説明

消火設備

【課題】火災発生危険個所が立体的に点在する場合であっても、その危険箇所の配置に応じた効果的で迅速な消火を行なうことができる消火装置を提供する。
【解決手段】本発明の消火設備は、水成膜泡消火薬剤を貯留する貯留タンク20と、該貯留タンク20及び給水源に接続され該水成膜泡消火薬剤と水とを混合して水成膜泡消火薬剤水溶液とする混合器30と、該混合器30から供給される水成膜泡消火薬剤水溶液を火災現場に放出する消火用ヘッド3a、3bとを備えている。消火用ヘッド3a、3bの少なくとも1つは泡立て用の空気取込口及びデフレクタを有しないスプレーヘッドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一定の区画の消火を行うための消火設備に関し、さらに詳しくは、産業用ロボットや大型油圧機器を設置した工場等のように、油やアルコールなどの液体の燃焼物と、プラスチック、ゴム、ビニールなどの固体の燃焼物とが、単独あるいは複合して火災を起こすような火災発生危険箇所が存在している場合や、火災発生危険個所が立体的に点在している場合や、火災発生危険個所が複雑に入り組んだ機器の内部に存在している場合などの消火設備として好適に用いることができる消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
油やアルコールなど、液体の可燃性危険物を扱う施設や立体駐車場や飛行機などの駐機場等には、固定の泡消火設備が設置されている。こうした泡消火設備においては、ヘッドにおいて泡消火剤水溶液が発泡するように、吸気口から空気を取り込む泡ヘッドと呼ばれる発泡器が用いられている(例えば特許文献1)。そして、このような泡消火設備に用いられる泡消火剤として水成膜泡消火剤がある。この水成膜泡消火剤を混合器によって水と混合して泡消火剤水溶液とし、泡ヘッドから発泡させながら油やアルコール等の可燃性危険物火災に向けて噴霧させれば、液体の可燃性危険物の表面が泡や水成膜によって覆われ、それにより空気と可燃性危険物との接触が妨げられ、消火することができる。
【0003】
また、泡ヘッドの替わりにデフレクタを有するスプリンクラーヘッドを用い、水成膜泡消火剤水溶液をなるべく発泡しないようにして放射状に散布する消火設備も知られている(例えば特許文献2〜4)。このようなスプリンクラーヘッドを用いれば、水成膜泡消火剤水溶液が泡のない液体の状態で放射状に散布されるため、泡ヘッドの場合と比べて、より遠くまで水成膜泡消火剤水溶液を到達させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開平07−265452号公報
【特許文献2】特開平11−197264号公報
【特許文献3】特開平5−345045号公報
【特許文献4】実開平06−083048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、産業用ロボットや油圧機器などは、プラスチック、ゴム、ビニールなどの固体の可燃性部材からなる部品も多く使用されており、これら固体の可燃性部材と、油やアルコールなどの液体の可燃性危険物とが、複合した火災を起こす場合が多い。また、このような場所での火災がは立体的に点在する形態となる。これに対して、上記特許文献1に記載されているような泡ヘッドを用いる消火設備では、消火用泡の発泡倍率が高いため、消火用泡が防護対象物の表面にとどまる傾向にある。このため、液体の可燃性危険物の火災は消火できても、固体の可燃性部材が複雑に入り組んだ機器の火災において、内部まで消火用泡を浸透させることは困難であり、消火することが難しい。また、立体的に点在する火災発生危険個所へ的確に消火用泡を到達させることも難しい。
【0006】
この点、特許文献2〜3に記載されているようなデフレクタを有するスプリンクラーヘッドを用い、水成膜泡消火剤水溶液をなるべく発泡しないようにし散布したとすれば、噴霧の速度圧は泡を放出する場合よりも高められるため、遠くまで水成膜泡消火剤水溶液を到達させることができる。また、発泡倍率も小さいため、プラスチック、ゴム、ビニールなどの固体の可燃性部材で構成される機器内部で火災を起こしているような場合でも、水成膜泡消火剤水溶液が内部まで迅速に浸透し、有る程度は消火に有効である。
