説明

消火用ノズル

【課題】本発明は、広範囲の散布が可能となり、消火性能を向上させることを課題とする。
【解決手段】オリフィス25から消火液を噴射させる消火用ノズルにいて、ノズル本体26に導入された消火液の流動方向を、ノズル本体の内周面方向に流動方向変更手段23で変更し、前記流動方向変更手段とオリフィスとの間に回転室Bを設け、流動方向変更手段を通過した消火液は、前記回転室でノズル本体の内周面に沿って旋回され、旋回する消火液が、前記オリフィスに設けた案内面25bにより、オリフィスの周縁側から加圧しながら渦流となって噴射口から噴射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、塵芥収容箱に使用される消火用ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車体上に塵芥収容箱が搭載され、塵芥収容箱の後部に連設された塵芥積込装置により塵芥を上記塵芥収容箱内に積み込む塵芥収集車が多数提供されている。そして、このような塵芥収集車には、塵芥収容箱内で火災が発生した場合に当該火災を消火するための消火装置を設けたものも提供されている(例えば、特許文献1参照)。かかる消火装置は、塵芥収容箱の天井部に複数のノズルを当該塵芥収容箱内に臨んで配設し、火災が発生した場合に、消火剤タンクから消火液を、ノズルを通じて塵芥収容箱内に噴射することで、火災を消火するものである。
【0003】
また、噴霧用ノズルとして、消火液を流入させる導入口を有すると共に内部において消火液の流動が可能に設けられたノズルボディに、導入口からの消火液の流動方向を直角方向に変える流路並びにこの流路に連接する旋流室が備えられ、消火液を流出させるオリフィスが旋流室に連接させてノズルボディに固定され、且つノズルボディに衝突板が連結アームを介して噴出オリフィスと対向させて固設されているものが公知である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−105403号公報
【特許文献2】特公平6−102170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の噴霧用ノズルは、消火液を拡散させる手段を持たず、塵芥収容箱の適所に形成された消火液噴出口から、筒状体に導入された消火液を塵芥収容箱内に噴射する構成であるため、局所的な噴射となり消火液を広範囲に噴射する点において不利であった。
【0005】
前記特許文献2に記載の噴霧用ノズルは、連結アームを介して噴出オリフィスと対向する衝突板に、消火液を衝突させて広範囲に噴霧する構成であるため、噴射効率が低下し、消化液を供給するポンプ等の消化液供給装置が大型化する欠点がある。しかも、かかる噴霧用ノズルを塵芥収容箱の消火用に使用する場合、衝突板が塵芥収容箱の内部に突出することとなり邪魔になるため、塵芥収容箱の消火ノズルには適していない。
【0006】
本発明は、広範囲の散布が可能となり、消火性能を向上させることを課題とする。
【0007】
また、本発明は、消火用ノズル全体の構造を簡素化し、製造が容易で且つコストの低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、消火液が流入する導入口を有するノズル本体と、前記導入口からの消火液の流動方向をノズル本体の内周面方向に変更させる流動方向変更手段と、消火液を噴射させる噴射口を有するオリフィスとを備えた消火用ノズルにおいて、前記流動方向変更手段と前記オリフィスとが、互いの間に回転室を有するように所定の間隔をおいて前記ノズル本体内に設けられ、前記流動方向変更手段を通過した消火液は、前記回転室で前記ノズル本体の内周面に沿って旋回され、前記オリフィスの回転室に臨む内側面には、旋回する消火液が前記オリフィスの周縁側から加圧されながら渦流となって前記噴射口に向けて流れるように傾斜する案内面が形成されている。
【0009】
本発明の前記流動方向変更手段は、前記導入口を2分割する仕切り板と、前記仕切り板の両面に設けられ且つ互いに反対方向に傾斜する一対のブレードとから構成され、前記ノズル本体と前記一対のブレードとで前記ノズル本体内に噴射室が形成され、前記仕切り板は前記噴射室を2分割しており、各噴射室と前記回転室とが連通されていることにある。
【0010】
本発明の前記オリフィスの外側面には、前記噴射口を中心にして傾斜する拡散面が形成されたことにある。
【0011】
