説明

消費電力削減装置、自発光表示装置、電子機器、消費電力削減方法及びコンピュータプログラム

【課題】既存の方法では、ユーザーに与える違和感が大きかったり、継続的な省電力効果が期待できない。
【解決手段】アクティブマトリクス駆動型の自発光表示モジュールで消費される電力を削減する消費電力削減装置として、第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の間における連続的かつ緩やかなピーク輝度の往復変化が一定周期間隔で継続的に繰り返されるように自発光表示モジュールを駆動制御する機能を有するものを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書で説明する発明は、アクティブマトリクス駆動型の自発光表示モジュールで消費される電力を削減する技術に関する。なお、ここでの発明は、消費電力削減装置、自発光表示装置、電子機器、消費電力削減方法及びコンピュータプログラムとしての側面を有する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの電子機器にフラット型の表示デバイスが搭載されている。
現時点では、非自発光型の液晶ディスプレイが多く採用されているが、依然として視野角の狭さや応答速度の遅さが指摘され続けている。
【0003】
一方、自発光型のディスプレイにはこれらの技術課題がないのに加え、バックライト不要の薄い形態、高輝度、高コントラスト等を達成できるため、次世代の表示デバイスとして期待されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自発光型の表示デバイスでは、画面内の平均表示輝度が高いほど消費電力を多く必要とする。このため、高画質化と低消費電力化の両立が技術課題として考えられている。以下、現在提案されている表示技術の幾つかを例示する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−236520号公報
【特許文献2】特開2002−123240号公報
【特許文献3】特開平9−26837号公報
【0006】
これらの特許文献には、徐々に全体輝度を低下することによりユーザーに違和感を与えることなく消費電力を削減する技術が開示されている。しかし、違和感を与えずに低下できる輝度範囲は限られており、電力の大幅な削減効果は期待できない。また、一方向に輝度を低下するため、視認性が低下する技術課題がある。
【0007】
【特許文献4】特開2001−318650号公報
【0008】
この特許文献には、オーディオ機器に対する特定操作やオーディオ機器の動作状態に連動して表示態様を切り替える技術が開示されている。この表示態様の一つに点滅表示が開示されている。しかし、これらの表示態様は、特定の操作や動作状態が発生しない限り表示されないのに加え、表示期間も一時的である。このため、継続的な省電力効果は期待できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、発明者は、アクティブマトリクス駆動型の自発光表示モジュールで消費される電力を削減する消費電力削減装置として、第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の間における連続的かつ緩やかなピーク輝度の往復変化が一定周期間隔で継続的に繰り返されるように自発光表示モジュールを駆動制御する機能を有するものを提案する。
【発明の効果】
【0010】
発明者の提案する発明の場合、ピーク輝度の変化は連続的かつ緩やかに実行され、しかも高ピーク輝度と低ピーク輝度が繰り返し継続的に出現する。これにより、高ピーク輝度時の視認性と低ピーク輝度時の低消費電力化との両立を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、発明をアクティブマトリクス駆動型の有機ELディスプレイ装置(自発光表示装置)に適用する場合に好適な駆動制御例を説明する。
なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。
また以下に説明する形態例は、発明の一つの形態例であって、これらに限定されるものではない。
【0012】
(A)形態例1
(A−1)有機ELディスプレイ装置の機能構成
図1に、有機ELディスプレイ装置1の機能構成を示す。有機ELディスプレイ装置1は、有機ELパネルモジュール3及び消費電力削減部5で構成される。
有機ELパネルモジュール3は、画素をパネル解像度に応じてマトリクス状に配置した有機ELパネル11とドライバICブロック13で構成される。
【0013】
このうち、有機ELパネル11はカラー表示用であり、画素は発光色別に配置される。ただし、画素が複数色の発光層を積層した構造の有機EL素子の場合、1つの画素が複数の発光色に対応する。
【0014】
図2に、有機ELパネル11を構成する画素構造を示す。画素15は、スイッチ素子T1、キャパシタC、電流ドライブ素子T2、デューティ制御素子T3及び有機EL素子Dで構成される。
