説明

消臭フィルタ及び消臭装置

【課題】光触媒を担持した消臭フィルタ及び光触媒を担持した消臭フィルタを有する消臭装置であって、酸性臭気の消臭性能に優れた消臭フィルタ及び消臭装置を提供する。
【解決手段】フィルタ基材に、光触媒粒子とアルカリ物質とを担持してなることを特徴とする消臭フィルタ。光触媒粒子が臭気ガス中のアルコール類、アルデヒド等の有機物を酸化分解することにより、臭気ガスが消臭される。光触媒粒子によって酸化分解される過程において発生する低級脂肪酸がアルカリ物質によって中和され、酸性臭気の発生が低減ないし防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒粒子をフィルタ基材に担持してなる消臭フィルタ及び消臭装置に係り、特に消臭効果に優れる消臭フィルタ及び消臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴミ処分場不足の問題に対応したゴミの減量や有効利用の観点から、家庭用や業務用の生ゴミ処理機が開発されている。この生ゴミ処理機として、微生物を利用したものが知られている。即ち、生ゴミの収納容器の底部に微生物を利用した発酵床を設けておき、生ゴミを投入して発酵床と生ゴミとを撹拌して減量処理するものである。この生ゴミ処理機の処理物は堆肥等として有効利用することができる。
【0003】
このような生ゴミ処理機では、微生物による発酵、生ゴミ成分の変性、分解により悪臭物質を含んだ臭気ガスが放出される。従来、この臭気ガスの消臭のために、白金触媒による低温燃焼法を採用した消臭装置が提案されている。
【0004】
ところで、一般的な消臭フィルタとしては、活性炭の吸着機能と光触媒の酸化分解機能とを組み合わせたものが有効であることが知られている。即ち、活性炭と光触媒とを組み合わせたものであれば、活性炭の吸着作用及び光触媒の酸化分解作用により優れた消臭効果が得られると共に、光触媒が活性炭に吸着された臭気物質を分解することにより活性炭の吸着性能が再生され、長期消臭性能に優れた消臭フィルタが実現される。そこで、両機能を組み合わせるために、活性炭フィルタと光触媒フィルタを積層したものや、1つの基材に活性炭と光触媒とを担持させたフィルタが提案されている。このうち、後者の消臭フィルタの基材としては、通常、ハニカム形状のダンボールが用いられている。
【0005】
また、住環境の高気密化と、生活水準の向上、人々の衛生意識の向上、住環境に対する要求レベルの向上に伴い、室内で発生する不快な臭気、例えば、タバコ臭、生活臭(生ゴミ、調理、ペット等の匂い)をより高度に消臭することが望まれている。そして、この要望に応えるため、消臭フィルタを設置することにより消臭機能を付与した高性能な空調機が開発されている。
【0006】
なお、本出願人は、先に、セラミック多孔体よりなるフィルタ基材に光触媒を担持させてなるフィルタ(特開2004−351381号公報)、ポリウレタンフォームよりなる三次元構造体に活性炭を担持させた燃料電池用気体の浄化器(特開2003−297410号公報)を提案しているが、いずれも、活性炭と光触媒との両方を担持させたものではない。
【特許文献1】特開2004−351381号公報
【特許文献2】特開2003−297410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の光触媒を担持した消臭フィルタや消臭装置を用いて臭気ガスを処理する場合、消臭効果を発揮するが、その一方で、処理ガスにおいて酸性臭気が強くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、光触媒を担持した消臭フィルタ及び光触媒を担持した消臭フィルタを有する消臭装置であって、酸性臭気の消臭性能に優れた消臭フィルタ及び消臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(請求項1)の消臭フィルタは、フィルタ基材に、光触媒粒子とアルカリ物質とを担持してなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の消臭フィルタは、請求項1において、前記アルカリ物質は、KCO,NaCO,KHCO,NaHCO,KOH,NaOH,KI,NaI,NaSiO,KSiOよりなる群の少なくとも1種類を含有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の消臭フィルタは、請求項1又は2において、前記光触媒粒子は、アナターゼ型酸化チタン微粒子の懸濁液とペルオキソチタン酸水溶液との混合液を前記フィルタ基材に付着させることにより担持されたものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の消臭フィルタは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記フィルタ基材にさらに活性炭粒子を担持してなることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の消臭フィルタは、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記光触媒粒子は、前記フィルタ基材の表面に担持されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6の消臭フィルタは、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記フィルタ基材はシート形状となっており、該フィルタ基材の一方の面に前記光触媒粒子が担持され、該一方の面と対向する面に前記アルカリ物質が担持されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