説明

消耗電極式アーク溶接方法及び装置

【課題】低変態温度溶接材料からなる溶接ワイヤを用いて溶接を行うことで溶接変形を抑えると共に、溶接施工条件が相違しても同一の溶接ワイヤで対応可能とし、製造コストの低減、材料・施工管理の単純、容易化を可能とする消耗電極アーク溶接方法及び装置を提供する。
【解決手段】マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを準備し、消耗電極ワイヤW1にマルテンサイト変態開始温度が高い方の溶接ワイヤを用い、フィラーワイヤW2にマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用い、消耗電極ワイヤとフィラーワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう消耗電極ワイヤの供給量に応じてフィラーワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物用の低合金鉄鋼材料を溶接する際、溶接変形を低減させることのできる消耗電極式アーク溶接方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物用の低合金鉄鋼材料を溶接する際の溶接変形を低減させる技術として、例えば特開平11−138290号公報に示す収縮ひずみ量の少ない溶接ワイヤを用いる方法がある。この方法は、マルテンサイト変態開始温度が汎用の溶接ワイヤに比べて低い低変態温度溶接材料からなる溶接ワイヤを用い、溶接により生成する溶接金属を、溶接後の冷却過程でマルテンサイト変態を起こさせ、室温において膨張している状態とすることにより、溶接金属に生じる収縮ひずみを減少させ、引張残留応力を低減させて溶接継手の疲労強度を向上させるものである。
【0003】
残留応力は溶接変形と密接な関係があり、溶接継手の拘束状態によって、残留応力の減少は溶接変形の低減効果となって現れる。このことから特開平11−138290号公報では、マルテンサイト変態開始温度が汎用の溶接ワイヤに比べて低い低変態温度溶接材料からなる溶接ワイヤを用いて溶接を行うことにより、溶接変形を低減させようとしている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−138290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶接変形を最小限に抑えるためには、室温においてマルテンサイト変態による膨張量を最大とすべく、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度が最適値となるように溶接ワイヤの成分(低変態温度溶接材料の成分)を調整すればよい。しかしながら、溶接時の母材金属への溶込みを考えると、溶接金属は溶接ワイヤと母材金属の一部から成り、すなわち溶接ワイヤは母材による希釈を受ける。このため、溶接電流・電圧、溶接速度や溶接姿勢、シールドガスの種類等の溶接施工条件により母材金属への溶込みが変化し、すなわち希釈の度合いが変わるため、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度が最適値となるための溶接ワイヤの成分を調整し直さなければならない。
【0006】
また、溶接継手の種類や形状、要求される晶質は溶接対象毎に様々であり、溶接施工条件も自ずと違って来る。そのため、上記の母材金属による希釈の度合いもそれぞれ異なり、溶接変形の低減効果を最大とするためには、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度が最適値となるための溶接ワイヤの成分調整が別個に必要となり、製造コストあるいは材料、施工管理の面で課題が多い。
【0007】
本発明の目的は、低変態温度溶接材料からなる溶接ワイヤを用いて溶接を行うことで溶接変形を抑えると共に、溶接施工条件が相違しても同一の溶接ワイヤで対応可能とし、製造コストの低減、材料・施工管理の単純、容易化を可能とする消耗電極アーク溶接方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の特徴は次のようである。
【0009】
(1)本発明は、構造物用の低合金鉄鋼材料に対し2本の溶接ワイヤを用い、一つの溶融池を形成して溶接を行う消耗電極式アーク溶接方法において、マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを準備し、前記2本の溶接ワイヤのうちいずれか一方にマルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを用い、もう一方にマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用い、前記2本の溶接ワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう前記2本の溶接ワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行うものとする。
