説明

消音ダクト

【課題】 住宅の天井裏等に配管された室内の換気に使用する消音ダクトであって、送風源から発生する騒音やダクト内を流通する風の音を効果的に吸収することができると共に優れた断熱性を有する消音ダクトを提供する。
【解決手段】 無数の細かい通気孔2を設けている不織布からなるダクト内壁1の外周面に補強条体3を螺旋状に巻着すると共にこの補強条体3上に紐状の緩衝断熱条材4を巻装して、隣接する緩衝断熱条材部の上面間に独立発泡合成樹脂製帯状材5Aを架設しながら、且つ隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材部の対向側端面を一体に接続することにより管状のダクト外壁5を形成してあり、且つ、上記補強条体3とこの補強条体3上に設けている緩衝断熱条材4とによってダクト内壁1とダクト外壁5との間に形成した空間部7を広くして音を効果的に吸収させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅の天井裏等に配管されて室内の換気や室内への冷暖房用の通風等を行う消音ダクトの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、居住環境を良好にするために気密性を有する住宅が一般的に建築されるようになり、それに伴って気密な室内を安定して換気や冷暖房を行うことが要求されている。このような要求を満たすために、住宅の天井裏や壁等を利用してダクトを配設し、該ダクトを通じて送風機等の送風源からの外部空気を室内に供給したり、或いは、上下階層間を循環させたりする給気システムが採用されているが、送風機等の駆動によって発生する騒音やダクト内を流通する際の風の音がダクトを通じて室内に伝搬し、不快感を与えることになる。
【0003】
このため、例えば、特許文献1に記載されているように、不織布等の通気性を有するシート状物からなる管状の内壁と、この内壁の外周面に一定のピッチでもって螺旋状に巻着してなる硬質合成樹脂製の補強条体と、隣接する補強条体間に介在させている一定厚みを有する帯状の発泡合成樹脂材からなり、且つ、この発泡合成樹脂樹脂材に長さ方向及び周方向に小間隔毎に吸音穴を設けてなる断熱層と、この断熱層を被覆している非通気性軟質合成樹脂シートよりなる外壁とから構成された消音ダクトが知られている。
【0004】
この消音ダクトによれば、不織布等からなる内壁に設けている細かい通気孔を通じて音波が断熱層に設けている吸音穴内に入る際に、その音のエネルギーを減衰させると共に吸音穴を塞いでいる内壁部分が振動して吸音作用を奏し、さらに、細かい通気孔から吸音穴内の空間部に音波が入った際に該音波が急激に拡散すると共にこの吸音穴の周壁で乱反射しながら吸音穴内の空気を振動させることによって消音作用を発揮させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−313043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような消音ダクトによれば、断熱層に設けている吸音穴による吸音作用を向上させるためには、該吸音穴を大きくすることが望ましいが、大きくすると断熱層の容積がそれだけ少なくなって断熱効果が低下すると共に、断熱層が管の長さ方向に連続することなく補強条体によって分断された構造となっているので、断熱効果が損なわれるといった問題点がある。さらに、この消音ダクトを湾曲させた際に、凸円弧状に湾曲する外側周面においては引張力が発生し、凹円弧状に湾曲する内側周面においては圧縮力が発生するが、この圧縮力によって隣接する補強条体間の間隔が狭まり、この間隔部分に介在している上記断熱層が圧縮して吸音穴が縮小し、さらには閉塞して消音効果が低下するといった問題点が生じる。
【0007】
また、吸音穴を塞いでいる不織布等からなる内壁部分の面積は比較的狭いために音波による振幅幅が小さくて十分な吸音作用を発揮することができない等の問題点がある。
【0008】