【0015】
スイッチ素子T1は、データ線DLに印加された信号電圧VinのキャパシタCへの書き込みを制御するトランジスタである。書き込み許可信号は、走査線ドライバ(ドライバICブロック13)から走査線WLを通じて供給される。
【0016】
キャパシタCは、各画素に対応する信号電圧Vinを1フレームの間保持する記憶素子である。キャパシタCを用いることで、信号電圧Vinの書き込みが線順次に実行される場合でも、面順次走査方式で書き込まれる場合と同様の発光態様が実現される。
【0017】
電流ドライブ素子T2は、キャパシタCに保持されている信号電圧Vinに応じた駆動電流を有機EL素子Dに供給するトランジスタである。ここでの駆動電流値は、電流ドライブ素子T2のゲートソース間に印加される電圧Vgsにより定まる。
【0018】
デューティ制御素子T3は、有機EL素子Dの1フレーム内の点灯時間割合(デューティ)を制御するトランジスタである。デューティ制御素子T3は、有機EL素子Dに対して直列に接続されており、オンオフ制御により有機EL素子Dに対する駆動電流の供給と停止を制御する。
【0019】
なお、デューティ制御素子T3の制御信号は、デューティ制御ドライバ(ドライバICブロック13)からデューティ制御線DTLを通じて供給される。
図3に、デューティ制御信号の信号波形と有機EL素子Dの点灯・非点灯状態との関係を示す。
【0020】
図3(A)は、1フレーム期間を与える垂直同期信号である。図3(B)は、この形態例で使用する点灯時間割合の最小値に対応するデューティ制御信号の波形である。図3(C)は、この形態例で使用する点灯時間割合の最長値に対応するデューティ制御信号の波形である。
【0021】
この形態例の場合、デューティ制御素子T3がPチャネル型のFETであるので、デューティ制御信号のLレベル期間が点灯時間を表し、Hレベル期間が消灯時間を表す。なお、点灯期間長は、1フレーム期間長を100%として表現する。
【0022】
図3に示すデューティ制御信号の場合、最短点灯期間長はy%、最長点灯期間長はx%である。この形態例の場合、点灯時間割合は、x%からy%の範囲で可変制御されることになる。なお、画面輝度は点灯時間長に比例する。従って、点灯時間長の可変制御は、表示画面の物理的なピーク輝度を可変制御するのと同じである。
【0023】
ドライバICブロック13は、データ線DLを駆動するデータ線ドライバと、走査線WLを駆動制御する走査線ドライバと、デューティ制御信号線DTLを駆動するデューティ制御ドライバとで構成される。なお、ドライバICブロック13には、これらドライバに駆動タイミングを与えるタイミングジェネレータも搭載される。
【0024】
データ線ドライバは、水平同期信号に同期したタイミングで書き込み対象である走査線上の各画素の映像信号Vinをデータ線DLに印加する処理を実行する。走査線ドライバは、水平同期信号に同期したタイミングで1ラインずつ走査線に書き込み許可信号を印加する処理を実行する。
【0025】
デューティ制御ドライバは、消費電力削減部5から与えられるデューティ制御信号を有機ELパネル11の駆動に適した電圧レベルに昇圧してデューティ制御信号線DTLに印加する処理を実行する。なお、デューティ制御信号の点灯時間長は、最長点灯時間長x%と最短点灯期間長y%との間で可変制御される。
【0026】
消費電力削減部5は、視認性の確保と消費電力の削減とが両立されるように画面全体のピーク輝度レベル(点灯時間長)を可変制御する処理デバイスである。具体的には、最長点灯期間長x%と最短点灯期間長y%との間で連続的かつ緩やかにピーク輝度レベル(点灯時間長)を可変制御するデューティ制御信号を生成する。
【0027】
もっとも、人に違和感を感じさせない又は人が感じる違和感を軽減するには、表示画像の内容に応じて可変制御幅と可変速度とを最適化することが求められる。
このため、この形態例における消費電力削減部5は、表示内容検出部21、可変条件設定部23及びデューティ制御信号生成部25で構成される。
【0028】
表示内容検出部21は、表示画像の表示内容を検出する処理を実行する。この形態例の場合、表示画像の表示内容は、平均階調値の推移情報と階調値の度数分布(ヒストグラム)情報として検出する。
【0029】
1画素が複数個の単色画素(サブ画素)で構成される場合、表示内容検出部21は、輝度情報(グレー信号)に相当する階調値を算出し、当該階調値に基づいて平均階調値の推移情報と階調値の度数分布(ヒストグラム)情報とを検出する。
【0030】
可変条件設定部23は、平均階調値の推移情報と階調値の度数分布情報とに基づいて、現在の表示内容に適したピーク輝度の可変条件を設定する処理デバイスである。具体的には、可変幅αmax と単位可変時間Taとを設定する。
【0031】
なお、可変幅αmax は、個々の表示システムに固有の最長点灯期間長x%に対応するピーク輝度を100%として与えられる。この際、可変幅αmax は、0<αmax ≦100を満たすように設定される。
【0032】