【0010】
このように2本の溶接ワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行うことにより、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度が所望の値に調整され、溶接変形を最小とすることができる。また、2本の溶接ワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう2本の溶接ワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を調整するため、複数の溶接対象等、溶接施工条件が異なっていても、それぞれにおいて溶接変形が最小となるよう同一の溶接ワイヤで対応可能となり、製造コストを低減しかつ材料・施工管理を単純、容易化することができる。
【0011】
(2)また、本発明は、構造物用の低合金鉄鋼材料を溶接するに際し、消耗電極ワイヤに電流を供給してアークを発生させるとともに、消耗電極ワイヤの後方に配置したフィラーワイヤを溶融池に挿入させて溶接を行う消耗電極式アーク溶接方法において、マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを準備し、前記消耗電極ワイヤ及びフィラーワイヤの一方にマルテンサイト変態開始温度が高い方の溶接ワイヤを用い、前記消耗電極ワイヤ及びフィラーワイヤの他方にマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用い、前記消耗電極ワイヤとフィラーワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう前記消耗電極ワイヤの供給量に応じて前記フィラーワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行うものとする。
【0012】
これにより複数の溶接対象等溶接施工条件が異なっていても、それぞれにおいて溶接変形が最小となるよう同一の溶接ワイヤで対応可能となり、製造コストを低減しかつ材料・施工管理を単純、容易化することができる。
【0013】
また、マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを消耗電極ワイヤ及びフィラー電極ワイヤとして用いるので、2本とも消耗電極ワイヤーとする場合に比べて溶接制御が容易となり、実用的な溶接方法を提供できる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記予め設定した値は、前記2本の溶接ワイヤにより前記構造物を溶接する場合にその溶接変形を最小とする溶接金属のマルテンサイト変態開始温度に対応するワイヤ供給量比である。
【0015】
(4)また、上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記消耗電極ワイヤにマルテンサイト変態開始温度が高い方の溶接ワイヤを用い、前記フィラーワイヤにマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用いる。
【0016】
これにより低変態温度溶接材料からなる比較的高価な溶接ワイヤ(フィラーワイヤ)の消費量を少なくすることができ、一層製造コストを低減することができる。
【0017】
(5)また、上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記マルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤとして汎用の溶接ワイヤを用いる。
【0018】
これにより汎用の溶接ワイヤは安価であるため、一層製造コストを低減することができる。
【0019】
(6)また、本発明は、構造物用の低合金鉄鋼材料に対し2本の溶接ワイヤを用い、一つの溶融池を形成して溶接を行う消耗電極式アーク溶接装置において、溶接トーチを備えたハンド部と、マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを装備したリール装置と、前記リール装置から前記溶接トーチにマルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを供給する第1溶接ワイヤ送給装置と、前記リール装置から前記溶接トーチにマルテンサイト変態開始温度の低い方の溶接ワイヤを供給する第2溶接ワイヤ送給装置と、前記ハンド部、第1溶接ワイヤ送給装置、第2溶接ワイヤ送給装置の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記2本の溶接ワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう前記2本の溶接ワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行うものとする。