一方、消音効果を向上させるためには、例えは、図3に示すように、不織布等の通気性を有するダクト内壁11の外周面に螺旋巻きしている補強条体12、12間に断熱層を介在させることなくこの補強条体12上に一定厚みと一定幅を有する帯状の発泡合成樹脂材を互いにその対向側端面同士を接合させながら螺旋巻きすることによってダクト外壁となる管状の断熱層13を形成し、この断熱層13の外周面を軟質合成樹脂製被覆層14によって被覆してなる吸音ダクトを形成すれば、上記内壁11と断熱層13との対向面間に比較的広い空間(空気層)15を形成することができてこの空間15により上記吸音穴に比べて消音効果を向上させることができる。
【0009】
しかしながら、このように構成した吸音ダクトによれば、製造時において、断熱層13を形成するための帯状の発泡合成樹脂材を、ダクト内壁11の外周面に螺旋巻きしている補強条体12上に張力をかけながら巻装する際に、その張力の変動によって補強条体12に対する発泡合成樹脂材の内周面の食い込み量が大きくなる部分や小さくなる部分、或いは、補強条体12の頂面から離間した部分が発生して安定した製品が得られないばかりでなく、充分な消音効果を奏することができない部分が発生するといった問題点がある。
【0010】
さらに、この消音ダクトにおいても、ダクトを屈曲させると、図4に示すように、凹円弧状に湾曲する内側周面においては、その内側周面に発生する長さ方向の圧縮力によって隣接する補強条体12、12間上の断熱層部分が補強条体12、12を支点として撓み変形して内側に撓むと、補強条体12に大きく食い込んでいる部分においては断熱層部分が内壁11に当接して上記空間15が大きく狭められ、曲線施工を行った場合には消音作用が著しく低下するといった問題点が生じる。また、隣接する帯状の発泡合成樹脂材は、互いにその対向側端面同士を融着等によって一体に接続させることなく、単に接合させた状態で螺旋巻きしていると、曲げ施工を行った際にその対向側端面間に隙間が発生して断熱機能が低下するといった問題点が生じることになる。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、全長に亘って均一な消音作用を発揮することができる安定した構造を有し、且つ、消音効果を一段と向上させることができる共に、屈曲させても断熱機能を低下させることなく良好な消音作用を奏することができる消音ダクトを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の消音ダクトは、請求項1に記載したように、通気性と可撓性を有するシート状物からなる管状のダクト内壁と、このダクト内壁の外周面に一定のピッチでもって螺旋状に巻着している硬質合成樹脂製の補強条体と、この補強条体上に補強条体と同じピッチでもって螺旋巻きして補強条体上に重ね合わせている紐状の緩衝断熱条材と、一定幅と厚みを有する独立発泡合成樹脂製帯状材を、対向する側端面同士を一体に接合させながら螺旋巻きし、且つ、その内周面を上記緩衝断熱条材の外面に一体に固着している管状の断熱層からなるダクト外壁と、このダクト外壁の外周面を被覆している軟質合成樹脂製被覆層とからなる構造を有する。
【0013】
このように構成した消音ダクトにおいて、請求項2に係る発明は、ダクト外壁の外周面を被覆している上記軟質合成樹脂製被覆層は、一定幅を有する軟質合成樹脂製帯状材からなり、この軟質合成樹脂製帯状材をダクト外壁を形成している独立発泡合成樹脂製帯状材の外面に重ね合わせていると共にその一側端部を隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材の対向側端面間に介在させてこれらの対向側端面に熱融着によって一体に固着してあり、さらに、隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材の対向側端面からこの軟質合成樹脂製帯状材の一側端を内方に突出させてこの一側端を介して独立発泡合成樹脂製帯状材の内周面に紐状の緩衝断熱条材の外面を一体に融着、固定していることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項3に係る発明は、上記紐状の緩衝断熱材は独立発泡合成樹