説明

消防用ホース

【解決手段】 たて糸とよこ糸とを筒状に織成したジャケットの内面に、柔軟なゴム又は合成樹脂のライニングを形成してなる消防用ホースにおいて、前記ジャケットの外面に、ゴム又は合成樹脂のエマルジョンにベントナイト及び発泡剤を添加した樹脂液を塗布し、加熱乾燥したものである。
【効果】 本発明によれば、樹脂液に配合されたベントナイトの作用により高いチキソトロビー性を有しており、ゴム又は合成樹脂成分が繊維の間に浸透することが少なく、ジャケットが硬くなることがないと共に、ジャケットの表面に付着した樹脂が発泡剤により発泡して表面加工の厚みを増し、摩擦抵抗を増大するので、ジャケット同士が滑りにくく、消防用ホースに巻き崩れが生じにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたて糸とよこ糸とを筒状に織成したジャケットの内面に柔軟なゴム又は合成樹脂のライニングを形成してなる消防用ホースに関するものであって、特にそのジャケットの外面に表面加工を施した消防用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
消防用ホースは通常、筒状のジャケットの内面にゴム又は合成樹脂のライニングを施したものが使用されており、また一部ではそのジャケットを保護して外相を防ぐためにゴム又は合成樹脂の表面加工を施したものも使用されている。
【0003】
一方消防用ホースのジャケットは、前述のようにたて糸とよこ糸とを織成した筒状の織物であるので、そのジャケット同士は滑りやすい。
【0004】
消防用ホースはその収納時はコイル状に巻いた状態で収納され、火災現場ではそのコイル状の消防用ホースを担いだり抱えたりして搬送するのであるが、ジャケット同士が滑るとコイルの中心部が抜けて巻き崩れが生じ、火災現場において迅速な消火活動に支障をきたす。
【0005】
特に近年、ジャケットのたて糸及びよこ糸に全て長繊維糸を使用した、軽く柔軟な消防用ホースが多く使用されるようになっているが、長繊維糸はスパン糸に比べて滑りやすいため、長繊維糸のみよりなるものはさらにジャケットが滑りやすくなり、巻き崩れが生じる可能性が高くなっている。
【0006】
消防用ホースに表面加工を施すことにより、ジャケット同士の摩擦抵抗を増大させ、ジャケットが滑ってコイルが巻き崩れるのを防止して、消防用ホースの取り扱い性を向上させることを目的の一つとした発明として、実開昭62−151491号公報及び、特開昭62−220322号公報に記載されたものがある。
【0007】
前記実開昭62−151491号公報に記載されたものは、合成繊維の長繊維糸を筒状に織成したジャケットの内面にゴム又は合成樹脂のライニング層を形成してなる消防用ホース本体の表面に無機物質粉末とゴム又は合成樹脂とよりなる皮膜層を形成してなるものであり、特開昭62−220322号公報の発明はこの消防用ホースを製造する方法に関するものである。
【0008】
しかしながらこのように消防用ホースに表面加工を施すと、ゴム又は合成樹脂がジャケットの繊維の間に含浸するため、繊維の融通性が阻害され、消防用ホースが硬く且つ重くなり、取り扱い性が悪くなる。前記従来例の発明のものはこの点も改良されているが、それでも十分なものとは言えない。
【0009】
また前記従来の発明は、無機物質粉末により摩擦抵抗を増大して滑りにくくしているのであるが、一方では消防用ホースが硬くなることによりジャケットの接触面積が減少するため、かえって滑りやすくなることもあり、消防用ホースの巻き崩れを十分に防止することができない。
【特許文献1】実開昭62−151491号公報
【特許文献2】特開昭62−220322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、表面加工の樹脂液の配合を改良することにより、消防用ホースが硬くなるのを防止し、さらに取り扱い性を改善することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
而して本発明の消防用ホースは、たて糸とよこ糸とを筒状に織成したジャケットの内面に、柔軟なゴム又は合成樹脂のライニングを形成してなる消防用ホースにおいて、前記ジャケットの外面に、ゴム又は合成樹脂のエマルジョンにベントナイト及び発泡剤を添加した樹脂液を塗布し、加熱乾燥したことを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、樹脂液における前記ベントナイトの配合量が、固形分として0.2〜1重量%であることが好ましい。また前記樹脂液の粘度は、B型粘度計で10〜40であることが好ましい。
【0013】
また前記発泡剤は、内部に液状ガスを封入したプラスチック微小球体であって、加熱により前記液状ガスが気化して球体が膨張するものであることが好ましく、その配合量は、2〜10重量%とするのが適当である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂液に配合されたベントナイトの作用により高いチキソトロビー性を有しており、ゴム又は合成樹脂成分が繊維の間に浸透することが少なく、ジャケットが硬くなることがないと共に、ジャケットの表面に付着した樹脂が発泡剤により発泡して表面加工の厚みを増し、摩擦抵抗を増大するので、ジャケット同士が滑りにくく、消防用ホースに巻き崩れが生じにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明はジャケットの内面にライニングを形成した消防用ホースにおいて、ジャケットの外面に、ゴム又は合成樹脂のエマルジョンにベントナイト及び発泡剤を添加した樹脂液を塗布したものである。
【0016】
前記ジャケットは、たて糸とよこ糸とを筒状に織成した筒状織物である。そのジャケットを形成する糸条は特に限定されるものではないが、たて糸及びよこ糸が共に長繊維糸である場合に、本願発明は特に有効である。またジャケットの内面形成されるライニングは、通常消防用ホースのライニングとして使用される柔軟なゴム又は合成樹脂をそのまま適用することができる。
【0017】
またジャケットにライニングを形成する方法は種々の方法が提案されているが、そのいずれの方法によるものであってもよい。またジャケットにライニングを形成した後にその消防用ホースに表面加工を施すこともでき、また予め表面加工を施したジャケットにライニングを形成しても差し支えない。
【0018】
樹脂液を構成するのはゴム又は合成樹脂のエマルジョンであるが、そのゴム又は合成樹脂の素材は特に限定されるものではない。天然ゴム、SBR、NBR、CR、BR、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂など、通常消防用ホースの表面下降に使用されるゴム又は合成樹脂のエマルジョンを使用することができる。
【0019】
そして本発明においては、その樹脂液にベントナイト及び発泡剤が添加される。ベントナイトはモンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物であって、その微細構造は薄層が積層された構造を有しており、これをエマルジョンに分散させることにより、高いチキソトロビー性が得られる。
【0020】
すなわち樹脂液がジャケットに塗布されるまでは粘度が低く流動性に富んでおり、その樹脂液がジャケットに塗布されると、ベントナイトの薄層がジャケットの表面を覆って急速に粘度が上昇し、樹脂液が繊維の間に浸透するのを阻止する。従って樹脂液は繊維間に浸透することなくジャケットの表面にのみ付着して皮膜を形成し、消防用ホースが硬くなることがないのである。
【0021】
樹脂液における前記ベントナイトの配合量は、固形分として0.2〜1重量%とするのが適当である。ベントナイトは通常5%程度のサスペンジョンとして供給されるので、それを4〜20%配合するのが適当である。また前記樹脂液の粘度は、B型粘度計で10〜40とするのが適当である。
【0022】
前記樹脂液に配合する発泡剤としては、その内部に液状ガスを封入したプラスチック微小球体であって、加熱により前記液状ガスが気化して球体が膨張するものを使用するのが好ましい。
【0023】
かかる発泡剤としては、例えばエクスパンセル(スウェーデンエクスパンセル社製)がある。エクスパンセルは、ガスバリアー性を有する直径10〜17μのプラスチック球体内に、液状炭化水素を内包したものであって、過熱することにより前記液状炭化水素が気化し、球体が膨張してその体積を数十倍に増加するものである。樹脂液におけるかかる発泡剤の配合量は、2〜10重量%が適当である。
【0024】
本発明においてジャケット又は消防用ホースに樹脂液を塗布する方法は、特に限定されないが、通常消防用ホースの表面加工に使用されるディッピングによるのが適当である。また塗布した樹脂液を乾燥させるのは、前記発泡剤を発泡させる必要があるので、加熱乾燥によるべきである。
【0025】