【0020】
(7)更に、本発明は、構造物用の低合金鉄鋼材料を溶接するに際し、消耗電極ワイヤに電流を供給してアークを発生させるとともに、消耗電極ワイヤの後方に配置したフィラーワイヤを溶融池に挿入させて溶接を行う消耗電極式アーク溶接装置において、溶接トーチを備えたハンド部と、マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを装備したリール装置と、前記2種類の溶接ワイヤのうちマルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを前記消耗電極ワイヤ及びフィラーワイヤの一方として前記溶接トーチに供給する第1溶接ワイヤ送給装置と、前記2種類の溶接ワイヤのうちマルテンサイト変態開始温度の低い方の溶接ワイヤを前記消耗電極ワイヤ及びフィラーワイヤの他方として前記溶接トーチに供給する第2溶接ワイヤ送給装置と、前記ハンド部、第1溶接ワイヤ送給装置、第2溶接ワイヤ送給装置の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記消耗電極ワイヤとフィラーワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう前記消耗電極ワイヤの供給量に応じて前記フィラーワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行うものとする。
【0021】
(8)上記(6)又は(7)において、好ましくは、前記第1溶接ワイヤ送給装置は、前記マルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを前記消耗電極ワイヤとして前記溶接トーチに送給し、前記第2溶接ワイヤ送給装置は、前記マルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを前記フィラーワイヤとして前記溶接トーチに送給する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の溶接対象等、溶接施工条件が異なっていても、それぞれにおいて溶接変形が最小となるよう同一の溶接ワイヤで対応可能となり、製造コストを低減しかつ材料・施工管理を単純、容易化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
【0024】
まず、本発明で溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を調整する目的について説明する。
【0025】
図1は特開平11−138290号公報に示す溶接後の冷却過程における溶接金属の温度と伸びの関係を示す図である。図中、点線は一般的な溶接材料(汎用溶接ワイヤの材料)を使用した場合を示し、実線は低変態温度溶接材料と呼ばれるマルテンサイト変態開始温度(Ms)の低い溶接材料を使用した場合を示す。一般的な溶接材料を使用した場合、溶接金属は500℃付近で変態膨張を起こした後、室温では温度低下により収縮する。これに対し、低変態温度溶接材料のMs点は200℃付近にあり、室温では変態が膨張課程で修了する。この低変態温度溶接材料の適用により、溶着金属の収縮を低減でき、溶接変形が抑制される。
【0026】
図2は、本発明の溶接方法におけるマルテンサイト変態開始温度の調整可能範囲を概念的に示す図である。本発明の溶接方法ではマルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを用い、溶接を行う。2種類の溶接ワイヤの一方を溶接ワイヤ1とし他方を溶接ワイヤ2として説明する。図1の横軸は溶接ワイヤ1に対する溶接ワイヤ2の供給量比、縦軸は溶接金属のマルテンサイト変態開始温度であり、Ms1を溶接ワイヤ1(マルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤ)のマルテンサイト変態開始温度、Ms2を溶接ワイヤ2(マルテンサイト変態開始温度の低い方の溶接ワイヤ)のマルテンサイト変態開始温度とする。図中の点線は母材金属による希釈を考えない場合、すなわち溶接金属が2本のワイヤが溶融したもののみから成っている場合である。実線は、溶接ワイヤ1が汎用の溶接ワイヤであり、母材金属のマルテンサイト変態開始温度がMs1と等しく、2本のワイヤ供給量比によらず希釈率がある一定の値となると仮定した場合を示す。希釈率が大きいほど溶接金属のマルテンサイト変態開始温度の調整可能範囲は狭まるため、溶接ワイヤ2のマルテンサイト変態開始温度は、溶接金属に持たせるべきマルテンサイト変態開始温度に比べ低く調整することが望まれる。
【0027】
図3は、すみ肉溶接における溶接部の断面図である。A1+A2が溶接金属であり、A2が溶込みである。この図から、母材金属による希釈率Dは、
D=A2/(A1+A2)