脂製帯状材と同じ独立発泡合成樹脂からなることを特徴とし、請求項4に係る発明は、ダクト内壁は細かい無数の通気孔を設けている不織布からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、消音ダクトは、通気性と可撓性を有するシート状物からなる管状の内壁の外周面に一定のピッチでもって硬質合成樹脂製の補強条体を螺旋状に巻着すると共にこの補強条体上に紐状の緩衝断熱条材を介して、一定幅と厚みを有する独立発泡合成樹脂製帯状材を、対向する側端面同士を一体に接合させながら螺旋巻きし、且つ、その内周面を上記緩衝断熱条材の外面に一体に固着している管状の断熱層からなるダクト外壁を設けているので、内壁の外周面に螺旋状に巻着している硬質合成樹脂製の補強条体によって、ダクト全体を耐圧強度と可撓性を有する円管形状に保持することができ、施工が容易で且つ良好な通風性を発揮するダクトを提供することができるのは勿論、ダクトの製造時において、ダクト外壁を形成するための独立発泡合成樹脂製帯状材を先に補強条体上に螺旋巻きした緩衝断熱条材上に張力をかけながら巻装する際に、その張力が変動しても張力の大小に応じて緩衝断熱条材を圧縮量及び補強条体に対する食い込み量を変動させながら緩衝断熱条材上で隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材の対向側端部を常に正確に接続させることができ、従って、全長に亘って均一な断熱作用と消音作用を奏する安定した精度の良い構造を有するダクトを提供することができる。
【0016】
さらに、通気性を有するシート状物からなるダクト内壁を通じてこのダクト内壁の外周面側の空間部に音波が入る際に、隣接する補強条体間のシート状物部分の面積が広いので、このシート状物部分が隣接する補強条体を支点として大きく振動して効果的な吸音作用を発揮することができ、その上、音波がダクト内壁を通過して、隣接する補強条体間における独立発泡合成樹脂製帯状材とダクト内壁との対向面間で形成された断面横長長方形状の空間部に入った時に、この空間部は、補強条体上に重ね合わせている緩衝断熱条材によって断熱層であるダクト外壁を形成している上記独立発泡合成樹脂製帯状材とダクト内壁との間の間隔が拡げられていて広くて大きな空間部に形成されているから、この空間部内で急激に拡散して効果的に消音され、且つ、上記空間部を形成している独立発泡合成樹脂製帯状材とダクト内壁及び緩衝断熱条材との対向面で音波を繰り返し乱反射させながら吸音して優れた消音効果を奏することができる。
【0017】
また、この消音ダクトを曲線施工を行う際に屈曲させた場合、圧縮力が発生する凹円弧状に湾曲したホースの内側周壁部においては、その圧縮力により隣接する補強条体間の断熱層部分が内径方向に撓んでも、上述したように、この断熱層を形成している独立発泡合成樹脂製帯状材とダクト内壁との対向面間が補強条体上に重ね合わせている緩衝断熱条材によって嵩上げされ、補強条体上に断熱層を直接、配設したダクトに比べて拡げられているから、所定の消音作用を奏する空間部を確保することができる。
【0018】
その上、上記独立発泡合成樹脂製帯状材からなる断熱層と共に上記緩衝断熱材が断熱作用を奏して優れた断熱作用を発揮することができるその凹凸粗面によって音波を乱反射させて消音機能も発揮することができ、さらにダクトを屈曲させた際に、圧縮力が発生する凹円弧状に湾曲したホースの内側周壁部においては、上述したように隣接する補強条体間の断熱層部分を広い空間部に向かって内方に容易に撓ませながらダクトを無理なく円滑に屈曲させることができる。
【0019】