勿論、可変幅αmax が大きいほどピーク輝度の低下量は大きくなる。ここで、可変幅αmax を0より大きい値に設定するのは、わずかでも輝度低下による消費電力の削減効果を発揮させるためである。
【0033】
一方、単位可変時間Taは、ピーク輝度が可変範囲の最大値から最小値に低下した後、再び元の最大値に戻るまでの1往復時間である。従って、ピーク輝度レベル(デューティ)の可変速度v(単位時間当たりの輝度変化率)は、基本的に2×α/Taを満たすように設定される。
【0034】
図4に、可変幅αmaxと単位可変時間Taのイメージ図を示す。図4に示す折れ線グラフがピーク輝度レベル(すなわち、点灯時間長)の変化を示す。図4の場合、このピーク輝度レベルの変化に対応する画面輝度の変化を、各時点に対応づけた正方形領域の濃度の変化で表している。
【0035】
図4の場合、表示画像が全白画面の場合について表している。ピーク輝度レベルの低下に伴い正方形領域は濃い色に変化し、ピーク輝度レベルの増加に伴い正方形領域は薄い色に変化する様子が分かる。
【0036】
なお、ピーク輝度の変化は、図4に示すように、必ずしも直線である必要はない。ただし、視認性を劣化させないように同じ可変動作を単位可変時間Ta毎に繰り返すことが望まれる。
また、視認性を著しく悪化させない範囲で時間軸方向の左右に多少ずれていても良い。
【0037】
次に、表示内容に応じて最適な可変幅αmax と単位可変時間Taの設定例を説明する。図5に、表示内容と好ましい可変動作とのおおよその関係を示す。なお図5は、どのような可変動作がユーザーにとって違和感を与えないかの観点から表している。
【0038】
一般的に言えば、人はじっくり見ようとしている対象物の表示状態に変化が生じると、大きな違和感と共にストレスを感じる。また逆に、一瞬で状態を把握でき、じっくり見続ける必要のない内容であれば、単調な変化の繰り返し程度であれば表示状態が変化してもあまりストレスを感じない。
【0039】
従って、人が表示画面を注視していないことを認識できるのであれば、表示状態(ピーク輝度レベル)を可変することが可能となる。このような表示状態の場合、一般には、ピーク輝度レベルの大幅な低下や表示自体の停止が選択されることが多い。しかし、画面に再度視線を戻した際に表示が消えていると、人はストレス感じてしまう。
【0040】
このような場合にこそ、表示画面のピーク輝度レベルを周期的に増減駆動する手法が効果を発揮する。ピーク輝度が低下した時点の視認性は、通常表示の状態(ピーク輝度が高い状態)に比較して多少落ちるが、依然として画面上には画像が表示されているので、再び視線を戻した際のストレスは小さく済む。
【0041】
表示内容の確認後、注視する状態に戻るかそのまま放置しておくかも決められる。電力が不安であれば、次第に明の状態より暗の状態の期間を増やしていくような増減駆動の選択も有効である。
【0042】
このような観点から、この形態例では、ピーク輝度レベルを緩やかかつ連続的に増減駆動することにより、ユーザーに与える違和感の軽減効果と消費電力の低減効果とを実現する。
【0043】
図5は、表示内容を静止画と動画に大別して表している。一般的に、表示画像が静止画像の場合、人は必要な時のみ表示画面に注視すれば又は一時的に注視できればストレスを感じない傾向が高い。一方、動画像の場合、人は映像の動きを常に注視し続ける傾向が高い。
【0044】
可変条件設定部23は、この静止画像と動画像の違いを平均階調値の推移情報に基づいて判定する。具体的には、平均階調値の変化が多い場合又は大きい場合、可変条件設定部23は、表示画像が動画像であると判定し、平均階調値の変化が少ない場合又は小さい場合、可変条件設定部23は、表示画像が静止画像であると判定する。
【0045】
ただし、静止画像か動画像かを判定するだけでは、適切な可変条件を決定することはできない。
そこで、この形態例では、階調値の度数分布情報を利用する。
【0046】
すなわち、可変条件設定部23は、多くの階調成分が含まれる表示画像であるか、ある階調範囲に階調値が集中的に現れる表示画像であるかを可変条件の決定に使用する。
【0047】
多くの階調成分が含まれる表示画像には、写真、テレビジョン番組、映画等がある。これらの表示画面の場合、利用人は、映像を注視し続ける可能性が高い。
【0048】
一方、ある階調範囲に階調値が集中的に現れる表示画像には、時刻や日付けや単純メッセージ、機器の動作状態等がある。これらの表示画面の場合、利用者は、次のアクションを起こすための判断材料として情報を入手した後は表示内容を注視し続けることが少ない傾向がある。
【0049】
なお、写真、コンピュータ作業画面その他の多くの階調成分を含む静止画像(階調成分が分散的)の場合には、度数分布が分散的であったとしても、一定期間以上表示内容の更新がなければ、利用者が表示画面を注視し続けていない可能性が高い。
【0050】
そこで、可変条件設定部23は、平均階調値についての判定結果と度数分布についての判定結果の組み合わせにより、図6に示す4通りの可変条件のいずれかを選択する。
【0051】
