説明

消音装置および消音方法

【課題】室外機から生じる低周波に顕著なピークを有する騒音、特に、オクターブバンド中心周波数63Hzの騒音を共鳴型の消音装置によって効率よく低減する。
【解決手段】消音装置1は、空調用の室外機2における排気口7に連通接続される筒状のケーシング8を備え、該ケーシング8内の通気路10に臨む壁面には、多孔板11で区画された共鳴室9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用の室外機からの騒音を低減する消音装置および消音方法に関し、更に詳しくは、共鳴型の消音装置およびそれを用いた消音方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調用の室外機においては、外気を送風機によって取り入れ、熱交換器に供給してこれを冷却し、熱交換によって昇温した外気(排気)を排出口から機外に送出するよう構成されている。
【0003】
かかる室外機では、冷却用の外気の流動音や送風機の駆動音、等が排気と共に機外に放出されることになり、この騒音を低減する消音手段として、例えば、特許文献1に開示されているように、室外機内の熱交換機を通過した排気を消音筒に導いて機外に排出するように構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−40731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の従来の消音手段では、消音筒をガラスウールなどの吸音材で囲繞すると共に、消音筒の内部に設けた整流筒にも吸音材を備え、排気と共に排出される騒音を吸音材で吸収するようにしており、数百Hz程度の比較的高い周波数の騒音の消音には有効であるが、数十Hz程度の低い周波数の騒音に対しての消音効果が不十分であった。
【0006】
ところで、多数のサーバやネットワーク機器を備えたデータセンターなどにおいては、多数のサーバ等を効率的かつ確実に冷却するための空調システムが備えられている。近年、かかる空調システムに用いられるIT専用の室外機には、63Hz付近の低い周波数に顕著なピークを有する不快な騒音を発生するものがある。特に、複数の送風機を1つの室外機に内蔵したものにあっては、それら送風機の回転数が接近すると、唸りを生じて前記騒音が増大するので、かかる騒音に対する消音が強く望まれている。
【0007】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、室外機から出る騒音、特に、低い周波数に顕著なピークを有する騒音を、効率よく低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0009】
(1)本発明の消音装置は、空調用の室外機における通気口に連通接続される筒状のケーシングを備え、該ケーシング内の通気路に臨む壁面には、多孔板で区画された共鳴室が設けられる。
【0010】
本発明の消音装置によると、室外機の通気口を流通する空気が消音装置のケーシングを通過する間に、騒音が共鳴室によって共鳴減衰される。この場合、共鳴室で騒音の音響エネルギーが効率よく消費されることで、数十Hz付近の低い周波数に顕著なピークを有する騒音を効率よく低減できる。
【0011】
(2)本発明の消音装置の好ましい実施態様では、前記通気口が排気口であり、前記室外機が、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音を発生する。
【0012】
この実施態様によると、室外機の排気口から出た排気が、消音装置のケーシングを通過する間に、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音が共鳴室によって共鳴減衰され、騒音の少ない排気として外部に放出される。したがって、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音を発生するような室外機、例えば、データセンターの空調システムに備えられるようなIT専用の室外機の騒音を低減することができる。
【0013】
(3)本発明の消音装置の他の実施態様では、前記室外機が、複数の送風機を備える。
【0014】
複数の送風機を備える室外機では、複数の送風機の回転数が一致あるいは接近していると、唸りを生じて騒音が増大するが、この実施態様によると、かかる騒音を効果的に低減することができる。
【0015】
(4)本発明の消音方法は、室外機の騒音を、消音装置によって消音する方法であって、前記室外機が、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音を発生するものであり、前記消音装置が、筒状のケーシングを備え、該ケーシング内の通気路に臨む壁面に、多孔板で区画された共鳴室を有するものであり、前記消音装置の前記筒状のケーシングを、前記室外機の通気口に連通接続するものである。
【0016】
本発明の消音方法によると、室外機の通気口を流通する空気が消音装置のケーシングを通過する間に、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音が共鳴室によって共鳴減衰される。