で表される。2本の溶接ワイヤ1,2のそれぞれの供給量、上記の希釈率Dにより溶接金属中に混ざる母材金属の量、これらの化学成分から、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度が求められる。化学成分からマルテンサイト変態開始温度を求める方法は実験式として複数公表されている。その代表的なものとしては、例えば特開平11−138290号公報に紹介されているように次の式がある。
【0028】
Ms点(℃)=719−795×C(重量%)−23.7×Cr(重量%)−26.5×Ni(重量%)−35.55×Si(重量%)−13.25×Mn(重量%)−23 .7×Mo(重量%)−11.85×Nb(重量%)
…(1)
2本の溶接ワイヤを用いる方式としては、2本共アークを発生させる方法、あるいは片方のみにアークを発生させる方法があるが、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を調整しようとする場合、一般に後者の方が溶接施工条件から見て調整の幅が広く、好ましいと考えられる。2本の溶接ワイヤを用いて片方のみにアークを発生させる場合、残りのワイヤはフィラーワイヤとして用いる。
【0029】
図4は、この方法において、消耗電極ワイヤにマルテンサイト変態開始温度が高い方の溶接ワイヤを用い、フィラーワイヤにマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用いた場合に、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を調整するための溶接施工条件(運転条件)を設定する手順を示すフローチャートである。ここで、消耗電極ワイヤには汎用の溶接ワイヤを用い、母材金属と消耗電極ワイヤのマルテンサイト変態開始温度はほぼ等しいと仮定して説明する。
【0030】
初めにステップS1で、室温においてマルテンサイト変態による膨張量が溶接変形を防止するのに最適の膨張量となる溶接金属のマルテンサイト変態開始温度の最適値Msを計算する。この場合、その溶接変形を防止するのに最適な溶接金属の膨張量は、図1の特性図や溶接継手の形状等の設計条件に応じて決めることができる。なお、実際には、最適な膨張量は室温でのマルテンサイト変態による膨張量より大きい場合が多いと考えられる。よって、その場合は、簡易的に、室温においてマルテンサイト変態による膨張量が最大となる溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を計算し最適値Msとしてもよい。
【0031】
次にステップS2で、対象溶接継手において、消耗電極ワイヤのみによる溶接施工条件(初期溶接施工条件)を決定し、この溶接施工条件で実際に消耗電極ワイヤのみを用いて溶接を行い、溶接部の断面形状から初期値としての希釈率Dを求める。溶接施工条件には、要求される溶接品質を満足する溶接電流(消耗電極ワイヤ供給量(供給速度)に対応)、溶接電圧、溶接速度等が含まれ、これらは溶接の安定性、能率性、あるいは母材への入熱制限等により定める。希釈率Dは溶接部を切断し、その断面形状を観察して面積計算により決める。
【0032】
続いてステップS3で、消耗電極ワイヤの供給量、希釈率D、溶接金属中に混ざる母材金属の量、これらの化学成分、フィラーワイヤの化学成分から、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度がステップS1で計算した最適値Msとなるようにフィラーワイヤの供給量(供給速度)を求める。
【0033】
ステップS4では、フィラーワイヤを供給することによる溶接金属量の増加に伴い溶接速度を調整すると共に、ビード形状の変化に対応して他の溶接施工条件の調整を行い、また溶込みの変化すなわち希釈率Dの変化を確認して、その変化後の希釈率Dを用いてステップS3と同じ方法でフィラーワイヤの供給量(供給速度)を再度求める。これはフィラーワイヤの使用に伴い溶接施工条件及び希釈率Dを微調整をすることを意味する。
【0034】
ステップS5では、最後に、フィラーワイヤを溶融し易くし、かつ溶融現象を安定化させるため、フィラーワイヤに流すフィラー電流をフィラーワイヤの供給量に応じて定める。
【0035】
以上のようにして溶接施工条件が決まると、その溶接施工条件が溶接ロボットの制御装置に入力され、実際の溶接施工を行う。
【0036】
以上の手順によれば、ステップS2,S3で初期的に異なる溶接施工条件を設定しても、ステップS4により溶接金属のマルテンサイト変態開始温度が最適値Msとなるように調整できるので、常に溶接変形が最小となるように制御することが可能となる。
【0037】
なお、溶接変形を小さくする効果は多少小さくなるが、ステップS4の手順を省略し、ステップS1〜S3の後、直接S5に移行し、フィラーワイヤに流すフィラー電流を決めてもよい。
【0038】
以下に一例を示す。この例はステップS1〜S3→S5により溶接施工条件を決める場合のものである。
1.母材、消耗電極ワイヤ、フィラーワイヤとして下記のものを使用する。
【0039】
母材:SS400
消耗電極ワイヤ:汎用溶接ワイヤ(JIS YGW15)
フィラーワイヤ:低変態温度溶接ワイヤ
<SS400成分元素例(重量%)>