例えば平均階調値の変化が検出され、かつ、度数分布が分散的である場合、可変条件設定部23は、人が注視している可能性が高い表示画像であると判定する。
【0052】
この場合、人の違和感の軽減を重視し、なるべく輝度変化が視認させないように可変条件を設定する。すなわち、可変条件設定部23は、可変幅αmax を小さい値に設定するとともに、単位可変時間Taを長い値(変化速度がなるべく緩やかになるように)設定する。
【0053】
その他の場合、可変条件設定部23は、人が注視していない可能性が高い表示画像であると判定する。この場合、消費電力の削減を重視するように可変条件を設定する。すなわち、可変条件設定部23は、可変幅αmax を大きい値に設定するとともに、単位可変時間Taを短く設定する。
【0054】
一般に、可変幅αmax を小さい値に設定する場合、数%程度の値を設定する。一方、可変幅αmax を大きい値に設定する場合、100%近くの値を設定する。数%でも設定するのは、消費電力の削減効果を必ず発揮させるためである。
【0055】
また、単位可変時間Taを短い値に設定する場合、数秒程度の値を設定する。一方、単位可変時間Taを長い値に設定する場合、数秒〜数十秒程度の値を設定する。
なお、可変幅αmax や単位可変時間Taについては、システムの評価段階における実際の動作を見て適宜決定する。
【0056】
デューティ制御信号生成部25は、設定された可変幅αmax と単位可変時間Taに基づいて各フレームで使用する輝度低下率αを発生する処理と、発生された輝度低下率αを点灯時間長に変換する処理とを実行する処理デバイスである。なお、デューティ制御信号生成部25で実行される処理の一方又は両方は、ドライバICブロック13内で実行しても良い。
【0057】
各フレームに対応する輝度低下率αは、可変幅αmax と単位可変時間Taに基づいて決定される。すなわち、各フレームに対応する輝度低下率αは、可変幅αmax と単位可変時間Taで確定する可変速度v(単位時間当たりの変化率)に基づいて図4に示す遷移関係を満たすように決定される。
【0058】
なお、輝度低下率αの可変範囲は0以上αmax 以下である。
輝度低下率αが求まれば、各フレームで使用する点灯時間長yは、y=x・(100−α)/100 )で与えられる変換式により求めることができる。
【0059】
(A−2)処理動作の内容
図7に、消費電力削減部5で実行される処理動作の実行手順例を示す。この処理動作例の場合、度数分布についての判定処理が先に実行される。
まず、消費電力削減部5の表示内容検出部21は、表示画像データを逐次入力し、平均階調値とその度数分布を検出する(S1)。
【0060】
平均階調値とその度数分布は、可変条件設定部23に与えられる。図7の場合、可変条件設定部23は、まず度数分布が偏っているか否か(集中的か否か)を判定する(S2)。
偏っていると判定された場合、可変条件設定部23は、可変幅αmax を大きい値に設定し、単位可変時間Taを短い値に設定する(S3)。
【0061】
一方、分散的であると判定された場合、可変条件設定部23は、平均階調値に一定期間以上変化がないか否かを判定する(S4)。
一定期間以上、平均階調値に変化がなかった場合、可変条件設定部23は、可変幅αmax
を大きい値に設定し、単位可変時間Taを短い値に設定する(S5)。
【0062】
一方、平均階調値の変化が検出された場合、可変条件設定部23は、可変幅αmax を小さい値に設定し、単位可変時間Taを長い値に設定する(S6)。図8に、判定結果と可変条件の対応関係を示す。
【0063】
このようにピーク輝度(点灯時間長)の可変条件が確定すると、デューティ制御信号生成部25は、設定された可変条件を満たすようにデューティ制御信号を生成する(S7)。
【0064】
すなわち、単位可変時間Ta内に点灯時間長が、図3(B)及び(C)間で往復的に変化するようにデューティ制御信号を発生する。具体的には、単位可変時間Ta内に点灯時間長が、最長点灯期間長x%からx・(100−αmax )/100 %に低下した後、再び最長点灯期間長x%まで戻るようなデューティ制御信号を生成する。
【0065】
(A−3)形態例の効果
以上説明したように、形態例に係る消費電力削減部5を適用することにより、人に与える違和感を軽減しながら、表示画面の全体輝度を増減制御できる。すなわち、システム設定時に規定された本来のピーク輝度(最長点灯期間Taの場合)により表示内容の視認性を確保しつつも、ピーク輝度の低下により消費電力の削減効果を実現できる。
【0066】
ある長い期間で見ると、システム本来のピーク輝度による視認性の確保と消費電力の低減効果との両立を実現できる。
また、輝度低下量(可変幅αmax )と単位可変時間Taは、表示画像の内容に最適化されるため、ピーク輝度制御が人に与える違和感を一段と軽減することができる。
【0067】
実際、形態例で説明した消費電力削減部5の場合には、一定期間以上表示内容の更新が無い状況でも、従来手法のように表示輝度を極端に下げたり、画面表示自体を消すことがないので、利用者が何気なく視線を画面上に戻した場合にも画面上で表示内容を把握することができ、利用者に与えるストレス感を軽減することができる。
