説明

消臭性インクジェット記録シート

【課題】優れた消臭効果を有し、かつ、即効性及び持続性に優れるともに、写真ライクな画質が得られる消臭性インクジェット記録シートを提供する。
【解決手段】グラフト重合により、カルボキシル基が導入され、かつ該カルボキシル基がZn2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Ag、及びFe2+からなる群から選ばれた少なくとも一種の金属イオンで置換され、更に繊維長250〜1000μmに粉砕されているパルプ繊維を、含有する支持体上に、媒染剤およびシリカを含有するインク受容層を有することを特徴とする消臭性インクジェット記録シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭性インクジェット記録シートに関し、詳しくは、消臭機能を有し、更に写真ライクな記録が可能な消臭性インクジェット記録シートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の建築技術に伴う居住空間の気密化、生活環境の都市化・多様化に伴い、身の回りの臭いに対する関心が強まり、特に、職場や家庭においては、脱臭や徐塵などの空気清浄化が求められている。
従来、消臭用の紙として提案されているものは、活性炭を結着剤によりパルプに固着したものが知られているが、活性炭を使用することから本質的に黒色であり、外観が悪いため用途が限定され、また、活性炭のガス吸着能に選択性があるために、各種悪臭に対して幅広い効果を発揮することができなかった。これらの点を改良するために、固体酸性を有する無機物質を塗布した脱臭紙(例えば、特許文献1参照。)、パルプに水酸化アルミニウムを含有させた脱臭紙(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。更に、金属改質セルロース繊維を含有する消臭シート(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【0003】
一方、消臭性インクジェット記録シート等として、インク受容層上に熱触媒を含む層とその上に光触媒を含む層を有する脱臭シート(例えば、特許文献4参照。)、裏面に木炭粉末含有層が形成されているインクジェット印刷用シート(例えば、特許文献5参照。)、インク受理層の抗菌性着色粒子を含有するインクジェット記録材料(例えば、特許文献6参照)等が報告されている。
【特許文献1】特開平1−239200号公報
【特許文献2】特開平2−47395号公報
【特許文献3】特開平11−315499号公報
【特許文献4】特開2001−58002号公報
【特許文献5】特開2002−113939号公報
【特許文献6】特開2005−288886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2で提案されている消臭紙ないし消臭シートは、接着剤を用いてパルプに消臭基剤を添着させたり、パルプとともに消臭基材を抄紙して一体化しているものの、消臭基剤が脱落しやすいという欠点があった。
特許文献3で提案されている消臭シートは、インクジェット記録するものではなく、仮にインクジェット記録に用いても、悪い画質しか得られない。また、即効性が充分ではなく、酢酸系成分に対する効果も充分ではない。
【0005】
また、特許文献4で提案されている脱臭シートは、インク受容層に画質を悪化させる層が存在するため画質は写真ライクではないこと、特許文献5で提案されているインクジェット印刷用シートは、脱臭効果が不明確であること、及び特許文献6で提案されているインクジェット記録媒体では、消臭性能、特に、画質は写真ライクではないこと等と種々の問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、優れた消臭効果を有し、かつ、即効性及び持続性に優れるともに、写真ライクな画質が得られる消臭性インクジェット記録シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により達成された。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> グラフト重合により、カルボキシル基が導入され、かつ該カルボキシル基がZn2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Ag、及びFe2+からなる群から選ばれた少なくとも一種の金属イオンで置換され、更に繊維長250〜1000μmに粉砕されているパルプ繊維を、含有する支持体上に、媒染剤およびシリカを含有するインク受容層を有することを特徴とする消臭性インクジェット記録シート。
【0008】
<2> 前記シリカが気相法シリカであることを特徴とする<1>に記載の消臭性インクジェット記録シート。
<3> 前記有機媒染剤がポリ水酸化アルミニウムであることを特徴とする<1>又は<2>に記載の消臭性インクジェット記録シート。
<4> 前記有機媒染剤がポリジアリルアミン誘導体であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の消臭性インクジェット記録シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた消臭効果を有し、かつ、即効性及び持続性に優れるともに、写真ライクな画質が得られる消臭性インクジェット記録シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の消臭性インクジェット記録シートは、グラフト重合により、カルボキシル基が導入され、かつ該カルボキシル基がZn2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Ag、及びFe2+からなる群から選ばれた少なくとも一種の金属イオンで置換され、更に繊維長250〜1000μmに粉砕されているパルプ繊維を含有する支持体上に、有機媒染剤およびシリカを含有するインク受容層を設けたことを特徴とする。
【0011】
前記構成とすることにより、写真ライクな光沢感を有する高画質画像が得られると共に、一般的な消臭剤同等の消臭力、即効性及び持続性に優れた消臭効果を有する消臭性インクジェット記録シートを得ることができる。驚くべきことに、本発明の消臭性インクジェット記録シートは、従来、消臭材料として知られている金属改質セルロース繊維を含有する消臭シートと比較して、即効性が勝ることを見出した。その理由は定かではないが、金属改質セルロース繊維は、消臭力が大きく、持続性に優れているが、表面積が比較的小さいため、吸脱着速度が遅い。一方、インクジェット受像層は消臭力は大きくないものの、シリカ/媒染剤の表面積が広いため、臭い成分の吸脱着速度が速いと推測される。即ち、まず、臭い成分はインクジェット受像層に吸着されるが、吸着能が高くないため脱着され、本シート近傍の臭い成分濃度が高くなる。この本シート近傍に集まった臭い成分が効率的に金属改質セルロース繊維に吸着されるため、即効性に優れると考えられる。また、シリカ/媒染剤には酢酸系成分の吸着力が高く、金属改質セルロース繊維の弱点を補填する役割があると推測される。
【0012】
[支持体]
本発明における支持体は、グラフト重合により、カルボキシル基が導入され、かつ該カルボキシル基がZn2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Ag、及びFe2+からなる群から選ばれた少なくとも一種の金属イオンで置換され、更に繊維長250〜1000μmに粉砕されているパルプ繊維を、少なくとも有する基紙を含む構成でなる。
【0013】
本発明において、基紙が有するパルプ繊維は、叩解したパルプを後述するカルボキシル基の導入、金属イオンでの置換したものであり、該パルプとしては、木材パルプ、古紙パルプ、合成パルプ等何れでもよい。尚、以下、パルプに対して、カルボキシル基の導入、金属イオンでの置換、粉砕するという工程を併せて「改質」という場合がある。
支持体は基紙を含む構成からなり、該基紙は、上記パルプ繊維を含むパルプを叩解したパルプ紙料、特に叩解、調製されたパルプスラリーを抄紙することで得られる。
抄紙を行なう抄紙工程では、基紙の記録層が例えば塗布により塗設される面に相当するウェッブ面側をドラムドライヤーシリンダーにドライヤーカンバスを押し当てて乾燥する工程を有し、この工程ではドライヤーカンバスの引張力を1.5〜3kg/cmの範囲に調整して乾燥させることができる。
【0014】
上記改質前のパルプとしては、特に制限はなく、針葉樹、広葉樹等から選ばれる天然パルプ、例えば、アスペン材、アカシア材、かえで材、ポプラ材、ユーカリ材などのLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、スプルース材、ダグラスファー材などのNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、LBSP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPなどの中から適宜選択することができる。これらは、一種単独で用いる以外に、二種以上を適宜選択して併用することもできる。
【0015】
上記改質前のパルプは、30質量%以上が、かえでからなるクラフトパルプ(かえで材LBKP)である形態が好ましく、より好ましくは50質量%以上が、かえで材LBKPである形態である。パルプ中のかえで材LBKPの配合量が30質量%以上であると、支持体の平滑性が改善され、光沢感もより向上する。
例えば、上記のクラフトパルプ(LBKP)の製法は、特に限定されるものではなく、通常のクラフトパルプの製法を広く用いることができる。
【0016】
上記改質前のパルプにカルボキシル基を導入する方法としては、アクリル酸やメタクリル酸などのカルボキシル基含有ビニルモノマーをグラフト重合させる公知の方法が採用できる。カルボキシル基を導入する方法は特に限定されないが、均一反応が容易で反応効率がよく、改質効果をコントロールし易い点で、特公昭59−5126号などに開示されたビニルモノマーのグラフト重合法が好ましい。
【0017】
上記カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸以外にマレイン酸、イタコン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸が挙げられ、これらに加えてアクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ビニルピロリドンなどの親水性ビニルモノマー及びスチレン、メチルメタアクリレートなどの疏水性モノマーを、目的とするグラフト重合性を損わない範囲で適宜併用することができる。
【0018】
上記カルボキシル基が導入されたパルプは、更に亜鉛、銅、ニッケル、マンガン、銀、鉄からなる群から選ばれた少なくとも一種の水溶性塩類中に投入して、カルボキシル基をこれらの金属イオン(Zn2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Ag、Fe2+)で置換することができる。これらの金属イオンは単独で使用しても、併用して使用してもよいが、消臭効果の点で銅イオンが好ましく、亜鉛イオンは着色がない点で好ましい。これら金属の該パルプ繊維中の含有量は、消臭効果と繊維物性の点で0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.2〜3質量%である。
【0019】
また、前記パルプ繊維中におけるカルボキシル基の比率は、優れた消臭効果が得られる点で、0.2〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0020】
上記粉砕したパルプ繊維(カルボキシル基が導入されたパルプ繊維)の繊維長としては、