また、上記断熱層は一定幅と厚みを有する独立発泡合成樹脂製帯状材を、対向する側端面同士を接合させ且つその接合部を一体に固着させながら上記ダクト内壁上に補強条体と緩衝断熱条材を介して螺旋巻きすることによって、ダクトの全長に亘り連続してなる管状の断熱層に形成しているので、直線施工は勿論、曲線施工を行っても独立発泡合成樹脂製帯状材の対向する側端面間に隙間などを生じさせることなく全長に亘って均一な断熱作用を奏することができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、断熱層からなるダクト外壁の外周面を一定幅を有する軟質合成樹脂製帯状材からなる軟質合成樹脂製被覆層によって全長に亘って被覆しているので、体裁のよい外観を呈すると共に、軟質合成樹脂製帯状材の一側端部を隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材の対向側端面間に介在させてこれらの対向側端面に熱融着によって一体に固着しているので、隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材の対向側端面同士をこの軟質合成樹脂製帯状の熱融着によって強固に一体化させて全長に亘って均一な断熱作用を奏する管状の断熱層を形成することができる。
【0021】
さらに、隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材の対向側端面から内側に突出した軟質合成樹脂製帯状材の一側端を介して独立発泡合成樹脂製帯状材の内周面に上記緩衝断熱条材の外面を融着、固定させているので、独立発泡合成樹脂製帯状材と緩衝断熱条材とが軟質合成樹脂製帯状材の一側端によって一体化して優れた断熱作用を奏するばかりでなく、緩衝断熱条材はその内面をダクト内壁上に螺旋巻きしている上記補強条体の頂部に弾性変形によって係止しているので、独立発泡合成樹脂製帯状材からなるダクト外壁とダクト内壁とが互いに長さ方向に対して妄動することなく安定した形態の吸音ダクトを提供することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、上記紐状の緩衝断熱材は独立発泡合成樹脂製帯状材と同じ独立発泡合成樹脂からなるので、断熱層を形成している独立発泡合成樹脂製帯状材と共にこの緩衝断熱条材によって断熱効果を向上させることができる。また、請求項4に係る発明によれば、ダクト内壁は細かい無数の通気孔を設けている不織布からなるので、この不織布に設けている無数の通気孔と共に不織布の繊維間で形成されている隙間によって優れた吸音作用を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明消音ダクトの一部分の一部縦断側面図。
【図2】屈曲させた状態の縦断側面図。
【図3】緩衝断熱条材を設けていない消音ダクトの一部分の一部縦断側面図。
【図4】屈曲させた状態の縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1において、消音ダクトAは、内外面間に貫通する無数の細かい通気孔2を周方向及び長さ方向に小間隔毎に設けている不織布からなる一定径の管状に形成されたダクト内壁1と、このダクト内壁1の外周面に一定のピッチでもって全長に亘って螺旋状に巻着してなる一定高さと一定幅とを有する硬質合成樹脂製の補強条体3と、この補強条体3上に該補強条体3と同じピッチでもって螺旋巻きして補強条体3上に重ね合わせている紐状の緩衝断熱条材4と、一定幅と一定厚みを有する独立発泡合成樹脂製帯状材5Aを、先に一巻きした独立発泡合成樹脂製帯状材部5aと次に一巻きする独立発泡合成樹脂製帯状材部5aとの対向側端面同士を一体に接合させながら螺旋巻きすることによって形成した管状の断熱層からなり、且つ、この断熱層の内周面を上記緩衝断熱条材4の外面に一体に固着してなるダクト外壁5と、このダクト外壁5の外周面を全面的に被覆している軟質合成樹脂製被覆層6とから構成されている。
【0025】
上記独立発泡合成樹脂製帯状材5Aにおけるダクトの長さ方向の幅は、ダクト内壁1の外周面に螺旋巻きしている上記補強条体3の螺旋ピッチに等しい幅に形成されてあり、従って、その幅方向の両側端部は、螺旋状に一巻きしている隣接する補強条体部3a、3a上に重ね合わせた緩衝断熱条材部4a、4aの外面における対向する半部分上に載置した状態にしてこれらの緩衝断熱条材部4a、4aの上面間に架設状態で配設されていると共に、独立発泡合成樹脂製帯状材5Aからなるダクト外壁5とダクト内壁1との対向面間と、隣接する補強条体部3a、3a上に重ね合わせている緩衝断熱条材部4a、4aの対向面間とで断面横長長方形状の空間部7を形成している。なお、隣接する補強条体部3a、3a間には小間隔毎に補強条体3よりも細い線状の小径補強条体3'を複数条、ダクト内壁1の外周面に熱融着して補強条体3と共にダクト内壁1を円筒乃至は管形状に保形している。
