壁部11内面にドリル等を用いて形成される。
【0036】
前記ボックス5内に収納される各アンカー付き塊状表面部材6は、図1、図3、図4に示すように、塊状表面部材としての自然石16と、アンカー部材17とを一体的に備えている。自然石16としては、できるだけ強固なものが好ましく、本実施形態においては、600mm程度の大きさのものが用いられている。アンカー部材17は、本実施形態においては、線材18を構成する2本の構成線材18a,18bと、その両構成線材18a,18bを連結する長さ調整手段としてのターンバックル19とからなっている。一方の構成線材18aは、その一端部が自然石16に連結され、その他端部(雄ねじを形成したもの)はターンバックル19に連結(螺合)されている。自然石16に対する一方の構成線材18aの連結は、自然石16に孔を形成して、その孔内に接着剤と共にその一方の構成線材の一端部を挿入して一体化したり、その孔内にナット(例えばアンカー式)を埋め込み、そのナットに一方の構成線材18aの一端部(雄ねじを形成したもの)を螺合して一体化すること等が行われる。他方の構成線材18bは、その一端部(雄ねじを形成したもの)がターンバックル19に連結(螺合)され、その他端部は、前記ボックス5の背壁部11内面における取付け孔15に対する取付け端部とされている。ターンバックル19は、構成線材18a(18b)に対して相対回転させることができることになっており、このターンバックル19により、一方の構成線材18aの他端部と他方の構成線材18bの一端部とを接近、離間させて、アンカー部材17の全体としての延び長さを調整できることになっている。
【0037】
このような各アンカー付き塊状表面部材6は、図1〜図3に示すように、各自然石16がボックス5の表部開口12側において該表部開口12を閉塞するように配置され、各アンカー部材17はボックス5内方に略水平に延びることになっている。このボックス5の表部開口12を閉塞する自然石16は、ボックス5の開口側において、表面層20を構成しており、その表面層20(各自然石16)は、ボックス5の表部開口12端面に対して略面一(突出しない状態)とされている。各アンカー部材17は、その線材18(他方の構成線材18b)の他端部がボックス5の背壁部11内面における取付け孔15に接着剤と共に挿入されて、該ボックス5の背壁部11に一体化されており、この各アンカー部材17により、各自然石16がボックス5内から脱落することが防がれている。この場合、必要に応じて、各アンカー部材17におけるターンバックル19の機能が利用され(アンカー部材17の全長調整)、自然石16の位置が調整される。
【0038】
前記割栗石7は、図1、図3に示すように、ボックス5内に前記表面層20よりも内方側(後方側)おいて充填されている。各割栗石7は、ボックス5内での充填により、互いに噛み合って、移動できにくくなっていると共に、ボックス5の表部開口12における表面層20(複数の自然石16)により、その表部開口12から流失することが規制されることになっており、この充填された割栗石7によって内部層21が構成されている。この割栗石7には、前記自然石16よりも小さいもの(径が200mm程度のもの)が用いられており、この割栗石7が構成する内部層21の空隙率は、自然石16が構成する表面層20の空隙率よりも小さくなっている。
【0039】
これにより、各消波構造物用ユニットは、護岸壁構成要素として保護機能を発揮するだけでなく、表面側の構造(空隙率が大)に基づき、波の砕波、波の内部への案内、砕波に伴う飛沫発生抑制等に関し、好ましい結果を発揮し、内部側の構造(低い空隙率)に基づき、その内部に導かれる波に対して、高い消波効果(減衰効果)を発揮することになっている。また、この各消波構造物用ユニットおいては、仮に同じ空隙率(例えば50%)であっても、表面が大きい空隙で、内部が小さい空隙であることによっても、効率的に波を消波する効果を得ることができる。
【0040】
前記基礎捨石2、前記コンクリート方塊3、前記積み上げられた複数の消波構造物用ユニット4の背面側(後方側)には、図1に示すように、陸側に向って順に、裏込砕石層22、砂層23が設けられている。裏込砕石層22は、最上段の消波構造物用ユニット4の略上面の高さまで砕石24が充填されており、その裏込砕石層22の層厚は、基礎捨石2から最上段のコンクリート方塊3程度の高さまでは、下方側から上方に向うに従って陸側に拡がるように傾斜され、その最上段のコンクリート方塊3からその裏込砕石層22の上端面までは、上方に向うに従って海側に狭まるように傾斜されている。これにより、裏込砕石層22の設置安定性が確保され、裏込砕石層22が砂層23側に倒れ掛かることが防止されている。砂層23は、裏込砕石層22に対して隣接するように配置されており、砂層23が裏込砕石層22を覆い被さるような領域においては、砂層23と裏込砕石層22との間に防砂シート25が敷設されている。