250〜1000μmであり、好ましくは450〜700μmである。尚、該粉砕したパルプ繊維の繊維長は、繊維長分布測定装置(カヤーニ製、FS−200)を用いて測定することができる。
【0021】
改質パルプ繊維は、他の改質しないパルプと混合して用いることが好ましい。この場合、混合した改質パルプ繊維を叩解したパルプ紙料、特に叩解、調製されたパルプスラリーを抄紙することとなる。改質パルプ繊維と改質しないパルプとの混合比率は、改質パルプ繊維1〜95質量%と改質しないパルプ99〜5質量%であり、好ましくは改質パルプ繊維5〜60質量%、改質しないパルプ95〜40質量%、より好ましくは改質パルプ繊維5〜50質量%、改質しないパルプ95〜50質量%であり、特に好ましくは改質パルプ繊維の質量比が10〜30重量%である。改質パルプ繊維と改質しないパルプとの混合比率が上記範囲内であると、充分な消臭効果が得られ、抄紙性も良好である。
【0022】
上記改質しないパルプとしては、改質前パルプと同様のものが用いられ、このましい態様も改質前パルプと同様である。
【0023】
上記パルプ繊維及び改質しないパルプ(以下、単に「パルプ」という場合がある。)は、その保水度が所定範囲となるように叩解された後、必要に応じてサイズ剤等を添加してパルプのスラリーに調製し、調製後のパルプスラリーを抄紙する。なお、複数種の混合パルプとするときには、あるクラフトパルプを叩解、調製すると共に、該クラフトパルプと別個に他のパルプを叩解、調製した後、両者を混合する。
【0024】
抄紙に際し、LBKPの叩解後における濾水度は、カナダ標準濾水度(C.S.F)の規定で200〜400mlが好ましい。濾水度が上記範囲であると、膨潤/収縮率が小さく、良好な平面性(表面平滑性)を得ることができる。なお、濾水度は、JIS−P8121の「パルプの濾水度試験方法」におけるカナダ標準形試験方法にしたがって測定される値である。
【0025】
また、叩解後の保水度としては、100〜200%が好ましい。抄紙前のパルプ紙料を構成する叩解後のパルプの保水度が上記範囲であると、パルプの膨張/収縮率が小さく、高光沢で凹凸の少ない平滑な表面性状が得られる。
【0026】
保水度とは、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.26:2000(パルプ−保水度試験方法)に記載された規格に基づいて測定されるものである。これは、遠心力によりパルプ懸濁液を脱水し、脱水後のパルプの保水度を測定する方法によるものであり、具体的には、叩解したパルプ懸濁液を適当な遠心カップと呼ばれる濾過容器で吸引瀘過した後、容器ごとに遠心分離機の沈澱管中に入れて一定条件で一定時間遠心分離し、遠心脱水した湿潤パルプを取出して秤量する。次いで、105℃で乾燥を行ない、遠心脱水後の湿潤パルプを絶乾する。そして、遠心脱水後の湿潤パルプの質量をAとし、絶乾後のパルプの質量をBとし、保水度(%)=(A−B)/B×100から算出される値である。
【0027】
前記パルプには、不純物の少ないパルプを使用するのが好適であり、漂白処理を行なって白色度を向上させたパルプ(漂白パルプ)を使用することも有用である。
【0028】
上記のうち、パルプとしては、夾雑物、色相の点で、漂白処理を行なって白色度を向上させた広葉樹漂白クラフトパルプ(漂白LBKP)が好ましく、中でもアスペン材、アカシア材、かえで材、及びポプラ材より選択される少なくとも一種からなる広葉樹漂白クラフトパルプ(漂白LBKP)が特に好ましい。これらの漂白LBKPは、各々単独で、あるいは漂白LBKPを二種以上混合した混合パルプとして、又は漂白LBKPの一種もしくは二種以上と該漂白LBKP以外の前記他のパルプの一種もしくは二種以上との混合パルプとして、好適に用いることができる。
【0029】
更に、抄紙前のパルプ紙料には、アニオン性コロイダルシリカを更に含有することができる。すなわち、アニオン性コロイダルシリカの添加後に抄紙して本発明に係る基紙とすることが好適である。アニオン性コロイダルシリカの含有により、脱水性を高め得る(すなわち濾水助剤として機能する。)以外に、特に裁断する際の切れ味、すなわち裁断適性を向上させるのに有効である。
【0030】
前記アニオン性コロイダルシリカの比表面積としては、100〜1000m2/gの範囲が好ましく、平均粒子径としては1〜20nmの範囲が好ましい。
【0031】
前記アニオン性コロイダルシリカを含有する場合の含有量としては、上記した裁断適性の向上及び脱水性向上の点で、本発明に係るパルプの量に対して、0.005〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.2質量%がより好ましい。
【0032】
パルプ紙料を抄紙するための抄紙機には、特に制限はなく、従来公知の抄紙機の中から適宜選択して用いることができる。例えば、振巾10mm以上のシェーキング装置を備えた長網抄紙機等を挙げることができ、平面性向上の点で、ダンディロールを有する抄紙機(例えば、60〜100メッシュのワイヤーからなるダンディロールを備えた抄紙機)が好ましい。
【0033】
本発明における基紙は、前記パルプが通常の天然パルプを主成分とすることが好ましく、該支持体中には添加薬品として、クレー、タルク、炭酸カルシウム、尿素樹脂微粒子等の充填剤、ロジン、アルキルケテンダイマー、高級脂肪酸塩、パラフインワックス、アルケニルコハク酸等のサイズ剤、でんぷん、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、硫酸バンド等の定着剤、等を適宜添加することができる。そのほか、必要に応じて染料、酸化チタン等の白色顔料、蛍光染料、スライムコントロール剤、消泡剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを添加することができる。
【0034】
天然パルプ紙よりなる基紙の表面は、例えば、ゼラチン、スターチ、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの変性物等の被膜形成ポリマーにより表面サイズ処理することができる。ポリビニルアルコールの変性物としては、カルボキシル基変性物、シラノール変性物やアクリルアミドとの共重合物等が挙げられる。また、前記被膜形成性ポリマーにより表面サイズ処理する場合の被膜形成ポリマーの塗布量は、0.1〜5.0g/m2に調整されるのが好ましく、0.5〜2.0g/m2に調整されるのがより好ましい。前記被膜形成ポリマーには更に、必要に応じて帯電防止剤、蛍光増白剤、顔料、消泡剤などを添加することができる。
【0035】
基紙は通常、7.0質量%程度の含有水分量を有するが、本発明においては基紙の地合いを考慮し、7.5〜10質量%が好ましく、8.0〜10質量%がより好ましい。
【0036】
また、原紙(後述のカレンダー処理後)の厚さは、特に限定されるものではなく、150〜250μmが好ましく、また、基紙の坪量としては、150〜250g/m2が好ましく、特に180〜220g/m2が好ましい。
【0037】
本発明に係る基紙は、写真印画紙など平面性が望まれる場合を考慮すると表面の平滑性及び平面性の優れるものが望ましく、かかる観点から抄紙段階又は抄紙後に、マシンカレンダー及びスーパーカレンダー等のカレンダー処理を施すことにより熱及び圧力を加えて表面処理し、より高度の平滑性を付与するようにすることもできる。
【0038】
基紙の密度としては、0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。また、原紙の剛度としては、JIS P−8125(2000)に規定される条件で、MD(タテ方向)は1.0〜3.0mNm、CD(ヨコ方向)は0.5〜1.5mNmが好ましい。
【0039】
基紙の表面には表面サイズ剤を塗布して支持体としてもよい。表面サイズ剤としては、前記原紙中に添加可能なサイズ剤と同様のものを使用できる。
また、基紙のpHは、JIS P−8113で規定される熱水抽出法による測定値で5〜9であるのが好ましい。
【0040】
既述の写像性の総和及び正反射強度は、支持体(特に基紙)表面の中心面平均粗さ(SRa)を調整し、支持体(特に基紙)の平滑性を向上させるようにすることで、各々を既述の範囲内に調節することが可能である。
【0041】
具体的には、本発明の消臭性インクジェット記録シートを構成する支持体(特に基紙)の、少なくともインク受容層が形成される側(つまり基材の片側又は両側)の表面の中心面平均粗さ(SRa)を、カットオフ0.05〜0.5mmの条件下で測定したときには0.70μm以下とすると共に、カットオフ1〜3mmの条件下で測定したときには0.80μm以下とすることによって好適に調節することができる。
【0042】
前記中心面平均粗さ(SRa)は、支持体(特に基紙)表面の平滑さ(表面平滑性)を評価する指標となるものであり、中心面平均粗さSRaが上記範囲から外れると、画像記録材料を構成した場合に写真ライクな画像を形成するのに好適な光沢感、表面平滑さを得ることができないことがある。
【0043】
換言すれば、カットオフ0.05〜0.5mmの条件下で測定した場合のSRaが0.70μmを超えると、消臭性インクジェット記録シートを構成した場合、具体的には蛍光灯の映りこみ等の反射像がボケて見え、光沢感を大きく支配する写像性が悪化してしまうことがあり、また、カットオフ1〜3mmの条件下で測定した場合のSRaが0.80μmを超えると、消臭性インクジェット記録シートを構成した場合、具体的には蛍光灯の映りこみ等の反射像が歪んで見え、光沢感を大きく支配する写像性が悪化してしまうことがある。
【0044】
前記SRaとしては、好ましくは、カットオフ0.05〜0.5mmの条件下では0.60μm以下で、かつカットオフ1〜3mmの条件下では0.60μm以下である。それぞれのSRaの下限については0μmに近いほど好ましい。
【0045】
前記中心面平均粗さSRaは、カットオフ0.05〜0.5mmの条件下ではZYGO New View 5000(ZYGO(株)製)を用いることにより、カットオフ1〜3mmの条件下ではナノメトロ110F(黒田精工(株)製)を用いることにより、各々好適に測定される値である。
【0046】
上記のように、支持体(特に基紙)の平滑性向上の観点から、写像性の総和及び正反射強度を調節することが好ましいが、これとは別にあるいはこれと共に、インク受容層形成用の塗布液における無機微粒子(特に気相法シリカ)の分散を超音波分散機又は高圧分散機(特に高圧ジェット分散機)を用いて処理するようにし、無機微粒子の分散状態(分散性)を調整することで、既述の写像性の総和及び正反射強度の範囲を既述の範囲内に調節するようにすることも可能である。無機微粒子の詳細については、後述の通りである。
【0047】
具体的には、無機微粒子の分散に一般に用いられている、ビーズ等の分散体を利用した分散機(例えばビーズミル分散機)ではなく、超音波分散機や高圧分散機を用いて処理することによって好適に調節することができる。高圧分散機としては、例えば液液対向衝突方式の分散機〔例えばアルティマイザーシステム(スギノマシン(株)製)〕が好ましく、この分散機で処理した分散液の透明性は高く、該分散液を用いた製造された消臭性インクジェット記録シート(特にインク受容層)は高度の光沢性を有する。
【0048】
前記超音波分散機による分散では、無機微粒子を含有して予備分散がなされた状態の予分散液に超音波をあてることによって更に分散し、分散液を得る。超音波の照射が可能な態様であれば、特に制限はなく、例えば(株)SMT製の超音波分散機UH−600Hを好適に用いることができる。
【0049】
前記高圧分散機(特に高圧ジェット分散機)による分散では、無機微粒子を含有して予備分散がなされた状態の予分散液を、高圧で液−液対向衝突させるか、あるいはオリフィスを高圧で通過させることによって更に分散し、分散液を得る。高圧での対向衝突あるいはオリフィスへの通過が可能な態様であれば、特に制限はなく、一般に高圧ホモジナイザーと称される市販の装置を好適に用いることができる。
【0050】