C:0.16%
Si:0.14%
Mn:0.52%
残Fe
<汎用溶接ワイヤ成分元素例(重量%)>
C:0.09%
Si:0.37%
Mn:1.04%
残Fe
<低変態温度溶接ワイヤ成分元素例(重量%)>
C:0.11%
Si:0.31%
Mn:1.99%
Ni:21.77%
Cr:27.08%
残Fe
2.溶接継手の形状例として下向きすみ肉溶接(脚長7mm)を行う。
3.母材SS400の下向きすみ肉溶接(脚長7mm)に対し、溶接変形を最小とするマルテンサイト変態開始温度の最適値Msを求める(ステップS1)。この場合、例えばMs=180℃である。
4.下記の溶接施工条件で初期値としての希釈率を求める(ステップS2)。この場合、例えば希釈率D=0.2である。
【0040】
<初期溶接施工条件>
下向きすみ肉溶接(脚長7mm)で溶接電流350A(消耗電極ワイヤ供給量113g/min)、電圧32V、溶接速度600mm/min
5.次のようにしてフィラーワイヤの供給量を求める(ステップS3)。
【0041】
1)フィラーワイヤの供給量比をRとすると、Rは次の式で表せる。
【0042】
ワイヤ供給量比R
=フィラーワイヤの供給量/(消耗電極ワイヤ+フィラーワイヤの供給量)
…(2)
2)上記母材、消耗電極ワイヤ(汎用溶接ワイヤ)、フィラーワイヤ(低変態温度溶接ワイヤ)の成分元素と、DとRから溶接金属の組成は下記式から求まる。
【0043】
D×(母材の各元素)+(1−D)×{(1−R)×(消耗電極ワイヤの各元素)+R×(フィラーワイヤの各元素)}
…(3)
3)最初は、ワイヤ供給比Rを適当に決め、(3)式からそのときの溶接金属の組成を求める。そしてその溶接金属の組成を用いて上記(1)式から変態開始温度Msを計算する。
【0044】
4)その計算値Msと目標の最適値Ms=180℃とを比較し、差が大きい場合はその差を小さくする方向にRを修正し、その修正したRで上記3)の計算を再び行い、変態開始温度Msを計算する。
【0045】
5)上記3)及び4)の処理を計算値と目標の最適値Ms=180℃との差が許容範囲となるまで繰り返す。この例では、R=0.43でMs=184℃である。
【0046】
6)ステップS2における溶接施工条件の消耗電極ワイヤ供給量113g/minとR=0.43からフィラーワイヤの供給量を計算する。この場合、フィラーワイヤの供給量=85.2g/mimである。
6.フィラーワイヤの供給量=85.2g/mimに応じたフィラー電流を決定する(ステップS5)。この場合、例えばフィラー電流=130Aとして求まる。
【0047】
以上の図4に示した方法は、本発明の方法を実施する初期段階であって、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度の最適値Msに対応する溶接施工条件のデータが無いか、少ない場合に有効である。適用例が増え、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度の最適値Msに対応する溶接施工条件のデータが多数蓄積された段階では、その溶接施工条件をデータベース化し、そのデータを直接用いてもよい。
【0048】
また、上記の方法では、消耗電極ワイヤにマルテンサイト変態開始温度が高い方の溶接ワイヤを用い、フィラーワイヤにマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用いたが、その逆(消耗電極ワイヤにマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用い、フィラーワイヤにマルテンサイト変態開始温度が高い方の溶接ワイヤを用いる)であってもよい。
【0049】
図5は、2本の溶接ワイヤのうち一方のみアークを発生させる消耗電極ワイヤとして用い、もう一方をフィラーワイヤとしてアークを発生させず溶融池の後方部分へ挿入する溶接方法を実現するための溶接装置全体を示すシステム図である。
【0050】
溶接ロボット1は、例えば6軸多関節ロボットであり、アーム先端にハンド部2を備えている。このハンド部2には消耗電極ワイヤ供給チューブ3を介して消耗電極式アーク溶接用の溶接トーチ4が設けられている。
【0051】
また、溶接ロボット1には、消耗電極ワイヤ送給装置5とフィラーワイヤ送給装置6とが取り付けられている。消耗電極ワイヤ送給装置5は、消耗電極ワイヤ供給リール7から消耗電極ワイヤ供給チューブ3を通して溶接トーチ4へ消耗電極ワイヤW1を供給する。フィラーワイヤ送給装置6は、フィラーワイヤ供給リール8からフィラーワイヤ供給チューブ9を通して溶接トーチ4ヘフィラーワイヤW2を供給する。
【0052】
電極ワイヤ送給装置5は、溶接電源10によって消耗電極ワイヤW1の送給を制御する。フィラーワイヤ送給装置6は、フィラー電源11によってフィラーワイヤW2の送給を制御する。溶接電源10のプラス端子10Aは消耗電極ワイヤW1に導通接続され、マイナス端子10Bは溶接母材B1にアース接続されている。また、フィラー電源11のプラス端子11Aは溶接母材B1にアース接続され、マイナス端子11BはフィラーワイヤW2に導通接続されている。