【0041】
前記最上段の消波構造物用ユニット4上には、図1に示すように、天端ブロック26が設けられ、その天端ブロック26よりも陸側において、前記裏込砕石層22及び前記砂層23上に石層27を介して天端コンクリート層28が敷設されている。天端ブロック26は、その上面をもって、積み重ねられた消波構造物用ユニット4の上方に平坦面を形成し、天端コンクリート層28は、天端ブロック26の上面に連なる平坦面を形成している。尚、図1において、符号H1は海面の高水位を示し、H2は海面の低水位を示している。
【0042】
したがって、このような消波護岸1においては、その消波護岸1を構築する各消波構造物用ユニット4に、予め、空隙率が大きい表面層20とその表面層20よりも空隙率が小さくされた内部層21とが形成されていることから、高い消波性能を示すことになる。
また、各消波構造物用ユニット4のボックス5としての形状に基づき、容易に積み上げることができ、当該直立消波護岸1を簡単に構造物を構築できることになる。
しかも、各自然石16(塊状表面部材)、割栗石7(中詰め材)がボックス5の各壁部8〜11に基づき外力から保護されることから、各自然石16、割栗石7が流失することを高い確実性をもって防止できることになり、長期に亘って高い消波性能を維持できることになる。
【0043】
次に、上記消波護岸に用いられる消波構造物用ユニット4の組立方法について説明する。
先ず、前記ボックス5と、複数の前記アンカー付き塊状表面部材6と、前記割栗石7とを用意する。この場合、ボックス5は、上壁部9を構成するコンクリート壁30を除き(図4〜図6参照)、そのボックス5の内部空間を、表部開口12と上部開口29とを介して外部に対して開放しておく。
【0044】
次に、図4に示すように、複数(図においては、3つ)のアンカー付き塊状表面部材6をボックス5内における底壁部10上に配置する。この場合、各アンカー付き塊状表面部材6のアンカー部材17を自然石16よりも内方側に位置させて背壁部11側に向けて略水平に延ばすように配置する一方、アンカー付き塊状表面部材6の自然石16を表部開口12側に配置して、側壁部8間を自然石16により敷き詰める。このとき、各アンカー付き塊状表面部材6が長尺部材であるけれども、ボックス5が、表部開口12だけでなく、上部開口29によっても、開口されていることから、各アンカー付き塊状表面部材6の収納、配設作業は容易に行われる。
【0045】
次に、各アンカー部材17(線材18)の他端部(他方の構成線材18bの他端部)をボックス5の背壁部11内面の取付け孔15に接着剤と共に挿入して、アンカー部材17を背壁部11に一体化する。このとき、各アンカー付き塊状表面部材6の自然石16が所定位置に位置するようにすべく、各アンカー部材17全体の延び長さがターンバックル19により適宜調整される。
尚、背壁部11に対するアンカー部材17の一体化に関しては、接着剤に換えて、メタルヒットアンカー等の他の手段を用いてもよい。
【0046】
次に、図5に示すように、割栗石7を、アンカー付き塊状表面部材6の自然石16よりも内方側においてボックス5内に充填する。この場合、割栗石7は、各自然石16の上部位の高さまで充填され、この割栗石7の充填層は、各アンカー部材17を埋設すると共に、次の新たなアンカー付き塊状表面部材6の敷設のための敷設面を形成することになる。以後、このようなアンカー付き塊状表面部材6の敷設作業と割栗石7の充填作業とは、順次、繰り返され、その作業は、図6に示すように、ボックス5の上部に至るまで行われる。
【0047】
次に、図2に示すように、ボックス5の上部にコンクリート壁30を取付け、ボックス5の上部に上壁部9を形成する。これにより、消波構造物用ユニット4の組立を終えたとことになり、このような消波構造物用ユニット4は、直立消波護岸1の構築のために供される。
【0048】
次に、上記消波構造物用ユニット4の使用方法(消波構造物としての直立消波護岸1を構築するための施工方法)について説明する。
【0049】
先ず、図7に示すように、前述の基礎捨石2の上面に、コンクリート方塊3を配置し、それらの背面側において、砕石24を最上段のコンクリート方塊3の上面にまで充填して裏込砕石層22を形成する。
【0050】
次に、図8に示すように、前記消波構造物用ユニット4をコンクリート方塊3の上に配置する。このとき、消波構造物用ユニット4は、その表部開口12を海側に向けつつ、その表部開口12端面がコンクリート方塊3の表面に対して面一となるように配置する。
【0051】