なお、オリフィスは、円形などの微細な穴を持つ薄板(オリフィス板)を直管内に挿入し、直管の流路を急激に絞る機構である。
【0051】
高圧分散機は、基本的には、原料スラリーなどを加圧するための高圧発生部と、液液対向衝突部あるいはオリフィス部とで構成された装置である。前記高圧発生部としては、一般にプランジャーポンプと称される高圧ポンプが好適であり、前記高圧ポンプには一連式、二連式、三連式など各種形式があるが、いずれの形式も特に制限なく適用可能である。
【0052】
高圧分散機の例としては、ナノマイザー社製のナノマイザー、マイクロフルイディクス社製のマイクロフルイダイザー、スギノマシン社製のアルティマイザー等を挙げることができる。
【0053】
高圧で液液対向衝突させる場合の処理圧力としては、50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上であり、特に好ましくは130MPa以上である。また、オリフィスを通過させる場合のオリフィス入口側と出口側との間の差圧も、前記処理圧力と同様に50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上であり、特に好ましくは130MPa以上である。
【0054】
いずれにおいても、分散効率は処理圧力に依存するため、処理圧力が高いほど分散効率も高くなる。但し、処理圧力の上限としては350MPaである。350MPa未満であると、高圧ポンプの配管等の耐圧性や装置の耐久性の点で好ましい。
また、処理回数に特に制限はなく、通常1〜数十回の範囲で適宜選択される。
【0055】
無機微粒子の分散液を調製する場合には、各種添加剤を添加することができる。
添加剤の例として、ノニオン性又はカチオン性の界面活性剤(アニオン性界面活性剤は凝集物を形成するために好ましくない。)、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン性又はカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトンなど)、無機塩類、pH調整剤などが挙げられ、必要に応じて適宜添加することができる。
【0056】
上記水混和性有機溶媒は特に、無機微粒子(特に気相法シリカ)を予備分散した際の微小なダマの形成を抑制する点で好ましく、水混和性有機溶媒を添加する場合の添加量としては、分散液中に0.1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは0.5〜10質量%である。
【0057】
また、無機微粒子(特に気相法シリカ)の分散液を調製する際のpHは、無機微粒子(特に気相法シリカ)の種類や各種添加剤等の他の成分で広範に変化し得るが、一般には1〜8の範囲であり、特に2〜7の範囲が好ましい。
【0058】
無機微粒子の分散液を調製する際、無機微粒子の平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましく、3〜10nmが特に好ましい。更には、光沢感付与の観点から、無機微粒子の平均一次粒子径が30nm以下であって、かつ分散後の分散液中における無機微粒子の二次粒子径が200nm以下(より好ましくは150nm以下、特に好ましくは120nm以下)であることが好ましい。
【0059】
上記添加剤以外に、水溶性有機カチオン化合物及び/又は水溶性多価金属化合物を添加し、これらの存在下で本発明に係る既述の分散機を用いて分散させる態様も好適である。
【0060】
〈水溶性有機カチオン化合物〉
無機微粒子は、分散前に予分散を行なった状態で用いることが好ましい。この場合に、分散剤(凝集防止剤)として、水溶性有機カチオン化合物の少なくとも一種を含有して好適に分散を行なうことができる。
【0061】
水溶性有機カチオン化合物には、特に制限はないが、後述する媒染剤の例など、第1級〜第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基、又はホスホニウム塩基を有する水溶性有機カチオン化合物(それらの塩を含む)が好適である。中でも、平均分子量が5万以下が好ましく、2万以下が特に好ましい。その他の分散剤としてシランカップリング剤を用いることができる。
【0062】
上記水溶性有機カチオン化合物の中でも、特にポリジアリルアミン誘導体を構成単位に有する水溶性有機カチオン化合物が好ましく、これはジアリルアミン化合物の環化縮合によって得ることができる。市販品としては、シャロールDC902P(第一工業製薬社製)、ジェットフィックス110(里田化工社製)、ユニセンスCP−101〜103(センカ社製)、PAS−H(日東紡績社製)などが挙げられる。
【0063】
上記水溶性有機カチオン化合物の量としては、無機微粒子に対して、1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。該量が多くなると既述のように、無機微粒子の種類によっては塗布後のゲル化能が低下する。
【0064】
上記水溶性有機カチオン化合物としては、水溶性又は水性エマルションタイプなどを好適に使用でき、例えば、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合体等のポリカチオン系カチオン樹脂などが挙げられる。中でも、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド及びポリアミジンが好ましく、耐水性の点で、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、モノメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。水溶性有機カチオン化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0065】
水溶性有機カチオン化合物のインク受容層中における含有量としては、無機微粒子の質量に対して、1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0066】
水溶性有機カチオン化合物は、無機微粒子を添加する前の分散媒中に添加してもよいし、予備混合中あるいは分散終了後に添加してもよい。より安定した分散液が得られる点で、特に無機微粒子を添加する前の分散媒中に添加することが好ましい。
【0067】
〈水溶性多価金属化合物〉
上記水溶性有機カチオン化合物を用いずにあるいはこれを用いると共に、水溶性多価金属化合物の少なくとも一種を含有して分散を行なうことができる。
【0068】
水溶性多価金属化合物は、分散媒中に添加してもよいし、予備混合中あるいは分散終了後に添加してもよい。より安定した分散液が得られる点で、無機微粒子を添加する前の分散媒中に添加することが好ましい。
【0069】
水溶性多価金属化合物としては、3価以上の金属化合物が好ましい。例えば、更に、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。
具体的な例として、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酪酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、ナフトレゾルシンカルボン酸バリウム、酪酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、シュウ酸銅、フタル酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、ナフテン銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、スルファミン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、クエン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)三水和物、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、酢酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。これらの水溶性多価金属化合物は2種以上を併用してもよい。
本発明において、水溶性多価金属化合物における「水溶性」とは、20℃の水に1質量%以上溶解することを意味する。
【0070】
上記の水溶性多価金属化合物のうち、アルミニウム若しくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)の化合物が好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩として、塩化アルミニウム又はその水和物、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン等が挙げられ、さらに無機系の含アルミニウムカチオンポリマーとして、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好適に挙げられる。
【0071】
塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物は、主成分が下記一般式1、2又は3で表され、例えば[Al6(OH)153+、[Al8(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等の、塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムが挙げられる。
[Al2(OH)nCl6-nm ・・・一般式1
[Al(OH)3nAlCl3 ・・・一般式2
Aln(OH)mCl(3n-m)[0<m<3n]・・・一般式3
【0072】
これらは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりHAP−25の名で、大明化学(株)よりアルファイン83の名で、さらに他のメーカーからも同様の目的をもって上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
【0073】
前記周期表4A族金属を含む水溶性多価金属化合物の好ましいものとして、チタン又はジルコニウムを含む水溶性化合物が挙げられる。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタン等が挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0074】
上記の水溶性多価金属化合物のインク受容層中における含有量としては、無機微粒子に対して、0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.5〜8質量%の範囲がより好ましい。
【0075】
無機微粒子の分散に用いる分散媒は、水又は、水と少量の有機溶剤(低級アルコールや酢酸エチル等の低沸点溶剤)との混合溶媒が好適である。その場合、有機溶剤は全分散媒に対して20質量%以下、更には10質量%以下が好ましい。
【0076】
前記高圧分散機、超音波分散機による分散前の予備混合(プレミキシング、予分散)は、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で行うことができる。二次分散には既述のように、高圧分散機(特に高圧ジェット分散機)、超音波分散機等が用いられる。
【0077】
また、分散液中の無機微粒子の濃度をより高濃度にする観点からは、段階的に無機微粒子を添加する方法が好適である。
【0078】
本発明において、一次分散としてプレミキシング又は予分散を行なうときの液温には、特に制限はなく、無機微粒子のスラリーを安定調製し得る点で、30℃以下が好ましく、特に25℃以下が好ましい。この場合、無機微粒子を添加する前の分散媒を20℃以下にしておいてもよいし、予備混合中に冷却して20℃以下に下げてもよい。