【0053】
溶接ロボット1、溶接電源10、フィラー電源11はロボット制御装置12に接続され、ロボット制御装置12はそれらの動作を制御する。
【0054】
図6は、ロボット制御装置12の制御機能の詳細を示す図である。
【0055】
ロボット制御装置12はロボット制御部12aと溶接電源制御部12bとフィラー電源制御部12cとを有している。ロボット制御部12aは溶接ロボット1の動作を制御する。溶接電源制御部12bは、溶接電源10に対してアーク制御指令を出力する。アーク制御指令にはアークスタート命令、溶接電流、電圧指示、溶接ワイヤ送給指示、アーク、送給異常時処理等があり、これに対応して溶接電源10では、電流制御、電圧制御、送給制御、異常検出を行う。フィラー電源制御部12cは、フィラー電源11に対してフィラー制御指令を出力する。フィラー制御指令にはフィラー電流指示、フィラー送給指示、送給異常時処理等があり、これに対応してフィラー電源11では、電流制御、電圧監視、送給制御、異常検出を行う。
【0056】
また、ロボット制御装置12にはティーチングペンダントを兼ねたモニタ付きの入力装置13が接続されている。入力装置13は、溶接パラメータの入力部であり、溶接ロボット1の動作制御データ、溶接電源10の制御データ及びフィラー電源11の制御データをロボット制御装置12に送信する。
【0057】
図7は、ロボット制御装置12による溶接プロセスを示すフローチャートである。以下、この図7を用いて溶接装置の動作を説明する。
【0058】
溶接作業を行う際には、まず溶接開始前に、入力装置13によって上記方法により決定した溶接施工条件(溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を調整し溶接変形を最小にするための溶接施工条件)を含む各種溶接施工条件(例えば、溶接トーチ2の移動経路、溶接トーチ2の移動速度(溶接速度)、溶接電流、消耗電極ワイヤ供給量、溶接電圧、フィラー電流、フィラーワイヤ供給量等)を入力し、ロボット制御装置12はその入力した各種溶接施工条件を内部メモリに記憶し設定する。
【0059】
以上の条件設定を行った後、入力装置13により溶接開始を指示すると、ロボット制御装置12の溶接電源制御部12bは溶接電源10にアークスタート命令と溶接電流・溶接電圧の指令値を出力し、溶接電源10はその指令値に応じた電圧・電流を消耗電極ワイヤW1に印加する。これにより消耗電極ワイヤW1と溶接母材B1の溶接箇所との間にアークが発生し、そのアーク熱により消耗電極ワイヤW1の先端部と溶接母材B2の溶接箇所とが溶融して溶融池が形成される。このとき、消耗電極ワイヤW1は先端から消耗(溶融)していくので、溶接電源制御部12bは、設定に応じた消耗電極ワイヤW1の送給速度の指令値を溶接電源10に出力し、消耗電極ワイヤ送給装置5の駆動速度を制御し、消耗電極ワイヤW1を適切な速度で溶接箇所に送給する。
これと同時に、ロボット制御装置12のロボット制御部12aは溶接ロボット1の動作を開始し、溶接ロボット1のアームを設定した移動経路に沿って設定した移動速度で移動するよう駆動制御する。
【0060】
一方、溶接電源制御部12bから溶接電源10にアークスタート命令が出力されると、その情報がロボット制御装置12のフィラー電源制御部12cに伝えられ、フィラー電源制御部12cは、タイマによって所定の時間(例えば2〜5秒後)が経過した後、設定に応じたフィラー電流及び送給速度の指令値をフィラー電源11に出力する。フィラー電源11は、フィラー電源制御部12cから指令値を入力すると、その指令値に応じて設定された大きさの電流をフィラーワイヤW2に供給すると共に、フィラー送給信号(電圧)をフィラーワイヤ送給装置6に出力する。これにより溶融池にフィラーワイヤW2が設定の送給速度で送給(挿入)され、フィラー電源11からの印加電流による熱と溶融池の熱とにより、フィラーワイヤW2が溶融する。
【0061】
所定の経路に沿った溶接が完了すると、ロボット制御部12aが溶接ロボット1に対して動作の停止時を指示すると共に、フィラー電源制御部12cはフィラー電源11に対してフィラー送給停止を指示し、溶接電源制御部12bは溶接電源10に対してアーク停止の指示を行う。
【0062】
以上のようにロボット制御装置12によって、各種設定条件に従って各種機器が連動して作動制御され、所定の経路に沿って溶融した母材金属、消耗電極ワイヤW1、フィラーワイヤW2によって溶接ビードが形成される。
【0063】
また、ロボット制御装置12に、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を調整し溶接変形を最小とする溶接施工条件を設定し、この溶接施工条件に基づいて溶接を行うため、溶接変形を最小とすることができる。
【0064】
更に、2本の溶接ワイヤW1,W2の供給量比が予め設定した値となるよう2本の溶接ワイヤW1,W2の供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を調整するため、複数の溶接対象等溶接施工条件が異なっていても、それぞれにおいて溶接変形が最小となるよう同一の溶接ワイヤで対応可能となり、製造コストを低減しかつ材料・施工管理を単純、容易化することができる。