7の消臭フィルタは、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記フィルタ基材はシート形状となっており、該フィルタ基材の一方の面に前記光触媒粒子及びアルカリ物質が担持されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8の消臭フィルタは、請求項1ないし7のいずれか1項において、前記フィルタ基材は、三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームよりなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明(請求項9)の消臭装置は、消臭フィルタと、該消臭フィルタに紫外線を照射する紫外線照射手段とを備えてなる消臭装置において、該消臭フィルタの少なくとも一部が請求項1ないし8のいずれか1項の消臭フィルタであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項10の消臭装置は、複数個の消臭フィルタと、該消臭フィルタに紫外線を照射する紫外線照射手段とを備えてなる消臭装置において、該複数個の消臭フィルタは、フィルタ基材に光触媒粒子を担持してなる第1の消臭フィルタと、フィルタ基材にアルカリ物質を担持してなる第2の消臭フィルタとを含むことを特徴とするものである。
【0019】
請求項11の消臭装置は、請求項10において、前記アルカリ物質は、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び炭酸ナトリウムよりなる群の少なくとも1種類を含有することを特徴とするものである。
【0020】
請求項12の消臭装置は、請求項10又は11において、前記光触媒粒子は、アナターゼ型酸化チタン微粒子の懸濁液とペルオキソチタン酸水溶液との混合液を前記フィルタ基材に付着させることにより担持されたものであることを特徴とするものである。
【0021】
請求項13の消臭装置は、請求項10ないし12のいずれか1項において、前記フィルタ基材にさらに活性炭粒子を担持してなることを特徴とするものである。
【0022】
請求項14の消臭装置は、請求項10ないし13のいずれか1項において、前記フィルタ基材は、三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームよりなることを特徴とするものである。
【0023】
請求項15の消臭装置は、請求項9ないし14のいずれか1項において、前記フィルタ基材に光触媒粒子を担持してなる光触媒粒子担持消臭フィルタは、前記紫外線照射手段から照射される紫外線が直接当たる位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項16の消臭装置は、請求項15において、前記光触媒粒子担持消臭フィルタは、片面に光触媒粒子を担持してなるシート形状となっており、該片面が前記紫外線照射手段と対面していることを特徴とするものである。
【0025】
請求項17の消臭装置は、請求項9ないし16のいずれか1項において、該消臭装置は生ゴミ処理機から放出される臭気を処理するためのものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の消臭フィルタは、優れた消臭性能を有し、特に優れた酸性臭気の消臭性能を有する。
【0027】
即ち、本発明の消臭フィルタは、光触媒粒子が臭気ガス中のアルコール類、アルデヒド等の有機物を酸化分解することにより、臭気ガスが消臭される。
【0028】
また、本発明者らは鋭意研究の結果、該有機物が光触媒粒子によって酸化分解される過程において、中間生成物として低級脂肪酸が発生し、この低級脂肪酸が蓄積することによって酸性臭気が強くなることを見出した。
【0029】
本発明の消臭フィルタにあっては、この低級脂肪酸がフィルタ基材に担持したアルカリ物質によって中和される。これにより、低級脂肪酸の蓄積が解消されることになり、酸性臭気の発生が低減ないし防止される。
【0030】
本発明において、アルカリ物質は、KCO,NaCO,KHCO,NaHCO,KOH,NaOH,KI,NaI,NaSiO,KSiOよりなる群の少なくとも1種類を含有する場合(請求項2)、原料コストが安価であるため好ましい。
【0031】
本発明において、この光触媒の担持方法としては、環境汚染の問題のない、アナターゼ型酸化チタン微粒子の懸濁液とペルオキソチタン酸水溶液との混合液を用い、この混合液をフィルタ基材に付着させることにより担持させる方法が、光触媒粒子とフィルタ基材及び活性炭粒子との密着性も良好となり好ましい(請求項3)。
【0032】
本発明において、フィルタ基材にさらに活性炭粒子を担持してなることが好ましい(請求項4)。この場合、活性炭が臭気成分を吸着することにより、消臭フィルタの消臭性能がより向上する。なお、吸着された臭気成分は光触媒粒子によって酸化分解されるため、活性炭の吸着性能の低下が防止ないし抑制される。
【0033】
フィルタ基材に担持された光触媒粒子には、紫外線が十分に照射されることが光触媒機能を十分に発揮させる上で好ましい。従って、本発明の消臭フィルタにおいて、光触媒粒子は、フィルタ基材の表面に担持されていることが有効である(請求項5)。
【0034】
本発明において、フィルタ基材はシート形状となっており、該フィルタ基材の一方の面に前記光触媒粒子が担持され、該一方の面と対向する面に前記アルカリ物質が担持されていてもよい(請求項8)。この場合、光触媒粒子が担持された面を紫外線が照射される方向に対面させることにより、消臭性能が向上する。また、この光触媒粒子が担持された面にはアルカリ物質が担持されていないため、より効率的に光触媒粒子に紫外線が当たることになり、消臭性能がより向上する。なお、アルカリ物質による低級脂肪酸の中和のために紫外線は必要ないため、アルカリ物質が担持された面に紫外線が当たらなくても消臭性能が低下することはない。