本発明は、消火液が流入する導入口を有するノズル本体と、前記導入口からの消火液の流動方向をノズル本体の内周面方向に変更させる流動方向変更手段と、消火液を噴射させる噴射口を有するオリフィスとを備えた消火用ノズルにおいて、前記ノズル本体は、筒状体と前記筒状体の上端に固定され且つ前記導入口を有する天板とからなり、前記流動方向変更手段は、前記導入口を2分割する仕切り板と、前記仕切り板の両面に設けられ且つ互いに反対方向に傾斜する一対のブレードとから構成され、前記流動方向変更手段と前記オリフィスとが、互いの間に回転室を有するように所定の間隔をおいて前記筒状体内に設けられ、前記ブレードに沿って流れる消火液は、前記回転室で前記ノズル本体の内周面に沿って旋回され、前記オリフィスの回転室に臨む内側面には、旋回する消火液が前記オリフィスの周縁側から加圧されながら渦流となって前記噴射口に向けて流れるように傾斜する案内面が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、消火液を効率良く広範囲に噴射することができる。また、前記流動方向変更手段とオリフィスとがノズル本体内に設けられているため、その各部材が邪魔になることがなく、特に、塵芥収容箱の消火に最適である。
【0013】
また、本発明は、流動方向変更手段を仕切り板とブレードから構成し、しかも、筒状体内に、流動方向変更手段およびオリフィスを内蔵しているので、消火用ノズル全体の構造を簡素化でき、製造が容易で且つコストの低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では塵芥収容箱としてコンテナを例示する。図2および図3は、コンテナ1の全体構成を示している。かかるコンテナ1は、図示しないコンパクタにより塵芥を詰め込む密閉式の、所謂クローズドタイプのもので、コンテナを運搬するコンテナ運搬車輌の荷役装置により当該車輌と塵芥詰込み施設などの地上との間で積み降ろし自在になされている。
【0015】
従って、コンテナ荷役車輌によってコンテナを塵芥詰込み施設に運搬してこの車輌から降ろし、コンパクタに連結して該コンパクタにより塵芥をコンテナに圧縮しながら詰め込む。そして、このように塵芥を詰め込んだコンテナを再びコンテナ荷役車輌に積み込んで処理場に運搬し、この処理場において内部の塵芥を排出して処理する。
【0016】
ところで、上述したコンテナ1には消火装置2が設けられている。消火装置2は、図1に示すように、コンテナ1の上面1aの適所にコンテナ1内に通じる消火用ノズル20が設けられ、この消火用ノズル20にコンテナ1の外周面に配設された消火用配管5の一端部5aが連結されている。
【0017】
消火用配管5は、その途中部5bがコンテナ1に設けられた他の部材の邪魔にならないように、コンテナ1の上面を沿って一側面側に導かれ、一側面に沿って下方に導かれて他端部5cがこの一側面の途中部に配置されている。
【0018】
消火用配管5の他端部5cは、図示しない水道水などの消火液を供給する供給源(水道源)に連通された供給管の端部と接続可能に構成されており、通常は栓部材7により閉塞されている。つまり、消火用配管5の他端部5cは、火災時に作業者が供給管と接続し易いコンテナ1の一側面に配置されている。
【0019】
消火用ノズル20は、図1に示すように、コンテナ1の上面1aに形成された消火液噴射口6を覆うように、コンテナ1の上面1aに立設されている。消火用ノズル20は、上下面が開口する平面視円形の筒状体21と、この筒状体21の上面に固定された天板22と、流動方向変更手段23と、オリフィス25とを備えている。なお、筒状体21と天板22とでノズル本体26が構成される。
【0020】
天板22の中心には導入口22aが形成され、消火用配管5の一端部5aは、水平から下方に湾曲形成されており、消火液を導入口22aから筒状体21に導入できるように、天板22の上面に接続されている。そして、筒状体21内部は、上方側(消火液の流動方向の上流側)から噴射室A、回転室B、加圧室Cが順次設けられている。
【0021】
流動方向変更手段23は、導入口22aから下方に導入された消火液の流れを、筒状体21の内周面側の径外方向に変更するためのもので、図4〜図7に示すように仕切り板30と一対のブレード31、32とから構成されている。
【0022】
仕切り板30の上縁30aは、直線状に形成され、下縁は中心Oに向けて傾斜する一対の傾斜縁30b、30bとなっている。仕切り板30の長さL1は、筒状体21の内径(例えば、直径略70mm)と同等に設定され、仕切り板30の両端縁30c、30cは、筒状体21の内周面に水密状に固定されている。しかも、仕切り板30の上縁30aは天板22の下面に水密状に固定され、仕切り板30は導入口22aを2分割している。
【0023】
仕切り板30の両端縁30c、30cの下部には、略半円形の切欠30dがそれぞれ形成され、各切欠30dと筒状体21の内周面とで流通口35が構成されるようになっている。