また、無機微粒子のスラリーの温度が20℃以下、更には15℃以下の状態で、分散機に注入することが、更に安定した分散液が得られる点で好ましい。
【0079】
分散液及び/又はインク受容層形成用の塗布液(インク受容層用塗布液)の調製後からの経時は、塗布面状の安定化の観点から、5時間以上が好ましく、より好ましくは8時間以上である。上限には制限がなく、数日から数十日であってもよい。経時での温度は約10℃〜約40℃、好ましくは約15℃〜約35℃である。無機微粒子が沈降しないように、経時の間緩く攪拌してもよい。
【0080】
また、塗布液の安定性の点で、無機微粒子の分散終了後からインク受容層用塗布液の塗布までの間に45℃以下の加熱処理を施し、加熱処理後に塗布することも好ましい。特に、無機微粒子の分散液を30〜48℃、好ましくは40〜45℃の範囲で約120分以上(上限はないが約1時間以上、約24時間以下が好ましい。)の加熱処理を施した後、インク受容層用塗布液を調製し、塗布することが好ましい。
更には、無機微粒子の分散液を5時間以上経時させ、かつ加熱処理を組合わせる態様が特に好ましい。
【0081】
本発明の消臭性インクジェット記録シートは、上記のようにして調製した無機微粒子の分散液を、あるいは該分散液、ポリビニルアルコール等の親水性バインダー、該親水性バインダーの架橋剤、界面活性剤、水分散性カチオン性樹脂等を混合してインク受容層用塗布液を、調製した後、これらのいずれか一種を塗布液として紙、ポリオレフィン樹脂被覆紙、あるいはプラスチック樹脂フィルム等の基材(支持体)に塗布して製造することができる。
【0082】
既述のようにして分散液を調製した場合、分散液中の無機微粒子の濃度としては、10〜40質量%程度が適当であり、15〜35質量%が好ましい。
また、無機微粒子のインク受容層用塗布液中における濃度は、5〜25質量%程度が適当であり、好ましくは8〜20質量%である。インク受容層中の無機微粒子の量としては、5〜30g/m2の範囲が好ましい。
【0083】
本発明の消臭性インクジェット記録シートは、水溶性樹脂、界面活性剤、及び沸点が150℃以上の水溶性有機溶剤が水溶液中(水性媒体)に共溶解されて用いられることが好適である。
【0084】
また、支持体を基紙で構成する場合の見た目の面状特性や風合いを高める点では、紙の地合指数も重要であり、本発明に係る基紙は、地合指数値が60以上の紙で構成されていることが好ましい。
【0085】
前記地合指数は、値が大きい程地合いは良好なことを示し、地合指数値を特に上記範囲とすることによって、地合いムラがなく、平滑さが均一でかつ高く、見た目の面状特性や風合いを高めることが可能である。
【0086】
換言すれば、地合指数値が60未満であると、地合いムラの発生が顕著になり面状均一性や風合いに劣ることがある。その結果、画像記録材料を構成したときに写真ライクな高画質画像の形成性が損なわれる。
前記地合指数値は、中でも70以上が好ましい。
【0087】
地合指標値は、M/K Systems,Inc.(MKS社)製の3Dシートアナライザー(M/K950)を用い、そのアナライザーの絞りを直径1.5mmとすると共に、マイクロフォーメーションテスター(MFT)を用いて測定されたものである。
【0088】
すなわち、3Dシートアナライザーにおける回転ドラム上にサンプルを取付け、ドラム軸上に取付けられた光源とドラム外側に前記光源に対応させて取付けられたフォトディテクターとによって、サンプル中の局部的な坪量差を光量差として測定する。このときの測定対象範囲は、フォトディテクターの入光部に取付けられた絞りの径で設定される。次いで、その光量差(偏差)を増幅、A/D変換し、64の光測定的な坪量階級に分級し、1回のスキャンで100,000個のデータをとり、そのデータ分のヒストグラム度数を得る。そして、そのヒストグラムの最高度数(ピーク値)を、64の微小坪量に相当する階級に分級されたもののうち、100以上の度数を持つ階級の数で割り、割った値を1/100にした値が地合指標値として算出される。
【0089】
前記地合指数値を高める、すなわち基紙の地合いを良くする方法としては、例えば、スクリーンや渦流式クリーナーを抄紙機のヘッドボックスの直前に設置して基紙原料の流動方向が一定とならないようにしたり、あるいは分散剤、地合い制御添加剤、リテンション及び濾水助剤等の添加薬品を用いて原質のフロック化を管理する方法等が挙げられる。但し、これら方法に限定されるものではない。
【0090】
本発明の消臭性インクジェット記録シートを構成する支持体は、基紙の少なくともインク受容層が形成される側(つまり基紙の片側又は両側)の表面が被覆されるようにポリオレフィン樹脂を設けて好適に構成することができる。
【0091】
インク受容層が形成される側のポリオレフィン樹脂の層厚は20〜60μmの範囲が好ましい。より好ましくは35〜60μmである。層厚が該範囲であると、写像性に優れた良好な光沢感のある写真風合いを得ることができ、生産性の向上、コスト低減の点で有効である。
中でも、層厚を40〜55μmの範囲とした態様が好ましい。
【0092】
基紙の片側もしくは両側の表面にポリオレフィン樹脂層を設ける場合、すなわち写真印画紙用支持体など樹脂のラミネートにより樹脂被覆された支持体の作製には、溶融押出し、ウェットラミネーション、ドライラミネーションがあるが、溶融押出しが最も好ましい。前記溶融押出しによりポリオレフィン樹脂層を形成するときは、ポリオレフィン樹脂層の基紙上への溶融押出し前に、基紙とポリオレフィン樹脂層との接着を強固にするために基紙に前処理を施しておくことが好適である。例えば、走行する基紙上に押出ダイから押し出されたポリオレフィン樹脂を、ニップローラと冷却ローラとの間のニップ点において基紙が被覆されるように樹脂膜を形成すると共に、ニップして圧着することで樹脂膜を基紙にラミネートする押出ラミネート法(押出コーティング方法ともいう。)が広く採用されている。
【0093】
前処理としては、硫酸クロム酸混液による酸エッチング処理、ガス炎による火炎処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、アルキルチタネート等のアンカーコート処理等があり、自由に選択できる。特に簡便さの点からは、コロナ処理が好ましい。コロナ処理の場合、水との接触角が70°以下になるように処理する必要がある。
【0094】
前記アンカーコート剤としては、有機チタン系、イソシアネート系(ウレタン系)ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系等が知られている。具体的には、有機チタン系としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のアルキルチタネート、ブトキシチタニウムステアレート等のチタンアシレート、チタニウムアセチルアセトネート等のチタンキレート等が知られている。また、イソシアネート系(ウレタン系)としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が知られている。
【0095】
本発明においては特に、前記押出ラミネート法による場合に、基紙上にポリオレフィン樹脂を溶融押出した後、ニップ圧が2MPa以上である弾性ロール及び冷却ロール間を通過させてラミネートを施すことにより好適にポリオレフィン樹脂層を形成することができる。
【0096】
すなわち、基紙にラミネートされた樹脂膜の表面には微細な細孔(以下、「クレータ」と称する。)ができることがあるが、このクレータの数が多いと外観を損なうだけでなく光沢感も低下するために製品価値が著しく低下する。このクレータの発生は、冷却ローラが回転する際に発生する同伴空気の影響を受け、樹脂膜と冷却ローラとの間のエリアに同伴空気が溜まって樹脂膜に凹状のへこみができることが原因とされている。そして、弾性ロール及び冷却ロール間のニップ圧力が小さいほど、並びに更にはラミネート時のライン速度が大きいほど、樹脂膜の厚みが薄いほど、押出ダイからの樹脂の吐出温度が低いほど、及び基紙の表面粗さが粗いほど、前記クレータが発生しやすい。
したがって、弾性ロール及び冷却ロール間のニップ圧を2MPa以上とすることで、クレータの発生が抑制され、平滑で光沢感の良好な平面性を確保することができる。好ましくは、前記ニップ圧は3MPa以上であり、また、上限値としては8MPaが望ましい。
【0097】
基紙に設けられるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα−オレフィンの単独重合体、及びこれら各種の重合体の混合物、あるいはエチレンとビニルアルコールのランダム共重合体などが好適である。
ポリエチレンとしては、例えば、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、L−LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)を各々単独、又は混合して用いることができる。ポリエチレンを用いる場合、加工前のメルトフローレートは、JIS 7201にしたがって測定された値で、1.2〜12g/10分のものが好ましい。
【0098】
ポリオレフィン(例えばポリエチレン)よりなるポリオレフィン層、例えばポリエチレン層を設けた構成とする場合、消臭性インクジェット記録シートを作製する際に基紙のインク受容層が形成される側のポリエチレン層は、一般に広く写真用印画紙で行なわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。
【0099】
さらに、ポリオレフィン層上には、画像の記録を担うインク受容層との密着性を付与する目的で、下塗り層を設けることもできる。下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましく、下塗り層の厚みとしては0.01〜5μmが好ましい。
【0100】
本発明における基紙は、インク受容層が形成される一方の側の表面又は両側の各表面の少なくとも一部がポリオレフィン(例えばポリエチレン)で被覆されているときには、ポリオレフィン樹脂被覆紙(例えばポリエチレン被覆紙)なる支持体として構成され、光沢紙として用いることができ、また、ポリエチレン等のポリオレフィンを基紙上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行なって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成した形態の支持体として使用することもできる。
【0101】
本発明の消臭性インクジェット記録シートを構成する基紙の、インク受容層が形成される側と逆側の表面にはバックコート層を設けることもできる。このバックコート層は、白色顔料や水性バインダー、その他の成分を添加、含有させて構成することができる。
【0102】
前記バックコート層に添加可能な白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0103】
バックコート層に添加可能な水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
【0104】
また、バックコート層に添加可能なその他の成分として、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等を挙げることができる。
【0105】
次に、消臭性インクジェット記録シートを構成する支持体以外の構成について詳述する。
本発明の記録性消臭は、支持体の少なくとも一方に少なくとも一層のインク受容層を有してなり、必要に応じて他の層を有してなる。
【0106】
[インク受容層]
インク受容層は、媒染剤およびシリカを含有する。好ましくは水溶性樹脂を含んで構成することができ、更に好ましくは、水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含む態様である。また、必要に応じて媒染剤その他成分(界面活性剤等)とを用いて構成することができる。