【0007】
しかし、デフレクタを有するスプリンクラーヘッドを用いて水成膜泡消火剤水溶液による消火を行なった場合、水成膜泡消火剤水溶液はデフレクタによって運動方向を変換させられ、指向性が悪くなるとともに、散布方向によって分布密度が異なることとなる。このため、立体的な危険箇所や、複雑な構造の機器内部に向けて、効果的に水成膜泡消火剤水溶液を到達させることは難しい。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、プラスチック、ゴム、ビニールなどの固体の可燃性部材と、油やアルコールなどの液体の可燃性危険物とが、複合した火災形態をなすことが予想され、さらに、火災発生危険個所が立体的に点在する場合であっても、その危険箇所の配置に応じた効果的で迅速な消火を行なうことができる消火装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の消火装置は、水成膜泡消火薬剤を貯留する貯留タンクと、該貯留タンク及び給水源に接続され該水成膜泡消火薬剤と水とを混合して水成膜泡消火薬剤水溶液とする混合器と、該混合器から供給される水成膜泡消火薬剤水溶液を火災現場に放出する消火用ヘッドとを備えた消火設備において、
前記消火用ヘッドの少なくとも1つは泡立て用の空気取込口及びデフレクタを有しないスプレーヘッドであることを特徴とする。
【0010】
本発明の消火装置では、消火薬剤として水成膜泡消火薬剤を用いており、混合器で水と混合されて水成膜泡消火薬剤水溶液となり、消火用ヘッドから放出される。ここで水成膜消火薬剤とは、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第21条の2第2項の規定に基づき、昭和50年12月9日自治省令第26号の第2条第4号で規定される水成膜泡消火薬剤をいい、合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤であって、シクロヘキサン上に水成膜を生成するものをいう。したがって、本発明の消火装置は、油火災を効果的に消火することができる。また、消火用ヘッドの少なくとも1つは泡立て用の空気取込口を有しないスプレーヘッドであるため、強い噴霧力でスプレーヘッドから水成膜泡消火薬剤水溶液が放出される。しかも、このスプレーヘッドはデフレクタを有していないため、散布方向を指向性のあるものとすることができ、また、噴霧の速度圧が高いため、立体的に点在する危険箇所に向けて直接に水成膜泡消火剤水溶液を到達させることができる。さらには、消火薬剤として水成膜泡消火薬剤を用いているため、油火災の油表面に水成膜を形成して空気を遮断し、極めて少ない量で油火災の消火を行うことができる。また、泡立てないことから、複雑な構造の機器の内部や、プラスチックやゴム、ビニール等の固体可燃物の深部で火災を起こしている場合であっても、内部まで消火用泡を浸透させることができる。
このため、単なる水を噴霧した場合に比べ、水損を極めて小さくすることができる。
【0011】
したがって、本発明の消火装置によれば、プラスチック、ゴム、ビニールなどの固体の可燃性部材と、油やアルコールなどの液体の可燃性危険物とが、複合した火災形態をなすことが予想され、さらに、火災発生危険個所が立体的に点在する場合であっても、その危険箇所の配置に応じた効果的で迅速な消火を行なうことができる。
【0012】
前記スプレーヘッドは、火災発生源となりうる防護対象物に向けて前記水成膜泡消火薬剤水溶液を直接散布可能な箇所に配置されていることが好ましい。こうであれば、火災発生源となりうる産業用ロボットや油圧機器等の防護対象物に向かって、確実に水成膜泡消火剤水溶液を放出させることができるため、消火をより確実かつ的確に行うことができる。
【0013】