【0035】
但し、本発明において、フィルタ基材はシート形状となっており、該フィルタ基材の一方の面に前記光触媒粒子及びアルカリ物質が担持されていてもよい(請求項7)。この場合にあっても、光触媒粒子及びアルカリ物質が担持された面を紫外線が照射される方向に対面させることにより、消臭性能が向上する。
【0036】
本発明において、フィルタ基材は、三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームよりなることが好ましい(請求項8)。三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームは、比表面積が大きく、かつ圧力損失も低く、紫外線透過性にも優れるものであるため、このような三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームに光触媒粒子を担持してなる本発明の消臭フィルタであれば、光触媒の酸化分解性能を十分に発揮させることができ、消臭効果に優れ、しかも、圧力損失が低いために、被処理流体を低動力で効率的に流通させて高い消臭処理効率を得ることができる。
【0037】
本発明(請求項9)の消臭装置は、本発明の消臭フィルタを備えてなるため、臭気特に酸性臭気の消臭性能に優れる。
【0038】
また、本発明(請求項10)の消臭装置にあっても、第1の消臭フィルタに担持された光触媒粒子が臭気ガス中のアルコール類、アルデヒド等の有機物を酸化分解することにより、臭気ガスが消臭される。また、第2の消臭フィルタに担持されたアルカリ物質が、この光触媒粒子によって酸化分解される過程で発生する低級脂肪酸を中和するため、低級脂肪酸の蓄積が解消されることになり、酸性臭気の発生が低減ないし防止される。
【0039】
本発明の消臭フィルタ及び消臭装置は、特に生ゴミ処理機から放出される臭気を処理するための消臭フィルタ及び消臭装置として好適である(請求項17)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に本発明の消臭フィルタ及び消臭装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0041】
まず、本発明に係る消臭フィルタを説明する。
【0042】
本発明の消臭フィルタは、フィルタ基材に、光触媒粒子とアルカリ物質とを担持してなる。
【0043】
本発明の消臭フィルタは、光触媒粒子が臭気ガス中のアルコール類、アルデヒド等の有機物を酸化分解することにより、臭気ガスが消臭される。また、臭気ガスが光触媒粒子によって酸化分解される過程において発生する低級脂肪酸が、フィルタ基材に担持したアルカリ物質によって中和される。これにより、低級脂肪酸の蓄積が解消されることになり、酸性臭気の発生が低減ないし防止される。
【0044】
本発明の消臭フィルタにおいて、フィルタ基材にさらに活性炭粒子を担持した場合、活性炭が臭気成分を吸着することにより、消臭フィルタの消臭性能がより向上する。また、吸着された臭気成分は光触媒粒子によって酸化分解されるため、活性炭の吸着性能の低下が防止ないし抑制される。
【0045】
フィルタ基材としては特に制限はなく、例えば、ポリウレタンフォーム等の樹脂発泡体、ポリエステル不織布等の有機繊維、ハニカム形状のダンボールのほか、セラミックス発泡体、セラミックス多孔質体、ガラス繊維等の無機基材等が挙げられる。
【0046】
光触媒粒子としては特に制限はなく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、硫化カドミウム、酸化第二鉄、チタン酸ストロンチウム等の金属酸化物が挙げられるが、本発明はこれらの金属酸化物光触媒のうち、光触媒効果が高く、汎用性に優れる点で酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタン微粒子が好適である。
【0047】
アルカリ物質としては特に制限はなく、KCO,NaCO,KHCO,NaHCO,KOH,NaOH,KI,NaI,NaSiO,KSiO等が挙げられる。
【0048】
次いで、本発明に係る消臭フィルタの製造方法の一例として、三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームに活性炭粒子を担持したフィルタ基材を用いた消臭フィルタの製造方法を説明するが、本発明に係る消臭フィルタの製造方法は何ら以下の方法に限定されるものではない。
【0049】
消臭フィルタを製造するには、まず、フィルタ基材である三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームに活性炭粒子を担持する。
【0050】
フィルタ基材として用いるポリウレタンフォームは、発泡時の条件コントロールにより通気度を上げたり、骨格間距離を任意に設定したりすることができ、また発泡後爆発処理やアルカリ処理等の物理的、化学的処理により通気度を上げたりすることができる点において、三次元網状骨格構造体として好ましい。ポリウレタンフォームとしては、特に、軟質ポリウレタンフォーム、又は発泡膜を除去した網状ポリウレタンフォーム等が好ましい。また、金属化ポリウレタンフォームのような硬質の三次元網状骨格構造体を使用することもできる。
【0051】
フィルタ基材として用いるポリウレタンフォームは、連続気泡ウレタン樹脂発泡体によって形成される三次元網状骨格構造、好ましくは正十二面体骨格構造により無数のセルが形成されたものであり、そのセル数は5〜50PPI、特に5〜20PPIであることが好ましい。ポリウレタンフォームのセル数が50PPIよりも大きいと圧力損失が大きくなり、また紫外線透過性も低くなる。5PPIよりも小さいと比表面積が低減して消臭効率が低下する。なお、PPIはpores per inchである。