次に、上記消波構造物用ユニット4の背面側において、その上面まで砕石24を充填して裏込砕石層22を上方に積み増す。この場合、この裏込砕石層22の陸側境界面32は、上方に向うに従って海側(消波構造物用ユニット4)に近づくように傾斜され、その裏込砕石層22の陸側境界面32に防砂シート25が敷設される。以後、このような消波構造物用ユニット4の積み上げ作業と、その背後への砕石24の充填(裏込砕石層22の積み増し)と、その積み増される裏込砕石層22の陸側境界面32に対する防砂シート25の敷設作業とが繰り返され、消波構造物用ユニット4は、所定段になるまで積み上げられ、その最上段の消波構造物用ユニット4の上に天端ブロック26が敷設される(図1参照)。
【0052】
次に、上記積み上げられた消波構造物用ユニット4の背面側において、裏込砕石層22の陸側境界面32上に砂が天端ブロック26の下部付近の高さまで埋め戻され、砂層23と裏込砕石層22とは隣り合う層をなすことになる。この場合、コンクリート方塊3よりも上方側の領域においては、砂層23と裏込砕石層22との間に防砂シート25が介在されることになり、砂層23の砂が裏込砕石層22に入り込むことが防止されることになる。
【0053】
次に、前記裏込砕石層22の上端面と砂層23の上端面とに石層27を介して天端コンクリート層28を形成する。この天端コンクリート層28は、その上面が前記天端ブロック26の上面に連続するように形成され、この作業を終えることにより、直立消波護岸1が構築されたことになる。
【0054】
図9、図10は第2実施形態、図11、図12は第3実施形態、図13は第4実施形態、図14は第5実施形態、図15は第6実施形態、図16〜図18は第7実施形態、図19は第8実施形態、図20〜図25は第9実施形態、図26、図27は第10実施形態、図28は第11実施形態、図29〜図34は第12実施形態、図35は第13実施形態を示す。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図9、図10に示す第2実施形態は、前記第1実施形態に係る消波構造物用ユニット4の変形例を示す。この第2実施形態においては、アンカー付き塊状表面部材6として、線材18の一端部が自然石16に連結され、その線材18の他端部にストッパ部(線材を曲げ加工してリング状に形成したもの)33が形成されている一方、中央部に挿通孔(図示略)を有するストッパパネル34が用意され、そのストッパパネル34の孔に線材18を挿通させ、そのストッパパネル34がストッパ部33により規制されて抜け出ないようにしたものが用いられている。
【0056】
このような各アンカー付き塊状表面部材6は、本実施形態においては、アンカー部材17がボックス5内で内部層21内に埋設されて、その内部層(割栗石7が噛み合った状態で形成されたもの)21を構成する割栗石7とストッパパネル34とが係合されており、その係合に基づき、アンカー部材17の移動抵抗が確保されている。
【0057】
したがって、アンカー部材17における線材18の他端部をボックス背壁部11に取付けなくても、そのアンカー部材17(ストッパパネル34等)を内部層21に埋設するだけで、その内部層21を構成する割栗石7とストッパパネル34とを係合させて、自然石16がボックス5内から脱落することを防止できることになる。
しかも、当該消波構造物用ユニット4の組立過程においては、図10に示すように、アンカー付き塊状表面部材6をボックス5内に配置して、そのアンカー部材17を割栗石7により埋設するだけでよく、そのアンカー部材17の他端部をボックス背壁部11に取付ける作業を省くことができることになり、組立作業を簡略化できることになる。
【0058】
図11、図12に示す第3実施形態においては、ボックス5が、流水通過可能壁である格子状の壁部8〜11(格子目35(例えば一辺0.2m前後)を有する壁体)により構成されており、表部開口12だけでなく、その壁部8〜11の格子目35に基づいても、ボックス5内外間の流水の流通性が確保されている。このボックス5は、本実施形態においては、帯材(鉄材、鋳鉄、プラスチック(繊維強化プラスチックを含む)等)を用いて形成された壁部を組み立てることにより形成されているが(ボルト、ナット等の留め具を利用)、コンクリートを用いて形成してもよい。このボックス5内には、前記各実施形態同様、複数のアンカー付き塊状表面部材6が収納されている。各アンカー付き塊状表面部材6は、その移動抵抗を確保するために、第2実施形態に示すように、アンカー部材17の他端部にストッパパネル34等を設けて、そのストッパパネル34と内部層(割栗石7)21とを係合するようにしてもよいが、本実施形態においては、背壁部11の格子目区画材36(帯材)を連結に利用すべく、図12に示すように、線材18(アンカー部材17)の他端部にリング状部37を形成し、そのリング状部37と背壁部11の格子目区画材36とが連結手段としてのシャックル38を介して連結されている。この消波構造物用ユニット4の組立においても、前記第1実施形態同様の方法(当初、ボックス5の表部、上部を開口しておき、表面層20,内部層21の形成後、上部開口を閉じて上壁部9を形成するもの)が採られる。
【0059】
したがって、この消波構造物用ユニット4を用いて護岸1を構築すれば、各ボックス5の格子目35を介して各ボックス5内の内部層21同士が連通することになり、波エネルギの減衰効果を高めることができることになる。
【0060】
図13に示す第4実施形態は、前記第3実施形態の変形例を示す。この第4実施形態においては、背壁部11内面にアンカー部材17を取付けるための取付け部材として、フック部39が取付けられ、そのフック部39にアンカー部材17のリング状部37が連結手段としてのシャックル38を介して連結されている。
【0061】
図14に示す第5実施形態は、前記第3実施形態の変形例を示す。この第4実施形態においては、背壁部11にアンカー部材17(線材18)の他端部を取付けるための挿通孔41が形成されている一方、アンカー部材17の他端部に雄ねじ40が形成され、その線材18の他端部を背壁部11の挿通孔41に挿通させた後、その他端部にナット42を螺合されることになっている。これにより、ナット42をストッパとして利用して、アンカー部材17がボックス5の表部外方に移動することが規制されることになっている。特に本実施形態においては、支持強度を高める観点から、挿通孔41は、帯材の交差部に形成されている。
【0062】
図15に示す第6実施形態は、前記第1実施形態に係る消波構造物用ユニット4を急勾配消波護岸1の構築のために利用した内容を示している。この第6実施形態においては、基礎ブロック43上に消波構造物用ユニット4が、例えば1:0.5等の急勾配をもって積み上げられており、護岸壁面を形成する表面層20は、上方に向かうに従って後方に引っ込むように傾斜されている。この積み上げられた消波構造物用ユニット4の背面には、土砂等の吸い出しを防止する吸い出し防止材44が敷設されている。尚、Hは海面の水位を示す。
【0063】
図16〜図18に示す第7実施形態は、消波構造物用ユニット4を緩勾配消波護岸1の構築のために利用した内容を示している。この第7実施形態においては、多数の消波構造物用ユニット4が、その表面層20を上側にしつつ、施工面としての法面上に吸い出し防止材44を介して敷設されており、その各消波構造物用ユニット4により、法面が保護されていると共に、消波機能が確保されることになっている。この場合、各各消波構造物用ユニット4同士は、互いに連結しておくことが好ましい。
【0064】
この緩勾配消波護岸1に用いられる消波構造物用ユニット4には、前記直立消波護岸(第1実施形態)、急勾配消波護岸(第2実施形態)に用いられるものと同様のものを用いてもよいが、本実施形態においては、図17、図18に示すように、第1,第2実施形態に係るものよりも奥行きが浅い(短い)消波構造物用ユニット4が用いられている。この消波構造物用ユニット4におけるボックス5の背壁部11内面に取付け部材としてフック部39が取付けられ、そのフック部39に対して、アンカー部材17(線材18)の他端部に形成されるリング状部37が複数のシャックル38を介して連結されている。この複数のシャックル38は、アンカー部材17とボックス5の背壁部11とを連結する機能の他に、表層部20を構成する自然石16の位置調整を行う役割を有している。この消波構造物用ユニット4の組立方法に関しても、前記第1実施形態と同様の方法により組み立てられる。
【0065】
図19に示す第8実施形態においては、内部層21と背壁部11との間にコンクリート層45が介在され、そのコンクリート層45に、各アンカー部材17(線材18)の他端部に形成されるストッパ部33が埋設されている。これにより、自然石16がアンカー部材17を介してコンクリート層45に強固に保持され、自然石16の脱落を防止できることになる。
この消波構造物用ユニット4の組立に関しては、前記第1実施形態の場合同様、上壁部9が存在しない状態で、アンカー付き塊状表面部材6と割栗石7とを順次、積み上げていくことになるが、このとき、それに合わせて(アンカー付き塊状表面部材6等の積み上げの度に)、コンクリートを充填することになる。
【0066】
図20〜図25に示す第9実施形態においては、ボックス5として、表部開口12を一端側開口として略正方形に区画する枠体49(例えばコンクリート製)と、その枠体49の他端側にその他端側開口を塞ぐように取付けられる金網46(網状体)とで構成されたものが用いられ、その金網46の網目が、アンカー部材17の他端部の連結のために利用されている。
すなわち、この実施形態に係る消波構造物用ユニット4においては、枠体49(ボックス5)の一端側に自然石16が配置されて表面層20が形成されている一方、その各自然石16にはアンカー部材17がその一端部をもって連結され、その他端部は金網46側へと延ばされている。このアンカー部材17の他端部にはリング状部37が形成され、そのリング状部37が、連結手段としてのシャックル38を介して網目区画線材47に連結されており、この連結により、自然石16の移動(脱落)が防止されている。尚、図20において、表面層20と金網46との間に介在される内部層21については省略されている。
【0067】
この第9実施形態に係る消波構造物用ユニット4を組み立てるに際しては、先ず、図21に示すように、蓋体48の上に、ボックス5を形成することになる枠体49を設置する。
【0068】
次に、図22に示すように、枠体49内に、その上側開口(他端側開口)から複数のアンカー付き塊状表面部材6を収納する。このとき、表面層20を形成すべく、各アンカー付き塊状表面部材6の自然石16をアンカー部材17よりも下側にし、その自然石16により枠体49内の下側を敷き詰める。
【0069】
次に、図23に示すように、上記枠体49内に割栗石7を充填する。割栗石7が互いに噛み合う内部層21を形成するためである。このとき、枠体49の下側開口(一端側開口)が、表面層20を形成する自然石16により閉塞されていることから、割栗石7は自然石16よりも下側に流失することはない。
【0070】
次に、図24に示すように、上記枠体49上部に網状体としての金網46を取付けて、その金網46により枠体49の上側開口を覆い(ボックス5の形成)、その金網46に、各アンカー付き塊状表面部材6におけるアンカー部材17他端部のリング状部37をシャックル38を用いて連結する。この場合、枠体49に対する金網46の取付けは、金網46に対するアンカー部材17他端部の取付けを終えてから行ってもよい。
【0071】
次に、図25に示すように、上記枠体48を反転させる。このとき、蓋体48は、自然石16、割栗石7が枠体49内から流失することを確実に防止することになる。この枠体48の反転後、蓋体48は取り除かれ、第9実施形態に係る消波構造物用ユニット4が完成されたことになる。
【0072】
図26、図27に示す第10実施形態は前記第9実施形態の変形例を示す。この第10実施形態においては、枠体49として、格子状壁を用いて形成されたものが用いられ、その下側開口が金網46により覆われて、ボックス5が形成されている。これにより、格子状壁の格子目35に基づき、各消波構造物用ユニット4の内部層21同士が連通することになり、波エネルギの減衰効果を高めることができることになる。尚、図27においては、内部層21を構成する割栗石7は省略されている。
【0073】
図28に示す第11実施形態は、消波構造物用ユニット4を、根固め構造物55に利用している内容を示している。本実施形態においては、第7実施形態に係る消波構造物用ユニット4(図18参照)が海水中の根固め施工域56に敷設されており、その表面層20が根固め面を構成している。これにより、この消波構造物用ユニット4により構築される根固め構造物55は、根固め機能を発揮すると共に、消波機能を発揮することになる。尚、符号Hは、海面の水位、符号57は法面を保護する自然石群を示す。
【0074】
図29に示す第12実施形態は、第11実施形態の変形例を示す。この第12実施形態においては、枠体49の開口から各アンカー付き塊状表面部材6の自然石16を突出させて、粗度を高めた内容を示している。この消波構造物用ユニット4を用いることにより、根固め機能を発揮すると共に、流速を低下させたり、波エネルギの減衰効果を高めることができることになる。
【0075】
この第12実施形態に係る消波構造物用ユニット4の組立に際しては、先ず、図30に示すように、蓋体48上に複数のアンカー付き塊状表面部材6を配置する。このとき、各アンカー付き塊状表面部材6は、その自然石16をアンカー部材17よりも下側に位置するように配置する。
【0076】
次に、図31に示すように、内径が他の部分よりも拡径された支え壁50(拡径部)を有する枠体49を用意し、その支え壁50を有する枠体49を、支え壁50を下側に向けつつ複数のアンカー付き塊状表面部材6に被せる。そして、支え壁50内に複数の自然石16をその内部一杯に収納する。
【0077】
次に、図32に示すように、上記枠体49内に割栗石7を充填する。表面層20の背面側において、割栗石7が互いに噛み合う内部層21を形成するためである。このとき、表面層20を形成する自然石16により枠体48が閉塞されていることから、割栗石7は自然石16よりも下側(支え壁50側)に流失しない。
【0078】
次に、図33に示すように、上記枠体49上部に網状体としての金網46を取付け、その金網46により枠体49の上側開口を覆う。そして、各アンカー付き塊状表面部材6におけるアンカー部材17他端部のリング状部37をシャックル38を用いて金網46に連結する。この場合、枠体49に対する金網46の取付けは、金網46に対するアンカー部材17他端部の取付けを終えてから行ってもよい。
【0079】
次に、図34に示すように、上記枠体48を反転させる。このとき、蓋体48は、自然石16、割栗石7が支え壁50及び枠体49内から流失することを確実に防止することになる。
【0080】
次に、図29に示すように、蓋体48及び支え壁50を除去する。これにより、枠体49から各自然石16が突出した状態となって、表面部の粗度が高められることになり、本実施形態に係る消波構造物用ユニット4が得られることになる。
【0081】
図35に示す第13実施形態は、消波構造物用ユニット4を人工リーフ(消波構造物)の構築のために使用した内容を示す。本実施形態においては、前記第7実施形態に係る消波構造物用ユニット4(図18参照)が、捨石をもって構築された人工リーフ造成用マウンド52に敷設され、その各消波構造物用ユニット4により波エネルギの消波性能が確保されることになっている。これにより、人工リーフ造成用マウンド52の構築後、消波構造物用ユニット4を敷設するだけで、高い消波性能を得ることができることになる。この場合、各消波構造物用ユニット4を互いに連結することが好ましいことは言うまでもない。
【0082】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)塊状表面部材として、自然石16に限らず、擬石、人造石、ブロック、薄板状のもの等、種々のものを適宜用いること。
(2)海における護岸、擁壁等を対象とする場合に限らず、湖水、河川における護岸、擁壁等にも本発明を適用すること。
(3)ボックス5として、各壁部8〜11を構成するコンクリート壁を組み立てたものを用いること。
(4)ボックス5の非透水性壁の材料として、コンクリートに換えて、鉄、樹脂等を用いること。
(5)ボックス5の流水通過可能壁として、内外を連通させるために孔を形成したものを用い、その孔によっても、波の圧力を減衰させること。
(6)割栗石7が構成する内部層21の空隙率を、自然石16が構成する表面層20の空隙率よりも小さくすることに換えて、同じ空隙率であっても、内部層21の空隙の大きさを、表面層20の空隙の大きさよりも小さくすること。
(7)各実施形態に係る消波構造物用ユニット4を、護岸1、根固め構造物55、人工リーフ51に適宜、用いること。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成面の一つが開口するボックスと、
前記ボックス内に該ボックスの開口を覆うように配置されて、外部に臨む表面層を形成する複数の塊状表面部材と、
前記ボックス内に前記表面層よりも内方側において充填されて、該表面層に隣接する内部層を形成する中詰め材と、
前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材と、を備えている、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記各塊状表面部材が、前記ボックスの開口端面に対して略面一になるように配置されている、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項3】
請求項1において、
前記各塊状表面部材が、前記ボックスの開口端面よりも突出されている、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項4】
請求項1において、
前記ボックスが非透水性壁をもって形成されている、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項5】
請求項4において、
前記非透水性壁がコンクリート壁である、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項6】
請求項1において、
前記ボックスが流水通過可能壁をもって形成されている、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項7】
請求項6において、
前記流水通過可能壁が格子状の壁である、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項8】
請求項1において、
前記アンカー部材が、その一端部をもって前記塊状表面部材に連結され、
前記アンカー部材の他端部に抵抗力増大手段が備えられ、
前記アンカー部材の一端部よりも他端側が前記内部層内に埋設されている、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項9】
請求項1において、
前記アンカー部材が、その一端部をもって前記塊状表面部材に連結され、
前記アンカー部材の他端部が、前記ボックスの開口に対向する構成壁に連結されている、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項10】
請求項9において、
前記ボックスの開口に対向する構成壁が網状体をもって構成され、
前記網状体に対して前記アンカー部材の他端部が連結されている、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかにおいて、
護岸構築用として用いられる、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかにおいて、
根固め用として用いられる、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかにおいて、
人工リーフ構築用として用いられる、
ことを特徴とする消波構造物用ユニット。
【請求項14】
施工面に複数の消波構造物用ユニットが敷き詰められ、
前記各消波構造物用ユニットが、施工面に対して垂直方向において外部に開口するボックスと、該ボックス内に、該ボックスの開口側において該開口を覆うように配置されて表面層を形成する複数の塊状表面部材と、前記ボックス内に、前記表面層よりも内方側において充填されて内部層を形成する中詰め材と、前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材と、を備えている、
ことを特徴とする消波構造物。
【請求項15】
請求項14において、
前記施工面が、護岸施工用法面である、
ことを特徴とする消波構造物。
【請求項16】
請求項14において、
前記施工面が、水中内とされ、
前記各消波構造物用ユニットの表面層が根固め面を構成している、
ことを特徴とする消波構造物。
【請求項17】
請求項14において、
前記施工面が、人工リーフ用造成マウンドである、
ことを特徴とする消波構造物。
【請求項18】
垂直に起立する裏込め壁に沿うようにして消波構造物用ユニットが垂直に積み上げられ、
前記各消波構造物用ユニットが、前部外方に向けて開口するボックスと、該ボックス内に、該ボックスの開口側において該開口を覆うように配置されて表面層を形成する複数の塊状表面部材と、前記ボックス内に、前記表面層よりも内方側において充填されて内部層を形成する中詰め材と、前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材と、を備えている、
ことを特徴とする消波構造物。
【請求項19】
消波構造物用ユニットとして、構成面の一つが開口するボックスと、該ボックス内に、該ボックスの開口側において該開口を覆うように配置されて表面層を形成する複数の塊状表面部材と、前記ボックス内に、前記表面層よりも内方側において充填されて内部層を形成する中詰め材と、前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材とを備えているものを複数用意し、
前記消波構造物用ユニットを、前記表面層を外部側方に向けつつ積み上げる、
ことを特徴とする消波構造物用ユニットの使用方法。
【請求項20】
消波構造物用ユニットとして、構成面の一つが開口するボックスと、該ボックス内に、該ボックスの開口側において該開口を覆うように配置されて表面層を形成する複数の塊状表面部材と、前記ボックス内に、前記表面層よりも内方側において充填されて内部層を形成する中詰め材と、前記各塊状表面部材を前記内部層に当接するようにそれぞれ保持するアンカー部材とを備えているものを複数用意し、
前記消波構造物用ユニットを、前記表面層を表面側に向けつつ施工面に敷き詰める、
ことを特徴とする消波構造物用ユニットの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2009−191604(P2009−191604A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132036(P2009−132036)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【分割の表示】特願2004−253330(P2004−253330)の分割
【原出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(397045769)環境工学株式会社 (35)
【出願人】(301015864)株式会社環境工学研究所 (18)
【Fターム(参考)】