また、前記スプレーヘッドは流路にアジテータを有していることも好ましい。アジテータとは、ヘッド内の流路に収容され、スプレーヘッドに供給される水成膜泡消火薬剤水溶液に回転力を与えるように案内する回転流路が形成された部材である。このアジテータをスプレーヘッドに挿入することにより、ヘッドからの水成膜泡消火薬剤水溶液の放出を放射状に散布することができる。また、アジテータの種類を替えることにより、水成膜泡消火薬剤水溶液の放出形状を変えることができる。このため、防護対象物の大きさ形状を考慮した、消火効率の良い適切な水成膜泡消火薬剤水溶液の放出形状を達成することができる。
【0014】
さらに、前記消火用ヘッドはスプレーヘッド及び泡ヘッドの両方を有するとすることもできる。こうであれば、産業用ロボットなど、立体的に火災発生危険箇所が点在する火災や、複雑な構造の機器内部の火災に対しては、スプレーヘッドによる泡消火薬剤水溶液の噴霧によって迅速かつ効果的に消火を行なうことができ、平面的な油火災に対しては、泡ヘッドから吐出された消火用泡によって効果的に消火することができ、火災形態に応じた適切な消火方法を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳述する。
実施形態1の消火設備は、図1に示すように、産業用ロボット1a、1bが設置された工場内の防護区画に設置されるものであり、防護区画2の外には給水装置10と、水成膜泡消火剤(主成分:フッ素界面活性剤)を貯留する泡消火薬剤タンク20と、給水装置から供給される水及び泡消火薬剤タンク20から供給される泡消火薬剤を混合するための混合器30とを備えている。また、防護区画2内には混合器30から送られる泡消火薬剤水溶液を噴霧するための開放型スプレーヘッド3a、3bと、火災感知器40a、40bとを備えている。なお、図1には開放型スプレーヘッド3a、3bと火災感知器40a、40bとが2箇所づつ設置されているが、防護対象物の形状や配置状況に応じて、それ以上設けても良い。
【0016】
開放型スプレーヘッド3a、3bは、産業用ロボット1a、1bの火災発生危険個所に向けて噴霧出来るように天井2aから下垂して設けられており(図2参照)、消火液配管9を介して混合器30に接続されている。混合器30は給水管11を介して給水装置10に接続されている。また、混合器30は、泡消火薬剤タンク20へ送水して加圧するための加圧配管21a及び泡消火薬剤タンク20から水成膜泡消火剤を混合器30に送るための薬剤配管21bの両配管を介して泡消火薬剤タンク20に接続されている。
なお、図2では、産業用ロボット1a、1bに対して、開放型スプレーヘッド3a、3bが各々真上に設置されているが、図3のように、火災発生危険個所に応じて、開放型スプレーヘッド3c、3d、3e、3fを複数の方向から噴霧されるように設けることもできる。
【0017】
また、防護区画2の外には、図1に示すように、火災感知器40a、40bからの信号によって給水装置10を制御するとともに音響・音声警報装置41及び回転灯43を駆動する制御盤42が設置されている。なお、音響・音声警報装置41及び回転灯43は、防護区画内も含め、工場内の作業員が知覚できるように、複数の場所に設置することも可能とされている。
【0018】
給水装置10は、水源としての水槽12を有しており、ポンプ13によってくみ上げられるようにされており、ポンプ13は逆止弁14を介して自動弁15に接続されている。自動弁15には、弁の開閉を制御するためのシリンダ15aが設けられており、シリンダ15aの下部空間には自動制御用バイパス管16及び手動制御用バイパス管17が接続されている。自動制御用バイパス管16は電磁弁16aを介して送水管18に接続されており、手動制御用バイパス管17は手動起動弁17aを介して送水管18に接続されている。また、送水管18の途中には保圧タンク19が接続されており、送水管18内に常時充填されている水は保圧タンク19によって常時加圧されている。自動弁15は常時は閉鎖されており、火災感知器43が火災を感知した場合に、制御盤42からの設備起動信号によって、電磁弁16aが開放され、常時加圧された送水管18の水がシリンダ15aの下部空間に流入して、シリンダ15aが駆動し、シリンダ15aと連動する自動弁15が開放されるようになっている。自動弁15が開放されると、送水管18の圧力が低下し、圧力スイッチ19aが投入されて、動力源が作動し、ポンプ13を駆動させて、自動弁15の二次側に水を常時供給するようにされている。