【0052】
フィルタ基材に担持する活性炭粒子としては、BET比表面積が500m/g以上とくに1000〜2000m/g程度のものが好ましい。吸着性能の面からは、活性炭粒子の比表面積は大きい程よいが、過度に比表面積が大きいと、硬度が下がって、発塵要因となる可能性がある。
【0053】
活性炭粒子は、バインダー層を介してフィルタ基材に担持されることが好適であり、この場合、活性炭粒子の一部が該バインダー層に接触し、残部がバインダー層から露出するように担持されていることが好適である。このように活性炭粒子がバインダー層から露出していると、活性炭粒子と臭気ガスとが直接的に接触するようになり、消臭効果が高いものとなる。
【0054】
この場合、活性炭粒子の平均粒径は、ポリウレタンフォームよりなる三次元網状骨格構造体の平均骨格間距離(孔径)の50分の1以上、1.5分の1以下であることが好ましい。また、活性炭粒子の粒度分布は、その95重量%以上が平均粒径の5分の1〜5倍、特に2分の1〜2倍のものが好適である。
【0055】
この活性炭粒子の平均粒径がポリウレタンフォームよりなる三次元網状骨格構造体の平均孔径の50分の1(2%)以上、1.5分の1(67%)以下であると、三次元網状骨格構造体の内部にまで活性炭粒子が分散固着し、しかも従来品よりも吸着能力が高い消臭フィルタが得られる。なお、通気性の維持及び吸着絶対量の増加という点を考慮すれば、平均粒径を孔径の10分の1(10%)以上、2分の1(50%)以下とするのが一層好ましい。
【0056】
平均粒径が孔径の1.5分の1(67%)以上の場合は、活性炭粒子を表面からスプレーしても三次元網状骨格構造体の骨格構造の内部にまで侵入させることが困難で、フィルタ基材の表面近くに付着するものが大部分であり、かつその付着力も弱いので、付着した活性炭粒子は脱落し易い。これは活性炭粒子の大きさに比し三次元網状骨格構造体との付着部分の面積が相対的に小さくなるためではないかと思われる。但しこの場合は後述する表層のバインダー塗布処理により活性炭粒子の固着性を改善することが可能である。
【0057】
また平均粒径が孔径の50分の1(2%)以下の場合には、三次元網状骨格構造体に付着する活性炭粒子量が著しく少なくなり、その結果、消臭フィルム全体としての吸着能力が小さいものとなる。これは細かい活性炭粒子が三次元網状骨格構造体に塗布されたバインダーをうすくカバーしてしまい、それ以上付着することがないので固着絶対量が減少するためと考えられる。
【0058】
活性炭粒子を付着させるためのバインダーとしては、各種のものを適宜選択、使用することができるが、接着力が強く、かつ活性炭粒子の細孔の目詰まりを生じにくいものが好ましく、この観点からは固形分が多く揮発成分が少ないもの、即ち固形分が30重量%以上、好ましくは50重量%以上で、有機溶剤は50重量%以下、好ましくは0%のものが好適である。また、吸着性能への影響を考えると非溶剤系バインダーの方が好適に使用することができる。
【0059】
具体例を挙げれば、湿気硬化型反応性ウレタン系ホットメルト、アクリル又はウレタン系エマルジョンバインダーが使用できる。また、NCO過剰のウレタン系プレポリマー、より好ましくはMDI(メチレンジイソシアネート)ベースのウレタン系プレポリマーを使用する。MDIベースのプレポリマーの方がTDI(トリレンジイソシアネート)ベースのものより遊離イソシアネートが発生し難く、活性炭粒子への吸着が少なく、かつ製造工程における衛生面からも問題が少ない。
【0060】
NCO過剰のウレタン系プレポリマーをバインダーとする場合、そのままでは粘度が高すぎる時には、必要最小限の有機溶剤を加えて塗布し、乾燥温風によって大部分の有機溶剤をとばした後、活性炭粒子を付着させれば、加工性を容易にしつつ、溶剤吸着を防止できるため有利である。
【0061】
バインダーの塗布法としては、含浸槽にフィルタ基材を含浸させた後余分のバインダーをロールで絞り取る方法、スプレーやコーターで表面に塗布した後ロールで絞り込み内部まで行きわたらせる方法等がある。このようにしてあらかじめバインダーを塗布したフィルタ基材に活性炭粒子を付着させる為には、活性炭粒子流動床浸漬、粉体スプレー、又は篩落下等の方法を用いることができる。
【0062】
粉体スプレー、又は篩落下による方法を用いる場合は、三次元網状骨格構造体を反転せしめる等の方法により三次元網状骨格構造体の両面から活性炭粒子をスプレー又は落下させることにより均等な付着を行うことができる。
【0063】
活性炭粒子付着時及び/又は付着後、三次元網状骨格構造体を振動させることにより、活性炭粒子の三次元網状骨格構造体内部への侵入及び三次元網状骨格構造体骨格への確実な付着を助けることができる。
【0064】
さらに活性炭粒子付着後、一組又は複数組のロールの間を通し、軽く圧縮することにより三次元網状骨格構造体骨格への付着を助けることができる。この際ロール間隔を三次元網状骨格構造体の厚さの90〜60%とするのが適当である。
【0065】
バインダーを固化する為には、それぞれのバインダーに適した方法を用いればよいが、ウレタン系プレポリマーを使用した場合は加熱水蒸気でキュアーすることができ、工程が単純でかつ大きな固着力が得られる。また活性炭粒子の一部がバインダーで被覆された場合も、ウレタンの硬化時の炭酸ガス発生により皮膜に微細気孔があくため、吸着性能の低下が少ない。
【0066】
活性炭粒子が三次元網状骨格構造体から脱落することを防止するために、三次元網状骨格構造体に活性炭粒子を付着させた後、バインダーを固化させる前に、さらにその上からバインダーを塗布し、その後、これらのバインダーを固化させてもよい。これにより、活性炭粒子を極めて強固に三次元網状骨格構造体に担持させることができる。