【0017】
(5)本発明の消音方法の他の実施態様では、前記通気口が排気口であり、前記室外機が、複数の送風機を備える。
【0018】
この実施態様によると、室外機の排気口から出た排気が、該排気口に連通接続された消音装置のケーシングを通過する間に、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音を、共鳴室によって共鳴減衰させ、騒音の少ない排気として外部に放出される。また、複数の送風機を備える室外機では、複数の送風機の回転数が一致あるいは接近していると、唸りを生じて騒音が増大するが、この実施態様によると、かかる騒音を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、室外機の通気口を流通する空気が、消音装置のケーシングを通過する間に、騒音が共鳴室によって共鳴減衰される。この場合、共鳴室で騒音の音響エネルギーが効率よく消費されることで、数十Hz付近、例えば、63Hzの低い周波数に顕著なピークを有する騒音を効率よく低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る消音装置を備える室外機の外観斜視図である。
【図2】図2は図1の消音装置部分を縦断した側面図である。
【図3】図3は図1の消音装置部分を分離した状態の斜視図である。
【図4】図4は本発明の他の実施形態の図2に対応する側面図である。
【図5】図5は本発明の更に他の実施形態の図2に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面によって本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る消音装置1を備えた室外機2の外観斜視図であり、図2は、その消音装置部分を縦断した側面図であり、図3は、消音装置部分を分離した状態の斜視図である。
【0023】
この室外機2は、多数のサーバやネットワーク機器を備えたデータセンターにおける空調システムに装備される、IT専用の室外機であって、箱形に構成されたハウジング3に、圧縮処理によって昇温した冷媒が流動する二つの冷却コイル4が斜めに対向して略V字型に収容されると共に、冷却コイル4に外冷気を供給して冷却する左右一対の送風機5がハウジング上部に装備され、かつ、ハウジング3の上面に消音装置1が直結搭載されている。略V字型に配置された冷却コイル4の下方の端部間、及び、上方側の端部とハウジング3内壁との間は、それそれぞれ閉塞されており、吸気が、冷却コイル4を円滑に通過するように構成されている。
【0024】
室外機2のハウジング3の下面には、吸気口6が備えられており、室外機2は、吸気口6が下方に露出するように、中央部に開口20aを有する架台20上に設置されている。
【0025】
この室外機2では、下面の吸気口6から導入した冷外気を、図2の矢符で示すように、冷却コイル4に供給し、冷却コイル4での熱交換によって昇温した排気をハウジング上面に形成された左右一対の排気口7から強制排出するよう構成されている。
【0026】
この室外機2では、上述のように左右一対の送風機5を備えており、各送風機5の回転に伴って、その羽根の枚数及び回転数等に応じた騒音が発生し、この室外機2では、63Hz付近に顕著なピークを有する騒音、すなわち、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音を発生する。
【0027】
特に、この室外機2では、2台の送風機5を備えており、両送風機5の回転数は、共振を防止するために、一致していないけれども、接近している。このため、両送風機5の間で唸りを生じ、騒音が増大する。
【0028】
この実施形態では、室外機2の騒音を低減するために、室外機2のハウジング3の上面の排気口7に消音装置1が連通接続されている。
【0029】
消音装置1は、ガラスウールなどの吸音材を使用しない共鳴型の消音装置であり、上下に連通する角筒状に形成されたケーシング8の内部に、前後一対の共鳴室9が通気路10を挟んで対向配置された構造となっている。各共鳴室9は、通気路10に臨む壁面が多孔板(パンチングメタル)11で区画されて構成されている。
【0030】
また、各共鳴室9の内部は、図2に示すように、仕切り板12によって排気流動方向に沿って複数の空間に区画されている。
【0031】
このように通気路10を挟んで一対の共鳴室9を対向配置しているので、排気がケーシング8の通気路10を通過することで、通気路10の両脇に位置する一対の共鳴室9で騒音の音響エネルギーが効率よく消費され、一層良好な消音効果が発揮される。
【0032】
また、通岐路10は、上下方向に真っ直ぐに延びているので、圧力損失が少なく、大容量の風量に対応することができる。
【0033】
この実施形態の消音装置1では、前記ケーシング8は、板厚が0.8mmの亜鉛メッキ鋼板で構成されると共に、多孔板11は、孔径1.5mm、孔ピッチ8.2mm、開口率3.1%で多数の小孔を形成した板厚0.8mmの亜鉛メッキ鋼板で構成されている。すなわち、この消音装置1は、全て金属材料から構成されている。
【0034】
上記構成の消音装置1によると、室外機2の通気口である排気口7から送出された排気は消音装置1の通気路10を通って上方に流出し、この通気路10を通過する間に、音波が、共鳴室9を構成する多孔板11の小孔を通過することで排気が音響共鳴によって振動し、小孔の口縁との摩擦によって振動エネルギーが熱エネルギーに変換されることで音響エネルギーを消費し、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音を効率的に低減することができる。
【0035】
因みに、共鳴室9を上記仕様の多孔板11で構成した場合、室外機1から発生するオクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音を、約5dB低減できることが確認された。この騒音の低減は、室外機2の排気側のみならず、吸気側でも約5dB低減できることが確認された。なお、従来の消音装置では、室外機1から発生するオクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音の低減量は、略0dBであった。
【0036】
このように、室外機2から発生する63Hz付近に顕著なピークを有する不快な騒音を、消音装置1によって効率的に共鳴減衰させることができる。
【0037】
データセンターでは、室外機2が、多数設置されるが、この実施形態の消音装置1は、室外機2に対応した角筒状に形成されているので、多数の室外機2の排気側に容易に設置することが可能であり、多数の室外機2の騒音を効果的に低減することができる。
【0038】
この実施形態では、消音装置1を、室外機の排気口側に設けたけれども、本発明の他の実施形態として、吸気口側に設けてもよく、あるいは、両方に設けてもよい。
【0039】
この実施形態では、室外機2は、2台の送風機5を備えていたけれども、送風機の台数は、2台に限らず、1台、あるいは、3台以上であってもよい。
【0040】
また、室外機2は、データセンターの空調システムの室外機に限らず、他の空調システムの室外機の消音に適用してもよいのは勿論である。
【0041】
(他の実施形態)
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0042】
(1)図4に示すように、室外機2の容量によっては、消音装置1におけるケーシング8の中央にも多孔板11からなる共鳴室9を配置して、室外機2からの排気を2つの通気路10に導き、各通気路10を挟んで共鳴室9が対向するように構成してもよい。
【0043】
(2)消音装置1におけるケーシング8の上端に、通気路10の上端開口から上方に向けて流出する排気を所望の方向に向けて排出するように排気ダクトを装備してもよい。
【0044】
(3)共鳴室9を構成する多孔板11は上記仕様に限られるものではなく、小孔の孔径、孔ピッチ、開口率を適宜設定変更することで騒音の音域や大きさに対応することができる。
【0045】
(4)本発明の消音装置を多段に積層設置してもよい。
【0046】
(5)図5に示すように、吸気口21を、ハウジング3の下面に代えて、両側面の下部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 消音装置
2 熱交換機
5 送風機
7 排気口
8 ケーシング
9 共鳴室
10 通気路
11 多孔板
12 仕切り板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用の室外機における通気口に連通接続される筒状のケーシングを備え、該ケーシング内の通気路に臨む壁面には、多孔板で区画された共鳴室が設けられる、
ことを特徴とする消音装置。
【請求項2】
前記通気口が排気口であり、
前記室外機が、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音を発生する、
請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記室外機が、複数の送風機を備える、
請求項1または2に記載の消音装置。
【請求項4】
室外機の騒音を、消音装置によって消音する方法であって、
前記室外機が、オクターブバンド中心周波数が63Hzの騒音を発生するものであり、
前記消音装置が、筒状のケーシングを備え、該ケーシング内の通気路に臨む壁面に、多孔板で区画された共鳴室を有するものであり、
前記消音装置の前記筒状のケーシングを、前記室外機の通気口に連通接続する、
ことを特徴とする消音方法。
【請求項5】
前記通気口が排気口であり、
前記室外機が、複数の送風機を備える、
請求項4に記載の消音方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−207819(P2012−207819A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72166(P2011−72166)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000143972)株式会社ササクラ (138)
【Fターム(参考)】