【0019】
混合器30は給水装置10から給水管11を介して送られてきた水と、泡消火薬剤タンク20に貯留されている水成膜泡消火剤とを1〜3重量%となるように混合して水成膜泡消火剤水溶液とし、消火液配管9を介して開放型スプレーヘッド3に供給するようになっている。
【0020】
また、制御盤42は火災感知器40a、40bからの火災感知信号が両方とも2秒以上継続した場合に、給水装置10の電磁弁16aに設備起動信号を送って自動弁15aを開放するとともに、音響・音声警報装置41及び回転灯43を駆動するようにされている。火災感知器を3個以上設置する場合においても、全火災感知器のうち、少なくとも2つの火災感知器の火災信号が2秒以上継続した場合に、設備起動信号を送るようにされている。音響・音声警報装置41及び回転灯43は、複数の火災感知器のうち、1つが作動した場合において、起動させても良い。なお、本実施例では、ポンプ13を駆動するための圧力スイッチ19aを、送水管18の圧力低下の検知としたが、もちろん、給水管11や消火液配管9に、圧力上昇を検知する圧力スイッチを設けて、ポンプ13を駆動させることも可能である。
【0021】
開放型スプレーヘッド3a、3bは、図4及び図5に示すように、ノズル本体4と、ノズル本体4内に挿入されたアジテータ5と、ノズル本体4に螺合するネジ部4bとからなる。ノズル本体4の先端にはノズル口4a(図4参照)が設けられており、アジテータ5はノズル本体4内に挿入されており、周縁に螺旋溝5aが形成されている。また、アジテータ5の軸方向の中心には、ノズル口4aに向かって略直線状に開口するテーパ孔5bが貫設されている。なお、ノズル口4aの形状やアジテータ5の形状を変化させることによって、噴霧量や噴霧範囲や噴霧形状を変化させることができる。また、テーパ孔5bが貫設されていないスプレーヘッドを用いることもできる。開放型スプレーヘッド3a、3bは、消火液配管9と螺合するネジ部7を有している。
【0022】
次に、この消火装置の作用効果について説明する。
図6に示すように、防護区画2内の産業用ロボット1aから火災が発生した場合、火災感知器40a、40bが作動し、制御盤42に火災信号が伝達される。そして火災信号が火災感知器40a、40b共に2秒間以上を発信した場合、制御盤42は音響・音声警報装置41及び回転灯43を駆動させて火災の発生を音や光によって知らせるとともに、給水装置10の電磁弁16aに設備起動信号を送って自動弁15を開放する。自動弁15が開放されると、保圧タンク19によって常時加圧されていた送水管18の圧力が低下し、圧力スイッチ19aが投入されて、動力源が作動し、ポンプ13を駆動させて水槽12の水が逆止弁14及び送水管18通って自動弁15の二次側に流れ込む。これにより水が給水管11を通って混合器30に供給される。そして混合器30に供給された水の一部が加圧配管21aを通って泡消火薬剤タンク20に送られることにより、泡消火薬剤タンク20が加圧され、水成膜泡消火剤が薬剤配管21bを通り混合器30に送られ、水と混合される(泡消火剤の濃度は1〜3重量%)。こうして水と混合されて得られた水成膜泡消火剤水溶液は、消火液配管9を通って開放型スプレーヘッド3a、3bに送られる。
【0023】
開放型スプレーヘッド3a、3bに送られた水成膜泡消火剤水溶液は、図4及び図5に示すネジ部7から入り、テーパ孔5b及び螺旋溝5aを通ってノズル口4aから放出される。このとき、水成膜泡消火剤水溶液はアジテータ5の螺旋溝5aを通る際に回転流を形成し、この回転流によってノズル口4aから放出される水成膜泡消火剤水溶液は放射状に広がることとなる。また、開放型スプレーヘッド3a、3bには、放射された水成膜泡消火剤水溶液の進行を遮るデフレクタは設けられていないため、散布方向を指向性のあるものとすることができ、産業用ロボット1a、1bに向けて直接に水成膜泡消火剤水溶液を到達させることができる。この実施例では、開放型スプレーヘッド3a、3bの位置は産業用ロボット1a、1bの真上とされているが(図2参照)、図3に示すように、産業用ロボット1a、1bの大きさや高さや形状に合わせて、開放型スプレーヘッド3a、3bに加えて、3c、3d、3e、3fを配置したり、アジテータ5の種類等を最適なものとしたりすることにより、危険箇所の配置に応じた効果的で迅速な消火を行なうことができる。