【0068】
また、消費電力の低減により、バッテリー動作機器の動作時間を長くすることができるのに加え、ACコンセントから電源の供給を受ける電子機器であれば電気代を節約できる。
【0069】
(B)他の形態例
(B−1)消費電力削減部の他の処理動作例
前述の形態例においては、可変条件設定部23がまず最初に度数分布の偏りを判定する場合について説明した。
【0070】
しかし、平均階調値に一定時間内に変化があったか否かの判定を先に実行しても良い。
図9に、この場合に対応する処理動作の実行手順例を示す。この場合も、消費電力削減部5の表示内容検出部21は、表示画像データを逐次入力し、平均階調値とその度数分布を検出する(S11)。
【0071】
平均階調値とその度数分布は、可変条件設定部23に与えられる。可変条件設定部23は、平均階調値に一定期間以上変化がないか否かを判定する(S12)。
一定期間以上、平均階調値に変化がなかった場合、可変条件設定部23は、可変幅αmax
を大きい値に設定し、単位可変時間Taを短い値に設定する(S13)。
【0072】
一方、平均階調値の変化が検出された場合、可変条件設定部23は、度数分布が偏っているか否か(集中的か否か)を判定する(S14)。
偏っていると判定された場合、可変条件設定部23は、可変幅αmax を大きい値に設定し、単位可変時間Taを短い値に設定する(S15)。
【0073】
一方、分散的であると判定された場合、可変条件設定部23は、可変幅αmax を小さい値に設定し、単位可変時間Taを長い値に設定する(S16)。図10に、判定結果と可変条件の対応関係を示す。
【0074】
この後は、ピーク輝度(点灯時間長)の可変条件が確定すると、デューティ制御信号生成部25は、設定された可変条件を満たすようにデューティ制御信号を生成する(S17)。このように、平均階調値についての判定処理と度数分布についっての判定処理はいずれを先に実行しても良い。
【0075】
(B−2)ピーク輝度の変化波形
前述の形態例においては、図4に示すように、輝度低下率αが可変幅αmax の範囲で直線的かつ連続的に変化する場合について説明した。
しかし、輝度低下率αの変化は連続的であれば、必ずしも直線的である必要はない。例えばコサイン曲線その他の曲線形状でも良い。
【0076】
また、前述の形態例の場合には、輝度低下率αが最大値(可変幅αmax )又は最小値(0)に達すると同時に変化方向を反転する場合について説明した。
しかし、輝度変化率αは、最大値(可変幅αmax )や最小値(0)に一定期間留まった後、変化方向を反転するように動作しても良い。
【0077】
また、単位可変時間Ta内に、輝度低下率αが最小値(0)から最大値(可変幅αmax
)に連続的に変化する制御と、輝度低下率αが最大値(可変幅αmax )から最小値(0)に連続的に変化する制御とが繰り返し実行されれば、輝度低下率αの増加に割り当てられる期間と低下に割り当てられる期間とは必ずしも同じ長さである必要はない。
【0078】
(B−3)可変条件の他の設定方法
前述した形態例においては、表示画像の内容を反映する平均階調値及び度数分布を表示画像データより検出し、この検出結果に基づいて可変条件(可変幅αmax 及び単位可変時間Ta)を設定する場合について説明した。
【0079】
しかし、可変条件の一部又は全部を、アプリケーションの内容に応じて外部から設定しても良い。すなわち、可変幅αmax 及び単位可変時間Taの両方又は一方を外部から設定しても良い。なお、一方だけが外部から設定される場合、残る一方の可変条件は、形態例の説明と同様、表示画像データについての検出結果に基づいて設定すれば良い。
【0080】
(a)装置例1
図11に、アプリケーション情報が外部から与えられる場合の形態例を示す。なお、図11には図1との対応部分に同一符号を付して示す。
図11に示す有機ELディスプレイ装置31は、有機ELパネルモジュール3及び消費電力削減部33で構成される。
【0081】
消費電力削減部33は、可変条件設定部35及びデューティ制御信号生成部25で構成される。可変条件設定部35には図5に対応するテーブルが格納されている。可変条件設定部35は、このテーブルを使用し、アプリケーション情報に対応する可変条件を読み出してデューティ制御信号生成部25に出力する。例えば表示内容がテレビジョン番組であれば小さい可変幅αmax と長い単位可変時間Taとを設定する。
【0082】
なお、コンピュータ等の作業画面や写真の表示時に、アプリケーション情報として画面の切り替え情報が通知されない場合には、形態例の説明と同様に、表示画像データの平均階調値に基づいて可変条件を切り替え制御する仕組みを採用すれば良い。
【0083】
(b)装置例2
図12に、可変条件情報が外部から与えられる場合の形態例を示す。なお、図12には図1との対応部分に同一符号を付して示す。
図12に示す有機ELディスプレイ装置41は、有機ELパネルモジュール3及び消費電力削減部43で構成される。
