説明

消火装置の付設した電池充放電設備及び電池充放電設備の消火方法

【課題】充放電中の電池に火災が生じた場合でも、消火に伴う被害を最小限に抑えて、効率的に電池の消火を行う消火装置の付設した電池充放電設備及び電池充放電設備の消火方法を提供する。。
【解決手段】スタッカークレーン13によって電池19が搬送される各試験棚16に火災検知センサー21、22を配置し、スタッカークレーン13にガス噴射式の一次消火器を設け、試験棚16の一つに水没槽30を設け、火災検知センサー21、22によって電池19の火災を検知した場合は、一次消火器で消火を行い、この一次消火器を使って消火を行っても電池19の火災が鎮火しない場合には、スタッカークレーン13を用いて電池19を水没槽30まで搬送して二次消火を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を充放電する場合に発生する火災を消火する装置を備えた消火装置の付設した電池充放電設備及び電池充放電設備の消火方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電池を充放電する治具等をチャンバー空間に配置し、火災が発生した場合には、チャンバー空間に外部から導入した消火剤を噴射させる長尺パイプを配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−190312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、チャンバー空間内に電池充放電用の治具を配置した場合であって、チャンバー空間内だけの消火を行えばよいので、比較的簡単であるが、通常の電池の充放電は、複数の電池が開放された空間に配置された状態で行われている。そして、電池の充放電中に火災が起こった場合には、消火剤を吹き付けて消火を行っているが、これでは、充放電中の電池が使用不可能となるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、充放電中の電池に火災が生じた場合でも、消火に伴う被害を最小限に抑えて、効率的に電池の消火を行う消火装置の付設した電池充放電設備及び電池充放電設備の消火方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る消火装置の付設した電池充放電設備は、搬送ローダーを上下及び左右に移動させるスタッカークレーンと、該スタッカークレーンの前後に設けられた試験棚とを有し、前記スタッカークレーンによって、前記搬送ローダーにパレットを介して載った電池を、前後に設けられた前記試験棚に載せる電池充放電設備であって、
1)前記各試験棚に火災検知センサーを配置し、2)前記スタッカークレーンにガス噴射式の一次消火器を設け、3)前記試験棚の一つに水没槽を設け、前記火災検知センサーによって前記電池の火災を検知した場合は、前記一次消火器で消火を行い、該一次消火器を使って消火を行っても前記電池の火災が鎮火しない場合には、前記スタッカークレーンを用いて前記火災が発生した電池を前記水没槽まで搬送して該水没槽に入れて二次消火を行っている。
【0007】
ここで、第1の発明に係る消火装置の付設した電池充放電設備において、前記一次消火器のガス供給源は、前記スタッカークレーンの櫓に取付けられ、前記搬送ローダーにガスの噴出口が設けられ、該噴出口と前記ガス供給源はホースによって連結されているのが好ましい。
【0008】
また、第1の発明に係る消火装置の付設した電池充放電設備において、前記火災検知センサーは、温度センサー及び煙センサーのいずれか1又は2によって形成されているのが好ましい。
【0009】
そして、第2の発明に係る消火装置の付設した電池充放電設備の消火方法は、搬送ローダーを上下及び左右に移動させるスタッカークレーンと、該スタッカークレーンの前後に設けられた試験棚とを有し、前記スタッカークレーンによって、前記搬送ローダーに載った電池を、前後に設けられた前記試験棚に載せる電池充放電設備の消火方法であって、
1)前記各試験棚に火災検知センサーを配置し、2)前記スタッカークレーンにガス噴射式の一次消火器を設け、3)前記試験棚の一つに水没槽を設け、前記火災検知センサーによって前記電池の火災を検知した場合は、前記一次消火器で消火を行い、この一次消火を行っても前記電池の火災が鎮火しない場合には、前記スタッカークレーンを用いて前記火災が発生した電池を前記水没槽まで搬送して二次消火を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電池充電設備及びその消火方法において、一次消火にガス噴射式の一次消火器を使用しているので、一次消火で火災が鎮火した場合には、充放電装置及び電池の被害は最小で済む。そして、一次消火で鎮火しない場合は、スタッカークレーンによって火災が発生した電池を水没槽に搬送し鎮火するので、確実な鎮火が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る消火装置の付設した電池充放電設備の平面図、(B)は同正面図である。
【図2】同電池充放電設備で火災が発生した場合の消火方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る消火装置の付設した電池充放電設備10は、上下のレール11、12に沿って左右に走行するスタッカークレーン13と、スタッカークレーン13の前後に立体倉庫と同様な構造となって配置される試験棚群14、15を有している。試験棚群14、15はそれぞれ上下左右に複数の試験棚16を有している。
【0013】
スタッカークレーン13は搬送ローダー17を備え、搬送ローダー17を上下及び左右に移動させて、パレット(載置台)18に載った電池(通常、複数)19を各試験棚16に搬送し、各試験棚16には電池19に充電及び放電を行う試験装置を備えて、各電池19に必要な試験を行うことができるようになっている。
また、各試験棚16には、火災検知センサーの一例である熱電対(温度センサー)21と煙センサー22が設けられている。
【0014】
スタッカークレーン13の櫓の下部(又は中間部)には、ガス(窒素又は炭酸ガス)によって火災の消火を行うガス噴射式の一次消火器のガス供給源(例えば、ボンベ)23、24が設けられ、搬送ローダー17の前後にはそれぞれガスの噴出ノズル(噴出口)25、26を有している。ガス供給源23、24と噴出ノズル25、26とはそれぞれ図示しない電磁弁とホース27、28を介して連結され、それぞれの電磁弁を開くことによって、ガス供給源23、24からの消火ガスが、噴出ノズル25、26から、所定の試験棚16に向かって吹き出すようになっている。