【0026】
ダクト内壁1を形成している不織布はポリプロピレン又はポリエステル等の合成樹脂繊維からなり、上記補強条体3のピッチに略等しい幅を有する長い帯状不織布を先に螺旋状に一巻きした帯状不織布部1aと次に一巻きした帯状不織布部1aとの対向する側端部同士を重ね合わせて熱融着させながら螺旋状に巻回することによって一定径を有するダクト内壁1を形成している。また、上記補強条体3はポリプロピレン、ポリエステル等のオレフィン系の硬質合成樹脂製であって、ダクト内壁1の外周面に帯状不織布の幅に略等しいピッチでもって螺旋状に巻着してその内面を上記隣接する帯状不織布部1a、1aの重ね合わせている側端部上に熱融着により一体に固着している。この補強条体3は、ダクト内壁1上に固着した内端面である底面から外端部である頂部に向かって徐々は幅狭くなった断面三角形状に形成され、且つ、その外端部を凸円弧状に湾曲させて上記緩衝断熱条材4の内面を係止させる突端部30に形成しているが、この断面形状に限定されることなく、その他の適宜な断面形状に形成しておいてもよい。
【0027】
この補強条体3上に重ね合わせている上記紐状の緩衝断熱条材4は、ダクト外壁5を形成している独立発泡合成樹脂製帯状材5Aと同じ発泡ポリエチレン樹脂等の独立発泡合成樹脂からなり、補強条体3の幅よりも僅かに大きい幅と補強条体3の高さに略等しい厚みを有する断面矩形状に形成されていて、補強条体3上に重ね合わせて補強条体3と同一ピッチでもって螺旋状に巻装され、その内面の中央部に補強条体3の突端部30を食い込ませてこの補強条体3に係止させている。
【0028】
上記断熱層からなるダクト外壁5を形成している独立発泡合成樹脂製帯状材5Aは、発泡ポリエチレン樹脂からなり、その一側端面を外面側から内面側に向かって外側方に徐々に傾斜した外向き傾斜端面に形成し、他側端面を外面側から内面側に向かって内側方に徐々に傾斜した内向き傾斜端面に形成された断面横長平行四辺形の形状を有している一方、上記被覆層6は、独立発泡合成樹脂製帯状材5Aよりも幅広い一定幅を有する非通気性のポリエチレン樹脂等の、独立発泡合成樹脂製帯状材5A及び緩衝断熱条材4と熱融着可能な軟質合成樹脂製帯状材6aからなり、この軟質合成樹脂製帯状材6aを、ダクト外壁5を形成している独立発泡合成樹脂製帯状材部5aの外面に熱融着することなく重ね合わせていると共にその一側端部6a1 を、上記緩衝断熱条材部4aの外面上で対向する隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材部5a、5aの対向側端面間に介在させてこれらの対向側端面に熱融着により一体に固着している。
【0029】
さらに、隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材部5a、5aの対向側端面から内方に突出した上記軟質合成樹脂製帯状材6aの一側端6a2 を緩衝断熱条材部4aの外面における一側部上に熱融着させていると共にこの軟質合成樹脂製帯状材6aの一側端6a2 上に独立発泡合成樹脂製帯状材部5aの他側端部の内面を熱融着により一体に固着している。
【0030】
このように構成した消音ダクトAの製造方法を簡単に説明すると、全面に亘って無数の通気孔2を設けた通気性を有する帯状不織布を成形回転軸(図示せず)上に対向する側端部同士を重ね合わせて熱融着させながら螺旋状に巻回することによってダクト内壁1を形成していくと共に、半溶融状態の硬質合成樹脂製補強条体3を成形ノズル(図示せず)から押し出しながら、上記ダクト内壁1を形成する帯状不織布上に一定のピッチでもって螺旋状に巻回する。この際、この補強条体3の高熱温度によって上記帯状不織布の側端部同士の重合部を融着させながら巻着し、冷却させることによってこの重合部上に該補強条体3を一体に固着させる。なお、補強条体3と共に半溶融状態の小径の補強条体3'も複数状、並列状態にしてダクト内壁1を形成する帯状不織布上に螺旋状に巻着する。
【0031】
さらに、独立発泡合成樹脂製紐状物からなる緩衝断熱条材4を上記補強条体3上に重ね合わせながら補強条体3と同一ピッチでもって螺旋巻きし、その巻圧(張力)によって補強条体3の突端部30に押付ける該緩衝断熱条材4の下面中央部を弾性的に圧縮変形させながら突端部30を補強条体3の下面に食い込ませてこの突端部30に緩衝断熱条材4を係止させる。この緩衝断熱条材4に後続して上記断面横長平行四辺形状に形成されている独立発泡合成樹脂製帯状材部5aを隣接する緩衝断熱条材部4a、4aの外面における対向する半部分上間に架設する。
【0032】
隣接する緩衝断熱条材部4a、4aの上面間に独立発泡合成樹脂製帯状材部5aを架設する際に、独立発泡合成樹脂製帯状材5Aの外面に半溶融状態の軟質合成樹脂製帯状材6aを重ね合わせてこの軟質合成樹脂製帯状材6aの一側端部6a1 を独立発泡合成樹脂製帯状材5Aの外向き傾斜端面に熱融着させ、且つ、この外向き傾斜端面から軟質合成樹脂製帯状材6aの一側端部6a2 を内方に突出させた状態にしておき、この状態にして隣接する緩衝断熱条材部4a、4aの上面間に独立発泡合成樹脂製帯状材部5aを架設する。
【0033】
この際、先に螺旋方向に一巻き状に巻回した独立発泡合成樹脂製帯状材部5aの外向き傾斜端面に次に一巻状に巻回する独立発泡合成樹脂製帯状材部5aの内向き傾斜端面を上記半溶融状態の軟質合成樹脂製帯状材6aの一側端部6a1 を介して接合させてこの一側端部6a1
により独立発泡合成樹脂製帯状材部5a、5aの傾斜した対向側端面同士を一体に熱融着させながら一定の螺旋ピッチでもって巻装することにより断熱層である管状のダクト外壁5を形成する。
【0034】
さらに、隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材部5a、5aの対向側端面同士を一体に熱融着させている半溶融状態の軟質合成樹脂製帯状材6aの一側端部6a1 における上記独立発泡合成樹脂製帯状材部5a、5aの対向側端面から内方に突出した一定幅の一側端6a2 を介して、先に補強条体3上に螺旋巻きした上記発泡合成樹脂製紐状物からなる緩衝断熱条材部4aの外面一半部上に独立発泡合成樹脂製帯状材部5aの内向き傾斜端面側の側端部内面を熱融着させると同時に、この独立発泡合成樹脂製帯状材部5aの外面を被覆している軟質合成樹脂製帯状材6aにおけるこの独立発泡合成樹脂製帯状材部5aから他側方に突出した他側端部6a3 を先に一巻き状に螺旋巻きした独立発泡合成樹脂製帯状材部5a上の軟質合成樹脂製帯状材6aの一側端部上に熱融着させながら軟質合成樹脂製被覆層6を形成していくことによって消音ダクトを製造する。
【0035】
こうして得られた消音ダクトAは、住宅の天井裏等に配管して送風機等の送風源からこの消音ダクトを通じて室内の換気等を行うものであり、その際、断熱材である独立発泡合成樹脂製帯状材5Aからなる管状のダクト外壁5と、このダクト外壁5を内側から支持している独立発泡合成樹脂からなる緩衝断熱条材4とによって優れた断熱作用を発揮させることができると共に、送風機等の駆動によって発生する騒音やダクト内を流通する際の風の音が、ダクト内壁1を形成している不織布の繊維間に入り込んで、摩擦や繊維の振動により音のエネルギーを熱エネルギーに変換して消音し、室内に騒音が伝播するのを防止することができる。
【0036】
さらに、ダクト内壁1に穿設している無数の細かい通気孔2がこのダクト内壁1と独立発泡合成樹脂製帯状材5Aからなるダクト外壁5との対向面間の広い空間部7に連通しているので、音波がこれらの通気孔2を通じて空間部7内に入る際に、その音のエネルギーを減衰させると共に通気孔2を通過して広い空間部7内に入った時に急激に拡散し、この空間部7を形成しているダクト内壁1とダクト外壁5との対向面で繰り返し乱反射しながら空間部7内の空気を振動させ、騒音まで吸収、消音することができる。その上、この空間部7を形成する隣接する緩衝断熱条材部4a、4aと、上記ダクト外壁5とは、独立発泡合成樹脂よりなるので、音波がこれらの緩衝断熱条材部4a、4aとダクト外壁5との凹凸粗面によってランダムに乱反射して消音効果を向上させることができる。
【0037】
また、消音ダクトAを曲げ施工する際に屈曲させると、長さ方向に圧縮力が発生する凹円弧状に湾曲する内側のダクト周壁部においては、その圧縮力によって隣接する補強条体部3a、3a上の緩衝断熱条材部4a、4a間のダクト外壁部分である独立発泡合成樹脂製帯状材部5aが内方に撓んでも、補強条体3とこの補強条体3上に重ねている緩衝断熱条材4とによって上記空間部7の厚みが独立発泡合成樹脂製帯状材部5aの撓みを許容する充分な厚みに形成されているので、消音ダクトAを所望の屈曲度に容易に屈曲させることができると共に、消音作用に必要な空間部7の広さを確保することができる。
【0038】
また、消音ホースAを屈曲させた際に、長さ方向に引張力が発生する凸円弧状に湾曲する外側のダクト周壁部においては、その引張力によってダクト外壁5を形成している隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材部5a、5a間が離れようとするが、これらの独立発泡合成樹脂製帯状材部5a、5aの対向側端面同士を、独立発泡合成樹脂製帯状材5Aの外面を被覆してしている軟質合成樹脂製帯状材6aの一側端部6a1 の熱融着によって一体に接続しているので、隙間などを生じさせることなく管の全長に亘って連続して均一な断熱作用を奏する。
【符号の説明】
【0039】
A 消音ダクト
1 ダクト内壁
2 通気孔
3 補強条体
4 緩衝断熱条材
5 ダクト外壁
5A 独立発泡合成樹脂製帯状材
6 軟質合成樹脂製被覆層
6a 軟質合成樹脂製帯状材
7 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性と可撓性を有するシート状物からなる管状のダクト内壁と、このダクト内壁の外周面に一定のピッチでもって螺旋状に巻着している硬質合成樹脂製の補強条体と、この補強条体上に補強条体と同じピッチでもって螺旋巻きして補強条体上に重ね合わせている紐状の緩衝断熱条材と、一定幅と厚みを有する独立発泡合成樹脂製帯状材を、対向する側端面同士を一体に接合させながら螺旋巻きし、且つ、その内周面を上記緩衝断熱条材の外面に一体に固着している管状の断熱層からなるダクト外壁と、このダクト外壁の外周面を被覆している軟質合成樹脂製被覆層とからなることを特徴とする消音ダクト。
【請求項2】
ダクト外壁の外周面を被覆している上記軟質合成樹脂製被覆層は、一定幅を有する軟質合成樹脂製帯状材からなり、この軟質合成樹脂製帯状材をダクト外壁を形成している独立発泡合成樹脂製帯状材の外面に重ね合わせていると共にその一側端部を隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材の対向側端面間に介在させてこれらの対向側端面に熱融着によって一体に固着してあり、さらに、隣接する独立発泡合成樹脂製帯状材の対向側端面からこの軟質合成樹脂製帯状材の一側端を内方に突出させてこの一側端を介して独立発泡合成樹脂製帯状材の内周面に紐状の緩衝断熱条材の外面を一体に融着、固定していることを特徴とする請求項1に記載の消音ダクト。
【請求項3】
緩衝断熱条材は独立発泡合成樹脂製帯状材と同じ独立発泡合成樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消音ダクト。
【請求項4】
ダクト内壁は、細かい無数の通気孔を設けている不織布からなることを特徴とする請求項1に記載の消音ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−242052(P2011−242052A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114362(P2010−114362)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000114994)エバック株式会社 (41)
【Fターム(参考)】