【0107】
インク受容層は、シリカを含有することにより多孔質構造に構成され、これによりインクの吸収性能が向上する。特に、シリカのインク受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造とすることが可能となり、インク吸収性をより向上させることができる。ここで、シリカのインク受容層における固形分含有量は、インク受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
【0108】
上記多孔質構造のインク受容層とは、空隙率が50〜75%、好ましくは60〜70%である層をいう。前記空隙率が、50%以下であるとインク吸収性が不充分となることがあり、75%以上であるとバインダー不足による粉落ちの問題を生ずることがある。また、消臭性インクジェット記録シートの品質上、インク受容層の層厚は20〜40μmであることが好ましい。
【0109】
−微粒子−
インク受容層は、前記シリカ以外にその他の微粒子を含有することができる。以下、特に、断りのないときは、シリカを微粒子の1つとして説明するものとする。
微粒子としては、有機微粒子及び無機微粒子のいずれをも用いることができる。前記有機微粒子の好ましいものとして、例えば、乳化重合、マイクロエマルジョン系重合、ソープフリー重合、シード重合、分散重合、懸濁重合などにより得られるポリマー微粒子が挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、シリコン樹脂、フェノール樹脂、天然高分子等の粉末、ラテックス又はエマルジョン状のポリマー微粒子等が挙げられる。
【0110】
また、無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。
【0111】
これらの中でも、インク吸収性及び画像安定性の点から無機微粒子が好ましく、さらに良好な多孔質構造を形成する点から、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、又は擬ベーマイトが好ましい。微粒子は1次粒子のまま用いても、又は2次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら微粒子の平均一次粒径は2μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
【0112】
このうち、シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。前記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、前記「気相法シリカ」とは、当該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明におけるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0113】
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0114】
前記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なえば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録媒体に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0115】
前記気相法シリカの平均一次粒子径としては、30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を好適に形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0116】
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と前記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0117】
前記無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。このうち、アルミナ水和物は、インクをよく吸収し定着すること等から好ましく、特に擬ベーマイト(Al・nHO)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
【0118】
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜25nmが好ましく、2〜10nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/gが好ましく、0.5〜1.5ml/gがより好ましい。ここで、細孔半径及び細孔容積は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)を用いて測定できる。
【0119】
また、アルミナ微粒子の中では、気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナ微粒子の平均一次粒子径は50nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。また更に、平均一次粒径が50nm以下のコロイダルシリカも好ましいものとして挙げられる。
【0120】
上述の微粒子は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等の公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
【0121】
−水溶性樹脂−
前記インク受容層は、前述の通り、水溶性樹脂を含有することが好ましく、該水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類が好ましい。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0122】
以上の中でも、特にポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等に記載されたものなどが挙げられる。
【0123】
これら水溶性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記水溶性樹脂の含有量としては、インク受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
【0124】
インク受容層を構成する前記水溶性樹脂と前記微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
なお、透明性を保持する観点からは、微粒子特にシリカ微粒子に組合される水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
【0125】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造のインク受容層を形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0126】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と前記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0127】
<微粒子と水溶性樹脂との含有比>
微粒子の質量(x)と水溶性樹脂の質量(y)との質量比〔PB比;=x/y〕は、インク受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。すなわち、質量比(PB比)が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
インク受容層における前記PB比(x/y)としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、かつ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
【0128】
また、インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、消臭性インクジェット記録シートに応力が加わることがあるので、インク受容層は十分な膜強度を有していることが必要であり、シート状に裁断加工する場合にもインク受容層の割れや剥がれ等を防止する点からも、インク受容層は充分な膜強度を有していることが必要である。これらを考慮すると、前記PB比は5以下がより好ましく、一方でインクジェットプリンタでの高速インク吸収性を確保する観点からは2以上がより好ましい。
【0129】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカと水溶性樹脂とをPB比(x/y)2〜5で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布、乾燥させた場合、気相法シリカの二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が25nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0130】
−媒染剤−
本発明においては、形成画像の耐水性、耐経時ニジミの更なる向上を図るために、また、悪臭成分の吸着性向上のために、インク受容層に媒染剤を含有することが好ましい。媒染剤としては、カチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)等の有機媒染剤、及び水溶性金属化合物等の無機媒染剤のいずれも好ましい。中でも、有機媒染剤が好ましく、特にカチオン性媒染剤が好ましい。
【0131】
少なくともインク受容層の上層部に前記媒染剤を存在させることによって、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用が働き、該色材を安定化させて耐水性や耐経時ニジミを更に改善することができる。
【0132】
この場合、インク受容層を形成するときのインク受容層用塗布液(第一液)及び塩基性溶液(第二液)のいずれに含有してもよいが、無機微粒子(特に気相法シリカ)を含む液とは別液となる第二液に含有して用いることが好ましい。すなわち、媒染剤を直接インク受容層用塗布液に添加すると、アニオン電荷を有する気相法シリカとの共存下では凝集を生ずる場合があるが、媒染剤を含む液とインク受容層用塗布液とをそれぞれを独立に調製し、個々に塗布する方法を採用すれば、無機微粒子の凝集を考慮する必要がなく、媒染剤の選択範囲が広がる。
【0133】
前記カチオン性媒染剤としては、カチオン性の官能基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(以下、「媒染剤モノマー」という。)の単独重合体や、該媒染剤モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染剤ポリマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、又は水分散性のラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0134】
前記媒染剤モノマーとしては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0135】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0136】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0137】