【0084】
消費電力削減部43は、デューティ制御信号生成部25だけで構成すれば良い。この場合、デューティ制御信号生成部25は、外部から与えられた可変条件(可変幅αmax と単位可変時間Ta)に応じたデューティ制御信号を生成する。
【0085】
(c)その他
前述の形態例においては、可変幅αmax と単位可変時間Taのそれぞれについて設定可能な値が2種類である場合について説明した。しかし、3種類以上の中から設定できるようにしても良い。
【0086】
(B−4)製品例
(a)ドライブIC
前述した有機ELディスプレイ装置(有機ELパネルモジュール及び消費電力削減部)は、いずれも1つのパネル上に形成することもできるが、処理回路部分と画素マトリクスとを別々に製造し、流通することもできる。
【0087】
例えば、ドライバICブロックや消費電力削減部はそれぞれ独立したドライブIC(integrated
circuit)として製造し、有機ELパネルとは独立に流通することもできる。勿論、ドライバICブロックと消費電力削減部とで1つのドライブICを構成することもできる。
【0088】
(b)表示モジュール
前述した形態例における有機ELディスプレイ装置は、図13に示す外観構成を有する表示モジュール51の形態で流通することもできる。
表示モジュール51は、支持基板55の表面に対向部53を貼り合わせた構造を有している。対向部53は、ガラスその他の透明部材を基材とし、その表面にはカラーフィルタ、保護膜、遮光膜等が配置される。
【0089】
なお、表示モジュール51には、外部から支持基板55に信号等を入出力するためのFPC(フレキシブルプリントサーキット)57等が設けられていても良い。
【0090】
(c)電子機器
前述した形態例における有機ELディスプレイ装置は、電子機器に実装された商品形態でも流通される。
図14に、電子機器61の概念構成例を示す。電子機器61は、前述した有機ELディスプレイ装置1(31、41)及びシステム制御部63で構成される。システム制御部63で実行される処理内容は、電子機器61の商品形態により異なる。
【0091】
なお、電子機器61は、機器内で生成される又は外部から入力される画像や映像を表示する機能を搭載していれば、特定の分野の機器には限定されない。
この種の電子機器61には、例えばテレビジョン受像機が想定される。図15に、テレビジョン受像機71の外観例を示す。
【0092】
テレビジョン受像機71の筐体正面には、フロントパネル73及びフィルターガラス75等で構成される表示画面77が配置される。表示画面77の部分が、形態例で説明した有機ELディスプレイ装置に対応する。
【0093】
また、この種の電子機器61には、例えばデジタルカメラが想定される。図16に、デジタルカメラ81の外観例を示す。図16(A)が正面側(被写体側)の外観例であり、図16(B)が背面側(撮影者側)の外観例である。
【0094】
デジタルカメラ81は、撮像レンズ(図16は保護カバー83が閉じた状態であるので、保護カバー83の裏面側に配置される。)、フラッシュ用発光部85、表示画面87、コントロールスイッチ89及びシャッターボタン91で構成される。このうち、表示画面87の部分が、形態例で説明した有機ELディスプレイ装置に対応する。
【0095】
また、この種の電子機器61には、例えばビデオカメラが想定される。図17に、ビデオカメラ101の外観例を示す。
ビデオカメラ101は、本体103の前方に被写体を撮像する撮像レンズ105、撮影のスタート/ストップスイッチ107及び表示画面109で構成される。このうち、表示画面109の部分が、形態例で説明した有機ELディスプレイ装置に対応する。
【0096】
また、この種の電子機器61には、例えば携帯端末装置が想定される。図18に、携帯端末装置としての携帯電話機111の外観例を示す。図18に示す携帯電話機111は折りたたみ式であり、図18(A)が筐体を開いた状態の外観例であり、図18(B)が筐体を折りたたんだ状態の外観例である。
【0097】
携帯電話機111は、上側筐体113、下側筐体115、連結部(この例ではヒンジ部)117、表示画面119、補助表示画面121、ピクチャーライト123及び撮像レンズ125で構成される。このうち、表示画面119及び補助表示画面121の部分が、形態例で説明した有機ELディスプレイ装置に対応する。
【0098】
また、この種の電子機器61には、例えばコンピュータが想定される。図19に、ノート型コンピュータ131の外観例を示す。
ノート型コンピュータ131は、下型筐体133、上側筐体135、キーボード137及び表示画面139で構成される。このうち、表示画面139の部分が、形態例で説明した有機ELディスプレイ装置に対応する。
【0099】
これらの他、電子機器61には、オーディオ再生装置、ゲーム機、電子ブック、電子辞書等が想定される。
【0100】
(B−5)他の表示デバイス例
形態例の説明においては、消費電力削減部を有機ELディスプレイ装置に搭載する場合について説明した。