【0065】
また、マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを消耗電極ワイヤW1及びフィラー電極ワイヤW2として用いるので、2本とも消耗電極ワイヤーとする場合に比べて溶接制御が容易となり、実用的な溶接方法を提供できる。
【0066】
更に、マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤW1,W2を用いる場合に、比較的消費量の多い消耗電極ワイヤW1にマルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤ(汎用の溶接ワイヤ)を用い、比較的消費量の少ないフィラーワイヤW2にマルテンサイト変態開始温度の低い方の溶接ワイヤ(低変態温度溶接材料からなる溶接ワイヤ)を用いたので、比較的高価な溶接ワイヤである低変態温度溶接材料からなる溶接ワイヤの消費量を少なくすることができ、一層製造コストを低減することができる。
【0067】
なお、以上の実施の形態では、溶接開始前に入力装置13により溶接施工条件のデータをロボット制御装置12に入力し設定したが、前述したように適用例が増え、溶接金属のマルテンサイト変態開始温度の最適値Msに対応する溶接施工条件が多数蓄積された場合は、ロボット制御装置12の内部メモリに多数のテーブルを設け、このテーブルにそれらのデータを溶接施工条件毎に記憶し、溶接時に入力装置13を用いてそのときの溶接施工条件に最も近いものを選択することで設定してもよい。
【0068】
また、以上の実施の形態では、2本の溶接ワイヤのうち片方をアークを発生させる溶接ワイヤとし、残りのワイヤをフィラーワイヤとしたが、二本ともアークを発生させる溶接ワイヤとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】溶接後の冷却過程における溶接金属の温度と伸びの関係を示す図である。
【図2】本発明の溶接方法によるマルテンサイト変態開始温度の調整可能範囲を概念的に示す図である。
【図3】すみ肉溶接における溶接部の断面図である。
【図4】溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を調整するための溶接施工条件(運転条件)を設定する手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態による溶接装置全体を示すシステム図である。
【図6】ロボット制御装置の制御機能の詳細を示す図である。
【図7】ロボット制御装置による溶接プロセスを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 溶接ロボット
2 ハンド部
3 消耗電極ワイヤ供給チューブ
4 溶接トーチ
5 消耗電極ワイヤ送給装置
6 フィラーワイヤ送給装置
7 消耗電極ワイヤ供給リール
8 フィラーワイヤ供給リール
9 フィラーワイヤ供給チューブ
10 溶接電源
11 フィラー電源
12 ロボット制御装置
13 入力装置
W1 消耗電極ワイヤ
W2 フィラーワイヤ
B1 溶接母材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物用の低合金鉄鋼材料に対し2本の溶接ワイヤを用い、一つの溶融池を形成して溶接を行う消耗電極式アーク溶接方法において、
マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを準備し、
前記2本の溶接ワイヤのうちいずれか一方にマルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを用い、もう一方にマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用い、
前記2本の溶接ワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう前記2本の溶接ワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行うことを特徴とする消耗電極式アーク溶接方法。
【請求項2】
構造物用の低合金鉄鋼材料を溶接するに際し、消耗電極ワイヤに電流を供給してアークを発生させるとともに、消耗電極ワイヤの後方に配置したフィラーワイヤを溶融池に挿入させて溶接を行う消耗電極式アーク溶接方法において、
マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを準備し、
前記消耗電極ワイヤ及びフィラーワイヤの一方にマルテンサイト変態開始温度が高い方の溶接ワイヤを用い、前記消耗電極ワイヤ及びフィラーワイヤの他方にマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用い、