【0015】
ここで、ガス供給源23、24と噴出ノズル25、26、電磁弁とホース27、28を有して一次消火器が構成されている。即ち、一次消火器はスタッカークレーン13に設けられている。また、ホース27、28はホース27、28が縺れたり無用に湾曲しないように、ケーブルベア(登録商標)を用いて、配管されている。一方、試験棚群14、15のうち1つの試験棚16には水没槽30が配置され、搬送ローダー17によって運ばれた電池19を、スタッカークレーン13を使って水没槽30迄搬送し、必要な場合、電池19をこの水没槽30に投入することができる構造となっている。この水没槽30には消火用の水が充満されている。
【0016】
熱電対21と煙センサー22の信号は図示しない制御装置に入力され、この制御装置からの信号が噴出ノズル25、26から消火ガスを発生させる電磁弁を必要な場合作動させるようになっている。また、この制御装置はスタッカークレーン13の制御装置と連携し、必要な場合、スタッカークレーン13を用いて、所定の試験棚16にある電池19を取り出して水没槽30まで搬送できる構造となっている。
【0017】
続いて、図2を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る消火装置の付設した電池充放電設備10の作用、即ち、電池充電設備の消火方法について説明する。
熱電対21又は煙センサー22で電池19に異常が発生(例えば、温度上昇、発煙等)したことを検知する(ステップS1)と、一次消火器(即ち、自動消火ユニット)が作動し、電池19に炭酸ガス又は窒素ガスを吹き付ける(ステップS2)。具体的には、熱電対21又は煙センサー22で特定の試験棚16の電池19の異常を検知すると、その場所に搬送ローダー17が移動し、搬送ローダー17に設けられている噴出ノズル25、26のいずれか一方から消火ガスを対象となる電池19に向かって噴射する。
【0018】
なお、ここで、搬送ローダー17にビデオカメラ(Webカメラ)を設け、異常が発生した電池19を外部から視認できるようにしてもよい。また、ビデオカメラは各試験棚16にそれぞれ配置することもできる。この一次消火によって電池19の火災が鎮火した場合には、電池19は損傷を受けないことになるので、そのまま(又は一部を)使用できる(ステップS3)。
【0019】
一方、ステップS2で一次消火を行っても、熱電対21による温度が下がらない場合、煙センサー22による煙の発生が止まらない場合、ビデオカメラで視認して火災が継続している場合においては、電池19の異常が継続していると判断し(ステップS4)、搬送ローダー17が該当電池19を取り出し、水没槽30まで搬送し、水没槽30に沈める(ステップS5)二次消火を行う。この場合、電池19は廃棄処分となる(ステップS6)。
【0020】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り、その他の装置又は方法を用いることができる。
また、前記実施の形態においては、電池19の火災の検知には熱電対21又は煙センサー22を用いたが、その他のセンサー(例えば、光温度計)、赤外線センサー等を使用することもできる。
【符号の説明】
【0021】
10:消火装置の付設した電池充放電設備、11、12:レール、13:スタッカークレーン、14、15:試験棚群、16:試験棚、17:搬送ローダー、18:パレット、19:電池、21:熱電対、22:煙センサー、23、24:ガス供給源、25、26:噴出ノズル、27、28:ホース、30:水没槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ローダーを上下及び左右に移動させるスタッカークレーンと、該スタッカークレーンの前後に設けられた試験棚とを有し、前記スタッカークレーンによって、前記搬送ローダーにパレットを介して載った電池を、前後に設けられた前記試験棚に載せる電池充放電設備であって、
1)前記各試験棚に火災検知センサーを配置し、2)前記スタッカークレーンにガス噴射式の一次消火器を設け、3)前記試験棚の一つに水没槽を設け、前記火災検知センサーによって前記電池の火災を検知した場合は、前記一次消火器で消火を行い、該一次消火器を使って消火を行っても前記電池の火災が鎮火しない場合には、前記スタッカークレーンを用いて前記火災が発生した電池を前記水没槽まで搬送して該水没槽に入れて二次消火を行うことを特徴とする消火装置の付設した電池充放電設備。
【請求項2】
請求項1記載の消火装置の付設した電池充放電設備において、前記一次消火器のガス供給源は、前記スタッカークレーンの櫓に取付けられ、前記搬送ローダーにガスの噴出口が設けられ、該噴出口と前記ガス供給源はホースによって連結されていることを特徴とする消火装置の付設した電池充放電設備。
【請求項3】
請求項1又は2記載の消火装置の付設した電池充放電設備において、前記火災検知センサーは、温度センサー及び煙センサーのいずれか1又は2によって形成されていることを特徴とする消火装置の付設した電池充放電設備。
【請求項4】
搬送ローダーを上下及び左右に移動させるスタッカークレーンと、該スタッカークレーンの前後に設けられた試験棚とを有し、前記スタッカークレーンによって、前記搬送ローダーに載った電池を、前後に設けられた前記試験棚に載せる電池充放電設備の消火方法であって、
1)前記各試験棚に火災検知センサーを配置し、2)前記スタッカークレーンにガス噴射式の一次消火器を設け、3)前記試験棚の一つに水没槽を設け、前記火災検知センサーによって前記電池の火災を検知した場合は、前記一次消火器で消火を行い、この一次消火を行っても前記電池の火災が鎮火しない場合には、前記スタッカークレーンを用いて前記火災が発生した電池を前記水没槽まで搬送して二次消火を行うことを特徴とする電池充放電設備の消火方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−249803(P2012−249803A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124449(P2011−124449)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000233697)株式会社日鉄エレックス (51)
【Fターム(参考)】