しかし、消費電力削減部は、その他の自発光表示装置にも適用することができる。例えば無機ELディスプレイ装置、LEDを配列する表示装置、FEDディスプレイ装置やPDPディスプレイ装置等にも適用できる。
【0101】
(B−6)制御デバイス構成
前述の説明では、消費電力削減部をハードウェア的に実現する場合について説明した。
しかし、消費電力削減部の一部又は全部は、ソフトウェア処理として実現することができる。
【0102】
(B−7)その他
前述した形態例には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられる。また、本明細書の記載に基づいて創作される又は組み合わせられる各種の変形例及び応用例も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】有機ELディスプレイ装置の機能構成例を示す図である。
【図2】画素構造を説明する図である。
【図3】デューティ制御信号の波形を説明する図である。
【図4】可変幅αmaxと単位可変時間Taの関係を説明する図である。
【図5】アプリケーションの内容と望ましい可変条件との関係を説明する図である。
【図6】平均階調値と度数分布の判定結果と可変条件との対応関係を示す図である。
【図7】消費電力の削減処理を実現する処理動作例を示す図である。
【図8】判定結果と可変条件との対応関係を示す図である。
【図9】消費電力の削減処理を実現する他の処理動作例を示す図である。
【図10】判定結果と可変条件との対応関係を示す図である。
【図11】有機ELディスプレイ装置の他の機能構成例を示す図である。
【図12】有機ELディスプレイ装置の他の機能構成例を示す図である。
【図13】表示モジュールの構成例を示す図である。
【図14】電子機器の機能構成例を示す図である。
【図15】電子機器の商品例を示す図である。
【図16】電子機器の商品例を示す図である。
【図17】電子機器の商品例を示す図である。
【図18】電子機器の商品例を示す図である。
【図19】電子機器の商品例を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
1 有機ELディスプレイ装置
5 消費電力削減部
21 表示内容検出部
23 可変条件設定部
25 デューティ制御信号生成部
31 有機ELディスプレイ装置
33 消費電力削減部
35 可変条件設定部
41 有機ELディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブマトリクス駆動型の自発光表示モジュールで消費される電力を削減する消費電力削減装置において、
第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の間における連続的かつ緩やかなピーク輝度の往復変化が一定周期間隔で継続的に繰り返されるように自発光表示モジュールを駆動制御する
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項2】
請求項1に記載の消費電力削減装置は、
フレーム内の発光期間割合の可変制御によりピーク輝度を変更する
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項3】
請求項1に記載の消費電力削減装置は、
ピーク輝度の往復変化の周期間隔を、人の感覚で十分認知できる速度に設定する
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項4】
請求項1に記載の消費電力削減装置において、
前記ピーク輝度の往復変化の周期間隔は、アプリケーションの内容に応じて外部から設定される
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項5】
請求項1に記載の消費電力削減装置において、
前記ピーク輝度の往復変化の周期間隔は、表示画像データより検出される階調情報に基づいて設定される
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項6】
請求項5に記載の消費電力削減装置は、
表示画像データより検出される平均階調値と階調値の度数分布情報とに基づいて往復変化の周期間隔を設定する
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項7】
請求項1に記載の消費電力削減装置において、
前記第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の差分を与える輝度変化幅は、アプリケーションの内容に応じて外部から設定される
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項8】
請求項1に記載の消費電力削減装置において、
前記第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の差分を与える輝度変化幅は、表示画像データより検出される階調情報に基づいて設定される