本発明においては、ジャケット又に樹脂液を塗布することにより、前述のようにベントナイトの作用によって樹脂液がチキソトロピー性を生じて粘度が高くなり、樹脂液が繊維の間に浸透することなく、ジャケットの表面にゴム又は合成樹脂の成分が付着し、皮膜を形成する。
【0026】
この状態で樹脂液の皮膜を加熱乾燥することにより、樹脂液中に含まれていた発泡剤が体積を増すと共に、樹脂液の水分が蒸発して乾燥し、ジャケットの表面に厚い皮膜層が形成され、表面加工となるのである。
【0027】
そして本発明によれば、樹脂液が繊維の間に浸透することなく、ジャケットの表面にのみ皮膜層を形成するので、消防用ホースの剛性が増すことがなく、柔軟な消防用ホースとなる。
【0028】
また本発明により得られた表面加工は、ジャケットの表面にのみ厚く形成され、また消防用ホースが柔軟であるので、消防用ホースをコイル状に巻いたときにジャケット表面の皮膜層同士が密着し、高い摩擦抵抗を生じて滑ることがない。
【実施例】
【0029】
消防用ホースとして、1100texのポリエステル長繊維糸を2本撚り合わせた糸条を2本引き揃えたものをたて糸として244本使用し、1100texのポリエステル長繊維糸を4本より合わせた糸条をよこ糸として、10cm間に54本打ち込んで筒状に織成してジャケットとし、その内面に厚さ0.3〜0.5mmのポリウレタンのライニングを形成したものを使用した。
【0030】
樹脂液としては、アクリル樹脂のエマルジョン(固形分濃度50%)を主成分とし、それにベントナイトサスペンジョン(固形分濃度5%)及び、発泡剤としてエクスパンセルを配合した。配合の組成は表1に示す。なお表1における配合のパーセンテージの残余の部分は水である。
【0031】
而して前記消防用ホースを前記樹脂液に浸漬し、それを樹脂液から引き上げた後余分の樹脂液をローラーでこそぎ落とし、次いで90℃の加熱炉に導入して10分間加熱乾燥した。
【0032】
前記樹脂液の粘度(cp、B型粘度計)、樹脂液の消防用ホースへの付着量(g/m)、得られた表面加工消防用ホース同士の動摩擦係数及び、ホースの剛性比(45°カンチレバー法、無加工品を1とする)を測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1からも理解できるように、消防用ホースの硬さは無加工品よりは硬くなるものの、単にアクリル樹脂エマルジョンを塗布した配合1及び配合2に比べると、アクリル樹脂エマルジョンの量が同じであっても、剛性比が低く、柔軟である。
【0035】
そして摩擦係数は、ベントナイトサスペンジョン又は発泡剤としてのエクスパンセルを単独で添加したもの及び添加しないものにおいては、摩擦係数は無加工品よりも低く、滑りやすいが、本発明はそれらに比べて摩擦係数が大幅に大きくなっており、滑りにくいものであることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たて糸とよこ糸とを筒状に織成したジャケットの内面に、柔軟なゴム又は合成樹脂のライニングを形成してなる消防用ホースにおいて、前記ジャケットの外面に、ゴム又は合成樹脂のエマルジョンにベントナイト及び発泡剤を添加した樹脂液を塗布し、加熱乾燥したことを特徴とする、消防用ホース
【請求項2】
樹脂液における前記ベントナイトの配合量が、固形分として0.2〜1重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の消防用ホース
【請求項3】
前記樹脂液の粘度が、B型粘度計で10〜40であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の消防用ホース
【請求項4】
前記発泡剤が、内部に液状ガスを封入したプラスチック微小球体であって、加熱により前記液状ガスが気化して球体が膨張するものであることを特徴とする、請求項1に記載の消防用ホース
【請求項5】
樹脂液における前記発泡剤の配合量が、2〜10重量%であることを特徴とする、請求項4に記載の消防用ホース

【公開番号】特開2008−272272(P2008−272272A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120384(P2007−120384)
【出願日】平成19年4月28日(2007.4.28)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】