【0024】
各ブレード31、32は、平面視略半円形を呈し、仕切り板30の両面に固定されている。具体的には、一方のブレード31は、仕切り板30の一端側の上縁から他端の下端に向けて傾斜状に設けられている。他方のブレード32は、仕切り板30の他端側の上縁から一端端側の下縁に向けて傾斜状に設けられている。従って、両方のブレード31、32は、仕切り板30の傾斜縁30b、30bに沿うように、仕切り板30を隔てて互いに反対方向に傾斜している。各ブレード31、32の傾斜角度α1は、15度〜25度の範囲で設定され、好ましくは略20度に設定されている。
【0025】
両方のブレード31、32の周面は、消火用ノズル20の内周面に水密状に固定されるとともに、各ブレード31、32と天板22との間で噴射室Aが構成され、仕切り板30は、噴射室Aを2分割している。そして、分割された噴射室A1、A2は、流通口35を介して回転室Bに連通しており、各噴射室A1、A2の消火液は、流通口35を通って回転室Bに導入される。
【0026】
回転室Bは、流動方向変更手段23とオリフィス25とを所定の間隔をおいて形成された空間である。回転室Bに導入された消火液は、円形の筒状体21の内周面に沿って螺旋状に旋回するようになっている。ここで、回転室Bの上下方向の長さ(流動方向変更手段23とオリフィス25との間隔)は、旋回する消火液が略一周する程度に設定されている。
【0027】
筒状体21における加圧室Cの内周径は、他の内周径(噴射室Aおよび回転室Bの内周径)よりも大径に形成され、その加圧室Cの内周面にオリフィス25が内嵌固定されている。オリフィス25は中心に噴射口25aが形成され、オリフィス25の上面(回転室Bに臨む内側面)には、周縁側から噴射口25aに向かってテーパー状に下降傾斜する案内面25bが形成されている。噴射口25aの直径は、5mm〜15mmの範囲で設定され、好ましくは略10mmに設定されている。また、案内面25bの傾斜角度α2は、100度〜130度の範囲で設定され、好ましくは略120度に設定されている。
【0028】
また、オリフィス25の下面には、噴射口25aからこの下面の中途部に向かってテーパー状に拡がる拡散面25cが形成されている。この拡散面25cの傾斜角度α3は、130度〜160度の範囲で設定され、好ましくは略150度に設定されている。なお、拡散面25cの直径は、消火液噴射口6の直径よりも小さくなっている。
【0029】
前記構成からなる消火装置2を備えたコンテナ1内において火災が発生した際には、まず、供給源に接続した供給管の端部を消火用配管5の他端部5cに接続する。そして、供給源から水道水等の消火液を供給管を通じて供給することで、消火液が消火用配管5を通じて消火用ノズル20に導かれる。なお、消火液の供給に際しては、適宜ポンプ等の供給装置を使用することができる。
【0030】
消火液は、天板22の導入口22aを介して上方から筒状体21の噴射室A内に導入される。すなわち、消火液は、仕切り板30により分割された噴射室A1、A2に入り、傾斜する各ブレード31、3に沿って流動方向を変更し斜め下方に流れる。さらに、消火液は、流通口35を通って回転室Bに入り、筒状体21の内周面に沿って旋回する。このように流通口35を通過した消火液は、分割された噴射室A1、A2からそれぞれ噴出されるため、均一な水流を得ることができる。
【0031】
回転室B内において、消火液は略一周した後に、オリフィス25の案内面25bの外周部に達する。消火液は案内面25b上を旋回しながら下降する渦流となり、消火液は短時間で加圧されて旋回しながら勢いよく噴射口25aから噴射される。オリフィス25の下面には拡散面25cが形成されているため、拡散面25cは消火液が霧化された拡散する際の案内面の機能を有し広範囲への散布が可能となる。この消火用ノズル20の噴射口25aからコンテナ1内に消火液を噴射することで、火災の消火作業を迅速に且つ確実に行うことができる。
【0032】
なお、前記実施の形態における消火用ノズルは、オリフィス25の案内面25bの傾斜角度α2を100度〜120度とすることにより、散布角度が約110度〜120度となり、広範囲な噴霧を可能とることが、実験により確認できた。
【0033】
以上のように本実施の形態にかかる消火用ノズル20は、流動方向変更手段23として板材からなる仕切り板30とブレード31、32から構成し、しかも、筒状体21内に、流動方向変更手段23およびオリフィス25を内蔵したものであるため、構造を簡素化でき、製造が容易で且つコストの低減を図ることが可能となる。
【0034】