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項9】
請求項8に記載の消費電力削減装置は、
表示画像データより検出される平均階調値と階調値の度数分布情報とに基づいて前記輝度変化幅の大きさを設定する
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項10】
請求項1に記載の消費電力削減装置は、
表示画像が静止画像の場合、前記第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の差分を与える輝度変化幅を大きい値に設定すると共に、前記往復変化の周期間隔を短い値に設定する
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項11】
請求項1に記載の消費電力削減装置は、
表示画像が動画像である場合において、階調値の度数分布が分散しているとき、前記第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の差分を与える輝度変化幅を小さい値に設定すると共に、前記往復変化の周期間隔を長い値に設定する
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項12】
請求項1に記載の消費電力削減装置は、
表示画像が動画像である場合において、階調値の度数分布がある階調範囲に偏っているとき、前記第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の差分を与える輝度変化幅を大きい値に設定すると共に、前記往復変化の周期間隔を短い値に設定する
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項13】
請求項1に記載の消費電力削減装置は、
階調値の度数分布がある階調範囲に偏っている場合、前記第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の差分を与える輝度変化幅を大きい値に設定すると共に、前記往復変化の周期間隔を短い値に設定する
ことを特徴とする消費電力削減装置。
【請求項14】
アクティブマトリクス駆動型の画素構造を有する自発光表示モジュールと、
第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の間における連続的かつ緩やかなピーク輝度の往復変化が一定周期間隔で継続的に繰り返されるように自発光表示モジュールを駆動制御する消費電力削減部と
を有することを特徴とする自発光表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の自発光表示装置において、
各画素がエレクトロルミネセンス素子で構成される
ことを特徴とする自発光表示装置。
【請求項16】
アクティブマトリクス駆動型の画素構造を有する自発光表示モジュールと、
第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の間における連続的かつ緩やかなピーク輝度の往復変化が一定周期間隔で継続的に繰り返されるように自発光表示モジュールを駆動制御する消費電力削減部と、
システム制御部と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項17】
アクティブマトリクス駆動型の自発光表示モジュールで消費される電力を削減する消費電力削減方法において、
第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の間における連続的かつ緩やかなピーク輝度の往復変化が一定周期間隔で継続的に繰り返されるように各時点におけるピーク輝度制御信号を生成する処理と、
生成されたピーク輝度制御信号に基づいて自発光表示モジュールを駆動制御する処理と
を有することを特徴とする消費電力削減方法。
【請求項18】
アクティブマトリクス駆動型の自発光表示モジュールで消費される電力の削減を制御するコンピュータに、
第1のピーク輝度と第2のピーク輝度の間における連続的かつ緩やかなピーク輝度の往復変化が一定周期間隔で継続的に繰り返されるように各時点におけるピーク輝度制御信号を生成する処理と、
生成されたピーク輝度制御信号に基づいて自発光表示モジュールを駆動制御する処理と
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図4】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−170824(P2008−170824A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5264(P2007−5264)
【出願日】平成19年1月14日(2007.1.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】