【0067】
この場合、三次元網状骨格構造体表層に固着している活性炭粒子はその表面が全部バインダーで被覆されることになり、三次元網状骨格構造体に対する固着力は増加するが、その部分の吸着体粒子の吸着能力は低下する。しかし三次元網状骨格構造体内層に固着された大部分の活性炭粒子は三次元網状骨格構造体表層に塗布されたバインダーの影響を受けることなく活性炭粒子全体としての吸着能力はそれ程低下しない。
【0068】
塗布される表層の厚さは、塗布するバインダー量により任意にコントロールすることができるので、表層の活性炭粒子の固着力増加と活性炭粒子全体の吸着能力低下の状態を勘案して適宜定めればよい。三次元網状骨格構造体の厚さが厚ければ厚い程表層塗布による吸着能力低下の割合は小さくなる。表層に塗布するバインダーは当初三次元網状骨格構造体全体に塗布するバインダーと同じものでも良いが、例えば当初全体に塗布するバインダーには柔軟なものを用いて三次元網状骨格構造体の柔軟性を阻害せぬようにし、表層に塗付するバインダーには強固な固着力を有する剛性のものを使用して組合わせ効果を得ることができる。また皮膜に欠陥(ピンホール等)が生じ易いエマルジョンタイプのバインダーをあえて使用することも、通気性の点では有利である。
【0069】
このようにして、三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームよりなるフィルタ基材に活性炭粒子を担持させた後は、次いで光触媒粒子を担持させる。
【0070】
光触媒粒子として、本実施の形態では、光触媒効果が高く、汎用性に優れる、アナターゼ型酸化チタン微粒子を用いる。
【0071】
アナターゼ型酸化チタン微粒子は、ペルオキソチタン酸水溶液(アモルファス過酸化チタンゾル)よりなる光触媒コーティング剤、又は、ペルオキソチタン酸とアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む光触媒コーティング剤(ペルオキソチタン酸水溶液とアナターゼ型酸化チタン微粒子の縣濁液との混合液)、好ましくはペルオキソチタン酸水溶液とアナターゼ型酸化チタン微粒子の縣濁液との混合液を用い、この光触媒コーティング剤を活性炭粒子を担持したフィルタ基材に付着させ、その後80〜150℃で1〜10分程度乾燥することによりフィルタ基材に担持させることが好ましい。このような光触媒コーティング剤を用いることにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子をフィルタ基材及びフィルタ基材に担持された活性炭粒子に密着性良く担持させることができ、光触媒粒子の脱落の問題を解消することができると共に、光触媒粒子を多量に担持させることも可能となる。
【0072】
光触媒コーティング剤をフィルタ基材に付着させる方法としては、光触媒コーティング剤をフィルタ基材にスプレーする方法、或いは、フィルタ基材を光触媒コーティング剤に浸漬する方法等が挙げられる。光触媒コーティング剤のフィルタ基材への付着と乾燥とを複数回繰り返すことにより、光触媒の担持量を高めることもできる。
【0073】
なお、フィルタ基材にスプレーするときの吹き付け強さを調節したり、フィルタ基材の表面のみを光触媒コーティング剤に浸漬することにより、光触媒をフィルタ基材の表面のみに担持させることができる。このように、光触媒をフィルタの表面に担持させる場合、該光触媒に紫外線が当たり易くなり、消臭フィルタの光触媒性能が向上する。
【0074】
なお、この光触媒コーティング剤中のペルオキソチタン酸(固形分)に対する酸化チタン(固形分)の重量比率は1〜20であることが好ましい。また、このようにしてフィルタ基材に担持されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の平均粒径は10〜200nmであることが好ましい。従って、光触媒コーティング剤の調製には、平均粒径10〜200nmのアナターゼ型酸化チタン微粒子を用いることが好ましい。
【0075】
光触媒コーティング剤中のペルオキソチタン酸(固形分)に対する酸化チタン(固形分)の重量比率が1未満の場合、充分な光触媒活性が得られず、20を超えると、フィルタ基材に対する濡れ性が悪くなるため、担持率が低下する。また、フィルタ基材への酸化チタン粒子の密着性も低下する。
【0076】
アナターゼ型酸化チタン微粒子の平均粒径が、200nmを超えると、表面積が小さくなるため、光触媒性能が低下する。また、10nm未満では製造に高度な技術が必要となりコストが高くなる。
【0077】
このようにして、フィルタ基材に光触媒粒子を担持させた後、アルカリ物質を担持させる。
【0078】
アルカリ物質を担持させる方法としては、アルカリ物質溶液をフィルタ基材にスプレーする方法、アルカリ物質溶液にフィルタ基材を含浸させる方法、吸着剤粒子をアルカリ物質溶液に浸漬させる浸漬担持法等が挙げられる。
【0079】
なお、フィルタ基材にスプレーするときの吹き付け強さを調節したり、アルカリ物資の溶液濃度、浸漬時間を調整することにより、アルカリ物質をフィルタ基材に担持させることができる。
【0080】
このようにして製造される本発明に係る消臭フィルタは、活性炭粒子の担持量が100〜6000g/m、特に300〜1500g/mであることが好ましい。また、光触媒粒子の担持量が0.1〜300g/m、特に3〜30g/mであり、活性炭粒子の担持量に対する光触媒粒子の担持量が0.1〜5%、特に0.5〜3%であることが好ましい。さらに、アルカリ物質の担持量が10〜300g/m、特に20〜200g/mであり、活性炭粒子の担持量に対する光触媒粒子の担持量が4〜8%、特に5〜7%であることが好ましい。なお、ここで、担持量の単位「g/m」は、フィルタ基材の表面積(骨格を含む全表面積)に対する担持量を示すものである。
