説明

液体を注入する中実針

【課題】 タトゥーニードルに液体(染料)が安定して一定量付着し、ぼた落ち等のトラブルの生じることのないタトゥーニードルを提供する。
【解決手段】 本発明の液体を注入する中実針(タトゥーニードル)1は、中実針の傾斜部3の表面に液流誘導溝4が形成されていることを特徴とする。前記液流誘導溝が、前記中実針の軸線に平行な溝であること、前記液流誘導溝が、前記中実針の軸線に対して傾斜する螺旋溝であること、さらに、前記液流誘導溝が前記中実針の軸線に対して傾斜する螺旋溝である場合であって、螺旋溝が複数で、相互に交差する溝である請求項3に記載の液体を注入すること、が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーマネントメイクないしは入れ墨の際に用いる液体を肌に注入する中実針に関する。
【背景技術】
【0002】
古くは倶利伽藍紋紋とも呼ばれ、入れ墨・タトゥーとも呼ばれ、近時では描き眉に代替するものとしてのパーマネントメイクアップといわれる技法が連綿と続いてきている。この技法は、針の腹に染料等を含む液体を付着させ、針先を肌に刺すことによって針に付着した液体を皮膚の内部に移行させ、移行したその液体中に含まれる染料等が皮膚内に固定されて発色するものであり、針としては中実針が用いられている。
この中実針は、クロニウムニッケル、ステンレス、スチール製が普通で、針の腰部から、例えば円錐形状に先端に向けて傾斜して磨かれている。この中実針は、鍼灸施療用にも用いられるものと共通するところはあり得るが、本発明では、液体を皮膚内に移行させるものに限定し、それを以下、タトゥーニードルと称する。
【0003】
タトゥーニードルは、手工施療用に単独針が用いられてきた。能率を上げるため、また、直線性なり曲線性を実現するために、施療者が各自工夫の台座に複数の単独タトゥーニードルを糸で、あるいは蝋、接着剤等で配列固定して用いることも一般的に実施されていた。近時では、複数のタトゥーニードルを半田・かしめ等で配列固定した針群も市販され、最近では、握りに複数針を配列固定したものも用いられている(図6)(特許文献1参照)。
さらに、手工施療に替えて、タトゥーニードルを機械的に上下動させるマシーンタイプ(特許文献2参照)(図8)の施療方式も行われている。
【0004】
皮膚への施療は、タトゥーニードルの表面にカラー染料を溶いた液体を付着させ、タトゥーニードルを肌に突き刺す時にタトゥーニードルを伝って針先から皮膚の内部に液体が供給されるものである。
従来のタトゥーニードルにおいては、タトゥーニードルの腹(傾斜部)に付着する液体の量は限られ、頻繁にタトゥーニードルを液体容器に持って行くことが必要となっていた。また、一度にタトゥーニードルに付着する液体の量も、なかなか一定せず、ぼた落ちも生じやすく、さらに、染料の多寡によって色ムラが生じやすかった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6030404号明細書
【特許文献2】米国特許第6033421号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて、タトゥーニードルに液体(染料)が安定して一定量付着し、ぼた落ち等のトラブルの生じることのないタトゥーニードルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体を注入する中実針(タトゥーニードル)は、中実針の傾斜部の表面に液流誘導溝が形成されていることを特徴とする。前記液流誘導溝が、前記中実針の軸線に平行な溝であること、前記液流誘導溝が、前記中実針の軸線に対して傾斜する螺旋溝であること、さらに、前記液流誘導溝が前記中実針の軸線に対して傾斜する螺旋溝である場合であって、螺旋溝が複数で、相互に交差する溝である請求項3に記載の液体を注入すること、が好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタトゥーニードルは、針の傾斜部の表面に液流誘導溝が形成されているので、タトゥーニードルへの液の付着が適量にコントロールされ、且つ、ぼた落ちすることなく、施術に際してスムーズに液が肌に吸い込まれていくという、従来の針では実現できなかった格別の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、タトゥーニードルの表面に液流誘導溝を形成することによって、針に傾斜部の表面積が増加することによって、液がタトゥーニードルの腹に保持される量が増加すると共に、針先に向かう液流が整流となり、ぼた落ち等のトラブルが生じることが極めて少なくなる、との現象を知見して発明されたものである。
以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のタトゥーニードルの基本形態を示す説明的斜視図である。
本発明のタトゥーニードル1は、従来のものと同様、腰部2と、先端に向かって細まる傾斜部3からなる。その傾斜部3には、本発明を特徴付ける液流誘導溝4を有する。液流誘導溝4は、単数でも複数でもよい。また、液流誘導溝4は、腰部2に及んでいても差し支えない。
【0010】
針の傾斜部3に形成される液流誘導溝4は、タトゥーニードルによる施療時に皮膚内に注入される液体(染料等)をタトゥーニードルの腹部に一時的に安定して保持し、タトゥーニードルを皮膚に刺した時に制御された速度・量で液体を皮膚内に誘導流下させるものである。そのために、傾斜部3に形成される液流誘導溝4は、厳密には、付着させる液体の粘度等との兼ね合いで、その深さ・溝数等が決定されることになる。
【0011】
針の傾斜部3に形成される液流誘導溝4の形状・分布は、各種あり得る。その態様を例示すれば、例えば、液流誘導溝4の長さ、深さ、形状(液流誘導溝4の底の線が針の傾斜部3の表面と平行であるものを含む)、本数は適宜とすることができる。その場合、針の仮想的表面部分をどの程度残すか(究極の形態は、傾斜部3に仮想的垂体面を有さない形態となる)、は任意である。
【0012】
針の傾斜部3に形成される液流誘導溝4の軸線は、図1に示されるような、針の軸線に平行であることは、必ずしも必須ではない。
図2に示すように、液流誘導溝が1本の螺旋溝である態様(図2(a))、複数の螺旋溝である態様(図2(b))、複数の螺旋溝が相互に交差する態様(図2(c))、針の軸線に平行な直線状の液流誘導溝に針の軸線にほぼ直角の交差円環溝が付加された態様(図2(d))等がある。
【0013】
タトゥーニードルは、1本針として供給されるだけでなく、複数本組み合わせた形でも供給され、また、柄に据えられた形でも供給される。例えば、特許文献1に示されるのは、柄に据えられた一列斜め(図6)のものであり、また、複数列縦横並列斜めのタトゥーニードル組み合わせ針群(図7)の例である。
このほか、一列水平(図3)、湾曲一列(図4)のものもあり、さらには、一列カーブ列、複数列千鳥(ジグザグ)、面心配列、平面稠密配列、梅鉢配列、外円包囲(以上図5(a)〜(f))、叢状(図示省略)の配列のものも実用化されている。
【0014】
マシーンタイプにもほぼ対応する形のものが供給されている。
複数組み合わせ針の場合には、従来のものでも、隣接する針の間で毛細管現象を利用して液が保持されるが、本発明の前述の液流誘導溝を付与した針を組み合わせたものの場合の方が、液の保持は一段と優れている。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のタトゥーニードルによれば、針への液の保持に関する技能を格別磨く必要が無くなるので、パーマネントメイクアップ・タトゥーを施療する業界において、施療者の養成が簡便になり、この業界に益する処大である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のタトゥーニードルの基本形態を示す説明的を示す斜視図である。
【図2】本発明のタトゥーニードルの諸実施の形態を示す説明的を示す説明図であり、(a)は、液流誘導溝が1本の螺旋溝である態様を示す説明図であり、(b)は、複数の螺旋溝である態様を示す説明図であり、(c)は、複数の螺旋溝が相互に交差する態様を示す説明図であり、(d)は、針の軸線に平行な直線状の液流誘導溝に針の軸線にほぼ直角の交差円環溝が付加された態様を示す説明図である。
【図3】タトゥーニードルを一列水平に配列固定するものを示す説明図である。
【図4】タトゥーニードルを湾曲一列に配列固定するものを示す説明図である。タトゥーニードルを一列カーブ列に配列固定するものを示す説明図である。
【図5】タトゥーニードルの複数配列例を示す説明図で、(a)は一列カーブ列、(b)は面心配列、(c)は複数列千鳥(ジグザグ)、(d)は平面稠密配列、(e)は梅鉢配列、(e)は外円包囲の例を例示する説明図である。
【図6】特許文献1に示される、タトゥーニードルを一列斜めに柄に据えて配列固定するものを示す説明図である。
【図7】複数列縦横並列斜めのタトゥーニードル組み合わせ針群の例を示す説明図である。
【図8】特許文献2に示される、マシーンタイプのタトゥーニードル装置の全体概念図である。
【符号の説明】
【0017】
1:タトゥーニードル
2:(針の)腰部
3:(針の)傾斜部
4:液流誘導溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中実針の傾斜部の表面に液流誘導溝が形成されていることを特徴とする液体を注入する中実針。
【請求項2】
前記液流誘導溝が、前記中実針の軸線に平行な溝である請求項1に記載の液体を注入する中実針。
【請求項3】
前記液流誘導溝が、前記中実針の軸線に対して傾斜する螺旋溝である請求項1に記載の液体を注入する中実針。
【請求項4】
前記液流誘導溝が前記中実針の軸線に対して傾斜する螺旋溝である場合であって、螺旋溝が複数で、相互に交差する溝である請求項3に記載の液体を注入する中実針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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