前記消耗電極ワイヤとフィラーワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう前記消耗電極ワイヤの供給量に応じて前記フィラーワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行うことを特徴とする消耗電極式アーク溶接方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載した消耗電極式アーク溶接方法において、
前記予め設定した値は、前記2本の溶接ワイヤにより前記構造物を溶接する場合にその溶接変形を最小とする溶接金属のマルテンサイト変態開始温度に対応するワイヤ供給量比であることを特徴とする消耗電極式アーク溶接方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載した消耗電極式アーク溶接方法において、
前記消耗電極ワイヤにマルテンサイト変態開始温度が高い方の溶接ワイヤを用い、前記フィラーワイヤにマルテンサイト変態開始温度が低い方の溶接ワイヤを用いることを特徴とする消耗電極式アーク溶接方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載した消耗電極式アーク溶接方法において、
前記マルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤとして汎用の溶接ワイヤを用いることを特徴とする消耗電極式アーク溶接方法。
【請求項6】
構造物用の低合金鉄鋼材料に対し2本の溶接ワイヤを用い、一つの溶融池を形成して溶接を行う消耗電極式アーク溶接装置において、
溶接トーチを備えたハンド部と、
マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを装備したリール装置と、
前記リール装置から前記溶接トーチにマルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを供給する第1溶接ワイヤ送給装置と、
前記リール装置から前記溶接トーチにマルテンサイト変態開始温度の低い方の溶接ワイヤを供給する第2溶接ワイヤ送給装置と、
前記ハンド部、第1溶接ワイヤ送給装置、第2溶接ワイヤ送給装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記2本の溶接ワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう前記2本の溶接ワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行うことを特徴とする消耗電極式アーク溶接装置。
【請求項7】
構造物用の低合金鉄鋼材料を溶接するに際し、消耗電極ワイヤに電流を供給してアークを発生させるとともに、消耗電極ワイヤの後方に配置したフィラーワイヤを溶融池に挿入させて溶接を行う消耗電極式アーク溶接装置において、
溶接トーチを備えたハンド部と、
マルテンサイト変態開始温度の異なる2種類の溶接ワイヤを装備したリール装置と、
前記2種類の溶接ワイヤのうちマルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを前記消耗電極ワイヤ及びフィラーワイヤの一方として前記溶接トーチに供給する第1溶接ワイヤ送給装置と、
前記2種類の溶接ワイヤのうちマルテンサイト変態開始温度の低い方の溶接ワイヤを前記消耗電極ワイヤ及びフィラーワイヤの他方として前記溶接トーチに供給する第2溶接ワイヤ送給装置と、
前記ハンド部、第1溶接ワイヤ送給装置、第2溶接ワイヤ送給装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記消耗電極ワイヤとフィラーワイヤの供給量比が予め設定した値となるよう前記消耗電極ワイヤの供給量に応じて前記フィラーワイヤの供給量を調整して溶接金属のマルテンサイト変態開始温度を制御しつつ溶接を行うことを特徴とする消耗電極式アーク溶接装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載した消耗電極式アーク溶接装置において、
前記第1溶接ワイヤ送給装置は、前記マルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを前記消耗電極ワイヤとして前記溶接トーチに送給し、
前記第2溶接ワイヤ送給装置は、前記マルテンサイト変態開始温度の高い方の溶接ワイヤを前記フィラーワイヤとして前記溶接トーチに送給することを特徴とする消耗電極式アーク溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−122991(P2006−122991A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318090(P2004−318090)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】