説明

消音器

【課題】 消音器を構成する樹脂ケースの歪みを極力なくし、消音周波数の設定に関与するパラメータにばらつきが発生するのを防ぎ、ひいては消音性能の悪化を防止する点にある。
【解決手段】 筒状ケーシングの内周壁4で囲む通気路5の長さ方向に沿って隔壁6を設け、通気路5を隔壁6によって区切ることでケーシング全体の剛性を上げながら、通気路内の各空間5a、5b、5c、5dごとに開孔7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の換気ダクトに取り付けられて、建物外部から内部への騒音の進入を防ぐ消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物内の換気を行うために設けられた換気口より建物内に侵入する騒音への対策が求められており、種々の提案がなされている。建物の壁面を貫通して屋外と建物内とを連通する換気口は、多くの場合、壁を管路状にくり貫いた上で屋外の外壁側開口にフードを被せ、屋内側の壁面開口には給気レジスター(給気量を調整可能なカバー)を取り付ける構成が採用されており、このような構成とすることで、屋内への風雨の浸入を防ぎながら空気の流れは阻害しないようにしている。そこで、屋外に取り付けるフード自体に消音機能を持たせることで屋外から屋内へ浸入しようとする騒音の対策を図る従来例がある。この例では、フードの内面にグラスウール等の吸音材を貼り付けて、屋外側で騒音のエネルギーを低減するものであるため、当然、フードの大きさは消音機能を持たないものに比べて大きくなる。従って、外壁面に大きなフードを設けることが見栄え上好ましくない場合や、建物の構造上大きなフードを取り付けることができない場合などは対応できないという問題点があった。
【0003】
また、別の従来例として、特許文献1に示すように壁を貫通するダクトの内部に筒状の消音器を挿入する例がある。この例では、ダクト内部という寸法上の制限がある中でより高い消音効果を得るために、所謂ヘルムホルツのレゾネータ構造が採用されている。このヘルムホルツ・レゾネータ型の消音器は、共鳴空間(特許文献1では環状空間8)の容積と、共鳴空間に対してリング状に開口するリング状の間隔(特許文献1では導音口6a)の開口面積と、その他のパラメータとによって決まる特定周波数の音に対して消音性能を発揮するものであって、小型でありながら優れた消音効果を得ることができる。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されるような構造の消音器には、消音対象の周波数(以下、消音周波数と称す)にばらつきが発生することがあり、設計通りの消音性能が得られないことがあるという問題を抱えていた。すなわち、消音器の筐体は半割状の2つの樹脂ケースによって構成されていることから、それぞれの樹脂ケースの成形時に歪み等が発生すると、消音周波数を決定するパラメータの値にばらつきが生じてしまうのである。
【特許文献1】特開2006−57491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記先行例が抱える問題点に対処してなされたものであり、その課題とするところは、消音器を構成する樹脂ケースの歪みを極力なくし、消音周波数の設定に関与するパラメータにばらつきが発生するのを防ぎ、ひいては消音性能の悪化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、筒状ケーシングの内部に空洞の共鳴空間を形成すると共に、筒状ケーシングの内周壁に開孔を形成し、該開孔と前記共鳴空間とを連通して筒状ケーシングの内周壁で囲む通気路を伝わる騒音音波の消音を図る消音器において、前記通気路を通気路の長さ方向に沿って複数の空間に区切る隔壁を通気路内に備え、前記隔壁によって形成する通気路内の各空間ごとに前記開孔を設けることを特徴とする消音器を提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、筒状ケーシングの内周壁で囲む空間を換気用の通気路とし、この通気路の長さ方向に沿って隔壁を設けているため、筒状ケーシングにおいて形状的に最も歪みが生じやすい中空形状部、すなわち通気路を補強することができる。従って、樹脂成形の段階で筒状ケーシングの形状に歪みが発生するのを防ぐことができ、消音周波数の設定に関与するパラメータのばらつきを防いで良好な消音性能を確保することができる。
【0008】
また、隔壁によって複数に仕切られる通気路内の各空間ごとに共鳴空間と通気路とを連通する開口を形成しているため、1つ1つの空間を伝わっていく騒音をそれぞれ設けられた開口部において捕らえることができ、効率良く消音を図ることができる。
【実施例】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態を説明する。図1は本発明実施例の消音器を示す外観図であり、図2は同じく内部断面を示す説明図である。
本発明の消音器1は、熱可塑性の樹脂を射出成形して形成された第1ケーシング2aと第2ケーシング2bとを接合することにより、全体として略筒状のケーシング構造を成している。本実施例では、筒状ケーシングの外周壁3は円柱形状に形成されており、内周壁4は4つの平面4a、4b、4c、4dによって構成されており、筒状ケーシングの芯をくり貫くように四角柱形状の空間を形成している。この四角柱形状の空間は、換気用の空気が流れる通気路5として機能するものであり、建物の壁面を貫通する換気口内に消音器1を取り付けた際に、屋外と屋内との間で換気に伴って流れる空気は全てこの通気路5を流れる。
【0010】
6は隔壁であり、四角柱形状に形成される通気路5の対角線に沿って形成され、通気路を4つの独立した空間5a、5b、5c、5dに区切っている。この隔壁6は、第1ケーシングと第2ケーシングのそれぞれが備える通気路5の一方の端部から他方の端部に亘って形成されており、第1ケーシングと第2ケーシングを接合して固定した際に、全体として構成される筒状ケーシングの通気路5を、やはり一方の端部から他方の端部にかけて連続した壁体を形成する。これにより、隔壁6によって区切られる空間5a、5b、5c、5dも、それぞれ隔てられて独立した状態で筒状ケーシングの一端から他端にかけて形成される。
【0011】
7は開孔で、内周壁4を構成する各平面4a、4b、4c、4dにそれぞれ形成され、通気路5の各空間5a、5b、5c、5dと筒状ケーシングの内部空間とをこの開孔7によって連通させている。既に説明したように、筒状ケーシングは、第1ケーシング2aと第2ケーシング2bとを接合して構成されているが、第1ケーシング2aと第2ケーシング2bは共に略コ字状の断面形状を備えており、両ケーシングを接合することによって筒状ケーシングの内部に空洞の共鳴空間8が形成される。そしてこの共鳴空間にはグラスウールやロックウール、あるいはウレタン等からなる吸音材9が収容されている。このとき、本発明では通気路5の中に隔壁6を形成しているので、第1ケーシング2aと第2ケーシング2bの剛性が高まって射出成形時に形状の歪みが発生し難く、従って第1ケーシング2aと第2ケーシング2bとの接合面10に隙間が発生し難い構造となっている。また、隔壁6で区切る通気路の各空間5a、5b、5c、5dごとに設ける開孔7にも開孔寸法の誤差が発生し難い構造となっている。
【0012】
本発明は以上のように構成されるので、筒状ケーシングを構成する部材の剛性が高まり、形状に歪みが発生するのを防ぐことができ、ヘルムホルツのレゾネータ構造に基づく消音器の消音周波数を決定するパラメータ(具体的には、開孔7の開孔寸法、共鳴空間8の容積など)が設計値から外れるのを防ぐことができる。これにより、設計通りの安定した消音性能を得ることができる。また、通気路5を隔壁6によって区切ることでケーシング全体の剛性を上げながら、通気路内の各空間5a、5b、5c、5dごとに開孔7を形成したので、開孔7を複数箇所に分散させて開孔寸法の安定化を図り、全ての開孔を合計した開口面積に誤差が発生するのを出来る限り抑制することができる。更に、通気路内の各空間5a、5b、5c、5dごとに開孔7を形成することで、通気路内を伝わる騒音を満遍なく共鳴させて消音を図ることができる。
なお、本発明は上記実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲内で種々の実施が可能である。例えば上記実施例では、内周壁で形成する通気路の形状を四角柱としているが、円柱など他の形状でも実施可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施例の消音器を示す外観図である。
【図2】本発明実施例の内部断面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0014】
1 消音器
2a 第1ケーシング
2b 第2ケーシング
3 外周壁
4 内周壁
4a〜4d 内周壁を構成する平面
5 通気路
5a〜5d 通気路中に形成した空間
6 隔壁
7 開孔
8 共鳴空間
9 吸音材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケーシングの内部に空洞の共鳴空間を形成すると共に、筒状ケーシングの内周壁に開孔を形成し、該開孔と前記共鳴空間とを連通して筒状ケーシングの内周壁で囲む通気路を伝わる騒音音波の消音を図る消音器において、
前記通気路を通気路の長さ方向に沿って複数の空間に区切る隔壁を通気路内に備え、
前記隔壁によって形成する通気路内の各空間ごとに前記開孔を設けることを特徴とする消音器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−303662(P2008−303662A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153507(P2007−153507)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】