【0081】
上記範囲より活性炭粒子及び光触媒粒子の担持量が少ないと、活性炭による吸着性能、光触媒による酸化分解性能を十分に得ることができない。また、上記範囲よりも多く活性炭粒子を担持することは、紫外線の透過性が著しく悪くなるため良好な光触媒活性機能を発揮させることができなくなる。
【0082】
また、活性炭粒子の担持量に対する光触媒粒子の担持量が少な過ぎると、光触媒による活性炭の吸着性能の再生効果を十分に得ることができず、多いと活性炭の吸着孔を塞ぐことになり活性炭の物理吸着性能を損ねる結果になる。
【0083】
さらに、活性炭粒子の担持量に対するアルカリ物質の担持量が少な過ぎると、アルカリ物質による低級脂肪酸の中和性能を十分に得ることができず、多いと活性炭の吸着孔を塞ぐことになり活性炭の物理吸着性能を損ねる結果になる。
【0084】
このような本発明に係る消臭フィルタは一般的には厚さ(臭気ガスの流通方向の長さ)3〜30mm程度の板状として成形され、臭気ガスをこの消臭フィルタに通過させることにより臭気ガスの消臭を行う。
【0085】
次に、図面を参照して、消臭フィルタと、この消臭フィルタに紫外線を照射する紫外線照射手段とを備える本発明の消臭装置について説明する。
【0086】
図1(a),(b)は本発明の消臭装置の実施の形態を示す模式的断面図である。
【0087】
図1(a)の消臭装置10Aは、臭気ガスが流通するダクト1と、このダクト1内の臭気ガス入口1A側に設けられた除塵フィルタ2と、この除塵フィルタ2上に、臭気ガスの流通方向に間隔をあけて5段に設けられた消臭フィルタ4A〜4Eと、これら消臭フィルタ4A〜4Eの間の間隙に配置された紫外線(UV)光源3とを備える。
【0088】
この消臭装置10Aでは、臭気ガスは図示しないブロワによりダクト1の入口1Aから導入され、除塵フィルタ2で除塵された後、UV光源3からUVが照射される消臭フィルタ4A〜4Eを順次通過し、その間に臭気物質が吸着ないし分解除去され、処理ガスが出口1Bから排出される。
【0089】
図1(b)に示す消臭装置10Bは、消臭フィルタ及びUV光源をそれぞれ3段に設けた点が図1(a)に示す消臭装置10Aと異なり、その他は同様の構成とされている。
【0090】
この消臭装置10Bであっても、臭気ガスは図示しないブロワによりダクト1の入口1Aから導入され、除塵フィルタ2で除塵された後、UV光源3からUVが照射される消臭フィルタ14A〜14Cを順次通過し、その間に臭気物質が吸着ないし分解除去され、処理ガスが出口1Bから排出される。
【0091】
なお、除塵フィルタとしては特に制限はないが、前述の本発明に係る消臭フィルタのフィルタ基材である三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームを用いることが好ましい。
【0092】
本発明の消臭装置においては、消臭フィルタとUV光源とを1段ずつ有するものであっても良いが、図1に示す如く、これらを複数段交互に設けたもの、即ち、消臭フィルタとUV光源との組み合せユニットを複数段設けたものが、臭気ガスを複数段階で効率的に消臭処理し、良好な処理ガスを得ることができる点において好ましい。この場合、消臭フィルタ及びUV光源の設置段数には特に制限はないが、過度に多いと消臭装置が大型化し、また圧力損失が大きくなることにより、臭気ガスの流通のために大型のブロワを必要とするようになるため、消臭フィルタを2段以上で複数段設け、これらの間に更には、各消臭フィルタの下方又は上方に紫外線照射手段を設けることが好ましい。
【0093】
なお、紫外線照射手段としてのUV光源3としては、ブラックライト、冷陰極蛍光管等酸化チタン光触媒を機能させるため主波長が380nm以下の光源を用いることができる。また、その照射強度は、消臭フィルタ表面における強度で0.5〜5mW/cm程度であることが好ましい。
【0094】
本実施の形態に係る消臭装置にあっては、複数の消臭フィルタが全体として、消臭性能を有すればよい。このため、例えば図1(a)において、消臭フィルタ4A〜4Eの各々に光触媒粒子及びアルカリ物質を担持させてもよいが、これら消臭フィルタ4A〜4Eのいずれか1個以上に光触媒粒子を担持させ、かつ、消臭フィルタ4A〜4Eのいずれか1個以上にアルカリ物質を担持させてもよい。この場合において、光触媒粒子の酸化分解によって発生した低級脂肪酸をアルカリ物質によって中和するためには、アルカリ物質が担持された消臭フィルタは、光触媒粒子が担持された消臭フィルタよりも下流側に配置されることが好ましい。例えば、消臭フィルタ4A〜4Dに光触媒粒子を担持させ、消臭フィルタ4Eにアルカリ物質を担持させてもよい。
【0095】
また、消臭フィルタ4A〜4Eの各々において、上流側(図1の下側)の面に光触媒粒子を担持させ、下流側(図1の上側)の面にアルカリ物質を担持させてもよい。さらに、各段の消臭フィルタ4A〜4Eを、それぞれ2枚の消臭フィルタを重ね合わせることによって形成し、該2枚の消臭フィルタのうち、上流側の消臭フィルタに光触媒粒子を担持させ、下流側の消臭フィルタにアルカリ物質を担持させてもよい。
【0096】
なお、光触媒粒子がフィルタ基材の内部に存在する場合、UV光源から照射される紫外線が光触媒粒子に当たり難くなる。従って、消臭フィルタのうちUV光源に対面する面に光触媒粒子を担持させるのが好ましい。例えば、図1(a)において、消臭フィルタ4Aの下流側の面(図1の上側の面)と、消臭フィルタ4B〜4Eの上流側及び下流側の面(図1の上側面及び下側面)とに光触媒粒子を担持させてもよい。
【0097】
消臭フィルタの一部又は全部には、活性炭が担持されていることが好ましい。この場合、活性炭が臭気成分を吸着することにより、消臭フィルタの消臭性能がより向上する。
【0098】