具体的な化合物としては、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0138】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0139】
また、アリルアミンやジアリルアミン、その誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)等が挙げられる。尚、これらのアリルアミン及びジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的な製法である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの重合単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
【0140】
前記非媒染剤モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェット用インク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さい単量体をいう。
前記非媒染剤モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0141】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。前記非媒染剤モノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
【0142】
更に、カチオン性媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カオチン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO共重合物、ジアリルアミン塩−SO共重合物、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリレート含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基を有するスチリル型ポリマー等も好ましいものとして挙げることができる。
【0143】
前記カチオン性媒染剤として、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号、特公平5‐35162号、同5−35163号、同5‐35164号、同5−88846号、特開平7−118333号、特開2000−344990号等の各公報、特許第2648847号、同2661677号等の各明細書に記載のもの等が挙げられる。中でも、ポリアリルアミン及びその誘導体が好ましく、構造的にはジアリルジアルキルカチオンポリマーが好ましい。
【0144】
前記ポリアリルアミン又はその誘導体としては、公知の各種アリルアミン重合体及びその誘導体が使用できる。このような誘導体としては、ポリアリルアミンと酸との塩(酸としては塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸などの有機酸、あるいはこれらの組合せや、アリルアミンの一部分のみを塩にしたもの)、ポリアリルアミンの高分子反応による誘導体、ポリアリルアミンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体(該モノマーの具体例としては(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、ビニルエステル類等)が挙げられる。
【0145】
ポリアリルアミン及びその誘導体の具体例としては、特公昭62‐31722号、特公平2‐14364号、特公昭63−43402号、同63−43403号、同63−45721号、同63−29881号、特公平1−26362号、同2−56365号、同2−57084号、同4−41686号、同6−2780号、同6−45649号、同6−15592号、同4−68622号、特許第3199227号、同3008369号、特開平10‐330427号、同11‐21321号、特開2000‐281728号、同2001‐106736号、特開昭62−256801号、特開平7‐173286号、同7‐213897号、同9−235318号、同9−302026号、同11‐21321号、WO99/21901号、WO99/19372号、特開平5−140213号、特表平11‐506488号等の各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0146】
上記のカチオン性媒染剤の中でも、ジアリルジアルキルカチオンポリマーが好ましく、特にジアリルジメチルカチオンポリマーが好ましい。
また、前記分散剤として、水溶性有機カチオン化合物の項に記載のポリジアリルアミン誘導体(ポリジアリルアミン誘導体を構成単位に有する水溶性有機カチオン化合物)を好適例として挙げることができる。
また、カチオン性媒染剤は、分散能、特に増粘の防止の観点から、重量平均分子量が60000以下、特に40000以下のカチオンポリマーが好ましい。
なお、カチオン性媒染剤は既述の微粒子の分散剤としても有用である。
【0147】
また、インク受容層用塗布液に加える場合には、該塗布液中の硫酸イオン濃度としては、該液の増粘防止の点から1.5質量%以下が好ましい。この硫酸イオンは、カチオン性のポリマー製造時の重合開始剤等に含まれているものであり、これがポリマー中に残存することから、硫酸イオンを出さない重合開始剤等を用いてなるカチオン性媒染剤が望ましい。
【0148】
無機媒染剤としては、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。具体的には、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
【0149】
具体例として、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス、等が挙げられる。
【0150】
無機媒染剤の中でも、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩又は錯体)が好ましい。
前記アルミニウム含有化合物として、更に、悪臭成分吸着の観点から、ポリ水酸化アルミニウムであることが好ましく、該化合物については前述の水溶性多価金属化合物の項で説明したポリ水酸化アルミニウム(前記一般式1、2又は3で表される化合物等)が挙げられる。
前記媒染剤のインク受容層中における添加量は、0.01〜5g/mが好ましく、0.1〜3g/mがより好ましい。
【0151】
−架橋剤−
前記インク受容層は、微粒子及び水溶性樹脂を含む塗布層が、更に該水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。
【0152】
前記水溶性樹脂、特にポリビニルアルコール系樹脂の架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO、Co(BO、二硼酸塩(例えば、Mg、Co)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO、NaBO、KBO)、四硼酸塩(例えば、Na・10HO)、五硼酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
【0153】
前記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0154】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
前記架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0155】
架橋硬化は、微粒子、水溶性樹脂等を含有してインク受容層を形成するための塗布液(以下、「インク受容層用塗布液」又は「第一液」ともいう。)及び/又は下記塩基性溶液に架橋剤を添加し、かつ、(1)前記第一液を塗布して塗布層を形成すると同時、又は(2)前記第一液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pH7.1以上の塩基性溶液(以下、「第二液」ともいう。)を前記塗布層に付与することにより行なうことが好ましい。
【0156】
前記架橋剤の付与は、ホウ素化合物を例にすると下記のように行われることが好ましい。即ち、インク受容層が、微粒子、ポリビニルアルコールを含む水溶性樹脂を含有する塗布液(第一液)を塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、架橋硬化は、(1)前記第一液を塗布して塗布層を形成すると同時、(2)前記第一液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pH7.1以上の塩基性溶液(第二液)を前記塗布層に付与することにより行われる。架橋剤たるホウ素化合物は、第一液又は第二液の何れかに含有すればよく、第一液及び第二液の両方に含有させておいてもよい。
架橋剤の使用量は、水溶性樹脂に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0157】
−その他の成分−
上記の成分以外に、インク受容層又は該インク受容層形成用の塗布液(インク受容層用塗布液)には、必要に応じて更に、各種の公知の添加剤、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
【0158】
その他の成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。その他の成分は、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。その他の成分を添加する場合の添加量としては、0.01〜10g/mが好ましい。
【0159】
また、無機微粒子の分散性を改善する目的で、無機表面をシランカップリング剤で処理してもよい。該シランカップリング剤としては、カップリング処理を行なう部位の他に、有機官能性基(例えば、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アルキル基、フェニル基、エステル基等)を有するものが好ましい。
【0160】
本発明において、インク受容層用塗布液が界面活性剤を含有している態様が好ましい。ここでの界面活性剤には、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコン系界面活性剤のいずれもが含まれる。
【0161】
前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及び該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、インク受容層用塗布液に含有してもよい。
【0162】
前記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸及びその塩が挙げられる。
【0163】
前記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ソーダ、オレイン酸カリ)、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などが挙げられる。
【0164】
前記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体を経て誘導される化合物が挙げられる。例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0165】