【0024】
また、この開放型スプレーヘッド3a、3bには空気取込口がないため、水成膜泡消火剤水溶液がほとんど発泡しないまま液体状態で放出される。このため、複雑な構造の産業用ロボット1a内部まで水成膜泡消火剤水溶液が迅速に浸透し、消火することができる。また、産業用ロボットから、油が漏洩して引火したような油火災であっても、開放型スプレーヘッド3a、3bから放出された水成膜泡消火剤水溶液が、空中を飛散する過程において適度に発泡し、その泡や水成膜によって油表面を覆い、消火することもできる。このため、産業用ロボット1a全体に水成膜泡消火剤水溶液が噴霧され、内部火災や油火災を効果的に消火することができる。
【0025】
また、火災が発生したにもかかわらず、何らかの原因で自動弁15が開放されず、混合器30への自動給水がなされなかった場合においても、火災を発見したものが手動によって手動起動弁17aを開放することによって、自動弁15が開状態となり、上記と同様の消火を行うことができる。さらに、火災を知覚した人が直接ポンプを起動できるように、設備起動信号を直接発信することのできるボタンを配置しても良い。
【0026】
以上のように、実施形態1の消火設備では、防護対象の設置位置や形状に応じて開放型スプレーヘッド3a、3bの位置を決めるため、火災発生箇所に向けて、効果的で迅速な消火を行なうことができる。また、火災感知器40a、40bが共に2秒間以上を発信した場合のみ、消火設備が駆動されるため、火災感知器やノイズによる誤動作で水成膜泡消火剤水溶液が放出されるおそれが少なく、産業用ロボット等の高価で精密な産業用機械の損害を防止することができる。
【0027】
なお、開放型スプレーヘッド3a、3bの配置位置は、事前に模型の防護対象物を用いて実験を行い、防護対象物に対して噴霧方向や噴霧範囲や噴霧量等を事前に最適な条件を見つけてから設置することが好ましい。
【0028】
(実施形態2)
実施形態2の消火設備は、図7に示すように、実施形態1における自動弁15と同様の機構を有する自動弁50が設けられており、自動弁50にはシリンダ50aを有していることも同様である。ただし、シリンダ50aの上部と下部はオリフィス穴によって連通状態であり、さらにシリンダ50aの下部と、自動弁50の一次側である送水管18も連通構造とされており、すなわち常時加圧された送水管18と、シリンダ50aの上部と下部は連通状態とされる。シリンダ50aの上部と常時閉の電磁弁53は、自動制御用圧力開放管51を介して接続されており、、火災感知器40a、40bが火災を感知した場合に、制御盤42からの設備起動信号によって電磁弁53が開放され、シリンダ50a内の上部圧力が開放され、シリンダ50aと連動する自動弁50が開放されるようになっている。また、シリンダ50aの上部と常時閉の手動起動弁54は、手動制御用圧力開放管52を介して接続されており、手動起動弁54を手動によって開放することによって、電磁弁53が開放された場合と同様にシリンダ50a内の上部圧力が開放され、シリンダ50aと連動する自動弁50が開放されるようになっている。
その他の構成は実施形態1の消火装置と同様であり、同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0029】
以上のように構成された実施形態2の消火装置では、図8に示すように、防護区画2内の産業用ロボット1aから火災が発生した場合、火災感知器40a、40bが作動し、制御盤42に火災信号が伝達される。そして火災信号が火災感知器40a、40b共に2秒間以上を発信した場合、制御盤42は音響・音声警報装置41及び回転灯43をを駆動させて火災の発生を音や光によって知らせるとともに、給水装置10の電磁弁53に設備起動信号を送って開放する。これにより、シリンダ50a上部内の圧力が開放され、自動弁50が開状態となる。自動弁50が開放されると、保圧タンク19によって常時加圧されていた送水管18の圧力が低下し、圧力スイッチ19aが投入されて、動力源が作動し、ポンプ13を駆動させて水槽12の水が逆止弁14及び送水管18通って自動弁50の二次側に流れ込む。