本発明の消臭装置は多くの分野に適用でき、特にその適用範囲を限定するものではないが、例えば、生ゴミ処理機、特に業務用生ゴミ処理機の消臭機構として採用することにより、触媒燃焼方式と比較して「運転時のエネルギーコスト」、「環境負荷」、「火事・爆発の危険性」のいずれについても、これらを大きく低減することができ、好ましい。
【実施例】
【0099】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、以下において用いた消臭フィルタの臭気ガス流通断面積(フィルタ面積)は同一である。
【0100】
<活性炭担持基材(第1基材)の製造>
フィルタ基材としてセル数が10PPIの三次元網状骨格構造を有する軟質ポリウレタンフォーム(連続気泡ウレタン樹脂発泡体)(厚さ5mm)を用い、このポリウレタンフォームに、バインダーとして固形分50%のウレタン樹脂エマルジョンを25〜35g/l(dry)となるように浸漬含浸し、100℃で5分間乾燥することにより塗布した後、活性炭粒子(BET比表面積が1000〜1500m/g、平均粒径850μmで、フィルタ基材の孔径の約1/30)を三次元網状骨格構造のポリウレタンフォームの骨格上にフィードすることにより付着させ、その後余剰の活性炭を振るい落とすことにより、固定した。得られた活性炭担持フィルタ基材の活性炭担持量を、小数点以下1桁が量れる電子天秤により求めたところ、750g/mであった。
【0101】
<活性炭/光触媒担持基材(第2基材)の製造>
この活性炭担持フィルタ基材(第1基材)に、ペルオキソチタン酸水溶液とアナターゼ型酸化チタン微粒子の懸濁液との混合液よりなる光触媒コーティング剤(光触媒コーティング剤中のペルオキソチタン酸(固形分)に対する酸化チタン(固形分)の重量比率は2.0%、アナターゼ型酸化チタン微粒子の平均粒径は30nm)をスプレーガンで塗布した後、オーブンで110℃にて10分乾燥させて酸化チタンを担持させた。光触媒粒子担持前後の重量測定から求めた酸化チタン担持量は7.5g/mであった。
【0102】
また、走査型電子顕微鏡SEM(EDX)を使った表面観察により、この酸化チタン微粒子は、フィルタ基材に担持された活性炭粒子表面に付着していることが確認された。
【0103】
<活性炭/アルカリ物質担持基材(第3基材)の製造>
上記の活性炭担持フィルタ基材(第1基材)に、KCOを1mol/l溶液濃度となるように水に溶解させ、スプレー添着法にて添着塗布した後、オーブンで100℃にて5分間乾燥処理した。このようにして、活性炭担持フィルタ基材にアルカリ物質を担持させた。アルカリ物質担持前後の重量測定から求めたアルカリ物質担持量は45g/mであった。
【0104】
このように製造された第1基材(活性炭担持基材)、第2基材(活性炭/光触媒担持基材)及び第3基材(活性炭/アルカリ物質担持基材)を450mm×200mm×5mmのサイズに切断し、これら第1〜第3基材のうちの2枚を選択して重ねたものを消臭フィルタとした。
【0105】
実施例1
第2基材(活性炭/光触媒担持基材)2枚を重ねてなる消臭フィルタ(消臭フィルタ4A〜4D)を4段と、第3基材(活性炭/アルカリ物質担持基材)2枚を重ねてなる消臭フィルタ(消臭フィルタ4E)を1段用い、図1(a)に示す消臭装置を組み立てた。なお、除塵フィルタとしては、上記の活性炭担持基材(第1基材)の製造においてフィルタ基材として用いたものを所定の寸法に切断して用いた。また、UV光源としては管長440mm,管径32.5mm,主波長352nmのブラックライト(20W)3本を1ユニットとして各消臭フィルタ間に配置した。このブラックライトからのUV照射強度は、各消臭フィルタ表面において3.8〜5.2mW/cmとした。
【0106】
ブリヂストンサイクル株式会社製の業務用生ゴミ処理機『商品名:エコチャンピオン』(生ゴミ50kg処理タイプ。風量1m/分)に生ゴミ(米飯、肉類、魚介類、野菜類の混合物)約50kgと所定量の好気性発酵菌及び菌の床材であるふすまを投入し、反応処理槽内温度約65℃にて連続運転を開始した。
【0107】
この生ゴミ処理機の排気ガスを図1(a)に示す消臭装置に導入して消臭処理し、生ゴミ処理機の運転開始から3時間経過したときの、生ゴミ処理機からの臭気ガスと、消臭装置の処理ガスを各々サンプルバックにサンプリングし、6段階臭気強度評価法による評価(数値が大きいほど臭気が強い。)を6人のパネラーにより行い、その平均値を求め、結果を表1に示した。
【0108】
また、生ゴミ処理機に毎日一定時間に生ゴミ50kgを投入し、24時間周期でコンポスト化を繰返しながら3ヶ月間の連続運転を行った。3ヶ月間の連続運転終了後に6段階臭気強度評価を行い、結果を表1に示した。
【0109】
実施例2
実施例1において、第2基材(活性炭/光触媒担持基材)2枚を重ねてなる消臭フィルタ(消臭フィルタ4A〜4C)を3段と、第3基材(活性炭/アルカリ物質担持基材)2枚を重ねてなる消臭フィルタ(消臭フィルタ4D,4E)を2段用い、図1(a)に示す消臭装置を組み立てたこと以外は同様にして評価を行い、結果を表1に示した。
【0110】
実施例3
実施例1において、第2基材(活性炭/光触媒担持基材)2枚を重ねてなる消臭フィルタ(消臭フィルタ4A,4B)を2段と、第3基材(活性炭/アルカリ物質担持基材)2枚を重ねてなる消臭フィルタ(消臭フィルタ4C〜4E)を3段用い、図1(a)に示す消臭装置を組み立てたこと以外は同様にして評価を行い、結果を表1に示した。
【0111】
比較例1
実施例1において、第2基材(活性炭/光触媒担持基材)2枚を重ねてなる消臭フィルタ(消臭フィルタ4A〜4E)を5段用い、図1(a)に示す消臭装置を組み立てたこと以外は同様にして評価を行い、結果を表1に示した。
【0112】
比較例2
実施例1において、第1基材(活性炭担持基材)を重ねてなる消臭フィルタ(消臭フィルタ4A〜4E)を5段用い、図1(a)に示す消臭装置を組み立てたこと以外は同様にして評価を行い、結果を表1に示した。