また、消火用ノズル20の構成部品が、コンテナ1内に突出していないため、邪魔になることはない。しかも、消火用ノズル20内の消火液は、オリフィス25で加圧され
、オリフィス25の噴射口25aの直径は、略10mmの大径に設定されているので、大量の消火液を広範囲に粒子散布することができ、噴射効率も向上する。従って、適宜ポンプ等の供給装置を使用する場合には、かかる供給装置の小型化が可能となるとともに、少ない個数の消火用ノズル20でコンテナ1内の消火に対応できる。
【0035】
なお、塵芥収容箱は、上述したコンテナ1に限らず塵芥収集車の塵芥収容箱などであってもよく、この塵芥収容箱に前述した構成の消火装置を設ければよい。また、消火装置2は、塵芥収容箱の規模などに応じて内部での火災の消火に対応できるように所定の位置に適数設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】消火装置の構成を示す拡大の断面図である。
【図2】コンテナの全体構成を示す側面図である。
【図3】コンテナの全体構成を示す平面図である。
【図4】流動方向変更手段の斜視図である。
【図5】仕切り板の正面図である。
【図6】流動方向変更手段の正面図である。
【図7】流動方向変更手段の平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 コンテナ(塵芥収容箱)
2 消火装置
20 消火用ノズル
21 筒状体
22 天板
22a 導入口
23 流動方向変更手段
25 オリフィス
25a 噴射口25a
25b 案内面
25c 拡散面
30 仕切り板
31 ブレード
32 ブレード
35 流通口
A 噴射室
B 回転室
C 加圧室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火液が流入する導入口を有するノズル本体と、前記導入口からの消火液の流動方向をノズル本体の内周面方向に変更させる流動方向変更手段と、消火液を噴射させる噴射口を有するオリフィスとを備えた消火用ノズルにおいて、前記流動方向変更手段と前記オリフィスとが、互いの間に回転室を有するように所定の間隔をおいて前記ノズル本体内に設けられ、前記流動方向変更手段を通過した消火液は、前記回転室で前記ノズル本体の内周面に沿って旋回され、前記オリフィスの回転室に臨む内側面には、旋回する消火液が前記オリフィスの周縁側から加圧されながら渦流となって前記噴射口に向けて流れるように傾斜する案内面が形成されていることを特徴とする消火用ノズル。
【請求項2】
前記流動方向変更手段は、前記導入口を2分割する仕切り板と、前記仕切り板の両面に設けられ且つ互いに反対方向に傾斜する一対のブレードとから構成され、前記ノズル本体と前記一対のブレードとで前記ノズル本体内に噴射室が形成され、前記仕切り板は前記噴射室を2分割しており、各噴射室と前記回転室とが連通されている請求項1に記載の消火用ノズル。
【請求項3】
前記オリフィスの外側面には、前記噴射口を中心にして傾斜する拡散面が形成された請求項1または2に記載の消火用ノズル。
【請求項4】
消火液が流入する導入口を有するノズル本体と、前記導入口からの消火液の流動方向をノズル本体の内周面方向に変更させる流動方向変更手段と、消火液を噴射させる噴射口を有するオリフィスとを備えた消火用ノズルにおいて、前記ノズル本体は、筒状体と前記筒状体の上端に固定され且つ前記導入口を有する天板とからなり、前記流動方向変更手段は、前記導入口を2分割する仕切り板と、前記仕切り板の両面に設けられ且つ互いに反対方向に傾斜する一対のブレードとから構成され、前記流動方向変更手段と前記オリフィスとが、互いの間に回転室を有するように所定の間隔をおいて前記筒状体内に設けられ、前記ブレードに沿って流れる消火液は、前記回転室で前記ノズル本体の内周面に沿って旋回され、前記オリフィスの回転室に臨む内側面には、旋回する消火液が前記オリフィスの周縁側から加圧されながら渦流となって前記噴射口に向けて流れるように傾斜する案内面が形成されていることを特徴とする消火用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−86637(P2008−86637A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272838(P2006−272838)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【特許番号】特許第3996180号(P3996180)
【特許公報発行日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】