【0030】
また、火災が発生したにもかかわらず、何らかの原因で自動弁50が開放されず、混合器30への自動給水がなされなかった場合においても、火災を発見したものが手動によって手動起動弁54を開放することによって、自動弁50が開状態となり、上記と同様の消火を行うことができる。さらに、火災を知覚した人が直接ポンプを起動できるように、設備起動信号を発信することのできる起動ボタンを配置しても良い。
【0031】
(実施形態3)
実施形態3の消火設備は、図9に示すように、実施形態1の開放型スプレーヘッド3a、3bの他に、泡ヘッド60が縦横に一定間隔で取付けられており、図示しない泡消火剤供給装置に接続されている。また、実施例1の火災感知器40a、40bは図示しない制御装置に接続されており、火災感知器40a、40bからの火災信号を制御装置が受けて、泡消火剤供給装置から泡ヘッド60へ泡消火剤水溶液が供給される。
【0032】
この消火装置では、一般火災にも対応可能な開放型スプレーヘッド3a、3bの他に、油火災に適した泡ヘッド60も設けられているため、一般火災と油火災とが複合した火災の場合において、効果的に消火を行うことができる。また、開放型スプレーヘッド3a、3bは、防護対象の設置位置や形状に応じて設置されているため、火災発生箇所に向けて、効果的で迅速な消火を行なうことができる等、実施形態1における作用効果と同じ作用効果を奏することができる。
【0033】
この発明は上記発明の実施の態様の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、産業用ロボットや溶接機械等、火災発生危険個所が立体的に点在する工場等の火災の消火設備として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態1の消火装置の通常状態を示した模式図である。
【図2】実施形態1の消火装置における開放型スプレーヘッドの配置を示す斜視図である。
【図3】実施形態1の消火装置における開放型スプレーヘッドの配置の変形例を示す斜視図である。
【図4】実施形態1及び実施形態2において用いられている開放型スプレーヘッドの分解斜視図である。
【図5】実施形態1において用いられている開放型スプレーヘッドの斜視図である。
【図6】実施形態1の消火装置の火災発生時の状態を示した模式図である。
【図7】実施形態2の消火装置の通常状態を示した模式図である。
【図8】実施形態2の消火装置の火災発生時の状態を示した模式図である。
【図9】実施形態3の消火装置における消火ヘッドの配置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
20…貯留タンク
30…混合器
3a、3b…スプレーヘッド(開放型スプレーヘッド)
5…アジテータ
40a、40b…火災感知器
60…泡ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水成膜泡消火薬剤を貯留する貯留タンクと、該貯留タンク及び給水源に接続され該水成膜泡消火薬剤と水とを混合して水成膜泡消火薬剤水溶液とする混合器と、該混合器から供給される水成膜泡消火薬剤水溶液を火災現場に放出する消火用ヘッドとを備えた消火設備において、
前記消火用ヘッドの少なくとも1つは泡立て用の空気取込口及びデフレクタを有しないスプレーヘッドであることを特徴とする消火設備。
【請求項2】
前記スプレーヘッドは火災発生源となりうる防護対象物に向けて前記水成膜泡消火薬剤水溶液を直接散布可能に配置されていることを特徴とする請求項1記載の消火設備。
【請求項3】
前記スプレーヘッドは、流路にアジテータを有していることを特徴とする請求項1又は2記載の消火設備。
【請求項4】
前記消火用ヘッドはスプレーヘッド及び泡ヘッドを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の消火設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate