消音システムにおける騒音検出手段の位置決定方法
【課題】三次元閉空間に配置される騒音発生源から発生する騒音を良好に消音するのに、ANC技術を充分に生かせる第2騒音検出手段の位置決定方法を得る。
【解決手段】ANC技術を地下室等の三次元閉空間で適用するに、騒音発生源から発生する騒音のレベルが高い高音圧レベル周波数を複数求め、その複数の高音圧レベル周波数の音それぞれについて、三次元閉空間内において波動音響解析を実行し、三次元閉空間の音響状態を推定し、定在波の腹部で、三次元閉空間の音圧レベルが、空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記第2騒音検出手段を配置する第2位置とする。
【解決手段】ANC技術を地下室等の三次元閉空間で適用するに、騒音発生源から発生する騒音のレベルが高い高音圧レベル周波数を複数求め、その複数の高音圧レベル周波数の音それぞれについて、三次元閉空間内において波動音響解析を実行し、三次元閉空間の音響状態を推定し、定在波の腹部で、三次元閉空間の音圧レベルが、空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記第2騒音検出手段を配置する第2位置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音発生源から発生する騒音を、第1位置に配置される第1騒音検出手段で検出するとともに、前記第1位置とは異なった第2位置に配置される第2騒音検出手段により検出し、前記第1騒音検出手段により検出される第1騒音情報及び前記第2騒音検出手段により検出される第2騒音情報に基づいて2次音源から制御音を発生して少なくとも前記第2位置で消音する消音システムにおける、前記2次音源又は第2騒音検出手段の位置決定方法に関し、さらに詳細には、三次元閉空間内で共鳴によって増大することがある低周波騒音を低減する消音技術に関する。
【背景技術】
【0002】
低周波騒音(100Hz以下の騒音)は吸音、遮音の効果が小さく、吸音処理、遮音処理ではその消音が困難である。これに対して、逆位相の音を2次音源(逆位相音発生用音源)から発生させることで、低周波音を効果的に低減させるANC(Active Noise Control)と呼ばれる技術がある。この技術はヘッドホン、自動車の車内などの密閉空間、排気煙道などの一次元的な伝搬経路の騒音を低減するのに実用化されている。
【0003】
三次元空間では騒音発生源と2次音源との位置関係が三次元的関係となり、両者の位置が大きくずれるため騒音低減効果は低下する場合が多いが、低周波騒音に限定すれば効果が期待できる。
【0004】
特許文献1には、ANC技術を三次元空間へ適用する事例が紹介されている。
この特許文献1に開示の技術は、円筒形のボイラーの外壁に備えられる送風機から前方に向けて伝播する低周波騒音をボイラーの外部前方で低減することを目的とする。この目的を達成するために、第1騒音検出手段としてのリファレンスマイクで騒音を検出するとともに、第2騒音検出手段としてのエラーマイクを送風機の前方に配置して、その位置でも騒音を検出し、これら両方の検出情報に基づいて、消音のための制御音を送風機の略鉛直上方又は下方に配置されたスピーカから送出して、エラーマイクの配置位置(本願の第2位置に相当する)で消音する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2005−134632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の技術は、送風機の開口前方の三次元開放空間において消音を行うものである。
しかしながら、現実には、ANCの適用を考えた場合、例えば、地下室等の三次元閉空間に空調室外機の原動部が配置される場合等があり、このような事例の場合、その地下室内における騒音を低減するとともに、通気口等から地下室外に漏れる騒音を低減する必要がある。
この種の三次元閉空間に騒音発生源が配置された場合、騒音発生源から発生する騒音の特性が問題となるとともに、その三次元閉空間の音響特性も大きく影響する。結果、第2騒音検出手段の設置位置が不適切であると、充分な消音効果を得ることができない。
【0007】
本発明の目的は、三次元閉空間に配置される騒音発生源から発生する騒音を良好に消音するのに、ANC技術を充分に生かせる2次音源又は第2騒音検出手段の位置決定方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、騒音発生源から発生する騒音を、第1位置に配置される第1騒音検出手段で検出するとともに、前記第1位置とは異なった第2位置に配置される第2騒音検出手段により検出し、前記第1騒音検出手段により検出される第1騒音情報及び前記第2騒音検出手段により検出される第2騒音情報に基づいて2次音源から制御音を発生して少なくとも前記第2位置で消音する消音システムにおける、前記2次音源又は第2騒音検出手段の位置決定方法の特徴構成は、
前記騒音発生源が三次元閉空間内に配置される場合に、
三次元開放空間において前記騒音発生源から発生する騒音について、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を求める第1ステップと、
前記第1ステップで求められる高音圧レベル周波数の音について、前記騒音発生源を配置した状態で、前記三次元閉空間内において、前記高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求める第2ステップとを実行し、
求められる前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが、空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記2次音源又は前記第2騒音検出手段を配置する第2位置とすることにある。
【0009】
本願に係る騒音検出手段の位置決定方法は、特に三次元空間が閉空間である場合に、その威力を発揮する。即ち、三次元空間が閉空間である場合は、騒音発生源から発生する騒音について、三次元閉空間の音響特性とも相まって、その音響レベルが大きく変動する腹部及び殆ど変化しない節部が形成される。この様な腹部及び節部は、当然、三次元的な分布を取る。さらに、このような腹部及び節部は、特定の周波数に関して顕著に現れる。この周波数は、主には、騒音発生源の音圧レベルが高い周波数となる。
そこで、本願に係る位置決定方法では、第1ステップで、三次元開放空間での騒音発生源からの騒音の低周波領域の音圧レベルの高い周波数(高音圧レベル周波数)を求める。
ここで、周波数を低周波数に限定しているのは、消音対象とする音の周波数が、低周波領域の音であるためである。
【0010】
第2ステップでは、このようにして得られる高音圧レベル周波数について、騒音発生源を配置した状態における三次元閉空間内で高音圧レベル周波数の音が騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。このようにして問題となる可能性が高い周波数音の三次元閉空間内での腹部と節部の形成状況を具体的に把握する。
【0011】
求められる三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、三次元閉空間の音圧レベルが、空間内の平均音圧レベルより高い位置を、2次音源又は第2騒音検出手段或いはそれらの両方を配置する第2位置とする。
【0012】
このようにすることで、比較的簡易な解析手法を採用しながら、所謂、ANCを使用して、これまで容易に的確な騒音制御を実現することが困難であった三次元閉空間での消音を実現できるようになった。
【0013】
即ち、ANC技術の効果を好適にするためには、2次音源の位置、エラーマイクである第2騒音検出手段の位置(第2位置)或いはそれらの両方が好適化される必要がある。開放空間であれば騒音発生源付近の任意の場所に例えば、第2騒音検出手段を配置すればよいが、共鳴が起こるような密閉度の高い三次元閉空間においては、配置場所によってその効果が大幅に変わる。即ち、音波の干渉により音が小さくなる定在波の節部に例えば第2騒音検出手段が配置されると検出信号出力が小さくなり、相対的に暗騒音の影響を大きく受けることになる。結果、信号のS/N比が下がり、2次音源と第2騒音検出手段間の伝達関数の同定、消音動作にノイズが混じることになる。従って、消音効果が低下、制御が発散する可能性が高まる。逆に干渉によって音が強められる定在波の腹部では、S/N比が高くなるため、効果的な消音が可能になるのである。
よって、本願にあっては、このような三次元閉空間における腹部、節部の確認を、第1ステップ、第2ステップを経て容易且つ確実に行い、2次音源の位置或いは第2騒音検出手段の位置(第2位置)を好適化することで、三次元閉空間を対象としてANCを最適な状態で適用できるようになった。
【0014】
このようにして、2次音源、第2騒音検出手段或いはそれら両方の位置を決定するに、以下のように決定するのが好ましい。
即ち、2次音源を配置する2次音源配置腹部と、第2騒音検出手段を配置する第2騒音検出手段配置腹部とを異なった腹部とすることが好ましい。
本願に係る消音システムでは、第2騒音検出手段により2次音源から発生される音による消音効果を確認することとなる。即ち、第2騒音検出手段がエラーマイクロフォンとして働く。このような騒音の検出構造において、三次元閉空間内に形成される複数の腹部に関して、2次音源と第2騒音検出手段とが同一の腹部内に位置されていると、両者が近接し、しかも同一の腹部内に存在するため、第2騒音検出手段において検出される検出音(消音後の音)に関して、その検出音に2次音源からの音(制御音)の影響が大きく残り、本来の消音効果を正確に代表できない場合がある。そこで、2次音源を配置する2次音源配置腹部と、第2騒音検出手段を配置する第2騒音検出手段配置腹部とを、三次元閉空間内に形成される異なった腹部とすることで、真に制御音による消音効果が作用した後の音を第2騒音検出手段により検出して、効果的な消音を実現できる。
さらに、このような構成を採る場合に、2次音源と第2騒音検出手段とを対向した位置関係とすると、第2騒音検出手段配置腹部で2次音源の効果を確実に確認できる。
【0015】
さらに、三次元閉空間が平面視方形の空間であり、2次音源と第2騒音検出手段とを方形の長辺に沿う位置とすると、平面視方形の三次元閉空間において2次音源から第2騒音検出手段までの距離を確保して、平面視方形の三次元閉空間に於ける消音を有効に実現できる。
【0016】
さらに、前記第1ステップにおいて、高音圧レベル周波数を音圧レベルに従って限られた数求め、
前記第2ステップにおいて、前記第1ステップで限られた数の求められる高音圧レベル周波数の音それぞれについて、前記騒音発生源を配置した状態で、前記三次元閉空間内において、前記各高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求め、
前記第2ステップで求められた、限られた数の高音圧レベル周波数の音に関する前記音響状態に基づいて、前記低周波数領域での前記限られた数の高音圧レベル周波数を含む前記三次元閉空間の音響状態を推定する第3ステップを実行し、
前記第3ステップで求められる前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記2次音源又は第2騒音検出手段を配置する位置とすることが好ましい。
【0017】
通常の騒音発生源から発生する騒音は、その音圧レベルが高い周波数が複数存在する。一方、対象とする周波数を連続的なものとすると、第2ステップで実行する解析が困難、あるいは解析に長時間を要する。そこで、第1ステップで求める高音圧レベル周波数の数は限られた数とする。通常、この種の周波数の数は、2〜5程度で充分である。
そして、第3ステップでは、得られた音響特性を、解析の対象とした周波数に限って合成する。その合成された結果で、低周波数領域での三次元閉空間の音響状態を代表できるものとする。
そして、このようにして第3ステップで求められた音響状態において、その腹部に2次音源、第2騒音検出手段或いはそれらの両方の位置を定めることができる。
【0018】
さて、上記の位置決定方法では、騒音発生源と2次音源の位置が決まっている場合に第2騒音検出手段の位置である第2位置を決定する方法について説明したが、高音発生源の位置のみが判明しており、2次音源の位置及び第2騒音検出手段の位置(第2位置)を決定する場合に関しては、以下の手順で解析することが好ましい。
即ち、前記第1ステップ及び前記第2ステップを実行し、
前記第2ステップで求められた音響状態に関し、定在波の腹部を前記2次音源の位置と決定するとともに、当該決定された位置に前記2次音源を配置した状態で前記三次元閉空間内において、前記各高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求める2次音源位置決定・解析ステップを実行し、
前記2次音源位置決定・解析ステップで得られた音響状態において、定在波の腹部を前記第2騒音検出手段の位置である前記第2位置とする。
このようにすることで、消音対象としている三次元閉空間に関して、消音対象とする騒音の周波数、三次元閉空間内における騒音発生源の位置が特定される状態で、音響解析を行い、その解析により騒音発生源が存在する状態での定在波の形態を特定できる。そして、この定在波の腹部に2次音源の位置を決定することで、騒音発生源から発生する騒音に対して2次音源から発生する2次音による消音効果を有効に発揮させることができる。
次に、前記三次元閉空間に関して、消音対象とする騒音の周波数、三次元閉空間内における騒音発生源の位置及び2次音源の位置が特定される状態で、再度音響解析を実行し当該三次元閉空間の音響状態を求め、得られる定在波の腹の位置を2騒音検出手段の位置である第2位置とすることで、騒音発生源から発生する騒音に対する2次音源から発生する制御音の影響を的確に検出して、効果的な消音を実現できる。
【0019】
さらに、前記第2騒音検出手段の位置としては、第3ステップで求められる三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、三次元閉空間の音圧レベルが最高音圧レベルとなる位置を前記第2位置とすることが好ましい。
このように最高音圧レベルとなる部位を第2騒音検出手段として選択することで、最も良好な消音効果を得ることができる。
【0020】
さらに、前記第2ステップの波動音響解析において、基礎方程式をヘルムホルツ方程式とするとともに、離散化された境界積分方程式に従って、前記三次元閉空間における各部の音圧レベルを演算することが好ましい。
波動音響解析においては、定常状態を想定して波動方程式を特定の周波数で変数分離したヘルムホルツ方程式を基礎方程式とすることで、容易に三次元空間の解析を実行できる。
さらに、分割された各要素の境界条件に基づいて離散化された境界積分方程式を解くことで、音場の音圧が演算される。
【0021】
さらに、前記騒音発生源が回転機器である場合に、前記第1ステップにおいて、当該回転機器から発生する騒音に関して、前記音圧レベルが高い基本周波数と当該基本周波数の倍調周波数(2倍調、3倍調等を含む)を、前記高音圧レベル周波数とすることが好ましい。
回転機器の場合、その音圧レベルが高い周波数が、回転機器の通常運転周波数に依存して特定される。さらに、騒音として大きく影響する周波数は、この基本周波数と倍調周波数であるため、これらに対して消音対策を施せば充分だからである。従って、第1ステップを大幅に簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態が対象とする地下室内に配置された空調室外機の原動部の状態を示す図
【図2】消音システムの構成を示す図
【図3】第1実施形態の第2騒音検出手段であるエラーマイクの配置位置の決定フローを示す図
【図4】第1実施形態の原動部から発生する騒音の低周波数領域での音圧分布を示す図
【図5】境界積分方程式の各変数の幾何学的関係を示す図
【図6】離散化された境界積分方程式の各変数の幾何学的関係を示す図
【図7】第1実施形態の波動音響解析で使用した空調室外機の原動部が配置された地下室を代表する格子モデルを示す図
【図8】第1実施形態の26Hzでの音圧レベルの高いエリア及び水平断面音圧レベル分布の一例を示す図
【図9】第1実施形態の52Hzでの音圧レベルの高いエリア及び水平断面音圧レベル分布の一例を示す図
【図10】第1実施形態の78Hzでの音圧レベルの高いエリア及び水平断面音圧レベル分布の一例を示す図
【図11】第1実施形態のエラーマイクの配置位置決定の使用した第3ステップで推定した音圧レベルの高いエリア及び水平断面音圧レベル分布の一例を示す図
【図12】第2実施形態及び第3実施形態の2次音源及び第2騒音検出手段であるエラーマイクの配置位置の決定フローを示す図
【図13】第2実施形態の地下室の状態を示す図
【図14】第2実施形態の地下室における騒音源からの音の音響状態を示す図
【図15】第2実施形態の地下室における2次音源からの音の音響状態を示す図
【図16】第2実施形態の地下室における消音効果を示す図
【図17】第2実施形態の地下室における周波数領域における消音効果を示す図
【図18】第3実施形態の地下室の状態を示す図
【図19】第3実施形態の地下室における騒音源からの音の音響状態を示す図
【図20】第3実施形態の地下室における消音効果を示す図
【図21】第3実施形態の地下室における周波数領域における消音効果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願に係る2次音源、第2騒音検出手段或いはそれらの両方の位置決定方法に関して、以下図面に基づいて説明する。
本願では、第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態を紹介する。
ここで、第一実施形態は、三次元閉空間内での騒音源、2次音源の位置が定まっている場合において、第2騒音検出手段の位置を決定する方法に関し、第二、第三実施形態は、三次元閉空間内での騒音源の位置が定まっている場合において、2次音源、第2騒音検出手段の位置を決定する方法に関する。
以下の説明では、先ず、第一実施形態について、1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況、2.消音システムの構成、3.騒音検出手段の位置決定方法の順に説明し、次に、第二、第三実施形態について、1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況、3.騒音検出手段の位置決定方法の順に説明する。全ての実施形態において、消音システムの構成は、第一実施形態のものと同一であるため、第二、第三実施形態では説明を省略する。
【0024】
〔第一実施形態〕
1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況
図1は、本願に係る消音システムが配置される三次元閉空間の一例としての地下室1の状態を示したものである。地下室1は図面からも判明するように、概略方形の閉空間として構成されている。ここで、本願における三次元閉空間の概念は、例えば、通気口といった、地下室1と外空間2とを繋ぐ音響の一部が漏れる程度の開口部3が設けられている構成も含む概念である。本願では、三次元閉空間内で音響的な腹部及び節部が形成されるのを問題とするため、三次元的な腹部、節部が形成される程度の閉鎖性があれば、本願の対象範囲に含まれる。
図1に示すように、地下室1内には、騒音発生源の一例として空調室外機の原動部4(具体的にはガスエンジン)が配置される。同図に示すように、このガスエンジン4もまた、ほぼ方形をしており、地下室1内のほぼ35%程度の空間を占有する。従って、図1において、原動部4の左下、右上及び左前側の側部に騒音が問題となる周部空間5が存在する。さらに、原動部4の天井側にも騒音が問題となる天井側空間6が広がっている。この天井側空間6は、地下室1の平断面積分の広がりをもっている。
この原動部4において、その騒音は、図1に騒音発生源7として記載する左下の壁部から発生するものと想定している。この想定は、実際の原動部4の筐体に設けられた通気孔に基づいた合理的な想定である。
【0025】
2.消音システムの構成
消音システム8は、第1騒音検出手段としてのリファレンスマイク9、第2騒音検出手段としてのエラーマイク10、2次音源としての一対の消音用スピーカ11と、リファレンスマイク9及びエラーマイク10により検出される騒音情報に基づいて、消音用スピーカ11から消音のための制御音を発生するための音響制御情報を生成する制御情報生成装置12(制御ボード)とから構成されている。
【0026】
前記リファレンスマイク9は、図1に示すように、上記騒音発生源7の近く直前方に配置する。従って、このリファレンスマイク9は、空調室外機の原動部4から発生し、地下室1内の空間に放出される騒音を、そのまま検出する。
【0027】
前記エラーマイク10は、上記騒音発生源7より壁13側に配置する。このエラーマイク10は、基本的に消音システム8による消音が良好に働いているか否かの検証用のマイクである。本願では、このエラーマイク10の配置位置が、独特の手法により決定される。
【0028】
一対の消音用スピーカ11は、制御情報生成装置12から制御音を発生するための制御情報を受取り制御音を発生する。一対の消音用スピーカ11は、騒音発生源7の近傍に騒音発生源7をその両脇から挟む位置関係で、騒音発生源7から発生する騒音の伝播方向(図1において左下向き)に向けて位置させる。
【0029】
制御情報生成装置12は、リファレンスマイク9、エラーマイク10及び消音用スピーカ11と電気的に接続されており、リファレンスマイク9及びエラーマイク10から、それぞれ検出情報を受取る。一方、一対の消音用スピーカ11には、この制御情報生成装置12内に設けられている制御ボード12aにより、リファレンスマイク9及びエラーマイク10の検出情報に基づいて決定される制御音を消音用スピーカ11から発生するための情報を送る。
【0030】
制御ボード12aの働きに関して説明すると、本願で採用するFiltered−XLMSアルゴリズムを採用する消音システム8は、図2(a)の構成を取っており、xnは第1位置に配置される第1騒音検出手段としてのリファレンスマイク9により検出されるリファレンス信号であり、enは、第2位置に配置される第2騒音検出手段としてのエラーマイク10に検出される誤差信号である。
そして、一次経路(この経路の伝達関数をP(Z)と記載している)を経て伝達される騒音と、二次経路(この経路の伝達関数をC(Z)と記載している)を経て伝達される制御音とが、エラーマイク10が位置する第2位置に到達して残留する騒音である誤差が0となった場合に、消音が良好に行われたこととなる。
【0031】
従って、この消音システム8では、図2(b)で示すように、リファレンスマイク9により、騒音発生源7からの騒音波形を検出し、この騒音であるリファレンス信号xnを基にエラーマイク10における誤差信号enである音が小さくなるように、リファレンス信号xnとは逆位相の制御信号ynを生成する。この制御信号ynをアンプ12bで増大させ、消音用スピーカ11から発生させる。また、地下室1に配置される本消音システム8では高周波の騒音は逆に増大させてしまう可能性があるため、制御ボード12a内にローパスフィルタ12cを備えている。
【0032】
図2(a)(b)を参照して、この消音システム8の原理を説明すると、騒音が伝搬する一次経路と制御音源を経由する二次経路の関係は、以下の数1となる。
【0033】
【数1】
【0034】
ここで、事前に二次経路の特性を模擬したフィルタが二次経路を精度よく表しているとき、
【0035】
【数2】
【0036】
となり、数1、数2から、
【0037】
【数3】
【0038】
とできる。従って、数3が成り立つように騒音制御フィルタ(このフィルタの伝達関数をH(Z)と記載している)を最適化すればよい。
騒音制御フィルタを求めるためにLMSアルゴリズムは、数4で示される。
【0039】
【数4】
【0040】
ここで、μはステップサイズゲインである。
【0041】
離散化した状態での適応制御は、図2(c)の形態となる。この図では、騒音制御フィルタを実際に使用するFIRフィルタ(Finite Impulse Responseフィルタ(有限インパルス応答フィルタ))と記載し、二次経路フィルタと係数更新アルゴリズムを適応制御アルゴリズムと記載している。
図2(c)から判明するように、本消音システム8では、リファレンス信号を主入力信号x[n]とし、この主入力信号x[n]にフィルタ係数hk[n]をかけた出力信号y[n]を生成し、その出力信号y[n]と主入力信号x[n]との合成信号(具体的には和信号で、この信号が誤差信号ε[n]である)が0となるようなhk[n]が生成される。
【0042】
FIRフィルタは、具体的には、入力信号x〔n−k〕にフィルタ係数hk〔n〕をかけた結果y〔n〕を出力するフィルタである。
【0043】
【数5】
【0044】
さらに、誤差信号ε[n]を最小にするためのフィルタ係数の作成は、公知のLMS適応制御アルゴリズムを採用することで実行できるが、このアルゴリズムは以下の数6の形態となる。
【0045】
【数6】
ここで、μはステップサイズパラメータであり、下記に示す例では0.00002程度を採用した。さらに、タップ数Mは、具体的には1024とした。
【0046】
3.騒音検出手段の位置決定方法
本願に係る第2騒音検出手段の配置位置検定方法では、図3に示すように、第1〜第4ステップを経て、第2騒音検出手段であるエラーマイク10の配置位置を決定する。
【0047】
第1ステップ
第1ステップでは、三次元開放空間において騒音発生源から発生する騒音に関して、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を、音圧レベルに従って複数求める。
図4は、先に説明した空調室外機の原動部(騒音発生源7)4から発生する騒音を、開放空間で検出した結果である。空調室外機などの回転機械では、回転により発生する騒音でピーク周波数が決まり、例に示す機器の騒音は26Hz(基本周波数)、52Hz(2倍調周波数),78Hz(3倍調周波数)にピークを持っていた。これら周波数が、本願にいうところの高音圧レベル周波数である。本願で消音に対象とする低周波領域は100Hz以下の領域である。
【0048】
第2ステップ
第2ステップでは、第1ステップで求められる複数の高音圧レベル周波数の音それぞれについて、騒音発生源を配置した状態における三次元閉空間内での、各高音圧レベル周波数の音が前記三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。
このような波動音響解析には境界要素法を使用する。境界要素法は、波動音響学的に音場を解析するための数値解析手法であり、一般的には定常状態を想定し、波動方程式を特定の周波数で変数分離したヘルムホルツ方程式を基礎方程式とする。そして、ヘルムホルツ方程式を境界上の境界積分方程式の形態に変換した上で、要素に離散化することで音場を解析する。また、境界要素法は、有限要素法と違い、系に単位力が作用したときの系の応答を示す基本解を必要とするため、基本解が知られていない問題には適用できない。
上記の波動音響解析に使用する波動方程式を数7に、ヘルムホルツ方程式を数8に示した。さらに、このヘルムホルツ方程式に対応する境界積分方程式を数9に示した。ここで、この境界積分方程式で使用する三次元ヘルムホルツ方程式の基本解Gは数10に示す形態となる。図5に、境界積分方程式の各変数の幾何学的関係を示した。
【0049】
【数7】
【0050】
【数8】
【0051】
境界積分方程式
【数9】
V:法線方向粒子速度、ρ:空気密度、C:立体角
Pa:図5のaにおける音圧、Pb:図5のbにおける音圧、G(ra,b):図5のab間の距離ra,bを変数とする基本解、Vb:図5における法線方向粒子速度
【0052】
【数10】
【0053】
そして、数9、数10に使用して境界上で離散化した境界積分方程式は数11となる。
【0054】
境界積分方程式の離散化
【数11】
C:iにおける立体角を4πで割った値
領域の内部においてC=1、滑らかな境界においてC=1/2、領域の外側でC=0となる。
【0055】
また、図6に、離散化された境界積分方程式の各変数の幾何学的関係を示した。
数11に示す方程式に基づいた解析に際しては、FORTRANで記載されたプログラムを使用した。
【0056】
上述の離散化された境界積分方程式の適用対象とした格子モデルを、図7に示した。
解析に於ける境界の要素分割は、境界要素法では、差分法や有限要素法のように、空間を要素分割する必要はなく、境界のみを要素分割でよい。それら要素の長さは、波動性を適切に計算するために、波長の1/8以下に分割するのが妥当である。そのため、波長の短い高周波では、細かく要素分割する必要があるため、計算負荷が増大する。本願のように、低周波数領域を対象とする解析では、要素の長さは比較的長い合理的な長さとできる。実際の計算では、解析対象とした周波数領域が100Hz以下であるため、単一の境界要素の長さは400mmとした。
【0057】
また、解析条件として、対象に合わせて境界条件を設定する必要がある。境界条件としては、剛壁を想定した完全反射面、音源を想定した振動面、吸音面を想定したインピーダンス境界がある。実際の計算では、共鳴が問題になる空間は、音を吸収しにくいコンクリートなどの硬い壁が多いため、完全反射面かわずかな吸音を与えるインピーダンス境界を用いた。
【0058】
図8、図9、図10には、それぞれ、上記の26Hz、52Hz,78Hzについて、高音圧レベル周波数の音圧レベルが高いエリア(左側の図で、閉領域として囲まれた領域)、水平断面音圧レベル分布の一例(右側の図で、音響特性の節部を濃部で示す)を示した。周波数によっては、騒音発生源の側よりも遠方の方が大きな騒音となる場合があることが判る。また、腹部及び節部は三次元的に分布していることが分かる。
【0059】
第3ステップ
この第3ステップでは、第2ステップで求められた、全ての高音圧レベル周波数の音に関する音響状態に基づいて、低周波数領域での全ての高音圧レベル周波数を含む三次元空間の音響状態を推定する。26Hz、52Hz,78Hzの結果を使用して、低周波数領域(20〜100Hz)の騒音として合成(具体的には、単純な合算)した場合での音圧レベルが高いエリア、水平断面音圧レベル分布の一例を図11に示した。この図から判明するように、地下室の場合、図11右側のエリア図で、右奥側に示される側壁13の下部に近い部位に、第2騒音検出手段を配置すべきエリアが広がっていることが分かる。
【0060】
第4ステップ
この第4ステップでは、第3ステップで求められる三次元空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元空間の音圧レベルが平均音圧レベルより高い位置を第2騒音検出手段の配置位置とする。
これまで説明してきた図11に示した例の場合、空調室外機の配置側(図1の左下側)で壁面近傍の最下部位置が好ましいことが判明した。
このように、騒音が大きい位置にエラーマイクを配置することでS/N比の高い信号が得られ、効果的な消音が可能となる。また、特に騒音を低減したい場所、エラーマイクが劣化しにくい場所なども考慮してエラーマイクの配置位置を選定することが好ましい。
【0061】
〔第二実施形態〕
1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況
図13は、この実施形態に係る消音システムが配置される三次元閉空間の一例としての地下室1の状態を示したものである。地下室1は図面からも判明するように、概略方形の閉空間として構成されている。
図13に示すように、地下室1の平面視短辺側の壁面上部には、騒音発生源の一例として換気扇40が配置される。
3.2次音源及び第2騒音検出手段の位置決定方法
この実施形態に係る2次音源及び第2騒音検出手段の配置位置検定方法では、図12に示すように、第1ステップ、第2ステップ(騒音源からの音による音響状態の導出)、2次音源位置決定・解析ステップ(2次音源の位置決定、及び、決定された2次音源からの音による音響状態の導出)、第2騒音検出手段位置決定ステップ(第2騒音検出手段の位置決定)を実行するのである。
【0062】
第1ステップ(#10)
第1ステップでは、三次元開放空間において騒音発生源から発生する騒音に関して、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を、音圧レベルに従って求める。
先に説明した換気扇(騒音発生源)40では、41Hz(基本周波数)にピークを持っていた。この周波数が、本願にいうところの高音圧レベル周波数である。本願で消音に対象とする低周波領域は100Hz以下の領域である。
【0063】
第2ステップ(#20)
第2ステップでは、第一実施形態と同様に、第1ステップで求められる高音圧レベル周波数の音について、騒音発生源を配置した状態における三次元閉空間内での、各高音圧レベル周波数の音が三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。解析手法は、先の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0064】
図14に、上記の41Hzについての結果を示した。
左側の図面(a)が音圧レベルの高い領域(方形四隅にある囲まれた3次元の領域)を示し、右側の図面(b)が音圧分布で、音圧の高い部分を暗い領域として濃度で示した。
これらの図から、平面視方形の空間では、方形の四隅に腹部が形成され、方形の中央側に十字形に節部が形成されていることが判る。また、腹部及び節部は三次元的に分布していることが分かる。
【0065】
2次音源位置決定・解析ステップ(#30)
この2次音源位置決定・解析ステップでは、第2ステップで求められた、高音圧レベル周波数の音に関する音響状態に基づいて、スピーカ11(2次音源)の位置を、音響状態で腹部となっている部位に決定する。図13から判明するように、この例では、2次音源の位置を、平面視方形となる三次元閉空間において、騒音源である換気扇40が位置される短辺側に沿った、騒音源とは反対側の角とした。この部位は、求められた音響状態において音響の腹部の一つの位置である。
【0066】
このようにして決定した2次音源を配置した状態における三次元閉空間内での、高音圧レベル周波数の音が三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。解析手法は、先の形態と同様であるので、説明は省略する。
図15に、上記の41Hzについての結果を示した。
左側の図面(a)が音圧レベルの高い領域(方形四隅にある囲まれた3次元の領域)を示し、右側の図面(b)が音圧分布で、音圧の高い部分を暗い領域として濃度で示した。
これらの図から、平面視方形の空間では、方形の四隅に腹部が形成され、方形の中央側に十字形に節部が形成されていることが判る。
【0067】
第2騒音検出手段位置決定ステップ(#40)
この第2騒音検出手段位置決定ステップでは、2次音源位置決定・解析ステップで求められる三次元空間の音響状態において、定在波の腹部で、三次元空間の音圧レベルが平均音圧レベルより高い位置をエラーマイク10(第2騒音検出手段)の配置位置とする。
これまで説明してきた図13に示した例の場合、2次音源に対向した位置が、好適な位置となった。図16が、消音効果を示した音圧分布であり、図17が周波数領域における消音効果を示したものである。目的とした41Hzで消音効果が得られている。
このように、騒音が大きい位置にエラーマイクを配置することでS/N比の高い信号が得られ、効果的な消音が可能となる。
【0068】
〔第三実施形態〕
1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況
図18は、この実施形態に係る消音システムが配置される三次元閉空間の一例としての地下室1の状態を示したものである。地下室1は図面からも判明するように、概略方形の閉空間として構成されている。
図18に示すように、地下室1の平面視短辺側の壁面上部には、騒音発生源の一例として一対の換気扇41が配置される。
3.2次音源及び第2騒音検出手段の位置決定方法
この実施形態に係る2次音源及び第2騒音検出手段の配置位置検定方法でも、図12に示すように、第1ステップ、第2ステップ(騒音源からの音による音響状態の導出)、2次音源位置決定・解析ステップ(2次音源の位置決定、及び、決定された2次音源からの音による音響状態の導出)、第2騒音検出手段位置決定ステップ(第2騒音検出手段の位置決定)を実行する。
【0069】
第1ステップ(#10)
第1ステップでは、三次元開放空間において騒音発生源から発生する騒音に関して、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を、音圧レベルに従って求める。
先に説明した換気扇(騒音発生源)41でも、41Hz(基本周波数)にピークを持っていた。これら周波数が、本願にいうところの高音圧レベル周波数である。本願で消音に対象とする低周波領域は100Hz以下の領域である。
【0070】
第2ステップ
第2ステップでは、第一実施形態と同様に、第1ステップで求められる高音圧レベル周波数の音について、騒音発生源を配置した状態における三次元閉空間内での、各高音圧レベル周波数の音が前記三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。解析手法は、先の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0071】
図19に、上記の41Hzについての結果を示した。
左側の図面(a)が音圧レベルの高い領域(方形四隅にある囲まれた3次元の領域)を示し、右側の図面(b)が音圧分布で、音圧の高い部分を暗い領域として濃度で示した。
これらの図から、平面視方形の空間では、方形の四隅に腹部が形成され、方形の中央側に十字形に節部が形成されていることが判る。また、腹部及び節部は三次元的に分布していることが分かる。
【0072】
2次音源位置決定・解析ステップ(#30)
この2次音源位置決定・解析ステップでは、第2ステップで求められた、高音圧レベル周波数の音に関する音響状態に基づいて、スピーカ11(2次音源)の位置を、音響状態で腹部となっている部位に2次音源の位置を決定する。この例でも、2次音源の位置を、平面視方形となる三次元閉空間において、騒音源である一方の換気扇41が位置される短辺側に沿った騒音源側の角とした。この部位は、求められた音響状態において音響の腹部の一つの位置である。
【0073】
このようにして決定した2次音源を配置した状態における三次元閉空間内での、高音圧レベル周波数の音が三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。解析手法は、先の形態と同様であるので、説明は省略する。
図15と同様な結果が得られた。
【0074】
第2騒音検出手段位置決定ステップ(#40)
この第2騒音検出手段位置決定ステップでは、2次音源位置決定・解析ステップで求められる三次元空間の音響状態において、定在波の腹部で、三次元空間の音圧レベルが平均音圧レベルより高い位置をエラーマイク10(第2騒音検出手段)の配置位置とする。
これまで説明してきた図18に示した例の場合、2次音源に対向した位置が、好適な位置となった。図20が、消音効果を示した音圧分布であり、図21が周波数領域における消音効果を示したものである。目的とした41Hzで消音効果が得られている。
このように、騒音が大きい位置にエラーマイクを配置することでS/N比の高い信号が得られ、効果的な消音が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
三次元閉空間に配置される騒音発生源から発生する騒音を良好に消音するのに、ANC技術を充分に生かせる第2騒音検出手段の位置決定方法を得ることができた。
【符号の説明】
【0076】
1 地下室(三次元閉空間)
4 空調室外機の原動部
9 リファレンスマイク(第1騒音検出手段)
10 エラーマイク(第2騒音検出手段)
11 消音用スピーカ(2次音源)
12 制御情報生成装置(制御ボード)
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音発生源から発生する騒音を、第1位置に配置される第1騒音検出手段で検出するとともに、前記第1位置とは異なった第2位置に配置される第2騒音検出手段により検出し、前記第1騒音検出手段により検出される第1騒音情報及び前記第2騒音検出手段により検出される第2騒音情報に基づいて2次音源から制御音を発生して少なくとも前記第2位置で消音する消音システムにおける、前記2次音源又は第2騒音検出手段の位置決定方法に関し、さらに詳細には、三次元閉空間内で共鳴によって増大することがある低周波騒音を低減する消音技術に関する。
【背景技術】
【0002】
低周波騒音(100Hz以下の騒音)は吸音、遮音の効果が小さく、吸音処理、遮音処理ではその消音が困難である。これに対して、逆位相の音を2次音源(逆位相音発生用音源)から発生させることで、低周波音を効果的に低減させるANC(Active Noise Control)と呼ばれる技術がある。この技術はヘッドホン、自動車の車内などの密閉空間、排気煙道などの一次元的な伝搬経路の騒音を低減するのに実用化されている。
【0003】
三次元空間では騒音発生源と2次音源との位置関係が三次元的関係となり、両者の位置が大きくずれるため騒音低減効果は低下する場合が多いが、低周波騒音に限定すれば効果が期待できる。
【0004】
特許文献1には、ANC技術を三次元空間へ適用する事例が紹介されている。
この特許文献1に開示の技術は、円筒形のボイラーの外壁に備えられる送風機から前方に向けて伝播する低周波騒音をボイラーの外部前方で低減することを目的とする。この目的を達成するために、第1騒音検出手段としてのリファレンスマイクで騒音を検出するとともに、第2騒音検出手段としてのエラーマイクを送風機の前方に配置して、その位置でも騒音を検出し、これら両方の検出情報に基づいて、消音のための制御音を送風機の略鉛直上方又は下方に配置されたスピーカから送出して、エラーマイクの配置位置(本願の第2位置に相当する)で消音する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2005−134632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の技術は、送風機の開口前方の三次元開放空間において消音を行うものである。
しかしながら、現実には、ANCの適用を考えた場合、例えば、地下室等の三次元閉空間に空調室外機の原動部が配置される場合等があり、このような事例の場合、その地下室内における騒音を低減するとともに、通気口等から地下室外に漏れる騒音を低減する必要がある。
この種の三次元閉空間に騒音発生源が配置された場合、騒音発生源から発生する騒音の特性が問題となるとともに、その三次元閉空間の音響特性も大きく影響する。結果、第2騒音検出手段の設置位置が不適切であると、充分な消音効果を得ることができない。
【0007】
本発明の目的は、三次元閉空間に配置される騒音発生源から発生する騒音を良好に消音するのに、ANC技術を充分に生かせる2次音源又は第2騒音検出手段の位置決定方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、騒音発生源から発生する騒音を、第1位置に配置される第1騒音検出手段で検出するとともに、前記第1位置とは異なった第2位置に配置される第2騒音検出手段により検出し、前記第1騒音検出手段により検出される第1騒音情報及び前記第2騒音検出手段により検出される第2騒音情報に基づいて2次音源から制御音を発生して少なくとも前記第2位置で消音する消音システムにおける、前記2次音源又は第2騒音検出手段の位置決定方法の特徴構成は、
前記騒音発生源が三次元閉空間内に配置される場合に、
三次元開放空間において前記騒音発生源から発生する騒音について、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を求める第1ステップと、
前記第1ステップで求められる高音圧レベル周波数の音について、前記騒音発生源を配置した状態で、前記三次元閉空間内において、前記高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求める第2ステップとを実行し、
求められる前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが、空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記2次音源又は前記第2騒音検出手段を配置する第2位置とすることにある。
【0009】
本願に係る騒音検出手段の位置決定方法は、特に三次元空間が閉空間である場合に、その威力を発揮する。即ち、三次元空間が閉空間である場合は、騒音発生源から発生する騒音について、三次元閉空間の音響特性とも相まって、その音響レベルが大きく変動する腹部及び殆ど変化しない節部が形成される。この様な腹部及び節部は、当然、三次元的な分布を取る。さらに、このような腹部及び節部は、特定の周波数に関して顕著に現れる。この周波数は、主には、騒音発生源の音圧レベルが高い周波数となる。
そこで、本願に係る位置決定方法では、第1ステップで、三次元開放空間での騒音発生源からの騒音の低周波領域の音圧レベルの高い周波数(高音圧レベル周波数)を求める。
ここで、周波数を低周波数に限定しているのは、消音対象とする音の周波数が、低周波領域の音であるためである。
【0010】
第2ステップでは、このようにして得られる高音圧レベル周波数について、騒音発生源を配置した状態における三次元閉空間内で高音圧レベル周波数の音が騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。このようにして問題となる可能性が高い周波数音の三次元閉空間内での腹部と節部の形成状況を具体的に把握する。
【0011】
求められる三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、三次元閉空間の音圧レベルが、空間内の平均音圧レベルより高い位置を、2次音源又は第2騒音検出手段或いはそれらの両方を配置する第2位置とする。
【0012】
このようにすることで、比較的簡易な解析手法を採用しながら、所謂、ANCを使用して、これまで容易に的確な騒音制御を実現することが困難であった三次元閉空間での消音を実現できるようになった。
【0013】
即ち、ANC技術の効果を好適にするためには、2次音源の位置、エラーマイクである第2騒音検出手段の位置(第2位置)或いはそれらの両方が好適化される必要がある。開放空間であれば騒音発生源付近の任意の場所に例えば、第2騒音検出手段を配置すればよいが、共鳴が起こるような密閉度の高い三次元閉空間においては、配置場所によってその効果が大幅に変わる。即ち、音波の干渉により音が小さくなる定在波の節部に例えば第2騒音検出手段が配置されると検出信号出力が小さくなり、相対的に暗騒音の影響を大きく受けることになる。結果、信号のS/N比が下がり、2次音源と第2騒音検出手段間の伝達関数の同定、消音動作にノイズが混じることになる。従って、消音効果が低下、制御が発散する可能性が高まる。逆に干渉によって音が強められる定在波の腹部では、S/N比が高くなるため、効果的な消音が可能になるのである。
よって、本願にあっては、このような三次元閉空間における腹部、節部の確認を、第1ステップ、第2ステップを経て容易且つ確実に行い、2次音源の位置或いは第2騒音検出手段の位置(第2位置)を好適化することで、三次元閉空間を対象としてANCを最適な状態で適用できるようになった。
【0014】
このようにして、2次音源、第2騒音検出手段或いはそれら両方の位置を決定するに、以下のように決定するのが好ましい。
即ち、2次音源を配置する2次音源配置腹部と、第2騒音検出手段を配置する第2騒音検出手段配置腹部とを異なった腹部とすることが好ましい。
本願に係る消音システムでは、第2騒音検出手段により2次音源から発生される音による消音効果を確認することとなる。即ち、第2騒音検出手段がエラーマイクロフォンとして働く。このような騒音の検出構造において、三次元閉空間内に形成される複数の腹部に関して、2次音源と第2騒音検出手段とが同一の腹部内に位置されていると、両者が近接し、しかも同一の腹部内に存在するため、第2騒音検出手段において検出される検出音(消音後の音)に関して、その検出音に2次音源からの音(制御音)の影響が大きく残り、本来の消音効果を正確に代表できない場合がある。そこで、2次音源を配置する2次音源配置腹部と、第2騒音検出手段を配置する第2騒音検出手段配置腹部とを、三次元閉空間内に形成される異なった腹部とすることで、真に制御音による消音効果が作用した後の音を第2騒音検出手段により検出して、効果的な消音を実現できる。
さらに、このような構成を採る場合に、2次音源と第2騒音検出手段とを対向した位置関係とすると、第2騒音検出手段配置腹部で2次音源の効果を確実に確認できる。
【0015】
さらに、三次元閉空間が平面視方形の空間であり、2次音源と第2騒音検出手段とを方形の長辺に沿う位置とすると、平面視方形の三次元閉空間において2次音源から第2騒音検出手段までの距離を確保して、平面視方形の三次元閉空間に於ける消音を有効に実現できる。
【0016】
さらに、前記第1ステップにおいて、高音圧レベル周波数を音圧レベルに従って限られた数求め、
前記第2ステップにおいて、前記第1ステップで限られた数の求められる高音圧レベル周波数の音それぞれについて、前記騒音発生源を配置した状態で、前記三次元閉空間内において、前記各高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求め、
前記第2ステップで求められた、限られた数の高音圧レベル周波数の音に関する前記音響状態に基づいて、前記低周波数領域での前記限られた数の高音圧レベル周波数を含む前記三次元閉空間の音響状態を推定する第3ステップを実行し、
前記第3ステップで求められる前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記2次音源又は第2騒音検出手段を配置する位置とすることが好ましい。
【0017】
通常の騒音発生源から発生する騒音は、その音圧レベルが高い周波数が複数存在する。一方、対象とする周波数を連続的なものとすると、第2ステップで実行する解析が困難、あるいは解析に長時間を要する。そこで、第1ステップで求める高音圧レベル周波数の数は限られた数とする。通常、この種の周波数の数は、2〜5程度で充分である。
そして、第3ステップでは、得られた音響特性を、解析の対象とした周波数に限って合成する。その合成された結果で、低周波数領域での三次元閉空間の音響状態を代表できるものとする。
そして、このようにして第3ステップで求められた音響状態において、その腹部に2次音源、第2騒音検出手段或いはそれらの両方の位置を定めることができる。
【0018】
さて、上記の位置決定方法では、騒音発生源と2次音源の位置が決まっている場合に第2騒音検出手段の位置である第2位置を決定する方法について説明したが、高音発生源の位置のみが判明しており、2次音源の位置及び第2騒音検出手段の位置(第2位置)を決定する場合に関しては、以下の手順で解析することが好ましい。
即ち、前記第1ステップ及び前記第2ステップを実行し、
前記第2ステップで求められた音響状態に関し、定在波の腹部を前記2次音源の位置と決定するとともに、当該決定された位置に前記2次音源を配置した状態で前記三次元閉空間内において、前記各高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求める2次音源位置決定・解析ステップを実行し、
前記2次音源位置決定・解析ステップで得られた音響状態において、定在波の腹部を前記第2騒音検出手段の位置である前記第2位置とする。
このようにすることで、消音対象としている三次元閉空間に関して、消音対象とする騒音の周波数、三次元閉空間内における騒音発生源の位置が特定される状態で、音響解析を行い、その解析により騒音発生源が存在する状態での定在波の形態を特定できる。そして、この定在波の腹部に2次音源の位置を決定することで、騒音発生源から発生する騒音に対して2次音源から発生する2次音による消音効果を有効に発揮させることができる。
次に、前記三次元閉空間に関して、消音対象とする騒音の周波数、三次元閉空間内における騒音発生源の位置及び2次音源の位置が特定される状態で、再度音響解析を実行し当該三次元閉空間の音響状態を求め、得られる定在波の腹の位置を2騒音検出手段の位置である第2位置とすることで、騒音発生源から発生する騒音に対する2次音源から発生する制御音の影響を的確に検出して、効果的な消音を実現できる。
【0019】
さらに、前記第2騒音検出手段の位置としては、第3ステップで求められる三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、三次元閉空間の音圧レベルが最高音圧レベルとなる位置を前記第2位置とすることが好ましい。
このように最高音圧レベルとなる部位を第2騒音検出手段として選択することで、最も良好な消音効果を得ることができる。
【0020】
さらに、前記第2ステップの波動音響解析において、基礎方程式をヘルムホルツ方程式とするとともに、離散化された境界積分方程式に従って、前記三次元閉空間における各部の音圧レベルを演算することが好ましい。
波動音響解析においては、定常状態を想定して波動方程式を特定の周波数で変数分離したヘルムホルツ方程式を基礎方程式とすることで、容易に三次元空間の解析を実行できる。
さらに、分割された各要素の境界条件に基づいて離散化された境界積分方程式を解くことで、音場の音圧が演算される。
【0021】
さらに、前記騒音発生源が回転機器である場合に、前記第1ステップにおいて、当該回転機器から発生する騒音に関して、前記音圧レベルが高い基本周波数と当該基本周波数の倍調周波数(2倍調、3倍調等を含む)を、前記高音圧レベル周波数とすることが好ましい。
回転機器の場合、その音圧レベルが高い周波数が、回転機器の通常運転周波数に依存して特定される。さらに、騒音として大きく影響する周波数は、この基本周波数と倍調周波数であるため、これらに対して消音対策を施せば充分だからである。従って、第1ステップを大幅に簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態が対象とする地下室内に配置された空調室外機の原動部の状態を示す図
【図2】消音システムの構成を示す図
【図3】第1実施形態の第2騒音検出手段であるエラーマイクの配置位置の決定フローを示す図
【図4】第1実施形態の原動部から発生する騒音の低周波数領域での音圧分布を示す図
【図5】境界積分方程式の各変数の幾何学的関係を示す図
【図6】離散化された境界積分方程式の各変数の幾何学的関係を示す図
【図7】第1実施形態の波動音響解析で使用した空調室外機の原動部が配置された地下室を代表する格子モデルを示す図
【図8】第1実施形態の26Hzでの音圧レベルの高いエリア及び水平断面音圧レベル分布の一例を示す図
【図9】第1実施形態の52Hzでの音圧レベルの高いエリア及び水平断面音圧レベル分布の一例を示す図
【図10】第1実施形態の78Hzでの音圧レベルの高いエリア及び水平断面音圧レベル分布の一例を示す図
【図11】第1実施形態のエラーマイクの配置位置決定の使用した第3ステップで推定した音圧レベルの高いエリア及び水平断面音圧レベル分布の一例を示す図
【図12】第2実施形態及び第3実施形態の2次音源及び第2騒音検出手段であるエラーマイクの配置位置の決定フローを示す図
【図13】第2実施形態の地下室の状態を示す図
【図14】第2実施形態の地下室における騒音源からの音の音響状態を示す図
【図15】第2実施形態の地下室における2次音源からの音の音響状態を示す図
【図16】第2実施形態の地下室における消音効果を示す図
【図17】第2実施形態の地下室における周波数領域における消音効果を示す図
【図18】第3実施形態の地下室の状態を示す図
【図19】第3実施形態の地下室における騒音源からの音の音響状態を示す図
【図20】第3実施形態の地下室における消音効果を示す図
【図21】第3実施形態の地下室における周波数領域における消音効果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願に係る2次音源、第2騒音検出手段或いはそれらの両方の位置決定方法に関して、以下図面に基づいて説明する。
本願では、第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態を紹介する。
ここで、第一実施形態は、三次元閉空間内での騒音源、2次音源の位置が定まっている場合において、第2騒音検出手段の位置を決定する方法に関し、第二、第三実施形態は、三次元閉空間内での騒音源の位置が定まっている場合において、2次音源、第2騒音検出手段の位置を決定する方法に関する。
以下の説明では、先ず、第一実施形態について、1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況、2.消音システムの構成、3.騒音検出手段の位置決定方法の順に説明し、次に、第二、第三実施形態について、1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況、3.騒音検出手段の位置決定方法の順に説明する。全ての実施形態において、消音システムの構成は、第一実施形態のものと同一であるため、第二、第三実施形態では説明を省略する。
【0024】
〔第一実施形態〕
1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況
図1は、本願に係る消音システムが配置される三次元閉空間の一例としての地下室1の状態を示したものである。地下室1は図面からも判明するように、概略方形の閉空間として構成されている。ここで、本願における三次元閉空間の概念は、例えば、通気口といった、地下室1と外空間2とを繋ぐ音響の一部が漏れる程度の開口部3が設けられている構成も含む概念である。本願では、三次元閉空間内で音響的な腹部及び節部が形成されるのを問題とするため、三次元的な腹部、節部が形成される程度の閉鎖性があれば、本願の対象範囲に含まれる。
図1に示すように、地下室1内には、騒音発生源の一例として空調室外機の原動部4(具体的にはガスエンジン)が配置される。同図に示すように、このガスエンジン4もまた、ほぼ方形をしており、地下室1内のほぼ35%程度の空間を占有する。従って、図1において、原動部4の左下、右上及び左前側の側部に騒音が問題となる周部空間5が存在する。さらに、原動部4の天井側にも騒音が問題となる天井側空間6が広がっている。この天井側空間6は、地下室1の平断面積分の広がりをもっている。
この原動部4において、その騒音は、図1に騒音発生源7として記載する左下の壁部から発生するものと想定している。この想定は、実際の原動部4の筐体に設けられた通気孔に基づいた合理的な想定である。
【0025】
2.消音システムの構成
消音システム8は、第1騒音検出手段としてのリファレンスマイク9、第2騒音検出手段としてのエラーマイク10、2次音源としての一対の消音用スピーカ11と、リファレンスマイク9及びエラーマイク10により検出される騒音情報に基づいて、消音用スピーカ11から消音のための制御音を発生するための音響制御情報を生成する制御情報生成装置12(制御ボード)とから構成されている。
【0026】
前記リファレンスマイク9は、図1に示すように、上記騒音発生源7の近く直前方に配置する。従って、このリファレンスマイク9は、空調室外機の原動部4から発生し、地下室1内の空間に放出される騒音を、そのまま検出する。
【0027】
前記エラーマイク10は、上記騒音発生源7より壁13側に配置する。このエラーマイク10は、基本的に消音システム8による消音が良好に働いているか否かの検証用のマイクである。本願では、このエラーマイク10の配置位置が、独特の手法により決定される。
【0028】
一対の消音用スピーカ11は、制御情報生成装置12から制御音を発生するための制御情報を受取り制御音を発生する。一対の消音用スピーカ11は、騒音発生源7の近傍に騒音発生源7をその両脇から挟む位置関係で、騒音発生源7から発生する騒音の伝播方向(図1において左下向き)に向けて位置させる。
【0029】
制御情報生成装置12は、リファレンスマイク9、エラーマイク10及び消音用スピーカ11と電気的に接続されており、リファレンスマイク9及びエラーマイク10から、それぞれ検出情報を受取る。一方、一対の消音用スピーカ11には、この制御情報生成装置12内に設けられている制御ボード12aにより、リファレンスマイク9及びエラーマイク10の検出情報に基づいて決定される制御音を消音用スピーカ11から発生するための情報を送る。
【0030】
制御ボード12aの働きに関して説明すると、本願で採用するFiltered−XLMSアルゴリズムを採用する消音システム8は、図2(a)の構成を取っており、xnは第1位置に配置される第1騒音検出手段としてのリファレンスマイク9により検出されるリファレンス信号であり、enは、第2位置に配置される第2騒音検出手段としてのエラーマイク10に検出される誤差信号である。
そして、一次経路(この経路の伝達関数をP(Z)と記載している)を経て伝達される騒音と、二次経路(この経路の伝達関数をC(Z)と記載している)を経て伝達される制御音とが、エラーマイク10が位置する第2位置に到達して残留する騒音である誤差が0となった場合に、消音が良好に行われたこととなる。
【0031】
従って、この消音システム8では、図2(b)で示すように、リファレンスマイク9により、騒音発生源7からの騒音波形を検出し、この騒音であるリファレンス信号xnを基にエラーマイク10における誤差信号enである音が小さくなるように、リファレンス信号xnとは逆位相の制御信号ynを生成する。この制御信号ynをアンプ12bで増大させ、消音用スピーカ11から発生させる。また、地下室1に配置される本消音システム8では高周波の騒音は逆に増大させてしまう可能性があるため、制御ボード12a内にローパスフィルタ12cを備えている。
【0032】
図2(a)(b)を参照して、この消音システム8の原理を説明すると、騒音が伝搬する一次経路と制御音源を経由する二次経路の関係は、以下の数1となる。
【0033】
【数1】
【0034】
ここで、事前に二次経路の特性を模擬したフィルタが二次経路を精度よく表しているとき、
【0035】
【数2】
【0036】
となり、数1、数2から、
【0037】
【数3】
【0038】
とできる。従って、数3が成り立つように騒音制御フィルタ(このフィルタの伝達関数をH(Z)と記載している)を最適化すればよい。
騒音制御フィルタを求めるためにLMSアルゴリズムは、数4で示される。
【0039】
【数4】
【0040】
ここで、μはステップサイズゲインである。
【0041】
離散化した状態での適応制御は、図2(c)の形態となる。この図では、騒音制御フィルタを実際に使用するFIRフィルタ(Finite Impulse Responseフィルタ(有限インパルス応答フィルタ))と記載し、二次経路フィルタと係数更新アルゴリズムを適応制御アルゴリズムと記載している。
図2(c)から判明するように、本消音システム8では、リファレンス信号を主入力信号x[n]とし、この主入力信号x[n]にフィルタ係数hk[n]をかけた出力信号y[n]を生成し、その出力信号y[n]と主入力信号x[n]との合成信号(具体的には和信号で、この信号が誤差信号ε[n]である)が0となるようなhk[n]が生成される。
【0042】
FIRフィルタは、具体的には、入力信号x〔n−k〕にフィルタ係数hk〔n〕をかけた結果y〔n〕を出力するフィルタである。
【0043】
【数5】
【0044】
さらに、誤差信号ε[n]を最小にするためのフィルタ係数の作成は、公知のLMS適応制御アルゴリズムを採用することで実行できるが、このアルゴリズムは以下の数6の形態となる。
【0045】
【数6】
ここで、μはステップサイズパラメータであり、下記に示す例では0.00002程度を採用した。さらに、タップ数Mは、具体的には1024とした。
【0046】
3.騒音検出手段の位置決定方法
本願に係る第2騒音検出手段の配置位置検定方法では、図3に示すように、第1〜第4ステップを経て、第2騒音検出手段であるエラーマイク10の配置位置を決定する。
【0047】
第1ステップ
第1ステップでは、三次元開放空間において騒音発生源から発生する騒音に関して、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を、音圧レベルに従って複数求める。
図4は、先に説明した空調室外機の原動部(騒音発生源7)4から発生する騒音を、開放空間で検出した結果である。空調室外機などの回転機械では、回転により発生する騒音でピーク周波数が決まり、例に示す機器の騒音は26Hz(基本周波数)、52Hz(2倍調周波数),78Hz(3倍調周波数)にピークを持っていた。これら周波数が、本願にいうところの高音圧レベル周波数である。本願で消音に対象とする低周波領域は100Hz以下の領域である。
【0048】
第2ステップ
第2ステップでは、第1ステップで求められる複数の高音圧レベル周波数の音それぞれについて、騒音発生源を配置した状態における三次元閉空間内での、各高音圧レベル周波数の音が前記三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。
このような波動音響解析には境界要素法を使用する。境界要素法は、波動音響学的に音場を解析するための数値解析手法であり、一般的には定常状態を想定し、波動方程式を特定の周波数で変数分離したヘルムホルツ方程式を基礎方程式とする。そして、ヘルムホルツ方程式を境界上の境界積分方程式の形態に変換した上で、要素に離散化することで音場を解析する。また、境界要素法は、有限要素法と違い、系に単位力が作用したときの系の応答を示す基本解を必要とするため、基本解が知られていない問題には適用できない。
上記の波動音響解析に使用する波動方程式を数7に、ヘルムホルツ方程式を数8に示した。さらに、このヘルムホルツ方程式に対応する境界積分方程式を数9に示した。ここで、この境界積分方程式で使用する三次元ヘルムホルツ方程式の基本解Gは数10に示す形態となる。図5に、境界積分方程式の各変数の幾何学的関係を示した。
【0049】
【数7】
【0050】
【数8】
【0051】
境界積分方程式
【数9】
V:法線方向粒子速度、ρ:空気密度、C:立体角
Pa:図5のaにおける音圧、Pb:図5のbにおける音圧、G(ra,b):図5のab間の距離ra,bを変数とする基本解、Vb:図5における法線方向粒子速度
【0052】
【数10】
【0053】
そして、数9、数10に使用して境界上で離散化した境界積分方程式は数11となる。
【0054】
境界積分方程式の離散化
【数11】
C:iにおける立体角を4πで割った値
領域の内部においてC=1、滑らかな境界においてC=1/2、領域の外側でC=0となる。
【0055】
また、図6に、離散化された境界積分方程式の各変数の幾何学的関係を示した。
数11に示す方程式に基づいた解析に際しては、FORTRANで記載されたプログラムを使用した。
【0056】
上述の離散化された境界積分方程式の適用対象とした格子モデルを、図7に示した。
解析に於ける境界の要素分割は、境界要素法では、差分法や有限要素法のように、空間を要素分割する必要はなく、境界のみを要素分割でよい。それら要素の長さは、波動性を適切に計算するために、波長の1/8以下に分割するのが妥当である。そのため、波長の短い高周波では、細かく要素分割する必要があるため、計算負荷が増大する。本願のように、低周波数領域を対象とする解析では、要素の長さは比較的長い合理的な長さとできる。実際の計算では、解析対象とした周波数領域が100Hz以下であるため、単一の境界要素の長さは400mmとした。
【0057】
また、解析条件として、対象に合わせて境界条件を設定する必要がある。境界条件としては、剛壁を想定した完全反射面、音源を想定した振動面、吸音面を想定したインピーダンス境界がある。実際の計算では、共鳴が問題になる空間は、音を吸収しにくいコンクリートなどの硬い壁が多いため、完全反射面かわずかな吸音を与えるインピーダンス境界を用いた。
【0058】
図8、図9、図10には、それぞれ、上記の26Hz、52Hz,78Hzについて、高音圧レベル周波数の音圧レベルが高いエリア(左側の図で、閉領域として囲まれた領域)、水平断面音圧レベル分布の一例(右側の図で、音響特性の節部を濃部で示す)を示した。周波数によっては、騒音発生源の側よりも遠方の方が大きな騒音となる場合があることが判る。また、腹部及び節部は三次元的に分布していることが分かる。
【0059】
第3ステップ
この第3ステップでは、第2ステップで求められた、全ての高音圧レベル周波数の音に関する音響状態に基づいて、低周波数領域での全ての高音圧レベル周波数を含む三次元空間の音響状態を推定する。26Hz、52Hz,78Hzの結果を使用して、低周波数領域(20〜100Hz)の騒音として合成(具体的には、単純な合算)した場合での音圧レベルが高いエリア、水平断面音圧レベル分布の一例を図11に示した。この図から判明するように、地下室の場合、図11右側のエリア図で、右奥側に示される側壁13の下部に近い部位に、第2騒音検出手段を配置すべきエリアが広がっていることが分かる。
【0060】
第4ステップ
この第4ステップでは、第3ステップで求められる三次元空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元空間の音圧レベルが平均音圧レベルより高い位置を第2騒音検出手段の配置位置とする。
これまで説明してきた図11に示した例の場合、空調室外機の配置側(図1の左下側)で壁面近傍の最下部位置が好ましいことが判明した。
このように、騒音が大きい位置にエラーマイクを配置することでS/N比の高い信号が得られ、効果的な消音が可能となる。また、特に騒音を低減したい場所、エラーマイクが劣化しにくい場所なども考慮してエラーマイクの配置位置を選定することが好ましい。
【0061】
〔第二実施形態〕
1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況
図13は、この実施形態に係る消音システムが配置される三次元閉空間の一例としての地下室1の状態を示したものである。地下室1は図面からも判明するように、概略方形の閉空間として構成されている。
図13に示すように、地下室1の平面視短辺側の壁面上部には、騒音発生源の一例として換気扇40が配置される。
3.2次音源及び第2騒音検出手段の位置決定方法
この実施形態に係る2次音源及び第2騒音検出手段の配置位置検定方法では、図12に示すように、第1ステップ、第2ステップ(騒音源からの音による音響状態の導出)、2次音源位置決定・解析ステップ(2次音源の位置決定、及び、決定された2次音源からの音による音響状態の導出)、第2騒音検出手段位置決定ステップ(第2騒音検出手段の位置決定)を実行するのである。
【0062】
第1ステップ(#10)
第1ステップでは、三次元開放空間において騒音発生源から発生する騒音に関して、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を、音圧レベルに従って求める。
先に説明した換気扇(騒音発生源)40では、41Hz(基本周波数)にピークを持っていた。この周波数が、本願にいうところの高音圧レベル周波数である。本願で消音に対象とする低周波領域は100Hz以下の領域である。
【0063】
第2ステップ(#20)
第2ステップでは、第一実施形態と同様に、第1ステップで求められる高音圧レベル周波数の音について、騒音発生源を配置した状態における三次元閉空間内での、各高音圧レベル周波数の音が三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。解析手法は、先の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0064】
図14に、上記の41Hzについての結果を示した。
左側の図面(a)が音圧レベルの高い領域(方形四隅にある囲まれた3次元の領域)を示し、右側の図面(b)が音圧分布で、音圧の高い部分を暗い領域として濃度で示した。
これらの図から、平面視方形の空間では、方形の四隅に腹部が形成され、方形の中央側に十字形に節部が形成されていることが判る。また、腹部及び節部は三次元的に分布していることが分かる。
【0065】
2次音源位置決定・解析ステップ(#30)
この2次音源位置決定・解析ステップでは、第2ステップで求められた、高音圧レベル周波数の音に関する音響状態に基づいて、スピーカ11(2次音源)の位置を、音響状態で腹部となっている部位に決定する。図13から判明するように、この例では、2次音源の位置を、平面視方形となる三次元閉空間において、騒音源である換気扇40が位置される短辺側に沿った、騒音源とは反対側の角とした。この部位は、求められた音響状態において音響の腹部の一つの位置である。
【0066】
このようにして決定した2次音源を配置した状態における三次元閉空間内での、高音圧レベル周波数の音が三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。解析手法は、先の形態と同様であるので、説明は省略する。
図15に、上記の41Hzについての結果を示した。
左側の図面(a)が音圧レベルの高い領域(方形四隅にある囲まれた3次元の領域)を示し、右側の図面(b)が音圧分布で、音圧の高い部分を暗い領域として濃度で示した。
これらの図から、平面視方形の空間では、方形の四隅に腹部が形成され、方形の中央側に十字形に節部が形成されていることが判る。
【0067】
第2騒音検出手段位置決定ステップ(#40)
この第2騒音検出手段位置決定ステップでは、2次音源位置決定・解析ステップで求められる三次元空間の音響状態において、定在波の腹部で、三次元空間の音圧レベルが平均音圧レベルより高い位置をエラーマイク10(第2騒音検出手段)の配置位置とする。
これまで説明してきた図13に示した例の場合、2次音源に対向した位置が、好適な位置となった。図16が、消音効果を示した音圧分布であり、図17が周波数領域における消音効果を示したものである。目的とした41Hzで消音効果が得られている。
このように、騒音が大きい位置にエラーマイクを配置することでS/N比の高い信号が得られ、効果的な消音が可能となる。
【0068】
〔第三実施形態〕
1.本願に係る消音システムが配置される配置場所の状況
図18は、この実施形態に係る消音システムが配置される三次元閉空間の一例としての地下室1の状態を示したものである。地下室1は図面からも判明するように、概略方形の閉空間として構成されている。
図18に示すように、地下室1の平面視短辺側の壁面上部には、騒音発生源の一例として一対の換気扇41が配置される。
3.2次音源及び第2騒音検出手段の位置決定方法
この実施形態に係る2次音源及び第2騒音検出手段の配置位置検定方法でも、図12に示すように、第1ステップ、第2ステップ(騒音源からの音による音響状態の導出)、2次音源位置決定・解析ステップ(2次音源の位置決定、及び、決定された2次音源からの音による音響状態の導出)、第2騒音検出手段位置決定ステップ(第2騒音検出手段の位置決定)を実行する。
【0069】
第1ステップ(#10)
第1ステップでは、三次元開放空間において騒音発生源から発生する騒音に関して、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を、音圧レベルに従って求める。
先に説明した換気扇(騒音発生源)41でも、41Hz(基本周波数)にピークを持っていた。これら周波数が、本願にいうところの高音圧レベル周波数である。本願で消音に対象とする低周波領域は100Hz以下の領域である。
【0070】
第2ステップ
第2ステップでは、第一実施形態と同様に、第1ステップで求められる高音圧レベル周波数の音について、騒音発生源を配置した状態における三次元閉空間内での、各高音圧レベル周波数の音が前記三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。解析手法は、先の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0071】
図19に、上記の41Hzについての結果を示した。
左側の図面(a)が音圧レベルの高い領域(方形四隅にある囲まれた3次元の領域)を示し、右側の図面(b)が音圧分布で、音圧の高い部分を暗い領域として濃度で示した。
これらの図から、平面視方形の空間では、方形の四隅に腹部が形成され、方形の中央側に十字形に節部が形成されていることが判る。また、腹部及び節部は三次元的に分布していることが分かる。
【0072】
2次音源位置決定・解析ステップ(#30)
この2次音源位置決定・解析ステップでは、第2ステップで求められた、高音圧レベル周波数の音に関する音響状態に基づいて、スピーカ11(2次音源)の位置を、音響状態で腹部となっている部位に2次音源の位置を決定する。この例でも、2次音源の位置を、平面視方形となる三次元閉空間において、騒音源である一方の換気扇41が位置される短辺側に沿った騒音源側の角とした。この部位は、求められた音響状態において音響の腹部の一つの位置である。
【0073】
このようにして決定した2次音源を配置した状態における三次元閉空間内での、高音圧レベル周波数の音が三次元空間内で発生した場合の音響状態を波動音響解析で求める。解析手法は、先の形態と同様であるので、説明は省略する。
図15と同様な結果が得られた。
【0074】
第2騒音検出手段位置決定ステップ(#40)
この第2騒音検出手段位置決定ステップでは、2次音源位置決定・解析ステップで求められる三次元空間の音響状態において、定在波の腹部で、三次元空間の音圧レベルが平均音圧レベルより高い位置をエラーマイク10(第2騒音検出手段)の配置位置とする。
これまで説明してきた図18に示した例の場合、2次音源に対向した位置が、好適な位置となった。図20が、消音効果を示した音圧分布であり、図21が周波数領域における消音効果を示したものである。目的とした41Hzで消音効果が得られている。
このように、騒音が大きい位置にエラーマイクを配置することでS/N比の高い信号が得られ、効果的な消音が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
三次元閉空間に配置される騒音発生源から発生する騒音を良好に消音するのに、ANC技術を充分に生かせる第2騒音検出手段の位置決定方法を得ることができた。
【符号の説明】
【0076】
1 地下室(三次元閉空間)
4 空調室外機の原動部
9 リファレンスマイク(第1騒音検出手段)
10 エラーマイク(第2騒音検出手段)
11 消音用スピーカ(2次音源)
12 制御情報生成装置(制御ボード)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音発生源から発生する騒音を、第1位置に配置される第1騒音検出手段で検出するとともに、前記第1位置とは異なった第2位置に配置される第2騒音検出手段により検出し、前記第1騒音検出手段により検出される第1騒音情報及び前記第2騒音検出手段により検出される第2騒音情報に基づいて2次音源から制御音を発生して少なくとも前記第2位置で消音する消音システムにおける、前記2次音源又は前記第2騒音検出手段の位置決定方法であって、
前記騒音発生源が三次元閉空間内に配置される場合に、
三次元開放空間において前記騒音発生源から発生する騒音について、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を求める第1ステップと、
前記第1ステップで求められる高音圧レベル周波数の音について、前記騒音発生源を配置した状態で、前記三次元閉空間内において、前記高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求める第2ステップとを実行し、
求められた前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記2次音源又は第2騒音検出手段を配置する位置とする位置決定方法。
【請求項2】
前記2次音源を配置する2次音源配置腹部と、前記第2騒音検出手段を配置する第2騒音検出手段配置腹部とが異なった腹部であり、
前記三次元閉空間において、前記2次音源と前記第2騒音検出手段とが対向した位置関係とする請求項1記載の位置決定方法。
【請求項3】
前記第1ステップにおいて、前記高音圧レベル周波数を音圧レベルに従って限られた数求め、
前記第2ステップにおいて、前記第1ステップで限られた数の求められる高音圧レベル周波数の音それぞれについて、前記騒音発生源を配置した状態で、前記三次元閉空間内において、前記各高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求め、
前記第2ステップで求められた、限られた数の高音圧レベル周波数の音に関する前記音響状態に基づいて、前記低周波数領域での前記限られた数の高音圧レベル周波数を含む前記三次元閉空間の音響状態を推定する第3ステップを実行し、
第3ステップで求められる前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記2次音源又は第2騒音検出手段を配置する位置とする請求項1又は2記載の位置決定方法。
【請求項4】
前記第2騒音検出手段の位置として、前記第3ステップで求められる前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが最高音圧レベルとなる位置を前記第2位置とする請求項3記載の位置決定方法。
【請求項5】
前記第1ステップ及び前記第2ステップを実行し、
前記第2ステップで求められた音響状態に関し、定在波の腹部を前記2次音源の位置と決定するとともに、当該決定された位置に前記2次音源を配置した状態で前記三次元閉空間内において、前記各高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求める2次音源位置決定・解析ステップを実行し、
前記2次音源位置決定・解析ステップで得られた音響状態において、定在波の腹部を前記第2騒音検出手段の位置である前記第2位置とする請求項2記載の位置決定方法。
【請求項6】
前記第2ステップの波動音響解析において、基礎方程式をヘルムホルツ方程式とするとともに、離散化された境界積分方程式に従って、前記三次元閉空間における各部の音圧レベルを演算する請求項1〜5のいずか一項記載の位置決定方法。
【請求項7】
前記騒音発生源が回転機器である場合に、前記第1ステップにおいて、当該回転機器から発生する騒音に関して、前記音圧レベルが高い基本周波数と当該基本周波数の倍調周波数を、前記高音圧レベル周波数とする請求項1〜6の何れか一項記載の位置決定方法。
【請求項1】
騒音発生源から発生する騒音を、第1位置に配置される第1騒音検出手段で検出するとともに、前記第1位置とは異なった第2位置に配置される第2騒音検出手段により検出し、前記第1騒音検出手段により検出される第1騒音情報及び前記第2騒音検出手段により検出される第2騒音情報に基づいて2次音源から制御音を発生して少なくとも前記第2位置で消音する消音システムにおける、前記2次音源又は前記第2騒音検出手段の位置決定方法であって、
前記騒音発生源が三次元閉空間内に配置される場合に、
三次元開放空間において前記騒音発生源から発生する騒音について、低周波領域において音圧レベルが高い周波数である高音圧レベル周波数を求める第1ステップと、
前記第1ステップで求められる高音圧レベル周波数の音について、前記騒音発生源を配置した状態で、前記三次元閉空間内において、前記高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求める第2ステップとを実行し、
求められた前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記2次音源又は第2騒音検出手段を配置する位置とする位置決定方法。
【請求項2】
前記2次音源を配置する2次音源配置腹部と、前記第2騒音検出手段を配置する第2騒音検出手段配置腹部とが異なった腹部であり、
前記三次元閉空間において、前記2次音源と前記第2騒音検出手段とが対向した位置関係とする請求項1記載の位置決定方法。
【請求項3】
前記第1ステップにおいて、前記高音圧レベル周波数を音圧レベルに従って限られた数求め、
前記第2ステップにおいて、前記第1ステップで限られた数の求められる高音圧レベル周波数の音それぞれについて、前記騒音発生源を配置した状態で、前記三次元閉空間内において、前記各高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求め、
前記第2ステップで求められた、限られた数の高音圧レベル周波数の音に関する前記音響状態に基づいて、前記低周波数領域での前記限られた数の高音圧レベル周波数を含む前記三次元閉空間の音響状態を推定する第3ステップを実行し、
第3ステップで求められる前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが空間内の平均音圧レベルより高い位置を前記2次音源又は第2騒音検出手段を配置する位置とする請求項1又は2記載の位置決定方法。
【請求項4】
前記第2騒音検出手段の位置として、前記第3ステップで求められる前記三次元閉空間の音響状態において、定在波の腹部で、前記三次元閉空間の音圧レベルが最高音圧レベルとなる位置を前記第2位置とする請求項3記載の位置決定方法。
【請求項5】
前記第1ステップ及び前記第2ステップを実行し、
前記第2ステップで求められた音響状態に関し、定在波の腹部を前記2次音源の位置と決定するとともに、当該決定された位置に前記2次音源を配置した状態で前記三次元閉空間内において、前記各高音圧レベル周波数の音が前記騒音発生源から発生した場合の音響状態を波動音響解析により求める2次音源位置決定・解析ステップを実行し、
前記2次音源位置決定・解析ステップで得られた音響状態において、定在波の腹部を前記第2騒音検出手段の位置である前記第2位置とする請求項2記載の位置決定方法。
【請求項6】
前記第2ステップの波動音響解析において、基礎方程式をヘルムホルツ方程式とするとともに、離散化された境界積分方程式に従って、前記三次元閉空間における各部の音圧レベルを演算する請求項1〜5のいずか一項記載の位置決定方法。
【請求項7】
前記騒音発生源が回転機器である場合に、前記第1ステップにおいて、当該回転機器から発生する騒音に関して、前記音圧レベルが高い基本周波数と当該基本周波数の倍調周波数を、前記高音圧レベル周波数とする請求項1〜6の何れか一項記載の位置決定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図21】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図21】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−107673(P2011−107673A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91648(P2010−91648)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
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