【0113】
【表1】

【0114】
表1より次のことが明らかである。
【0115】
即ち、フィルタ表面部のUV照射強度と消臭フィルタ1段当たりのフィルタ断面積を同一とした場合、消臭効果が最も高かったのは、活性炭、光触媒及びアルカリ物質を担持したものを消臭フィルタとして用いた実施例1〜3であった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の消臭装置の実施の形態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0117】
1 ダクト
2 除塵フィルタ
3 UV光源
4A,4B,4C,4D,4E,14A,14B,14C 消臭フィルタ
10A,10B 消臭装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ基材に、光触媒粒子とアルカリ物質とを担持してなることを特徴とする消臭フィルタ。
【請求項2】
請求項1において、前記アルカリ物質は、KCO,NaCO,KHCO,NaHCO,KOH,NaOH,KI,NaI,NaSiO,KSiOよりなる群の少なくとも1種類を含有することを特徴とする消臭フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記光触媒粒子は、アナターゼ型酸化チタン微粒子の懸濁液とペルオキソチタン酸水溶液との混合液を前記フィルタ基材に付着させることにより担持されたものであることを特徴とする消臭フィルタ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記フィルタ基材にさらに活性炭粒子を担持してなることを特徴とする消臭フィルタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記光触媒粒子は、前記フィルタ基材の表面に担持されていることを特徴とする消臭フィルタ。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記フィルタ基材はシート形状となっており、該フィルタ基材の一方の面に前記光触媒粒子が担持され、該一方の面と対向する面に前記アルカリ物質が担持されていることを特徴とする消臭フィルタ。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記フィルタ基材はシート形状となっており、該フィルタ基材の一方の面に前記光触媒粒子及びアルカリ物質が担持されていることを特徴とする消臭フィルタ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記フィルタ基材は、三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームよりなることを特徴とする消臭フィルタ。
【請求項9】
消臭フィルタと、該消臭フィルタに紫外線を照射する紫外線照射手段とを備えてなる消臭装置において、
該消臭フィルタの少なくとも一部が請求項1ないし8のいずれか1項の消臭フィルタであることを特徴とする消臭装置。
【請求項10】
複数個の消臭フィルタと、該消臭フィルタに紫外線を照射する紫外線照射手段とを備えてなる消臭装置において、
該複数個の消臭フィルタは、フィルタ基材に光触媒粒子を担持してなる第1の消臭フィルタと、フィルタ基材にアルカリ物質を担持してなる第2の消臭フィルタとを含むことを特徴とする消臭装置。
【請求項11】
請求項10において、前記アルカリ物質は、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び炭酸ナトリウムよりなる群の少なくとも1種類を含有することを特徴とする消臭装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、前記光触媒粒子は、アナターゼ型酸化チタン微粒子の懸濁液とペルオキソチタン酸水溶液との混合液を前記フィルタ基材に付着させることにより担持されたものであることを特徴とする消臭装置。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれか1項において、前記フィルタ基材にさらに活性炭粒子を担持してなることを特徴とする消臭装置。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれか1項において、前記フィルタ基材は、三次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームよりなることを特徴とする消臭装置。
【請求項15】
請求項9ないし14のいずれか1項において、前記フィルタ基材に光触媒粒子を担持してなる光触媒粒子担持消臭フィルタは、前記紫外線照射手段から照射される紫外線が直接当たる位置に配置されていることを特徴とする消臭装置。
【請求項16】
請求項15において、前記光触媒粒子担持消臭フィルタは、片面に光触媒粒子を担持してなるシート形状となっており、
該片面が前記紫外線照射手段と対面していることを特徴とする消臭装置。
【請求項17】
請求項9ないし16のいずれか1項において、該消臭装置は生ゴミ処理機から放出される臭気を処理するためのものであることを特徴とする消臭装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−275292(P2007−275292A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105411(P2006−105411)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】