前記シリコーン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコーンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性として、アミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
【0166】
界面活性剤のインク受容層用塗布液における総量としては、0.001〜2.0%が好ましく、0.01〜1.0%がより好ましい。
【0167】
前記インク受容層は、支持体表面に微粒子と水溶性樹脂を含有する塗布液を塗布して塗布層を形成し、さらに前記塗布液及び/又は下記塩基性溶液に架橋剤を添加し、かつ(1)前記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、又は(2)前記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pHが7.1以上の塩基性溶液を前記塗布層に付与し、前記塗布層を架橋硬化させる方法(Wet−on−Wet法)により形成されるのが好ましい。ここで前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤は、前記塗布液あるいは塩基性溶液の少なくとも一方又は両方に含有せしめることが好ましい。このようにして架橋硬化させたインク受容層を設けることは、インク吸収性や膜のヒビ割れ防止などの観点から好ましい。
【0168】
前記媒染剤は、受容層表面からの媒染剤存在部分の厚みが受容層厚みに対し10〜60%であるように存在させることが望ましい。例えば、(1)前記微粒子、水溶性樹脂、架橋剤を含む塗布層を形成し、媒染剤含有溶液をその上に塗布する方法、(2)微粒子、水溶性樹脂を含む塗布液と媒染剤含有溶液を重層塗布する方法等任意の方法で形成できる。また媒染剤含有溶液中に無機微粒子、水溶性樹脂、架橋剤等が含有されていてもよい。
【0169】
上記のようにすると、媒染剤がインク受容層の所定の部分に多く存在するので、インクジェットの色材が十分に媒染され、色濃度、経時ニジミ、印画部光沢、印字後の文字や画像の耐水性、耐オゾン性が向上するので好ましい。媒染剤の一部は最初に支持体に設ける層に含有させてもよく、その場合は、後から付与する媒染剤は同じものでも異なっていてもよい。
【0170】
本発明において、微粒子(例えば気相法シリカ)と水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコール)とを含有するインク受容層用塗布液(第一液)は、例えば、以下のようにして調製することができる。すなわち、
気相法シリカ等の微粒子を分散剤等と共に水中に添加して(例えば、水中のシリカ微粒子は10〜20質量%)、ホモミキサー等で予分散(一次分散)し、続いて得られた分散液を更にアルティマイザー(スギノマシン社製)等の分散機を用いて例えば1パスで分散(二次分散)させた後、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(例えば、前記気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加えることにより調製することができる。塗布液に安定性を付与するためにアンモニア水等でpH=9.2程度に調節すること、又は分散剤を用いることが好ましい。得られた塗布液は均一なゾル状態であり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔質性のインク受容層を形成することができる。
【0171】
分散に用いる分散機には、コロイドミル分散機、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、高圧分散機等、従来公知の各種の分散機を使用することができる。中でも、形成されるダマ状微粒子の分散を効果的に行なう点から、超音波分散機又は高圧分散機(特に高圧ジェット分散機)が好ましい。
【0172】
また、各工程における溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0173】
更に、前記分散剤としてはカオチン性のポリマーを用いることができる。カオチン性のポリマーとしては、前述の媒染剤の例などが挙げられる。また、分散剤としてシランカップリング剤を用いることも好ましい。
前記分散剤の微粒子に対する添加量は、0.1〜30質量%が好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0174】
インク受容層用塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。
【0175】
インク受容層用塗布液(第一液)の塗布と同時又は塗布した後に、該塗布層に塩基性溶液(第二液)が付与されるが、該第二液は、塗布後の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与してもよい。即ち、インク受容層用塗布液(第一液)の塗布後、この塗布層が恒率乾燥を示す間に第二液を導入することで好適に製造される。この第二液には、媒染剤を含有せしめてもよい。
【0176】
ここで、前記「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、インク受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0177】
上記の通り、第一液の塗布後、該塗布層が減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は前記範囲が適当である。
【0178】
前記第一液からなる塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に付与する方法としては、(1)第二液を塗布層上に更に塗布する方法、(2)スプレー等の方法により噴霧する方法、(3)第二液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0179】
前記方法(1)において、第二液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている第一塗布層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0180】
第二液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥及び硬化がおこなわれる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
【0181】
また、前記塩基性溶液(第二液)を、インク受容層塗布液(第一液)を塗布すると同時に付与する場合、第一液及び第二液を、第一液が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることによりインク受容層を形成することができる。
【0182】
前記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。
【0183】
前記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコーターによりおこなった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、前記のように同時塗布する際は、第一液及び第二液の塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を前記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0184】
前記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。前記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。尚、バリアー層液には、前記媒染剤を含有させることもできる。
【0185】
支持体上にインク受容層を形成した後、該インク受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0186】
カレンダー処理をおこなう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0187】
前記インク受容層の層厚としては、インクジェット記録に用いる場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mmで、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上であることが好ましい。
この点を考慮すると、インクジェット記録に用いる場合には、インク受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0188】
また、インク受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
前記空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0189】
また、インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
前記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0190】
本発明によって得られる消臭性インクジェット記録シートの構成層(例えば、インク受容層あるいはバック層など)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
【0191】
一般的な消臭剤としてゼリーを使用した消臭剤は置く場所が必要で、かつ、目障りであり、として保管できるため、廃棄物減・地球温暖化に貢献できるというメリットがある。
また、本発明の消臭性インクジェット記録シートは建築資材や接着剤、塗料などから発生するホルムアルデヒドの他、タバコ臭の成分である、アセトアルデヒド,アンモニア,硫化水素,酢酸等に対して速効性、持続性に優れた消臭機能を発揮することができる。
【実施例】
【0192】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特に指定しない限り質量基準であり、「重合度」は「重量平均重合度」を表す。
【0193】
[実施例1]
−改質パルプ繊維(1)の製造−
かえで材(メープル)クラフトパルプ(LBKP)100部をダブルディスクリファイナーにより叩解し、カナディアンフリーネス(カナダ標準濾水度)330mlのパルプスラリーを得た。これに過酸化水素0.3部、硫酸第一鉄アンモニウム0.03部、アクリル酸1部、メタクリル酸1部、EDTA0.03部を含む水溶液1000部に浸漬し、80℃で2時間処理後、湯洗、水洗によりモノマーを除去した。得られたグラフトパルプのグラフト率は12.8%であった。このグラフトパルプを硫酸銅3%水溶液で60℃で30分間処理し、水洗し、Cu2+で置換されたカルボキシル基が導入された改質パルプ繊維(1)を得た。改質パルプ繊維の平均繊維長は560μmであった。
【0194】
−支持体の作製−
かえで材(メープル)クラフトパルプ(LBKP)50部とアカシア材クラフトパルプ(LBKP)50部とをそれぞれ、ダブルディスクリファイナーにより叩解し、カナディアンフリーネス(カナダ標準濾水度)330mlのパルプスラリーを得た。
【0195】
次いで、得られたパルプスラリーに対パルプあたり、前記改質パルプ繊維(1)20%、カチオン性澱粉(CATO304L、日本NSC(株)製)1.5%、アニオン性ポリアクリルアミド(DA4104、星光PMC(株)製)0.17%、アルキルケテンダイマー(サイズパインK、荒川化学(株)製)0.35%、エポキシ化ベヘン酸アミド0.35%、及びポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(アラフィックス 100、荒川化学(株)製)0.40%を加えると共に、その後更に消泡剤0.15%を加えた。
【0196】
上記のように調製されたパルプスラリーを長網抄紙機により脱水、乾燥を行ない、坪量200g/mで厚さ190μmの原紙を抄造し、基紙を得た。
具体的には、ウェッブのフェルト面をドライヤーカンバスを介して押し当てて乾燥する工程において、ドライヤーカンバスの引張り力を1.6kg/cmに設定して乾燥を行なった後、サイズプレスにて原紙の両面にポリビニルアルコール(KL−118、(株)クラレ製)を1.0g/mとなるよう塗布して乾燥し、マシンカレンダー処理を行なった。
【0197】
得られた基紙のフェルト面側(表側)に、コロナ放電処理を施した後、溶融押出機を用いてアナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青(東京インキ製)、及び蛍光増白剤(Whiteflour PSN conc、(株)日本化学工業所製)0.08%(対ポリエチレン)を含む、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを厚み40μmとなるように押出し、弾性ロールと冷却ロールとの間のニップ圧力が3.5MPaとなるようにして、基紙の表面側に高光沢なポリエチレン樹脂層を形成し(以下、この高光沢な面を「オモテ面」と称する。)、支持体(以下、支持体Aと称する。)とした。
【0198】
なお、弾性ロールを構成する弾性体は、材質がエチレンプロピレンゴムであり、硬度がJIS K−6301で表される値で80であり、肉厚が25mmであるものを用いた。また、該弾性ロールのロール表面の粗度はJIS B−0601で表される値で0.3Sである。
【0199】
−インク受容層用塗布液の調製−
下記組成中の、(a)気相法シリカ微粒子と(b)イオン交換水と(c)シャロールDC−902Pと(d)ZA−30とを混合し、ホモミキサーを用いて予分散を行なった後、さらに液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて170MPa、1パスで分散を行なった。この分散液を45℃に加熱して20時間保持した。この分散液に更に、下記組成中の(e)ホウ酸水溶液と(f)ポリビニルアルコール溶解液と(g)界面活性剤と(h)ポリオキシエチレンラウリルエーテルと(i)エタノールとを30℃で加え、インク受容層用塗布液を調製した。このときのシリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比〔PB比=(a)/(f)〕は4.5であり、調製後のインク受容層用塗布液のpHは3.9で酸性を示した。
【0200】
<インク受容層用塗布液の組成>
(a) AEROSIL 300S F75 ・・・10.0部
〔日本アエロジル(株)製;気相法シリカ微粒子、平均一次粒子径7nm〕
(b)イオン交換水 ・・・64.8部
(c)シャロールDC−902P(51.5%水溶液) ・・・ 0.87部
〔第一工業製薬(株)製〕
(d)ZA−30(第一稀元素化学工業(株)製) ・・・ 0.49部
(e)ホウ酸5%水溶液 ・・・ 0.40部
(f)下記組成のポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液
・・・32.0部
(g)スーパーフレックス650 ・・・ 1.2部
(第一工業製薬(株)製)
(h)ポリオキシエチレンラウリルエーテル ・・・ 0.49部
〔エマルゲン109P(10%水溶液)、HLB値13.6、花王(株)製〕
(i)エタノール ・・・ 2.5部
【0201】
[ポリビニルアルコール溶解液の組成]
・PVA−235 … 2.0部
〔(株)クラレ製、鹸化度88%、重合度3500〕
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル … 0.03部
〔エマルゲン109P、花王(株)製〕
・下記化合物1 … 0.12部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル … 0.55部
〔ブチセノール20P、協和発酵ケミカル(株)製〕
・イオン交換水 …26.6部
【0202】
【化1】

【0203】
−消臭性インクジェット記録シートの作製−
上記より得た支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、このオモテ面に、180ml/mになるよう流した上記のインク受容層用塗布液に5倍に希釈したポリ塩化アルミニウム水溶液(ポリ塩化アルミニウムはアルファイン83(大明化学工業(株)製)を用いた。)を10.8ml/mの速度でインライン塗布した。その後、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。このとき、塗布層は恒率乾燥を示した。その直後、これを下記組成の溶液A(pH=7.8)に30秒間浸漬して塗布層表面に15g/mを付着させ、更に80℃下で10分間乾燥させた。以上により、乾燥層厚33μmの消臭性インクジェット記録シートを作製した。
【0204】
<溶液Aの組成>
(a)ホウ酸 ・・・ 0.65部
(b)ジルコゾールAC−7 ・・・ 3.0部
〔第一稀元素化学工業(株)製;炭酸ジルコニルアンモニウム〕
(c)炭酸アンモニウム(1級:関東化学(株)製) ・・・ 3.5部
(d)イオン交換水 ・・・63.3部
(e)ポリオキシエチレンラウリルエーテル ・・・30.0部
〔エマルゲン109P(2%水溶液)、HLB値13.6、花王(株)製〕
【0205】
(実施例2)
実施例1における支持体の作製において、パルプスラリーに加える改質パルプ繊維(1)の量を40%に変更したこと以外実施例1と同様にして、消臭性インクジェット記録シートを作製した。
【0206】
(実施例3)
実施例1における改質パルプ繊維(1)の製造において、グラフトパルプを硫酸銅3%水溶液で処理する代わりに、硫酸亜鉛3%水溶液で処理したこと以外実施例1と同様にして、消臭性インクジェット記録シートを作製した。
【0207】
(実施例4)
実施例1において、ポリ塩化アルミニウムを添加しない以外実施例1と同様にして、消臭性インクジェット記録シートを作製した。
【0208】
(実施例5)
実施例1において、インク受容層用塗布液に用いられるAEROSIL 300S F75の代わりに、ミズカシルP526(湿式法シリカ微粒子)を使用した以外実施例1と同様にして、消臭性インクジェット記録シートを作製した。
【0209】
(実施例6)
実施例1において、インク受容層用塗布液を以下のようにして調製したインク受容層用塗布液に変更したこと以外、実施例1と同様にして、消臭性インクジェット記録シートを作製した。
−インク受容層用塗布液の調製−
下記組成中の、(a)湿式法シリカ微粒子(ミズカシルP526)と(b)イオン交換水と(h)ポリオキシエチレンラウリルエーテルと(d)ZA−30とを混合し、ホモミキサーを用いて予分散を行なった後、さらに液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて170MPa、1パスで分散を行なった。この分散液を45℃に加熱して20時間保持した。この分散液に更に、下記組成中の(e)ホウ酸水溶液と(f)ポリビニルアルコール溶解液と(g)界面活性剤と(i)エタノールとを30℃で加え、インク受容層用塗布液を調製した。
【0210】
<インク受容層用塗布液の組成>
(a) ミズカシルP526〔湿式法シリカ微粒子〕 ・・・10.0部
(b)イオン交換水 ・・・64.8部
(h)ポリオキシエチレンラウリルエーテル ・・・ 0.49部
〔エマルゲン109P(10%水溶液)、HLB値13.6、花王(株)製〕
(d)ZA−30(第一稀元素化学工業(株)製) ・・・ 0.49部
(e)ホウ酸5%水溶液 ・・・ 0.40部
(f)前記ポリビニルアルコール溶解液 ・・・32.0部
(g)スーパーフレックス650 ・・・ 1.2部
(第一工業製薬(株)製)
(i)エタノール ・・・ 2.5部
【0211】
(比較例1)
実施例1における支持体の作製において、改質パルプ繊維を添加しない以外実施例1と同様にして、消臭性インクジェット記録シートを作製した。
【0212】
(比較例2)
実施例1における改質パルプ繊維(1)の製造において、クラフトパルプを硫酸銅3%水溶液で処理しない以外実施例1と同様にして、消臭性インクジェット記録シートを作製した。
【0213】
(比較例3)
実施例1における支持体の作製において、改質パルプ繊維(1)の代わりに活性炭を使用した以外実施例1と同様にして、消臭性インクジェット記録シートを作製した。
【0214】
(比較例4)
実施例1において、インクジェット受像層を設けない以外実施例1と同様にして、消臭性インクジェット記録シートを作製した。なお、光沢感評価は裏の紙面に印刷して評価した。
【0215】
(評価)
上記実施例および比較例で得られた消臭性インクジェット記録シートを下記の評価法にしたがって評価し、その結果を下記表1に示す。
した。
(1)消臭性評価
6リットルのデシケータに肉、野菜、魚等を入れて2週間放置し、人工の生ゴミ臭を作成した。消臭性インクジェット記録シート1gを、1.8リットルの広口瓶に入れてサンプルとした。
続いて6リットルのデシケータより人工生ゴミ臭のヘッドスペースガス10mlを広口瓶に入れ、経時(0〜6時間後)における臭気強度を以下基準により官能で評価した。
評価は5名の専門パネラーで行ない、上下2名をカットし3名の平均を四捨五入した。
【0216】
<評価基準>
評価点:評価基準
0:無臭
1:非常に微かな臭い
2:微かな臭い
3:容易に感じる臭い
4:強い臭い
5:非常に強い臭い
【0217】
(2)光沢感
実施例及び比較例の各消臭性インクジェット記録シートをインクジェットプリンタ(PM−G800、セイコーエプソン(株)製)に装填し、各消臭性インクジェット記録シートに人物、静物、風景の画像を印字し、目視により下記評価基準にしたがって評価した。
〔評価基準〕
0…光沢感に優れていた。
1…光沢感は概ね良好であった。
2…光沢感に乏しかった。
【0218】
【表1】

【0219】
表1から明らかな通り、比較例は消臭速度が遅いのに対して、実施例は消臭速度が早いことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフト重合により、カルボキシル基が導入され、かつ該カルボキシル基がZn2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Ag、及びFe2+からなる群から選ばれた少なくとも一種の金属イオンで置換され、更に繊維長250〜1000μmに粉砕されているパルプ繊維を、含有する支持体上に、媒染剤およびシリカを含有するインク受容層を有することを特徴とする消臭性インクジェット記録シート。
【請求項2】
前記シリカが気相法シリカであることを特徴とする請求項1に記載の消臭性インクジェット記録シート。
【請求項3】
前記媒染剤がポリ水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消臭性インクジェット記録シート。
【請求項4】
前記媒染剤がポリジアリルアミン誘導体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消臭性インクジェット記録シート。

【公開番号】特開2009−154326(P2009−154326A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332861(P2007−332861)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】